「S」と一致するもの

クラウトロック大全 増補改訂版 - ele-king

ドイツ・ロックの決定版ディスクガイドが復活!
70年代クラウトロックから80年代ノイエ・ドイチェ・ヴェレまでの主要作品を網羅

約40ページ増加、新たにタイトルを追加し合計868タイトルを掲載、
旧記載部分も大幅に差し替えや加筆修正を施した増補改訂版

A5判/オールカラー/304頁

[著者]
小柳カヲル
1967年新潟県生まれ。大学時代は高校の理科教員を目指していたが、卒業後は化学エンジニアとして数年間のサラリーマン生活を経験。
1996年より Captain Trip Records で勤務し、クラウトロックをはじめとする数々のリリース企画を担当。
2011年よりスタジオ兼レーベルの Suezan Studio として独立。独自の視線や考察、あまたのミュージシャンとのコネクションは、ごく一部から熱狂的な支持を受けている。
現在は新潟に住み、クラウトロックだけでなく新潟県と近県の過去の音楽シーンにも目を向け、編纂と記録を続けている。


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The Wooden Glass featuring Billy Wooten - ele-king

 Pヴァイン手がける「VINYL GOES AROUND」シリーズが好調だ。グラント・グリーンやリチャード・エヴァンスのアルバムに参加していたことでも知られるインディアナポリスのヴィブラフォン奏者、ビリー・ウッテン。先般Tシャツ付きの7インチが発売されているが、今度は1972年録音のジャズ・ファンクの名ライヴ盤『Live』が、カラー・ヴァイナルでリリースされる。限定200枚のシリアル・ナンバー入り。ピンクの彩りが鮮やかな1枚、これまた売り切れ必至でしょう。ご予約はお早めに。

ジャズ・ファンク・アルバムの金字塔、THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live』のカラーヴァイナルがシリアルナンバー付でVINYL GOES AROUND限定リリース。

グラント・グリーンのBlue Note盤『Visions』やリチャード・エヴァンスのアルバムにも参加しているインディアナポリスのヴィブラフォン奏者、ビリー・ウッテン。ヴィブラフォン、オルガン、ギター、ドラムという編成による当時のウッテンのレギュラー・バンド “ザ・ウドゥン・グラス” が1972年にインディアナポリスの小さなクラブ “ナインティーンス・ホール” でみせた熱演は、もはや伝説として語り継ぐべき奇跡的なライヴ・レコーディング!

その模様を収めたジャズ・ファンク・アルバムの金字塔と言うべき THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live』がピンクのカラー・ヴァイナルにて VINYL GOES AROUND のサイト限定でリリースとなります。ナンバリング入り、200枚の限定生産です。

グルーヴ度、白熱度、そしてオーディエンスの熱狂度とその全てを空前絶後と形容するにふさわしい大名盤としてジャズ・ファンク/レア・グルーヴファンを狂気乱舞させたまさに伝説の1枚です。

THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live (Color Vinyl)』予約ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

アーティスト:THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN
タイトル:Live
品番:VGA-5003
フォーマット:LP (カラーヴァイナル)(シリアルナンバー付)
価格:¥4,950 (税込)(税抜:¥4,500)
販売開始日:4月28(木) 10:00 (日本時間) より受付開始
※発送は2022年5月10日(火)を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

Abraxas - ele-king

 PiLのマスターピース『Metal Box』(79)に収録された“Radio 4”はキース・レヴィンがひとりで多重録音したもので、2016年のデラックス・ヴァージョンに収録されたレコーディング・テイクを聞くと、当初はカウボーイ・インターナショルのケン・ロッキーがドラムを叩いていたことも明らかになった(尺も倍近い→https://www.youtube.com/watch?v=se-Z6EO5pfA)。ベースもわざわざジャー・ウォッブルをマネて弾いたものだとレヴィンは述懐していて、広いスタジオでポツンと作業していた「冷たさ」が曲のムードに反映されているという。そして、最終的にドラムを抜いて短くエディットしたものが『Metal Box』のラストに収められ、それはまるでビートルズ“Good Night”と同じくチル・アウト効果をもたらすことになる。『Metal Box』という複雑怪奇な迷宮に鮮やかな出口を用意してくれたというか。“Radio 4”はビニール袋のようなものが膨らんだり縮んだりするようなイメージを繰り返す。それはオーケストラが短いコードしか弾かないとどうなるかというアイディアから出発した結果だそうで、ドラムを抜くことでその効果は最大限まで引き上げられた。『Metal Box』はどの曲も印象深く、いまだに得体の知れない感じがあり、とりわけ“Radio 4”はミステリアス度が高い。

 チリからフアン・マッジョーロ(Juan Maggiolo)とドイツ系らしきヴェルナー・ハインツ(Werner Heinz)によるデビュー作を聴いた時、それはまるで“Radio 4”が8つのヴァリエーションに増幅されて蘇ってきたという印象を僕は持った。かすかにジャー・ウォッブルのようなベース・ラインが聞き取れる曲もある。スピーディーなアンビエント・ドローンを基本にポップな味付けが多種多様に施されたカラフルな展開。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが“Radio 4”をカヴァーしたり、リミックスしたり、様々な手法を用いてカスタマイズしたような……。ドローンといっても大して持続せず、細切れになっているせいでそう感じるだけかも知れない。とはいえ、キース・レヴィンのいう「冷たさ」も似通っているし、頻繁に転調するのも一因をなしている。何度も聴き込んでいるうちにやはり違うとは思うものの、初期イメージから脱却したくない気分も手伝って、いまのところ『Abraxas』は僕にとっては43年後の“Radio 4”である。アブラクサスとはちなみにグノーシス思想における偽神で、選ばれし者を天国に連れていくというニューエイジのフェイクのような存在。その姿はヒトの体にライオンの頭と下半身は蛇。



 南米のアンビエント・ミュージックはどうも得体が知れない。フアン・ブランコであれ、トマス・テロであれ、アカデミックな手法を使ってもその様式美に呑み込まれないという共通点があり、アブラクサスの2人がアカデミックなキャリアを持っているかどうかも想像がつかない。ついでにいえばアロンドラ・デ・ラ・パーラのようなクラシックの人でさえ、指揮をしながら踊りだしたり、パリの観客が手拍子を始めるなどアカデミックの枠組みは崩壊している。アブラクサスの背景にはなんとなくクラブ・カルチャーが横たわっているような気もするけれど、ヴィラロボスやアトム・ハートが撒いてきた種が花開いたにしてはタイミングが遅いし、そもそもドイツ資本とつながりがあるのかないのかよくもわからない。ここにあるのはイメージ豊かな曲の数々と曲の雰囲気には悪い予感のかけらもないこと。チリは一時期はコロナによって危機的状況を呈したものの、現在では南半球でもっともコロナの危険から遠い国という評価を受け(新自由主義に基づく税制に改められたことで連日のようにデモが起こったコロンビアとは対照的)、フランツ・エデルマン賞まで受賞している。そういった国の気分が感じられる作品でもある。つーか、『アンビエント・ディフィニティヴ 増補改訂版』を校了した10日後にリリースされやがった。く~。

