「UR」と一致するもの

Teki Latex & Nick Dwyer - ele-king

 これはおもしろい企画だ。かつて〈Big Dada〉から作品を発表していたパリのヒップホップ・アクト、テーテーセー(TTC)のメンバーでもあるテキ・ラテックスと、日本のゲーム音楽に迫ったドキュメンタリー『Diggin in the Carts』の仕掛け人たるニック・ドワイヤー、このふたりによるなんともエキサイティングなミックステープ『テキとニックのミックステープクエスト大冒険』が公開されている。
 ヒップホップやベース・ミュージックとゲーム音楽とを接続することがテーマのようで、『クロノ・トリガー』や『FF』、『ベア・ナックル』や『ポケモン』といった有名タイトルの音楽に、ミーゴスやアウトキャストなどのアカペラ、ディジー・ラスカルや(オーケーザープとのコラボも記憶に新しい)南アフリカはダーバンのDJラグらのトラックがミックスされている(水カンの “桃太郎” も鳴っていますね)(いまのケンモチヒデフミのゴム・モードともつながる?)。
 注目すべきは、今回のミックステープのために提供されたエクスクルーシヴなトラックたちで、コード9が『飛装騎兵カイザード』(ガブリンサウンド)を、アイコニカが『ソニック』(中村正人)を、マムダンスが『アクトレイザー』(古代祐三)を、そして食品まつり a.k.a フードマンが『FFVI』(植松伸夫)をリミックスしている。グライムMCの Jammz やシシヤマザキも参加。なおオフィシャル・ページではコード9やフードマンのステキなキャラ絵まで公開されているので、そちらもチェック。

https://teknic.mx/?fbclid=IwAR21mVIAgzbySClZICa2cu2B0NP8SqPWrR0XxSvguidqCqG5BCCKHfOo-Xw

Squarepusher - ele-king

 仕事が早い! 5年ぶりの最新アルバム『Be Up A Hello』を送り出したばかりのスクエアプッシャーが、なんと、もう新作をリリースする。タイトルは「Lamental EP」で、3月20日に日本先行発売。アルバム収録曲の別ヴァージョンやアウトテイクに加え、2016年に発表された静かな炎 “MIDI Sans Frontières” およびそのリミックス・ヴァージョンも収録されるとのこと。
 また同時に、いよいよ1ヶ月に迫った来日公演のサポート・アクトも発表された。“Terminal Slam” の強烈なMVを手がけていた真鍋大度である。これは相性バツグンでしょう。とうわけで、新作EPをチェックしつつ、過去のスクエアプッシャーの代表作も復習しながら、4月の来日にそなえておこう。

⇨ スクエアプッシャーの最新インタヴューはこちらから。
⇨ 必聴盤9枚でたどるスクエアプッシャーの歴史はこちらから。

最新アルバム『Be Up A Hello』が賞賛を集める中、
早くも新作「Lamental EP」のリリースを発表!
EU離脱に対する怒りとして発表した “MIDI Sans Frontières” の
セルフリミックス・バージョンを公開!
いよいよ来月に迫った来日ツアーでは、
MVを手がけた真鍋大度の出演が決定!

5年ぶりの最新アルバム『Be Up A Hello』が、オリコン洋楽チャート10位に初登場し、UKとUSで過去最高チャートを記録するなど、賞賛を集めているスクエアプッシャーが、早くも新作「Lamental EP」を完成させた。来日公演を直前に控えた3月20日に日本先行でリリースされる。

今作にはアルバム収録曲 “Detroit People Mover” の別バージョンでもある、スペーシーで躍動感溢れるテクノ・トラック “The Paris Track” と、アルバム・バージョンの “Detroit People Mover”、そしてアルバムからのアウトテイクで、スクエアプッシャーのメランコリックでメロディアスな面を打ち出した “Les Mains Dansent”、また2016年にイギリスのEU離脱を問うた国民投票の結果に対する抗議の意思として発表した “MIDI Sans Frontières” と、そのセルフリミックス・バージョン “Midi Sans Frontieres (Avec Batterie)” の5曲が収録される。12インチ盤には、“Les Mains Dansent” を除いた4曲が収録される。

Midi Sans Frontieres (Avec Batterie)
https://youtu.be/X_k2lih0T6U

また今回の発表に合わせ、各国で予定されているヘッドラインツアーのサポートアクトが発表された。日本では、超近未来の東京を舞台にした破壊的映像が話題となっている “Terminal Slam” のミュージックビデオを手がけた真鍋大度(Rhizomatiks)の出演が決定! 名古屋、大阪、東京の全公演でサポートアクトを務める。

Terminal Slam (Official Video)
https://youtu.be/GlhV-OKHecI

なお、ミュージックビデオの制作の裏側を明かす特設ページが現在公開中。
https://research.rhizomatiks.com/s/works/squarepusher/

『Be Up A Hello』に続く新作「Lamental EP」は、3月20日(金)に日本先行リリース。

待望の来日ツアーに真鍋大度の出演も決定!
前売りチケットは絶賛発売中!

SQUAREPUSHER JAPAN TOUR 2020
SUPPORT ACT: DAITO MANABE

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※ 未就学児童入場不可

詳細 ⇨ https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
【絶賛発売中】
名古屋: イープラスチケットぴあ (Pコード: 176-074)、LAWSON (Lコード: 42831)、LINE TICKET [https://ticket.line.me]、BEATINK、クアトロ店頭 他
大阪: イープラスチケットぴあ (Pコード: 175-878)、LAWSON (Lコード: 53383)、BEATINK
東京: イープラスチケットぴあ (Pコード: 176-570)、LAWSON (Lコード: 73049)、BEATINK、GAN-BAN店頭 他

label: Warp Records / Beat Records
artist: Squarepusher
title: Lamental EP
release date: 2020.03.20 FRI ON SALE

国内盤CD BRE-59 ¥900+税

BEATINK.COM
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10684

TACKLISTING
01. The Paris Track
02. Detroit People Mover
03. Les Mains Dansent
04. Midi Sans Frontieres (Avec Batterie)
05. Midi Sans Frontieres

label: Warp Records / Beat Records
artist: Squarepusher
title: Be Up A Hello
release date: 2020.01.31 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-624 ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-624T ¥5,500+税

国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入/NTS MIX 音源DLカード封入
(Tシャツセットには限定ボーナストラックDLカードも封入)

各CDショップでの購入特典もチェック!

 Tower Records:四角缶バッヂ

 disk union:丸缶バッヂ

 Amazon:マグネット

 その他CDショップ:ステッカー

Nervelevers (Official Audio)
https://youtu.be/qtSJA_U4W1U

Vortrack (Original Mix)
https://youtu.be/s3kWYsLYuHc

Vortrack (Fracture Remix)
https://youtu.be/59ke5hp-p3E

Squarepusher 9 Essential Albums - ele-king

 もう25年ものキャリアがあって、メイン名義の〈Squarepusher〉のスタジオ作だけでも15枚というアルバムをリリースしているトム・ジェンキンソン。初来日した頃はまだ22歳とかだったので、よくぞここまでいろんな挑戦をしながら自分をアップデートし続けてきたものだと感心する。段々と自分ならではの表現を確立していったミュージシャンならともかく、彼の場合は特に最初のインパクトがものすごかったわけで、正直こんなに長い間最前線で活躍しつづけるとは、当時は予測できなかった。改めて古いものから彼の作品を並べ、順番に聴いてみると、想像以上にあっちゃこっちゃ行きまくって、それでも芯はぶれない彼のアーティストとしての強靱さ、発想のコアみたいなものが見えてくるようだ。
 ここでは、今年1月にリリースされた最新アルバム『Be Up A Hello』に到るまでの重要作9枚を振り返りつつ、スクエアプッシャーという稀代のアーティストのユニークさをいま一度噛みしめてみたい。


Feed Me Weird Things
Rephlex (1996)

