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interview with !!!

interview with !!!

きみの自由

──チック・チック・チック、インタヴュー

木津 毅    通訳:青木絵美
photos by Piper Ferguson 2015  
Oct 07,2015 UP

!!!
As If [ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]

Warp/ビート

Indie RockTechnoFunkPost-Punk

Amazon

 「きみの自由」──!!!は“フリーダム! ‘15”と題したトラックで、それがいまも生きているのか、聴き手たるあなたに問いかける。俺のではない、きみの自由の話だよ……!!!がそう言うとき、’15の混乱した日本に生きるわたしたちはそれをリアルな重みのある言葉として受け止めずにはいられない。だが、それは座って考え込ませるためではなく、踊るための音楽として表現される。

 ニューヨークのDIYなクラブの危機に瀕してダンスの自由を訴えた“ミー・アンド・ジュリアーニ〜”が2003年。その素朴で率直な反抗心は、日本でのその後の風営法問題に際して有効な参照点ともなった。ただ、そのときの!!!の音はもっとカオティックでギトギトしていた……2007年の『ミス・テイクス』は、その時代のバンドのピークとしてとぐろを巻いたファンク・パーティの様相を示した一作だった。
 かの街の政治が変わったように、!!!も変わった。プロダクションにおいてクラブ・ミュージックをより吸収し、高音、中音、低音と音域を整頓することによってずいぶん洗練されたサウンドを聞かせるようになったのだ。新作『アズ・イフ』ではその成果が存分に発揮されていて、ビートやサウンドの構成などはクラブ・ミュージックの手法を取るものを多くしつつも、もっともポップスとしての機能性を高めたアルバムだと言える。メロディアスでキャッチー。“エヴリー・リトル・ビット・カウンツ”のような清涼感のあるギター・ポップもあれば、“ルーシー・マングージー”のようなウォームなファンク・ポップもある。10年前くらいのバンドの脂ぎった佇まいを思えば、ほとんど別のバンドのようなきらびやかさを湛えるようになっている。彼らの歩みは、アンダーグラウンドのハードコア・パンク・バンドがクラブ・ミュージックとディスコ、R&Bを取り入れることで華やかさやセクシーさを手にしていくものだった。

 だがいっぽうで、!!!は何も変わっていない……そう思わされるアルバムでもある。かつて“パードン・マイ・フリーダム”と言ったように、ここでも自由――リバティではなく、フリーダムだ――への問いを繰り返す。それは政治についてであり、愛についてであり、音楽についてであり、魂の開放についてでもある。そのためにパンクの反抗とディスコの享楽をつなぎ、ダンスの快楽を求めてやまない。 !!!の徴がたしかに刻まれたラスト・トラック、ハイ・テンポでダーティなディスコ・パンクのタイトルは“アイ・フィール・ソー・フリー”である。きみがダンスに忘我するとき、きみはたしかに自由なのだと……!!!はいまも、全力で証明しようとする。


インタヴューに答えてくれたヴォーカルのニック。最高の男。

アルバムを作っている大部分の時間を、テクノやダンス・ミュージックを聴いていたからだと思う。それがおもな影響となったんだ。そういうのを聴いていて、もしかしたらなかには俺たちが10年前くらいに作った音楽に影響されたものもあるかもしれないと思ったしね。

新作『アズ・イフ』聴きました。 !!!史上、もっともきらびやかでセクシーなアルバムになったかと思うのですが、バンドの手ごたえはどうですか?

ニック・オファー:アルバムを完成させた後は、完成したことが信じられない気分だ。新しいアルバムを作る前は、この先がどうなるかわからない、2年後にどんなサウンドになるのか全くわからない状態。まるで、山のふもとに立って山を見上げているけれど、その頂上は雲に隠れて見えないように。だから、頂上にやっと立てたとき――アルバムが完成したときは最高の気分だよ。

とくにアルバム前半や、後半でも“ファンク(アイ・ゴット・ディス)”に顕著ですが、本作はテクノの方法論で組み立てられたトラックが目立ちます。その直接的な要因は何でしょう?

ニック:アルバムを作っている大部分の時間を、テクノやダンス・ミュージックを聴いていたからだと思う。それがおもな影響となったんだ。そういうのを聴いていて、もしかしたらなかには俺たちが10年前くらいに作った音楽に影響されたものもあるかもしれないと思ったしね。音楽の系列を辿っていくと俺たちが現時点でそういうものに影響を受けるのは自然なことだと思う。それに、テクノやダンス・ミュージックを聴いているとワクワクするからという単純な理由もある。テクノやダンス・ミュージックにおける変化を俺たちの音楽にも応用したらエキサイティングなものになるんじゃないかと思った。

前作『スリラー』ではジム・イーノをプロデュースに迎え、プロダクションの洗練を進めた作品でしたが、本作もサウンドが非常に整頓されています。ほぼセルフ・プロデュースだったそうですが、本作におけるサウンド・プロダクションのポイントはどこにありましたか?

ニック:今回は俺たちと、パトリック・フォードでプロデュースのほとんどをやった。それはまったく偶然で、他にやってくれる人がいなかったから。プロダクションに関しては、かなり手探りでやったというか、自分たちができることをやってみたり、いろいろなアイデアを投げ合ったりした。そして荒削り(raw)な感じにしようとしたんだ。俺たちは、「パンク」なバンドとして期待されている。しかし実際のところ、俺たちは「パンク」というスタイルの音楽にはあまり興味がない。だけどテクニックや手法を荒削りなものにすることによって、パンクな雰囲気やパンクなサウンドができるかと思った。そして90年代初期のハウスのような、パンクで荒削りなものが作れるかと思った。今回もジム・イーノがプロダクションを手掛けてくれた曲はいくつかあって、彼からはたくさんのことを学んだよ。パトリック・フォードからもたくさんのことを学んだ。いろいろな要素をこのアルバムに混ぜ込んでみた。手法にこだわるのではなく、直感的に作っていった。

質問作成・文:木津毅(2015年10月07日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

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