Caterina Barbieri - ele-king

 〈Editions Mego〉からリリースされた2019年の前々作『Ecstatic Computation』が高い評価を獲得したミラノのプロデューサー、カテリーナ・バルビエリ。ロックダウン中に録音されたという新作『Spirit Exit』が7月8日にリリースされる。なんでも詩や哲学にインスパイアされたそうで、バルビエリ本人のコメントによれば「世界の終わり、もしくはテレパシーのいち形態へのラヴ・ソング」だという。最終曲 “The Landscape Listens” は、イーノの人気曲 “An Ending (Ascent)” のような上品さと穏やかさで死にアプローチしている曲らしい。現在 “Broken Melody” が先行公開中です。


artist: Caterina Barbieri
title: Spirit Exit
label: light-years
format: digital / 2LP / CD
release: July 8, 2022

tracklist:
01. At Your Gamut
02. Transfixed
03. Canticle of Cryo
04. Knot of Spirit (Synth Version)
05. Broken Melody 04:26
06. Life at Altitude
07. Terminal Clock
08. The Landscape Listens

Sonic Youth - ele-king

 サーストンには2014年の『The Best Day』の来日時取材したし、その4年後のキムのファースト・ソロ『No Home Record』は待った甲斐のあったというしかない力作だった。リーはリーとてポップ・ソングから実験作まで意欲的で、リリースした作品のいくつかにはスティーヴ・シェリーの名前もみえる──と、ソロ活動もすっかりイタについたいま、それぞれの事情もふまえると再結成の可能性は遠のいたにちがいないが、ソニック・ユースと聞くとパブロフの犬のごとき反応をみせるものもすくなくない。かくいう私がそのくちで『In/Out/In』と題した未発表曲集のリリースを知るやいなや5曲45分ほどの音源に耳を傾け、ソロ作ともことなるソニック・ユースという集団に固有の磁場とも空間性ともいえるものを再認識したのだった。
 『In/Out/In』は2000年から2010年にかけて録音した楽曲を編んだコンピレーションで企画盤への既出音源をふくむ。SYは2011年に活動を休止したので、2000年代の十年紀はSYの最後の10年にほぼかさなっている。アルバムでいえば、2000年の『NYC Ghosts & Flowers』から2009年のラスト・アルバム『The Eternal』まで、いわば成熟期の背景を記録したのが本作といえるであろう。
 30年を超えるSYの活動歴をステージごとに区切ると、81年の結成から88年の『Daydream Nation』にいたるアングラ期、90年代の幕開けをつげた『Goo』以降のオルタナ期と、2000年代以降の成熟期となろうか。とりわけ本作の射程となる成熟期は編成的にも音楽的にも実験性が高く、大作志向から楽曲主体まで作品の傾向も多様性に富む。収録曲の内訳をみると、1曲目の “Basement Contender” と3曲目の “Machine” が2008年、2曲目の “In & Out” は2010年と本作中もっとも新しい。レコードではB面にあたる後半の2曲 “Social Static” と “Out & In” は2000年で、タイトルの由来となった “In & Out” と “Out & In” は本作のリリース元である〈Three Lobed Recordings〉のオムニバス『Not The Spaces You Know, But Between Them』でいちど世に出ている。発掘作の例にもれず、本作もアイデアスケッチのきらいはあれど、おのおのの素描にはこの時期特有のタッチがある。ラスト・アルバム『The Eternal』と相前後する前半の3曲は中平卓馬にならえば「原点復帰」となる2000年代後半らしくソリッドなバンド・スタイルを深い諧調のギターで肉づけする方向性をとっている。変則チューニングをとりいれたリフと分散和音のコンビネーションはサーストンとリーの専売特許だが、『Rather Ripped』(2006年)のツアーを境にペイヴメント~フリー・キトゥンのマーク・イボルドが加入を経てキムをふくめたトリプル・ギター体制へと編成の選択肢の幅はひろがり『The Eternal』を基礎づける変化となった。前半の3曲はその前段階だが、気心しれた四者のリラックスした音のやりとりからSYというほかないサウンドがたちあがるのが興味深い。反復フレーズを土台に多彩な音色を交換するなかで加速度を増す冒頭の “Basement Contender”、つづく“In & Out” はよく似たムードの対になる2曲だが、前者が2008年当時マサチューセッツ州ノーサンプトンにかまえていたサーストンとキムの自宅地下での録音であるのにたいして、後者は2010年のポモナでのサウンドチェック音源に手を加えたものと、時期的な隔たりがある。一方で『The Eternal』のセッション時のアウトテイクとなる3曲目の “Machine” は先の2曲とは対照的に構成もかたまっておりアルバムに入ってもよかった気もするが陽の目をみなかった。もうひとひねりほしいと判断したと思しいが、ベースレスながら分厚いサウンドは『The Eternal』のみならず、その先の展開までも彷彿させただけに活動休止はなんとももったいない──と嘆息をもらす一方で、形式としてのロックの可能性をためしつづけた30年の道のりには頭がさがるばかり。
 後半の2曲は遠大なSY史において実験性がピークをむかえたころの楽曲で、不動の4人にジム・オルークを加えた布陣による。録音はいずれも2000年、この年SYはアルバム『NYC Ghosts And Flowers』をリリースし『Murray Street』(2002年)、『Sonic Nurse』(2004年)とつづくNY三部作の端緒をひらいた。他方前年の1999年にはケージ、カーデュー、ウォルフ、ライヒ、小野洋子や小杉武久ら20世紀前衛の作品をとりあげた『Goodbye 20th Century』を自主レーベル〈Sonic Youth Records〉から世に問うている。“Social Static” “Out & In” と題した2曲の背後には上記のようなながれがあり、それを反映するようにこの2曲では実験的な要素が前面に出ている。ただし楽曲の出自にはちがいがある。本作中もっともアブストラクトな4曲目の “Social Static” はクリス・ハビブとスペンサー・チュニクによる同名の短編映画のサウンドトラック。私は全編は未見ながら動画共有サイトにアップした抜粋版──大勢の男女が全裸でダイインする──から想像するに、政治的意図をもった実験映画との印象をもった。制作の過程はさだかではないが、おそらくフリーフォームの即興音源(の断片など)を映像にあわせてエディットしたのであろう。スーパー8の質感がノイジーなサウンドにマッチしている。サウンドは出だしこそSYらしさを感じさせるが、楽器の記名性はまもなく後景にしりぞき、中盤以降はピエール・シェフェールとアルヴィン・ルシエをかけあわせてノイズ化したような展開をみせる。つづく “Out & In” はバンド・サウンドではあるものの、前半とはうってかわって、どんよりとした展開にさまざまな音楽的情景が去来する構成をとっている。ともすれば単調になりがちな10分を超える長尺曲を持続させる手法にはスティーヴ・シェリーのドラミングもあいまってクラウトロックを想起するが、SYはさらにそこに音の襞にわけいるような響きをつけくわえる。『Murray Street』に入っていてもおかしくない仕上がりにうなりつつ、このような音源が眠っているなら出し惜しみしないでほしいと思ったのだった。

Soccer Mommy - ele-king

 グラミーにもノミネイトされたことのあるUSのシンガーソングライター、ソフィー・アリソンによるプロジェクト=サッカー・マミーが6月24日に新アルバム『Sometimes, Forever』を発売する。プロデューサーは意外なことに、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。ポップなロック・サウンドと10年代を代表するエレクトロニック・プロデューサーの組み合わせ、どんな化学反応が起きるのか注目です。

