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interview with Jeff Paker

interview with Jeff Paker

話題作『The New Breed』のメンバーとの来日ライヴ直前スペシャル

──ジェフ・パーカー、インタヴュー

取材・文:柳樂光隆/写真:かくたみほ    Aug 07,2017 UP

傑作アルバム『The New Breed』のリリースで、トータスのメンバーやジャズ・ギタリストとしてだけでなく、ソロ・アーティストとして大きな飛躍を見せたジェフ・パーカー。そのジェフが『The New Breed』のレコーディング・メンバーを率いて、初のリーダー・バンドでの来日を果たす。この来日を記念して、5月にタワーレコード渋谷店で行われた公開インタビューの模様をお送りする。インタヴュアーは、Jazz the new Chapterの柳樂光隆。

 2017年の5月、スコット・アメンドラ・バンド/トータスの一員として来日したジェフ・パーカーがタワーレコード渋谷店でトークショー&ライブを行った。世界中で高い評価を受けた2016年リリースの『The New Breed』はジェフが持っていたヒップホップやソウルやファンクへの愛情を惜しみなくさらけ出していただけでなく、これまではなかなかその本音を見せてくれなかったジャズ・ギタリストとしての自分を素直に表現しているアルバムでもあった。そんな作品のリリースに際しての公開インタヴューということで、ヒップホップとジャズ・ギターのふたつのトピックを中心にジェフ・パーカーとはどういうミュージシャンなのかを探るような話を振ってみた。東京でのオフにはレコードショップを回っていたというレコードショップ好きのジェフはたくさんのレコードやCDに囲まれたなかで、様々なアーティストの名前を出しながら、実に饒舌に自身に影響を与えた音楽について語ってくれた。

僕はものすごいヒップホップのファンなんだ。このアルバムではヒップホップとジャズの関係性を探りたかった。僕はジャズのフィーリングを持ったヒップホップのレコードだったり、ヒップホップのフィーリングを持ったレコードを作りたいとずっと思っていたしね。ヒップホップはプロデューサーの音楽で、もっと言えばプロダクションの音楽だ。ヒップホップっていうのは、音楽を再構築していくような音楽なんだ。それをジャズと一緒に表現したかったんだ。


Jeff Paker
The New Breed

International Anthem Recording Company / HEADZ

JazzExperimentalPost Rock

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Isotope 217°
The Unstable Molecule

Thrill Jockey / HEADZ

JazzExperimentalPost Rock

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東京ではレコードショップを回ってアナログを買ったそうですね

JP(ジェフ・パーカー):そうだね。普段はジャズのレコードをよく買うんだけど、たまにアフリカ音楽のレコードも買ったりするよ。

今回買ったもので特に気になったものは

JP:ドラマーのポール・ハンフリーのレコードを買ったね。あとはあまり名前は憶えていないんだ。前はすごくたくさん買っていて、しばらく落ち着いていた期間が続いていたんだけど、最近、また買うようになったんだよね。

あなたのアルバム『The New Breed』の話を聞いてもいいですか? どういうコンセプトでどういうきっかけで作りはじめたんですか?

JP:僕はものすごいヒップホップのファンなんだ。このアルバムではヒップホップとジャズの関係性を探りたかった。僕はジャズのフィーリングを持ったヒップホップのレコードだったり、ヒップホップのフィーリングを持ったレコードを作りたいとずっと思っていたしね。ヒップホップはプロデューサーの音楽で、もっと言えばプロダクションの音楽だ。ヒップホップっていうのは、音楽を再構築していくような音楽なんだ。それをジャズと一緒に表現したかったんだ。音楽のローエンドや、ファンクのドラムサウンドとか、そういうところに意識を持っていくような音楽にしたいと思って作ったよ。このアイデア自体は10年間くらい持ちづけていたもので、ようやく実現できたのがこのアルバムなんだ。

ヒップホップだとどういうものがお好きですか。

JP:プロデューサーだと、DJプレミア、Jディラ、Qティップ、NY、イーストコースト・サウンドのクラシックスが好きなんだ。あまり追えてないんだけど、いまのヒップホップでも好きなものはあって、ケンドリック・ラマ―の『DAMN』は素晴らしいしね、前作の『To Pimp A Butterfly』も最高だったよ

『The New Breed』ではJディラの『Donuts』にも参加したエンジニアのデイブ・クーリーを起用してますよね

JP:そうだね、マスタリング・エンジニアは同じ人だね。僕はマッドリブの大ファンでもあるから、彼が〈ストーンズ・スロウ〉のレコードをいくつも手掛けていたことは大きいね。マドリビアンの『Madvillainy』とかね。僕はいま、LAに住んでいて、彼もLAに住んでいるから、マスタリングってなったときに彼のことしか思い浮かばなかったんだよね。彼もそのオファーを喜んでくれたしね、彼は僕が関わってきたシカゴ・アンダーグラウンドのことも好きだったみたいなんだ。あと彼はミッドウエストの出身でね、僕らには共通点が多かったし、シェアできることも多かった。だから、マスタリングの作業はすごくうまくいったよ。

