「TT」と一致するもの

Big Red Machine - ele-king

 グレイトフル・デッドの軌跡を追ったドキュメンタリー『グレイトフル・デッドの長く奇妙な旅』を観ると、彼らがかつて試みたことは、音楽(とドラッグ)を通じた大いなる実験だったことがわかる。演奏も即興なら活動自体も即興的。たとえば彼らの活動の中心はライヴだったが、だからと言ってその音源を権利的に囲いこむようなことはせず、オーディエンスに録音を許可した結果ライヴが評判になってさらに人気に火がついたのだという。もちろんコミューンのようなこともトライしているし、ファンと生計をともにすることもあった。いまの感覚で見ると、まあ、大らかな時代だったんだよな……と思うが、しかしそれはそれで、彼らなりの懸命なチャレンジだったのだろうなという感慨も沸く。音楽を愛する者たちで、自分たちで、生活を支えるネットワークを作るという理想は、もちろん失敗も繰り返したが、アメリカの次の世代に大きなヒントを残したのだった。
 それを受け取ったひとりがザ・ナショナルのアーロン・デスナーだったことは、現在のUSインディ・ロック・シーンにとってとても幸運だったのではないだろうか。彼が自身の持つネットワークを駆使して編纂を担当したグレイトフル・デッドのコンピレーション『Day of the Dead』は、何よりもそこに参加した人間の多さ、収録時間の長さでもって、いまもグレイトフル・デッドの精神が形を変えてシーンに受け継がれていることを示していた。わたしたちはシステムに縛られて生きているのかもしれない、けれども、その外を目指して生きることはそれでも可能なのではないか──。あの作品がエレクション・イヤーの2016年に問うていたのはそういうことだったろう。
 あるいは、アーロン・デスナーとともにビッグ・レッド・マシーンの中核にいるボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンが、現在のUSインディ・ロック・シーンにおいてインディペンデントなネットワークを形成することに腐心してきたのは(ヴァーノンはとりわけインディ・ロックの外のシーンへの働きかけが強い)、繰り返し書いてきたことだ。パンデミック以降にボン・イヴェールが発表したシングルは、アメリカで高度に発展した資本主義のシステムのオルタナティヴを模索することを主題としていた。とりわけ2枚目の “AUATC” (https://youtu.be/-DusRnF36UA)は「ate up all their cake(ケーキ全部食べちゃった)」の略で、限られた資本家が資源や富を独占していることを糾弾しつつ、ゴスペル・コーラスにブルース・スプリングスティーンまでを加えたものだ。が、その声は極端に変調されており、リスナーには「あのボス」の声だと判別できない。アメリカを代表する大衆音楽の歴史を、現在の匿名の「声」に織りこむ──そうやってヴァーノンは、いまも現代のコミュニティのあり方を模索している。

 2010年代なかばから〈PEOPLE〉という名のアーティスト・コレクティヴを主宰しているデスナーとヴァーノンによるビッグ・レッド・マシーン(以下 BRM)の2作めとなるこのアルバムは、まったくもって、彼らが15年ほど前から踏みしめてきた道の続きで生まれている。多くの人間が加わって、フォーク・ロックを基調としながら、様々なジャンルを越境してコーラスとアンサンブルを奏でる。そこはボン・イヴェールが『22, A Million』以降に試みていることと同様だが、BRM はボン・イヴェールよりはるかにリラックスしたプロジェクトである。2018年の1作め『Big Red Machine』はヴァーノンとデスナーが得意とする音楽的要素が強いアルバムで、その分どうしてもボン・イヴェールの楽曲に至る前の習作といった印象が拭えなかったが、本作『How Long Do You Think It's Gonna Last?』はよりオーガニックな演奏による歌にフォーカスすることで、大らかな風合いは保ちながらソングライティングの面で魅力的な一枚となった。曲によって参加したミュージシャンのテイストにかなり音楽性が委ねられているのだが、そこが本作のポイントに他ならない。デスナーとヴァーノンが作った場にお客さんが来る、というのではなく、本当にいろいろな人間が出入りする場所として開かれているのだ。
 まず、アメリカーナのシンガーとして知られるアナイス・ミッチェルを迎えたオープニングのバラッド “Latter Days” が素晴らしい。透明感のある鍵盤が鳴るなか、ミッチェルのハスキーな声とヴァーノンのファルセットが柔らかく、熱をもって重なる。レイドバックした70年代的アメリカン・フォーク・バラッドのようで、プロダクションにモダンなタッチを効かせているのはデスナーらしい。あるいはフリート・フォクシーズのロビン・ペックノールドが歌う “Phoenix” はフリート・フォクシーズよりもさらに朗らかなピアノ・バラッドになっているし、スパンク・ロックのナイームが変調した声を独自のフロウとともに聴かせる “Easy to Sabotage” の断片的なエレクトロニクスや、イギリスのインディ・フォーク・シンガーのベン・ハワードとティス・イズ・ザ・キッドがメロウな歌声を聴かせる “June's River” のアブストラクトなタッチもそれぞれユニークだ。それこそボン・イヴェールの諸作と比べて一枚のアルバム作品としての統一感や緊張感はないのだが、そんな風に「バラけている」こと自体が本作のコンセプトである。いろいろな人間(PEOPLE)がここには存在し、それぞれの音を伸び伸びと鳴らしているのだと。
 デスナーが昨年テイラー・スウィフトのフォーク作『folklore』『evermore』をプロデュースした経緯から本作にもスウィフトが参加しているが、そのなかの1曲 “Renegade” のポップぶりにはとりわけ驚かされる。聴いて一発でわかるくらい、ものすごくテイラー・スウィフトのポップ・ソングとして仕上がっているのだ。彼女もまた、このアルバムのなかで生き生きしていることに嬉しくなってくる。ここのところのスウィフトとインディ・ロック・シーンとの交わりは、たんにスーパー・ポップ・スターが下界に降りてきた、というものではない。楽曲の権利の問題で企業と闘争していた彼女にとってはインディペンデントな体制での音楽づくりをやり直すことだったし、デスナーらにとってはメインストリームのポップ・フィメール・シンガーの存在を見くびらずにその声に耳を傾けるということだった。テイラー・スウィフトのドキュメンタリーを見ると、彼女が民主党支持を表明するのをスタッフが必死で止めるくだりがあるが、そもそも個人の意見を表明すらできないスター・システムとは何なのか、という話である。そして彼女はいま、インディ・ミュージシャンたちとともに自分自身の声を出している。それに、このアルバムのタイトルを提案したのはスウィフトだという──「これがいつまで続くと思う?」。トランプ政権末期に制作されていたという本作は、ある意味では、現在のアメリカの左派的なミュージシャンたちの共通する想いを重ね合わせたものだとも言える。
 だがもちろん、必ずしも政治的な動機だけが埋めこまれた作品でもない。ザ・ナショナルのファンにとってはアーロン・デスナーがメインで歌うナンバーが収められていることに喜びを感じられるだろうが、それらはアルバムのなかでもとりわけ素朴な歌となっている。“The Ghost of Cincinnati” はまるでエリオット・スミスのような繊細なフォーク・ソングだし、“Brycie” はデスナーが10代で鬱になったときに支えてくれた弟(でザ・ナショナルのメンバーである)のブライス・デスナーに感謝を伝える温かい曲だ──「きみが僕をここに留まらせてくれた」。まったくパーソナルな経験や記憶が呼び出され、それらはここで共感され、分かち合われる。