 いまでも、〈Warp〉からの「Port Rhombus EP」がどかんと東京の街に紫の爆弾を落とした日のことはよく覚えている。CISCO とか WAVE の棚は全部それに占拠され、“Problem Child” の殺人的にファンキーな高速ブレークビーツと、うねりまくるフレットレス・ベースの奏でる自由奔放なベース・ラインがあまりに新鮮でずっと繰り返し店でも流されていた。そして、実は〈Rephlex〉からコイツのアルバムが出てるぞっていうことで皆がこのデビュー作に飛びついたのだった。当時はそんなに意識しなかったが、本作は〈Rephlex〉にしては随分とアダルトな雰囲気がある。冒頭の “Squarepusher Theme” にしても方法論としてはその後一気に知れ渡る彼の十八番ではあるものの、ギターのカッティングから始まり、ジャジーでどちらかというと生っぽくレイドバックした響きをもったこの曲は、既にトム・ジェンキンソンの幅広い趣味を示唆している。次に非常にメランコリックで、時折打ち鳴らされるブレークビーツ以外はチルウェイヴかというような “Tundra”、さらにレゲエ/ダブに倍速のブレークビーツを合体させたレイヴ・スタイルをジャズ的なリズム解釈で徹底的にこじらせたような “The Swifty” が続くという冒頭の展開がダントツにおもしろいが、内省的で墓場から響いてくるような “Goodnight Jade” “UFO's Over Leytonstone” といった後半の曲も魅力的。


Hard Normal Daddy
Warp (1997)

 そして〈Warp〉から満を持してリリースされたのが、この2作目。ダークな装いだった前作に比べると随分とメロディックになって、明るく飄々とした印象で、トム・ジェンキンソン自身のキャラクターがよりサウンドに解放されたのかなとも思う。勝手な印象論だけど、こういうジョーク混じりみたいなノリは〈Rephlex〉が得意で、むしろデビュー作のような叙情性と実験性をうまい具合に配合したようなのは〈Warp〉かなというイメージがあって、当時はちょっと意外に感じた。ただ、カマシ・ワシントンがこれだけ持て囃されるような現代ならともかく、90年代後半にファーストの路線をさらに深化させていくのは得策じゃなかったろう。で、これを出した直後くらいに来日も果たし、ステージでひとりベース弾きまくる、作品よりさらにはっちゃけた印象のトムは、より大きな人気を獲得していくのであった。


Big Loada
Warp (1997)

 レイヴにもよく遊びに行っていたし、〈Warp〉に所属することになったきっかけは(初期) LFO だというトムの享楽的側面やシンプルなダンス・ミュージックの悦びが溢れた初期の重要なミニ・アルバム。クリス・カニンガムが監督した近未来ホラー的なMVが有名なリード・トラック “Come On My Selector” が、チョップと変調を施しまくったサイバー・ジャングルちっくでいま聴いても奔放なかっこよさを誇るのはもちろん、ペリー&キングスレイ的なお花畑エレクトリカル・アンサンブル+ドリルン・ベースな “A Journey to Reedham” も素晴らしい。余談だが、トレント・レズナーの〈Nothing〉からリリースされたアメリカ盤では、「Port Rhombus EP」や「Vic Acid」から選ばれた曲も追加収録されているので、かなりお得な入門盤だった。


Music Is Rotted One Note
Warp (1998)

 そして意表を突くように生演奏をベースにした、ほぼフリー・ジャズなアルバムをリリースしたスクエアプッシャー。どうも初期のトレードマーク的スタイルは『Big Loada』でやり尽くしてしまったから、まったく違うことに挑戦したくなったという経緯らしい。それにしても、全楽器を自分で演奏し、しかもあらかじめ曲を作らずドラムから順に即興演奏して録音していくなんて、アイデアを思いついても実際にやろうとするだろうか。まぁそれを実現できる演奏力や曲のイメージが勝手に湧くという自信があったんだろうけど。デビュー作でちらちらと見せていたアダルトでエクスペリメンタルな側面が一気に爆発したこのアルバム、近寄りがたいところもあり、一番好きな作品だというスクエアプッシャー・ファンはほぼいないだろうが、本作があったからこそ、その後の彼の活動もさらに広がりや説得力を持ちえたのだ。ちなみに、ジャケを飾る妙なオブジェはトム手作りのリヴァーヴ・マシンで、ジャケのデザインも自分で発案したそう。


Selection Sixteen
Warp (1999)

 トムには Ceephax Acid Crew として活躍する弟アンディーがいる(本作にもボーナス曲のリミキサーとして参加)。その弟からの影響、もしくは彼らがレイヴァーだった時代から強く持っているアシッドへの憧憬をさまざまなカタチでアウトプットした意欲的な盤。前作からの流れを引きずっているようなジャズ風味の強いトラックや、“Mind Rubbers” のようにドリルン・ベースが復活したような曲もあるが、全体的にはビキビキと鳴るアナログ・シンセのベース音が主役を張っている。これ以前にも酸味を出したトラックはときたま作っていたものの、ジャコ・パストリアスばりの超技巧ベース奏者という売り文句で世に出たアーティストが、わざわざそれをかき消すようなアシッド・ベースだらけの作品を作ってしまうとは……。テクノのBPMでめっちゃファンキーなブレークビーツ・アシッドを響かせる “Dedicated Loop” が、Da Damn Phreak Noize Phunk 名義の Hardfloor を彷彿させるドープさ。


Go Plastic
Warp (2001)

 全編生演奏だった『Music Is Rotted One Note』に “Don’t Go Plastic” という曲があって、日本語でも「プラスチッキー」と言うと安物、(金属に見せかけたような)粗悪品的なものを指すが、この場合は作り物(シンセ音楽)からの離脱を意図していたと思う。それがここに来て宗旨変え、「作り物がいいじゃん!」という宣言だ。時は2001年、エレクトロニカが大きな潮流となっていく少し前。スタジオの機材を一新したスクエアプッシャーは、コンピュータで細かくエディットしてトラックを弄っていくDAW的な手法ではなく、データを緻密にシーケンサーに打ち込むことでこのマッドな高速ブレークビーツを生み出した。ジャズ/フュージョンやエレクトロニック・ミュージックに惹かれたのは、サウンドに存在する暴力性だと語っていたトムが、その本性を露わにしたアルバムだ。全体を貫くダークで偏執的なまでのミュータントDnBは踊ることはもちろん、アタマで考えることや感じることも拒否するような局面があり、激しい電気ショックを浴びる感覚に近いかも。ただ、最初と最後にレゲエ~ダブを解体した比較的とっつきやすい曲をもってくる辺りに、トムの優しさも垣間見える。


Ultravisitor
Warp (2003)

 Joy Division の “Love Will Tear Us Apart” のカヴァーと、フジロックでのライヴ(海賊盤かというくらい音が悪いのが残念)を収録したボーナス・ディスクが話題になった『Do You Know Squarepusher』を経て、03年にリリースされた傑作との呼び声高い心機一転作。極端に言うと、これまでのスクエアプッシャーが試みてきた様々な要素/手法をすべて注ぎ込んだような混沌としたアルバム。どういうわけか、歓声やMCまで入ったライヴ録音の曲も結構多い。アルバム後半を支配する激しくノイジーなエクスペリメンタル・ブレイクコアと対照的なインタールード的な小曲は、ほぼすべてアコースティックな楽器の演奏でまとめられていて、それもトム得意のフリー・ジャズ的なものではなく、むしろクラシックやクラウトロック等を感じさせる(特にラストの2曲が美しい)。さらに本作の間違いないハイライトである、ゆったりとしたテンポと生ドラムの生み出す心地よいグルーヴに被さる、メランコリックな重層的メロディーが印象的な “Iambic 9 Poetry”。これを中心とした冒頭5曲の完璧な構成と展開は、スクエアプッシャーの才がついに二度目の大輪を咲かせたと感じられた。


Ufabulum
Warp (2012)

 手練れのミュージシャンを従えたセルフ・カヴァーをするバンド、Shobaleader One としての活動を挟みつつ、スクエアプッシャーが新たな次元に突入したことを知らせてくれたアルバム。CDではなく YouTube で音楽を聴き、盤を買うよりライヴやフェスに繰り出す、という近年のリスナーの傾向を写したように全曲にトム自身が作成したLEDの明滅による演出が施された映像が存在する。Shobaleader One ではフランスの〈Ed Banger〉から(Mr. Oizo のリミックス入りで!)リリースするなど抜け目のないところを見せ、今作ではその影響もあってか、エレクトロ・ハウスやEDMに通じるような迫力満点の(だが、彼の前衛性やエクスペリメンタルな面を好むファンからしたら大仰な展開や音色はコマーシャルに感じられてがっかりと受け取られるかもしれない)トラック群を仕上げている。混沌度を増すアルバム後半、電子回路が暴走したように予想のつかない展開でリスナーに襲いかかる “Drax 2” や、ヴェイパーウェイヴ的な美学も感じるラストの “Ecstatic Shock” が白眉。


