「The Men」と一致するもの

Fiona Lee - ele-king

現実のオルタナティヴな響き──香港民主化デモのフィールド・レコーディングを聴く

つまるところ、雨傘運動を通して私にもっとも聞こえていたのは罵声と怒鳴り声でした。これらを録音しようとは思えなかったですし、こうした感情的になった場面を録音するための機材はしばしば持っていかないこともありました。政府や警察が恐ろしくて、ひどく嫌なものであることはもはや周知の事実です。ですからある程度までいくと、それらの周知の事実を強調し続けることは、私に関する限り、本当の助けにはならないのです──そしておそらくこのことが、運動全体がもっとも直面しなければならない問題だったのかもしれません。
──フィオナ・リー(1)

 2019年6月9日、香港島北部を東西によぎるヴィクトリアパークから金鐘(アドミラルティ)へといたる路上に、前代未聞の音響が出現した。およそ100万人もの群衆が集い、凄まじいざわめきをともないながら、建造物が林立する空間を様々なサウンドが埋め尽くす。ときに打楽器のリズムに合わせて「加油(ガーヤウ)」と叫ぶ合唱が巻き起こり、終わっては迸る叫び声が歓声のように響きわたり、しかしすぐさま別の場所から別の合唱が巻き起こる。アジテーションのような演説、管楽器や打楽器を使用した演奏などもあり、どれか一つに中心が定められているわけではない。合唱はほとんど偶然のように群衆の声が重なり合うことで激しさを増していく一方、そうした合唱が方々から起きては消えていき、全体を統合することのない、あたかも水のように不定形な音の力が出来する。基層をなしているのは大量の人々が生み出すざわめき、すなわちノイズの様々なありようだ。そしてこの未曾有のサウンドを、幸いなことにわたしたちは実際に耳にすることができる。香港を拠点に活動するサウンド・アーティストのフィオナ・リー(李穎姍)がリリースしたフィールド・レコーディング作品によって。


8月上旬、大埔墟でのデモの様子(撮影:Aokid)

 あらためてことの経緯を確認しておきたい。2019年2月、前年に台湾で発生した殺人事件を口実に、香港政府は逃亡犯条例の改正案を発表した。広く知られているように1842年の南京条約以来、第二次世界大戦における日本による植民地支配を例外に、香港は長らく英国の領土となっていた。そのため中国本土とは大きく異なる制度のもとに統治されており、1997年に中国本土へと返還される際、香港は向こう50年間既存の制度を維持すること、すなわち「一国二制度」のもと高度な自治が認められることになった。これにより中国本土では取り締まりの対象となるような行為、たとえば共産党政権に対する批判や政治的な集会、天安門事件をはじめとした過去の出来事を知ること、あるいは卑近な例ではツイッターやグーグルをはじめとした国外のインターネット・サービスの使用などが認められている。だが香港で犯罪を犯した人物を中国本土へと引き渡す逃亡犯条例改正案は、中国本土の意向に沿わない人物を犯罪者に仕立て上げることで連行することを可能にするものであり、すなわちこうした香港における自由を奪うものだった。逃亡犯条例の改正は「一国二制度」を揺るがし、香港の中国本土化を推し進めるものなのである。それはこれまでのように自由な創作活動ができなくなることをも意味する。こうした危機に対して香港市民は反発した。それは自らの生きる権利、いやむしろ生存の条件を確保するための闘争であると言っていい。

 2019年9月4日、香港トップのキャリー・ラム行政長官は逃亡犯条例改正案の撤回を正式に表明したものの、デモ隊をおしなべて「暴徒」と呼び、大量の催涙弾やビーンバック弾の発射をはじめとした、無抵抗な人間にさえ不当な暴力を振るってきた香港警察の行為に対して、市民の怒りが収まることはなかった。10月には警察が高校生に向けて実弾を発砲。その3日後に香港政府は緊急条例を発動し、のちに高等法院で違憲と判断される覆面禁止法を発令。翌11月には警察に追われた大学生が立体駐車場で転落死するなど、警察および政府による弾圧は激化し、それに抵抗するように一部のデモ隊の抗議活動も過激化していった。11月24日に実施された香港の民意が直接的に反映される区議会選挙では、民主派が8割を超す圧倒的多数の議席を獲得。政府や警察に対する批判が民意として可視化されることとなった。そして半年以上が経過した現在もいまだに抗議運動が収束する見込みは立っていない。闘争は単に香港政府と市民の問題にとどまらず、社会主義国家である中国本土と欧米の自由資本主義の代理戦争とする向きもある(2)。だが本稿ではこれ以上香港の民主化運動それ自体については深入りしない。あくまでも音楽作品がどのようなものであり、どのような意義があるのかということに徹する。抗議運動に関してのみ言及するのであれば音楽作品を語る必要などないからだ。だがむろん、作品を語る上で不可避的に触れざるを得ないことに関しては言及する。

 1987年に香港で生まれたフィオナ・リーは、幼少の頃より長らくピアノを習っていたというものの、あまり練習にのめり込むことができず、むしろ楽譜を使用せずに自由に表現することに愉しみを見出していたという(3)。転機が訪れたのは香港城市大学でクリエイティヴ・メディアを学んでいたときのことだった。師事していたセドリック・マリデから影響を受け、電球が発するサウンドに着目するようになる(4)。そこから音響現象、あるいはサウンド・アートへと関心が広まり、こうした領域で活躍する鈴木昭男やロルフ・ユリウス、フェリックス・ヘス、クリスティーナ・クービッシュ、ヤニック・ドビー、角田俊也あるいは梅田哲也といったアーティストから影響を受けたことを公言している。テン年代に入るとインスタレーションとパフォーマンスを股にかけた活動を精力的におこない、電球が発する響きを構成したパフォーマンス作品「delight」(2010~)、会場内外の様々な電磁波を捉えてサウンドへと変換していくインスタレーション作品「catch the wings of meteors」(2014)、螺旋階段の上階から地上へと水滴を落下させ、その響きを釣竿にぶら下げたラジオから再生するとともにボウルを使用して水滴を遮り、重力と時間と空間の関係性を明らかにしていく「Joy of gravity "Dropping from 14/F to G/F"」(2016)などを発表(5)。電磁波や重力など見えないものを可聴化する試みは、彼女が影響源として挙げる英国の人文学的環境学者ティモシー・モートンの思想とも共鳴する実践だと言えるだろう。

 2016年にはこうしたパフォーマンスやインスタレーション、さらにフィールド・レコーディング作品を収めた代表作と言ってよいデビュー・アルバム『walking in a daze』をリリース。その一方でパフォーマーとして東京、神戸、京都の三都市で開催されたアジアン・ミーティング・フェスティヴァルにも参加。モジュラー・シンセサイザーのサイン波を利用して電磁場を発生させ、磁石の球がガラス・ボウルの中をぐるぐると回転する特異なパフォーマンスを披露した。その後も来日して作品制作やライヴをおこなっており、水道橋のCDショップ兼イベント・スペース Ftarri にも出演。そのときの録音はソロを収めた『Ftarri de Solos』および集団即興を収めた『Ftarri Jam』という二枚のアルバムとなってリリースされている。ガラス・ボウルのほか、マイクスタンドに括りつけたペットボトルから水を垂らし金属の器で受け止め、水滴がリズムを生み出すとともに器を打楽器的に使用し、次第に水が貯まることで変化していく響きを聴かせるなど、つねに生成変化するインスタレーションのようなライヴ・パフォーマンスは視覚と聴覚の双方を刺激する尽きない魅力に溢れている。

 そうした彼女が初めて音を介して政治的/社会的な出来事に参加したのは、香港の港湾で運行しているスターフェリーの埠頭が取り壊されたときのことだったという(6)。香港警察から信じがたい罵詈雑言を浴びせられた彼女らは、手元にあるリコーダーで、警察たちがその場を去るまでひたすらスターフェリーのチャイムのメロディを奏で続けた。このときの経験を彼女は「実際のところ、これによって警察が本当に攻撃されているわけではありませんでした」(7)と述懐しているものの、それは大衆を扇動するために音楽を利用したり、あるいは近年話題になった「音響攻撃」をはじめとして、音/音楽が容易に暴力装置と化すことに対して、あくまでも音は無力である必要があること、しかしこの無力さにとどまり続けることによって権力による抑圧に対する抵抗たり得ることを肌で感じ取ったのではないだろうか。

 2014年、香港では普通選挙を獲得するための雨傘運動が巻き起こった。このとき、香港で音に関わるアーティストの活動を支援している非営利組織「サウンドポケット」によるプロジェクトのひとつ「ザ・ライブラリー」が、雨傘運動を音響的に記録するためのプロジェクトを立ち上げた(8)。香港を拠点に活動するアーティストたち、Nerve としても知られるスティーヴ・ホイや dj sniff など10名が参加したこのプロジェクトは二枚組のアルバム『DAY AFTER翌日 [2014. 9.29 - 12.12]』へと結実する。フィオナ・リーもこのプロジェクトに参加し、二つの音源を発表している。10月13日の早朝、警察による催涙ガスの弾圧を捉えた録音では、鳥の囀りがささやかに響く爽やかな雰囲気からはじまり、しかし次第に通りを行き交う人々のざわめきが増していく。町内放送のようなアナウンスが聞こえたあと、途端に騒がしくなっていき、ある種の即興パフォーマンスのような展開を聴かせる作品である。他方で10月16日深夜の録音では、マンホールの蓋が地面に投げつけられ、それがトンネル内で深い残響をともなって響く、その反響の様々なありようを聴かせるどこかインスタレーションのような作品だ。どちらも雨傘運動の音の記録であるとともに、フィオナの耳が捉えた、彼女自身の音楽活動とも通じる内容となっている。

 それから5年後、フィオナ・リーのサウンドクラウドに一時間半にもおよぶフィールド・レコーディング作品がアップロードされた。100万人が参加した2019年6月9日のデモの模様をビルの最上階で収録した音源である。凄まじい叫びが一斉に巻き起こっては消え、遠くで別のリズムで別の叫びが発生し、あるいはアジテーションとコール&レスポンスが別々に聴こえてくるなど、デモの規模の大きさとその多様性を音響的に伝える内容だ。その後も三ヶ月間、彼女は民主化デモのフィールド・レコーディングを継続し、そしてそれらの音源を組み合わせた作品『Hong Kong 9 June to 12 Sep 2019』を9月中旬に発表した(9)。デモが本格化した6月9日からキャリー・ラム行政長官による改正案撤廃の表明後となる9月12日までの六箇所のフィールド・レコーディングを編集して収録した本作品には、ひとまずは逃亡犯条例改正案に対する抗議活動が撤廃を勝ち取るまでの軌跡が刻まれていると言えるだろう。