 BRM の成り立ちを考えても、本作はシンプルにアルバムとして完結しているのではなく、制作の過程やネットワークの広がりを可視化すること自体を目指したものだ。マーケティングのためのとってつけた「ダイヴァーシティ」ではない。最終曲 “New Auburn” では象徴的に「白人男性だけの100年によって」という言葉が出てくるが、そうやって硬直したシステムを変えていくには、様々な人間の様々な声が──あるいは想いが必要なのだと、態度と音楽で示すのである。
 自分が10代から20代の頃にアメリカのインディ・ロックに胸を打たれたのは、音楽それ自体のチャレンジングなあり方だけではなく、社会とどのように対峙していくかの実践を見せてくれていたからだ。それは党派性に身を捧げることではないし、ましてやソーシャル・メディア上で気の効いた主張を繰り広げることでもなく、この社会のなかでどのように生きたいかを探求し続けることだと教えてくれたのが、自分にとってはアメリカの音楽だった。いまデスナーとヴァーノンが示しているのは人間同士の助け合いが絶対に必要だというシンプルなことで、それに賛同する人間が増え続けていることを頼もしく思う。それに、ここにはとても強くて温かい歌があるから。

8月の終わりのサウンドパトロール - ele-king

 齋藤飛鳥と山下美月の会話をぼんやり聞いていたら、そういえば、ここ数年、誰かが自分を見ているときに「(自分が)見られている」とは言わずに「(相手が)見てくる、見てくる」という言い方をするなーと。行動の主体が相手にあることは同じなのだけれど、「見られている」という言い方をすると自意識も一緒に発動してしまうので、相手の行為を自分がどう受け止めているかはわからなくするために「見てくる」という言い方になっているのかなーと。自意識を隠すということは「自分がどう見られているかは気にしていない人に見られたい」という自意識が複雑に折りたたまれているということだから、結局は「見てくる、見てくる」と嬉しそうに騒ぐ時点で、「(自分は)観られてる~」と喜んでいるのと同じだと思うんだけど、それでもやはり相手が見ているのは相手の問題意識のなかで完結していることだとアピールしておかないと自意識を発動させざるを得なくなってしまい、そのような事態はどうしても避けたいということなんでしょう。マウントを取りたがる人が嫌がられることの裏返しかなとも思いますが、孤独に音楽を聴いている人には関係ない話でしたね。


01 | Bendik Giske - Cruising (Laurel Halo Remixes) Smalltown Supersound Norway

この春、バッテクノことパヴェル・ミリヤコフと不気味なジョイント・アルバムをリリースしたばかりのベンディク・ギスケ(いま流行りの遠心顔)が8月27日にリリース予定のセカンド・アルバム『Cracks』から “Cruising” を先行カット。両サイドと共にローレル・ヘイローのリミックスをフィーチャーし、これが『Pavel Milyakov & Bendik Giske』の、とくに “Untitled 4” を複雑にしたような素晴らしいダブ・テクノに。クラフトワークをスクリュードさせたようなビート・ダウンにプロセッシングされた管楽器が幻のように咲き乱れる。たったの6分で終わりかと思っていると、Bサイドでは左右でエフェクトの種類が分けられた、さらに桃源郷のようなビートレス・ヴァージョンが長尺で控えている。サイケデリック・サマーはこれで決まり。


02 | Quixosis - Micropótamo Eck Echo Records

エクアドルのベース・ミュージックからダニエル・ロフレード・ロータによるデビュー・アルバム『Rocafuerte』の2曲目。オープニングからハープなどの幻想的なメロディが重層的に響き渡り、一気に未知なるトロピカルへと連れ去られる。ハットやタムがしっかりとしたビートを刻んでいるものの、リズムはなぜか途切れがちで、それが妙に良かったり。タイトルは「小川」の意。アンディ・ウェザオールのリミックスを聴いてみたかった感じでしょうか。アルバム・タイトルのロカフェルテというのはエクアドルの都市キトの中心部にある通りの名だそうで、ラテン・アメリカとヨーロッパの音楽を古いも新しいもごった煮にした音楽性と関連づけたものらしい(キトは玉井雪雄『オメガトライブ』でイブ・L・ホークスが幼児期に虐待されていた街というイメージしかないんだけど……)


