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interview with Fieh (Sofie Tollefsbøl)

interview with Fieh (Sofie Tollefsbøl)

北欧インディ・ポップの新星

──フィア、インタヴュー

質問・文:小川充    翻訳:水島健人   Mar 04,2022 UP

この曲ではかなりファンカデリックからの影響を受けているよ。この曲を作るとき私はドラマーのオラにファンカデリックのグルーヴがほしいよ! って注文したら彼がやってくれた。というかあなたがこの曲を聴いて感じてくれたみたいだけど、実際に私たちはこの曲の後半の部分を「フライロー」(フライング・ロータスの愛称)って呼んでた(笑)。かなり的確ね(笑)。

新作の『In The Sun In The Rain』について話を伺います。先ほど話に出たようにジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーンヴェットがプロデュースを務めていますが、彼はどのようないきさつで参加することになったのですか?

ソフィー:このアルバムにはプロデューサーが必要だと感じていて、みんなラーシュは素晴らしいアイデアを幾つも持った凄腕プロデューサーだと知っていた。私たちのなかにラーシュと知り合いだったメンバーはいなかったけど、それでも思い切ってお願いしたんだ。

エンジニアにはディアンジェロやザ・ルーツを手掛けたラッセル・エルヴァドを迎えています。それでネオ・ソウル色が強まるのかと思いきや、逆にそうしたテイストは後退し、“ルーフトップ” や “ファスト・フード” あたりに顕著なインディ・ポップやシンセ・ポップといった要素が出てきたり、音楽的には前作と比べて非常にカラフルでヴァラエティに富む内容になっていると思います。前作からバンドの中で何か変化があったのでしょうか?

ソフィー:そうね、このアルバムはデビュー・アルバムとは全然違う方法で制作した。デビュー・アルバムではもともとの持ち曲がライヴやセッションをしているうちにどんどんと進化していったって感じだけど、今回はちょっと違っていて、アルバム全体としてのサウンドを作ることがとても重要だった。だから「カラフル」って言ってもらえてとても嬉しい。カラフルにするってことは私たちが今作で狙ったポイントだからね。私のライティングにおいても、いままでとはちょっと違ってインディ・ポップからも影響を受けたと思う。たとえばビョークやケイト・ブッシュとかね。後はラーシュがストリングス・アレンジでいままでの作品よりもオーケストラっぽさを表現してくれたと思う。彼はほかにも少しプログレっぽい要素だったり、ジャガ・ジャジストっぽいフレイヴァーをアルバムに付け加えてくれたと思う。

ひとつの楽曲のなかでも急激なテンポの変化があったり、曲の前半と後半ではまったく印象が変わったりとか、自由で先の読めない展開は先も比較したハイエイタス・カイヨーテを思い起こさせます。ジャガ・ジャジストもそうですが、彼らのパフォーマンスはオペラのようにシアトリカルでイマジネーションを掻き立てます。『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』の方向性も彼らに通じるものを感じさせますが、いかがでしょうか?

ソフィー:気づいてくれてありがとう! いま言及してくれた自由で先が読めない展開は私も曲を作る上でとても意識したことだし、バンドでもたくさん話し合ったことで。楽曲を分割したときに、後半のパートに進むと完全に違う新世界に突入できるような感覚にしたかったのよね。代表的な例をあげるとフランク・オーシャンの “ピラミッズ” とかかな。あの曲の変調の仕方と完全にふたつの別のパートが一曲のなかで混合している感じがめちゃくちゃ最高で。この曲がリリースされたとき(2012年)にバンドのみんなと一緒に聴いたのを覚えているんだけど、めちゃくちゃ衝撃的だった。全然予想もしていなかった、見知らぬ場所で突然に旅がはじまる感じね。だからあなたが私たちの音楽を聴いて、同じことを感じてくれたのが嬉しい!

“グレンデヒューズ・ファンカデリック(Grendehus Funkadelic)” は何かファンカデリックと関係あるのでしょうか? 楽曲自体はディスコ・テイストのポップ・ロックでパーティー・キッズたちを歌った曲なのですが、中盤以降のスペース・オペラ調の展開はPファンク的かなとも思います。Pファンクもそうですし、フライング・ロータスサンダーキャット、〈ブレインフィーダー〉とも契約したハイエイタス・カイヨーテの感性に非常に近いものを感じました。

ソフィー:うん、この曲ではかなりファンカデリックからの影響を受けているよ。この曲を作るとき私はドラマーのオラにファンカデリックのグルーヴがほしいよ! って注文したら彼がやってくれた。というかあなたがこの曲を聴いて感じてくれたみたいだけど、実際に私たちはこの曲の後半の部分を「フライロー」(フライング・ロータスの愛称)って呼んでた(笑)。かなり的確ね(笑)。もともとこの曲の前半と後半はそれぞれ別の曲として制作していたんだけど、プロデューサーのラーシュがこのふたつのパートを繋げてひとつの楽曲にしたら? って提案してくれて。

『ヴードゥー』は私が最初にネオ・ソウルにハマったアルバムで。フィアは『ヴードゥー』を私たちなりの解釈で表現するためにスタートしたって部分もある。サウンド、ベース・ライン、ドラム、ヴォーカル、とにかくすべての部分で影響を受けていることは間違いない。本当に私にとって世界一好きなアルバム。

“オール・ザ・タイム・イヴン・ホエン(Allthetimeevenwhen)” はドリーミーでサイケ・ポップ的な雰囲気を持つ曲です。そして “ヒーロー” でもそうですが、ストリングスやオーケストレーションの使い方などアルトゥール・ヴェロカイのテイストを感じさせます。彼から影響はあったりするのでしょうか?