 100万人が参加し民主化運動の大きな出発点となった6月9日の抗議デモから本作品は幕を開ける。ドンドコドンドコドン、というドラミングに対して大量の人々が「加油!」と叫ぶ、圧倒的かつ象徴的なシーンだ。その後、いわゆるワーシップ音楽の一つであり、今回の香港におけるデモの抵抗歌ともなっている“Sing Hallelujah to the Lord”の合唱がギターを伴奏におこなわれたり、「光復香港! 時代革命!」というコール&レスポンス、あるいは「五大訴求! 缺一不可!」と叫ぶ群衆が自然と「Stand with Hong Kong! Fight for Freedom!」の叫びへと変化したり、香港のラッパー JB による“Fuck the Popo”の合唱がおこなわれたりなどする。最後はショッピングモールを舞台に、民主化運動の只中で生まれた非公式国家「香港に栄光あれ」の合唱が、管楽器の演奏を交えながら披露される。そのどれもが勢いに溢れ、こう言ってよければ音楽的に豊かなアンサンブルを編み上げている。民主化運動を通じて生まれた──あるいは意味を変えた──数々の抵抗歌とコール&レスポンスの旋律が、余すところなく収められた貴重な記録となっている。だがより興味深いのは、こうした記号化し得る抵抗歌やコール&レスポンスよりもむしろ、大量の人々によって自然発生的に合唱が生まれては消え、さらに群衆が生み出すノイズが空間的に広がりその不定形なかたちの様々なありようを聴かせてくれることである。合唱やコールが一体どのような音環境でおこなわれていたのかが手に取るようにわかるとともに、何層にも重なるノイズと予期し得ない偶然的な変化は、今回の香港民主化運動それ自体の特徴を音響的に示しているようにも思う。こうした音群はたとえば、香港返還後最大規模となる200万人が参加した6月16日のデモについて、「素人の乱」5号店店主の松本哉が書き記した次のようなレポートからも窺い知ることができる。

そして、ちょっと驚いたのが、香港のデモにはデモの宣伝カーがない。制限されて出せないらしいけど、これがまたすごい。それどころか拡声器を持ってる人もほとんどいない。各所で突如巻き起こるコールなどがあるが、それ以外はただただ無数の群衆が行進してる。もちろんいろんな政党や政治グループもあるので、その人たちは一角に簡単なステージを作って話したりしてるし、楽器を持ってくるグループは太鼓(ドラムというより太鼓)を叩きながら行進したりもしているけど、やはりそれはそこまで多くない。そして時々怒りがたまってきた時に「うお~~~」とみんなで叫び始める。数千人数万人が叫ぶ。そしてすぐに止む。これすごい迫力。(10)

 雨傘運動と異なりリーダーや先導する組織が不在であり、各参加者が主にインターネットを通じて自発的にデモに参加していることが、今回の民主化運動のひとつの特徴とされている。デモを主催するリーダーがアジテーションをおこない群衆がレスポンスするのではなく、つねに変化する複数の中心があり、ときには無関係に並走し、あるいは重なりあっていくその様は、香港の活動家・區龍宇が「民主共同体は多元的でなければならない」(11)と述べたような共同体の理想的なあり方を示しているようにも思う。そして不定形に変化する自発的な抗議運動は、香港のアクション・スターであるブルース・リーの名言「水になれ」にあやかって、まさに不定形に離合集散を繰り返す流水にもたとえられているものの、それは同時に極めて優れた集団即興の構造的な特徴であるようにも思う。いわばフィオナ・リーは前代未聞の集団即興演奏を収録したのである。


8月上旬、大埔墟に設置された雨傘のバリケード(撮影:Aokid)

 むろん抗議運動をフィールド・レコーディングすることそれ自体が珍しいわけではない。1969年に米国のベトナム戦争に対する反戦デモを収めたトニー・コンラッドによる作品『Bryant Park Moratorium Rally』、あるいはベルリンの壁崩壊前夜のクロイツベルクのデモの録音を挿入したアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの楽曲“Fiat Lux”などが有名どころだが、近年では世界中の音環境を記録しマッピングしようと試みる「シティーズ・アンド・メモリー」によって「抗議と政治」というプロジェクトも進行している(12)。トランプ政権およびブレグジットへの抗議運動を収録したものを中心に、欧米のみならずインドやカンボジア、台湾などアジア圏でのデモの録音も投稿されており、抗議内容は必ずしも体制批判だけではなく、なかには政権を支持する運動の録音もある。ただし現時点では香港の民主化運動は一切投稿されていない。同ウェブサイトには無加工の「シティ・ヴァージョン」と録音に加工/編集を施した「メモリー・ヴァージョン」があり、世界各地でおこなわれている抗議運動の様々なコール&レスポンスのパターンを知ることができる。それらに比すとき、抗議運動のサウンド・パターンだけでなく出来事それ自体を収めようとしたフィオナの作品の特異性も浮かび上がってくる。

 抗議運動の録音に関して、『Souciant』誌に掲載された「フィールド・レコーディングの政治」と題した記事のなかでは、「経済的な目的へと合理化するのが困難であること」こそがプロテスト音楽の本質だと書かれている(13)。たしかに売れることや心地よい体験をすることがこうした音楽の目的ではないだろう。ただし同記事で言われているように「ノイズが美的価値を欠いている」とは限らない。抗議運動のフィールド・レコーディングは、その事実性とノイズの美的価値の相互作用をこそ聴き取らなければならないはずだ。そのためには抗議運動のフィールド・レコーディングを素朴に現実そのものの響きだと信じることを留保する必要がある。「シティーズ・アンド・メモリー」にメモリー・ヴァージョンがあるのは、他方でシティ・ヴァージョンがまさに「現実の響き」だと見做されているからに他ならない。しかしあらためて言うまでもなく、無加工のフィールド・レコーディングが現実をそのまま記録しているわけではないのである。録音という行為がすでに現実の響きの加工であるうえに、どのように録音するのかという点に制作者の作家性が示されてもいるからだ。本作品のように複数のサウンドスケープを選択し、ある継起的時間に収めるという時点でそこにはフィオナの耳が刻まれている。

 フィオナとも交流のある北京の音楽家ヤン・ジュンはかつて「事実性を記録することなど出来ません。記録することと創造することに区別はないのです。(……)楽器を選ぶこと、配置を決めること、録音ボタンを押すこと、その全てが作曲行為なのです」(14)と述べたことがあった。録音という行為は現実を切り取るという以上に、音を組織化するための積極的な手段でもあるのだ。そうであればこそ、自然の響きをそのまま写し取ったかのような極めてリアルな音響であったとしても、それが却って不自然に感じられてしまうということもある。ただしそれはフィールド・レコーディングという行為がすべて現実から等間隔の距離を保っているというわけではない。フィールド・レコーディング活動をおこなう18名のアーティストのインタヴューを収めた、キャシー・レーンとアンガス・カーライルの『イン・ザ・フィールド──フィールド・レコーディングの芸術』の書評で聴覚文化論の金子智太郎は、実際には見かけほど単純ではないと断りを入れつつ、同書における「録音のドキュメンタリー性を重視するかという問い」と「録音に自己がどう現れるかという問い」に言及している(15)。この二つの問いは表裏一体となっており、すなわち録音作品と客観的な現実との距離に関する問いと言うことができる。そしてフィールド・レコーディングには、制作者の意識の有無にかかわらず、つねにこの事実性に対する距離のグラデーションが存在する。

 事実性を括弧に括り、記録された響きを参照項を持たない音として聴取することを、かつてミュジーク・コンクレートの創始者であるピエール・シェフェールは還元的聴取と呼んだ。だがむろん響きから一切の現実を排した「音そのもの」を聴取することは不可能である以上、還元的聴取は現実との別の接点を音響から聴き出すための手段だと言うこともできる。たとえば雨傘運動を捉えたフィオナの作品は、まさにこのような還元的聴取をおこなうことによって、実際には展示でも公演でもないにもかかわらず、あたかもインスタレーション作品のように、あるいはオブジェを使用したサウンド・パフォーマンスのようにも聴くことができる。それは録音を音響へと還元しつつも、展示や公演といったフィオナの活動とも関わる現実との別の接点を聴き取ったということでもある。そのように考えるならば、『Hong Kong 9 June to 12 Sep 2019』は香港民主化運動の現実をそのまま切り出した響きというよりも、むしろフィールド・レコーディングによって切り出された、抗議運動を考えるための現実との別の接点をもたらしてくれる作品だと言うべきではないだろうか。

 今回の民主化運動では、香港警察が不当な暴力を行使する映像がSNSや動画サイトを介して拡散したことが、警察に対する不信感と反感を加速度的に増幅させていった。そして警察および政府のみならずその背後にある中国本土へと怒りの矛先は向かい、中国企業や親中派の店舗を襲撃するなど一部のデモ隊は過激化の一途を辿っている。だがしかし、そのような暴力を通して周知の事実を強調し続けることだけが取るべき手段なのだろうか。暴力の連鎖はどこかで止めなければならない。むろんいま現在闘争の只中にある香港市民にとっては、こうした問いかけは無意味に映るかもしれない。だが抗議運動における音の力は、抵抗歌を生み出し活動を鼓舞することだけにとどまるわけではない。映像に接して瞬間的に感情を増幅させるのとはまったく反対に、無数の声を一定の距離を確保しながら聴き取ることもまた「音の力」であるはずだ。音を現実から引き剥がし、そのうえであらためて音と現実との接点を探ること。あるいは音と耳の関係性を基盤にしつつ、しかしその相関性の外部にある現実について思考すること。フィールド・レコーディングという徹底的に聴くことを出発点とする表現手法は、こうしたある種の無力さに根差した抵抗としての「音の力」を可能にする。そしてフィオナ自身が本作品に関して「これらの録音が、抗議運動を別の視点から理解したい将来のクリエーターのための参考となることを願っています」(16)と述べているように、残された音の記録はまさに事実性からの距離を見出されることによって、香港民主化運動の響きの政治的かつ美学的な複数の側面を、抵抗手段としての聴取をともないながら明らかにしていくことだろう。

JPEGMAFIA - ele-king

 「お前は俺を知らない(You think you know me)」。プロデューサーというのはタグ好きだ。主役は誰かをリスナーに分からせるための、自らの楽曲群にグラフィティのように走り書きするタグが。WWEレスラー、エッジのテーマ曲をサンプリングしたJPEGMAFIAのプロダクション・タグは、彼のやることの多くと同様にいくつもの意味を兼ねてみせる。音響的な目印であり、ポップ・カルチャーの引用であり、挑発でもある、という具合に。お前は俺を知ってるつもりかい?(You think you know me?)