03 | Faye Webster - I Know I'm Funny Haha Secretly Canadian

2年前に『Atlanta Millionaires Club』(メッシー・テイストのジャケはかなり苦手)で頭角を現したシンガーソング・ライターによる4作目『I Know I'm Funny Haha(=私がヘンなのは知っているわよ草)』のタイトル曲。全体に前作とは異なったサウンド・メイキングで、カーペンターズみたいだったりもしつつ、いくつかの曲でコード進行などがけっこうフィッシュマンズを思わせる。佐藤伸治が生きていたら “A Dream With A Baseball Player” とかつくりそうじゃないですか。あー、ダラダラする。実に夏向き。10曲目の “Overslept(寝坊)” には〈カクバリズム〉からメイ・エハラが参加。今年、フィッシュマンズTを売り出したジャーナル・スタンダードが早くからコラボ・アイエムを手掛けていたり。


04 | Ground - Ozunu Chill Mountain

セカンド・アルバム『Ozunu』からタイトル曲。一時期のデリック・カーターを思わせるファニーなアシッド・ハウス。アルバム前半の8曲は荒廃したレイヴからクラウドをクラブへ呼び戻したイギリス産のアシッド・ハウス・リヴァイヴァル(=アンダーワールドの原液)を現代に着地させたような曲が並び、“追湯” 以降の4曲はその限りではない広がりを感じさせる。前作『Sunizm』(https://www.ele-king.net/review/album/006580/)と比較して明らかにスキルが上昇しまくりで、軽妙洒脱な展開にどんどん引き込まれる。聴けば聴くほど……的な良さが全開。南大阪の言い伝えや伝承にインスパイされたアルバムらしいけれど、それは一体どんな内容なのだろう。役小角とは何か関係があるのだろうか。


05 | Advanced Audio Research - Klɪŋ(ɡ)ɒn Not On Label

ミラノのブレイクコア、ジョルジオ・ディ・サルヴォによるニューEP「High Resolution Music」から2曲目。アシッドでドロドロに溶けてしまった陽気なダブ・テクノ。昨年のセカンド・アルバム『Top Secret』もブレイクコアからはかなり逸脱していたけれど、もはやその残響すら散見できず、後半でビートを刻んでいることさえ奇跡に思えてくる。“Ghost In The Shelter” とかタイトルもすでに溶け始め、バカなものの向こうにホーリーなものが立ち上がってくる境地はなんとも赤塚不二夫っぽい。


06 | Haile - Stay High With You Not On Label

オレゴンのインディー・フォークからセカンド・アルバム『The Bedroom Album』の5曲目。インスタグラムには雪景色の投稿が多く、ダークで閉鎖的な曲調がそれにぴったりマッチしているなか、これはさらにじっくりと陰キャを満喫したアシッド・フォーク。完全にトリップしていて、どうやって録音しているのかナゾだけど、プロセッシングは一切おこなっていないというのが信じられないほどエフェクティヴなオーガニック・サウンドに仕上がっている。グルーパー “Soul eraser” が極悪ノイズに思えてくる柔らかさ(それは言い過ぎ)。


07 | Mori-Ra - Lyon Forest Jams

大阪からマサキ・モリタによるリエディットもののデビュー・アルバム『Japanese Breeze』から12曲目(タイトル通りアルバム全体はシティ・ポップをダンス化したニューディスコがメイン)。Dサイドの3曲は少しコンテンポラリーな感触が強いなか、エンディングにあたる “Lyon” は爽快なトロピカル・ムードがなんとも感動的。ツルンとしてシャキッとしながらメロウにまみれた質感がなかなかです。サンプリング元はすべて日本のもののようで……(なので資料ナシ)。


08 | Fausto Mercier - Overcorp Infinite Machine

ハンガリーのオウテカによるニューEP「I’m Too Sentient」から1曲目。昨年、リリースしたフル・アルバム『FULLSCREEN』とはまったく別次元の内容に驚きつつ、オウテカやエイフェックス・ツインがかつて発揮していた幼児性を存分に楽しませてくれる。ドリルンベースというよりマーチのリズムをとにかく細かく刻んだというか(フィボナッチ数列を応用したとか)。なんでこういうのって飽きないんだろう。メキシコのレーベルから。


extra | 山口百恵 - 夜へ… Sony

なんか、この夏はサイプレス・ヒルと山口百恵ばかり聴いてしまう。山口百恵が77年にレゲエをやっていたり、矢沢に負けじとバリー・ホワイトを取り入れてたのねといったことを再発見しつつバック・カタログをすべて聴いていて、ジャズ・ベースが印象的な “夜へ” が頭から離れなくなってしまった。当時は “夢の恋人” のような甘酸っぱいポップスの方が好みだったのに、いつのまにか趣味は変わっているもんだなと。

メシアTHEフライ - ele-king

 2006年、I-DeA や MSC 作品などへの客演を経て初のEP「湾岸 SEAWEED」を〈Libra〉から発表、2009年にファースト・アルバム『BLACK BOX』をリリースしたヒップホップ・ユニット、JUSWANNA(ちなみに「湾岸 SEAWEED」には、ISSUGI が 16FLIP として最初に世に発表したトラックが2曲含まれている)。
 その JUSWANNA のMCのひとり、メッセージ性の強いリリックで知られるメシアTHEフライが JUSWANNA 活動休止後にリリースしたソロ・アルバム『MESS - KING OF DOPE-』が、10年以上のときを経てついにアナログ化される。嬉しいことに、CDも同時にリイシューされるとのこと。LPのほうは完全限定生産なので、早めに予約しておこう。

JUSWANNAのブッ飛んだ救世主ことMESS a.k.a. メシアTHEフライが2010年にリリースした傑作ファースト・ソロ『MESS -KING OF DOPE-』が帯付き2枚組/完全限定プレスで待望のアナログ化! 同時に入手困難だったCDもリイシュー!

