「P」と一致するもの

vol.109:NYのたこ焼きパーティ - ele-king

 明けましておめでとうございます。NYはお正月もほとんどなく、私は1/1から普通に働いていましたが、ようやくホリディムードも終わり、平常に戻ってきました。
 私は、ブシュウィックのミードバー(ハニーズ)で、毎月たこ焼きイベントを開催しています。バンドやDJ、ダンサーなどのゲストを招待し、ドリンクやフードを提供し、ミードを飲みながら、たこ焼きを焼いています。場所が場所なのでバンドやアーティストが多く、元ラプチャー、アヴァルナ、ピルなどのメンバーもよく来ます。
 ツアーから戻ってきたばかりだったり、レコーディングの最中だったり、仕事の合間だったり、みんな忙しくしていますが、息抜きは必要。とくにこの辺りは音楽会場も多いし(エルスホエアなど)、サクッと一杯にちょうど良いみたいです。NYはたくさんのバーがあり過ぎますが、働いている人や誰とハングアウトするかによって行く場所が変わります。
 さて、ハニーズでは今回は、Data securityというユニットが登場。音と映像がシンクロするライヴを生でするという試み。あまりの機材の多さに卒倒しそうになりました。スーツケースふたつ分ぐらいの機材だったので。金曜の大会場でダフト・パンクを見ているような、ダンスフロアになりました(火曜日でしたが)。で、そこにNha Mihnというベトナムレストランを経営していた、Fredが来ていました。
https://www.insideelsewhere.com/new-blog-1/nha-minh-healthy-vietnamese-bowls-brooklyn




たこ焼きイベント(ハニーズチューズデー)!

 彼は、ベッドフォードでレストランを経営した後、しばらくケータリングをし、そしてNha Mihnをオープン。彼のNY1美味しいベトナム料理とアートショー、音楽ショー、フリーマーケットなど楽しいイベントをどんどん開催。その間にも彼は別の店でポップアップをしたり、イベントに出店したり、いろんな場所に出没。彼に出演をお願いするとすぐに「良いよ」と返事をもらい、話が決まりました。


Japanese new year bowl
(チキンとごぼうの肉巻き、サツマイモご飯、なます、野菜のゼリー寄せ、レンコン煮)

 NYではたくさんの場所が閉鎖し、たくさんの場所がオープンしています。失敗は当たり前、これがダメなら次はこれと直ぐに立ち直り、模索し、良いものだけが淘汰されていきます。あの会場と彼が手を組んで、こうなるのか、なるほどなど、フットワークが軽い人と話をすると、こんな人がブルックリンを作ってるんだなと感じます。最近ブルックリンでは、ファンドレイザーショーも盛んで、ミュージックショーをしたり、絵を描いたり、タロット占いをしたり、ジュエリーを売ったり、スタンダップ・コメディをしたり、自分ができるなにかで、参加し貢献しています。
 音楽だけのショーは少なくなり、マルチなショーが増えている、と思いますが、いろんなものが合わさって、たくさんのオーディエンスにも届くのが現在的なのでしょう。