 バーリントン・デヴォーン・ヘンドリックスには、前作『Veteran』(2018)の思いがけないヒットでその混乱した、自由連想に満ちた音楽がより広い層の聴き手に達する以前に自らを理解する時間がたっぷりあった。その前の段階のとある名義で、彼はミドル・ネームと姓から派生したデヴォン・ヘンドリックス(Devon Hendryx)を名乗っていた。彼がJPEGMAFIAに転生したのは米空軍を名誉除隊した後に日本で生活していた間のことだった。彼はよくペギー(Peggy)の名も使いたがるが、その愛称は彼にどこかのおばあちゃんめいた印象を与える。

 しかしまた、JPEGMAFIAは自らを色んな風に呼ぶのが好きだったりする。『All My Heroes Are Cornballs』(2019)の“BBW”で、彼は「若き、黒人のブライアン・ウィルソン」を自称する──自らのプロダクション・スキルの自慢というわけだが、ウィルソンは録音音楽の歴史上おそらくもっとも白人的なサウンドを出すミュージシャンのひとりであるゆえに余計に笑いを誘う。“Post Verified Lifestyle”での彼は「ビートルズとドゥームを少々に98ディグリーズが混ざった、ビーニー・シーゲル」だ。ひとつのラインの中でジェイ–Zの元子分、王道ロック・バンド、顔を見せないアンダーグラウンドなラッパー、90年代のティーン・ポップ・グループの四つの名が引き合いに出される。この曲の後の方に出て来る「俺は若き、黒いアリG」は、さりげなくも見事なギャグになっていると共に考えれば考えるほどおかしな気分になるフレーズだ(註1)。

 JPEGMAFIAはつかみどころがなく、シュールなユーモアと政治的な罵倒、エモーショナルな弱さとの間を推移していく。『All My Heroes Are Cornballs』のリリース前、彼はアルバムが出るのはいつなのかという質問をはぐらかし続け、きっとがっかりさせられる作品になると言い張るに留まっていた。彼のYouTubeチャンネルにはジェイムズ・ブレイク、ケニー・ビーツをはじめとするセレブな友人たちが登場し、アルバムをヌルく推薦するヴィデオがアップされた。DJ Dahiの1本がそのいい例で、彼は冒頭に「たぶん俺はこのクソを二度と聴かないと思うよ、個人的に」のコメントを寄せている(※JPEGMAFIAがアルバム発表前にYouTubeに公開した、「友人たちに新作のトラックをいくつか試聴してもらい率直な感想を聞く」という主旨のジョーク混じりのヴィデオ・シリーズ「Disappointed」のこと)。

 これらの証言の数々は、ヘンドリックスがソーシャル・メディアのしきたりを享受すると共にバカするやり口の典型例だ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”に「ニガー、やりたきゃやれよ、俺は認証済みだぜ」の宣戦布告が出て来るが、ここでの彼は自らのツイッター・ステイタスを見せびらかしつつオンライン上のヘイターたちをからかっている。“Beta Male Strategies”で彼はこう預言する──「俺が死んだら、墓碑はツイッター、ツイッター」

 Veteran』が盛り上がり始めた頃、ヘンドリックスは左頬の上に、目にポイントを向けたコンピュータのカーソルのタトゥーを小さく入れた。英音楽誌『CRACK』に対して彼は「何かの形でインターネットにトリビュートを捧げたかったんだ」と語っている。

 多くのラッパーがインターネットからキャリアをスタートさせてきたとはいえ、これほどオンライン文化の産物という感覚を抱かせるラッパーはあまりいない。ツィッター・フィードをスクロールしていくように、JPEGMAFIAの歌詞はおふざけから怒りっぽいもの、真情から軽薄なものまで次々に切り替わる。歌詞にはバスケットボール選手からファストフード・チェーン、ヴィデオ・ゲーム、90年代のテレビ番組、政治コメンテーター、インターネットのミームまで内輪受けのジョークとカルチャーの引用がみっしり詰まっていて、それらをすっかり解読するのには何時間も要する。

 その不条理なユーモアと割れた万華鏡を思わせるプロダクションに対し、手加減なしのずけずけとした政治的な毒舌がバランスを取っている。「政治的なネタ」についてラップしてもいいんだとアイス–Tから教わったとする彼は、人々の神経を逆撫でする機会を避けることはまずない。“All My Heroes Are Cornballs”で彼は「インセルどもは俺がクロスオーヴァーしたんで怒ってやがる」とラップする──「じゃあ連中はどうやってアン・ハザウェイからアン・クルターに鞍替えしたんだ?」(註2)。“PRONE!”は「一発でスティーヴ・バノンはスティーヴ(ン)・ホーキンスに早変わり」とオルタナ右翼勢にとことん悪趣味な嫌がらせを仕掛ける。(註3)。こうしたすべてを彼がどれだけ楽しんでいるかが万一伝わらなかった場合のために、“Papi I Missed U”で彼は「レッドネックどもの涙、ワヘーイ、なんて美味いドリンクだ」とほくそえむ。

 その挑発には、敵対する側からさんざん人種差別の虐待を浴びせられてもレヴェルを高く維持しようというオバマ時代の考え方あれこれに対する反動、というロジックが備わっている。ヘンドリックスは2018年に『The Wire』誌との取材で「一体全体どうして俺たちは、俺たちを蔑む連中にこれだけおとなしく丁寧に接してるんだ?」と疑問を発した。「『向こうが下劣になろうとするのなら、我々は高潔になろう』。むしろ俺は右派に対し、奴らが出しているのと同じ攻撃性をお返ししてやりたいね。効果てきめんだよ!」

 彼はまた従軍時代に体験したマッチョなカルチャーを引っくり返すのを大いに楽しんでもいて、タフ・ガイ的な記号の数々と典型的にフェミニンなお約束とを混ぜ合わせる。かつてのプリンスがそうだったようにJPEGMAFIAもジェンダーが流動的で、曲の中で女性の声にすんなりスウィッチするのだ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”のコーラスで彼は「どうやったらあたしの股を閉じたままにしておけるか教えて」と歌うが、この曲のタイトルは性的に放縦な女性に対するヒップホップの中傷語(Thot)を女性の側に奪還している。彼は“BasicBitchTearGas”で再び女性の視点を取り入れるが、この曲は予定調和な筋書きを反転させた女性のためのアンセム=TLCの“No Scrubs”の、意外ではあるものの皮肉は一切なしのカヴァーだ。

 ペギーは「お前のおばあちゃんにもらったお下がりに身を包んで」(“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”)けばけばしいファッションでキメることもあるが、それでも激しく噛み付いてくる。オンラインの他愛ない舌戦とリアルな暴力の威嚇との間にはピンと張り詰めた対比が存在する。“Beta Male Strategies”で彼はツィッター上で彼を批判する面々に「くそったれなドレス姿のニガーに撃たれるんじゃないぜ」と警告する。“Thot Tactics”では「ブラザー、キーボードから離れろ、MACを引っ張り出せよ」とあざける。アップル製コンピュータのことかもしれないが、おそらくここで言っているのはMACサブマシンガンのことだろう。

 ギャングスタ・ラップの原型からはほど遠いラッパーとはいえ、JPEGMAFIAは小火器に目がない。“DOTS FREESTYLE REMIX”の「お前が『Toonami』を観てた頃から俺は銃をおもちゃに遊んでたぜ」のラップは、昔ながらの「お前が洟垂らしだった頃から俺はこれをやってきた」に匹敵する愚弄だ(註4)。西側の白人オタクたちは自分のお気に入りのアニメ界のフェティッシュの対象を「ワイフ(wiafu)」と呼ぶが、“Grimy Waifu”でペギーが官能的なR&Bヴォーカルを向ける相手は実は彼の銃だったりする。

 突然注目を浴びたラッパーの多くがそうであるのと同じように、『All My Heroes Are Cornballs』も音楽業界およびその中における自身の急上昇ぶりに対する辛辣な観察ぶりを示してみせる。“Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind”で彼は「俺はコーチェラから出演依頼を受けたけど、敵さんたちはそうはいかないよな」と自慢する。このトラックの他の箇所では、彼に取り入り利用しようとするレコード業界の重役たちにゲンナリしている様が聞こえる──「この白いA&Rの連中、俺を気軽に注文できる単品料理だと思ってるらしい/俺をお前らのケヴィン・ジェイムズにしたいのかよ、ビッチ、だったら俺にケヴィン・ハート並みに金を払うこった」(註5)。自分のショウを観に来る怒れる白人男連中は彼のお気に召さないのかもしれないが(「ニガーに人気が出ると、黒人ぶるのが好きな白人どもが毎回顔を出すのはどうしてなんだ?」──“All My Heroes Are Cornballs”)、その見返りを彼は喜んで受け取る。「年寄りのホワイト・ニガーは大嫌いだ、俺には偏見があるからな/ただしお前らニガーの金を教会の牧師が寄付金を集めるように俺の懐に入れてやるよ」(“Papi I Missed U”)

 と同時にペギーは彼自身、あるいは他の誰かを台座に就かせようという試みに抵抗してもいる。アルバム・タイトルがいみじくも表している──「俺のヒーローはダサい変人ばかり」と。アルバムの中でもっともエモーション面でガードを下ろした“Free the Frail”で、彼は「俺のイメージの力強さに頼っちゃだめだ」と忠告する。「良い作品なら、めでたいこった/細かく分析すればいいさ、もう俺の手を離れちまったんだし」。それは受け入れられたいとの訴えであり、完璧な人間などいないという事実の容認だ。あなたは彼を知っているつもりかもしれない。彼はそんなあなたを失望させるだけだ。

〈筆者註〉
註1:「アリG」は、ケンブリッジ大卒のユダヤ系イギリス人であるサシャ・バロン・コーエンの演じた「自分は黒人ギャングスタだ」と思い込んでいる白人キャラクター。コーエンはこのキャラを通じて「恵まれた若い白人層が彼らの思うところの『黒人の振る舞い』を猿真似する姿」を風刺しようとしたのだ、と主調している。しかし一部には、そのユーモアそのものが実はステレオタイプな黒人像を元にしたものだとしてアリGキャラを批判する声も上がっている。
(※アリGはマドンナの“Music”のPVでリムジン運転手役としても登場)