メッセージ性の強いパンチラインを最大の武器に独自のスタンスで常に斜め45度から世間を騒がす反逆者であり、MEGA-G、DJ MUTAとのユニット、JUSWANNAのブッ飛んだ救世主ことMESS a.k.a. メシアTHEフライ。そのJUSWANNAとして2006年に1st EP『湾岸 SEAWEED』、09年に1st Album『BLACK BOX』をリリースした後の10年5月にグループとしての活動を休止し、同年12月にファースト・ソロ『MESS -KING OF DOPE-』をリリース。サグライフでも、ハスリングライフでもない、実は一番ぶっ飛んだ「日常」の疑問をもう一度エグり返して出てきた問題作であり、メシアTHEフライが現実を色濃く模写した全13曲を収録した傑作中の傑作としてリリースから10年以上の時を経てもまったく色褪せることのないその『MESS -KING OF DOPE-』が帯付き2枚組/完全限定プレスで待望のアナログ化! 同時に入手困難だったCDもリイシュー!

[LP情報]
アーティスト: メシアTHEフライ
タイトル: MESS -KING OF DOPE-
レーベル: Libra Records / P-VINE, Inc.
発売日: 2021年12月2日(木)
仕様: 帯付き2枚組LP(完全限定生産)
品番: LIBPLP-001/2
定価: 4.950円(税抜4.500円)

[CD情報]
アーティスト: メシアTHEフライ
タイトル: MESS -KING OF DOPE-
レーベル: Libra Records / P-VINE, Inc.
発売日: 2021年9月15日(水)
仕様: CD
品番: LIBPCD-013
定価: 2.640円(税抜2.400円)

[LP:トラックリスト]
SIDE A
1. Intro
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
2. MESS
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
3. 東京 Discovery 3 feat. PRIMAL (MSC)
 Produced by HardTackle_66
SIDE B
1. 鉞-マサカリ-
 Produced by KAMIKAZE ATTACK
2. ビルヂング
 Produced by T.TANAKA
3. MONKEY BUSINESS feat. TAKUTO (JPC band)
 Produced by T.TANAKA
SIDE C
1. マンダラ
 Produced by I-DeA
2. POPS feat. 仙人掌 (MONJU)
 Produced by 16FLIP
3. 東口のロータリー
 Produced by DJ OLD FASHION
SIDE D
1. Skit
 Produced by KAMIKAZE ATTACK
2. No More Comics feat. BES (SWANKY SWIPE)
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
3. Wonderful World
 Produced by The Anticipation Illicit Tsuboi
4. Outro
 Produced by MUTA (JUSWANNA)

 ぼくは間違っていた。先日リリースされた『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』の紹介文のことだ。なんかあれは、とくに高額商品ということもあって、ある程度年のいった連中にしかわからないんじゃないかという先入観を持って書いてしまった。なんて弱気な……。というのも、じつはあの文章を書いた直後に清志郎に夢中な12歳の少年の存在を知ってしまったのだ。親がファンというわけではない。どうやら彼が自分で清志郎の音楽を見つけて、バンドを組んで歌っているという。最近ではヘルメットを欲しがるほどにタイマーズにはまっていると聞いた。
 オリンピック以降、いや、それ以前からか、無理もないと言えばそうなのだけれど、世の中の空気はどんどん悪くなっている。誰かが何かを言えば誰かがむかつき、言葉の揚げ足をとっては炎上、それを各ネットメディアが同じように報じたり、そしてトーマス・バッハはいけしゃあしゃあとしていると……なんとも暗々たるこのご時世だが、清志郎の曲が12歳の少年に届いているという話は、嬉しいニュースじゃないですか。
 そりゃあ、さすがのぼくも清志郎の曲のすべてが現代に通用すると思っているわけではない。悪い意味での前時代的なノリもある。だが、いまだRCサクセションや清志郎の多くの曲は過去のモノにはなっていない、そう確信している。いまだパワフルに思える曲があるのは、もうどうしようもない事実なのだ。
 最近ユニバーサルが流したニュースによると、忌野清志郎50周年企画第5弾は、後期におけるソロの名作の1枚、『KING』だという。RCサクセション解散後、リトル・スクリーミング・レヴューやラフィー・タフィー、ラヴ・ジェッツなど複数のプロジェクトで活動していた清志郎が、三宅伸治らとがっつりバンドを組んで制作した2003年の作品で、この後続く『God』~『夢助』という晩年の傑作3部作の第一発目として知られている。この3枚は原点回帰的なロックンロールとソウルのアルバムで、いい曲がたくさんある。『KING』に関して言えば、個人的には女にふられた曲“胸が張り裂けそう”がベストだけれど、一般的にはソウル・ナンバーの“Baby 何もかも”や日本を風刺する“奇妙な世界”、十八番のソウル・バラード“雑踏”やなんだろうか。“ウィルス”なんかまるで最近できた曲みたいだな。なにしろ歌の出だしは「重い重い副作用が、体中に残っている」なんだからね。で、今回は当時録音されていた未発表が4曲も収録される。なんでも事情通によれば、どん底から立ち上がるあの名曲“Jump”にも似た秘蔵の曲があるらしい。一刻も早く聴きたいんだけれど、発売は11月24日だった。とりあえずその日までがんばろう。
 清志郎の長いキャリアのなかでもっとも売れなかったであろう1998年のアルバム『Rainbow Cafe』は、“世の中が悪くなっていく”という曲からはじまっている。2000年代以降の清志郎の諸作には、80年代には表現されていなかった世の中を覆う暗い空気や暗い予感がなにかしら通奏されている。悪い時代を生きているという自覚のもと、しかしではそこでどんな歌が歌えるのかと、もがき悪戦苦闘しているかのようだ。『KING』もそうだが、『God』と『夢助』のようなアルバムが再評価されるときがついに来てしまったのだろう。(野田)