Data security


DJ SIM Card

Anderson .Paak - ele-king

 〈ストーンズ・スロウ〉の所属アーティストでもあるナレッジ(Knxwledge)とのユニット、ノーウォーリーズ(NxWorries)のシングル曲“Suede”のスマッシュヒットをきっかけに、ドクター・ドレーの16年ぶりの新作となったアルバム『Compton』に大抜擢され、その後、ドクター・ドレーのレーベルである〈アフターマス〉との正式契約を経て、ついにリリースされたアンダーソン・パークのニュー・アルバム『Oxnard』。『Venice』、『Malibu』に続く、通称「ビーチ・シリーズ」の最後を飾る作品であるが、今回はあえて彼自身の出身地をタイトルに冠しているだけに、過去2作とはまた違った特別な意味合いを持つ。
 ドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーおよびミックス担当として全面的に関わっている本作であるが、表面的には参加プロデューサーの構成であったり、ゲスト勢がこれまで以上に豪華なメンツであったりといった違いはあるものの、歌とラップを巧みにミックスさせるアンダーソン・パークのヴォーカルを、ウェストコースト・スタイルなヒップホップやファンク・サウンドで彩るという、従来の音楽的な方向性は変化していない。しかし、そこはやはり、これまで様々なアーティストと共にヒット作を生み出してきた、手練れのドクター・ドレーが参加したことによる影響は、このアルバムの至る所に確実に現れている。
 ブラックスプロイテーション・フィルムを彷彿させるジャケット・カヴァーのイメージの通り、70年代テイストなサウンドに乗ってアンダーソン・パークのラップとヴォーカルがスリリングに交差する“The Chase”で幕を開け、そこから先行カットともなった3曲目の“Tints”まで一気にアルバムは進行する。プロデューサーとしてアンダーソン・パーク本人に加えてサーラーのオマス・キースも参加した“Tints”は、『Compton』以来の共演となるケンドリック・ラマーをフィーチャーし、さらにサウンドも生楽器をふんだんに使用したブギー・サウンドということもあり、皆が思い描いていたであろう期待通りのダンス・チューンとなっている。しかし、この曲に続くドクター・ドレーがプロデューサーを務める“Who R U?”では、変則的なビートの上で濃厚なファンクが全面に開花し、一気にサウンドのスタイルが変化。ちなみにドクター・ドレーがプロデューサーとしてクレジットされているのは、この曲に加え、自らラップも披露している“Mansa Musa”、Q・ティップもプロデューサーとしている名を連ねている“Cheers”、さらにボーナス・トラックの“Left To Right”の4曲のみだが、どの曲も実にキャラが立っており、アルバムの流れの中で重要なポジションを占めている。もちろんどのトラックもドクター・ドレーが一から作ったものではないであろうが、トラックの最終的な決定権を彼自身が持つという意味では、その耳は常に一貫している。ちなみに“Left To Right”ではベースにサンダーキャット、コーラスとしてバスタ・ライムスがひっそりと参加しているのだが、こんな組み合わせを実現できるのもやはりドクター・ドレーならではだろう。
 前述のケンドリック・ラマーを筆頭にプッシャ・T、J・コール、Q・ティップ、BJ・ザ・シカゴ・キッドなどそうそうたるメンツがフィーチャリングされているが、アンダーソン・パークとの組み合わせの妙という部分も含めて、いずれもクオリティは高い。なかでもケンドリック・ラマーなど〈TDE〉作品にも多数参加してきたジェイソン・パウンズがプロデュースを手がける“Anywhere”は、ゲストのスヌープ・ドッグが見事なハマりっぷりで、ウェストコースト色の濃い最高のメローチューンに仕上がっている。また、“Anywhere”では女性コーラスによるワン・ウェイ“Cutie Pie”のフレーズもひとつの聞き所であるが、女性ヴォーカルの使い方が非常に秀逸なのも本作の特徴だ。特に1曲目の“The Chase”でもクレジットされているシンガーのカディア・ボネイと、“Mansa Musa”にてドクター・ドレーと共に参加しているココア・サライのふたりに関しては、ほとんどの曲でいずれか片方がコーラスでも参加しており、このふたりの存在が作品に豊かな彩りを与えているのは間違いない。
 と、ここまで書いておきながら、本作の評価は前作『Malibu』と比べて、残念ながらそれほど高くはない。傑作と評された『Malibu』に続く作品であり、さらにドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたことで期待値が非常に高まっていたがゆえに、その反動とも思えるが、個人的には十分に期待の水準を超えた作品である。もちろん、前作における“Come Down”や“Am I Wrong”のようなパンチ力のある曲がもっとあればこの作品の評価もまた変わったであろうが、しかし、アルバム全体の構成力なども含めて、完成度は非常に高い。今後もドクター・ドレーのもとで、アンダーソン・パークがアーティストとしてどのように成長していくかが楽しみだ。

Sarathy Korwar and Upaj Collective - ele-king

 かつてのインドはイギリスの事実上の植民地だったこともあり、イギリスにはインド系の移民やその子孫が多い。そして、インドの食や生活文化はイギリスの中にも大きく入り込み、音楽においてもその影響は強く表われている。ジャズの世界でも1960年代よりインド音楽のスタイルや楽器を取り入れた作品が出はじめ、いまもそうしたジャズとインド音楽の融合は続いている。2018年なら春先にリリースされたユナイティング・オブ・オポジッツの『アンシエント・ライツ』がその好例で、またこの年末にはサラシー・コルワルの『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』という素晴らしいリリースがあった。タイトルどおり東洋と西洋が音楽を介して交わったアルバムである。