註2:インセルども=女嫌いのオンライン・コミュニティ「involuntary celibate(不本意ながらヤれずにいる禁欲者)」の面々は、JPEGMAFIAが少し前に成功しアンダーグラウンドからメインストリームに越境したことに怒りを発した。アン・クルターはヘイトをまき散らすアメリカ右派コメンテーターで、『プラダを着た悪魔』他で知られるお嬢さん系女優アン・ハザウェイ好きから、インセルたちはどうやってアン・クルターのファンに転じたのか? の意。

註3:ドナルド・トランプの元チーフ戦略家スティーヴ・バノンを車椅子生活に送り込むには一発の銃弾さえあれば足りる、の意。

註4:『Toonami』は1997年から2008年までカートゥーン・ネットワークで放映されたアクション/アニメ番組専門のテレビ枠。

註5:レーベル側のA&R担当者たちは彼らの求めた通りの何かを自分からいただけると思っているが、だったらもっと金を払ってくれないと、の意。ケヴィン・ジェイムズもケヴィン・ハートも俳優だが、人気黒人コメディアンであるハートはジェイムズよりもはるかに多額のギャラを要求できる立場にいる。


“You think you know me.” Producers love a tag: a graffiti-like signature to scrawl across their tracks, letting listeners know who’s in control. Sampled from the theme song for WWE wrestler Edge, JPEGMAFIA’s production tag—like a lot of what he does—manages to be many things at once: a sonic marker, a pop culture reference, a provocation. You think you know me?
Barrington DeVaughn Hendricks had plenty of time to get to know himself before the unexpected success of 2018’s Veteran brought his messy, free-associating music to a wider audience. In a previous incarnation, he was Devon Hendryx, a moniker derived from his middle and last names. It was while living in Japan, after an honourable discharge from the US Air Force, that he became JPEGMAFIA. He often prefers to use the diminutive Peggy, which makes him sound more like someone's grandmother.
Then again, JPEGMAFIA likes to call himself a lot of things. On “BBW,” from 2019’s All My Heroes Are Cornballs, he’s “the young, black Brian Wilson”—a boast about his production skills, made all the funnier by the fact Wilson must be one of the whitest-sounding musicians in the history of recorded music. On “Post Verified Lifestyle,” he’s “Beanie Sigel, mixed with Beatles with a dash of DOOM at 98 degrees”—in the space of a single line, name-checking a former Jay-Z protégé, a canonical rock band, a reclusive underground rapper and a 1990s teen-pop group. Later in the same track, he’s “the young, black Ali G,” which is a great throwaway gag that gets stranger the more you think about it.
JPEGMAFIA is elusive, shifting between surreal humour, political invective and moments of emotional vulnerability. In the run-up to the release of All My Heroes Are Cornballs, he constantly dodged questions about when the album was due, merely insisting that it would be a disappointment. His YouTube channel released videos of celebrity pals, including James Blake and Kenny Beats, offering lukewarm endorsements. DJ Dahi’s was characteristic: “I'll probably never listen to this shit again, personally.”
These testimonials are typical of the way Hendricks both embraces and mocks the conventions of social media. “Nigga, come kill me, I’m verified,” he declares on “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” taunting the online haters while flaunting his Twitter status. On “Beta Male Strategies,” he prophesies: “When I die, my tombstone’s Twitter, Twitter.”
When Veteran started blowing up, Hendricks got a small image of a computer cursor tattooed on his left cheekbone, pointing towards his eye. As he told Crack Magazine: “I wanted to pay tribute to the internet in some way.”
Many rappers have launched their careers on the internet, but few feel quite so much like a product of online culture. Like scrolling through a Twitter feed, JPEGMAFIA’s lyrics whiplash constantly between playful and bilious, heartfelt and irreverent. They’re dense with in-jokes and cultural references—to basketball players, fast-food chains, video games, ’90s TV shows, political pundits, internet memes—that would take hours to fully decode.
The absurdist humour and fractured-kaleidoscope production is counterbalanced by some unapologetically direct political invective. He credits Ice Cube with teaching him it was OK to rap “about political shit,” and seldom shies away from an opportunity to rile people. “Incels gettin’ crossed ’cause I crossed over,” he raps on “All My Heroes Are Cornballs.” “How they go from Anne Hathaway to Ann Coulter?” On "PRONE!," he trolls the alt-right as tastelessly as possible: “One shot turn Steve Bannon into Steve Hawking.” And just in case it wasn’t clear how much he’s enjoying all of this, “Papi I Missed U” gloats: “Redneck tears, woo, what a beverage.”
There’s logic to the provocation, a reaction to all that Obama-era stuff about taking the high ground while your opponents douse you in racist abuse. “Why the fuck are we so civil with people who despise us?" Hendricks asked The Wire in 2018. “‘They go low, we go high.’ I’d rather give the right the same aggression back. It works!”
He also delights in subverting the macho culture he experienced serving in the military, mixing tough-guy signifiers with stereotypically feminine tropes. JPEGMAFIA is gender-fluid in the way that Prince was, slipping naturally into a female voice during songs. “Show me how to keep my pussy closed,” he sings in the chorus of of “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” the title of which reclaims a hip-hop slur (“thot”) used against slutty women. He adopts a female perspective again on “BasicBitchTearGas,” an unexpected—and wholly unironic—cover of TLC’s script-flipping anthem, “No Scrubs.”
Peggy may sport flamboyant fashions—he’s “Dressed in your grandmama’s hand-me-downs” (“Jesus Forgive Me, I’m a Thot”)—but he still bites. There’s a bracing contrast between the online shit-talking and the threat of real violence. On “Beta Male Strategies,” he cautions his critics on Twitter: “Don't get capped by a nigga in a muhfuckin’ gown”. On “Thot Tactics,” he taunts: “Bruh, put the keyboard down, get the MAC out”—which could be talking about Apple computers, but is probably referring to the MAC submachine gun.
He’s a far cry from the gangsta-rap archetype, but JPEGMAFIA can’t get enough of his firearms. “I’ve been playing with pistols since you watching Toonami,” he raps on “DOTS FREESTYLE REMIX,” the equivalent of the old “I’ve been doing this since you were in diapers” jibe. While Western otaku use “waifu” to refer to their favourite anime fetish object, on “Grimy Waifu,” Peggy’s seductive R&B vocal is actually addressed to his gun.
Like many rappers who’ve been thrust suddenly into the spotlight, All My Heroes Are Cornballs offers caustic observations on the music industry and his rapid ascent within it. “I got booked for Coachella, enemies can’t say the same,” he brags on “Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind.” Elsewhere on the same track, he’s unimpressed by record industry execs hoping to take advantage of him: “I feel these cracker A&Rs think I’m al a carte / They want me Kevin James, bitch, pay me like Kevin Hart.” He may not like the angry white dudes in the audience at his shows (“Why these wiggas always showin’ up when niggas be poppin’?” on “All My Heroes Are Cornballs”), but he’s happy to reap the rewards: “I hate old white niggas, I’m prejudiced / But I’ma take you niggas money like a reverend” (“Papi I Missed U”).
At the same time, Peggy resists attempts to put him, or anyone else, on a pedestal. It’s right there in the title: all my heroes are cornballs. “Don't rely on the strength of my image,” he cautions on “Free the Frail,” the album’s most emotionally unguarded track. “If it’s good, then it’s good / Break it down, this shit is outta my hands.” It’s a plea for acceptance, an acknowledgment that nobody’s perfect. You think you know him. He can only disappoint you.

WaqWaq Kingdom - ele-king

 先日、新たに強力な12インチがリリースされたばかりの Mars89 だけれど(紙エレ年末号にインタヴュー掲載)、彼が suimin とともに主催する《南蛮渡来》(名前の由来はじゃがたら!)が5周年を迎える。というわけで、年明け1月18日にアニヴァーサリー・パーティが開催されることとなった(WWW / WWWβ)。目玉は、キング・ミダス・サウンドへの参加でも知られるキキ・ヒトミと、新生シーフィールのメンバーでありDJスコッチ・エッグ名義でも活躍しているシゲル・イシハラからなるユニット、ワクワク・キングダムの出演だろう。2017年のファースト『Shinsekai』も良かったし、最近セカンド『Essaka Hoisa』も出たばかりということで、すばらしいパフォーマンスを披露してくれることだろう。詳しくは下記をば。

[2020年1月9日追記]
 昨日、フルラインナップが発表されました。新たにローカルから欧州帰りの MEW、「ストレンジ・ダブ・セット」を披露する TOREI、そして Double Clapperz から UKD の計3組の出演が決定。楽しみです。

南蛮渡来 5th Anniversary

Mars89 と suimin 主宰のミューテーション・パーティ《南蛮渡来》5周年記念! “演歌ダブ”でも話題となった Kiki Hitomi とブレイクコアのレジェンド DJ Scotch Egg によるヘビー・バイブスな重低音デュオ WaqWaq Kingdom を初来日で迎えた、ベース&トライバルな阿弗利加、亜細亜、神、祭、未来、タイムワープな新世界へ。ワクワクなフルラインナップは後日発表!

南蛮渡来 5th Anniversary
2020/01/18 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]
MEW [*1/9追記]
TOREI - Strange Dub set - [*1/9追記]
UKD (Double Clapperz) [*1/9追記]
Mars89 [南蛮渡来]
suimin [南蛮渡来]

Tarot: AWAI [*1/9追記]

※ You must be 20 or over with Photo ID to enter.

詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/012125.php
前売:https://www.residentadvisor.net/events/1363782

■WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]

Seefeel のメンバーでもある Shigeru Ishihara (別名 DJ Scotch Egg) と、The Bug との King Midas Sound でも活動するシンガー/プロデューサー Kiki Hitomi による“トライバル”にインスパイアされたキラーな重低音デュオ WaqWaq Kingdom。“ヘビー・バイブス”なデュオとして知られ、ヨーロッパ、中国での評判を皮切りに、〈Phantom Limb Records〉からのセカンド・アルバム『Essaka Hoisa』のリリース以来、USからの関心も高めている。

WaqWaq Kingdom は古代神道の神話や、地元の神々を称える日本の“祭り”をテーマとし、催眠的でシャーマニックなライブ・パフォーマンスは、「アニミスティックなルーツとフーチャリスティックな都市のネオン・カラーを再接続する強烈なタイムワープの体験」と言われている。

デュオの最初の2枚のレコード、および〈Jahtari〉からのEPとLPで着実な評価を得ながらワールドワイドへ進出。Quietus や Resident Advisor からの熱烈な記事や、The Wire でもフィーチャーされる。また Shigeru Ishihara はウガンダの新興フェスティバル〈Nyege Nyege〉に出演し、ナントとロッテルダムでもギグを行っている。

https://open.spotify.com/album/4HbqiCPMjB8WP1vIegQ6Br


■Mars89 [南蛮渡来]

Mars89 は現在東京を拠点に活動している DJ / Composer である。 2016年にEP「East End Chaos」をリリース。 そして、それを足がかりに2017年に「Lucid Dream EP」を Bristol を拠点とするレーベル〈Bokeh Versions〉からダブプレートとカセットテープというフォーマットでリリース。2018年にはアジアツアーや大型フェスへの出演を経て、〈Bokeh Versions〉から12インチ「End Of The Death」をリリース。主要メディアで高く評価され、あらゆるラジオで繰り返しプレイされた。UNDERCOVER 2019A/W の Show や田名網敬一のドキュメンタリーフィルム、Louis Vuitton 2019A/W Mens の広告映像の楽曲などを担当。Bristol の Noods Radio ではレジデントをつとめている。

https://www.mars89.com/
https://www.youtube.com/watch?v=gjw1UGL14yE


■suimin [南蛮渡来]

『覚醒、瞑想、殺人。』

https://soundcloud.com/min-ing

CHANGSIE - ele-king

 東京のアンダーグラウンドでその名を轟かせる実力派DJ、今年は〈BLACK SMOKER〉からミックス『THE FURY』をリリースしてもいる CHANGSIE (チャンシー)が、2020年1月24日、キャリア初にして渡英前最後のワンマン・パーティを WWWβ にて開催する。昨日公開されたRAのポッドキャストではUKガラージを軸にしたダイナミックなプレイを披露してくれているけれども、きたるパーティはオープンからクローズまでのオールナイトとのことで、より多彩なセットを楽しむことができそうだ。この機会を逃しちゃいけない。

Masahiko Takeda - ele-king

 京都の電子音楽レーベル〈shrine.jp〉から京都出身の電子音響作家・武田真彦のソロ・アルバムがCD作品としてリリースされた(同レーベルから2年ぶりのCD作品!)。武田は京都市芸術大学ギャラリー、京都芸術センター、十和田市現代美術館、安楽寺、ロームシアター京都などとアート・プロジェクトをおこなってきた気鋭のサウンド・アーティスト。 くわえて Velveljin、Rexikom としても活動をしており、〈shrine.jp〉のサブ・レーベル〈MYTH〉、パリの〈Récit〉、ルーマニアのミニマル・レーベル〈pluie/noir〉などから、EP、楽曲、ミックスなどをリリースしてきたミニマル・シーンの俊英でもある。

 『Mitate』はそんな武田真彦名義のファースト・ソロ・アルバムだ。武田がインスタレーションなどで制作・発表したコラボレーション・ワークを中心に全6曲を収録し、「サウンド・アーティスト」としての側面・経歴をパッケージしたノーブルな音響作品に仕上がっている。
 コラボレーション・アーテイストは、Virta のメンバーにして京都在住のトランペッター Antti Hevosmaa (M2)、コンテンポラリー・ダンスとして参加した Simon Erin とダンス・建築・美術の領域を越境する Fumi Takenouchi (M3)、1995年生れのフランス人小説家 Théo Casciani (M4)、パイプオルガン/フィールド・レコーディング・サウンドで参加した Vesa Hoikka (M5)など京都のアートシーンと縁のある(関係する)作家/アーティストたち。くわえて1曲め“Expectation”は建築と彫刻、ファッションと音楽、アートとデザインなどの垣根を超えて活動するジルヴィオ・シェラー(Silvio Scheller)とミルコ・ヒンリクス(Mirko Hinrichs)によるベルリンの BIEST のエキシヴィジョンで披露された貴重なパフォーマンスである。
 協働によって生まれたサウンドは、まるで清流のような美しさを放っていた。電子音/持続音を基調としつつ、さまざまな環境音などのサウンド・エレメントをミックスした曲(1曲め、2曲め)、密やかなノイズの蠢き琴の音色が交錯する曲(3曲め)、透明な空気を感じさせるアンビエント/ドローンから、Théo Cascian によるテキスト(小説)のリーディング、そして囁くような歌声へと生成変化を遂げる曲(4曲め)、深く響く環境音と柔らかい質感のドローン、細やかなグリッチ・ノイズがミックスされるサウンドスケープがシネマティックな聴取感覚を与えてくれるアンビエント・トラック(5曲め)、環境音からヴォーカル曲が交錯するトラック(6曲め)まで音響作品としてあらゆる手法を存分に投入しながらもスタティックなムードで統一されているのだ。まさに「ソロ・アルバム」としての気品と風格を兼ね備えた作品といえよう。

 本アルバムを特徴付けるもうひとつの重要な要素がCD盤を包み込むジャケットにある。素材を提供し、クリエーターの協働をめざす「MTRL KYOTO」は、伝統的な布地にCDを収めるという新しいパッケージ・フォームを生み出した。ジャケット素材の風のような軽さと柔らかさに、硬質な銀盤の共存は本作のサウンドそのものであり、ぜひともCDを手にとってその質感を味わって頂きたい。私見だがこの「触れる/聴く」の共存性は、ストリーミング時代における「CDのあり方」をリ・プレゼンテーションするプロダクトにすら思えたほど。

 『Mitate』は、音と素材の「見立て」によって生れた実にエレガント/エクスペリメンタルな音響作品であり、音を用いた芸術と音楽の境界線を思考する上で重要な問いを発している批評的な作品でもある。何より「場」の空気をアート・インスタレーションに変えてしまうほどに美麗さと存在感のある音の粒子を放つ音響作品なのである。このアルバムが2019年の終わりにリリースされたことは10年代の電子音響/サウンドアートにおいて僥倖に思えてならない。2020年も繰り返し聴取したいCD作品のひとつである。

ISSUGI - ele-king

 今年は 16FLIP 名義でジョージア・アン・マルドロウとコラボも果たした MONJU / DOWN NORTH CAMP の ISSUGI が、本日12月11日、久々のニュー・アルバム『GEMZ』を発売する。BUDAMUNK(SICK TEAM)、HIKARU ARATA(WONK)、KAN INOUE(WONK)、TAKUMI KANEKO(CRO-MAGNON)、MELRAW(DJ K-FLASH)が集結し、5lack、仙人掌、Mr.PUG、OYG、KOJOE、DEVIN MORRISON ら強力な面子を招いて制作された同作だけれど、そのリリースに合わせてなんと、キャリア初となるワンマンライヴの開催もアナウンスされた。日時は来年3月27日、会場は渋谷 WWWX で、『GEMZ』のバンド・メンバーたちが一堂に会する。これは見逃せない。いまから予定を空けておこう。

待望のニュー・アルバム『GEMZ』を本日リリースしたISSUGIが同作のバンドメンバーを伴って、初となるワンマンを来年3/27(金)に渋谷WWWXで開催!

BUDAMUNK(PADS)、WONKのHIKARU ARATA(DRUM)、KAN INOUE(BASS)、CRO-MAGNONのTAKUMI KANEKO(KEYS)、MELRAW(SAX, FLUTE, TRUMPET, GUITAR)、DJ K-FLASH(TURNTABLE)がバンド・メンバーとして集結し、Red BullのサポートのもとRed Bull Studioを拠点にセッションを繰り返して作られたニュー・アルバム『GEMZ』を本日リリースしたISSUGIが、キャリア初となるワンマンライブを来年3/27(金)に渋谷WWWXにて開催! 同作に参加しているバンド・メンバーを伴ったデイタイムでの公演となりますので今からその日は予定を空けておいてください。また同公演の前売りチケット発売情報やその他の地域でのライブに関しては追ってアナウンスする予定です。

「ISSUGI 『GEMZ』 RELEASE LIVE」
日程:2020年3月27日(金)
会場:渋谷WWWX
※開演時間や前売りチケットに関しては未定です。

Members are…
RAP:ISSUGI / DRUMS:HIKARU ARATA(WONK) / BASS:KAN INOUE(WONK)/
PADS:BUDAMUNK / TURNTABLE:DJ K-FLASH / KEYS:TAKUMI KANEKO(CRO-MAGNON)
/ SAX, FLUTE, TRUMPET, GUITAR:MELRAW

https://www.ele-king.net/upimgs/img/5131.jpg
アーティスト: ISSUGI (イスギ)
タイトル: GEMZ(ジェムズ)
レーベル: P-VINE, Inc. / Dogear Records
品番: PCD-25284
発売日: 2019年12月11日(水)
税抜販売価格: 2.500円
https://smarturl.it/issugi.gemz

[トラックリスト]
1. GEMZ INTRO / prod BUDAMUNK
2. ONE RIDDIM / prod BUDAMUNK
3. NEW DISH / prod 16FLIP & BUDAMUNK
4. BLACK DEEP ft. Mr.PUG, 仙人掌 / prod 16FLIP
5. DRUMLUDE / prod BUDAMUNK
6. HERE ISS / prod 16FLIP
7. LIL SUNSHINE REMIX
8. FIVE ELEMENTS ft OYG, Mr.PUG, 仙人掌 / prod BUDAMUNK
9. 踊狂REMIX ft. 5lack / prod BUDAMUNK
10. OLD SONG ft DEVIN MORRISON / prod BUDAMUNK
11. HEAT HAZE REMIX ft Mr.PUG / prod ENDRUN
12. LOUDER / prod 16FLIP & DJ SCRATCH NICE
13. MISSION ft KOJOE / prod HIKARU ARATA
14. 再生 / prod BUDAMUNK
15. No.171 / prod BUDAMUNK
16. GEMZ OUTRO / prod BUDAMUNK

[PROFILE]
東京出身のRapper/Beatmaker。MONJU (ISSUGI / Mr.Pug / 仙人掌)、SICKTEAM (5lack /ISSUGI / Budamunk) としても活動し、16FLIP名義でBeatmakeもこなす。ソロを含めこれまでに複数のALBUMをリリース。

Worked with: 仙人掌, Mr.PUG, 5lack, Budamunk, BES, SEEDA,KOJOE, JJJ, KID FRESINO, FEBB, MASS-HOLE, YUKSTA-ILL, DJ SCRATCH NICE, GRADIS NICE, CRAM, ILLSUGI, YOTARO, GQ, DJ SHOE, ENDRUN, ILLNANDES, 弗猫建物 ,Devin Morrison, Roc marciano, Evidence, Tek of Smif-n-wessun, Twiz the beat pro, Roddy rod, Gwop sullivan, DJ FRESH, Illa J, DJ DEZ, Khrysis, John robinson, Eloh kush, Al B smoov, Mr.Brady, Planet asia, Georgia Anne Muldrow & more

NYクラブ・ミュージックの新たな波動 - ele-king

 NYダンス・ミュージック・シーンの10年代の変遷については前編で伝えたけれど、20年代が始まろうとする今のブルックリンのアンダーグラウンドはどうなっているのだろう?