以前、トータスのアルバムでもJディラ的なビートを取り入れていたと思うんですけど、『The New Breed』はそのころとはまた違ったヒップホップのフィーリングがあったような気がしますね。

JP:トータスはバンドなので、メンバー全員が持っているさまざまな音楽からの影響が反映されるからね。それをまとめてひとつにまとめることでトータスのサウンドが出来上がるんだ。もちろん、そのなかにJディラの影響も含まれているよ。前作『Beacons of Ancestorship』のころには、みんながJディラにはまっていたから、そのなかにはディラの影響がものすごく強い曲も収録されているよ。ディラはパワフルで、彼にしかできない音楽を作っていた。その彼の音楽が持っていたフィーリングを自分の音楽に取り入れようとしていた音楽家は世界中にものすごくたくさんいた。トータスのその一つと言えるよね。僕もディラの音楽の大ファンだから、僕の作品にはその要素は当然入ってくる。でも、それと同時に他のヒップホップのフィーリングが入っていることを感じ取ってもらえたらすごくうれしいね。

僕はジャズ・ギターに関してはトラディショナルなプレイヤーを聴いたり研究していたし、もっと現代的なプレイヤーもたくさん聴いたりしていたから、そういうスタイルのプレイをしていたんだ。例えば、ジョン・スコフィールドやパット・メセニーやビル・フリゼールのようなね。でも、オルガン奏者と仕事をするようになってから、ケニー・バレルやグラント・グリーンも聴くようになったんだ。

『The New Breed』ではドラマーがジャマイア・ウィリアムスだったと思うんですけど、彼と一緒にやるようになったきっかけは?

JP:彼と一緒にやるようになったきっかけはヴィオラ奏者でアレンジャーのミゲル・アトウッド・ファーガソンなんだ。それから仲良くなって、いろんなことを話すようになったよ。彼と演奏した時にすごく自然に演奏できたように感じたんだ。ベーシストのボール・ブライアン、サックス奏者のジョシュ・ジョンソンとジャマイア・ウィリアムスとの僕のバンドは、最初はからすごくいいケミストリーを感じていたから、彼らのことを想定しながら曲を書くこともできた。ちなみにジャマイアのバンドに僕が入ったこともあって、そのときはシンセを弾いたんだけど、そのコラボレーションでも愛称は抜群だったね。

『The New Breed』はプロダクションの部分はすごく大きいと思うんですけど、ライヴではどういう風になりますか?

JP:そんなに難しくないんだよ、ただレイヤーを変えればいいだけなんだ。レコーディングではふたつのシークエンスを流して、その周りに音を加えるように演奏していったんだけど、ライヴでもサンプラーを使って、それに合わせて、バンドが即興演奏のように音を加えていく、そんな形になると思う。ある意味で、トータスに近いやり方ともいえるかもね。最近はテクノロジーもどんどん発達して、いい機材もどんどん出てきているから、そういうものを駆使してやろうと思っているよ。

あと、今日はギタリストのお客さんも多いと思うので、ギターの話も聞かせてもらってもいいですか?海外のインタヴューで高柳昌行の話をされていましたよね。彼のどんなところがお好きですか?

JP:ギターの演奏に限らず、音楽に対してすごく幅広いコンセプトを持っているところが好きなんだ。ノイズギター、フィードバックも素晴らしいし、ジャズからきているラインを弾くこともあるし、スタンダードだって素晴らしい。プロダクションに関しても、いろんな実験をしていた人で、その幅広さが好きなんだ。そういうところは自分のギターとも似ているかもしれないね。

『Like-coping』などのあなたの初期のソロアルバムを聴くと、高柳昌行がレニー・トリスターノの音楽=クールジャズに取り組んでいたころと共通するものを感じるのですが、いかがですか?

JP:いまもトリスターノの音楽は好きだし、彼の音楽がものすごく好きだった時期があって、そのころは研究もしていたんだ。だから、それが反映されているかもしれないね。

ってことは、トリスターノのバンドで演奏していたギタリストのビリー・バウアーもお好きですか?

JP:彼はそんなに好きじゃないね。まあまあいいミュージシャンだけど、ギターに関してはベストじゃないね笑。僕が好きだったのは、リー・コニッツやトリスターノ、ウォーン・マーシュだね。彼らのコンポジション(作曲)が好きだったんだ。ギタリストとしてってことじゃないね。

以前に読んだあなたのインタヴューにグラント・グリーンのことがお好きだって書いてあって、『The New Breed』にはそういうテイストもあるなと納得したんですけど、彼のどういうところがお好きですか?