忌野清志郎
KING Deluxe Edition

発売日:2021年11月24日
(オリジナル:2003 年11月19日発売)

【通常盤】
2CD+1DVD UPCY-7741 価格:3,636 円+税
Disc1(CD):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
Disc2(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS LIVE in NHK「ONE NIGHT LIVE STAND」2003/10/26 at NHK 112st
Disc3(DVD):「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト
*仕様:紙ジャケ 3CD in 三方背 BOX

【限定盤】
3CD+1DVD+2LP UPCY-9993 価格:16,000円+税
(仕様:ゲイトフォールド 2LP ジャケット+3CD+付属 in LP BOX)

Disc1(CD):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
Disc2(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS 「WANTED」
LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 <前半> Disc3(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS 「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 <後半>
Disc4,5(LP):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 at ロックン・ロール研究所)
Disc6(DVD):「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 ライヴ映像ダイジェスト
〈付属〉
・佐内正史写真集「ANGEL」
人間「忌野清志郎」を捉えた未発表写真満載の全44P 豪華写真集
・「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日を捉えた写真プリント (写真:西村彩子)

■収録曲

【通常盤】
Disc1(CD)
KING 2021 remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)04, HB・2B・2H
05 雑踏
06 虹と共に消えた恋
07 ウイルス
08 モグラマン
09 奇妙な世界
10 胸が張り裂けそう
11 約束
〈未発表曲 at ロックン・ロール研究所〉
12 ジグソーパズル
13 ギブミーラブ
14 真冬のサイクリング
15 花はどこへ行った

Disc2(CD)
NHK「ONE NIGHT LIVE STAND」2003年10月26日 at NHK 112st
01 WANTED
02 玩具(オモチャ)03, HB・2B・2H
04 ウイルス
05 雑踏
06 スローバラード
07 上を向いて歩こう
Guitar:三宅伸治/Bass:中村きたろう/Drums:宮川 剛/Key:厚見玲衣 Alto Sax:梅津和時/Tenor Sax:片山広明/Trumpet:渡辺隆雄

Disc3 (DVD)
「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト


【限定盤】
Disc1
(CD)KING 2021 remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)
04 HB・2B・2H
05 雑踏
06, 虹と共に消えた恋
07 ウイルス
08 モグラマン
09 奇妙な世界
10 胸が張り裂けそう
11 約束
〈未発表曲 at ロックン・ロール研究所〉
12 ジグソーパズル
13 ギブミーラブ
14 真冬のサイクリング 15, 花はどこへ行った

Disc2
(CD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003 年8月17 日 〈前編〉
01 WANTED
02 玩具(オモチャ)
03 サン・トワ・マ・ミー
04 トランジスタ・ラジオ
05 虹と共に消えた恋
06 MC
07 HB・2B・2H
08 奇妙な世界
09 MC
08 キモち E
09 ブ熱い LOVE SONG(愛しあってるかい?)
10 Baby 何もかも
11 ドカドカうるさい R&R バンド
12 約束
10 花はどこへ行った
11 君が代
12 誰も知らない
13 LONG TIME AGO
14 愛する君へ
15 スローバラード

Disc3
(CD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 〈後編〉

01 ひどい雨
02 雑踏
03 世界中の人に自慢したいよ
04 月がかっこいい
05 胸が張り裂けそう
06 上を向いて歩こう
07 キモち E
08 Baby 何もかも
09 自転車ショー歌
10, MC
11 ウイルス
12 雨あがりの夜空に
13 約束

Guitar:三宅伸治/Bass:中村きたろう/Drums:宮川 剛/Key:池田貴史 Alto Sax:梅津和時/Tenor Sax:片山広明/Trumpet:渡辺隆雄

Disc4
(LP)
KING 2021 Remaster
A面
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)
04 HB・2B・2H
B面
01 雑踏
02 虹と共に消えた恋
03 ウイルス
04 モグラマン

Disc5
(LP)
KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 at ロックン・ロール研究所)
C 面
01 奇妙な世界
02 胸が張り裂けそう
03 約束
D 面<未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所
01, ジグソーパズル
02, ギブミーラブ
03, 真冬のサイクリング
04, 花はどこへ行った
2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト 

Disc6
(DVD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 ライヴ映像ダイジェスト

Jana Rush - ele-king

「もし誰かが暗い場所にいるなら、このアルバムは素晴らしいリスニングになるかもしれない。そしてそれは鬱というものを反映し……だけどそれは、炎のように燃え上がる、ある種抽象的な情熱なんだ」とヤナ・ラッシュは『ワイアー』誌の8月号で話している。「激しい音と周波数は自分への鼓舞と攻撃性の解釈でもある」
 リリース元の〈プラネット・ミュー〉といえば、先日はDJマニーの、レーベル自身の説明文によると「ロマンティックなフットワーク」アルバムを出したばかりで、そして今度はヤナ・ラッシュによる、レーベル自身の説明によると「激しい感情的なジェットコースター」アルバムをリリースした。
 1ヶ月ほど前、ぼくは先行リリースされた“Moanin’”を聴いたときに、これはすごい曲だと興奮した。情熱的なビバップ・ジャズの遠吠えのようなサンプリングと武術のようなドラミングにサブベース。この10年、エレクトロニック・ミュージックを前進させた大きな勢力のひとつにシカゴのフットワークがあることは言うまでもない。そもそもはローカルなダンス・バトルのための音楽として開発されたドラミングに特徴を持つこのスタイルは、マイク・パラディナスのキュレーションによって世界に伝達されると、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのシーン全般にアイデアと活力を与えた。シカゴ内部ではDJラシャドやRPブーらがそのサウンドを前進させ、近年では食品まつりやジェイリンのようにシカゴ外部の人はアートフォームとしての可能性を追求するようにもなった。そしていま、シカゴのヤナ・ラッシュはこのスタイルの可能性をさらに押し広げて、アルバム1枚分のダンスというよりはより感情豊かなディープな音楽表現へと発展させてみせている。
 