 2012年、〈Mister Saturday Night Records〉によってその才能を見出された Anthony Naples は、それから7年経った今、もはやブルックリンのダンス・ミュージック・シーンを牽引するといっていいほど勢いのある存在だ。ヨーロッパを中心に毎週世界のどこかでブッキングされる人気DJの傍ら、2017年には、まだ発掘されていないNYの新しいアーティストにフォーカスするインデペンデント・レーベル〈Incienso〉をデザイナーの Jenny Slattery とともに設立。その第1弾としてフィーチャーされたのが、10年代のブルックリンのユース・カルチャー・シーンをともに歩んできた、“DJ Phython”こと Brian Piñeyro のデビューLP『Dulce Compãnia』だ。

 実は DJ Python のほかに、表現するモノによって DJ Wey や Deejay Xanax、Luis などの名義も使い分ける Brian Piñeyro は、DJ Python では〈Incienso〉の前身のレーベル〈Proibito〉時代からすでに、ディープ・ハウスやシューゲイザー、トランス、レゲトンなどをスローテンポにしたサウンドのうねりをゆったりサーフライドしていくような「ディープ・レゲトン」と呼ばれる新たなスタイルを打ち出してきた。この『Dulce Compãnia』のリリースは、オンライン・マガジン「ローリング・ストーン」における「2017年ベスト・エレクトロニック・アルバム」にランクインされるほど高く評価され、そのスタイルを確かなものにした。
 さらに、今年6月にはアムステルダムを拠点とするレーベル〈Dekmantel〉からEP「Derretirse」をリリース。『Dulce Compãnia』に続き2作目となる本作では、ラテンにルーツを持つ Brian Piñeyro らしく、南半球から生まれる陽気なパーカッションやリヴァーブ、ディープ・シンセのリズムとともにレゲトンとアンビエント、ポストIDMがよりメローに融合していくようなさらなる進化を遂げている。そんなブルックリンのアンダーグラウンドで育まれたオリジナルのサウンドが「ディープ・レゲトン」として世界に広まりつつある今、DJ Phython は、間違いなくこれから活動の場を外へ広げていくNYの新世代アーティストのひとりだといえるだろう。

「Derretirse」より“Be Si To”

 そして、〈Incienso〉の第2弾には、カナダの〈1080p〉やシカゴの〈Lillerne Tape Club〉からカセットテープを発表してきたダンス・ミュージック・シーンの新星 Beta Librae のデビューLP『Sanguine Bond』をフィーチャー。実はブシュウィックの「Bossa Nova Civic Club」がオープンした当時(2012)からプレイしている Beta Librae は、この「Bossa Nova Civic Club」で、女性特定のDJ集団「Discwoman」を主宰する同郷の Umfang とともに今のNYのアンダーグラウンドで重要なポジションを占める「Techno feminism」というパーティのレジデントDJを務めている。


Bossa Nova Civic Club 2013 flyer “Techno feminism”

 そんなバックグラウンドの片鱗を垣間見せるような『Sanguine Bond』では、アンビエントなディープ・ハウスにエレクトロニック・サウンドをレイヴ感たっぷりにミックス。この新しい質感こそがまさに“今のNYサウンド”だと思わせる、NYのダンス・ミュージック・シーンに新境地を切り拓くアルバムとなった。

『Sanguine Bond』より“Pink Arcade”

 レーベルについて、「ポリシーは、“私たちが真価を認めている人たちの、新鮮でおもしろさを見出せる音楽をリリースする”こと。これまでのリリースでは身近な友人だけをフックアップしてきて、これは絶対的なルールじゃないけど、その人のことを知っているからこそすでに彼らとの信頼関係があるのは制作においてかなりやりやすいの。そして、まだリリースのない人を紹介することが何よりもエキサイティング!」と、Jenny Slattery。
 その後〈Incienso〉は、CZ Wang と Joli B. のデュオ People Plus によるEP「Olympus Mons」や、まだ記憶に新しい工藤キキのEP「Splashing」、最新作には Sleep D によるLP『Rebel Force』など、レーベル設立からたった2年でコンスタントに7つのタイトルを発表し、NYナイズされた気鋭のダンス・ミュージックを発信し続けている。さらに、Jenny Slattery は、「最初はNYの友人たち、そして次は世界中の友人たちへ。レーベルを通じて作り上げたコミュニティとアーティスト自身の小さな世界をリンクさせていくのは楽しいし、それを続けていくことがこれからも楽しみ。2020年は、DJ Python のセカンドLPから始まり、これまででいちばん有望な年になりそう」。


L to R: People Plus, Kiki Kudo, Sleep D

 そんなアンダーグラウンド・シーンで最もフレッシュなリリースといえば、ブルックリンに拠点を置き、Anthony Naples や DJ Phython、Beta Librae たちと一緒に肩を並べてきた Galcher Lustwerk のLP『Information』を真っ先に挙げたい。

 そもそも Galcher Lustwerk が世界から注目されるようになったきっかけまで話を遡ると、2013年に発表した初めてのミックス「100% Galcher」が決定的だろう。エクスペリメンタルなダンス・ミュージックをはじめ、エレクトロニック・サウンドに関連するさまざまなアーティストのミックスに焦点を当てた実験的なプロジェクト「Blowing Up The Workshop」のために未発表音源を集めて制作した「100% Galcher」は、オンライン・マガジン「FACT」の「2013年ベスト・アルバム50」では4位、「Resident Advisor(以下、RA)」の「2013年ミックス/コンピレーション・トップ30」ではオンライン・ミックス部門で堂々1位を獲得し、“無名の新人が自身の音源のみでミックスを公開するのは2013年のベスト・サプライズだった”と「RA」から絶賛された。ディープ・ハウスのようなドラムマシンに独自のスモーキーなヴォーカルをかけ合わせたサウンドは、平たく言うと控えめなヒップハウスのようで、ありそうでなかったオリジナリティーにほかならない。Galcher Lustwerk はそれほど鮮烈なデビューを果たしたのだ。


2012年のトラックを集めたプロモミックス「100% Galcher」

 そして、同年 Young Male と DJ Richard が主宰するブルックリンの〈White Material〉からヴァイナル・デビューとなるEP「Tape 22」をリリースするやいなやその新鮮なサウンドが世界のダンス・ミュージック・リスナーの心をつかみ、2015年に立ち上げた Galcher Lustwerk 自身のレーベル〈Lustwerk Music〉から立て続けに、「100% Galcher」のシングルカットとなるEP「Parlay」と「I Neva Seen」、〈White Material〉の Alvin Aronson とのプロジェクト「Studio OST」名義でLP『Scene (2012-2015)』をリリース。その意欲的な活動とユニークなサウンド・スタイルで、Galcher Lustwerk という存在を揺るぎないものにしていった。

 話を本題に戻すと、今年11月にリリースされたばかりの最新作『Information』は、2017年〈White Material〉からのデビューLP『Dark Bliss』、翌年2018年〈Lustwerk Music〉からのセカンドLP『200% Galcher』に次ぐ、待望のサード・アルバム。しかも、Matthew Dear や Gold PandaTychoShigeto などのアーティストをダンス・ミュージック・シーンに輩出してきたミシガンの名門〈Ghostly International〉のデビュー作品だ。Galcher Lustwerk は〈Lustwerk Music〉のホームページにこうコメントを寄せる。
 「アメリカはミッドウェスト、クリーヴランド出身の自分が〈Ghostly International〉と一緒に作品を出すのであれば、最もミッドウェスト的な“フックの強い”トラックを選び出すことがしっくりくると思う。このアルバムでは、ほかのクリーヴランドのプロデューサーが作る曲のなかで聴いたビターウィートな質感を表現したかったんだ」。

 その言葉の通り、『Information』は、Galcher Lustwerk ならではのスタイルが顕在しながらもよりライヴ感のあるドラムとジャズ・サックスを含んだ、これまで以上にダイナミックなサウンドを生み出している。

 このラインでブルックリンのアンダーグラウンド・シーンを紹介したなら、前編からの一連で登場した〈L.I.E.S. Records〉や〈Proibito〉、さらには Maxmillion Dunbar が主宰するワシントンD.C.の〈Future Times〉など10年代のアメリカで重要なレーベルからリリースのある“Huerco S.”こと Brian Leeds についても特筆すべきだと思うけれど、彼は、2018年に自身のレーベル〈West Mineral〉を立ち上げるとともにブルックリンからベルリンへ拠点を移した。アンビエントやドローン、エスニックに通ずるエクスペリメンタルなエレクトロニック・サウンドを発表してきた〈West Mineral〉では、Brian Leeds の故郷であるカンザスのアーティストを中心にフィーチャー。20年代が始まろうとする今、Brian Leeds はもはや「NYサウンド」というこの本題にはくくりにくい存在となってしまったが、拠点をベルリンに移した今でもNYで培ってきた大もとのスタンスは変わらないはず。

 もちろんほかにここで紹介しきれなかった新世代アーティストもたくさんいるが、実は今回取り上げた DJ Python と Beta Librae、Galcher Lustwerk は、DJ/プロデューサーの Aurora Halal が主宰するNYで数少ない野外レイヴ・パーティ「Sustain-Release」の国外初となるサテライト・イベント「S-R Meets Tokyo」のために来年1月に来日を予定している。そもそも、「NY」とか「新しい世代」とか、日常的になじみの薄い字面だけでハードルの高さを感じる人もなかにはいるかもしれない。だけど、一度彼らを見てみたら、きっと好きになると思う人たちの顔も目に浮かぶ。

Sustain-Release presents “S-R Meets Tokyo”

2020年1月25日(土)東京・Contact
OPEN 22:00

出演
Aurora Halal (NY)
Galcher Lustwerk (NY)
Wata Igarashi (Midgar | The Bunker NY)

DJ Python (NY)
Beta Librae (NY)
AKIRAM EN
JR Chaparro

Mari Sakurai
Ultrafog
Kotsu (CYK | UNTITLED)
Romy Mats (解体新書)
Celter (Eclipse)