米シンガー・ソングライター、サッカー・マミーがワンオートリックス・ポイント・ネヴァーをプロデューサーに起用した新アルバムから2ndシングルをリリース!
米シンガー・ソングライター、サッカー・マミーが6月24日にリリースする新アルバム『Sometimes, Forever』からの2ndシングル「Unholy Affliction」をリリースしました。この曲は、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティンをプロデューサーに起用し、サッカー・マミーことソフィー・アリソンが持っている美しいテクスチャーと不穏な雰囲気を同時に表現しています。

ソフィーはシングル「Unholy」について「スタジオでのレコーディングは当初思い描いていたものとは全く違って本当に楽しかった。ダンがデモ・ボーカルでとてもクールなシークエンスを作ってくれて、それが曲の大部分になったの。2つの異なるバージョンの曲が混ざり合っているのも気に入っている」とコメントしています。

“悲しみも幸せも永遠ではない” というアルバムのコンセプトを掲げ、『Sometimes, Forever』は、レトロなサウンド、個人的な動揺、現代社会から影響される障害など、様々なアイディアを統合してオリジナルな作品に仕上げています。アルバム・タイトルの『Sometimes, Forever』は、良い感情も悪い感情も循環しているという考え方にちなんでいます。「悲しみや虚しさは過ぎ去りますが、喜びと同じように必ず戻ってくるのです」とソフィー・アリソンはコメントしています。

ニューウェーブやゴスといったシンセ系のサブジャンルを巧みに取り入れた今作で、ソフィーは彼女のビジョンをサポートするために、プロデューサーにワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティンを起用しました。この組み合わせは意外に思われるかもしれませんが、実際に聴いてみると、2人のアーティストが同じような創造性を持っていることがわかります。アルバムでダニエル・ロパティンは無数のシンセサイザーと緻密なアレンジを駆使し、ソフィーが行った素晴らしいライブ・テイクを卓越したスタジオ技術でミックスし壮大な作品に仕上げています。新アルバムは、これまでで最も大胆で冒険的な作品であり、現代のロック・シーンの中で最も才能あるソングライターの一人としてのソフィー・アリソンの地位を確固たるものにするでしょう。

サッカー・マミーは、2020年にグラミー賞にノミネートされ、高い評価を受けた2ndアルバム『color theory』をリリース。このアルバムのリリース後、アリソンはバーニー・サンダースのオープニングを務めるなどして大絶賛を浴び、グラストンベリーなどの大型フェスティバルに出演。『color theory』は、ビルボードチャート「トップ・ニュー・アーティスト・アルバム」と「オルタナティブ・ニュー・アーティスト・アルバム」の2部門で1位を獲得しています。

先行シングル「Shotgun」のMVはこちら
https://youtu.be/I1xOoqD8jkI

[アルバム情報]

アーティスト:Soccer Mommy (サッカー・マミー)
アルバム:Sometimes, Forever (サムタイムス、フォーエヴァー)
レーベル:Loma Vista Recordings
発売日:2022年6月24日(金)

トラックリスト
01 Bones
02 With U
03 Unholy Affliction
04 Shotgun
05 newdemo
06 Darkness Forever
07 Don’t Ask Me
08 Fire in the Driveway
09 Following Eyes
10 Feel It All The Time
11 Still

ストリーミング・リンク:https://found.ee/pGb6O

バイオグラフィー

アメリカ、ナッシュビル育ち、ソフィー・アリソンによるソロ・プロジェクト、サッカー・マミー。Tascamのデジタル・レコーダーを買ってレコーディングした楽曲がBandcamp内でバズが起き始め、いくつかのライブか決定、最終的にはレコードの発売契約とともに、2017年賞賛の声を集めたベッドルーム・レコーディングのコンピレーションへの参加を果たした。その後、ベッドルームを飛び出しフルバンドを率いて、初のスタジオ・アルバム『クリーン』を2018年にリリース。2019年には初来日を果たす。2020年にセカンド・アルバム『color theory』をリリース、ビルボード「トップ・ニュー・アーティスト・アルバム」と「オルタナティブ・ニュー・アーティスト・アルバム」の2部門で1位を獲得。第64グラミー賞「最優秀ボックスセット/スペシャル・リミテッド・エディション・パッケージ」にノミネート。今までスティーヴン・マルクマス、ミツキ、フィービー・ブリジャーズ、ケイシー・マスグレイヴスなどと共にツアーを周っている。

The Smile - ele-king

 昨年より大きな話題を集めていた新バンド、トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッドトム・スキナーからなるザ・スマイルがついにアルバムをリリースする。告知にあわせ、新曲 “Free In The Knowledge (知のなかの自由)” のMVも公開された。
 6月15日に発売される同名のアルバムには、これまで単発で発表されてきた5曲すべてが収録される。プロデューサーはおなじみのナイジェル・ゴドリッチ。フル・ブラス・セクションも参加しているという。どんな作品に仕上がっているのか、楽しみに待っていよう。

The Smile - Free In The Knowledge

THE SMILE
トム・ヨーク×ジョニー・グリーンウッド×トム・スキナー
ザ・スマイル待望のデビュー・アルバム
『A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION』発売決定!!

レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッド、フローティング・ポインツやムラトゥ・アスタトゥケのバックを務め、現在はサンズ・オブ・ケメットで活躍する天才ドラマー、トム・スキナーによる新バンド、ザ・スマイルが待望のデビュー・アルバム『A Light For Attracting Attention』を〈XL Recordings〉よりリリース。新曲 “Free In The Knowledge” とレオ・リー監督による同曲のMVが公開された。

今回公開された “Free In The Knowledge” は2021年12月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたイベント「Letters Live」の一環として、パンデミック以降初めてトム・ヨークが観客を前に演奏して話題を呼んでいた。ザ・スマイルはこれまでにシングル “You Will Never Work in Television Again”、“The Smoke”、“Skrting On The Surface” を連続リリースし、4月3日に発表された “Pana-vision” は英人気BBCドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」の最終回に起用された。

アルバムは5つのシングルを含む全13曲を収録し、盟友ナイジェル・ゴドリッチがプロデュースとミキシングを務め、名匠ボブ・ラドウィッグがマスタリングを担当。収録曲にはロンドン・コンテンポラリー・オーケストラによるストリングスや、バイロン・ウォーレン、テオン&ナサニエル・クロス、チェルシー・カーマイケル、ロバート・スティルマン、ジェイソン・ヤードといった現代のUKジャズ奏者たちによるフル・ブラス・セクションが参加。5月13日(金)にデジタル配信され、日本盤CDは6月15日(水)、輸入盤CD/LPは6月17日(金)に発売。

本作の日本盤CDは高音質UHQCD仕様で解説および歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックを追加収録。輸入盤は通常盤CD/LPに加え、限定イエロー・ヴァイナルが同時リリース。本日より各店にて随時予約がスタートする。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: The Smile
title: Free In The Knowledge
release date: 2022/06/15 WED ON SALE