Be Up A Hello
Warp (2020)

 そして、5年ぶりにリリースされた、スクエアプッシャーの原点回帰とも言える最新アルバム。『Ufabulum』や続く『Damogen Furies』では自作のソフトウェアやテクノロジーを駆使して、いわゆるヴィジュアル・アートや最新の IoT にまで斬り込んでいくのではないかという意欲的な姿勢を見せていたトム・ジェンキンソンが、旧友の突然の死去をきっかけに、デビュー前に使っていたような古いアナログ機材や、コモドールの古い 8bit コンピュータまで動員してメモリアル的に作り上げた。近しいひとの死がテーマになっているアルバムだから当然かもしれないが、かつてのはっちゃけまくったスクエアプッシャーを想起させる音色や曲の構成は随所に感じられるものの、どこか悲しげで暗いトーンに覆われている。そして、常に以前の自分に一度ダメ出しして新たなことに挑戦してきた彼が、敢えて彼の音楽性や名声を確立するに到った初期の手法に立ち返ったのには、やはり大きな意義を感じる。特にUKでここ数年盛り上がっているレイヴやハードコア(初期ジャングル)を復興させようという試みは、おもしろいけれど懐古を完全に超越した新しいムーヴメントを生み出しているかというとそうでもなくて、では90年代初頭にそういう現場の雰囲気やサウンドに囲まれて、そこで多くを吸収してプロになったトムのようなひとが改めて当時と同じ道具を手にしたとき、何を表現するのかというのはとても示唆的だと思うからだ。

 4月に行われることになったこちらも5年ぶりの単独ライヴは、『Be Up A Hello』の内容を考えると、ここしばらく注力してきたような、大型スクリーンと派手に明滅する映像をメインの要素に据えた未来的なプレゼンテーションとは違ったものになるのだろうか。ロンドンで行われたアルバムの発売記念ギグを映像で確認すると、機材の音が剥き出しでそれこそドラムマシンやシーケンサーが奏でるループがどこまでも続けばそれだけで幸せなんだ、というかつてDJ以外の演者が “ライヴPA” などと呼ばれた時代にあった雰囲気を感じるシンプルなものだった。もうほとんどレコードでDJをすることはないし、その感覚を思い出すのに少し時間がかかったとすら言っていたジェフ・ミルズの本当に久々のアナログと909でのセットを昨年11月に聴きにいった。ただの懐古に陥らないための演出や伝説の確認ではなくフレッシュな体験としてそれを受け止める若い聴衆とアーティストのインタラクトがおもしろく、今回も新たな発見がありそうだと期待している。
 かつて一世を風靡した “Come On My Selector” のMVは、日本を舞台にしてる風の配役や設定だったが、その実 “Superdry 極度乾燥しなさい” 的な細かな違和感がありまくりだった。最新のビデオ “Terminal Slam” ではやはり渋谷を中心にした東京の街を舞台にし、「また日本贔屓の海外のアーティストに東京を超COOLに描かれてしまった!」というのが大半の日本人の最初の反応で、実は監督したのが真鍋大度だったので、なるほど、さすが〈Warp〉とスクエアプッシャー、よくわかってる!と思ったものだ。今回の来日ステージでも、もしかしたら日本ならではのなにかを反映した演出を用意してくれるかもね。

5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

Pray for Nujabes - ele-king

 去る2月26日。その日はちょうど10周忌だった。ロウファイ・ヒップホップから舐達麻まで、いまなお多大な影響を与え続けている不世出のトラックメイカー、故 Nujabes に捧げる映像作品「Pray for Nujabes」が、渋谷の大型ヴィジョンに映し出されたのである。彼の作風をなぞるかのようにセンティメンタルに仕上げられた同映像は、現在 YouTube でも公開中。

Nujabes10周忌に
渋谷・スクランブル交差点で追悼映像放映!

2020年2月26日19時30分、東京・渋谷のスクランブル交差点の大型ビジョン6面で、10周忌を迎えた今なお世界中で愛されてやまない日本を代表するトラックメイカー、Nujabes に捧ぐ映像作品「Pray for Nujabes」が音楽ストリーミングサービス Spotify の協力を得て、3分間にわたって同時放映されました。

心にしみるメロウ&スピリチュアルな Nujabes のビートが渋谷の街に響きわたり、突然の出来事に信号待ちの人々が、その音楽に身を委ねたり、スマートフォンをかざす姿も多く見られました。

また Spotify では同日、生前の Nujabes が師と仰いだ 橋本徹(SUBURBIA)の選曲による Nujabes 10周忌オフィシャル・プレイリスト「Pray for Nujabes」と、「This Is Nujabes」の2本のプレイリストも公開されました。

Nujabes の音楽は没後10年を経てなお、国内外の音楽ファンに愛されており、世界で2億4,800万人以上が利用する Spotify では、並みいる現役アーティストを抑えて2018年に「世界で最も再生された国内アーティスト」の第3位にランクされています。Nujabes のリスナーは、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、日本の順に多く、ブラジルやメキシコなどの中南米でも多く聴かれています。また10周忌に合わせ、Spotify から過去10年に最も聴かれた Nujabes の楽曲ランキングも発表されました。

[当日の模様]



[放映された映像]
「Pray for Nujabes」(Supported by Spotify)
映像URL:https://youtu.be/-_bx7O3cQD4
音楽:Nujabes「Luv (Sic.) Pt2」~「Luv (Sic.) Pt3」〜「Reflection Eternal」
映像制作:Hydeout Productions
映像協力:haruka nakamura「Lamp」
クリエイティブ・ディレクター:Toru Hashimoto (SUBURBIA)
プロデューサー:Daisuke Matsushita

[公開されたプレイリスト]
「Pray for Nujabes」 https://spoti.fi/PrayforNujabes
「This Is Nujabes」 https://spoti.fi/ThisIsNujabes

[過去10年にSpotifyで最も聴かれたNujabesの楽曲ランキング]
1. Akin, Cise Star, Nujabes - Feather (feat. Cise Starr & Akin from CYNE)
2. Nujabes, Shing02 - Luv(sic.) pt3 (feat. Shing02)
3. Cise Starr, Nujabes - Lady Brown (feat. Cise Starr from CYNE)
4. Nujabes - reflection eternal
5. Nujabes, Uyama Hiroto - Spiritual State (feat. Uyama Hiroto)

[Nujabesプロフィール]
今なお世界中で愛されてやまない日本を代表するトラックメイカー、音楽プロデューサーである瀬葉淳(1974 - 2010)のアーティスト名。〈Hydeout Productions〉を主宰して数多くの心にしみる人気作品を発表するとともに、コムデギャルソンのパリ・コレクションの音楽や渡辺信一郎監督のアニメ『サムライチャンプルー』のサウンドトラックなども手がけていた。2018年に Spotify が発表した「海外で最も再生された国内アーティスト」3位。名作の誉れ高い代表アルバム『Modal Soul』のアナログ盤も2月26日にリリースされたばかり。(公式サイト:www.hydeout.net

フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き - ele-king

 即興音楽とはなにか、との問いにジョン・コルベットは本書のまえがきで「即興演奏(improvisation)でつくられた音楽」と端的に答えている。おっしゃるとおり至極単純。それらをさしてひとは、あるいはメディアはフリー・インプロヴィゼーション、フリー・ミュージック、スポンタニアス・ミュージック、はたまたインスタント・コンポジションなどと呼びならわすが、本書のあつかう即興音楽は即興演奏だけでできた音楽、それのみをさす。すなわちまじりっけなし、純度100パーセントの即興でできた音楽──というときの「即興」というものは、ではなにかという疑問に、コルベットは事前のとりきめなく、曲を憶えることもなく、演奏の進行と同時にできていく音楽なのだという、その点では音楽の分野を問わず遍在する即興という行為の多様性からその核にあるものをうかびあがらせようとするデレク・ベイリーの主著にして、この分野の書物の古典中の古典である『インプロヴィゼーション──即興演奏の彼方へ』とは射程は異にするものの、コルベットはそもそもベイリーのむこうを張るかのごときだいそれたことは考えていないとも言明している。なんとなれば、この小ぶりな本は題名どおり『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』であるのだからして。
 そもそもなぜ即興音楽に「聴取の手引き」が必要なのか。そうおっしゃる読者はおそらく即興音楽になじみがうすい。というのも、即興音楽に真剣にむきあおうにも、どう聴いていいのかわからない事態に直面した音楽ファンもすくなくないであろうから。なぜならそこには通常の意味でのメロディがない、明晰なリズムもハーモニーもなければ楽曲の構造をほのめかす形式もなく、それに沿って展開する(ときに弁証法的な)物語性も、あたかも蒸発したかのようで言語化しがたい。このようなないないづくしは一見、即興音楽の制約であるかにみえる。ところが私たちがふだん耳にする音楽におぼえる美的興奮こそ、ルールの枠に則ったものにすぎず、即興とはその枠組みの外の新雪のような余白に(危険をかえりみず)踏みだしていく行為であり、演奏や作品は既存の文脈になじまないだけで、美学的かつ批評的な水準も存在する。すばらしいものとそんなにすばらしくはないものがあるが、そのちがいを理解するには時間と経験がいる。ちょっとの軍資金も必要かもしれない。思えば遠い道のりだった。そうひとりごち、私はレコード棚をふりかえると夥しい数の即興音楽の音盤の背が手招きする。私はいまにも頬ずりせんばかりにレコード棚ににじりよる。一枚一枚に思い出も思い入れもある。私はついさっき、即興音楽には(も)出来不出来があると述べた。棚の音盤を眺めるとたしかにそのとおりだと確信を深めもするが、しかしそうみなす理由はなんなのだろう。即興音楽を判断する基準みたいなものがあるのだろうか。その基準は私という個人に固有のものだろうか、それともプラトンのいうイデアみたいなものでもあるのか。じつは愛好家や評論家諸氏はフィギュアスケートのように即興に点数をつけているのだとして、はたしてなにをもって何点とするのか。そもそも原理的に無限といえるほど多種多様なあらわれ方をする即興音楽全体にあてはまる基準など存在するのか、またそれをだれが把握できるのか。とはいえ即興音楽も音楽であるからにはかならずや、演ること以上に聴く側にだって方法論がいる。
 ポップスやロック、ジャズやクラシックでも、形式が確立した分野の作品なら、数をこなせば自分なりの聴き方が身につけられる。おそらく多くの音楽リスナーはそのようにしてあらゆる音楽をふるいにかけながら聴き方を学んでいく、その一方で既存の音楽の枠組みの外を視野に入れる即興音楽にとって形式は土台というより制約にちかい。したがってリスナーも作品や演奏ごとに新たな聴き方をたちあげる──べきなのだが、聴くたびにふりだしに戻っていてはなかなか厄介である。記憶(の獲得ないし喪失)と即興のかねあいはこの分野をつきつめる課程でおりにふれて顔を出す重要な命題だが、『聴取の手引き』はそのような考える楽しみのちょっと手前で、まずは聴くことの楽しみの発見を手助けしようとする。
 全体は大きく基礎編と発展編にわかれ、音盤や人名リストが付録としてつく構成をとっている。コルベットがまえがきで即興音楽の定義を述べていることはすでに述べたが、それをもとに基礎編以降はじっさいに音楽を聴く段階にはいっていく。おもしろいのはふつうならここで、即興音楽の聴きどころをあげていくものなのにコルベットは聴くにあたってのハードルを列挙するところ。すなわち「リズム(がない)」「時間(が読めない)」「誰がなにをしているのか(わからない)」という、先述の即興音楽の「NAI-NAI 16」をクリアする手立てに紙幅を割く、その懇切丁寧な筆の運びをいささか乱暴に要約すると、私たちがふだんよく耳にする音楽では韻律的(メトリカル)なリズムが方眼(グリッド)の役目をはたし音楽を定量化するが、即興音楽ではドラムやベースなど、一般的な合奏形態内で時間(タイム)をキープし、ビートないしグルーヴを生み出す役割を担うパートも期待どおりに機能しない。機能していけないわけではないのだが、そうなったらなっただけ因習的な形態にちかづくから既知感もます。そもそもたえざる変化を旨とする即興音楽において反復は両立不能な命題ともいえる(むろん戦略的な反復ないし形態の模倣は選択肢として排除しないとして)のだが、演奏にじっくり耳を澄ませると周期性のないなかにも変化は感じられる(反復していないのだからむしろ変化しかないともいえる)。とはいえその変化はパターン化できるようなものではなく、終わりもみえない。この演奏はいったいいつまでつづくのだろうという疑問(不安)は下世話なようでいて、即興演奏にはじめてふれる聴き手には死活問題である。なにせひとの集中力はそんなにはつづかない。有限の集中力を適切にふりわけるには演奏の見取り図があると便利だが、即興音楽はクラシックみたくプログラムノートもない。とはいえ演奏者がラ・モンテ・ヤングでもなければ、即興演奏とてほとんど常識的な時間内に終了する。常識的というのは、1曲(セット)20~30分で、2セットやったとして1時間とちょっと。ときおりノンストップの長大な即興をくりひろげるライヴもあるが、すくなくとも1時間半のうちには親切なお店の方の出すビールにありつけるというコルベットの見立てには私もおおむね同意する。むろんそれ以前でも、あなたには自由に席を立つ権利がある。とはいえせっかくなので演奏は最後まで楽しみたい、そうすると音楽全体が体感できる。ただしそこで起こるすべてを理解する必要はない──そもそもそんなことは人間にはほとんど不可能かもしれない──が、演奏の空間で起こる出来事の残像みたいなものは認識できないともかぎらない。その輪郭を記憶にとどめたりメモをとったりすると、あなたの手のなかの地図は音楽を比較、検討するときに役立つかもしれない。すくなくとも理解の目安にはなりますよね。
「そうそう、出来事といえば、さっきのライヴではサックス奏者が牽かれていく牛のような嘶きを発したのに呼応するかのようにドラムスとベースがドナドナっぽくなったのは圧巻でした」
「とてもいい目のつけどころです、即興音楽の出来事とは演奏者どうしの『相互作用のダイナミクス』からできているのですから」
「相互作用のダイナミクス?」
 そうです。即興はいっさいのとりきめがないことはご存じですよね。とはいえ複数の演奏が参加する場合、演奏者どうしに関係性のようなものが生まれ、それらは(1)調和、(2)補足、(3)対比の3種で特徴づけられ、そのさいの音楽的エネルギ—は(1)集中、(2)拡散のどちらかをとるとコルベットは述べています。それらをパラメータにした演奏者どうしの関係性が「相互作用のダイナミックス」であり、著者は作中で代表的な7パターン(と派生的な数パターン)をとりあげていいます。この一連のながれはレーベルを運営する熟達の聴き手にして演奏家でもある著書の経験を多面的に動員した本書の読みどころのひとつ。詳細は読者諸兄ご自身の目でたしかめられたいが、一例だけあげると、「サポート/ステップアップ」と名づけた関係性では、ある演奏者があたかも即興(合奏)の前景に歩みでるかのように、それまでの演奏と異なる音楽的言明をおこない、状況が相対化(し場面が転換する)ことを意味するが、意見の一致/不一致などの単純に論争的なダイナミクスの外の思弁的な重層性を明記したのはみのがせない。このように、即時的な丁々発止 インタープレイ)におさまらない即興音楽特有の(非)協働性は音楽的時(空)間の屈曲を招き、変化をきたす時間の幅が狭まれば、やがてシュトックハウゼンいうところのモメント(瞬間)形式に漸近するという説など、コルベットの見立てにはこみいった概念や記述を端折ったがゆえの陥穽もある(それもまた本書の性格に由来するとも思うのだ)が、その真摯な語り口にのぼる即興の諸相に虚心にむきあえば、私たちは演奏家が事前の計画も予備的なスケッチもなくおこなった演奏を、「聴く」という全的行為と記憶をたよりに溯及的に構造化するまでになる。このとき、(宿命的に)音楽のいちぶである演奏家にはけっしてとどかない聴取者の特権、無数の解釈にひらかれた、音楽を聴くことの不意のゆたかさがあなたを撃つのである。
 入門者の好奇心をくすぐりながら中級者の共感を呼び、すれっからしの微笑をさそう──根幹となる基礎編をへて状況論にも目配せする後半部で本書はいよいよ発展編にはいっていく。とはいえ『手引き』たるもの、いたずらに小難しかったり高尚になっては立つ瀬がない。そこで著者は具体的な事例をまじえつつ、レコードリストも掲げながら、一貫する機知で即興音楽の原理を浮きぼりにする。
 なかでも「情熱点火」と題した作品リストは端的で趣意に富んでいる。あがっているのは20枚だが、ポール・ラザフォードの『The Gentle Harm Of The Bourgeoisie』にはじまるセレクトは即興の旨味を凝縮している。また同時に、コルベットの即興観の根底にはおそらく(というか当然)ジャズがあり、聴取のポイントとしては個々の音楽家の語法のたしかさと、それらの合奏における働き方を重視していることをうかがわせる。そう考えるのは作品の中身もさることながら、それらがソロからデュオ、トリオからオーケストラまでを網羅しているのでもわかる。即興にとって編成は喫緊の課題である。このことについて著者は数ページあとに「3の法則」として一節とって述べている。いわく、ソロとデュオ、トリオとそれ以上では即興の関係性(ダイナミクス)のあり方がちがう。その見立てに則って、さきのリストでもソロからオーケストラまで形態のちがう作品を、コルベットは選出していたのだが、これにより意図したのはオススメのフォーマットがあるとかではなく、異なる編成それぞれに特徴があり、おそらくコルベットはその階調の広がりに即興音楽の魅力をみている。そのことは、ハシ休め風の「極端な仮説に挟まれ踊る」にもあらわれている。この節で著者は以下の思考実験をもちだしてくる。すなわち(1)すべてが即興である、(2)なにも即興ではない。このふたつの命題は、たとえば譜面の再現を前提とするクラシックの演奏家にも解釈の自由があるようにあらゆる音楽には即興的な側面が存在し、他方で、ライプニッツではないが即興音楽の錦のミハタである自由なるものもじつはけっこう予定調和ちゃうん!? ということなのだが、結論からいえば、コルベット自身は両方を極論として退けている。つまるところすべての音楽は即興の面ではそのふたつを両端としてのその線分上のどこかにある、と述べて、それこそが「メッセージの明瞭さと整然たる解決ということ以外の(引用者注:即興音楽の)価値」といいたがっているかに私にはみえる。いうなれば「聴く人を宙吊りにしておくやもしれぬ音楽のプロセス」でありつづけることが即興音楽の即興音楽たるゆえんであるということである。むろんそれが原理主義に収斂しては元も子もないのであって、即興音楽の「道徳的優位性」をもちだす信奉者にしっかりクギをさす著者の即興観なるものを『手引き』の本文を借りて述べれば「フリー・インプロヴィゼーションは音楽をつくりだす一方法であって、独立した価値や特質ではありません」ということになるだろうか。むろんその「方法」がおそるべき深みをもっているのはそこかしこにほのめかしてあるし、巻末の人名リスト、さらに付録として掲載した細田成嗣作成によるブックガイドと録音作品リストは欧米が主軸の本書に、日本と近隣諸国から届けられた重要作を補い『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』の有用性を高めている。その一方で、細田が指摘する「魅力的な即興の世界が無数にある」という可能態は選ばれた演奏家や作品の記名性と抵触するおそれもある、というこの問いは『手引き』たる本書の圏域外だとしても、即興音楽の門のむこうにはそのようにきわめて人間的で思弁的な領野が広がっているのがわかる。みなさんはいままさにそのとば口に立っているというわけです。
 ようこそ即興音楽の世界へ。

