「S」と一致するもの

6月のジャズ - ele-king

 今月はヴォーカル作品に良作が揃った。クリスティ・ダシールはワシントンDC出身で、ノース・キャロライナ州グリーンヴィルで育ったジャズ・シンガー。マンハッタン音楽院に学んでメリーランド州のストラスモア・ミュージック・センターで研究を行い、現在はハワード大学でジャズの声楽を教えている。ちなみに同大学で音楽学部長を務めるのはボビー・ワトソンのグループなどで演奏してきたベーシストのキャロル・ダシール・ジュニアで、クリスティの父親でもある。アルバム・デビューは2016年の『Time All Mine』で、セカンド・アルバムの『Journey In Black』(2023年)は本年のグラミー賞のジャズ・ヴォーカル・アルバムにもノミネートされた。兄弟のキャロル・ダシール3世がドラマーを務めるこのアルバムは、自身の出目であるアメリカの黒人やその歴史について掘り下げ、彼女の祖母をはじめとした祖先が歌っていた黒人の民謡も取り上げている。

Terri Lyne Carrington And Christie Dashiell
We Insist 2025!

Candid

 そんなクリスティ・ダシールが、現在のアメリカにおける女性ミュージシャンの党首的な存在にあるドラマーのテリ・リン・キャリントンと組んで『We Insist 2025!』を作った。『We Insist!』は1961年にドラマーのマックス・ローチが、妻であるジャズ・シンガーのアビー・リンカーンらと作ったアルバムで、作詞はオスカー・ブラウン・ジュニアが担当した。奴隷解放宣言100周年を記念した作品で、当時高まっていた公民権運動のスローガンにも掲げられた。ローチの叩き出すアフロ・リズムにアビーのメッセージ色の濃いヴォーカルが絡み、アート・ブレイキーのようなアフロ・キューバン・ジャズやハード・バップを土台にフリー・ジャズにも踏み込んだ演奏を見せ、後のブラック・ジャズやスピリチュアル・ジャズの土台になったといえる重要作だ。この作品をリリースした〈キャンディッド〉による企画で、その『We Insist!』の2025年版が実現した。楽曲は『We Insist!』収録曲のカヴァーほか、アビー・リンカーンへのオマージュを綴った “Dear Abby” など。演奏はモーガン・ゲリン、マシュー・スティーヴンスなど、テリのグループで演奏してきた面々が中心となる。

 ビリー・ホリデイの後継者の位置にあったアビー・リンカーンは、『We Insist!』では黒人霊歌や民謡、ブルースなどの要素を感じさせる歌を見せ、ポエトリー・リーディングからシアトリカルな演劇風、土着的なアフリカ民謡やフリーキーな叫び声など、変幻自在で前衛的なパフォーマンスを披露していた。『We Insist 2025!』でのクリスティは、アビーの歌に忠実に沿いつつも、そこにネオ・ソウルやファンクなどの要素も交え、現代的にアップデートした歌を見せる。黒人霊歌風のアカペラで始まる “Driva’man” はアフロ色が強い演奏で、ロイ・エアーズ風のヴァイヴも交えた中で、スキャットを交えたクリスティのアドリブも素晴らしい。現在であればカサンドラ・クロスからジョージア・アン・マルドロウに通じる歌と言える。1960年の南アフリカのシャープビル虐殺事件に対する曲である “Tears for Johannesburg” は、硬質でミステリアスなジャズ・ファンク調の演奏に乗せ、クリスティのワードレス・ヴォイスは怒りと悲しみが入り混じった感情を吐露していく。アビーの歌を下敷きにしつつ、あたかも亡霊のような歌声である。


Tyreek McDole
Open Up Your Senses

Artwork

 タイリーク・マクドールはハイチ系の黒人シンガーで、ニューヨークを拠点に活動する新進の25歳。ジョニー・ハートマンやレオン・トーマスなど男性ジャズ・シンガーの先人たちから影響を受け、2023年にサラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンペティションで優勝し、一躍注目を集めることになった。そうして作ったデビュー・アルバムが『Open Up Your Senses』。大ベテランのケニー・バロンはじめ、サリヴァン・フォートナー、ロドニー・ホイテカーといった経験豊富なメンバーが演奏に参加。比較的若手ではブランフォード・マルサリス・カルテットのジャスティン・フォークナーや、ファラオ・サンダースの息子であるトモキ・サンダースなども参加する。

 収録作品はカヴァー曲が多く、ニコラス・ペイトンの “The Backward Step”(禅思想に基づく作品で、クリスティ・ダシールが般若心経を取り入れた歌詞で歌っていた)、セロニアス・モンクの作品でカーメン・マックレーが歌詞をつけて歌った “Ugly Beauty” などをやっている。特に注目はタイリークが強く影響を受けたレオン・トーマスの作品で、ファラオ・サンダースとの共作となる “The Creator Has A Master Plan” と “The Sun Song”。“The Creator Has A Master Plan” はトモキ・サンダースのテナー・サックスを交え、まさにファラオ・サンダースとレオン・トーマスへのオマージュが散りばめられている。“The Sun Song” の牧歌的でフォーキーなフィーリングも素晴らしい。もうひとつ出色のできとなるのがホレス・シルヴァーの “Won’t You Open Up Your Sense”。原曲はアンディ・ベイの歌をフィーチャーしたブルージーなワルツ曲で、4ヒーローもカヴァーしていたことがある。そもそもタイリークのバリトン・ヴォイスは比較的アンディ・ベイに近い感じで、彼からもかなり影響を受けていることが読み取れる。サリヴァン・フォートナーのエレピ演奏も印象的で、タイリークもオリジナルのアンディ・ベイに倣ってブルース・フィーリングを出しつつも、自分なりの自由なスタイルで崩しながら歌っている。


Arjuna Oakes
While I'm Distracted

Albert's Favourites

 アルジュナ・オークスはニュージーランド出身で、最近はロンドンに拠点を移して活動するシンガー・ソングライター/ピアニスト/作曲家。2019年にデビューEPとなる「The Watcher EP」をリリースし、男性シンガーで言えばホセ・ジェイムズの路線を継ぐような歌を披露していた。声質自体はホセよりも高く、より中性的でソウルフルな魅力を持つ。そして、ギタリスト/プロデューサーのセレビーことカラム・マウワーとコラボしてエレクトリックな作品を作ったり、作曲家のジョン・プサタスとのコラボではアンビエントな側面を見せるなど、プロデューサー/トラックメイカー的な側面も持つ。そうした活動を経て、ファースト・アルバムとなる『While I'm Distracted』をリリースした。

 『While I'm Distracted』の共同プロデューサーは盟友のセレビーが務め、ニュージーランドの音楽仲間がサポートする中で、1990年代より長い活動を続けるネイサン・ヘインズの参加が目を引く。ストリングス・セクションも交えた編成の中、アルジュナはヴォーカルのほかにピアノ、キーボード、シンセ、プロダクションを担当する。楽曲のプロダクションは極めて現代的なもので、“Won’t Let This World Break My Heart” はフライング・ロータスドリアン・コンセプトなどのビート・ミュージック調とも言える。“No Joke” はゴーゴー・ペンギン的な演奏で、“Catch Me” は有機的なストリングスによってコズミックな世界が作られていく。それらの上で歌うアルジュナのヴォーカルは非常に中性的かつオルタナティヴなもので、デヴィッド・ボウイがマーク・ジュリアナやダニー・マッキャスリンらとやった『Blackstar』あたりの世界を連想させる。こうした歌やジャケットからも伺えるが、アルジュナはジェンダーレスなアーティストのようだ。


Snowpoet
Heartstrings

Edition

 スノウポエットはロンドンを拠点に活動するローレン・キンセラとクリス・ハイソンによる男女ペア・ユニット。ローレンが作詞とヴォーカルを担当し、クリスがピアノ、キーボード、シンセ、ベース、ギター演奏などから作曲/プロダクション全般を担当する。2014年にデビューEPをリリースし、2016年にファースト・アルバムをリリースした後は、カーディフで設立されたジャズ・レーベルの〈エディション〉から作品をリリースしているが、一般的なジャズ・ユニットやジャズ・ヴォーカルものとは異なり、もっとオルタナティヴでエレクトロニックな要素を持つアーティストである。ローレンの摩訶不思議でフェアリーな歌声を含め、ビョークと比較されることもある。〈エディション〉から『Thought You Knew』(2018年)、『Wait For Me』(2021年)とリリースしてきて、『Heartstrings』は4年ぶりの新作となる。

 これまではエレクトロニックなスタジオ・ワークを軸にアルバム制作を行ってきたスノウポエットだが、『Heartstrings』は参加ミュージシャンを交えながら、スタジオでセッションや作曲を行ってできたアルバムである。そうしたライヴ・パフォーマンスの生々しさや即興演奏の妙味を入れて作られていることを含め、スノウポエットにとってもっともジャズらしいアルバムと言えるかもしれない。ダイナミックなドラム・ビートに導かれる “Host” では、ローレンの歌はポエトリー・リーディング調のクールな始まりから、次第に熱とエモーションを孕んで高揚していく。彼女の歌には英国のトラッドやフォークの影響を感じさせる部分があり、そうした点でも英国ならではのユニットだなと思う。“Our World” はスノウポエットらしい繊細で美しい楽曲で、アコースティックとエレクトリックのバランスが素晴らしい。ゆったりとしたテンポの “one of those people” は、スノウポエットならではの牧歌的でメロウなバラード。『Heartstrings』は人生における喪失や再生がテーマとなっているそうだが、そうした豊かでエモーショナルな世界観が込められた楽曲である。

Nazar - ele-king

 ナザールはこの7年間で、もっとも躍動的な新世代ブラック・エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーのひとりとなった。彼は、インダストリアル・ノイズとアフリカン・ビートの神学とが直感的に衝突することに熱烈な愛を抱いている——それは、論理、政治、宗教、そしてアフリカ大陸の歴史の深層に根を持つものだ。ナザールの音楽的探求は、1980年代にアンゴラで生まれた大衆ダンス音楽クドゥーロの土壌から芽吹いている。アンゴラ発のクドゥーロはこの数十年のあいだ、地元アンゴラの無数のプロデューサーたち、あるいは欧州へと渡った移民、またはナザールやDJナルシソのような第一世代の息子や娘たちによって、鮮やかに再構築され、変容を遂げてきた。
 ナザールの眼を通して見れば、彼のクドゥーロは混成的なものだ。それは独自の領域にあり、伝統的なプロデューサーならば恐れて足を踏み入れぬような新たな環境のなかを、彼は自由に歩んでいる。「Enclave」EPと初のフルアルバム『Guerrilla』は、ヨーロッパ各地のダンス・ミュージック・プロデューサーのなかにおいて、彼独自の声を確固たるものとして示した。彼のアイデンティティにおいて決定的だったのは、アンゴラの戦争、そしてその戦争における家族の関与と、それに対する音楽を通じた内省だった。彼のデビュー作では、そのテーマ性と鋭利なビートが健康的に融合していた。

 あれから5年が過ぎ、ナザールは『Demilitarize』で再び姿を現した。これは明らかに、彼の出世作『Guerrilla』への「呼応」であり、前作同様にタイトルは声明である。ただし今回は、目の前の風景を予見するのではなく、むしろ内なる精神の解放を指し示している。ナザール自身もこれはより「個人的な」アルバムだと述べており、サウンドスケープはまさにそれを裏づけている。