 サラシー・コルワルはアメリカ生まれのインド系ミュージシャンで、子供の頃にインドへ移り住み、その後大学への進学でロンドンへ移住し、それ以降はイギリスを拠点に活動をおこなっている。インドの古典楽器のタブラを、シュリ・ラジーフ・デヴァスシャリとパンディット・サンジュ・サハイというインドのその道の専門奏者に学び、ドラム・キットにタブラを組み込んで演奏する手法を確立する。ロンドンの大学では東洋とアフリカ音楽の楽理と研究を専攻し、卒業後はプロのドラマー/パーカッション奏者としていろいろなセッションに参加する。カール・ベルガーなどのヴェテランからさまざまなインドの古典音楽の演奏家たちとセッションし、カマシ・ワシントンのツアー・サポートを務め、シャバカ・ハッチングスビンカー&モーゼスなどロンドンの新しい世代のミュージシャンと共演する中、2016年にファースト・ソロ・アルバムの『デイ・トゥ・デイ』をリリース。スティーヴ・リード基金の援助を得てレコーディングしたこのアルバムには、シャバカ・ハッチングスやメルト・ユアセルフ・ダウンのベーシストのルース・ゴラーのほか、数多くのインド人ミュージシャンやシンガーが参加した。現代的なジャズ演奏にインド音楽特有のラーガという旋法や古典楽器演奏を取り入れ、ジャズと第3世界の民族音楽の融合という側面を見せると同時に、それはテクノやミニマル、アンビエントの要素にも繋がるもので、〈ニンジャ・チューン〉からのリリースということもなるほどと思わせる作品だった。このアルバムからはテンダーロニアスやエマネイティヴなどによるリミックス集も発表され、その後リリースされたテクノDJのハイエログラフィック・ビーイング(ジャマル・モス)、シャバカ・ハッチングスとの共作となるEP「A.R.Eプロジェクト」(2017年)は、『デイ・トゥ・デイ』の実験性をさらにテクノ~エレクトロニック方面へと拡張させたものだった。

 今回リリースした『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』は『デイ・トゥ・デイ』から2年ぶりのアルバムで、2018年2月に北東ロンドンのジャズ系の人気イベント「チャーチ・オブ・サウンド」でのライヴ録音となる。このライヴはサラシーとウパジ・コレクティヴというインド系ミュージシャンが主となるグループの共演で、打楽器奏者のBCマンジュナスやフルート奏者のアラヴィンダン・バヒーラサン、シンガーのアディチャ・プラカシュなどに混じり、アフロ・ジャズ・バンドのカラクターのリーダーとして知られるサックス奏者のタマル・オズボーンも参加している。なお、リリース元の〈ギアボックス〉はビンカー&モーゼスやブッチャー・ブラウンなどの作品をリリースし、モーゼス・ボイドアシュレイ・ヘンリーなどもサブ・レーベルからリリースするなど、いまの新しいジャズを牽引すると同時に、マイケル・ガーリックやニュークリアスなど古い英国ジャズやジャズ・ロックの未発表音源を発掘したり、サン・ラーやユゼフ・ラティーフなどのリリースまでおこなっている。1960年代にジャズとインド音楽の融合に貢献したジョー・ハリオットの音源から、ドラムンベースやUKソウルにインド音楽の要素を取り入れたニティン・ソウニーの作品も出しているので、今回のサラシーのリリースも非常に的確なものと言える。

 演奏曲目は全てカヴァーとなり、ファラオ・サンダースとレオン・トーマスの“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”、アリス・コルトレーンの“ジャーニー・イン・サッチダーナンダ”、ドン・チェリーの“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”、ジョン・マクラフリンとシャクティの“マインド・エコロジー”、アマンシオ・デシルヴァの“ア・ストリート・イン・ボンベイ”、ジョー・ヘンダーソンの“アース”など。インドの民謡やラヴィ・シャンカルの曲もやっているが、大半は1960年代末から1970年代にかけてのインド音楽を取り入れた欧米のジャズ、およびジャズとインド音楽の融合を図ったフュージョンなどで、いわゆるスピリチュアル・ジャズに属する曲も多い。この中では南インドのゴア出身で、イギリスに渡ってジャズ~ジャズ・ロック~サイケの分野で活動したギタリストのアマンシオ・デシルヴァが、サラシーにとってそのキャリアや音楽性の形成の上で重なるところがあるかもしれない。シタールの神秘的な音色に始まる“ア・ストリート・イン・ボンベイ”から、原曲から大きく変化した大胆なアレンジによる“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”と、単なるカヴァー演奏にとどまらない非常にクリエイティヴな即興演奏が繰り広げられる。観客の歓声を交えたライヴならではのテンションやエモーションの高さは、スタジオ録音の『デイ・トゥ・デイ』とは比較にならない。“マインド・エコロジー”や“ミシュランク”でのトライバルでトランス感を伴ったドラムとパーカッション群および弦楽器のアンサンブル、“ハジ”でのケチャのような怒涛のヴォイス・パフォーマンス、重厚でスピリチュアルな演奏が宇宙へと誘うような“アース”と、全体で2時間近くに及ぶパフォーマンスだが一時も気を抜くことができない濃密な時間が流れる。そして、最後の“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”に象徴されるピースフルで牧歌的な空気。ドン・チェリーが描いた天上の楽園世界を現代に継承する作品である。