CD 国内盤
XL1196CDJP
(解説・歌詞対訳付/ボーナストラック追加収録/高音質UHQCD仕様)
2,600円+税

CD 輸入盤
XL1196CD(6/17発売予定)
1,850円+税

LP 限定盤
XL1196LPE(6/17発売予定/限定イエロー)
4,310円+税

LP 輸入盤
XL1196LP(6/17発売予定/通常盤)
2,600円+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12758

Raw Poetic - ele-king

 流行のスラングを使わない、ポップ・ミュージックを参照しない。そんなヒップホップがあってもいいだろう。小学校の先生をやりながら、子ども向けの本を執筆し、音楽も続ける、そんなラッパー、いるに越したことはない。で、ここにいる。ワシントンD.C.のロウ・ポエティック、2年前に叔父のアーチー・シェップと一緒に1枚の、傑出したジャズ・ラップ・アルバムを発表した男だ。いま聴いても、収録曲の“チューリップ”はすごいと思う。

 本人はそれを強調されたくないだろうけれど、60年代〜70年代のブラック・パワーの時代に活躍したジャズのリジェンドが親戚にいるというのは、まあ、インパクトはある。しかもそのカタログのなかの1枚でコーラスを担当した元ブラックパンサー党員が母親だったりして、きっとロウ・ポエティクスは幼き頃から良き教えを受けたのだろう。鷹は飢えても穂を摘まずではないが、彼にとってのプライドはメインストリームとは別の方角に向いている。
 だからといって、ロウ・ポエティックの通算6枚目のソロ・アルバムは、マニア向けの取っつきにくいものではない。むしろその逆で、聴きやすく親密でさえある。ここにはア・トライブ・コールド・クエストやデ・ラ・ソウルの成分があるし、古典主義的なのだが、クリシェに収まらないフリーキーさがあって、そのコンセプトはちょっとムーディーマンなんかとも近い。
 でもね、これはなんと言ってもリズムが格好いいんだ。ジャズ・ファンク、生ドラムと打ち込み、オールドスクール流のスクラッチ、ドラムンベース風のリズムだってある。とくにすごいのはベース。でしゃばったりしないし、あくまで黒子なのだけれど、ゴムのように音符に絡んではシンコペートし見事なうねりを生んでいる。調べてみたらムーア・マザーと一緒にジャズ・コレクティヴのイリヴァジブル・エンタングルメント(Irreversible Entanglements)をやっている人だった。
 
 とにかく、シェップとの『Ocean Bridges』によってさらにその知名度を上げたロウ・ポエティック(といっても彼にはすでに15年以上のキャリアがあり、ゼロ年代はジャジー・ヒップホップ・グループ、パナセアのメンバーでもあった)は、同作を作った主要メンバー──旧友でありトラックメイカーのダム・ザ・ファッジマンク、そしてIEからベースのルーク・スチュワート、ギターのパトリック・フリッツ──とのセッションにおけるリズムを継承した。その結果が本作『ラミネイテッド・スカイズ』というわけだ。UKのレーベルからのリリースとあって注目されているし、賞賛を集めてもいる。『Ocean Bridges』ほどジャズ全開ではないが、叙情的で、曲の細部にまで手が込んでいるがアルバムとしてのまとまりは良く、全体的に清らかで聴いていて気分が良い。この暗澹たる時代、カラフルな意匠をまとった、グルーヴィーで微笑ましいレコードが歓迎されないはずがない。

 黒人の社会的立場の不条理を描いたラルフ・エリソンの小説『見えない人間』にインスパイアされた曲もあるが、ぼくが気に入っているのはアルバム中盤の3曲。ストリングスがこってり入った“Intertwined”、そのエレガントな叙情詩を引き受けながらロウ・ポエティクスのメロディアスなラップが歌へと移行する“Sunny Water”、そしてジャズ・ファンクの大作“Hey Autumn”。リズムを基軸に、シンセサイザー、ギターとヴィブラフォン、パーカッションやスクラッチで構成されるこの曲には、本作の良いところが凝縮されている。みんなでジャムっているライヴ感覚があって、ファンキーかつスペイシーで、しかも緻密で温かい。1曲だけ選ぶなら迷わずこれ。

 ラップをしながらいつの間に歌っているというのがロウ・ポエティックのひとつの芸風で、それはそれでメロディアスだったりするのだが、彼の本作におけるいちばんの功績は、このコレクティヴをまとめ上げたことだろう。そして、繰り返すが、このアルバムのもうひとりの主役はルーク・スチュワートだ。彼のベースとダム・ザ・ファッジマンクのビートによる相乗効果こそ本作の肝である。
 アルバム制作はコロナ前の2019年からはじめたというが、周知のように世界ではそれからいろんな大きなことが次から次へと起きている。時間はあったが、ロウ・ポエティックは当初のメッセージを変更しなかった。『What's Going On』を改変する必要がないように、その必要がないものを目指していたからだと彼はある取材で話している。アルバムを締めるラヴリーな“Cadillac ”には、パートナーへの愛情表現に混じって、教室で子供に九九を教える際に使ったフレーズも入っているそうだが、たしかにそれなら戦争が起きようと変える必要はないよね。

Sote - ele-king

 いま聴いても名作だと思う。ソテことアタ・エブテカールの前々作『並行ペルシア(Parallel Persia)』は、2010年代末期の見過ごせないリリースのひとつだ。パウウェルの〈Diagonal〉から送り出されたそれは当時、ホーリー・ハーンダンなどと並ぶエレクトロニック・ミュージックの最新型の1枚として注目を集め、高い評価を獲得するに至った。リミキサーにラシャド・ベッカーマーク・フェルのようなヴェテランが配されたことも、同作がどのような流れで受容されたのかをよく物語っている。
 複雑な構造を持つソテの音楽についてはこれまで、クセナキスオウテカフロリアン・ヘッカーロレンツォ・センニなどが引き合いに出されてきた。あまりドラム音を用いず高音部で展開を進めていくところは、たしかに似ているかもしれない(が、シングル曲などではしっかりキックを入れていたりもする)。ちょうど20年前、〈Warp〉からドリルンベース~ブレイクコアのフォロワーとして登場してきた彼は、2010年代、よりハイブロウに寄った電子音楽の領域で再浮上を果たしたのだった(まあオウテカはちょっと文脈が異なるけれど)。

 ただしこれはあくまで彼のいち側面のみを強調した描写にすぎない。ことはそう単純ではない。テヘラン在住の音楽家たるソテ最大の特徴は、それら現代エレクトロニック・ミュージックの尖鋭性をイランの伝統音楽とぶつけるところにある。おもに欧米で発展を遂げた電子音楽と、西アジアの伝統音楽とのあいだで折りあいをつけること──そこにはふたつの対話が潜んでいる。ひとつは「中心」と「周縁」との水平的・地政学的な対話。もうひとつは「現在」と「過去」との垂直的・歴史的なそれだ。
 会合は穏便には済まされず、むしろ爆撃機が去ったあとのような混沌を生み出している。イランの伝統音楽についてぼくはまったくの無知だけれど、その衝突のすさまじさにいつも強く惹きつけられてしまう。彼は無難な異国情緒、雰囲気としての東洋には訴えない。ソテは西洋とアジアを、最新テクノロジーと伝統を喧嘩させてみせる。そこで飛び散った火花の美しい集積が『並行ペルシア』だった。
 混沌は、彼がイランの電子音楽家の第二世代に属することに由来している。テヘラン在住の建築と音楽の研究家、カームヤール・サラヴァティが『The Quietus』に記しているところによれば、旋律やリズム、コンセプトなどを古典音楽にもとめていたのが第一世代で、逆に国際的なネットワークにこそ居場所を見出し、古典音楽からは切り離されているのが第三世代だという(https://thequietus.com/articles/31219-sote-majestic-noise-made-in-beautiful-rotten-iran-review)。どちらか一方に振り切れるのではなく、伝統にも最尖端にもアプローチすること。それが第二世代たるソテのやり方だ。〈Mego〉の故ピタに捧げられた今回の新作『美しくも腐りきったイラン産の厳かなるノイズ』はどうか。

