Home > Interviews > interview with Gonjasufi - 汚いこと/ソウルであること
どの曲にも同じアプローチで望んだし、同じ感情が込められていると思う。俺のソウルが込められているんだ。それがブルースってもんだろ? そのソウルは、“ファック・ユー”でもあるし、“アイ・ラヴ・ユー”でもある。そのふたつは紙一重だからな。
Gonjasufi Callus Warp / ビート |
■あなたは、スーフィーやトルコなど、中東文化を取り入れるのも早かったと思うのですが、今日の音楽の世界では、わりとそれはひとつのトレンドにもなっています。苛立ちはありますか?
ゴンジャスフィ:いいことだと思うぜ。知られることで音楽も広がるし、受け入れられるのはいいことだと思う。
通訳:トレンドを追うこともありますか?
ゴンジャスフィ:いや、きらいだな。君はどう?
通訳:私はたまにのってしまいますね。
ゴンジャスフィ:いまは何の流行にのってるんだい?
通訳:グリーンスムージーとか(笑)?
ゴンジャスフィ:ははは! 出た! 俺はパープルじゃないと飲まないね(笑)。ベリーが入ってるから美味しいんだ。グリーンは激マズ。ファック・ノーだな。マジで無理(笑)。芝生なんて入れやがってさ。とくに胃が空っぽの時は無理だな(笑)。
■政治的に言えば、今日ではイスラムへの偏見はさらに増しています。そうした偏見への怒りは、今回の作品の主題にはありますか?
ゴンジャスフィ:そうだな……もちろんそれがテーマになっているものもあるし、すべての曲に入っている。“Maniac Depressant”は、宗教や人種に関しての怒りが歌っているし、“Krishna Punk”も、人びとの関係について歌っている。アメリカ全体の問題がこのアルバムではテーマになっているんだ。
■“Krishna Punk”は曲調も一風変わっててユニークですが、歌詞には、たとえばなにが綴られているのでしょうか?
ゴンジャスフィ:この曲では、“組織”についてが歌われているんだ。歌詞を思い出してみるから待ってくれよ。「共同体を崩し……世界を救え。組織を消して、テレビをなくせ。そうすれば自由になれる」そんな感じだな。俺たちが組み立ててきてしまったものを崩せ、みたいな内容。フリースタイルさ。俺にとっては、フリースタイルで歌う方が簡単なんだ。昔からやってきたからな。サンディエゴやLAのアンダーグラウンドは皆そうなんだよ。
■『カルス』というタイトルは、どこから来たのでしょうか? そこにはどんなメッセージが込められていますか?
ゴンジャスフィ:自分の心臓の周りにスペースを作っているんだ。世界からの攻撃から自分を守っているのさ。俺というより、世界が俺の心に“たこ”を作った。でもそれは美しいことでもある。純粋なものをを守ることが出来るからね。俺は、敵を近くに置いたりはしない。近くに置くのは家族だけ。同時に、俺は悪から逃げることもしないんだ。それよりも、向こうが目を背けるまでじっと見ていたい。あと、悪というのは男のエナジーだと最近気づいたんだ。神は女性のエナジー。男は命令して何かをさせようとするけど、女は全体を見てバランスをとろうとする。男にはマッチョなエゴがあるんだ。神は男という考え方は、捨てるべきだね。
■“Your Maker”や“Prints Of Sin”のようにヒップホップ・トラックを発展させたような曲もありますが、今回の作品のなかにフライロー周辺からの影響はありますか?
ゴンジャスフィ:ないね。彼と俺の音楽に近いものは何もない。でも、彼自身のことは大好きだけどな。彼は俺の人生を変えたし、借りがたくさんあるんだ。まわりの奴らが俺にビビっていたときも、スティーヴ(フライロー)は温かく接してくれた。サウンドの影響はないけれど、やりたいことをやるという彼の姿勢には確実に影響を受けているね。彼も繊細だし、俺も繊細。人生短いんだから、大胆にいかないと。人間皆繊細だし、自信もない。でも、その氷を崩していかないといけないんだよ。
■前回の取材で、「ジミは世界いち最高にクレイジーなマザー・ファッカー野郎さ」とあなたは話してくれましたが、とくに今回はその影響が強いと思いますか?