 『Guerrilla』をパンデミック初期に発表し、続いてCOVIDの合併症により1年近く死の淵を彷徨うような病に苦しんだナザールは、すべてを経て自ずと別の視座に至った。オープニング・トラック“Core”は、彼の新たな美学への温かく誘うような導入部である。かつてのような耳を刺す粗さは影を潜め、厚みのある音像はなおも跳ねるが、より空気のように、スピーカー越しに漂い出る異質さが、アルバムの最後まで全曲を貫いている。『Demilitarize』は、非常に統一感のある、一貫したアルバムである。
 大きく異なるのは、ナザールが「個人的な」方向へと向かうなかで、アルバムの大半において自ら歌うという選択をした点だ。この選択こそが、『Demilitarize』の印象を大きく変えている。とりわけ印象的なのは、その歌声のほとんどが意味を捉えがたく、にもかかわらず前面に出て美しいアレンジを背景へと押しやることで、音像が平坦に感じられる点だ。楽曲の構造は主にヴォーカルを支えるものとなり、ビート・アルバムとは異なる時間感覚——より速く過ぎていくような印象——をもたらす。全体の尺が短く感じられるのはそのためだろう。

 これは、現在の「男性の感情の脆さを表現する」ソーシャルな波に対する、ひとつの参与とも読める。ビートは引っかかり、途切れ、また唐突に現れては消える——まるで時間自体が不安定になっているかのように。だからこれは、ダンス・レコードではない(踊りたくなる瞬間はあるとしても)。これはヘッドフォンで聴く音楽であり、よりポップへの希求に傾いた作品だ。歌詞はしばしば時間を攪乱する——旋律だけではなしえない方法で。歌詞、あるいは歌声の感触は、時間そのものを変容させる。このアルバムがインストゥルメンタルのみで構成されていたならば、印象はまったく異なっていたに違いない。
 そして、それが聴き手の求めるものであるならば、この作品はすばらしいだろう。ただし全体の尺は36分30秒。この簡潔さは、音のなかを浮遊したり、潜り込んだりする快楽に逆らう——というのも、身体がようやくその中に安住しかけた頃には、すでに音は過ぎ去っているからだ。『Demilitarize』は繰り返し聴くに値する作品だが、同時に、より大きな作品へと至るための「通過点」としてのアルバムでもあるのではないかと私は考えてしまう。デジタル的な音響の美しさは豊潤だが、2曲目以降、アルバムの流れは容赦なく突き進み、ほとんど呼吸の余地を与えない。36分30秒の終盤、9曲目“Heal”においてようやく、それまでの圧力から抜け出すように音楽は水面へと浮上する。海の底から現れるクジラのように——ここでようやく、楽器そのものが主導権を握る。アルバムのラストは、音楽のなかでの苛立ちと不確かさに対する、意図された吐息のようだ。

 けれど、私はまだ問いを抱えている。というのも、5年ものあいだ大きなリリースがなく、ようやく届けられた作品がEP程度の分量であることが、やはり気になるのだ。そんなふうに思いを巡らせていたら、ふと1920年へと思いが跳んだ。
 『春の祭典』が初演された年だ。あの伝説的な上演——新しい音響に対して聴衆が激しく反発したあの出来事。ストラヴィンスキーがこの全楽曲を書き上げるのにかかったのは、わずか1年半である。コンピュータなどなかった時代、すべての楽器パートの譜面を手書きしなければならなかった。しかも、まったく未知の楽曲の力学を、オーケストラに教え込まねばならなかった。そして、その演奏時間は33分だった。


Nazar has become one of the best producers of kinetic new black electronic music in the last 7 years. Fervently in love with intuitive clashes of industrial noises and African beat theology rooted deeply in the core of the continent`s history, logic, politics, and religion, Nazar grows his musical explorations from the soil of Kuduro, an Angolan popular dance music that began in the 1980`s. The music of Kuduro from the country of Angola has been over the last couple of decades vibrantly recalibrated and mutated by the numerous local Angolan producers and those who immigrated to Europe or were first generation sons and daughters such Nazar or Dj Narciso. Through Nazar`s eyes, his Kuduro is a hybridity, in its own realm, surrounded by new environments that free him to walk down new roads traditional producers would fear. The “Enclave” ep and his first full album “GUERRILLA” firmly established his voice among other producers of dance music across Europe. Key to his identity at this time, was the back drop of the war in Angola, his family`s participation in it, and reflections on it through his music. The subject and constant sharp beat merged healthily together with his debut.
5 years have passed and Nazar has re-emerged with Demilitarize. An obvious “response” to the “call” of his breakthrough album Guerrilla, the title is again a statement like his last but this time pointing toward the release of the inner psyche rather than forecasting the landscape before the eye. He has stated that this is more of a personal album and the soundscape of the release proves that true.
Nazar, having released Guerrilla directly at the start of the pandemic, having survived an almost year long near death sickness due to COVID complications, came out of all that naturally out with a different perspective. “Core”, the first track, is an inviting warm introduction to his new aesthetic. Previous abrasion lacking, soundscapes are still thick bouncing but more ethereal through your speakers emitting an otherness that connects all the tracks til the very end. Demilitarize is a very united consistent album.

What is different is that in turning toward the “personal” Nazar made the choice to sing throughout the majority of the album. This choice makes Demilitarize feel different. Namely cause most of the vocals are mostly unintelligible, the vocals take centerstage and end up pushing the beautiful arrangements to the background, and feel monotone. The music mainly supports the vocals and time itself feels different, faster than a beat album. It feels remarkably shorter. This is a push toward inclusion in the current social wave of expressing male vulnerability while beats jerk and stop, jerk and stop. Sometimes disappearing totally before they mysteriously reappear.
So to be clear, this isn`t a dance record (though you may be inclined to do so at times), it`s a headphone listen. And a lean toward more pop yearnings. Lyrics often disrupt time in ways pure melodies cannot. Lyrics or the feel of lyrical vocals changes time. This album would be viewed vastly differently if only instrumental.
And all this is good if that is what you are looking for. But the whole album is 36:30 minutes. The brevity works against the beauty of the floating and diving that you do when surfing on all the sounds cause they are over before you can relax within them. Demilitarize is worthy definitely of many listens but I also wonder if it is a stepping stone album, an album that is needed for an artist to reach an even greater work. The digital sonic beauty is luscious but from the 2nd track, the flow of the album plows right ahead not allowing for much breathing room. The tail end of the 36:30 feels more like a whale arising to the air. This emerging from the depths of the ocean in the 9th track “Heal” lets the instrumentation take charge. The end of the album a purposeful exhale for the frustration and uncertainty in the midst of the music.
But I still have questions. Because fives years of no major releases is a long time to only get a ep`s worth of music. Because in wondering many things, I have to ponder back to 1920 when

“The Rite of Spring” was performed. A quite legendary performance. Fierce discontent by the audience from the new sonorities. It`s a fact that it only took Stravinsky a year and a half to write all the music for the composition. There were no computers so all the sheet music for each instrument had to be painstakingly written to perform. And the orchestra had to be taught the dynamics of the unknown composition. And it was also 33:00 minutes.

Lucy Railton - ele-king

 ルーシー・レイルトンの新作『Blue Veil』は、レイルトンにとって初となるチェロ独奏によるアルバムだ。ドローンというよりも、一定の周期で反復される持続音によって構築された音響・音楽作品と表現すべきだろう。聴き進めるうちに、次第に意識は内側へと向かい、心が静かに鎮まっていく。センチメンタルな要素を排した硬質な音響でありながら、不思議な安らぎをもたらすのは、その響きが備えるシンプルでありながらも豊かな音の質感ゆえかもしれない。

 アルバム『Blue Veil』について語る前に、まずはルーシー・レイルトンの経歴について簡単に述べていこう。レイルトンは、イギリス出身のチェロ奏者/作曲家である。ボストンのニューイングランド音楽院、そしてロンドンの王立音楽院で研鑽を積み、2008年に卒業した。クラシックを基礎に持ちながら、彼女のキャリアはジャンルを越境し、実験音楽シーンでの重要人物として知られるようになる。
 その実力は折り紙付きで、ジャンル横断的なコラボレーションが非常に多いのが特徴だ。ドローン/エクスペリメンタル界隈では、カリ・マローン、ラッセル・ハズウェル、スティーヴン・オマリーベアトリス・ディロン、キャサリン・ラムといった先鋭たちと共演。また、ポーリン・オリヴェロスやマトモスのプロジェクトにも関与してきた。また、2023年にリリースされ大きな話題を呼んだローレル・ヘイローによるクラシカル・アンビエント・ドローンの傑作『Atlas』でも印象的なチェロを披露していた。
 活動の拠点であるロンドンでは、先進的な音楽空間カフェ・OTOにおいて「カマークラン・シリーズ」を立ち上げ、10年間にわたり運営。さらに2013年から2016年には「ロンドン・コンテンポラリー・ミュージック・フェスティヴァル」を共同設立し、共同監督も務めた。クラシックの分野でも着実に歩みを進めており、〈ECM〉のバッハ・アルバム『Three Or One』(2021年)への参加も話題となった。加えてボノボミカ・リーヴィとの共演歴もあるなど、その活動領域は極めて広い。近年では、パティ・スミスとサウンドウォーク・コレクティヴによる「コレスポンデンス」の日本公演に出演していたのも記憶に新しい。

 そんなルーシー・レイルトンが自身名義のアルバムを初めて発表したのは、2018年にUKのレーベル〈Modern Love〉からリリースされた『Paradise 94』だった。ドローンを基調としつつも、ミュジーク・コンクレート的手法で多様な音響要素をコラージュした鋭利な作品であり、現代音楽とエクスペリメンタル・ミュージックを越境するような内容だった。
 〈Modern Love〉といえば、ポスト・ダブステップやポスト・インダストリアルの色が濃かったレーベルだが、そこからこのようなアヴァンな音響作品がリリースされたことに、当時シーンはざわめいたものだ。振り返れば、2018年頃からエクスペリメンタル・ミュージックの地殻変動が始まっていたようにも思える。現代音楽との交錯、それも権威的なアカデミズムではなく、純粋な音への探究が交差しはじめた時期だった。
 2020年には、ベルリンの〈PAN〉より電子音楽の先駆者ピーター・ジノヴィエフと共作した『RFG Inventions for Cello and Computer』を発表。同年、フランスの〈Portraits GRM〉からはEP「Forma」をリリース。翌2021年にはUKの〈SN Variations〉よりキット・ダウンズとの共作にしてクラシカル・ドローンの『Subaerial』を発表、ヤイル・エラザール・グロットマンとのサウンドトラック作品『False Positive』をリリースしている。
 そして2023年には、スティーヴン・オマリー主宰の〈Ideologic Organ〉より、盟友カリ・マローンによる長編傑作ドローン作品『Does Spring Hide Its Joy』に参加した。同年、〈Another Timbre〉からは日本の作曲家・小川道子との共作『Fragments of Reincarnation』を発表。さらに久々に〈Modern Love〉からはソロ・アルバム『Corner Dancer』をリリースする。こうして彼女の歩みを振り返ってると、2021年以降は、ほぼ2年ごとのペースで作品をリリースしていたことがわかる。

 そして2025年、ルーシー・レイルトンはついに〈Ideologic Organ〉から初の完全ソロ・アルバム『Blue Veil』をリリースした。はじめに書いたように本作『Blue Veil』は、ルーシーにとって本格的な「チェロ・アルバム」であり、ドローン作品としても極めて硬質かつミニマリズムを極めたハードコアな音楽性となっている。その響きは冷徹で美しく、センチメントとは無縁の構築美がある。むしろそれは「音の原理」への徹底した探求から導かれたものだ。
 プロデュースとレコーディングはティーヴン・オマリーとカリ・マローンが担当。録音はパリのサン・テスプリ教会で2024年6月におこなわれた。サウンド・アーティストのジョシュア・サビンによるプレミックスが同年8月、マルタ・サローニによるミックスが同年9月、名匠ラシャド・ベッカーによるマスタリングが同年11月に行われた。