 まず注目しておくべきは最初の2曲だろう。“いないことにされている(Forced Absence)” ではきれいなハープのような音が、容赦なく降り注ぐ弾丸の嵐から逃亡を図っている。つづく “やってはいるんだけど、親父、連絡がつかないんだよ(I'm trying but I can't reach you father)” も過激だ。ミニマルな電子音の反復をバックに、声や笛のような音の断片が全力で駆け抜けていく。どうしようもない切迫感。これら2曲を聴くとやはり「戦争」の二文字を思い浮かべてしまうが、他方それらはどこかヴィデオ・ゲーム的でもある。もしくはネット越しに眺める戦争?
 なんにせよ激しいのはここまでで、3曲め “暮らし/人生(Life)” はメロディにフォーカスし、さびしげではあるもののどこか生を肯定するようなポジティヴな音世界を演出していく。似た情景を出現させる4曲め “不可解な存在(Arcane Existence)” も、もの悲しさのうちに力強さを携えている。本作の制作過程は「自己療法」でもあったという。攻撃的な曲と私的な記憶を喚起させる曲との同居から推すに、これはエイフェックスでいうところの『Drukqs』にあたるアルバムなのかもしれない。
 が、アルバムは中盤以降また異なる表情を見せていく。サイレンのような高音部がやり場のない遠吠えのごとく轟く5曲め “イヌども(Dogs)” や、ベースが不安感を煽りながら昇降する7曲め “苦悶の弦(Strings of Agony)” など、まるでひとつのことばで整理されることを拒むかのような構成だ。この混沌こそ彼の本懐だろう。ソテの音楽は、わかりやすい整理をこそ拒んでいる。
 そもタイトルからしてアンビヴァレントだ。ノイズなのに、威厳に満ちている。美しいのに、腐ってる。今回ソテはあからさまにイランの伝統的な要素を導入しているわけではない。にもかかわらず本作は、西洋やブラックの文脈からはけっして出てこないだろう、特異な電子音楽を打ち鳴らしている。

 革命後のイランでは音楽、とりわけロックが規制されてきた。禁止されているわけではないものの、許可が必要なのだ。やっていい音楽と、ダメな音楽がある。エレクトロニック・ミュージックはどうか? おそらくはその抽象性ゆえだろう、意外なことにほぼ検閲を気にしなくていい状況にあるらしい。先述のサラヴァティによれば、むしろフェスが開催されたり賞が設けられたり、活況を呈しているという。
 とはいえ大学の協力を得て実践されるそれは十中八九、アンダーグラウンドなレイヴとはまた別次元にあるエレクトロニック・ミュージックに違いない。当初ジャングルのリズムを用いてデビューしてきたソテは、そのことについてどう考えているのだろう。ダンスが規制される地で音楽をやるためには、うまくハイ・カルチャーに順応しなければならない? ここにもまた単純な図式からは見えてこない、複雑な事情が横たわっている。
 あるいはこんな話もある。つい最近ロシアに追い抜かれるまで、国際社会からもっとも制裁を食らっていたのはイランだったらしい。二か月前、いったいだれがそんな事実を気にとめただろう? それに、制裁のあおりを受け苦しむのはいつの世も一般人、とりわけ貧者と相場が決まっている。「いないことにされている」ものはたくさんある。
 政治上さまざまな問題を抱えるイランではあるが、ソテの音楽は「正義対悪」のような単純化から百万光年離れている。『美しくも腐りきったイラン産の厳かなるノイズ』が響かせるサウンドの冒険は、世界の難しさをそのまま呈示しようとしているかのようだ。

interview with Seiji Rokkaku - ele-king

 六角精児は、たたずまいそのものが表現として成立する稀有な役者である。面構えにも、声にも、なにげない仕草にも、苦難続きの人生(今年6月で還暦)で蓄積されたすべての経験が体内でどろどろに混ざり合い発酵したような匂いがまとわりついている。猥雑にして崇高なエロスを湛えたその匂いを、あるいは “ブルース” と呼ぶ者もいるだろう。

 そんなブルースマンが、このたび初めてのソロ・アルバム『人は人を救えない』を発表した。無類の音楽好きの六角は、これまでもシンガー・ソングライターとして精力的に活動を続け、六角精児バンド名義での2枚のアルバム『石ころ人生』(2014年)、『そのまま生きる』(2019年)や下田逸郎とのコラボ・ワーク『唄物語/緑の匂い』(2017年)など、何枚もの音楽作品をリリースしてきた。シンガーとしての卓抜した技量があるわけではない。ポップ・スター的容姿に恵まれているわけでもない。音楽好きな個性派俳優の余技とみなされることだってあるだろう。だが彼の歌は誰にも似ていないし、誰の耳にも確かなひっかき傷を残す。快・不快は別にして。その歌が波乱に富んだ還暦男の人生そのものだから。その歌が素っ裸だから。

 『人は人を救えない』は、日本のフォーク/ロック系の名曲をカヴァしたコンセプト・アルバム(ラストの1曲だけは六角のオリジナル)だが、そのほとんどが70年代の、しかもかなりレアな作品で占められている。若林純夫 “雪の月光写真師” とか休みの国 “追放の歌” といった曲をカヴァする俳優がいたなんて、そしてそれがオリジナル・ヴァージョン以上にリアルに響くなんて、私は想像もできなかった。

 このアルバムを企画し、選曲作業でもイニシアティヴをとったのは、音楽マニアの間では70年代から伝説的に語られてきたレコード・ショップ、パイドパイパーハウスのオーナー長門芳郎氏である。そして、すべてのアレンジを手掛けるなど全体の音作りを仕切り、演出家として六角の歌を支えたのは、キーボード奏者の谷口雄氏(元・森は生きている)だ。「この数十年、僕がずっと聴きたかった作品が生まれた」という長門の言葉は、六角や谷口の気持ちも代弁しているはずだ。

 けっしてスマートではない。もちろんオシャレでもない。しかし六角精児の武骨な歌は確かに、私の胸にまっすぐに届き、深く強く響いている。


向かって左からパイドパイパーハウスの長門芳郎、六角精児、サウンド・プロデュースを手がけた谷口雄

自分で手さぐりで見つけてくるってのが大切だと思うんですよ。僕もそういう考え方で音楽を選んできて、今、アメリカン・ルーツ・ミュージックとかブルーグラスが心地良くなってる。