Trinitron - ele-king

 東京にこんな音楽があったなんて! トリニトロンは2010年から2012年にかけて活動していた〈Call And Response〉の4人組バンドである。今回リマスターされた限定CD-Rには、高円寺のベッドルームでつくられたというニューウェイヴ、ポストパンク、シンセポップの数々がめいっぱい詰め込まれている。ブラック・サバスやキャンディーズ、パフュームなどのカヴァーも収録されているが、“Liquidi Liquids” や “One Great Year in Tsukuba” あたりはテクノ耳で聴いてもかっこいいし、“My Boring Feelings” のドキッとさせられるリリックは音楽好きなら必聴かも。レーベルによればブライアン・イーノやDAF、デペッシュ・モードやトーキング・ヘッズ、ステレオラブが好きなひとはぜひ、とのこと。チェック。

artisit: Trinitron
title: make.believe - All of Trinitron
label: Call And Response
catalog #: CAR-51
release date: February 25th, 2020

tracklist:

01. Music to Watch Boys By
02. Heart no Ace ga Detekonai (Candies cover)
03. 10,000 Euros
04. Monday Club
05. Comment is Free
06. Democracy
07. Paranoid (Black Sabbath cover)
08. Liquidi Liquids
09. My Boring Feelings
10. Edge (Perfume cover)
11. The Pure Light of True Love
12. Match no Hono (Mir cover)
13. Namida wo Misenaide (Moulin Rouge/Wink cover)
14. One Great Year in Tsukuba
15. Killer Wave
16. Aus with the Ausgang
17. Polo Shirts Girl
18. Sweet Blue Flowers
19. Kids and Girls

https://callandresponse.jimdofree.com/releases/trinitron-make-believe-all-of-trinitron/

当世ハウス事情 - ele-king

 ハウスといえば12インチだけれど、この激動のネット時代、やはりSNSの影響は大きく、いろいろと状況が変化してきているようだ。世代交代が進む一方で、ヴェテランの復活も目立つようになってきている。UKジャズとの接点、世代を超えたコラボ、90年代リヴァイヴァル、ヴォーカルものの復権、ひそかにうねりを生み出すフランス……などなど、紙エレ年末号でジャンル別コラムの「ハウス」を担当してくれたDJ/プロデューサーの Midori Aoyama、現在 TSUBAKI FM の2周年記念ツアー真っ最中の彼に、近年のシーンの動向について語ってもらった。

イメージを気にせず、世代も関係なくヴェテランと若いひとがやったり、ハウスとかヒップホップとかジャズがクロスオーヴァーしていくのが可視化されてきた感じはある。

まずは謝っておかないといけないことがあります。Midori さんには紙エレ最新号で、2019年のハウスを総括する記事を執筆していただいているんですが(120頁)、冒頭の「ラブル・アンダーソンのトリビュート楽曲」という箇所は、正しくは「2019年はポール・トラブル・アンダーソンのトリビュート楽曲」でした。編集部のミスです。申し訳ありません。

Midori Aoyama(以下、MA):いえいえ。

それで、その原稿はここ数年のゴスペル・ハウス・リヴァイヴァルの話からはじまっています。まずはその流れについてお聞きしたいですね。

MA:5年くらいまえから生音に回帰する流れがあって、所謂テクノからまたハウスへという流れを感じてて。2007年ころは、マイアミでウィンター・ミュージック・カンファレンスがあったりしてハウスが盛り上がっていたけど、2010年から2015年ころはベルリンが世界の中心というか、ベルグハインとかがすごくメインストリームになっていたし、テクノが流行っていた。でもそれからみんながテクノに飽きてきて、またハウスを聴くようになってきている。それが5年まえくらい。たとえばベルグハインのとなりのパノラマバーでサダー・バハーのようなシカゴのDJがやったり、NYのソウルフルなハウスとかアメリカのヴォーカル・ハウスみたいなものがリヴァイヴァルするということがあった。
 そのハウスの流れにゴスペルが入ってきた。たとえば最近カニエ・ウェストがゴスペルのアルバムを出したけど、もともと曲が出るまえにゴスペルをやる「サンデー・サーヴィス」というイヴェントを日曜日にキム・カーダシアンと一緒にやっていたんだよね。そういうのもあって、若い人がゴスペルを聴く流れができているのかなという気がします。