 全7曲から構成される本作『Blue Veil』では、「微分音と和声の知覚」を主題とし、和声が生まれる直前の揺らぎ、あるいは弦が震える微細なノイズが、音の存在そのものを問い直すような響きをもたらしている。硬質なチェロの音が、微細な揺らぎとともに交錯し、やがて一体化していく。そのサウンドは単なるドローンではなく、一定の周期で持続音が反復される構造的なコンポジションで構成されていた。
 “Phase I” から “Phase VII” まで全7曲にかけて、チェロはゆるやかにトーンを変えながら持続と反復を繰り返し、聴く者を深い瞑想の領域へと導く。時間感覚を曖昧にするような音の連なりが、静かに精神を包み込む。それは「音楽」になる直前の濃密な状態であり、まるで世界を包み込む青いベールのようである。それは自身と世界を隔てる「ベール」でもあるのかもしれない。タイトル『Blue Veil』は、その象徴のように感じられる。
 もっとも、その響きに身を委ねていると、青だけではなく、どこか赤い鋭さ、緊張感すらも感じられる。おそらくこの作品の核心は、その色彩のグラデーションのような中間感覚にあるのだろう。聴覚の感覚が拡張されていくような体験は、モートン・フェルドマンの後期弦楽作品に通じるミニマリズムに通じる。

 『Blue Veil』──チェロという古典的な楽器を通じ、ここまで硬派で緻密なドローン/音響を成立させた作品は稀だ。その意味でも2020年代以降のドローン/エクスペリメンタル・シーンにおいて、間違いなくひとつの金字塔といえよう。ルーシー・レイルトンはいま、実験音楽と現代音楽の最前線で、「音そのもの」の探求を続けている。

interview with Rafael Toral - ele-king

 Bandcampに掲載されたラファエル・トラルのプロフィールによると、彼はそのキャリアを通して、‶サウンドのなかの音楽と、音楽を超越したサウンドのあいだを行ったり来たりしている〟という。このポルトガル出身の音楽家は、実験音楽の世界でもう30年以上も極めて重要な存在であり続けているが、目下のところ、昨年のアルバム『Spectral Evolution』をきっかけに再評価の波に乗っている。このアルバムは、トラルの尽きることのない探求心の溢れる実践のさまざまな要素——初期の『Wave Field』(1995)などで聴かれた液化したようなギターの音色や、2004年から2017年に取り組んだ「Space Program」時代に収集した、規則にしばられない自由なDIYの電子楽器の数々など――が融合された、記念碑的な作品なのだ。なかでも、鍵となる構成要素は、伝統的なジャズのハーモニーで、“アイ・ガット・リズム”や“A列車で行こう”の即座に認識可能な(ただし、氷河の形成のごとくゆっくりとした)コード進行が、アルバムに意外な情感の重みを与えている。
『Spectral Evolution』は、3年がかりの骨の折れる緻密な制作プロセスの結果であり、その間トラルは作品の56ものヴァージョンを制作した。アドヴァイスを求めて友人のジム・オルークに聴かせると、感銘を受けたオルークは、長年休止状態にしていた自身のレーベル〈Moikai〉を再始動させ、アルバムを発売するために動き出したのだった。
 2008年以来となる日本ツアーでオルークと石橋英子と共演する前に、トラルはEメールでのやりとりを通じて、音楽家としてのジャズとの関わり、ますます醜くなっていく世界のなかでの美の重要性、そして、『Spectral Evolution』をライヴで演奏した際に経験した‶愛のフィードバック〟について語ってくれた。
 この会話は明確さの保持と長さを考慮して編集されている。

ますます醜くなっている世界において、私たちは美しいもの、広い意味での美しさ、単に綺麗というだけではなく高潔さをそなえたもの、たとえば、誠実さなどから手を離すべきではないんだ。

『Spectral Evolution』についての昨年のトーン・グロウとのインタヴューで、あなたは「このレコードを作るために多くのことを学んで研究し、開拓する必要があった」と語っていました。これについて、もう少し教えていただけますか?

ラファエル・トラル(Rafael Toral、以下RT):まず、このアルバムにはたくさんのジャズ・コードが含まれているんだけど、それらを繋ぎ合わせるためには、自分が何をやっているのかを明確に知らなければならなかった。ひとつの音符が本来あるべき所からずれるだけで、和音が違う色調に変化する仕組みを理解する必要があったんだ。私にはその準備ができていなかったから、正しい形に仕上げるために説得力を持たせて、最終的に美しく仕上げるまでに相当な努力を要した。その過程でジム・オルークに助言を求めたら、彼がリリースを決断してくれたという経緯がある。

あなたとジムとの関係について教えてください。ふだんから、制作途中の作品を共有することはあるのでしょうか? それとも、今回だけが特別だった?

RT:ジムとは1995年頃からの大の仲良しで、最初に出会ったのはシカゴでだった。彼は常に忙し過ぎるぐらいだったから、私のことで煩わせようなんて思ったことはなかったんだ。でも、今回だけは違った。アルバムでやろうとしたことが自分の能力を超えてしまい、私はアレンジやハーモニーのことで苦慮していた。だから背に腹は代えられないと思った。ジムが私よりも音楽の多くの分野で知識が豊富だと知っていたから、友人として音を聴いてほしいと頼んだんだ。

ご自分の能力の限界を突破するのは、あなたの仕事では日常的なことのように思うのですが、このような挑戦を続けるための意欲はどこから得ているのでしょう?

RT:私はただ、自分がすべきことを理解しようと思っているだけかな。自分の力をどこに注ぐべきなのか、やりたいことの中核はどこにあるのか、その時の前向きな動きとは何か、何が言われているのか、そしてそれが私の名を冠してやる価値のあることなのかどうか。多くの場合、それは私が土台から築き上げなければならないもので、約束とヴィジョンを伴うものでもある。私はたとえそれで自分を追い込むことになっても、実行するしか選択肢がないことが多いんだ。もっと言えば、私たちはまだ進化が終わっていないことを忘れがちだけど、人間には進化する義務があると思っているんだよ。

あなたの仕事において、美の役割があるとすれば、それは何ですか?

RT:(考えながら)うーん、役割ではないかもしれないけれど……私は一方では、20世紀の文化に浸って育ってきた。つまり、大雑把にいえば、キュビズムからパンク、セリエリズムからグリッチまで、構造の解体や脱構築、破壊することで忙しかった。私が若い頃には、美しいものを真っ当な芸術として見なすべきではないとする風潮があったんだ。これは当然、ものすごく粗雑な一般論だけど、私はそういった束縛から自分を解放して、美を現代の芸術には不可欠な要素として受け入れる必要があると思った。これは延々と議論することができる話で、要約するのは難しい。もう一方で、美というのは、単なる文化的で美学的な話でもなくて、個人の好みを超えたところにあるものだ。好みと、私たちが目で見て、耳で聴くことへの生物学的、そして神経学的反応には、多くの重複する部分がある。例をあげると、完全5度の響きを美しく感じるのは、実は単純な数学的な比率の3対2の隔たりに基づく音程で、自然な振動現象だ。その振動が人の身体の細胞を共鳴させ、背筋が寒くなるぐらい良い音だと感じると、もう何が起きているのかわからなくなる。美とはそれほど深いところにまで届くんだ。最後にもうひとつ、ますます醜くなっている世界において、私たちは美しいもの、広い意味での美しさ、単に綺麗というだけではなく高潔さをそなえたもの、たとえば、誠実さなどから手を離すべきではないんだ。

ピタゴラスは正しかったというわけですね! この科学的な側面について、深く掘り下げたことはありますか?

RT:私は科学にはあまり入こんでいないかな。科学は文明の柱のひとつではあるけれど、測定できないものや、説明できないことを欠いている側面もある。むしろ私は、頭でそういったことを‶知る〟ことを避けている。私は直感で自分の動きを確認するようにしているんだけど、それは直感が脳よりも身体に根差した知識からくることが多いからだ。そして、何よりもその辺はリスナーが音楽を自分なりに取り込むことができるように、オープンにしておきたい思いがある。

あなたが言及された‶高潔さ〟という資質は、優れた芸術と凡庸な芸術を差別化する要素のひとつでもある気がします。美しさについての考えを再考することになった特定のきっかけはあったのですか?

RT:今日、醜さが飛躍的に増加していることや、文明の衰退……なんかであることはたしかだね。不思議なことに、美を守り続けるのは、生存戦略となりつつあり、精神の健全さを保つための意識的な努力にほかならない。それは、広義に理解された美しさのことだ。たとえば、嘘を広めるよりも、事実を認識する方が美しい。あるいは、対立する世界を結んで、対話を促すような美しさ。それが『Spectral Evolution』の核心なんだ。

『Spectral Evolution』に収録された最終ヴァージョンを制作するのに、それだけの労力がかかっていることを踏まえると、それをライヴで演奏したときの感覚はどのようなものだったのでしょうか?

RT:コンサートは、アルバムから構造的な恩恵を受けているので、非常に隙の無い構成になっていて、ライヴで聴く音の響きは、まるで物理的にサウンドフィールド(音場)に没入しているような感覚になる。ハーモニーの情感的な側面と、振動の物理的な体験が結びつけられているんだ。オーディエンスにとっては、とても強烈な体験になっているようで、たまに「泣きそうになった」と打ち明けてくれる人もいる。私にとって、リスナーを音に引き込むことが重要で、それによって愛のフィードバックが生まれるんだよ。

‶愛のフィードバック〟とは、素晴らしい表現ですね! これはあなたとオーディエンスの関係性についての多くを物語っていると思います。

RT:一部のコンサートでは、その感覚が非常にクリアに感じられるんだ。このアルバムとすべての音は愛を込めて制作され、オーディエンスもまた、愛を込めた聴き方で受け入れてくれ、彼らの積極的な関与と、感情の質がステージに送り返されてくるんだよ。

私は常にオーディエンスを敬愛してきたし、彼らの人生で活用できる何かを提供できることにすごく感謝している。何かを捧げて、それが良い受け取り方をされると、それ自体が自分にまた贈り物として戻ってくるんだ。私はいつも、彼らが自宅を出てチケットを購入し、私が演奏するどんな音をも聴くために時間を費やしてくれることを思うと、それに値するものを提供しなければいけないと、心に誓っている。

あなたのキャリアを通じて、オーディエンスとの関係性は、どのように発展してきたのでしょうか?

RT:私は常にオーディエンスを敬愛してきたし、彼らの人生で活用できる何かを提供できることにすごく感謝している。何かを捧げて、それが良い受け取り方をされると、それ自体が自分にまた贈り物として戻ってくるんだ。私はいつも、彼らが自宅を出てチケットを購入し、私が演奏するどんな音をも聴くために時間を費やしてくれることを思うと、それに値するものを提供しなければいけないと、心に誓っている。

『Spectrum Evolution』をライヴで演奏す際に経験されたという激しい感情的な反応は、
新しいことなのでしょうか? 過去の他のプロジェクトからも同じような反応を引き出したことはありますか?

RT:これは新しい体験なんだ。過去にやってきたことよりもずっと情感のこもった作品だし、ライヴではそれを激しい形で表現しているから。

アーティストのなかには、‶感情的(ルビ:エモーショナル)〟な音楽を、あなたが先ほど美しさについて述べたような、疑いの目で見る人もいると思います。あなたもおっしゃったように、これはあなたにとって新しい領域だと思いますが、どうやってここに辿り着いたのでしょう?

RT:はっきりとした感情を扱うのは、私にとっては新しいことだけど、決して意図的なものではなかった。私としては、感情をオープンにしながらも、抽象性を保つことで、リスナーが自分自身の感情を投影できるようにしたいと考えているんだ。これらのハーモニーには感情が組み込まれていて、そこから逃れることはできないと思う。でも、実は、私はそのサウンド自体により興味があるんだけど。

『Spectral Evolution』のライヴは、パフォーマンスごとにどれほど違うものなのでしょうか?