音を聴いて以降、今日の取材日がこんなに待ち遠しかったことも珍しいです。傑作ですね。

六角:いやあ、嬉しいなあ。最初、嫁さんに聴かせたんだけど、振り返ったら、まともに聴いてなくて、せんべい食ってましたから。大丈夫かな? って心配してたんですよ。いいのか悪いのか、自分ではわからないですからね。

長門:音は去年(2021年)暮れには完成していたけど情報解禁はこの3月だったので、周囲の反応もわからなかったしね。

自分ではわからないってのが、六角さんの魅力の大きなポイントだと思うんですよ。つまり、「俺はかっこいいことをやってるんだ」って自意識がまったくない。それがこのアルバムの良さでもあるし、六角さんの本質でもあると思います。

六角:僕はただ、アメリカンなアルバムにしたいなということぐらいしか考えてなかった。すごく信頼している音楽好きの友達に① “やつらの足音のバラード” と⑤ “各駅停車” を聴いてもらったら「これはいい、アリメカンだな、楽しみだ」と言ってもらえてホッとしましたが。

谷口:猫のオリジナル・ヴァージョンだと8ビートだった⑤ “各駅停車” は西海岸路線でやってもいいとは思ったんですけど、そのままだと平坦になってしまうなと、リトル・フィートやポール・バターフィールドのラインでアレンジしてみたんです。

最初聴いてすぐにこのアルバムはフライング・ブリトー・ブラザーズや初期イーグルス、ポコといったサザン~ウェスト・コーストのアメリカン路線で攻めたんだろうなと思いました。それにしても、一曲目が『はじめ人間ギャートルズ』のテーマ曲 “やつらの足音のバラード” ってのが驚きで。

六角:あれによって、アメリカンだという全体の方向性を提示したつもりです。

とにかく選曲がいいですよね。歌い手としての六角さんの身体の中で一番響く言葉とメロディだけを厳選したんだなと。どの曲もオリジナル以上に六角さんの曲になっていると思います。選曲はみなさんで話し合って?

六角:そうです。あと、もう一人、昔タワーレコードで働いていた北爪啓之さんと。元々、彼と長門さんが僕のソロ・アルバムを作りたいと言ってくれたんです。それで皆で選曲を始めたわけだけど、僕は僕で自分の歌いたい曲がありますが、僕が歌ったらどうなるんだろう? 楽しいんじゃないか? というような曲もみなさんがちょっとずつ持ち寄ってくれた。そこには長門さんや北爪さんの思い入れもあったりするわけで。それを全部アレンジしてくれたのが谷口さん。そのアレンジによって、ここでの自分の方向性が改めて決まった感じでした。一連の流れが芝居稽古のようなものですね。

人がお作りになられた曲なので、いい加減にはできない。自分なりの物語をちゃんとひとつ持たないといけない。役者だったらどうだろう? とか、より客観的に向き合ったりもしました。

準備段階での候補曲は全部でどれくらいあったんですか。

長門:30曲近くありました。すべて日本のフォークやロックの曲です。そこから11曲を選び、六角さんのオリジナル曲⑫ “お前の町へ” で最後をしめるという形にしました。

日本のフォークやロックのカヴァーだけをやることは最初から決まってたんですね。

長門:うん、そういう気持ちがありました。ただ、若い世代の谷口くんはオルタナ・カントリーなど新しい音楽にも詳しいし、六角さんもブルーグラスやカントリーなどへの造詣が深いので、ただのフォーク・カヴァー・アルバムにはならなかったというわけですね。

そもそも、長門さんと六角さんのつきあいはいつ頃からなんですか。

六角:僕は一方的に40年前から存じ上げてました。浪人時代、代々木ゼミナールの帰りによくパイドパイパーハウスに寄っていたから。

長門:2013年、NHKの『仕事ハッケン伝』というドキュメンタリー番組で、六角さんは2週間くらい渋谷タワーレコードで働いたんですが、その時の指導役が北爪さんでした。そして、同じ渋谷タワーレコード内で2016年にパイドパイパーハウスが復活したんですが、その時のタワー側の担当も北爪さんでした。「六角さんは若い頃にパイドパイパーハウスによく通っていたそうですよ」と北爪さんから聞き、ご本人にお会いしたのが2017年かな。

その時点では、六角精児バンドのデビュー・アルバム『石ころ人生』(2014年)は聴いていましたか。

長門:大好きで、パイドでも売ってました。普通には流通していない、六角さんと下田逸郎さんのコラボ作品『唄物語/緑の匂い』(2017年)とかもご本人から仕入れていたし。六角さんにはこれまでに4回ほどパイドでもインストア・ライヴもやってもらうなど、ここ数年、かなり密な関係でおつきあいさせていただいてるんです。

六角:『石ころ人生』は今も売れ続けているんですよ。NHKの僕の番組「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」で流していることもあって。おかげで2枚目のアルバム『そのまま生きる』(2019年)もほぼはけました。6000枚作ったんだけど。

長門さんは六角さんの歌のどういうところに惹かれてアルバムを作りたいと思ったんですか。

長門:はたから見ると、僕はフォーク系じゃなく、AORやソフト・ロック系のイメージが強いようだけど、実は昔からフォークのアルバムを作りたいと思っていたんです。フォークの人たちとは70年代初期からいろいろつきあいがあったし。でも、フォークのアルバムを作りたいと思ってもなかなかいないんですよね、自分で聴いてみたいと思う人が。で、六角精児バンドのアルバムを聴いた時「あっ、六角さんしかいないな」と思い、北爪さん経由で六角さんに提案したわけです。

六角さん自身も、バンドの作品とは別に、自分のソロを作ってみたいという思いはあったんですか。

六角:自分のソロ作品を作りたいとは特に思ってなかったんですが、2017年にその話が来た時はすごくうれしかったです。長門さんとだったら、是非一緒にやってみたいなと。長門さんの仕切りで、日本の昔のフォークを自分の肉体で歌ってみたらどうなるのか……六角精児バンドでやるのとはかなり違うと思ったのでワクワクしました。

その時点ではまだ六角精児バンドの2作目『そのまま生きる』(2019年)は出てないわけですが、『そのまま生きる』と並行してこのソロ・アルバムも作ったわけですか。

六角:そうです。全然違うアルバムになると思ったので、まったく問題なく。

長門:実際の選曲作業が始まったのが2018年で、レコーディングはコロナのせいで延び延びになって、去年の10月でした。

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僕は芝居とリズムは密接な関係にあると思ってます。セリフには概ね理想的なリズムがあって、それをニュアンスと共に頭の中で考え、肉体を通して表現を試みる、そして相手役などから違うリズムを貰ったりしつつ、新たに構築していく。

全体のアレンジ/サウンド・プロデュースを谷口さんに依頼したのも長門さん?