ゴンジャスフィ:ジミは前ほどは聴いていない。でも、俺は彼の演奏を見てから、演奏と歌をすぐにはじめたんだ。彼はいまだに大きく影響を受けているし、彼のあの特有のリズムとあのリズムと同時に歌うことが出来る才能は、本当に素晴らしいと思う。あれは、やろうと思うとすごく大変なんだ。あの時代にそれをやったのもすごいし、しかも左利きでもある。あれは神だな。彼とマイルズ・デイヴィスとプリンスの3人はそう。デイヴィッド・ボウイもそうだな。
■あなたがジミ・ヘンドリックスのアルバムでいちばん好きなのは、『Axis: Bold As Love』ですか?
ゴンジャスフィ:そうだな……『Axis: Bold As Love』だと思う。
通訳:それは何故?
ゴンジャスフィ:わからないけど、俺が聴いてきた経験でそう思うんだ。この質問はいままで聴かれたことがなかったから、すぐにはわからない。ジミ・ソングだったら、“Voodoo Child”だな。
■前作のときと違って、現在カリフォルニアでは大麻は合法です。こうした状況の変化は新作にどのように関係していますでしょうか?
ゴンジャスフィ:もちろん制作中は吸ってたさ。体調も崩していたから、薬としても使っていた。でも、いまは吸ってないんだ。半年は吸ってないね。1、2年やめようと思ってる。実は、『A Sufi and a Killer』のときはほぼ吸ってなかったんだ。今回は、スロー・ソングのときはだいたい吸ってた。でも、いまは酒も飲まないし、飲むとしてもビール6缶を3ヶ月で飲み終わる程度。酒を飲むとリカバリーに時間がかかるし、身体が拒否するんだ。サンディエゴに帰ったときに一杯飲んだりはするけど、それも5ヶ月に1回とかだしな。ワインも好きだけど、カミさんが妊娠してるし、いまは飲んでない。俺、長生きしたいんだよ(笑)。いまは子供がいるしな。子供が産まれるまでは、40歳くらいまで生きれればいいと思ってたけど、いまは80歳まで生きないと(笑)。60歳になって腹が出て、シワだらけになったとしても、俺はシャツを脱いで上半身を見せるぜ(笑)。女がどう思うかなんてどうでもいい。じゃなきゃ、いまだってヒゲをはやしてはいないしな。ないほうがハンサムって言われてるんだ(笑)。でも、カミさんはありのままの俺を愛してくれているからそれでいいのさ。
■あなたはヨガのインストラクターですが、多くの人はヨガをやるべきだと思いますか?
ゴンジャスフィ:全員やるべきだ。それに、子供や身体障害者、病人たちにはタダで教えるべきだと思うね。学校のカリキュラムやリハビリ、刑務所のプログラムに取り入れるべきだと思う。俺の娘もやってるし、平和な気持ちを得るには必要なものだと思うから。週3~5回はやりたいね。このレコードの売上金で、ジョシュア・ツリーにヨガ・スタジオを作ろうと思って。ただし俺は、ヨガで金もうけしようとは思わない。ただ、ヨガを広げたいだけなんだ。
■いま世界は転換期を迎えていますが、このような時代に、「ぼくたちに何ができる」と思いますか?
ゴンジャスフィ:ヨガさ(笑)。インターネットとテレビを消して、自然に注目すること。人に合わせるんじゃなくて、自分自身を持ち、自分が受けた恩恵をまた別の人に送り、親切の輪を広げていくことだね。世界や周りを変えるより、まず自分を変えればいい。皆がそれに集中すれば、世界なんてすぐに変わるさ。
通訳:ありがとうございました!
ゴンジャスフィ:ありがとう。またな。
質問:野田努(2016年8月23日)
12 |