RT:ライヴ版は、拡張されていて、一部の移行部はよりゆったりとしたテンポで演奏している。当初、このアルバムは、ライヴ演奏をする前提で作ったものではなかった。だから、可能な限りライヴでは多くのギター・パートを実際に演奏し、そのいくつかでは即興している。それでも、全体的にはすごく一貫性を保っているよ。細部のヴァリエーションはあるけどね。会場の響きとPAの設定が決定的な影響を与えるから、毎回良い音にするために、何時間もサウンドチェックに費やしている。

あなたのサウンドチェックにはどういったことが含まれますか? その一連の流れを効率化するためのメソッドをお持ちですか? それとも毎回が新しい挑戦のようなものなのでしょうか?

RT:その両方だね! 良い会場で良いPAシステムがあれば作業は楽になることもあるけど、普通は、課題が見つかるものだ。もちろん順序立ったやり方をしていて、強烈でありながらも人びとを誘い込むような、サラウンドな、コクのある音を作るのを目標にしている。誰かを無理に押すようなサウンドではなく、引き込むような音。支配するのではなく、包み込むようなサウンドをね。会場ごとに全然違うから、綿密なチューニングが必要なんだ。

昨年末にあなたが『The Wire』誌で発表した「Wire Mix」を聴いていたのですが、あれはアルバムの素晴らしい補完物となっていますね。ケニー・バレルは本来、私の好みではないのですが、この文脈では完璧に理に適っています。興味本位でお聞きしますが、あなたと伝統的なジャズとの関係はどのようなものなのでしょうか?

RT:常に軌道上の衛星になったような感覚だね。ものすごく注目しているけど、自分は別の場所に立っているような。以前、フリージャズに影響を受けた私のエレクトロニクスのプロジェクト「Space Program」について、こう言及したことがある。‶音楽以外の、すべてがジャズだ〟と。それとはまったく異なる理由から、同じことが『Spectral Evolution』にも当てはまるんだ。ジャズにおける高い人間性には心からの敬意を抱いている。学ぶべきことも、感じるべきことも多い。(ジャズには)知性と心のための深い層が存在するんだ。

あなたのジャズへの理解と、先ほど挙げていただいたような特徴は、歳を重ねるごとに深まっていると思いますか?

RT:ああ、それは確かだね! 私が15歳だった頃、ジャズは理解できなかったし、興味も持てなかった。たまには良いと思えるものに出会うことはあったけれど、それを理解するための知識や経験がなくて、5年か10年経ってから、ようやくその真価を認められるようになった。それらの意味や価値は、それをどのように採り入れるかによって変化していく。例えば、初めてケニー・バレルを聴いたときには、彼がもっとも刺激的なジャズ・ギタリストだとは思えなかったけど(なんとも二〇世紀らしい考え方だね)、自分が演奏するようになってからは、彼をより尊敬するようになった。

あなたはジャズのギタリストとしての技術を持っていると思いますか?

RT:えーっ? いや、まったく! できるだけ学んで吸収したいと思ってやってはいるけど、それはジャズ・ギタリストを目指してやっていることではないし。私は実際の‶音楽〟ではなく、演奏される音に興味を持っているんだ。

「Space Program」時代には、完全にギターから離れていたのですか?

RT:15年間ギターに触っていなかったね。より多くを要求されるギター文化を受け入れるようになった今、まるで一から始めるような気持ちになる。学ぶべきこと、練習すべきことが多くてハードルも高いから、8歳ぐらいの子どもに戻ったような感じだ。困ったことに、自分はほとんどのギター特有の表現法に興味がないのに、それでも演奏はしたいから、どうやったらいいのかと考え中だ……。

あなたは最近、「Layers」という新作からの抜粋を発表しましたね。それについて何か教えていただけることはありますか?

RT:「Layers」は、持続音が蓄積されて、少しずつ互いを置き換えていくという作品で、調性音楽から無調に変化させながら演奏される。その後、とんでもなく複雑に変化し続けるハーモニクスを生み出す装置に通されるんだ。これは、完全にライヴで演奏するための新作だ。「Layers」は、創作過程としてのパフォーマンスを指向した、単一の作品であるのに対し、『Spectral Evolution』は、作曲における繋がりの広い領域を表している。「Layers」はすでに未来の一部であり、自分が愛することを実践している。未知と対峙するということを。


■ラファエル・トラル公演概要
Scaffold #1

2025.06.26
京都 Club METRO | OPEN 19:00 / START 20:00  
早割¥4,000 ドリンク代別途 [受付期間:5/19 17:00〜5/23 23:59迄]
前売¥5,000 ドリンク代別途
https://www.metro.ne.jp/schedule/250626/

2025.06.28
鳥取 jig theater | OPEN 18:00 / START 19:00  
前売 \ 5,500 (定員80名)
https://x.gd/WLRbt

2025.07.01
渋谷クラブクアトロ| OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥6,000 ドリンク代別途
https://www.club-quattro.com/shibuya/schedule/detail/?cd=017126
出演者: Rafael Toral / Jim O‘Rourke×石橋英子

お問い合わせ:
京都Club METRO: ticket@metro.ne.jp
鳥取jig theater:mail@jigtheater.com
渋谷クラブクアトロ:03-3477-8750

主催 (Organize):PARCO
制作(Produce):DOiT / CLUB QUATTRO
協力(Cooperation):Club METRO / jig theater

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interview with Rafael Toral

Written by James Hadfield

As Rafael Toral’s Bandcamp profile puts it, he’s spent his career “bouncing between the music within sounds and the sounds beyond music.” The Portuguese musician has been a vital presence in the world of experimental music for over three decades, but he’s currently enjoying a renaissance on the back of last year’s “Spectral Evolution.” A landmark work, the album unites different strands of Toral’s endlessly inquisitive practice: the liquefied guitar tones heard on early releases like “Wave Field” (1995); the menagerie of unruly DIY electronic instruments he assembled during his “Space Program” period, which ran from 2004-2017. The key ingredient is classic jazz harmony, including the instantly recognisable (if glacially slow) chord progressions of “I Got Rhythm” and “Take the ‘A’ Train,” which give the album a surprising emotional heft.
“Spectral Evolution” was the result of a painstaking three-year process, during which Toral produced 56 versions of the piece. When he turned to his friend Jim O’Rourke for advice, the latter was so taken by what he heard, he revived his long-dormant Moikai label in order to release it.
In an email exchange with Toral ahead of his first tour of Japan since 2008 – where he’ll be sharing a bill with O’Rourke and Eiko Ishibashi – the musician discussed his relationship with jazz, the importance of beauty in an increasingly ugly world, and the “feedback of love” he’s experienced while performing “Spectral Evolution” live. The conversation has been edited for clarity and length.

Speaking about “Spectral Evolution” in an interview with Tone Glow last year, you said you “had to learn and study and develop a lot in order to make this record.” Can you expand on this?

Well, the album has lots of jazz chords and to connect these chords together you need to know what you’re doing. I had to understand why and how a single note out of place steers a chord into a different colour. I wasn’t prepared for that, so a lot of work went into having it done correctly, then convincingly, then beautifully. As I was struggling with that, I asked Jim for advice, and that’s how he decided to release it.

Can you tell me about your relationship with Jim? Do you often share your works-in-progress with him, or was this a special case?

Jim and I have been great friends since 1995 or so; we first met in Chicago. He’s always been way too busy, so it doesn’t occur to me to distract him with stuff. But this case was different: I was struggling with the harmonies and arrangements, because the album was beyond my capacities and I knew I didn’t have a choice but to climb up to that bar. I knew Jim has much more knowledge in many fields of music than myself, so I asked him to listen, as a friend.

Reaching beyond your capacities seems to be a regular thing in your work. Where do you find the motivation to keep pushing yourself like this?

Well, I just try to make sense of what I am supposed to do: Where should my energy go, and where is the nexus of what I want to do; what is a positive move in its time, what is being said, and whether it should bear my name. Very often, it turns out to be something I must build from the ground up and it entails a promise, a vision. I don’t really have a choice but to fulfil it, even if that means I’ll be pushing myself. Besides, I guess it’s easy to forget we’re not done with evolution: I think we actually have the obligation to evolve.

What role does beauty have in your work?

[Thinking] Well, maybe not a role, but… on the one hand, I’ve grown up immersed in 20th century culture, which, broadly speaking, was mostly busy with dismantling/deconstructing/destroying structures, from cubism to punk, from serialism to glitch. When I was young, anything that was “beautiful” was not to be considered seriously as legitimate art. This is a very gross generalisation, of course. But I felt I needed to claim freedom from that and embrace beauty as something integral to today’s art. We could discuss this forever – I can’t really put it in a nutshell. On the other hand, beauty is not simply cultural/aesthetic; it goes beyond one’s likes and dislikes. There’s a lot of overlap between preferences and our biological and neurological response to what we see and hear. Like, a perfect fifth sounds great and is beautiful, but it’s an interval from a simple mathematical proportion, 3/2, and is a natural vibrating phenomena that has the cells in your body resonating, and who knows what else is happening, when a sound gives you chills down the spine because it’s so good – beauty does go that deep. And lastly, the world is getting so ugly that we better hold on to what is beautiful – in a broad sense, not just pretty, but anything that contains elevated qualities, like integrity, etc.

Pythagoras was right! Have you delved much into the science of this?

I haven’t gotten into the science much. Science is a pillar of civilisation but also lacks everything it can’t measure and explain. I also try to keep away from “knowing” that sort of thing with my head. I try to validate my movements with intuition, often from a kind of knowledge that pertains more to the body and not so much to the brain. And besides, I always prefer to leave that open, for the listener to have their own way to integrate the music.

I think the elevated qualities you’re talking about are also often what separates great art from the mediocre. Was there any particular impetus that made you reconsider your thoughts about beauty?

Definitely today’s exponential increase of ugliness, the decline of civilisation… holding on to beauty is strangely becoming a survival strategy, a conscious effort towards sanity. And yes, beauty understood broadly. Like, acknowledging facts is beautiful, as opposed to spreading lies. Or the beauty of bringing opposite worlds together and having them talk to each other: That’s what “Spectral Evolution” is all about.

Given how much work was involved in producing the final version of “Spectral Evolution” heard on the album, what’s it been like performing it live?

The concert benefits from the album’s structure, which makes it very solid, and the way it sounds live is like being physically immersed in a sound field. It connects the emotional aspects of harmony with the physical experience of vibration. It seems to be intense for the audience; sometimes people tell me they almost cried. For me, it’s important to draw listeners into the sound and that creates a feedback of love.

“Feedback of love” is a great image – I think it says a lot about the relationship you have with your audience.

In some concerts, it can be felt very clearly. These sounds and this whole album have been made with love and it’s been met with a loving way of listening by the audience, and that engagement, that quality of feeling, beams back to the stage.

How has your relationship with your audience developed over your career?

I’ve always respected the audience very much and I’m grateful for how I’m able to contribute something they use in their lives. When you give something and it’s well received, that receiving is in turn a gift back to you. I always commit myself to deliver something that justifies their getting out of their homes and buying a ticket and spending their time listening to whatever I play.

Are the intense emotional reactions you’ve encountered when performing “Spectral Evolution” something new, or have you elicited similar responses with other projects in the past?

This is new, as it’s much more emotional than anything I’ve done before, and it’s delivered with intensity.

I think there are artists who'd view "emotional" music with the same suspicion you talked about earlier, in relation to beauty. As you said, this is new territory for you, but how did you arrive here?