ポール・トラブル・アンダーソンはどういうポジションのひとなんでしょう? Kiss FM の初期メンバーですよね。

MA:ずっとロンドンの Kiss FM でやっていて、そのあとも Mi-Soul という老舗のラジオでずっとパーソナリティをやっていた。フェスとかのソウル・ブースでもロンドンのローカルなDJを紹介したり。だから、2018年に亡くなったときはUKでは大きなニュースになった。彼は、“Oh Happy Day” というエドウィン・ホーキンスの曲のカヴァーを BPM128 くらいのハウスでプロデュースしていて、〈BBE〉がそのトリビュート楽曲を2019年の1月にリリースした。SNSでもみんなポールのことを書いていたし、個人的にはそれが思い出になっている。ポールに限らず、そのころからまたソウルフルなハウスとか生音が来ている感じはしますね。

リエディットやリイシューはいっぱいあったけれど、いわゆるマスターピースが出なかった年だったとも書いてありましたね。

MA:2019年で印象に残ったのは、UKジャズの切り口でいうと、ジョー・アーモン・ジョーンズだったり、もともとソロでディープ・ハウスをつくっていたニュー・グラフィック・アンサンブルだったり。あとはメルボルンのハーヴィー・サザーランドヌビア・ガルシアをフィーチャーしたり、そういう流れが強かった。ハウスのプロデューサーはあまり出てこなかったかなという印象。
 ちょっと話がそれるけど、いまってデジタルでも年々曲が売れなくなってきてて……。特にハウスとかのダンス・ミュージックが。例えば Spotify で聴くときも、みんなだいたいスロウなミュージックだったりするし、聴くシチュエーションも朝起きたときとか寝るまえとか、あるいは通勤・通学のときとか。だからクラブ・ミュージックを聴きたくなるのは、もともとかなりテクノやハウスが好きだったとか、ドライヴのときに気分を上げるためとか、シチュエーションが限定されてくる。だからつくり手も、クラブ・ミュージックをつくる機会がどんどん少なくなってきていると思う。むかしは曲の長さが10分とかざらにあったけど、いまのEDMのようなメジャーなダンス・ミュージックの曲って2~3分のものが多いし。

いわゆるレディオ・エディットですよね。フルレングスは12インチに入っているという。

MA:でもそれでもう満足しちゃうというか。レコードも以前は数千枚とか売れていたけど、いまは数百枚だし。そうなると、むかしは曲をつくるときはスタジオを借りてミュージシャンを集めてレコーディングしてミキシングして、っていうのが普通だったけど、そういうことができなくなったから、自宅で篭ってつくって、もともとある素材をサンプリングしたりして、うまく生音っぽく整えてリリースする。アーティストが時間やお金をかけて曲をつくることが難しくなったのが、そういうふうになった原因なのかな。

そんな状況のなか、唯一マスターピースと呼べそうなのが、ベン・ウェストビーチとコンによるザ・ヴィジョンだと。

MA:“Heaven” という曲です。オリジナルは〈Defected〉から出ていて、それをダニー・クリヴィットがオフィシャルでエディットして、それがバズった。 “Reachin', Searchin'” というロバート・ワトソンの1978年の有名なネタをサンプリングしているんですが、ジャイルス・ピーターソンもそれを知っていて、そういうネタがどうこうっていう話題や、あとジョー(・クラウゼル)がこの曲を Boiler Room でプレイした動画もあって、SNSが人気の追い風になった。

アンドレア・トリアナを起用したことがいちばん評価に値するとも書いていますね。それは、どういう意味で?

MA:単純に、ゴスペル・ハウスって現役のシンガーの平均年齢が高いと思う。ケニー・ボビアンとかジョシュ・ミランとか、若くても50代。ソウルフルなブラックのハウスって、若くて強烈なシンガーがいまの時代に出にくい印象。有名なシンガーはどうしてもヒップホップやポップスに走っちゃうし。そんななか、彼女のようなシンガーにソウルフルなハウス・トラックでクラシカルなスタイルで歌わせるという、ベンとコンの起用法がすばらしい。でもサンプルはむかしのもので、フレッシュな部分とむかしながらの部分がうまく融合されている。

アンドレア・トリアナというと、ぼくなんかはフライング・ロータスの印象が強いんですよね。あと〈Ninja Tune〉周辺でよくフィーチャーされているシンガーだなというイメージで。そういうひとがいまハウスの文脈につながっている。原稿ではアレックス・アティアスの盤も挙がっていますが、そこに客演しているジョージア・アン・マルドロウも、いまおなじように多彩な動きをみせているシンガーなのかなと思いました。16FLIP とやったり

MA:ジョー・アーモン・ジョーンズの “Yellow Dandelion” もそう。ジャンルをまたいでコラボレイトすることは、声を売っているひとたちからすると、自分のイメージを気にするひとも少なくないと思うんだよね。でもそういうのを気にせず、世代も関係なくヴェテランと若いひとがやったり、ハウスとかヒップホップとかジャズがクロスオーヴァーしていくのが可視化されてきた感じはある。自然とそういう流れができているんじゃないかな。数年前に比べてヴォーカル・ハウスのリリースが増えたと思う。

それはなぜ?

MA:世の中的なこともあると思う。世界情勢とか。暗いムード、バッドなムードのときは明るい音楽とかが求められるのかなと。ポジティヴなメッセージとか、ポジティヴなヴァイブスを届けようってひとが増えてきてる気がするし。そういうメッセージを受け取りたいリスナーも増えてきている。あとやっぱり、一周して90’sリヴァイヴァルが来ているのが大きい。今回の号(ダブ特集)もそうですよね。それ自体はずっとまえからあったけど、たとえば Mars89 さんたちの音楽を20代や10代が聴いて、「おもしろい、ダブってなんだろう」ってなっているんだと思う。ハウスも90’sとか、00年代前半ころにおもしろかったサウンドやカタログが、また再評価されているんじゃないかなと思うんだよね。

テクノもそうですしね。

MA:ただ、単純にリヴァイヴァルすればいいということではなくて、アップデイトしていく作業がすごく大事だと思う。たとえば、いまルイ・ヴェガがエレメンツ・オブ・ライフ(ELO)を復活させているんだけど、自分のファミリーだったジョシュ・ミランとかアナーネとかルイシート・キンテーロみたいなひとを引き続きフィーチャーしつつ、他方でちゃんと新しいシンガーとかキーボーディストを招いているのはおもしろい。いまは、そういう動きをしているプロデューサーとかDJが評価されていると思う。原稿では「流れに乗り遅れた者が居場所を失っていく」って書いたけど、補足するとそういうこと。しかもルイは今度、ヘンリー・ウーと一緒に曲をつくるのね。年内に〈BBE〉から出すらしい。そういう流れもすごくいいと思う。

へえ! NYのラテン・カルチャーといまのサウス・ロンドンがつながるって画期的ですよ。

MA:ルイはUKのレーベルからのリリースもあるし、もともとイギリスのフュージョンの影響も少なからず受けていたはず。もちろんNYの影響も間違いなくあるけど、ソウルとかサルサに加えてヨーロッパのインフルエンスも間違いなく受けていたと思う。

しかも世代を超えて。

MA:ハウスの分野では世代交代が進んでいて、世界のトップ・クラブとかトップ・フェスとか主要なレーベルでやっているひとたちって、いま30代が中心。僕をフランスのフェスにブッキングしてくれるクルーもそれくらいだし、ダニー・クリヴィットの後輩で「LOVE INJECTION」っていうフリーペイパーを出しているメンバーも世代が近い。ジョー・アーモン・ジョーンズもまだ20代後半。他方で、いまルイだったり、アレックス・アティアスのようなヴェテランがカムバックしてきて、若いひとたちと組んでやっているのはおもしろいよね。松浦(俊夫)さんもそうだし。僕ら世代の良いところは、ヴェテランと若者世代のどちらも繋がっているところ。それこそ可能性で言えば50代の人と10代の人を繋げたプロジェクトだってできる。それができるのは僕らしかいないから。それがいまいちばん求められていることなんじゃないかなと感じている。

僕ら世代の良いところは、ヴェテランと若者世代のどちらも繋がっているところ。それこそ可能性で言えば50代の人と10代の人を繋げたプロジェクトだってできる。それができるのは僕らしかいない。

なるほど。ちなみに原稿では「ジャジー」と「テッキー」という分け方をしていましたよね。ここまでの話がおおよそ「ジャジー」側の話だとすると、「テッキー」側はどういう感じなんでしょう?