 彼女は新人というわけではない。調べてみると、ロバート・アルマーニやカジミエ、ポール・ジョンソンらシカゴ第二世代の影響のもと13歳から音楽を作りはじめたヤナ・ラッシュのデビューは90年代のなかば、レーベルはゲットー・ハウスの名門〈ダンス・マニア〉だった。大学にも進学し、やがて化学技術者、医療技術者、消防士などさまざまな職を転々としたそうだ。と同時に、彼女は長いあいだ、過労と深刻な鬱病からくる自己嫌悪に悩んできてもいる(彼女が20年近く作品を発表していないのもその影響だろう)。彼女が音楽で復活するのは2017年のアルバム『Pariah』で、ちなみにリリース元は〈Objects Limited〉、マイク・パラディナスのパートナー、ララのレーベルだ。現在ラッシュは石油精製所で化学技術者として働いているというが、本作『痛みをともなう啓発(Painful Enlightenment)』は4年ぶりのセカンド・アルバムで、彼女が自分の鬱病と向き合って制作された作品である。
 なにしろ曲名には“自殺念慮(Suicidal Ideation)”なんていうのがあって、しかもこの曲がアルバムの目玉だったりする。アルバムの2曲目に配置されたそれは不快でシュールなポルノ映画のような、じつに奇妙な世界を描写しているわけだが、ジャズ・ギターの破片が壊れた機械のように繰り返される表題曲“痛みをともなう啓発(Painful Enlightenment)”にしても、女のあえぎ声と不吉なジャズ・ピアノの“G-Spot”にしても、シカゴ・クラシックを攪拌機に詰め込んだ“かき乱されて(Disturbed)”なる曲にしても、アルバムには居合抜きのようなドラミングと、そしてなんとも言えない不快な感覚がある。“マインド・ファック(Mynd Fuc)”は、調性を欠いた自由さにおいて、いわばフットワーク版デレク・ベイリーだ。もしくは彼女は、シカゴのゲットー・ハウスとスロッビング・グッリスルの領域とのあいだに回路を開通させている、と言えるだろう。つまり、インダストリアル・フットワークと呼べる何か。いずれにせよ、オウテカのファンを自認するリスナーであれば必聴だろう。
 アクトレスのねじれたエレクトロを彷彿させるのは、DJペイパルとの共作“銀河のバトル(Intergalactic Battle)”で、これはアルバム中で唯一ファンキーと呼べる曲かもしれない。フランスのプロデューサー、ナンシー・フォーチューンとの共作“私を狂わせて(Drivin' Me Insane)”はそれこそTGの“ユナイティッド”の後につなげたくなる曲だったりするが、アルバムの最後を飾るDJペイパルとのもうひとつの共作“Just A Taste”の勇ましさが退廃に淫することを拒絶する。
    
 レーベルによれば、このアルバムは「フットワーク・アルバムではない」とラッシュから言われたという。彼女はこう言った。「よりダークなエクスペリメンタル・リスニング・ミュージックのようなものであって、疑うことなく自分自身になる機会なんだ」
 シカゴのフットワークはここまで来た。気楽に踊れるアルバムでないし、酔いにまかせて気持ちよくなれる音楽でもない。むしろただただシラフになっていく、そんな作品であるがゆえに好き嫌いは分かれるだろう。が、しかしひとつたしかなことがある。本作は懐かしい過去ではなく、エレクトロニック・・ミュージックの未来に向かっている。
 

Prettybwoy - ele-king

 2013年に〈Big Dada〉のコンピ『Grime 2.0』に参加、グライム/UKガラージの文脈から出発し、2017年には上海のレーベル〈SVBKVLT〉からEP「Genetics」を送り出している東京のプロデューサー、Prettybwoy が英ファクトの名物シリーズ「Fact Mix」に登場している。
 冒頭からびっくりするような展開で、『エヴァ』で耳にしたような声がするなと思ったら、90年代のアニメ『KEY THE METAL IDOL』がフィーチャーされている(主題歌も)。これがずっとつづくのかと思いきや、じょじょにノイズなどが侵入をはじめ、つぎつぎと尖ったダンス・ミュージックが繰り出されていく。
 なお Prettybwoy は9月17日に〈SVBKVLT〉からデビュー・アルバム『揺蕩う』をリリースすることになっている。そちらも楽しみ。

ラディカルで、クソ面白い!

大勢の人が集まって踊る、ただそれだけのことが国家を動揺させた……
アシッド・ハウス、イビサ、マッドチェスター、ニューエイジ・トラヴェラーズ、ジャングル……
英国ジャーナリストが見事な筆致で描く
20世紀最後で最大の音楽ムーヴメントの全貌

1997年に刊行され、2010年に増補版が出たクラシカルな1冊がついに翻訳刊行!

並々ならぬ共感と知性によって書かれた、熱を帯び機知に富んだ真実の歴史 ──アーヴィン・ウェルシュ

あれは「特別な時代」以上の何かだったのだろうか? ドラッグ熱に浮かされた享楽主義に過ぎなかった? それとも、我々の多くがそう強く信じたがっているように、それ以上に重要な何かだったのか? アシッド・ハウスの誕生以来、「じゃああれは一体なんだったのか」の疑問は何度もしつこく繰り返されてきたし、本書はそれに対する幅広い回答のあれこれを含んでいる。そのいずれも必然的に個人的な視点に依るものであり、どれひとつとして決定的な回答ではない。もしかしたら、今にして思えば、あのとんでもない時代を実際に生き抜いただけで充分だったのだろう。共同体の全員と共に我を忘れるあれら歓喜の瞬間の数々を味わったこと、おそらくそれ自体が、我々にはあれ以上を望めない素晴らしい体験だったのかもしれない。(本文より)