Dealing with clearer emotions is new to me and is unintentional. I like to keep emotions open and abstract so that the listener can project their own. These harmonies have emotions built-in and it’s almost impossible to escape them. I’m more interested in their sound, however.

How much does “Spectral Evolution” vary from one performance to the next?

The live version is expanded; some transitions take a more relaxed time. The album was not originally conceived to be played live, so I play as many live guitar parts as possible, and a few of those are improvised. But it’s very consistent: The variation is in the details. The room acoustics and the PA configuration have a decisive effect, and that’s why I spend hours of soundcheck making it sound good every time.

What does your soundcheck involve? Have you found any ways to streamline the process, or is it always a challenge?

Both! I mean, sometimes a fine PA in a good venue makes things easier, but it’s usually a challenge. I do have a sequenced method and the goal is to create a surround body of sound that is intense but invites people in. A sound that doesn’t push you, but pulls you instead. A sound that isn’t there to dominate, but to embrace you. Every room is different, so the tuning has to be very precise.

I was listening to the mix you did for The Wire at the end of last year, and it’s a fascinating complement to the album – Kenny Burrell isn't normally my thing, but he makes perfect sense in this context. Out of interest, what’s your relationship like with the jazz tradition?

It’s always been like a satellite in orbit. Totally focused in but standing elsewhere. Once I said about the Space Program (my previous free-jazz inspired project of electronics), “It’s all jazz, except the music.” For entirely different reasons, the same applies to “Spectral Evolution.” I have a lot of admiration for the heightened humanity of jazz. There’s a lot to learn and a lot to feel. Layers of depth for the mind and heart.

Do you think your appreciation of jazz, and the qualities you mentioned, has deepened as you get older?

Oh yes, indeed! When I was 15, jazz just didn’t make sense to me and I didn’t have any interest in it. Sometimes, I’d come across something that I could acknowledge was good but I didn’t have the references or experience to process it, eventually becoming able to appreciate it only 5 or 10 years later. The meanings and values change with respect to how you integrate them. For example, when I first heard Kenny Burrell, I thought he wasn’t the most exciting jazz guitarist (there goes the typical 20th-century thinking). But when I started playing, now I’ve come to respect him a lot more.

Do you have jazz chops as a guitarist?

Gosh, no! I do try to learn and absorb everything I can, but it’s definitely not towards becoming a jazz guitarist. I’m interested in the sound of the guitar as it’s played, more than the actual “music”.

Did you completely step away from the guitar during your Space Program period?

I didn’t touch a guitar for 15 years. As I’ve embraced a much more demanding guitar culture, I feel like starting from scratch. There’s so much to learn and practice, because the stakes are so much higher, so it’s almost like I’m 8 years old or so. To make it more difficult, I find myself uninterested in most guitar idioms, but I still want to play – so I’m figuring out what…

You recently released an extract of a new piece called “Layers.” What can you tell me about it?

“Layers” is an accumulation of sustained notes, gradually replacing themselves, played with varying degrees of tonal intention. Then it goes through some gear that brings out incredibly complex and shifting harmonics. It’s a new piece to be played fully live. “Layers” is just one specific thing, more simple and completely oriented to performance as a creative process, as opposed to “Spectral Evolution” which is a broad field of connections in composition. “Layers” is already part of the future and doing what I love: engaging with the unknown.

GoGo Penguin - ele-king

 クラシックを背景に持ちつつも最先端のエレクトロニック・ミュージックを指向するような。あるいは、ミニマル・ミュージックを影響源としながらも、ダンス・ミュージックとしても十全に機能するような。マンチェスターのピアノ・トリオ、ゴーゴー・ペンギンの新作『ネセサリー・フィクションズ』は、複数のジャンルを貫通するハイブリッドの所産と言っていいだろう。

 2023年の『エヴリシング・イズ・ゴーイング・トゥ・ビーOK』で新ドラマーのジョン・スコットを迎え、〈ブルーノート〉からベルリン拠点のレーベル〈XXIM Records〉に移籍。フジロックにも出演した彼らは、屈強なライヴ・バンドとしてもならし、日本のfox capture planと並び、コンテンポラリー・ジャズの新しい領野を切り拓いてきたピアノ・トリオとしてシーンに屹立してきた。

 冒頭2曲から惹きこまれる。“Umbra”“Fallowfield Loops”では重厚でヘヴィな音色のウッドベースが、執拗な反復により聴き手を深い酩酊へと誘う。特に後者は曲名の通りループ構造が露わになっている。冒頭で反復されるのはおそらくプリペアド・ピアノだろう。琴のようにも聞こえるし、エイフェックス・ツインの『アンビエント・ワークス』を連想する人もいるに違いない。
 地鳴りのような低音が強調される“What We Are and What We Are Meant to Be”は彼らなりのベース・ミュージックといった趣きで、ダブの要素もある。人力ディレイとでもいうべきか、スネアのリムショットを巧みに重ね合わせて残響を現出させているところなど、とびきりユニークだ。雨音とヒスノイズが交差する“Background Hiss Reminds Me of Rain5”は彼らなりのアンビエントとでも言うべきトラックである。
“Living Bricks in Dead Mortar”はスローでダークなトリップ・ホップ風だし、“Naga Ghost”はドラムンベースのニュアンスがある。全体的にメランコリックな空気が際立ち、泣きのメロディが支配しているのも特徴だ。ヴァイオリンが主旋律をリードする“Luminous Giants”などにその傾向が顕著である。

 かように多用な要素が交錯するアルバムだが、ぶっといウッドベースがその重心を支える背骨の役割を果たしている。普通ジャズのピアノ・トリオというと、リズム隊が底辺を支え、そのうえでピアノが自由にソロを取るというイメージを抱きがちだが、彼らはまったく違う。ウッドベースが中軸をなし、ピアノはその上にのっかり、ドラムは軸を補強する。ビートを先導するのもウッドベースである。

 2021年の『GGP RMX』では、コーネリアスやスクエアプッシャーや808ステイトが彼らの曲をリミックスしていたが、同作は既に彼らの音楽の〝踊れる〟側面を浮き彫りにしていた。その発展形として、このアルバムがあると言えるだろう。ダンサブルでありながら、人力ならではのオーガニックな感触は損なわれていない。こんなアルバム、ゴーゴー・ペンギンにしか作れないだろう。

PHYGITAL VINYL - ele-king

 Pヴァインが手がけるレコード好きのためのアプリ「VINYLVERSE」。その使い方を学べるイベントが開催されることになった。当日は「VINYLVERSE」のレクチャーに加え、プレス工場「VINYL GOES AROUND PRESSING」の見学や、スマホで再生できるレコード「PHYGITAL VINYL」をじっさいに製造する体験もできるとのこと。さらにはできたてほやほやのレコードはお持ち帰り可能と、おみやげまでついてきます。詳しくは下記をご確認ください。

【2025-06-23 追記】

本イベントの参加募集は定員に達したため、受付を終了いたしました。ありがとうございました。

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『スマホで再生できるレコード「PHYGITAL VINYL」を作りませんか?』

レコード専用アプリ「VINYLVERSE」の使い方を学びながら、実際のレコードプレス工場で製造現場を体験できる特別イベントを開催します!

7月19日(土)、スマホアプリ「VINYLVERSE」の簡単なレクチャーと、その再生メディアである「PHYGITAL VINYL」の製造体験として、VINYL GOES AROUND PRESSINGでの工場見学・制作体験をセットにした90分のプログラムをご用意。
プレスマシンの見学、ドーナツ盤の穴あけやシュリンク包装の体験に加え、PHYGITAL VINYLを使ったアプリ体験もお楽しみいただけます。

さらにこの日、製造するのは話題沸騰中のFNCY+9m88「Saturdays Vibrations」。**この日だけの限定カラー仕様(PHYGITAL VINYL盤)**でプレスされた、できたてホヤホヤのレコードをそのままプレゼントします!

抽選会では、スペシャルな景品が当たるチャンスも。**参加費無料・事前申込制。**レコードファン必見のイベント、ぜひご参加ください!

◾️日程・概要
開催日:7月19日(土)
時間:14:30開始 ~ 16:00終了
(※工場へは15分前よりご来場可能です)
※終了時間は状況により前後する可能性がございます。

場所:VINYL GOES AROUND PRESSING(埼玉県川口市)

料金:無料

◾️内容
【製造見学・体験】
・プレスマシン見学
・ドーナツ盤穴あけ体験
・シュリンク包装体験
※シュリンク包装は工場で用意したレコードを使って体験していただきますが、おひとり様1枚までご自身のレコードをお持ち込みいただくことも可能です。ただし、短時間ながら熱処理を行うため、貴重なレコードのご利用はお控えください。

【VINYLVERSEアプリの体験・説明会】
当日配布されるレコードは、「PHYGITAL VINYL」という特殊仕様となっております。通常のレコードプレーヤーで再生可能ですが、スマートフォンでの再生・利用には専用アプリ「VINYLVERSE」のダウンロードが必要です。

※会場にはご利用可能なWi-Fiはございません。モバイル回線(携帯電話のデータ通信)をご利用いただく場合がありますので、可能であれば事前にアプリをダウンロードしておいてください。
アプリは **「VINYLVERSE MUSIC」**で検索してインストールできます。

【お土産】
FNCY+9m88「Saturdays Vibrations」
限定カラーPHYGITAL VINYL盤(この日だけの特別カラー仕様!)を、当日プレスされた出来たてホヤホヤの状態でプレゼントいたします。

【プレゼントがもらえる抽選会も開催予定!】
参加者のレコードに印字されたナンバーで抽選を実施。
運が良ければ、VGAのTシャツやPヴァインのレコードなど豪華景品が当たるチャンス!

◾️アクセス情報
・埼玉高速鉄道(東京メトロ南北線直通)「川口元郷駅(2番出口)」からバスで約12分:
 2番バス乗り場より、
 国際興業バス [川02]「東領家循環(東領家一丁目方面)」に乗車
 →「花の枝橋」バス停下車 徒歩約3分
https://transfer.navitime.biz/5931bus/pc/diagram/BusDiagram?orvCode=00020881&course=0001000878&stopNo=4

・JR京浜東北線「川口駅」東口からバスで約20分:
 1番バス乗り場より、
 国際興業バス [川02]「東領家循環(東領家一丁目方面)」に乗車
 →「花の枝橋」バス停下車 徒歩約3分
https://transfer.navitime.biz/5931bus/pc/diagram/BusDiagram?orvCode=00020643&course=0001000878&stopNo=1

・日暮里舎人ライナー「舎人公園駅」徒歩20分

※受付完了後に、正確な住所を改めてご案内いたします。
※会場に駐車場はございません。お車でお越しの方は、近隣のコインパーキングをご利用ください。

◾️撮影・SNS投稿OK!
会場では、記録・取材・SNS投稿が行われる場合があります。
写真や映像に写り込む可能性があることをあらかじめご了承ください。

◾️応募方法
以下の応募フォームよりお申し込みください:
https://forms.gle/qXTX4t49uZmhxD277
1回のお申し込みで2名様までご応募可能です。お一人様での参加も歓迎します。
※定員に達し次第、受付を終了させていただきます。

※中学生以下の方は、10歳以上かつ保護者同伴の場合に限り参加可能です。
なお、会場にはプレス機や加熱設備、穴あけ機などの機械が多く、熱や鋭利な部品を伴う作業も含まれるため、幼児〜小学校低学年のお子さまのご参加は、安全確保の観点からご遠慮いただいております。何卒ご了承ください。

※当見学会は、一般の音楽ファン・リスナーの皆様を対象とした内容となっております。業界関係者様(企業・レーベル・同業の皆様)のご参加はご遠慮ください。

その他、事前にご不明な点がございましたら、以下のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。
support@vinylversemusic.io
※内容によってはご返信にお時間をいただく場合がございますが、原則として2営業日以内にご対応いたします。