Mark Stewart - ele-king

 1982年にリリースされたマーク・スチュワート&ザ・マフィアの最初の12インチがどれほどの衝撃だったことか──ひとつにはダブの音響実験がある。プロデューサーのエイドリアン・シャーウッドは、ジャマイカ生まれのダブの技法をこの作品において極限まで拡大して、カット・アップによるサウンド・コーラジュとの境界線を消失させている。演奏しているのはレゲエ・バンドのクリエイション・レベルのメンバーであったり、やがてアフリカン・ヘッド・チャージとして活動するメンバーだったりするのだが、ザ・マフィアの演奏は、シャーウッドのダブ処理において伝統的なレゲエとは切り離され、都市の寒々しい灰色の風景に地響きを与えるものとなった。泣きわめいているマーク・スチュワートの声が、その破壊的なサウンドと一体化したとき、虚飾に満ちた都市の化けの皮は剥がされて、力強いダンス・ミュージックが現出する。これがふたつ目の襲撃だった。
 続いて1983年にリリースされたのが、マーク・スチュワート&ザ・マフィアのデビュー・アルバム『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』だった。ザ・マフィア名義で録音された唯一のアルバム。12インチにも収録された“リヴァティ・シティ”は、2019年の現在聴いても名曲であり続ける。それは不吉な未来に向かっている東京にお似合いの、滅びゆく都市の鎮魂歌のようだ。

 『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』は新たに発掘された10曲(!)の未発表曲集を加えた2枚組として2019年1月25日に発売される。未発表曲もあなどれない。なにしろこの黄金のメンバーで録音された音源であり、マーク・スチュワートもエイドリアン・シャーウッドももっとも過激な実験に取り組んでいた時代の記録なのだから。

 マーク・スチュワート&ザ・マフィアの三つ目の衝撃をいうならそのアートワークである。当時の彼らがCRASSなどのアナルコ・パンクとリンクしていたという事実がうかがえるだろう。日本盤はトラフィック・レーベルから。お楽しみに。

ALTZ - ele-king

 大阪のコズミック大将ALTZによるバンド・プロジェクト、ALTZ. Pがいよいよアルバムをリリースする。ヌケの良いシンセベースによる艶めかしいファンクからはじまる『La Toue』と題されたそれは、大阪独特のいかがわしいサイケデリアがまばたきしたとたん崇高に見え、しかし目をこすった途端バカバカしく見えてしまうという、腐食性と精神性をかねそなえたキッチュなリアリズムと幻想を展開する。素晴らしい女性コーラス隊はときにソウルフルで、鬼才Pulseman、元NEWEST MODELのドラムスMau&ベースのシェイク吉村の叩き出す中東ディスコ・ビートに酔いながら、リスナーはいつの間にか昇天するでしょう。
 日本の土着性をどう切り捨て/取り入れるかという点では、食品まつりやGroundなんかとも共通する志向があり、幻想的な冒険は、クラブ・カルチャーには興味ないリスナーをも踊らせるでしょう。ぜひぜひ、チェックしてください。ピース。


ALTZ. P
La Toue

ALTZMUSICA
https://www.altzmusica.com/

Binkbeats - ele-king

 これは興味深い。まずはこのエイフェックス“Windowlicker”のカヴァー動画を視聴してみてほしい。あの楽曲を人力で、しかもたったひとりで再構築してしまうこの人物、ビンクビーツ(Binkbeats)というオランダのプロデューサーである。他にもフライング・ロータスラパラックスアモン・トビンなどのエレクトロニック・ミュージックをがしがしひとりでカヴァーしているからすごい。アンダーグラウンドの最尖端に敏感なDJクラッシュの最新作『Cosmic Yard』にもフィーチャーされていたので、それで気になっていた方も少なくないだろう。そんなアナタに朗報です。ちょうど本日1月9日、彼がこれまで発表してきた2枚の12インチを独自にまとめたCDがリリースされます。昨年ソニックマニアで来日した〈Brainfeeder〉のジェイムスズーも参加しているとのことで、おもしろい音楽を探している方は要チェックですぞ。

BINKBEATS

〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace、そして Aphex Twin や、さらには J. Dilla まで数々のアンセムを人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界中に衝撃を与えたオランダのビート・サイエンティスト BINKBEATS ついに日本デビュー!

LAビート・シーンを牽引する〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus “Getting There”、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace “Default”、そして Aphex Twin “Windowlicker”といった数々のアンセムやさらには J. Dilla の“Mixtape”を人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界に衝撃を与えたオランダのマルチ・インストゥルメンタリスト BINKBEATS。ROCK、POSTROCK、ELECTRONICA、HIPHOP、JAZZ など幅広い音楽要素を融合し多種多様な楽器/機材を駆使しながら構築する先鋭的なビートや美しくもエモーショナルなメロディ、それらを独創的なサウンド・スタイルで展開した本作は各500枚限定でプレスされた連作EP「Private Matter Previously Unavailable」 PART1 と PART2 の全曲を収録したオリジナル楽曲としては初のCD化!