目次

前書き(長い歳月の後で)

序幕 八〇年代のとある晩

第1章 快楽のテクノロジー
第2章 サマー・オブ・ラヴ
第3章 マジカル・ミステリー・ツアー
第4章 東への旅
第5章 フリーキー・ダンシング
第6章 テクノ・トラヴェラーズ
第7章 都市のブルーズ
第8章 ケミカルな世代

謝辞
索引

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燻裕理 - ele-king

 1970年代、だててんりゅう、頭脳警察(『悪たれ小僧』のベース)、裸のラリーズ(有名な2枚組のライヴ盤『Live ‘77』でベース担当)に参加、長い活動休止期間を経てニプリッツ、MOLLS、ポートカスなどで活動、近年は燻裕理(くんゆうり)名義で知られる、日本のアンダーグラウンド・ロックのリジェンド、ヒロシ(悲露詩、HIROSHI 、ひろしNa、ひろしNar、楢崎裕史)がソロ・アルバムをリリースする。タイトルは『びど』。ドラムは、頭脳警察の石塚俊明。独特の脱力したロック・サウンドは健在です。
 

燻裕理 (Youri Kun)
びど

レーベル:いぬん堂
品番:WC-098
定価:¥2200(税込)
発売日:2021/9/6
https://inundow.stores.jp/items/610281ef053624788f619538

李劍鴻 Li Jianhong - ele-king

 『The Wire』2021年7月号で北京のトゥ・ウェンボウ(朱文博/Zhu Wenbo)が運営するレーベル〈Zoomin’ Night〉の特集が組まれたほか、同8月号では恒例企画「めかくしジュークボックス」にリー・ジェンホン(Li Jianhong/李剣鴻)とウェイ・ウェイ(Wei Wei/韋瑋)が登場するなど、ここにきて中国のアンダーグラウンドなノイズ/即興/実験音楽シーンがにわかに注目を集めはじめている。5月にイタリアの〈Unexplained Sounds Group〉から中国実験音楽のコンピ『Anthology Of Experimental Music From China』がリリースされたことも記憶に新しいが、本稿ではアンダーグラウンドなシーンにおける重要人物のひとりリー・ジェンホンにスポットを当て、彼が今年の春に発表した2枚の新作アルバム『山霧 Mountain Fog』『院子里的回授 Feedback in the courtyard』を紹介する。

 リー・ジェンホンは〈P.S.F. Records〉からのリリースでも知られる中国の実験音楽家/ノイズ・ミュージシャン/ギタリスト。1975年に生まれ、中国・杭州で90年代よりバンド活動をはじめ複数のグループで活躍。90年代後半に中国でインターネットが普及しはじめたことをきっかけに、ノイズや即興、実験音楽なども聴くようになっていったという。2003年には知り合いのミュージシャンとともにレコード・レーベル〈2pi Records(第二層皮独立唱片機構)〉を設立、同年にファースト・ソロ・アルバム『在開始之前、自由交談 Talking Freely Before The Beginning』を発表。また2003年から2007年にかけて 2pi 音楽フェス(第二層皮音楽節)を開催し、中国有数の前衛/実験音楽の祭典として知られるようになる。ゼロ年代後半から北京でも活動しはじめ、2011年に移住。同年には Vavabond 名義で知られるノイズ・ミュージシャン、ウェイ・ウェイとともに新たにレーベル〈C.F.I Records〉を立ち上げる。以降、これまで中国内外のレーベルから多数のアルバムを発表しており、中国においてアンダーグラウンドな音楽シーンが誕生した初期から活動を続けている代表的なミュージシャンのひとりとして高い評価を得ている。

 同じく中国出身で現在はフランスを拠点に活動しているミュージシャン、ルオ・タン(Ruò Tán/若潭)が運営するレーベル〈WV Sorcerer Productions〉からリリースされた『山霧 Mountain Fog』は、ジェンホンの真骨頂とも言うべきノイズ・ギターをソロとデュオで収録したライヴ・レコーディング作品。1曲目のソロではいきなり激烈なフィードバック・ノイズが鳴り響き、高柳昌行や大友良英を彷彿させる攻撃的な展開が延々と続く。だがオクターバーを使用して重低音を効かせ、フィードバックの持続音を強調した演奏内容は、ハーシュなノイズ・ミュージックではなくドゥームメタルにも近いダウナーなアンビエント/ドローンのようにも聴こえてくる。こうした傾向は中国の若手サックス奏者ワン・ズホン(Wang Ziheng/王子衡)を迎えた続く2曲目のデュオ・セッションでより顕著に表されており、ドローン状のギターとサックスが時に渾然一体となる特異な音楽内容は、フリー・インプロヴィゼーションの歴史に多数の名演を刻んだ編成(高柳昌行と阿部薫のデュオをはじめギターとサックスによる即興の系譜についてはhikaru yamada hayato kurosawa duo『we oscillate!』のライナーノーツで掘り下げたのでより詳しく知りたい方はそちらをご参照ください)でありながら、これまでのどの作品とも似ていない唯一無二のサウンドを生み出している。

 他方の『院子里的回授 Feedback in the courtyard』はジェンホン自身のレーベル〈C.F.I Records〉からリリースされたソロ・アルバム。フィールド・レコーディングとインプロヴィゼーションのあわいをいくような作品で、人びとの話し声や咳払い、虫の音、航空機の音など環境音と一体化するように、ギターの繊細なフィードバック・ノイズや電子音響のようなサウンドが聴こえてくる。紙版『ele-king vol.25』に寄稿したジャンル別2019年ベストのインプロヴィゼーションの項で触れたように、近年の即興音楽には環境音を活用した作品が多数発表されているものの、ジェンホンはこうした試みにすでに10年以上にわたって取り組み続けている。というのも彼は2010年に3枚組のアルバム『環境即興 Environment Improvisation』*をリリース、雨音や鳥の鳴き声、羽虫の飛び交う音といった自然環境の響きから、人びとの生活音、例えば日常会話やテレビから流れる音声、果ては酒場から聞こえてくる楽しげな音楽までをも相手取りながらギターによる即興演奏を行ない、その後も環境音と即興演奏を統合する独自の方法論を探求してきているのだ。今作では「おもちゃを片付けようとしない子供たち」や「夕食後のキッチンの片付け」、「夜10時、母はまだ咳き込んでいた」といった各楽曲のタイトルが示すように、まるでドラマ仕立てで日常生活のワンシーンを切り取るような環境音の響きとともに演奏を行なう内容となっている。

