ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. mary in the junkyard - Role Model Hermit | メアリー・イン・ザ・ジャンクヤード
  2. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  3. Seefeel - Sol.Hz | シーフィール
  4. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  5. Oyubi - White birch burns
  6. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  7. GEZAN - I KNOW HOW NOW
  8. Columns Holy Tongue UKダブを更新するバンド、ホーリー・タンの初来日公演
  9. doooo ──立方体のレコード!? 岩手出身のDJ/プロデューサー、ドゥーによるぶっ飛んだ新作がリリース
  10. Simon Reynolds ——レイヴ・カルチャーの本質にあるのは政治性ではない、どれだけぶっ飛べるかだ:サイモン・レイノルズ『未来マニア』刊行のお知らせ
  11. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  12. Columns 7月のジャズ Jazz in July 2026
  13. 下津光史 - @青山 月見ル君想フ  | 踊ってばかりの国
  14. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  15. Kukangendai × odd eyes ──ともに京都を拠点に活動するバンド、空間現代とodd eyesによるスプリット7インチが登場
  16. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  17. 吉岡誠 - 江戸アケミ、四万十川から
  18. Terry Johnson × P-VINE ──湯村輝彦によるロゴをあしらったPヴァインのTシャツが発売
  19. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  20. Aho Ssan - The Sun Turned Black | アホ・サン

Home >  Reviews >  Album Reviews > !!!- R!M!X!S

!!!

!!!

R!M!X!S

Warp / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

Indie RockPost-Punk

!!!

!!!

Thr!!!er

Warp / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

木津 毅   Nov 08,2013 UP

ディスコ・パンクがインになっているような気がする。と思ったのは!!!の今年の新作『スリラー』を聴いたとき……ではなく、じつを言うとファクトリー・フロアのシングルおよびそれに続くアルバムを聴いたときだが、FFがハウス全盛のUKのなかでもひときわ異彩を放っているのは、それを「パンク」とどうしても呼びたくなる乾いた攻撃性によるものだろう。10年ほど前、NYを中心としてそれをディスコやハウスの色気と繋いだのがディスコ・パンクだった。アーケイド・ファイアの新作における“リフレクター”でジェームズ・マーフィがサウンドに関与した途端、バンドにそれまでなかったセクシーさが導入されていたのはその成果であり、また、再びその時代がやってきたような予感がさせられるものである。かつてのディスコ・パンクを定義したトラックのひとつ、!!!の傑作シングル“ミー・アンド・ジュリアーニ・ダウン・バイ・ザ・スクール・ヤード(ア・トゥルー・ストーリー)”からすでに、10年経っているのだ。サイクルが一周したとしても不思議ではない。今年の〈エレクトラグライド〉にファクトリー・フロアと!!!が出演するのは、なかなか象徴的な出来事だと思う。

 とはいえ現在!!!がいる場所は、かつてと同じではない。僕のフェイヴァリット・アルバムはいまでも2007年のジャム・ファンク作『ミス・テイクス』だが、その当時の彼らの魅力であったハードコア・バンド出身ならではの汗臭さや暑苦しさを彼ら自身がかなぐり捨て、スタジオ・バンドとして洗練されたダンス・トラックを制作することを目標としたのが『スリラー』だった。アルバム・タイトルにもあるようにマイケル・ジャクソン的なR&Bの要素が注入され、その代表と言えるトラック“ワン・ボーイ/ワン・ガール”を聴いて浮かぶのは地下のライヴ・ハウスに集まる男連中の姿ではなく、ステージ上で衣装を着たファンク・バンドである。いわば、ディスコ・パンクにおけるディスコの部分を研ぎ澄ましていった過程が見える。ただいっぽうで、パンクの部分がやや見えにくくなったことが寂しく感じられもした。
 だが、その“ワン・ボーイ/ワン・ガール”をハウス・ミュージックの大物モーリス・フルトンがリミックスしたヴァージョンを聴けば、!!!が試みたことのさらなる成果が感じられる。音数を絞ったなかでブリブリ響く太いベースと軽快に鳴らされるパーカッション。サウンドが整頓されたことによる、これほど効果的なグルーヴはかつての!!!にはなかったものだ。ダンス・バンドとしての!!!の楽曲の快楽性が引き出されている。
 『R!M!X!S』は『スリラー』期のトラックのリミックスがまとめられた編集盤だが、総じてクラブ・ミュージックとして調理されており、逆流して『スリラー』のダンス・トラック集としての出来栄えの良さを証明しているように思える。ディープ・ハウス・トラックがヒットしたアンソニー・ナプレスによる“カリフォルニイェー”のミニマル・テクノ・ヴァージョンなどは、下手したら原曲以上にパンキッシュで格好いいし、〈100%シルク〉からのリリースで知られるアレックス・バーカットによる“スライド”はハードなテクノ・トラックとして否が応でも身体を揺らすだろう。面白いのはパトリック・フォードがトラックを手がけ、メイン・アトラクションズがラップする“カリフォルニイェー”で、このスクリュー感はもはやクラウド・ラップのそれである。

 かつて!!!はパーティやダンスに対する執着を“ミー・アンド・ジュリアーニ~”で「なぜだが分からないが、その魅力に抗えないもの」として表現していた。それは、ディスコやハウスに憧れたパンク・バンドによる素朴な愛の表明だったろう。が、それから10年が経ち、バンドはよくコントロールされたダンス・ミュージックを提供して、ひとを踊らせることに完全に奉仕している。それはパーティ・バンドとしての覚悟である。