既に YOUTUBE で公開されているライヴ映像が100万再生を超えているM1 “Little Nerves”は Daedelus や Jameszoo の作品にも参加しLAビート・シーンの重要レーベル〈Alpha Pup〉からも自身の名義でリリースしている注目の若手鍵盤奏者 Niels Broos をフィーチャー、そしてM3 “In Dust / In Us”には〈Brainfeeder〉から発表された 1st『Fool』が高い評価を受けた Jameszoo もプロデュースに加わるなど次世代の注目アーティストが多数参加! 現在ワールドワイドにツアーを行っており、また DJ KRUSH の最新アルバム『Cosmic yard』(2018年3月)にも参加するなど日本国内でも徐々に活動の幅を広げるなど、その唯一無二なパフォーマンスで世界各地に衝撃を与えている今後の活躍が期待されているアーティストである。

タイトル:Private Matter Previously Unavailable / プライヴェート・マター・プリヴィアスリィ・アンアヴェイラブル
アーティスト:BINKBEATS / ビンクビーツ
発売日:2019.1.9
定価:¥2,400+税
PCD-24796 / 4995879-24796-9
日本語解説:原雅明
p-vine.jp/music/pcd-24796

Additional Synths On All Tracks By Niels Broos
Additional Production On In Dust / In Us By Jameszoo
Additional Vocals On Heartbreaks From The Black Of The Abyss By Luwten, The Humming / The Ghost By Maxime Barlag

ZULI - ele-king

 エジプト・カイロを拠点に置くアーティスト、Zuli のデビュー・アルバム『Terminal』が、Lee Gamble が主宰するレーベル〈UIQ〉よりリリースされた。これまで3枚のEPを〈UIQ〉と〈Haunter Records〉からリリースしてきた。その内容はインストゥルメンタルで、グリッチやノイズ、グライムっぽいうねるようなベース音も顔を見せる変則的なダンス・ミュージック。2017年にはベルリンのCTMフェスティヴァルでは地元であるカイロをテーマとした360度ヴィデオのインスタレーションを発表。活躍の舞台を着実に広げ、特に〈UIQ〉からのリリースはレコード店で売り切れるほどの人気ぶりだ。

 Zuli、本名は Ahmed El Ghazoly という。10歳まではイギリスで暮らし、グランジやブリット・ポップ、ケミカル・ブラザーズやプロディジーを聞き、両親の都合でエジプトに戻ってきたという*。所謂エジプトの伝統音楽やポップスに関心が向かず、UKの音楽に影響を受けて制作をしてきたという。また、同志のアーティストと Kairo Is Koming というコレクティヴを作り、ふたつの拠点でラッパーやアーティストとコラボレーションしながら活動をしているという。

 そうした集団での制作も方向性に反映されているのだろうか。今作『Terminal』は、これまでのインストゥルメンタル、変則テクノ的な音楽性から、トラップ、ジューク、ラップとの混交、またラッパー、シンガーとのコラボレーションが際立つ。1曲目から 6. “Stacks & Arrays”までは808ベース、残響音のようなベースとノイズが不規則に鳴らされ、不穏なサウンドスケープが展開される。7曲目の“Kollu I - Joloud feat. MSYLMA”で歌唱が、8. “Akhtuboot feat. Abyusif”でラップが初めて耳に入る。しかしどちらも3~4分の商業的なレコードのフォーマットではなく、断片的に流れていく。9. “Mazen”でも Abyusif のラップが使われているが、切り刻まれ、引き伸ばされ、あるいはピッチを変えられて、声そのものが変態していく。ラップは、11. “Ana Ghayeb feat. Mado $am, Abanob, Abyusif”でようやく聞き取れるレヴェルのラップが一瞬姿を見せる。フリースタイルする(ような)彼らのラップは素晴らしく、ソロ作品を聴きたくなる。

 『Terminal』というアルバム・タイトルから思い起こされるのは空港である。〈NON〉の Chino Amobi が一見無国籍でクリーンな空港という空間に、人種・政治的な関係を見出したのと同じように、このアルバムの不穏さもローカルな状況につなげて考えることができる。Zuli の活動の中心であるエジプトは「アラブの春」に端を発する政治・経済的な混乱が続いていて、混乱の前後でカイロの貧困率は2倍近くに増加したというデータもある。