MA:「テッキー」をいちばん体現しているのはブラック・コーヒーやペギー・グーかな。彼らはフェスをメインの戦場にしていて、フェス以外のとき、ふだんはどこでやっているのかというと、イビサでやっている。イビサのトレンドって、すこしまえはリカルド・ヴィラロボスとかリッチー・ホウティンとかだったけど、いまはブラック・コーヒーがレジデントだったり。それこそルイ・ヴィトンのディレクターを務めてるヴァージル・アブローと一緒にプレイもしている。そういうハイ・ファッションな流れ。オシャレに感度の高い若いデザイナーが、そういう音楽をやろうよという空気になってきているよね。こないだホアン・アトキンスのサイボトロンがルイ・ヴィトンのランウェイでパフォーマンスしたり。やっぱりヴァージル・アブローの存在が大きいんだと思う。そういう状況を10代のキッズとか、20代のファッショニスタとかデザイナーとかモデルとかが見て、かっこいいと思ったり。そういう流れができているのを実際に肌で感じる。そしてその流れに追随しようとしているハウスのDJやプロデューサーがいて、それがイビサという島を起点に、ドイツやオランダやアメリカに広がっているなと。

あと原稿を読んで、いまフランスがキイになっているのかなとも思いました。

MA:フランスってもともと植民地を持っていた背景があるから、アフリカからの移民もすごく多くて、アフリカ大陸のサウンド、ブラック・ミュージックが好きな人も多い。ニュー・グラフィック・アンサンブルもフランス人で、原稿に書いたリロイ・バージェスの “Work It Out” で一緒にやっていたセイヴィング・ココもフランス人。リリース元の〈Favourite〉もフランスのレーベルだし。以前リロイはハーヴィー・サザーランドと一緒に歌って、そのときはメルボルンのバンドだったんだけど、今回の新曲はリロイ以外全員フランス出身。あと、フローティング・ポインツの〈Melodies International〉って知ってますか?

激レアなソウルとかをリイシューしまくっている。

MA:うんうん。あれもフローティング・ポインツと一緒にやっているのはフランス人だしね。あと彼らは日本の音楽もディグっていて、和モノのリイシューとかもけっこうフランス人がやっていたり。オタク気質というか、掘りはじめるとすごいんだよ。

テクノ~エクスペリメンタル方面でも、いまフランスの〈Latency〉っていうレーベルがおもしろいんですよ。あと年末号でインタヴューしたダンスホールのロウ・ジャックもフランス人だった。

MA:テクノの Concrete っていうクラブができはじめたくらいから流れが変わってきたのかな。10年くらいまえまではみんな幹線道路の外で、郊外でパーティをやっていた。でもいまは幹線道路の中でもできるようになってきていて。若い人が集まって曲をつくったり、パーティをしたり、クラブを作ったり、フェスをしたり、どんどんそういうおもしろいプロジェクトをやりはじめている。それがひとつの大きなうねりになってきている。
 あと、彼らには地元のスターをみんなで応援しようという意識が強い。10年くらいまえに一度だけイビザに遊びに行ったことがあるんだけど、客がフランス人ばっかりで(笑)。日本でも、たとえばガルニエが来日するとフランス人がいっぱい来る。僕がフランス人のDJをブッキングするときも、応援に来るし。「地元のやつだから応援する」みたいな理屈があるというか。そういう気質が、いまのローカルをサポートする草の根的なあり方と合っているんだと思う。だから僕のまわりはいまフランス人に囲まれているかもね(笑)。

Ratgrave - ele-king

 UKジャズ・シーンにおける重要人物、年末にはルイ・ヴェガとのコラボも控えるヘンリー・ウーことカマール・ウィリアムス主宰の〈Black Focus〉から、新たにアツいタレントの登場だ。彼らの名はラットグレイヴ。〈Ninja Tune〉からもリリースのあるマックス・グレーフと、ベーシストのユリウス・コンラッドから成る2人組である。先行公開された2曲を聴くかぎり、いろんな要素の折衷されたファンクネスあふれる作品に仕上がっている模様。
 ちなみに〈Black Focus〉は2018年にマンスール・ブラウンのアルバムをリリース、つい最近ではヴェテラン、スティーヴ・スペイセックの新作も送り出している。

Ratgrave
モダン・エレクトロニック・フュージョン!
カマール・ウィリアムスことヘンリー・ウー率いる〈Black Focus〉より、マックス・グレーフとベーシストのユリウス・コンラッドによるデュオ、
ラットグレイヴの最新作『Rock』が3月20日(金)リリース決定!
収録曲 “Instant Toothpaste” “Theme From Metronome” を公開!

グレン・アストロとのコラボレーションで名門〈Ninja Tune〉からアルバム・リリースをしているマックス・グレーフとベーシストのユリウス・コンラッドによるデュオ、ラットグレイヴの最新作『Rock』が、サウス・ロンドンのジャズとハウスが疾走する猥雑な交差点にしてすでに高いプロップスを獲得している、カマール・ウィリアムスことヘンリー・ウー率いるロンドンの重要レーベル〈Black Focus〉より3月20日(金)リリース決定! 収録曲 “Instant Toothpaste” “Theme From Metronome” を公開!

Ratgrave - Instant Toothpaste (Official Audio)
https://youtu.be/gUtwFgfwcXI

Ratgrave - Theme From Metronome (Official Audio)
https://youtu.be/01X2uSKhAts

フローティング・ポインツが見出した鬼才、ファンキンイーブン率いる〈Apron Records〉からリリースし、高評価を得たデビューアルバム『Ratgrave』に続く今作は、2人のマルチプレイヤーが80年代のファンク、ソウル、ロック、そしてエレクトロニック・ミュージックからの影響を現代の感覚をもって昇華したサウンドとなっている。時にまだ見ぬマップ・オブ・アフリカの新譜を聴いているような、時にスライ&ロビーとパット・メセニーが人力ハウスを披露したら? など音楽好きにはたまらない甘い妄想へと誘う快作!

『Rock』は異なる音楽のジャンルから感じ取ったエネルギーやヴァイブスの本質を捉えて表現したものだ。好きなものを全て繋げて出来たものっていう感じだね。アルバムをレコーディングしているときは常にその事を意識していたよ。生々しくて荒々しいジャズ・ロックのエネルギーも入っているし、たくさんのビデオゲームの要素も入ってる、ギターポップやサイケデリックな音楽の影響もある。レコーディングの時は Blue Cheer、Black Sabbath、Frank Zappa、Jimi Hendrix といったヘビーな音楽も聴いていた。そして、作曲をしている時に静かな曲の中でもそういったヘビーな音楽の影響がいかに大きかということに気付かされた。だから、P-Funk やスピリチュアル・ジャズ、そして色んなポップ・ミュージックなどが入ったアルバムだけど『Rock』というタイトルが相応しいと思ったんだ。 ──Ratgrave

待望の最新作『Rock』は3月20日に国内流通仕様盤、輸入盤CD/LP、デジタルでリリース! 国内流通仕様盤には解説が封入される。

label: Black Focus / Beat Records
artist: Ratgrave
title: Rock
release: 2020.3.20

CD / Digital tracklisting:
01. Escobar
02. Theme From Metronome
03. World Aid
04. Instant Toothpaste
05. Eternal Breeze
06. Yurok
07. 4 Benz
08. Dibidai
09. Rock
10. Bleeding To Death
11. Sturf
12. Alright
13. Mutti Hat Gekocht

Vinyl tracklisting:
Side A
A1. Escobar
A2. Theme From Metronome
A3. World Aid
A4. Instant Toothpaste
A5. Eternal Breeze
A6. Yurok
A7. 4 Benz
Side B
B1. Dibidai
B2. Rock
B3. Bleeding To Death
B4. Sturf
B5. Alright
B6. Mutti Hat Gekocht