料金
BEFORE 11PM ¥2500 | UNDER 23 ¥2500 | ADVANCE ¥2500 | GH S MEMBERS ¥3500 | W/F ¥3500 | DOOR ¥4000
詳細:https://www.contacttokyo.com/schedule/sustain-release-presents-s-r-meets-tokyo/

元ちとせ - ele-king

 私は元ちとせのリミックス・シリーズをはじめて知ったのはいまから数ヶ月前、坂本慎太郎による“朝花節”のリミックスを耳にしたときだった、そのときの衝撃は筆舌に尽くしがたい。というのも、私は奄美のうまれなので元ちとせのすごさは“ワダツミの木”ではじめて彼女を知ったみなさんよりはずっと古い。たしか90年代なかばだったか、シマの母が電話で瀬戸内町から出てきた中学だか高校生だかが奄美民謡大賞の新人賞を獲ったといっていたのである。奄美民謡大賞とは奄美のオピニオン紙「南海日日新聞」主催のシマ唄の大会で、その第一回の大賞を闘牛のアンセム“ワイド節”の作者坪山豊氏が受賞したことからも、その格式と伝統はご理解いただけようが、元ちとせは新人賞の翌々年あたりに大賞も受けたはずである。すなわちポップス歌手デビューをはたしたときは押しも押されもしない群島を代表する唄者だった。もっとも私は80年代末に本土の学校を歩きはじめてから短期の帰省をのぞいてはシマで暮らしたこともないので、彼女が群島全域に与えた衝撃を実感したわけではない。私のころはむしろ中野律紀さんがシマ唄のホープでありポップスとの架け橋だったのであり、電話口で元ちとせの登場に母の興奮した声音を聴いた90年代なかば、私はむしろゆらゆら帝国(まだ4人組でした)とかのライヴに足を運びはじめたころで、シマ唄なんかよりはそっちのがだいぶ大事だった。しかしそのように語るのはいくらか語弊がある。というのも、そもそも私のような1970年代生まれ以降のシマンチュにとってシマ唄はもとからそう身近なものではない。戦後、米軍統治からの本土復帰後、ヤマト並をめざす奄美にとっては文化も言語も標準化すべき対象でしかなく、私はよく憶えているが、私が小学の低学年だったころまでは学校のその週の努力目標にシマグチ(方言)を使わないようにしましょうというものがあり、使うと他の生徒の前で罰せられたのである(80年代のことですぜ)。私はこのことに子ども心ながら理不尽な気持ちを拭えなかったが、なにがおかしいか、なぜおかしいか、またひとはなぜそのような外部の視線を内面化することで恥と劣等感をおぼえるのか、語ることばをもたなかった。もっともその口にのぼらせるべきことばすら本土化されかかっていたのだとしたら、武装に足ることばなどどこにもなかった。とまれ私たちは中国のウイグル自治区への政策をしたり顔でもって他山の石などとみなすことなどできない。南西諸島にせよアイヌにせよ、境界を措定された空間の周縁は中央がおよぼす文化と政治と経済の波がもっとも可視化されやすい場所であり、言語におけるその顕れはおそらくドゥルーズのいうマイナー言語なるものを派生させ、近代性の波と同期すればポール・ギルロイいうところの真正性オーセンテイシテイを励起するはずだが、この点を論究するのは本稿の任ではない。つまるところ私にはともに90年代前半に見知ったおふたりが20年代のときを経てコラボレーションするにいたったことが事件だったのである。
 恥ずかしながら私はここしばらく元ちとせの動向を追っていなかったのでことのなりゆきがにわかにはのみこめなかったが、レーベルのホームページによるとリミックスはこんごもつづくとのこと。また今回のプロジェクトはもとになるアルバムがあるのもわかった。昨年リリースの『元唄(はじめうた)』と題したシマ唄集で、元ちとせはこのアルバムで盟友中孝介を客演に、勝手知ったるシマ唄の数々を招き吹きこみなおしている。坂本慎太郎の“朝花節”のリミックスは『元唄』の幕開けにおさめた楽曲のリミックスで、同様の主旨のリミックスが以後数ヶ月つづくこともレコード会社の資料は述べていた。したがって本作『元ちとせリミックス』の背景にはおよそこのような背景があることをご理解いただいたうえで、今回の坂本龍一のリミックス作のリリースをもって完了したプロジェクトをふりかえりつつ収録曲とリミキサーを簡単にご説明さしあげたい。

 

朝花節 REMIXED BY 坂本慎太郎
2019/6/26 Release

 “朝花節”は唄遊びや祝宴の席で最初に歌うことの多い、座を清めたり喉のウォーミングアップをかねたりする唄。唄者には試運転をかねるとともに、唄の場がひらいたことを宣し声を場にチューニングしていく役割もある。多くの唄者の音盤でも冒頭を飾ることが多く、元ちとせの〈セントラル楽器〉(名瀬のレコード店で唄者のアルバムを数多くリリースしている)時代のセカンド『故郷シマキヨら・ウム』(1996年)の冒頭を飾ったのも“朝花節”だった。1975年の敗戦の日の日比谷野音で竹中労が音頭をとり、嘉手苅林昌、知名定繁と定男父子、登川誠仁など、稀代の唄者が集ったコンサートの実況盤でも奄美生まれの盲目の唄者里国隆の“朝花節”が1曲目に収録されているのもおそらく同じ意味であろう。
坂本慎太郎のリミックスはもっさりしたチープなビートが数年前のクンビアあたりを彷彿する点で、『元唄』のボーナストラックだった民謡クルセイダーズの“豊年節リミックス”に一脈通ずるが、音と音との空間を広くとり、定量的なビートにも機械の悲哀といったものさえ感じさせるソロ期以降の坂本慎太郎の作風を縮約した趣きもある。背後からヘア・スタイリスティックスとも手を結ぶ作風ともいえるのだが、坂本は元や中の声を効果的にもちい、聴き手の感情をたくみに宙吊りにする。うれしくもなければ悲しくもない。笑いたいわけではないが怒っているのでもない、日がな一日砂を噛みながらみずからの鼻を眺めるかのごとき感情の着地を拒む幕開けはアルバム総体の行方も左右しない。

 

くばぬ葉節 REMIXED BY Ras G
2019/7/31 Release

 つづく“くばぬ葉節”のリミックスはラス・Gの手になる。ラス・Gは今年7月29日に逝去したがリミックスの公開はその二日後、はからずもいれかわるように世に出た。LAビート・シーンの立役者のひとりであり、幾多の独特なリズム感覚でビート・ミュージックの形式にとどまらない作風をものしたラス・Gらしく、ここでもパブリック・イメージをいなすノンビート・アレンジで意表を突いている。全体はスペーシーな風合いがつよく、冒頭のSEは極東の島国のさらにその南の島からの唄声に自身のサウンドをチューニングさせるかのよう。表題の「くばぬ葉」はビロウの葉のこと。シマでよくみるヤシ科の常緑の高木でその葉を編んで団扇にしたことなどから身よりのないシマでのひととのえにしの大切さになぞらえている。

 

くるだんど節 REMIXED BY Chihei Hatakeyama
2019/8/28 Release

 ここからアルバムはアンビエント・パートへ。数あるシマ唄でも代表的な“くるだんど節”を本邦アンビエント界の旗手畠山地平がカスミたなびく音響空間に仕上げている。表題の「くるだんど」とは「空が黒ずむ」の意。その点でも幽玄の情景を喚起する畠山のリミックスは唄のあり方を的確にとらえているといえる。もっともシマ唄の歌詞に決定稿は存在しない。歌詞は唄うものが唄い手が独自に唄い変える。じっさい畠山のリミックスの原曲となった『元唄』収録の“くるだんど節”は島の特産物産を自慢する内容だが、この歌詞は親への感謝を唄うオーソドックスなものともちがっている。むろんそれさえも「空が黒ずむ」ことともなんら関係ない。転々とシマからシマ、ひとからひとへ唄い継ぐうちに歌詞も節もグルーヴも変転する世界各地のフォークロアな音楽と通底するこのような口承性こそ、共同体の暮らしの唄としてのシマ歌の真骨頂といえるのだが、畠山地平は唄の古層を探るかのように原曲の音素をひきのばし、幾多の微細な響きに解体した響きが蜿蜿と蛇行する大河のような時間感覚をかたちづくっている。

長雲節 REMIXED BY Tim Hecker
2019/9/25 Release

 声の響きに着目した畠山のリミックスと対照的に、つづくティム・ヘッカーは“長雲節”のリミックスで元ちとせの唄の旋律線の動きに焦点をあてている。ティム・ヘッカーといえば、昨年から今年にかけて『Konoyo』と『Anoyo』の連作での雅楽との共演でリスナーをおどろかせたばかり。雅楽とは、いうまでもなく中国から朝鮮半島を経由に伝来した宮廷音楽だが、楽音と雑音とを問わずあらゆる音に色彩をみいだすこのカナダ人は雅楽という形式特有の持続とゆらぎに、おそらくは此岸(この世)と彼岸(あの世)のシームレスなつながりをみた、そのように考えれば、シマ唄、ことに元ちとせら「ひぎゃ唄」の唄者が自家薬籠中のものとする裏声によるポルタメントな唱法(グィンといいます)はヘッカーをしてシマ唄と雅楽の類似点を想起させなかったとはだれにも断定できない。原曲となる“長雲節”はしのび逢いの唄で、別れ唄とする地域もあれば祝い唄とみなすシマもある。このような背反性までもリミキサーが理解していたはずはないが、かろうじてかたちを保っていた唄が旋律の線形だけをのこし抽象化し、やがてサウンドの合間に姿を消すヘッカーの解釈は唄の物語世界にも同期する、好ミックスである。
ちなみにさきに述べた「ひぎゃ唄」の「ひぎゃ」とは東の意。元ちとせの出身地でもある奄美大島南部の瀬戸内町の旧行政区画名「東方村」に由来する。すなわち南方を東方と呼んでいたころのなごりで、北部を代表する「かさん唄」(「かさん」は現奄美市に合併した笠利町のこと)とシマ唄の傾向を二分する流儀である。武下和平から朝崎郁恵まで、著名な唄者がひぎゃ唄の唄い手に多いのは起伏に富む歌いまわしがテクニックに結びつくからだろうが、地鳴りのような唸りからファルセットまで一気にかけあがる唱法は、北部に比して急峻な南部の地形に由来するとも、信仰や風習や、はたまた薩摩世(薩摩藩支配時代)の過酷な労働に由来するとする説まで、諸説紛々だが真偽のほどはさだかでない。

 

Photo by "Jakob Gsoellpointner".