 切り刻まれ、グリッチされた歌詞の内容は理解不能であるが、音が生み出す不規則・不穏な空気感とカイロの社会的・政治的な状況が重なる。グリッチやノイズは予期せぬ第三者からの干渉の結果に聞こえる。なにかを告発するはずだった通信・録音が遮断され、干渉され、散り散りになったデータとなって再生されているような、または、デジタル情報の残骸のような質感。12. “In Your Head”のビートレスのアンビエント、冷たいピアノの一音がさらにアルバムの緊張感を持続させる。その曲での後ろで響くのは、男の会話ともヒソヒソ声とも取れる音。密告のようにも、心の中の「勘ぐり」にも聴こえてくる。緊張や不安はアルバムの全編を通じて漂い続けている。

 このアルバムを聴くことは、生成されたデジタル情報が捻じ曲げられたり、隠されたりする痕跡を辿っていく行為かもしれない。しかしもう一方では、そうしたデジタル情報が不完全に捻じ曲げられたり、隠されきれなかったりする。そうした人間味を感じさせるサウンドでもある。音が不規則でありながら緊張感が持続する、エレクトロニックながらどこか「生っぽく」感じられる。そういった多面性を持ったアルバムだ。

 * TIGHT Magazine のインタヴューより。

Drone, Bengal Sound, Rocks FOE - ele-king

 ロンドンに「Keep Hush」という YouTube のライヴ配信チャンネルがある。UKガラージやグライムからハウス、テクノ、ディスコまで幅広いDJ、トラックメイカーがプレイする不定期番組で、Boiler Room や Dommune といった番組を思い浮かべてもらえればいいと思う。そういったライヴ配信チャンネルと異なるのは、彼らが「ロンドンの若手アーティスト」に焦点を当てている点と、毎回開催場所を変えて、秘密のロケーションでおこなわれる点だ。場所は開催直前に登録制のメールマガジンに配信される仕組みで、小さめの会場でおこなわれることもあいまってアットホームな空気が伝わってくる。また、配信時のザラついた質感は90年代のレイヴを意識しているのでは、と邪推したりした。

 そんな Keep Hush にて、〈Coyote Records〉が主催する夜には新鮮さと勢いを感じた。下の動画でプレイしているのは気鋭の若手アーティスト Drone だ。

Drone DJ Set | Keep Hush London: Coyote Records Presents

 Drone は自主作品のUSBに続き、2018年は〈Sector 7 Records〉から「Sapphire」をリリース、続いて〈Coyote Records〉から「Light Speed」をリリースした。

Drone - Light Speed
https://bit.ly/2P6ZlKx

 Keep Hush のプレイでもリワインドされた Drone の“East Coast”はサンプリングの声ネタ・金物が印象的で、組み合わせられるUKドリルを感じさせる、うねるようなキック・ベースにハイブリッドなセンスを感じる。

 さらに紹介したいのは、上にあげた Drone が何曲かプレイしている Bengal Sound。2018年にコンセプト作品『Culture Clash』をカセットでリリースしている。

Bengal Sound - Culture Clash

 全ての曲でボリウッド映画のサウンドトラックからサンプリングしており、ハイエナジーなベースラインにサンプリングされたローファイなホーンやパーカッションがとても自然にマッチしている。手法に関して言えば、Mala が『Mala in Cuba』でキューバ音楽を用いたのと比べることもできるが、こちらはよりローファイなカットアップ、ループ感はインストのヒップホップを思わせる。

 サンプリングという観点で最後に紹介したいのは、ラッパーでありトラックメイカーである Rocks FOE。ラッパーとしてもアルバムをリリースする傍ら、日本でも人気を集めるレーベル〈Black Acre〉から 140 bpm のインストゥルメンタル作品もリリースする。多くの作品でサンプリングを用いており(寡聞にしてそれぞれのサンプリング・ネタがわからないのだが……)、ホーンやディストーションされたシンバル、そして低く震えるラップは独自の怪しげな世界観を築いている。

2018年6月にリリースされた Rocks FOE のアルバム『Legion Lacuna』
https://rocksfoe.bandcamp.com/album/legion-lacuna

 こうしたザラザラとしたサンプリングをおこなったダブステップについては、2016年の Kahn, Gantz, Commodo による名盤『Vol.1』が思い起こされるが、その後のシーンについてはどうだろうか。〈Sector 7 Records〉を主催する Boofy はインタヴューでこのように述べている。「ダブステップには、(シーンを語る上で)欠かせない歴史もあるけど、いまお気に入りのアーティストはもうそういう「レイヴ・バンガーの公式」の教科書は気にしないでやりたいようにやっているよ」(Mixmag, Jan, 2019)