◾️主催:VINYL GOES AROUND(株式会社Pヴァイン)

dazegxd - ele-king

 在日アメリカ人DJ・migeruが東京を拠点に展開するパーティ・シリーズ〈GOODNIGHT〉が、7月25日(金)にCIRCUS TOKYOにて40回目の開催を迎える。記念すべき本回のゲストには、先日Web ele-kingでも取り上げたハイパーポップ/デジコアの第一人者ジェーン・リムーヴァーのサポートDJとしてツアー全日程に帯同中のdazegxdを招聘。

 dazegxdは、ポスト・ハイパーポップの潮流をリードするアメリカのインディ・レーベル〈DeadAir〉とニューヨーク・ブルックリン拠点に活動するプロデューサー。自身の手がける作品群は、ゼロ年代のVGMやレイヴ・ミュージックに影響を受けたジャングルやドラムン・ベース、(2020年代以降のリヴァイヴァルの潮流を汲む)アトモスフェリックなブレイクコア、そしてガラージなどのベース・ミュージックだそうだ。「NYCガラージ」という、(UK的なそれではない)新たな流れもSwami Sound、gum.mp3といった面々とともに牽引中で、昨年には自身の主催するコレクティヴ〈eldia〉によるパーティの東京編を初開催するなど、日本のポップ・カルチャーへの愛も深い。

 また、本回をサポートするローカル・アクトには、先日〈POP YOURS〉にも出演した国産ハイパーポップの代表的存在であるlilbesh ramkoによるライヴ、discordsquad2k、666、wagahai is neko、Yurushite Nyan、GOODNIGHT CREWによるDJセットがラインナップされている。いずれもコロナ禍以降のクラブ・シーンに出現した、ジャンルレスでエッジの効いたプレイを得意とするプレイヤーたちだ。

 2020年代以降様変わりしたクラブ・シーンの世界的潮流と、日本のローカル・シーンでいま起きていることが交わる興味深い一夜と思われる。昨今の流れに馴染みの薄い人も、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。

7/25 (Fri)
GOODNIGHT vol.40
at CIRCUS TOKYO
23:00 OPEN / 5:00 CLOSE
ADV: ¥2,500+1d / DOOR: ¥3,500+1d

Ticket: https://circus.zaiko.io/e/goodnight40

Special Guest
dazegxd (Brooklyn, NYC)

LIVE
lilbesh ramko

DJ
666 (yuki+maya)
discordsquad2k (fogsettings+ikill)
wagahai is neko
Yurushite Nyan
GOODNIGHT CREW (skydoki+NordOst+migeru)

VJ
emiku
suleiman.jp

対抗文化の本 - ele-king

 長く続いた店が閉まるのは、いつだって悲しい。ましてや、自らが主体的に関わってきた場所であれば、なおさらである。

 下北沢の路地裏にあったブックカフェ「気流舎」は、2007年の開店以来、実に17年間にわたり存在し続けた。オープン当初から掲げられていたのは、当時すでに古風とも言える「対抗文化(カウンター・カルチャー)」という言葉。この理念を軸に、独立系の古書店兼ブックカフェ・バーとして歩みを始めた。

 原発事故を境に、創業店主による個人経営から、常連客たちによる共同運営(有限責任事業組合)に体制を移行し、筆者も「非組合員」ながら運営に関わるようになった。そして2024年末、ついに気流舎は店舗としての役割を終えた。残務処理を担う「組合員」を除けば、メンバーたちはそれぞれの旅路へと散っていった。

 シュタイナー建築を学び、「あけぼの子どもの森公園」のムーミン屋敷の設計でも知られる建築家の故・村山雄一氏による空間は、幸いにも居抜きで残ったが、長年店頭を彩ってきた植物たちはすべて撤去され、庭先の土もコンクリートで覆われてしまった。近隣に住んでいることもあり、跡地の前を通るたび、アスワドが1981年に発表した曲の一節「African Children, Living in a Concrete Situation」が、しばしば頭をよぎった。どうやら下北沢におけるジェントリフィケーションも、いよいよ完成の域に達したようだ。

 そもそも「気流舎」とは何だったのか。どのような役割を果たしていたのか。その答えは共同運営という性格上、関わった人の数だけあったはずだ。書店であり、カフェであり、酒場であり、小規模なイヴェントスペースでもあり——そしてなにより、「対抗文化の本」に関心をもつ人々が集う場所だった。

 そこでは、公の場では語りにくいようなテーマ——ポリティカルな議論やサイケデリックな体験談——が自然に交わされた。本を読むつもりで立ち寄ったのに、いつの間にか話し込んでしまうような、密度の濃い空間だった。

 形式上は店舗でありながら、店長は存在せず、雇われたスタッフもいなかった。メンバーは誰ひとり報酬を受け取らず、店番は希望すれば基本的に誰でもできたし、途中でフェードアウトすることも許された(貴重本の紛失といった課題も生じた)。過去には運営費を確保するために賛助会員を募り、ドネーションを集めたこともあった。

 「気流舎」という名称は、社会学者・見田宗介が「真木悠介」名義で1977年に著した『気流の鳴る音』に由来する。共同運営が始まってしばらくすると、この本を読むことが唯一のメンバー加入条件となった。そういう意味でも、気流舎は本を媒介としたコミュニティだった。

 『気流の鳴る音』は、ペルー生まれのアメリカの作家・人類学者のカルロス・カスタネダの『ドン・ファンの教え』シリーズの解説書としても読めるものであり、人類学、比較社会学、シャーマニズム、マルクスの思想、インディアンの詩、インドやメキシコの旅のエッセイといった諸要素が交錯するユニークな本だ。副題の「交響するコミューン」が示すように、融合を目指す「ニルヴァーナ原理」ではなく、多様な個が響き合う「エロス的原理」がコミューンのあり方として志向された。

 そんな本の影響もあってか、サイケデリック(文化)、アナキズム(思想)、ニューエイジ(運動)といった、一見交わりづらく対立しがちな要素が、あの小さな空間のなかでは、絶妙なバランスで共存していたように思う。ある時期までは、確かにそんな空気があった。

 2000年代中頃から、東京各地にはインフォショップ、オルタナティヴスペースと呼ばれるような自主管理型の空間が点在するようになった。そうした場は、大学キャンパスが自治的な機能を急速に失っていくなかで、代替的な議論と実践の場になり、文化的・政治的運動を支える関係性の温床となっていた。本書に収録された『ストリートの思想 増補新版』刊行記念イヴェントでは、著者の社会学者・毛利嘉孝氏と、アジアの自主管理空間を研究する江上賢一郎氏による対談が行われ、気流舎もまさにその時代の、その界隈の、ピースのひとつだったことを改めて強く実感することになった。

 こうした場がひとつ消えることは、都市における共有財産=文化的拠点がまたひとつ減ることを意味する。再開発によって家賃が高騰した現在の下北沢において、若い世代が新たにスペースを借り、非営利で維持することは極めて困難である。リアルな場所での集まりがむしろ必要とされている今、運営(組合)体制を刷新し、次世代にバトンを渡すという道はなかったのか。閉店が正式に決定した後も、イヴェントの終わりにゲストや来場者と共に、そんな未練を語り合った。皆が口を揃えて言っていたのが、「もったいない」だった。

 ただ、場所が消えても、残るものはあるはずだ。「気流舎」という名のもとに続いた17年間が熟成だったのか、発酵だったのか、あるいは腐敗だったのか—— その答えは風のなかだが、ただひとつ言えるのは、そこには確かに、空間に沈殿したひとつの文化のスタイル、あるいは集合的な表象のようなものが存在していた、ということだ。それを自分なりにすくい取り、記録したかった。

 特に昨年8月の運営会議で年内閉店が正式に決まってからは、まるでダブプレートを切るサウンドマンのような勢いで、自分が考える「対抗文化」のイヴェントを次々と企画し、空間に響かせ、録音し、文字に起こしていった。とりわけ、長年あやかってきた『気流の鳴る音』の思想的影響については、しっかりと文字で残しておきたかった。そうして気流舎を通り過ぎていった77名の「旅人」たち——その名の通り有名無名を問わぬ語り手たち——の言葉のモザイクを一冊に結晶させることにひとり没頭した。完成した書籍『本のコミューン 対抗文化のイヴェント記録と通り過ぎた旅人たちの風』は個人出版というかたちをとり、出版レーベル名を「文借社(あやかりしゃ)」とした(草森紳一『あやかり富士』にあやかった)。

 本書には、60年代に本場アメリカでサイケデリック・レヴォリューションの渦中を体験し、帰国後は「いのちの祭り’88」で実行委員長を務めたおおえまさのり氏、ヒッピー・コミューン運動「部族」の中心メンバーであり、「部族宣言」を書き、トカラ列島の諏訪之瀬島に長らく暮らした詩人・長沢哲夫(ナーガ)氏、そして、60年代に日本各地に存在した土着コミューンを歩き記録した『不可視のコミューン』の著者・野本三吉氏など、いわばヒッピー世代のレジェンドとも呼べる80歳超えの「長老」たちも登場する。

 さらに、西荻窪「ほびっと村」界隈を中心とした70年代ヒッピー・カルチャーにまつわる記録も、本書では重層的に収録されており、貴重な証言集となっている。マジックマッシュルームが合法だった時代にレイヴ・カルチャーに出会った世代としては、こうしたヒッピーの先達たちの軌跡と、自分たちの文化との連なりをしっかりと記録しておきたいという目論見があった。

 とはいえ、「カウンター・カルチャー」という語を使うと、どうしても60年代欧米発祥のヒッピー・ムーヴメントやサイケデリック・カルチャーの系譜に限定されてしまう印象があり、本書では、より広く複雑な文脈を見渡すために、あえて「対抗文化」という表現を選ぶことにした。

 個人的な趣味を言ってしまえば、ぼくにとって「対抗文化」とは、ブルースを源流とするブラック・ミュージック、あるいは世界中の「大衆前衛」のなかに潜む〈抵抗の力〉を感じ取り、引き受けることにある。それはまた、被抑圧者の声に耳を澄ませ、その声に動かされて、自らも行動を起こしていくことを意味する。本書も微力ながら、そうした文化実践の一端を担おうとする試みでもある。

 たとえば、現代的な手法で「ルーツ」を再構築しつづけるジャマイカの新世代ラスタたちによる闘い〈レゲエ・リヴァイヴァル〉運動、英国ラヴァーズロックの甘くやわらかな響きの奥に秘められたポリティカルなメッセージ、貧困や苦悩を歌いながらも、そこに自己解放の希望を託すブルースの表現力、さらにはブルースのしゃがれ声に宿る屈折したエネルギーを、澄んだ音色のアドリブによって昇華するビーバップの革命—— 音楽に宿る感情の複雑さと、その背後に折り重なる歴史や社会の文脈を掘り起こすこと。そこにこそ、ぼくが「対抗文化」として捉える核心がある。

 評論家であり、革命思想家であり、そして何より日本におけるブラック・ミュージック理解の先駆者でもあった平岡正明の没後十五年を記念し、気流舎の終わりにイヴェントを開催できたことは、ぼくにとって大きな意味をもつ出来事だった。

 思い返せば、人生で初めて企画したイヴェントが、平岡正明氏を迎え、音楽や芸能について縦横無尽に語り尽くしてもらうというものだった。そこから20年。原点とも言える人物を再び軸に据えたイヴェントで「対抗文化」の空間を締め括ったのは、ぼくにとっての「ルーツ回帰」だったとも言えよう。

 「変わりゆく同じもの(the changing same)」——アメリカの批評家アミリ・バラカのこの言葉は、ブラックミュージックを貫く特徴としてあまりに有名だが、これからの自分の活動を見定めていくための指標にもなっていくだろう。