JP:サウンドだね。ソウルフルなミュージシャンだし。サウンドも美しいよね、とても美しいラインを奏でる。実は以前はそんなにたくさん彼の音楽を聴いていたわけじゃないんだ。でも、ある時、誰かに「君のサウンドはグラント・グリーンに似てるね」って言われたんだよね。それから聴くようになって、すごく好きになったんだ。もともと僕はトラディショナルなギターが好きで、チャーリー・パーカーのフレーズをギターで演奏したりして、そのジャズの共通言語を学んだりしていたんだけど、僕はシカゴに移住してからオルガン奏者のグループで演奏していたことがあった。チャールス・アーランドとかね。僕はジャズ・ギターに関してはトラディショナルなプレイヤーを聴いたり研究していたし、もっと現代的なプレイヤーもたくさん聴いたりしていたから、そういうスタイルのプレイをしていたんだ。例えば、ジョン・スコフィールドやパット・メセニーやビル・フリゼールのようなね。でも、オルガン奏者と仕事をするようになってから、ケニー・バレルやグラント・グリーンも聴くようになったんだ。

他に好きなギタリストがいたら教えてください

JP:まずはジム・ホールだね。すべてが素晴らしいよ。

ジム・ホールはどういうところが特に好きですか?

JP:彼は自分のサウンドを周りのサウンドにフィットさせることがすごくうまいんだ。彼は60年代にアート・ファーマーと一緒に活動していたんだけど、その時に録音された『To Sweden With Love』は僕のフェイバリット・ギター・アルバムだよ。
 さっき名前をあげたアーティストは自分の中の影響の一部なんだ。他に好きなギタリストはたくさんいて、マーク・リボーも好きだし、ジミ・ヘンドリックスも好きだし、ソニー・シャーロックも好き。デレク・ベイリーは僕もフェイバリット・ギタリストだし、ニール・ヤングも好きだね。ブルースのギタリストも好きなんだ、B.B.キングも好きだし、チャーリー・クリスチャンも大好きだよ。きりがないね、学ぼうと思えば素晴らしいギタリストはいくらでもいるんだ、今日来ている皆さんもたくさん聴いて、ギターを研究してもらえたら嬉しいね。

 そのあとのライヴでは、ジェフはソロギターで『Slight Freedom』に収録された楽曲(フランク・オーシャン「Super Rich Kids」カヴァーなど)や即興を演奏してイベントを終え、夜にはこの日、六本木でライブを行っていたヤコブ・ブロのライブに行って、ワンカップの日本酒を片手にヤコブのソロギターのパフォーマンスを興味深そうに見つめていた。ジェフは今でもギターを研究し続けているんだなと思った光景だった。
(了)

■ジェフ・パーカー、『The New Breed』メンバーとの来日公演

 今年5月、コットンクラブでのスコット・アメンドラ・バンドの公演(5/11〜13)に始まり、タワーレコード渋谷店でのソロのインストア(5/14)、トータスのビルボードライブ東京(5/15、5/17)と大阪(5/19)での単独公演、更にはGREENROOM FESTIVAL ‘17の2日目(5/21)の〈GOOD WAVE〉ステージでトリを務めたトータスのメンバーとして、11日間に14公演を行ったジェフ・パーカー。
 
 すでにライヴ会場等では、仮フライヤーで告知されていましたが、ジェフ・パーカーの傑作アルバム『The New Breed』のレコーディング・メンバーを従えての初の単独来日公演が、正式に決定致しました。
日程は、8月14日(月)、15日(火)、16日(水)の三日間で、会場はコットンクラブになります。
 ジェフの他、ベースにポール・ブライアン、サックスにジョシュ・ジョンソン、ドラマーにジャマイア・ウィリアムスを迎えての4人編成での公演となります。

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JEFF PARKER & THE NEW BREED
ジェフ・パーカー & ザ・ニュー・ブリード

2017. 8.14.mon - 8.16.wed
[1st.show] open 5:00pm / start 6:30pm
[2nd.show] open 8:00pm / start 9:00pm

MEMBER
Jeff Parker (g,sampler)
Josh Johnson (sax,key)
Paul Bryan (b,key)
Jamire Williams (ds,sampler)

http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/jeff-parker/

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 ポール・ブライアンは、『The New Breed』にはジェフとともにプロデュースを担当し、録音・ミックスも手掛けています。
ポールはジャズ畑というよりもロック、ポップス系の作品で有名で、エイミー・マンのプロデュース(最新作『Mental Illness』も含め、2006年の『One More Drifter in the Snow,』以来の全アルバムを担当)やミシェル・ンデゲオチェロのツアー・メンバー、アラン・トゥーサンやノラ・ジョーンズの作品にもレコーディング・メンバーとして参加しています。
 ジョシュ・ジョンソンは、エスペランサ・スポルディングやミゲル・アトウッド・ファーガソンとも共演してきており、今回の来日ではサックス以外、キーボードでも参加予定。
ジャマイア・ウィリアムスは、ロバート・グラスパーの高校の後輩でロバート・グラスパー・トリオのメンバーでもあり、先鋭的ジャズ・コレクティヴ、エリマージも率いる新世代ドラマー。
カルロス・ニーニョのプロデュースのソロ・アルバム『///// EFFECTUAL』をLeaving Recordsから(日本盤もP-VINEより)リリースしたばかりで、日本でも注目度は高まっています。

 3月にはNY、4月にはヨーロッパで開催され、絶賛されたこの『The New Breed』のレコーディング・メンバーとのスペシャル・ライヴ「JEFF PARKER & THE NEW BREED」が日本でも開催されます。この貴重なチャンスを是非お見逃しなく。

取材・文:柳樂光隆/写真:かくたみほ(2017年8月07日)

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