 冒頭で述べたように『The Wire』が中国のアンダーグラウンドなシーンを相次いで取り上げているものの、ジェンホンをはじめ中国で活躍するミュージシャンたちの多くは独自のコンテクストですでに長期間の活動を継続してきているのであり、その蓄積を見落としてはならないということは付け加えておきたい。なお、ギタリストとしてのジェンホンの活動を辿り直した記事が2019年に Bandcamp に掲載されているほか、コロナ禍に見舞われて以降の中国の実験的な音楽シーンについてはウェブ・マガジン『Offshore』主宰の山本佳奈子さんが多数のコラムを精力的に執筆されているので、あわせてお読みいただけるとより理解が深まるのではないかと思います。

*『環境即興 Environment Improvisation』は現在Bandcampでそれぞれ『十二境 Twelve Moods』『空山 Empty Mountain』『在这里 Here Is It』として個別に購入することもできる。

Koji Nakamura - ele-king

 多作で知られるナカコーが、CD-Rのみで展開していた「Texture」シリーズ。その全24枚250曲もの膨大な楽曲群のなかから、20曲を厳選した編集盤『Texture web2』が、配信限定でリリースされている。「2」と付いているとおり、昨年の『Texture Web』に続く試みだ。エレクトロニカやアンビエントなど、ナカコーの実験的な側面を知るのに持ってこいの作品なので、ぜひチェックを。

ナカコーが、CD-Rのみで販売していたTextureシリーズ全24作品250曲の中から、20曲を選曲したアルバム「Texture web2」が8月13日より配信スタート。

Koji Nakamraが2014年よりスタートさせた、CDRのみで販売されているTextureシリーズは、ナカコーの作品すべての通ずるテクスチャ音源集。2021年8月現在で、24枚250曲に及ぶ作品が発表されている。このシリーズは、コレクターも多く発売するも、すぐ完売を繰り返している作品群。そのTextureシリーズの中から20曲をセレクトし、配信限定アルバムとして発表したのが「Texture web2」。エレクトロニカからアンビエント・ドローンまで、インストゥルメンタルの楽曲で構成されている。サブスクで気になったらナカコーが運営するレーベル「Meltinto」でCD-R作品もチェックしてみて欲しい。

商品概要

Koji Nakamura / Texture Web2
MLT-1009
2021/8/13 on streaming

▶︎配信URL: https://linkco.re/zhZrf2ua

01. Computer In Love from Texture01
02. A Vision/A Dream from Texture02
03. Flower from Texture03
04. Ne U/A gE from Texture04
05. PRE from Texture05
06. Dead Moon from Texture06
07. Tyche from Texture07
08. Video Loop1 from Texture08
09. M o l t from Texture09
10. StigmA God Area from Texture10
11. Unkown Test from Texture11
12. Joy from Texture12
13. 826 from Texture13
14. Oboro from Texture14
15. Nocturne from Texture15
16. Snake Eater from Texture16
17. White Room from Texture17
18. Aura from Texture18
19. Border/Mind from Texture19
20. Red Sun from Texture20

OFFCIAL URL
https://kojinakamura.jp/

PROFILE
ナカコーことKoji Nakamura。1995年地元青森にてバンド「スーパーカー」を結成し2005年解散。その後、ソロプロジェクト「iLL」や「Nyantora」を立ち上げる。その活動はあらゆる音楽ジャンルに精通する可能性を見せメロディーメーカーとして確固たる地位を確立し、CMや映画、アートの世界までに届くボーダレスなコラボレーションを展開。その他remixerとしても様々なアーティトを手がけ遺憾なくその才能を発揮している。現在はフルカワミキ、田渕ひさ子、牛尾憲輔と共にバンド「LAMA」として活動。そして、2014年4月には自身の集大成プロジェクトKoji Nakamuraを始動させ「Masterpeace」をリリース。同年10月には大阪クラブクアトロ、名古屋クアトロ、恵比寿リキッドルームでワンマンライブを行った。キャリアを重ねつつも進化し続けるナカコーを示唆するライブとなった。現在は、Koji NakamuraとアンビエントプロジェクトNyantoraや、ダークロックユニット「MUGAMICHILL(ナスノミツル、中村達也、ナカコー)」を中心に活動中。また、2017年4月よりスタートした“Epitaph”プロジェクトは、CDリリースやダウンロード販売を想定せず、ストリーミングのみをターゲットとし、プレイリスト(≒アルバム)は、ナカコーの新作でありながら、彼の気分でそこに収められている曲が変わり、バージョンが変わり、曲順すら変わっていた。1ヶ月に1度2~3曲アップロードされており、DAW+アクセスモデル時代の新しい表現のトライだった。プロジェクトスタートより約2年。そして前作より約5年。2019年6月26日に「Epitaph」を遂にCD化した。同時期には関西テレビ他放映の連続ドラマ「潤一」の主題歌と劇伴音楽を担当。さらに、連続ドラマ「WOWOWオリジナルドラマ アフロ田中」の、メインテーマ曲と劇伴音楽を担当するなど、音楽の分野で多岐にわたり活動中。

Meltinto
https://meltinto.theshop.jp/

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