 気流舎の終焉は、ある意味でコミューン志向の場の宿命だったかもしれないが、この小さな社会実験(ブック・コミューン!)から得たものは計り知れない。挫折の果てにこそ〈解放〉があり、場所や立場を失うことで初めて〈自由〉になれる—— そのことを実は真木悠介からすでに教わっていたのだ。長らく沈没していた宿舎(サライ)に別れを告げ、あとは自分のやり方で旅を続けていくだけだ。

『本のコミューン 対抗文化のイヴェント記録と通り過ぎた旅人たちの風』刊行の集い

本のコミューンVol.7 
南阿佐ヶ谷編

チャイ・ブック・サロン ——火曜舎でチャイと本に出会う
https://ayacari.base.shop/blog/2025/06/04/155359

火曜舎のマサラチャイの特徴である「ここではない何処か遠くへ飛べる」「脳天に響く」「良薬のような」「ワインのように余韻の長い」本を各自一冊持ち寄って、紹介し合いましょう。

日時:2025年6月28日(土) 16時〜19時  
場所:火曜舎(東京都杉並区成田東5-35-7)
会費:1,500円(マサラチャイ付き)


本のコミューンVol.8 
チェンマイ(タイ)編

Vision of Chiang mai with CCC
チェンマイ・チル・クラブと見るヴィジョン

https://ayacari.base.shop/blog/2025/06/08/120817

チェンマイ旧市街にあるバックパッカーホステルの庭で持ち寄ったチルなモノと時間を分かち合い、チェンマイ・チル・クラブで一緒にヴィジョンを語りましょう。

日時:2025年7月5日(土) 17時〜20時  
場所:Deejai backpackers (ディージャイバックパッカーズ)チェンマイ旧市街
入場:無料(カンパ歓迎)
ゲスト:
CHIE(SuperChill タイ伝統療法・トークセン、CCC)
Grace Okamoto(フォトグラファー、CCC)
Yuki Makino (NEO食堂 Aeeen Japanese Vegan ) 

CCC - Chiangmai Chill Club

「大人の部活」をコンセプトに、Chill好き女子たちが本気で遊ぶ実験的コミュニティ。テクノパーティー主催、森でのピクニック撮影会、オリジナルハーブ試飲会、ボディワーク交換会などジャンルにとらわれず“やってみたい”を形にしていく場。旅人を含む、一期一会のメンバーで遊びをCreateしています。

▼書籍詳細&購入先
https://ayacari.base.shop/items/104200844

本のコミューン
対抗文化のイヴェント記録
と通り過ぎた旅人たちの風

企画・編著 ハーポ部長
デザイン 戸塚泰雄(nu)
発行所 文借社
2025年4月20日発行
四六判334ページ
定価 2,000円(税別)


目次

Ⅰ 浮遊するコミューン

〈レゲエ・リヴァイヴァル〉とアーバンラスタの闘い 
鈴木孝弥 

オーガニックにしときなさい ージャー9との対話 
ハーポ部長(翻訳 竹内嘉次郎) 

都市型コミューンの誕生
ー 砂川共同体・石神井村コミューン・ミルキーウェイキャラバン 
大友映男(やさい村) 

コミューン暮らしとその終わり
ー ポンちゃんと無我利道場の思い出 
蝦名宇摩

無謀なるものたちのコミューン ー下北沢コミューン研究部の記録 
ハーポ部長

ひとつのコミューンがなくなるとき 
中西淳貴(笹塚コミューン)

Ⅱ 路上と抵抗

ストリート以降/都市 
毛利嘉孝 × 江上賢一郎

ラヴァーズロックと抵抗の音楽 
石田昌隆

交流無限大 ーだめ連 ぺぺ長谷川の文化遺産 
神長恒一(だめ連) × いか(ぬけ組) × 原島康晴(編集者)

はみ出す言葉、Fuzzyな存在 
石丸元章(企画・聞き手:銀色夏実 発言:北沢夏音、大田 ステファニー 歓人、『さいばーひっぴー』編集部すずき&うみこ)

Ⅲ ヒッピーやらパンクやら ータンタンに捧ぐ

梵! ヴォヤージュ! 
ハーポ部長

クール・レジスタンスの時代 
北沢夏音 × 青野利光(『スペクテイター』)

チャンマイ薬草ライフ 
ことり薬草えこインタビュー

 
暴力と尊厳の考古学 ー『死なないための暴力論』刊行記念 
森元斎 × 成瀬正憲

生涯一パンク 
中沢新一 

Ⅳ 風に吹かれて ー気流の鳴る音をきく

メキシコの真木悠介 
今福龍太 × 上野俊哉

『気流の鳴る音』を気流舎で 
鶴見済

自分の内に絶えることなく歌があること ー真木悠介輪読部の記録 
椋本湧也 

ぼくの人生と真木悠介 ー気流舎での出会い 
野本三吉 

Ⅴ ブック、マジック、ミュージック

カウンターカルチャーの印刷物はどのように作られたか? 
槇田 きこり 但人(プラサード書店)
(校閲 石塚幸太郎)

わたしの知ってる最近のZINE事情 
野中モモ

没後一五年 平岡正明は「笑う革命思想家」だった 
阿部晴政 × 向井徹(平岡正明著作集委員会)

民俗音楽の彼方へ 湯立て神楽編 
ものいみやなかの会(齋藤真文&宮嶋隆輔&中西レモン&すー&斎藤ぽん&ハズミ)

気流舎と旅 
ハーポ部長

坂部の冬祭りレポート 
アクセル長尾

鬼とパンク 天龍村坂部冬祭りについて 
石倉敏明 

インドネシアの呪術師に弟子入りしたタオイストの話 
中原勇一(やわらぎ気功クリニック)

気流舎から始まった本の旅 
汽水空港モリテツヤ インタビュー 

エッセイ 旅のノートから(38人の旅話&本の紹介&気流舎への一言)

ハーポ部長 ELIJAH-FAR-I  鍵谷開 高橋ペコ 桝田屋昭子 Yusuke Suzuki 高岡謙太郎 ありい 大槻洋治 根岸恵子 すずき 銀色夏実 茂田龍揮 花崎草 くるみ 橋本勝洋(サンガインセンス) 川上幸之介 タンタン(長谷川浩) 翔太郎 内田翼 石崎詩織 川崎光克 さおり 平田博満 おおえまさのり ケロッピー前田 円香(現代魔女) わたなべみお 関口直人 猫村あや 馬場綾(アマゾン屋) リサ 長澤靖浩 宮脇慎太郎(ブックカフェソロー)  諫山三武(未知の駅) 吉澤順正 おぼけん(『新百姓』) 長沢哲夫(ナーガ)

  
虹より高く ーロバート DE ピーコとブルース共同体 
ハーポ部長

ロバート DE ピーコ音源QR「ライヴ・アット・気流舎」

      
編集後記 
僕らには儀式が必要だった
気流舎から寄留者へ

 先月、NHKで放送された国内最大規模の音楽賞番組「MUSIC AWARDS JAPAN」は「透明性」をキーワードに掲げていた。同番組は放送後も「透明性」を軸に語られ、そうした議論をいくつか聞いていると、それまで音楽賞番組の代名詞だった「日本レコード大賞」はよっぽど「透明性」に欠け、「透明性」の重要性が説かれれば説かれるほど「日本レコード大賞」は金が飛び交う賞番組なのだなという印象が増していった。放送日が年末年始でなかったのは「日本レコード大賞」への配慮からだろうし、アイドル部門で最優秀アイドル賞を受賞したスノーマンが授賞式を欠席しても、旧ジャニーズ事務所が事務所ごと「日本レコード大賞」の不参加を決め込んだようなことは(まだ)起きていないと思わせる演出も随所に施されていた(「不透明」だったのはプレゼンターの人選ぐらい?)。ちなみに「MUSIC AWARDS JAPAN」は音制連や音事協など5つの音楽主要団体が選考の主体で、「日本レコード大賞」の主催は各新聞記者。

 山口百恵は一度も「レコード大賞」を受賞していない。AKB48がレコード大賞を取った日、小学生だった姪は「日本は終わった」とやさぐれていた。中森明菜が新人賞を取れなかったのは大手事務所が金をばらまいて阻止したからだということはよく知られている。家に送られてきた賄賂を送り返したと話す審査員にも僕は会ったことがある。このように「評価」のシステムが「不透明」なのは、何も音楽業界だけではなく、日本全体に浸透している権力のあり方と関係し、そうした構造を既得権として告発し、すべてに「透明性」を与え、「自由競争」を促そうというのが新自由主義である。「MUSIC AWARDS JAPAN」も「透明性」を謳い、評価の基準を明確にしてマーケットを正常化したいという志が動かしていたのだろう。そこにはいわゆる外国の目があり、外国のマーケットがあり、日本の音楽事務所がここ数年、アメリカの投資家に買いまくられていると思ったらやたらとJ-ポップがビルボードのチャートに入るようになったという現実もある。日本の音楽はユニークだ、日本の音楽は外国に通用する、日本の音楽を外国に売りたい、という欲望が「MUSIC AWARDS JAPAN」のそこかしこから吹き出し、日本の音楽が外国のマーケットに進出した象徴として “ライディーン” のリブートからスタートしたのも本音がよく出ていた。もちろん、高橋ユキヒロへの追悼はなかった。

「MUSIC AWARDS JAPAN」を観ていて僕には淀んだ気持ちはあってもブレイクスルーの感情は湧いてこなかった。「不透明」の代わりにあったのは「数」の論理である。最も多い投票数を集めて日本で一番優れているミュージシャンとされたのがミセス・グリーン・アップル。1年前に植民地主義を肯定する表現が問題視されたバンドで、彼らのような存在をいま日本の顔に選ぶなんて、投票した人の見識は大丈夫なんだろうかと思ってしまった(ちなみにレコード大賞と同じ結果)。音楽の優劣が「数」で決まる(とはいえ、投票数が公表されたわけでもない)。「数」というのはつまり数字で、これもまた別な意味で金である。「不透明」が汚れた金なら「数」が導くのはきれいな金ということか。日本社会の「不透明さ」は姪の心を打ち砕いてしまったけれど、どうやら僕の心を打ち砕くのは「数」である。暴力の質が変わっただけともいえる。開会宣言で細野晴臣が「ただ好きなことをやっていただけ」と、暗に自分は「数」とは無縁だと述べたことは結果的に番組への最大の抵抗になっていた。音楽には金よりもマジックを呼んでほしいと思う僕は「数」の論理から遠く離れた音楽を聴くことしかきっとこの先もできないだろう。そもそも正常化したマーケットのなかにだけ音楽があるわけではない。金でもなければ数でもなかった音楽家の名前を、ここで僕はどうしても思い浮かべてしまう。忌野清志郎さんである。忌野清志郎という音楽家の才能を評価する基準は、いま、日本社会のどこにも見当たらない。この先もないかもしれない。「低脳なヤマ師と 信念を金で売っちまう おエラ方が 動かしている世の中さ 良くなるわけがない あきれて物も言えない」(RCサクセション “あきれて物も言えない”)

