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Mark McGuire

Mark McGuire

@代官山Unit

May 9, 2012

文:野田 努   写真:小原泰広   May 15,2012 UP
E王

 ステージに登場すると、マイクを持って「クリーヴランドから来たマーク・マッガイアと言います」とまずは自己紹介、プロモーターやレーベルへの謝礼、それからオーディエンスに向かって「楽しんでいってください」と言い終えると、よっこらしょとギターを肩にかけて、そしてショーがはじまった。なんだか礼儀正しい人だった。

 ライヴは、ダンス・ミュージックだった。ドラムがないのに......将来音楽からドラムはなくなるだろうと空想したのはアーサー・ラッセルだった。ディスコ・ダンス・ミュージックに情熱を燃やしながら、同時にドラムのない音楽こそが刺激的に思える時代がいつか来ると、彼は予言している。
 音楽によって、ビートは人の内部からスポンティニアスに生まれる、マーク・マッガイアがやったのはそれだった。人びとのざわめきからはじまり、マッガイアはループを重ねてうねりを創出する。いくつもの反復がシンコペーションしているので、リズムが生まる。そうしてでき上がった音の波のうねりの上をマッガイアは滑るようにギターを弾いている。
 ギターを肩からぶらせげて、彼自身も身体をリズミックに動かしながら演奏する。けっこう、ノリノリだ。アンビエント......というイメージからは遠く、良い意味で期待を裏切るようなマッガイアのリズミックな演奏に、オーディエンスの身体はじょじょに反応していく。時折歪ませ、激しさを見せながら、しっかりと起伏のある曲を展開する。曲の途中でベース・ギターに持ち替えて、ベースのループも加え、ふたたびギターを重ねるという芸まで披露した。瞬間的だが、彼はロバート・フリップやデイヴ・ギルモアといった領域にも接近したが、幸いなことにそれがミニマリズムから脱線することはなかった。
 気がつけば、彼は適度に埋まったユニットのフロア全体を桃源郷へと連れていっている。どこまでも連れて行く。気がつくと、もう1時間も経っている。
 そして、まだ20代半ばをまわったばかりの青年は、桃源郷からこの現実への着地までも、しっかりと、焦ることなく、ゆっくりとやった。これがマッガイアのライヴかと、我にかえったオーディエンスは、あらためて驚嘆を感じながら拍手した。アンコールがあった。1時間半ほどの演奏は終わった。終わって帰ろうかと思ったら、松村正人が入ってきた。

 マーク・マッガイアの前に演奏した青葉市子も素晴らしかった。彼女の静かな演奏においては、カウンターバーのあたりのお喋りがライヴ中に延々とステージ前方にまで聞こえていたので、いっしょに来た友人は少々不満を感じているようだったが、そこはまあ、ジョン・ケイジではないが、そうした周囲の雑音もまた音楽(ライヴ)のいち部ということで受け入れよう。日本のライヴでは、なかば信仰めいた感じで、客個人→ステージという図式が絶対化しているけれど、本来なら客同士の相互関係も同様にあってしかるべきだし(サッカーの試合ではある)、公共の場における猥雑さは全否定すべきではない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライヴ盤など、客のお喋りがその音楽のいち部になっている。
 その晩は、彼女は、ジョン・フェイヒィを彷彿させるテクニックもさることながら、ほとんど喋りなしで、長めの曲を4曲演奏した。それら楽曲は後方のお喋りがステージまで聞こえるほど静かだが、しかし気迫のこもった演奏だった。いちばん可哀想なのは、その目に前に素晴らしい音楽があるというのに、その晩の青葉市子の演奏を聴き逃している喋っていた連中だった。

 先日のグルーパーのライヴは、可能な限り音量を下げることで(空調のノイズよりも低い音量で)、その場の耳すべてを惹きつけた。マーク・マッガイアはスティーヴ・ライヒとインディ・ロックの溝を埋めるかのようなダイナミックな演奏をした。USアンダーグラウンドの新世代では確実に変化が起きている。その正体がこの日本で明かされた数週間だった。多くの若いリスナー、そして未来に関心のある多くのリスナーが集まった。我々は、いま、確実に、音楽の新しい場面に立ち会っている。

 というか、マーク・マッガイアの追加公演決まりました! 今週日曜日(5/20)、場所は新宿SOUPです!!!!! 行けなかった人はこれを見逃さないように! (DJもやるようですよ)
http://ochiaisoup.tumblr.com/#22780951997


 ※ちなみに、まったくの蛇足ながら、メタモルフォーゼのG2Gのライヴもさすがだった。あれはむしろ、ドラムがないことが考えられない音楽だった。

文:野田 努