長門:そうです。ただのフォーク・アルバムにしたくないと思った時、アレンジャーは谷口くんが適任だなと。

谷口:2017~18年くらいのけっこう早い段階にお話をいただきましたね。

長門:谷口くんはすごく研究熱心で、暇があればレコード屋に行ってるし、話がツーカーで通じる。スワンプからウッドストック系、シンガー・ソングライターものまでなんでも。最初にデモ・テープを作った時は、全ての演奏だけでなく、歌も谷口くんが自分で入れたんだよね。

谷口:そう、全部歌いました。だから実際はもう一枚作ってるんですよ(笑)。

六角:で、僕はそのカラオケ版を聴きながら、歌の練習をしてましたね。

録音現場での演奏は、ハウス・バンドのような固定メンバー(谷口雄/KB、江上徹/AG、宮下広輔/Steel G、伊賀航/B、増村和彦/Dr)でおこない、プラスでいろんなゲストを呼んでますが、六角精児バンドの江上徹さん以外はすべて谷口さんが連れてきた感じ?

六角:江上さんは、僕というよりは長門さんが是非と。

谷口:鈴木茂(EG)さん、鈴木慶一(EG)さんには長門さんからお声がけいただきました。

六角:あと、僕がブルーグラスの人を呼んでほしいと谷口さんに頼んで。

谷口:サボテン楽団(Banjo)くん、井乃頭畜音団のヒロヒサカトー(Mandolin)くん、それから宮下広輔くんあたりは、僕の周りでもとくにカントリーやブルーグラスに造詣が深いので、ピッタリでした。演奏はもちろん、空気感や人柄も含め、最高のメンバーが集ってくれたと思います。

宮下さんのペダル・スティールは全体を通して、かなり効いてますよね。

谷口:いいですよね。宮下くんが弾くことで、オルタナティヴな感覚が作品に加わったと思います。彼と、森は生きているのバンドメイトだった増村和彦くん(Dr)は真っ先に決めたんです。

若林純夫の④ “雪の月光写真師” とか中塚正人の⑪ “風景” とか、かなりレアな曲も入ってますよね。

六角:どちらも長門さんがリストアップした曲です。若林純夫さんという人が歌っている “雪の月光写真師” なんて曲、そんな音源どこにあるの? って感じだったんだけど、たまたま自分の家に「春一番コンサート」の73年のライヴCD『春一番コンサート・ライヴ '73』があったのでちょっと聴いてみたら、その曲が入ってたんですよ。「おお、これか」と(笑)。「あの曲をまた聴きたい、やってほしい」って長門さんに言われたから、これは絶対入れようとまず最初に思った。“風景” もそういう感じで。

“風景” は、まさにフライング・ブリトーみたいな感じですね。

六角:“風景” はいろんな人のヴァージョン(ディランⅡ、センチメンタル・シティ・ロマンス、斉藤哲夫など)がありますからね。歌っていることはすごいシンプルなんだけど、音楽として楽しめるのはこういうものなんだと今回改めて思いましたね。バンド・サウンドとして実に楽しい。最後の自分の曲 “お前の町へ” は別として、オープニングで “やつらの足音のバラード” を出し、“風景” でしめることで、アメリカンなアルバムなんですよと言い切っているわけです。

選曲だけでなく曲順でもアルバム・コンセプトを主張したと。

六角:あと鈴木慶一さんの⑥ “スカンピン” は、全員一致で「これは、六角さんが歌うべきだ」って。これ、僕か? 使っているコードもいつもの自分の雰囲気とは違うんだけどなと思いましたが(笑)。

オシャレなメジャー7thとか(笑)。やっぱり歌詞の内容ですよね。酒焼けした六角さんの声も貧しさ溢れる歌詞にぴったりはまる感があるし。

六角:長門さんからお願いして鈴木慶一さんにも参加していただいて。そういう意味でも長門さんがいなければこの曲はできませんでしたね。

休みの国の⑦ “追放の歌” は、特にアレンジが好きな曲です。冒頭の生ギターが効いてますよね。

六角:あのヨレがいいよねえ。しかも非常にドライで。

谷口:ありがとうございます。岡田拓郎くんをガット・ギターで呼べるのは僕くらいだろうと(笑)。彼もグリニッチ・ヴィレッチ周辺や〈Folkways Records〉ものはもちろん、コンテンポラリーなフォークへの理解が深い人なので、そのあたりを発揮してもらえればなと。ミックスではちょっとバーバンク・サウンドっぽさも狙ってもらいました。実は、伊賀さんにお願いしてウッド・ベースを2本重ねてもらっています。ギターよりベースの方がトラック数が多いんですよ。

長門:休みの国の高橋照幸さんは、当時カイゾクって呼ばれていて、青山店時代のパイドの社友というか身内のような感じでした。パイド初代店長の岩永正敏さんが照幸さんと仲良くて。照幸さんはパイドにしょっちゅう来てました。だから六角さんがこれは是非歌いたいって言ってくれて、すごく嬉しかった。

芝居は、ご縁があってやらせていただいている仕事だけど、本当に好きなものはやっぱり音楽なんですよ。

六角さんがギターを弾いているのは高田渡の② “告別式” 1曲だけですが、もっと弾きたいとは思いませんでしたか。

六角:いや、今回はとにかく歌をちゃんとやりたかったですからね。

長門:歌はねえ……早川義夫さんの⑩ “この世で一番キレイなもの” が特にいいよね。

うん、あれはちょっと泣きそうになりました。

六角:僕も自分で泣きそうになりましたもん。

谷口:しびれるレコーディングでした。

ヴォーカリスト六角精児の真骨頂というか。

六角:最初、どうやって歌えばいいかわからなかったんですけどね。他の曲に関してもそうだけど、谷口さんがデモ音源のサウンドをすごくしっかり作ってくれてたので、そこに乗っかって、自分なりの表現が工夫できたんだと思います。演奏陣もそう。だから、せーので全部一発で録音できたんですよ。

谷口:僕は今回はまず演奏メンバーを決めていたので、当て書きといいますか、アレンジも「この人だったらこうやってくれるだろう」って感じで作っていったんです。メンバーはレコーディング本番で初めて全員顔を合わせたんですが、当て書きでアレンジをしたおかげか、プレイヤーも自分の色を出しやすかったみたいです。皆さん本当にすんなり現場の空気に入ってくれました。

六角:役者が台本を読んでセリフを覚えてくるようなもんですよ。各人が練習してきて、それでせーのでやってみるとこんなふうになるんだと。

六角さんの歌もバンドと一緒に録ったんですか。

谷口:そうです。全部一緒。ほぼ一発OKだった。ダビングも必要最低限に留めました。

六角:なんか遊んでいたら全部できちゃった感じでした。リハとかしないでできちゃうのか、音楽の人ってすげえなって(笑)。

長門:レコーディングが本当に楽しくてね。スタジオでプレイバックを聴いて拍手が起こったり。昔、シュガー・ベイブやティン・パン・アレイほかたくさんのレコーディングに立ち会ったけど、そんなことは初めてでした。

録音スタジオが「studio 土の上を歩く」とクレジットされていますが、これはどういうスタジオですか?