ソフィー:正直に言うと私はアルトゥール・ヴェロカイのことは、ハイエイタス・カイヨーテが昨年のアルバム『ムード・ヴァリアント』で彼とコラボするまで知らなかった。でも、ストリングスのアレンジをしているラーシュはずっと前からヴェロカイの音楽を聴いてたみたいね。

“イングリッシュマン” はラテン・フレーヴァーの曲でディアンジェロの『ヴードゥー』っぽいムードを持つのですが、サビのフレーズでは素晴らしいハーモニーやコーラスを聴かせてくれます。ネオ・ソウルからザ・ビートルズやザ・ビーチ・ボーイズなど幅広い影響を感じさせる曲だと思うのですが、いかがでしょう?

ソフィー:ありがとう! 『ヴードゥー』は私が最初にネオ・ソウルにハマったアルバムで。実際にフィアは『ヴードゥー』を私たちなりの解釈で表現するためにスタートしたって部分もある。だからサウンド、ベース・ライン、ドラム、ヴォーカル、とにかくすべての部分で影響を受けていることは間違いない。本当に私にとって世界一好きなアルバムだから。後はデヴィッド・ボウイをよく聴いていたときに思いついたコードも “ルーフトップ” に入っている。オリジナルはもっとシンセが使われているけどね。確かに私たちの音楽は少しビートルズを感じさせる部分もあるかもしれないし、サイケ的な要素も少し感じるよね。あなたが言っている通り、このアルバムはソウルやヒップホップからビートルズやビーチ・ボーイズのようなロックやポップスまでを参照して作られたアルバムで、全部がミックスされていると思う。

“ハウカム?” は1960年代、1970年代のムードを感じさせる曲ですが、この曲に見られるようにリズム・プロダクションはとても生々しくて力強いのが『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』の特徴かなと思います。その点はラッセル・エルヴァドの手腕でしょうか?

ソフィー:理由はいくつかあると思う。ひとつはアレンジの部分ね。この作品はあまりシンセやドラムにトリガーを使ってないから、それが60~70年代のサウンドに近づける要素になったんだと思う。後はやっぱりラッセルのミックスは本当にサウンドにとっては重要だった。彼はアナログ・ミックスをしてくれたんだけど、彼にしか出せないフレイヴァーやムードをまるでサウンドに命を吹き込むように与えてくれる。あと私たちは彼にたくさんの参考音源を送ったのもあるかもね。その中の多くの曲が60年代、70年代の楽曲だったしね。スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンとか。

『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』はさまざまな楽曲がありながら、全体的にはバランスの取れたムードで統一されたアルバムだと思います。アルバム全体で何かコンセプトやストーリーはあったりするのですか?

ソフィー:今回のアルバムでは制作する前からアルバム全体としてどんなサウンドにしたいのかっていうのがあったし、何よりもこのアルバムにしか出せない音っていうのを目指したかった。それが私のなかだとディアンジェロの『ヴードゥー』、ケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』、フランク・オーシャンの『チャンネル・オレンジ』のようなアルバムなんだけど。作りはじめてしばらくしてからアルバムをA面の『イン・ザ・サン』、B面の『イン・ザ・レイン』に分けるコンセプトのアイデアが出たんだ。『イン・ザ・サン』はアップテンポな曲を多く入れたパーティー感のあるもの、『イン・ザ・レイン』はスロー・テンポでメロウでオーケストラ要素が強い楽曲を入れて、アフター・パーティーをイメージした感じかな。

今後の活動予定や新たな取り組みがあれば教えてください。

ソフィー:今冬ちょうどサード・アルバムの制作に取り掛かっているところ。クールなアルバムになると思う! あとは、テキサスのSXSWとニューヨークの「ニュー・コロッサス・フェス」にも出演することが決まってて。今年はもう待ちに待ったツアーをたくさんできることを祈ってる!

質問・文:小川充(2022年3月04日)

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Profile

小川充 小川充/Mitsuru Ogawa
輸入レコード・ショップのバイヤーを経た後、ジャズとクラブ・ミュージックを中心とした音楽ライターとして雑誌のコラムやインタヴュー記事、CDのライナーノート などを執筆。著書に『JAZZ NEXT STANDARD』、同シリーズの『スピリチュアル・ジャズ』『ハード・バップ&モード』『フュージョン/クロスオーヴァー』、『クラブ・ミュージック名盤400』(以上、リットー・ミュージック社刊)がある。『ESSENTIAL BLUE – Modern Luxury』(Blue Note)、『Shapes Japan: Sun』(Tru Thoughts / Beat)、『King of JP Jazz』(Wax Poetics / King)、『Jazz Next Beat / Transition』(Ultra Vybe)などコンピの監修、USENの『I-35 CLUB JAZZ』チャンネルの選曲も手掛ける。2015年5月には1980年代から現代にいたるまでのクラブ・ジャズの軌跡を追った総カタログ、『CLUB JAZZ definitive 1984 - 2015』をele-king booksから刊行。

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