 東芝EMI時代に知り合い、その後も彼が会社を変わるたびに何かと縁のあった高橋康浩が忌野清志郎についてまとめた著作『忌野清志郎さん』の構成を少しばかり手伝った(本日・発売)。高橋くんは昔から業界っぽく喋るのだけれど、業界っぽく聞こえたことがない。根が純真なので、スカしても様にならないし、何を話してもロックが好きだということしか伝わってこない。キング&プリンスの高橋海人があまりにも高橋くんに似ているので「もしかして子ども?」と訊いたら「みんなにそう言われる」と憮然としていた。高橋くんとは一時期、清志郎さんのプロモーションでTV局を巡ったことがある。『ねるとん紅鯨団』の収録では清志郎さんが例によって大遅刻で、ついさっきまで西田ひかるが座っていた椅子に異様な執着を示していた高橋くんもタイム・リミットが過ぎてからはスタッフに「もう来ます」「家を出ました」と平謝りで、西田ひかるの椅子どころではなくなっていた(浅草ROXでの公開収録なのでお客さんも待ち続けた)。しかも収録が始まると清志郎さんはVTRを見ながら「面白くない」「興味ない」を連発。途中で一回だけ「少し面白くなってきた」と発言し、最後は「やっぱりつまらなかった」と言って急に坂本冬美の “能登はいらんかいね” を歌い出した。とんねるずも「清志郎さんじゃ仕方がない」というジェスチャー。同番組のオン・エアを観たら「少し面白くなってきた」と “能登はいらんかいね” しか使われていず、清志郎さんはずっと番組を面白がっていたかのように編集されていた。まあ、そういうものかもしれないけれど、TVの編集って事実とは正反対の印象を与えられるんだなということを、その時は学ばせてもらった。

 高橋くんが清志郎さんのプロモーションに加わる以前、僕はレコード会社でも事務所の人間でもないのに、どういうわけか清志郎さんがTV局に行く時はいつもくっついていた。初めて行ったのは確か『オレたちひょうきん族』で、『RAZOR SHARP』のプロモーションのために “AROUND THE CORNER / 曲がり角のところで” を歌う場面もあったけれど、鹿の着ぐるみを着て、ただ突っ立っているだけだったりと、清志郎さんがやらされていることには「なんで?」と思うことが多かった。本人が楽しんでいるならいいかとは思うけれど、RCサクセションを続けるべきか、やめるべきか、曲がり角のところで考えていたり、河を渡ったり、考えが変わったり、夢は終わったし、二度ともどれはしないし、いったい ぜんたい ここはどこで、新しいアイディアを聞かせておくれと、ありったけの苦悩がぶちまけられた作品を世に伝えるにしてはどうもフォーマットが合っていないような気がした。『RAZOR SHARP』はロンドンでレコーディングしている時からプロモーション・ヴィデオの撮影や宣伝用の写真撮影、それとジャケットの撮影にも立ち会ったので、内容とリンクしていないと思うことは最初から少なくなかった。英語圏のクリエイターたちとはやはり意思疎通が難しく、ジャケット撮影から特急で3日後にあがったデザインのラフを見て清志郎さんはジャケットに入れる名前の表記も、たとえば「Johnny "Guitar" Watson」のように「KIYOSHIRO IMAWANO」の間に、あだ名のようにして "忌野清志郎”と入れて「KIYOSHIRO "忌野清志郎” IMAWANO」と読めるようにしてほしいと頼んでいたのだけれど、結局これは直らなかった。アイコン(というデザイン事務所)のデザイン・ワークも彼らが直前に手掛けたポール・ヤングの使い回しで、ギザギザのカットが半分に減ってるだけ。そもそもジャケット撮影も清志郎がどんなメイクをしているのか知らないために、メイクさんからどうメイクしていいのかわからないと言われ、清志郎さんも途中で宣伝部の近藤(雅信)さんに「写真は持ってこなかったのか」とやや怒り気味。いつもはファンキーな近藤さんもその時は真っ青になって「すいません」と頭を下げるだけだった。結果的にRCでやっていたメイクとは違う顔が出来上がり、むしろ良かったのではないかと僕などには思えたものの、スタジオの雰囲気は途中まで最悪。それを挽回するようなデイヴィス&スターによるユニークな撮影方法は前にどこかで書いたので省略するとして、後日、届いたポジを見て「どれも使えない」という声が出た時は僕まで切羽詰まってしまった。ディレクターの熊谷(陽)さんはアタッシェ・ケースに現金をぎっしりと詰め込んでスタンガンで武装しながらスタジオやデザイン事務所を飛び回り、なんというか、『RAZOR SHARP』のジャケットって、よくかたちになったなあといまだに感慨深い。

 ヴィデオの撮影でもメイクはネックになった。ヴィデオ・チームのメイクさんは魔法使いのような服を着た女性で、同じく参考になる写真はない。だんだんと出来上がっていく顔はデイヴィス&スターによるジャケット写真ともイメージが異なり、清志郎さんの顔は分を追うごとにチャイニーズ・マフィアのボスみたいになっていく。おそらく周囲にいたブロックヘッズの雰囲気に合わせたのだろう。そう思うと違和感はなくなる。メイクの女性にはうっすらとヒゲが生えていて、清志郎さんはそれをコソコソと面白がっていた(そんなことしてる場合じゃなかったのに)。ヴィデオを観てもわからないとは思うけれど、撮影場所はスタジオではなく、大きな図書館で、2階の本棚をすべて端に寄せ、クレーンを持ち込んでぐるんぐるんとカメラを移動せながら撮影していった。豪快だった。何度かリハがあり、清志郎さんのメイクが完成したところで、シェフがみんなのランチをつくり始めた。ところが、清志郎さんだけはメイクが崩れるという理由で食事禁止。これはさすがに段取りが悪い。なんともいえない空気のなか、僕もなぜか食事をもらえたので、申し訳なく思いながら食べた。おいしかった。

 こんなことを書いているといつまで経っても終わらない。清志郎さんと食べもののエピソードだけでもどこまででも筆が伸びてしまう。メイクの人が清志郎さんの髪をいじっている時に「昔はマッシュルーム・カットだったんですよね」と僕が訊くと「あれはイリヤ・クリヤキン・カットなんだ」と教えられ、日本に帰ってから調べてみると、ナポレオン・ソロの相棒のことだと判明したり(よほど人気があったみたいで、ジューシー・フルーツの奥野敦子がイリヤと名乗っていたのもこのキャラクターから。後に清志郎さんのラジオでクリーナーズ・フロム・ヴィーナス “Ilya Kuryakin Looked at Me” を探し出してオン・エアしたのは私です)。僕は『RAZOR SHARP』『MARVY』『COVERS』の宣伝を手伝い、高橋くんの著作はファンだった時代を助走部分として仕事的には『コブラの悩み』からタイマーズ、『Baby A Go Go』へと続いていく。高橋くんが路上ライヴを始めたあたりから宣伝の質は大きく変わる。メディアを集めるというよりはメディアが寄ってくるように仕向け、売るためにやるというよりは結果的に売れる方法を清志郎さんと高橋くんは探っていたのかもしれない。時代はそろそろミュージシャンや各ジャンルのクリエイターが自分のやったことをきちんと説明し、プレゼンテーション能力を上げ始めた時期である。ミュージシャンが好きに歌い、ライターが好きに書くことは許されなくなり、それが出来なければマーケットの外に出て行けといった雰囲気も強くなっていた。本書を読んでいると、プロモーションのシステムがだんだんと固まっていった時期に2人は逆らいたかったのかなとも思う。

 ソロになってからも高橋くんは断続的に清志郎さんと仕事を続け、亡くなった後もファー・イースト・プロモーション・マンであり続けている。清志郎さんからの信頼がハンパなかったことは行間をびしょびしょにするほど滲み出ていて、いつも清志郎さんのことを考えているからだろう、たまに会うと考えが深まっているのは驚かされる。RCの末期に「同じことの繰り返しから見えてくるものがある」と清志郎さんはアレンジを変えないで演奏するわけを話してくれたことがあった。同じ人がやったことを何度も考えることによって見えてくるものはあり、何度でも同じことを話すことにも意味はある。少なくとも僕も高橋くんも、あと野田くんも、清志郎さんのことを話すことには飽きたことがない。チャットGTPと話すよりも清志郎さんのことは高橋くんや野田くんと話す方が面白い。3人ともインターネットに書かれていないことをたくさん見聞きしているから。しかも感情の高ぶりを共有できるから。僕とか佐川秀文は当時、東芝EMIの近藤さんから主に発注をもらい、プロモーション用の冊子を編集したり、取材をして原稿を書くことが多かった。なので、宣伝部の人たちが現場で何をやっていたかは、実は本書を手伝うまで知らないことも多かった。タイマーズのライヴで、怒った客に胸ぐらをつかまれ、殴られる寸前だったなんて、そんなことがあったなんてまったく知らなかった。実は僕も大阪のライヴで、入り待ちのファンが多過ぎて楽屋入りできない清志郎さんの身代わりになったことがあった。背格好が同じなので、清志郎さんの服を着て近くを車で通り過ぎ、楽屋と反対方向にファンを惹きつけたはいいけれど、清志郎ではないとわかったファンに罵詈雑言を浴びせられた。なので、ファンに胸ぐらをつかまれる心境というのはわかる気がします。あれはたまりませんよね。ファンの熱意が高いことに問題があるわけではないので、この気持ちをどこに持って行けばわからないだけで。高橋康浩の『忌野清志郎さん』は高橋くんの胸ぐらをつかんだファンの人にはぜひ読んでもらいたい。その人の手に届くように、読んだ人はみんな、SNSで広めるよう努力してください。権力を持たない人たちが「数」の論理を持ち出すのはむしろいいことですから。なんて。

「俺は資本主義の豚で 無い物を売り歩く ああ この街で会えるなんて 不思議」(RCサクセション “不思議” )

Autechre - ele-king

 2023年、幕張メッセですばらしいパフォーマンスを披露したオウテカ。近年はひたすらライヴに専心している彼らが、2026年早春、ふたたび列島の地を踏むことになった。2月4日(水)@東京・ZEPP Divercity、2月5日(木)@大阪・Yogibo META VALLEYの2公演が開催、大阪での公演はじつに17年ぶりとなる。詳細は下記より。

autechre

漆黒の闇の中へ!
オウテカのピッチブラックLIVE再び!
来日決定、2026年2月4日東京、5日大阪!

autechre
japan
twentytwentysix

tokyo 2026/2/4 (wed) ZEPP Divercity
osaka 2026/2/5 (thu) Yogibo META VALLEY

open 18:00 / start 19:00
前売:8,800円(税込 / 別途ドリンク代)※未就学児童入場不可
info:[ WWW.BEATINK.COM ] / E-mail: info@beatink.com

オウテカのピッチブラックLIVEが再び日本にやって来る。それは真っ暗闇の中、神経を研ぎ澄まし、ただただ音に没入する体験だ。 エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャーと並び、英国を代表するレーベル〈WARP RECORDS〉の代表的アーティストとして90年代から不屈のアティテュードと革新性で常に電子音楽のシーンの先頭を爆走して来たオウテカ。近年では自身のウェブサイト限定リリースという形で意欲的に作品の発表を続けている。
ライブ活動においても、彼らのトレードマークとなったピッチブラック(暗闇)ライブで、未だにその会場の規模を拡大し続けており、今秋に予定されている欧州、米国ツアーはオウテカ史上最大規模で行われるが、既に全てソールドアウトを記録している。
そんな彼らの容赦知らずの妥協なき活動、そしてそれに呼応するファンからの絶対的信頼と熱狂的支持、その強固な結びつきは国境も世代も越え未だ拡大を続けているのだ。
今回の来日は2023年のSONICMANIA以来、2年振りとなるが、2008年Club Karmaでの公演以来、実に17年振りに大阪にも降臨する。是非体験すべし!

【チケット詳細】
前売:8,800円 (税込 / 別途1ドリンク代)※未就学児童入場不可

東京:1F スタンディング/ 2F 指定席
大阪:オールスタンディング

注意事項:
※演出上、オウテカのショーはピッチブラック(完全消灯)・ライブとなります。開演前にスマートフォンなどの電子機器の電源をオフにし、お近くの出口を確認の上、自身の立ち位置を確保し、オウテカ演奏時の入退場は極力お控えください。非常時は係員の指示に従ってください。

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