谷口:僕が普段からお世話になっているシンガー・ソングライターで、今回は⑫ “お前の町へ” でアコギを弾いてもらっている笹倉慎介さんが作ったスタジオです。

クレジットを見た時、スタジオ名までこのアルバムらしいなと思ったんですよ。今作にも入っている “各駅停車” じゃないけど、飛ばさないで、自分で地面を歩いてひとつひとつ手探りでものを掴んでいくってことだけが今は信用できるというか、かっこいいものじゃないかとずっと思っていて。この作品はそれをすごく体現しているし、このスタジオ名も作品に合わせて勝手につけた名前かなと、それくらいぴったりだと思った。

谷口:たまたまです(笑)。古いビルの一室で、笹倉さんが自分で防音の施工をして、ひとつずつ作ったんです。僕もお手伝いして。そういう手作りの雰囲気も含めてぴったりだなと思い、ここで録音したんです。

六角:何がいいかってのは本当に人それぞれなわけだけど、今おっしゃったように、自分で手さぐりで見つけてくるってのが大切だと思うんですよ。僕もそういう考え方で音楽を選んできて、今、アメリカン・ルーツ・ミュージックとかブルーグラスが心地良くなってる。自分の好きな音楽がいい塩梅で合わさった音作りをバンドがやってくれて、そこに僕が気持ちよく乗っかれたって感じがします。長門さん以下、関わった人たち全員が音楽のことをよく知っている。やっぱりそこが一番良かったなと。「これはこういう感じ」だと言ったら、皆がそれを即座に理解してくれる。俳優の世界にはその世界ならではの言葉があって、それでやりくりしているわけだけど、まったく違う形で自分の好きなことができるのは、なんて幸せなんだろうと思います。

音楽に対する六角さんの情熱は本当にすごいなと、今回改めて思いました。俳優さんでここまで音楽に通じている人は、六角さんと松重豊さんぐらいじゃないですか?

六角:今日ね、実はここに来る前、松重さんと対談をしてきたんですよ(笑)。うん、松重さんは確かに詳しいですよね。僕がいろんな音楽を聴き始めたのは中学生の頃で、そこからどんどん広がっていったんですが、20代半ば以降は劇団での活動が大変になったりして、正直、音楽はあんまり聴かなくなっちゃったんです。で、40才過ぎたあたりからまた熱心に聴き始めて、いろいろ掘り下げていった感じです。

谷口:さっき話に出てた『仕事ハッケン伝』で、最後に六角さんがアルバム10枚選んだんですが、そこにニール・カサールが入ってたんですよ。うおっ、すげえと思って。テレビからニール・カサールという名前が聞こえるなんて、しかも俳優さんが推してるって。

改めて、選曲についてですが、今回カヴァした11曲以外に、リストアップされていたものにはどんな曲があったんですか。

谷口:あがた森魚さんとか。

六角:斉藤哲夫 “悩み多き者よ” や細野晴臣 “ろっか・ばい・まい・べいびい” もありましたね。

長門:あと僕が出していたのはダッチャの “26号線” という曲。1973年に1枚だけアルバムを出していたシンガー・ソングライターです。

六角さんが、これだけは絶対に歌いたいと主張した曲は?

六角:けっこうありました。① “やつらの足音のバラード”、② “告別式”、⑤ “各駅停車”、⑨ “女の証し”、あと⑩ “この世で一番キレイなもの” などですね。その他は長門さん、谷口さん、北爪さんの推薦です。特に、休みの国の⑦ “追放の歌” は北爪さんが絶対に入れてくれと。人から選んでもらったものを自分で具体化する楽しさ、それって芝居に通ずるところがあります。僕にとっては芝居より楽しいですよ。

結局、最後、自分のことは自分の力でなんとかするしかない。だけど、その時にふと素敵な音楽があって、それを聴いたことで自分を奮い立たせることはできるかもしれない。この音楽にはそういう気持ちが込められているんです。

自分のバンドで歌うことと、今回みたいにシンガーに徹することの違い、難しさみたいなものはありましたか。

六角:六角精児バンドとして何かを表現するっていうのは、やっぱりバンド全体での表現ですから、自分の中ではわりとおおらかさがつきまとうんです。「これくらいでいいよね」みたいな。今回の場合は自分のソロですから、それを自分でどう歌うかというのに直面しなければならないんですよ。良い意味でも悪い意味でも、バンドというごまかしがきかない。どうすればいいか、どうしたいのか、自分の中で判断しなくちゃいけない。

つまり、責任が分散しないと。

六角:その責任と判断を、谷口くんにもらったデモのカラオケで歌いながら少しずつ自覚していった感じですね。で、スタジオでの本当の演奏になった時、自分が思っていたことばかりじゃなくて、バンドと融合するためにはどうしたらいいかと。そこは役者と似てますね。

シナリオをもらって、その段階で自分でいろいろ考えるわけだけど、実際の現場では相手がいて、その場で表現も変わってくる。

六角:そこで相手がくれる力を、一回ちゃんと自分なりに受け止めて出す、それがレコーディングですね。でも、自分がやりたいことの筋立てだけはしっかり考えておかなくちゃいけなかったので、まあ簡単に言うと、わりとしっかりやりました(笑)。人がお作りになられた曲なので、いい加減にはできない。自分なりの物語をちゃんとひとつ持たないといけない。役者だったらどうだろう? とか、より客観的に向き合ったりもしました。

亡くなった志村けんさんはソウルやファンクなどの音楽に精通してて、身のこなしや演技そのものにソウルやファンクのビートが影響していたと思います。六角さんの表現にも何がしかの音楽的影響がありますか。

六角:そうですね、僕は芝居とリズムは密接な関係にあると思ってます。セリフには概ね理想的なリズムがあって、それをニュアンスと共に頭の中で考え、肉体を通して表現を試みる、そして相手役などから違うリズムを貰ったりしつつ、新たに構築していく。呼吸もリズムの変化によって全然変わってきますから。

つまり、六角さんの演技や身のこなしそのものが音楽的だと言っていいと。

六角:自分はそういうふうに思っています。でもまあ、芝居は、ご縁があってやらせていただいている仕事だけど、本当に好きなものはやっぱり音楽なんですよ。でも、才能の問題があるし。自分としてはあまり大きな形で参加はできないけど、寄り添うことができればと思っています。

最後に、アルバムのタイトルについて。自分でつけたそうですが、そこに込めた意図を教えてください。

六角:自分で救えってことです。

自分は自分でしか救えないと?

六角:そうです。人は人を救えない。ただ、人からもらったもので心を支えて、自分でなんとかすることはできるじゃないですか。そんなささやかな支えになれるアルバムであってほしいなと。

それは、これまでの、山あり、谷あり、谷あり、谷ありみたいな人生がかなり影響してる言葉ですよね?

六角:ですね。結局、最後、自分のことは自分の力でなんとかするしかない。だけど、その時にふと素敵な音楽があって、それを聴いたことで自分を奮い立たせることはできるかもしれない。この音楽にはそういう気持ちが込められているんです。決して乱暴な言葉ではない、これは人への、ある意味励ましなんです。

六角さんの過去のインタヴューで、すごく感銘を受けた言葉がありました。ご自身の生きるうえでの信条を聞かれて、六角さんが「許す、忘れる」と答えてて。六角さんの演技も今回の歌も、すべてこれだよなと。

六角:忘れる力です。そして、人も自分も許す。

そう、これは「許す」アルバムなんですよ。後ろ向きのように見えるけど、聴き終わると前向きな気持ちになっている(笑)。一歩ずつ歩いている。

六角:後ろ向きな感じがするけど、けっして死なない、と。人は人を救えない。まずは自分の心を開かなくちゃ。

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