 近年のダブステップはサンプリングのセンス、音の組み合わせ方が新鮮さに満ちていて、常にインスピレーションを与えてくれる。

Mansur Brown - ele-king

 ひとりの亡霊が音楽シーンを徘徊している――アンビエントという亡霊が。いや、べつにいまにはじまった話ではないけれど、とりわけ近年はさまざまなジャンルにアンビエント的な発想が浸透していることを改めて実感させられる機会が多い。もちろん一口にアンビエントと言っても、イーノ的なそれだったりレイヴ・カルチャー以降のチルアウトだったり、あるいはグライムのウェイトレスだったりヴェイパーウェイヴだったりといろんな展開のしかたがあるわけで、その亡霊はヒップホップやロックの分野にも、そして当然のようにジャズの領域にも忍び込んでいる。フローティング・ポインツの『Elaenia』(2015年)なんかはその好例だし、そしてこのマンスール・ブラウンのアルバムにもまた同じ亡霊がとり憑いている。

 現在のUKジャズ・ムーヴメントを加速させる契機のひとつとなったユセフ・カマールのアルバム『Black Focus』に参加したことで注目を集めたマンスール・ブラウンは、もともとはトライフォース(Triforce)という当時大学生だった面々が組んだバンドの一員で、そのときの超絶的なギター・プレイが話題となりシーンに浮上してきたギタリストである(トライフォースのアルバム『5ive』もユセフ・カマールとほぼ同時期にリリース)。その後アルファ・ミストやリトル・シムズの作品に客演した彼は、2018年のジャズの流れを決定づけたコンピ『We Out Here』にもトライフォースとして参加、松浦俊夫のアルバムにもフィーチャーされるなど着実に知名度をあげていき、最近ではハーヴィー・サザーランドの新曲に参加したり、まもなくリリースされるスウィンドルの新作にも名を連ねたりと、ますます活躍の場を広げていっている。その勢いに乗って放たれたファースト・ソロ・アルバムがこの『Shiroi』だ。

 ギタリストとしての彼についてはジミ・ヘンドリックスの名がよく引き合いに出されているけれど、本作における彼はそのようなスタイルを抑圧し、静穏な演奏に徹している――とまで言ってしまうと語弊があって、たしかに“Godwilling”や“Flip Up”のようにエレクトリック・ギターの唸りが大いに華を添えている曲もないわけではない。ただ、それ以上にリスナーの耳に突き刺さるのは、アルバム全体を覆うどこまでも幽遠なディレイのほうだろう。それによって生成されるアンビエント的なムードは、たとえば先行シングルとなった“Mashita”によく表れ出ていて、雨音のような具体音とギターの残響とが密やかに重ね合わせられていく様には息を呑まざるをえない。遠くの谷からこだましているかのようであり、逆に窓のすぐ外で奏でられているかのようでもある不思議なエコー、それらが織り成すなんとも幻妖な音色の数々は、どうしたってドゥルッティ・コラムを想起させる。
 冒頭“The Beginning”ではそのディレイが、左右に振り分けられたテープの逆再生音と絡み合うことでサイケデリックな趣を醸し出しているが、他方でベースの動きもおもしろく、独特の拍の強弱が肉体的な躍動感をもたらしてもいる。続く表題曲でも淡いギター・エフェクトとグルーヴィなベースとの対比が強調されていて、低音パートもまたこのアルバムのたいせつな要素であることがわかる。“Back South”や“Simese”などのファンキーなベースはその何よりの証左だし、“Me Up”や“Flip Up”で鳴らされるブロークンビーツ由来のビートも非常に良い効果を生んでいる。ようするに、霧のごとく宙を漂うギター・ディレイとグルーヴィな低音パートとの幸福な出会いこそがこのアルバムの肝であり、「地に足の着いた浮遊感」とでも表現すればいいのか、彼岸へと連れ去られそうになる意識をご機嫌なベースラインがしっかりと此岸に引き止めてくれている。

 2018年はUKジャズの画期として記憶されることになるだろうけれど、そのUKジャズの熱気とアンビエント的なものの浸透とを一手に引き受けたこの『Shiroi』は、どちらの観点から眺めてみても異色の魅力を放っている。こういう作品がぽっと生み落とされるからこそムーヴメントはおもしろいのだ。マンスール・ブラウン、しばらくは彼の動向から目が離せそうにない。