Robert Haigh - ele-king

 ぼくは小1から小6まで、柔道の道場に通っていた。夜の6時から8時まで週に3回、バスに乗って片道30分。道場は安倍川を越えた市の外れにあった。最初の2年間は弟と2人で通ったが、途中からは1人だった。バスはいつも空いていて、ぼくはいつも窓の外から見える寂しい夜の通りと川の向こうに見える黒い山々、その山腹に見える小さな光に見とれていた。不思議なもので記憶では、一緒に稽古した子たちの顔も道場の練習もぼんやりとしているというのに、バスから眺めていた夜の景色だけは、その景色をいつも眺めていたことだけはよく憶えている。
 どんな人間にも、そうした自分の遠い過去の日常のなかの、喜びとも悲しみとも違う、誰かと共有していたわけでもない、郷愁というほどの懐かしさでもない、なかば色褪せながら、しかしいまでも吸い寄せられてしまいそうになる景色があるのだろう。ロバート・ヘイの音楽が呼び覚ますのはそんな景色だ。こども時代に見とれていた寂寥とした日常のひとコマ、たわいもない風景への切ない気持ち。

 ロバート・ヘイは、90年代にドラムンベースを聴いていた人にはオムニ・トリオの名前で知られている。オムニ・トリオは、ゴールディーや4ヒーローを初めて聴いたときのような〝ほかと違った〟衝撃を携えたアーティストだったが、彼のスタイルは〝アンビエント・ドラムンベース〟と呼ばれたように、その音楽の背後にはいわゆるダンス・ミュージック以外の何かがあった。調べていくと、彼が80年代にナース・ウィズ・ウーンドの名作『The Sylvie And Babs〜』に参加していたことがわかった。ポストパンク時代にはSema名義で、ドビュッシーないしはサティ風のピアノを主体とした実験音楽作品を出していることもわかった。寂寥とした響きの、壮麗さはないが地味に美しい作品である。

 いまロバート・ヘイのディスコグラフィーを見れば、オムニ・トリオ時代が異例であったことがわかる。レイヴフロアから離れ、イングランドの田舎に越してからのヘイはふたたびピアノに向かい、何枚ものアルバムを発表している。日本のアンビエント/ドローン/モダン・クラシカルのレーベル〈Siren Records〉からも何枚も佳作を出しており、前作『Creatures Of The Deep』からは現在カール・ストーンなどが所属する〈Unseen Worlds〉がリリース元となっている。
 ロバート・ヘイには駄作/失敗作というものがない。すべてが良い。その代わりにこれこそ傑作と呼べるものもない。80年代初頭からコンスタントに作品を出している彼のキャリアには(オムニ・トリオ時代を除けば)特別なピークというものがなく、が、そのことは彼の飾り気のない表現における魅力となっている。ハイにもならずロウにもならず、変わりなくピアノがただメロディを奏で、リズムを取っている。なんとも言いようのない、色褪せた風景や寂寥さのなかに包まれていくときのなかば陶酔じみた感覚。
 新作『ブラック・サラバンド』にもそれがある。まあ、それでしかないというか。だからぼくはロバート・ヘイの音楽を聴いている。静かな時間が好きな人にはオススメです。 

Ulla - ele-king

 ウラ・ストラウスは、フィラデルフィアを拠点とするアンビエント・アーティティストである。
 ウラは2017年にシカゴのアンビエント/エクスペリメンタル・カセット・レーベル〈Lillerne Tapes〉から『Floor』と、シカゴのCD/DVDを専門とする〈Sequel〉からCD-R作品『Append』をリリースした。『Floor』は煌めくような質感のアンビエント・ドローン、『Append』は高質な音の芯がうねるようなラーガ的なトーンのドローンやリズミックな要素も導入されたインド音楽的なサウンドだった。
 しかしウラの注目度が上昇したのは、なんといっても2019年にフエアコ・エス(Huerco S)主宰の〈West Mineral〉からリリースされたポンティアック・ストリーター(Pontiac Streator)とのコラボレーション作品『11 Items』からだろう。細やかなリズムを持ったサウンド・マテリアルが交錯するトラックが聴き手の意識を飛ばすようなサイケデリックなサウンドスケープを形成していた。サウンドの独自性に加えてレーベルの信用度・知名度も相まってマニアたちから高い評価を獲得する。さらに2019年はレゴウェルトのリリースでも知られるシティル・シリアス・Nic(Still Serious Nic)とハンサム・トーマス(Handsome Thomas)らのレーベル〈BAKK〉からオーシアニック(Oceanic)とのスプリットLP『Plafond 4』、ニューヨーク拠点のアンビエント/ニューエイジ/エクスペリメンタル・レーベル〈Quiet Time〉からアンビエント作品『Big Room』も送り出した。この3作でウラ・ストラウスは新世代のアンビエント・アーティストとして、その名を知らしめることになったといえよう(『Big Room』は、私が執筆した『ele-king vol.25』の特集「ジャンル別2019年ベスト10」における「アンビエント/ドローン」の項目で2019年の重要作に紛れ込ませた)。

 そして2020年早々、はやくも決定的なアルバムが生まれた。新作『Tumbling Towards a Wall』である。本作はフエアコ・エス=ブライアン・リーズ(Brian Leeds)と Exael とのユニット、ゴーストライド・ザ・ドリフト(Ghostride The Drift)での活動や〈West Mineral〉からの作品も知られるウオン(uon)=スペシャル・ゲスト・ディージェー(Special Guest DJ)による新レーベル〈Experiences Ltd〉からリリースされたアルバムだ。ウラ・ストラウスではなく、ウラ名義でのリリースで、マスタリングはダブプレート&マスタリング(Dubplates & Mastering)が手掛けている。
 この『Tumbling Towards a Wall』にはテクノやミニマル・ダブなど、さまざまなエレクトロニック・ミュージックの要素が散りばめられているが、アンビエント的な落ち着いたトーンやムードも崩されることはない。ループを効果的に用いながらも騒がしくないサウンドメイキングは実に見事である。
 アルバムは穏やかなパルスと不規則な電子音が交錯し、水槽の中の魚のようにサウンドが浮遊しているような1曲め “New Poem” から幕を開ける。この曲からリズムの反復がテーマとして提示される。
 2曲め “Leaves And Wish” ではリズム=ループの構造がより明確になる。耳に心地よい乾いたノイズとの相性も抜群だ。霧の中に融解したミニマル・ダブがアンビエント化したようなサウンドスケープによって、ダビーな残響も本作の重要な要素であることも分かってくる。

 リズムとダブとアンビエント・ノイズ、これらの要素は3曲め “Something I Can't Show” でより深化した形で示される。鳥の鳴き声を思わせるサウンドに非連続的な電子音が、どこか天国からのサウンドように鳴り響く。
 4曲め “Soak” ではリズムの反復がさらに明確になる。まるで〈Modern Love〉が2007年にリリースした傑作 DeepChord Presents Echospace 『The Coldest Season』のように降り積もる粉雪のような冷たい質感のミニマル・ダブを展開する。アルバム中、もっともテクノ的なトラックといえる。
 ここまではアナログ盤ではA面で、続く6曲め “Stunned Suddenly” からB面になる。この曲ではリズム的要素が控えめになり、声のようなシンセ・サウンドが透明なアンビエンスを生み出す。7曲め “Smile” と8曲め “Feeling Remembering” では余白の多い静謐な音響空間を生成する。
 本アルバムでもっとも大切な曲が最後に収録された “I Think My Tears Have Become Good” であろう。ピアノ曲と電子音のフラグメンツとでもいうべき楽曲で、その無重力的な美しさは筆舌に尽くしがたい。

 この作品には、ミニマル、ニューエイジ、タブ、エレクトロニカなどの技法を援用しながらも、アンビエント・ミュージックの新しいモードがあった。端的にいえばアンビエント・ミュージックのドローンを基調とする構造からの脱却だ。もしかすると『Tumbling Towards a Wall』には「2020年代のアンビエント・ミュージック」のヒントが息づいているのかもしれない。

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