Sho Madjozi - ele-king

 南アフリカから2グループ。ゴム・ミニマルやゴム・ゴスペルなど南アのダンス・アンダーグラウンドはこの1年でどんどん細分化し、ゴムとトラップを掛け合わせたマヤ・ウェジェリフ(Maya Wegerif)も昨年デビューしたばかりだというのに早くもアルバムを完成、時にシャンガーン・エレクトロを交えつつ、不敵で闊達なフローがあげみざわ(と、思わず女子高生言葉)。アフリカのヒップ・ホップというとアメリカのそれに同化してしまう例がほとんどなので、アメリカのプロダクション・スタイルも消化した上で、こうしたフュージョンに挑むのはそれだけでも心が躍る。昨年、ゴム直球の”Huku”が注目されるまでは主にファッション・デザイナーとして活動してきたらしく、なるほど奇抜な衣装でパフォーマンスする姿がユーチューブなどで散見できる。アルバム・タイトルは南アの北端に位置するリンポポ州をレペゼンしたもので、ツォンガの文化をメインストリームに流し込むのが彼女の目的だという。ラップはツォンガ語とスワヒリ語、そして英語を交えたもので、「フク、フク、ナンビア、ナンビア、フク、ナンビア」とか、基本的には何を歌っているのかぜんぜんわからない。きっと「指図するな」とか「本気だよ」とか、断片的に聞こえる歌詞から察するに、若い女性ならではのプライドに満ちた歌詞をぶちまけているのだろう。楽しい雰囲気の中にも負けん気のようなものが伝わってくるし、いにしえのマルカム・マクラーレンを思わせる柔らかなシャンガーンの響きがとてもいいアクセントになっている。

 南アでも広がりを見せるヘイト・クライムは殺人事件に発展する例も少なからずだそうで、なぜか白人やアジア人は襲われず、南ア周辺から流れ込む他の国の黒人たちが暴力の対象になっているという。リンポポ州は南アの最北端に位置し、ジンバブエと国境を接している。先ごろ、軍事クーデターが起きるまでハイパーインフレで苦しむジンバブエの国民たちはかなりの数がリンポポ州に流れ込んでいた。ムガベ独裁が倒れたとはいえ、ジンバブエの状況がすぐに好転したとは思えず、人種的な緊張状態がまだ残っている可能性があるなか、アルバムのエンディングで「ワカンダ・フォーエヴァー」とラップするマヤ・ウェジェリフの気持ちにはそれこそ切実なものが感じられる。「ワカンダ」とは映画『ブラック・パンサー』で描かれた架空の国で、白人たちには知られなかった黒人たちによる文明国家のこと。あの映画のメッセージがアフリカの黒人たちを勇気づけている好例といえるだろう。全体にゴムの要素が強く出ている曲が僕は好きだけれど、とりわけ”ワカンダ・フォーエヴァー”は気に入っている。ちなみにムガベを国賓として迎えていたのは安倍晋三、軍事クーデターを裏で動かしたのは中国政府である。詳細は省くけれど、現在、ドナルド・トランプのヘイト・ツイートが南アの政治を再び混乱させたりもしている。

 モザンビークやナミビアといったヘイトの対象となっている黒人たちをサポート・メンバーに加えたバトゥックもセカンド・アルバムをリリース。ゴム以前のクワイトをダブステップと結びつけたスポエク・マサンボがプロデュースするヨハネスブルグのハウス・ユニットで、2年前のデビュー・アルバム『Música Da Terra』がアフリカ全体の音楽性を視野に入れていたのに対し、2作目は南アフリカのタウンシップ・サウンドに絞ったことで、起伏を抑えたUKガラージのような響きを帯びるものとなった(アルバム・タイトルの「カジ」はタウンシップの意で、音楽的な豊かさを意味する)。そして、哀愁と控えめな歓びが導き出され、おそらくはゴムを支持する層よりも中産階級にアピールするものとなっているのだろう。それこそ荒々しさを残したマヤ・ウェジェリフのような音楽的冒険には乏しいものの、このところ疲れているせいか、レイドバックした優しい音楽性が僕の心を優しく宥めてくれる。“Love at First Sight”は明らかに”Sueno Latino”を意識していて、コーラスが「お前の母ちゃん、お前の母ちゃん」に聞こえてしょうがない“Niks Maphal”だけがヒップホップというかエレクトロ調。ちなみにスポエク・マサンボが昨年リリースしたソロ・アルバム『Mzansi Beat Code』はもっとアグレッシヴな内容で、彼が今年の初めに参加したマリのワッスルーと呼ばれる民族音楽の歌手、ウム・サンガレ(Oumou Sangare)の『Mogoya Remixed』というリミックス・アルバムもとてもいい。サン・ジェルマンやアウンティ・フローなどアフロハウスの手練れが集結し、モダンなアフロ解釈を様々に聞かせてくれる。

 あんまり関係ないけど、南アでW杯が行われた際に流行ったブブゼラは中国製だったそうで、あっという間に人気がなくなってしまい、いまや南アでは在庫の山と化しているらしい。

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