豊年節 REMIXED BY Dorian Concept
2019/10/30 Release

 フライング・ロータス、サンダーキャットらの〈ブレインフィーダー〉から『The Nature Of Imitation』を昨年リリースし一躍ときのひととなったドリアン・コンセプトは『元唄』では唯一のリミックス作“豊年節”を題材に選んだ。すなわち民謡クルセイダーズのリミックスのリミックスということになるが、ジャズからビート・ミュージックまで手がけるオーストリアの才人は原曲を活かしながら独自色をひそませ、島々を練り歩く放浪芸の一座のようだった原曲にサーカス風の彩りをくわえている。

 

Photo by zakkubalan(C)2017 Kab Inc.

渡しゃ REMIXED BY 坂本龍一
2019/11/27 Release

 『シマ唄REMIX』の参加者でそれまでに唯一元ちとせとの共演歴をもっていたのが“渡しゃ”を担当した坂本龍一である。坂本と元は2005年の8月6日に広島の原爆ドームの前で、トルコの詩人ナジム・ヒクメットが原爆の炎で灰になった少女になりかわり書き綴った詩の訳詞に外山雄三が曲をつけた“死んだ女の子”を演奏し、爾来夏を迎えるたびに限定で配信し収益のいちぶをユニセフに寄付しているという。元ちとせの2015年のアルバム『平和元年』も収める“死んだ女の子”はまぶりのこもった歌声と柔和なメロディに鋭いたちあがりの音が同居した、反戦と平和を希求するスタンダード・ナンバーとして灯りを点すように広がりつつあるが、ここでの坂本は元ちとせのリズミックな演奏に抑制的にアプローチすることで原曲の秘められた側面をひきだしている、その作風は畠山地平やティム・ヘッカーと同じくアンビエントと呼ぶべきだろうが、声の断片、電子音のかさなり、ピアノの打鍵、かぎられた響きで多くを語る方法は坂本龍一の作家性を端的に物語っている。
表題の「渡しゃ」は島と島を渡すもの、すなわち「船頭」の意。船頭が唄のなかで奄美大島、喜界、徳之島、沖永良部、与論からなる奄美群島をめぐっていく。歌詞にみえる「間切り」の文言は琉球と奄美にかつて存在した行政区画で、市町村の町みたいなものだが、島には陸地にはない海の道があり、海が隔てる別々の島のシマ(村)が同じ間切りに入っていたこともしばしばだった。今福龍太が『群島論』で指摘したように、海を道とみなす視点には陸地と海洋が反転した白地図が文字通り浮上するというが、形式を問わない自由な耳でしかあらわれない音もおそらくこの世には存在する。『シマ唄REMIX』が収めるのは純粋なシマ唄でもなければポップスでもない。リミックス集だがダンス・ミュージックでもないし、中身も歌手元ちとせの唄のみをひきたてるものではない。実験的で挑戦的な内容ともいえる一枚だが、エキゾチシズムに淫せず、伝統に拝跪せず、神秘主義に溺れず、反省的な文化人類学の反動性に与せず、ありきたりなポストコロニアルやカルチュラル・スタディーズの思弁にも回収されない、蠢動するものはそのような音楽がもっともよく体現するのである。

特設ウェブサイト:
https://www.office-augusta.com/hajime/remix/

interview with Battles (Ian Williams) - ele-king

 結成から17年。世間的には“Atlas”で一世を風靡したことでも知られるエクスペリメンタル・ロック・バンドのバトルスが、ギター/キーボードのイアン・ウィリアムスとドラムスのジョン・ステニアーのデュオ編成となって初めてのアルバム『Juice B Crypts』をリリースした。4人から3人へ、そして2人へと編成を変えながら、変わることのない鋭角的なサウンドと祝祭的なグルーヴを奏で続けてきた彼らは、11月初頭に恵比寿ガーデンホールで開催され、満員の観客が詰めかけたリリース記念ライヴでも、その圧倒的な個性を聴かせてくれた。いや、むしろプリセットされた音源やシンセサイザーなどを駆使するイアンのサウンドと、サンプラーを使用しつつあくまでも生身のドラミングを力強く披露するジョンのグルーヴは、バトルスの核にある音楽性をより剥き出しにして聴かせてくれたと言ってもいいだろう。ライヴ当日、ステージに出ていく直前のイアン・ウィリアムスに、バトルスの変化と具体的な制作手法、新作『Juice B Crypts』について、さらにはその「モダン」なありようを伺った。(細田成嗣)

オリジナル・メンバーと、新しいメンバーのヒエラルキーができるよりは、ふたりだけの方がいい。

4年前のアルバム『La Di Da Di』と今作『Juice B Crypts』の一番大きな違いとして、やはりメンバーのひとりデイヴ・コノプカが脱退したということがあると思います。トリオからデュオへと編成が変わるなかで、音楽制作にどのような変化がありましたか。

イアン・ウィリアムス(Ian Williams、以下IW):デュオになったことである意味ではとてもやりやすくなった。というのも曲ごとの方向性が明確に見えるようになったんだ。いまは俺とジョン(・ステニアー)のふたりで楽曲制作をしているんだけど、ジョンはあくまでもドラマーとして存在していて、それ以外のギターやキーボード、あるいはループを使うところのコントロールとかはすべて僕がやっている。デイヴ(・コノプカ)やタイヨンダイ(・ブラクストン)がいた時代は、俺がここにこの音を置きたいって思っていても、みんながいろんなものを持ってきたりするから、なかなか思い通りにはならなかった。でも今回は俺が行きたいところにまっすぐに進めたという意味ですごくやりやすかった。だから曲の形を作るという点でははっきりと自分の意図を出すことができたんじゃないかな。いままでは意図がぶつかり合うことがあったんだけどね。もちろんぶつかり合うことで矛盾が生まれて面白いものができるっていうこともあって、とてもクレイジーで良い方向に進むこともあったんだけど、たまにクレイジーすぎてしまうこともあった。そういったことが整理されたっていう意味では今回のアルバム制作はとてもいい機会だったと思うよ。

バンドをやめる、あるいは後釜のメンバーを入れるなどの選択肢はあったのでしょうか。

IW:新しいメンバーを入れるというのは、変な感じがするというか、俺とジョンだけの方が正直な感じがする。オリジナル・メンバーと、新しいメンバーのヒエラルキーができるよりは、ふたりだけの方がいい。

具体的にアルバムを制作するうえで方法を変えたことなどはあったのでしょうか。

IW:俺が前にやってたドン・キャバレロの終わり頃からそうだったんだけど、バトルスの曲作りにおいてつねにインスピレーションを与えてくれるものがある。というのはループ・ペダルを使って音を重ねていく作業をするんだけど、それをバンドという形でやるにあたって、重ねた音をそれぞれの生身のミュージシャンに割り振ったらどうなるだろう、っていう考えがあるんだ。EPとか『Mirrored』の頃もまさにそうで、コール&レスポンスがかなり多い音作りだったと思うんだけど、それはたぶんね、ひとりで作った音を他人と共有するときに生まれる呼びかけ合いみたいなものがあったからなんだと思う。要するにループ・ペダルで使ったものを一旦バラして人に割り振るっていうことから生まれる呼びかけ合いね。今回の新しいレコードでやったことも割とそれと同じなんじゃないかというふうに思っていて。ただ今回はメロディの情報がものすごく多いから、リズムの上にメロディを乗っけるっていうんじゃなくて、サウンドの壁みたいなものにメロディも埋め込まれているというか、構築されたもの全体の一端がメロディになっている。つまりメロディがウワモノとして乗っかっているんじゃなくて、サウンドの壁の中から聴こえてくる、っていうふうに変わったっていうのはこれまでとの違いなのかもしれないな。ただ、自分が作った音楽を表現するやり方っていうのは意外とあんまり変わっていないんじゃないかな。

ループ・ペダルで作ったものを生身の人間に割り振る際に、機械ではなく身体を用いることによる意想外な出来事がひとつの面白さとして出てくると思うんですが、たとえば長時間のジャム・セッション、つまりインプロヴィゼーションをおこなう中でコンポジションのアイデアを掴んでいく、といったような制作方法をすることもあるのでしょうか。

IW:いわゆるインプロはやらないな。もちろんいまふたりしかいないということもあって、一緒に曲作りをするときにジョンにドラムを叩いてもらって、なんか面白い響きがしてヒントになることはあるにしても、僕らの場合それはたぶんインプロとは違う。インプロと言うよりも「必死の試行錯誤」って言った方が合ってると思う。「あ、いまなんか面白いのができたね」ってなったときに、どうやったか覚えておこうみたいな、そういうことはよくやってる。でもそれは曲作りそのものと同じだから、僕の中では特にインプロだとは思ってない。

新しいものを使ってみるのが好きなんだ。色々なことをやってみて、努力して、事故が起きるという状態まで自分を持っていく。素敵な事故が起こるまで。自分では予測や想像できなかったであろうことが起きるまで、機械と交流するんだ。

『Juice B Crypts』のもうひとつの特徴として、大勢のゲストが参加されてるということがありますよね。ゲストはどういうふうに選んでいったのでしょうか。

IW:服を着替えるような感じだった。色々と試しては「これ似合うね」とか「他のも試してみよう」とか、そういう感じで選んでいった。だけど特に決まったメソッドがあったというわけじゃなくて、それぞれの曲についてそれぞれの理由で人選していった。曲の求めに応じて解決策を探していったと言えばいいかな。たとえばセニア・ルビーノスに関しては前から好きな声で素晴らしいシンガーだと思っていたんだけど、最初は“Fort Greene Park”をやってもらおうと思って試してみた。だけどなんだか上手くハマらなくて、洋服を色々とあてがってみる感じで彼女に合う曲を探していった。その結果あのソウルフルな感じが“They Played It Twice”に合致してクールな出来になったんだ。

つまりアルバム全体のコンセプトを先に決めてそれに当てはまるようにゲストを呼んでいったのではなく、曲ごとにそれぞれの理由でゲストとコラボレーションしていったということでしょうか。

IW:そうだね。最初から全体を見ていたわけじゃない。たとえば“Titanium 2 Step”は最初インストで録ってみて、誰だったかに聴かせてみたら「なんかオールド・ロスト・ニューヨークっぽいよね」って言われて。たしかにニューヨークのクラシックなディスコ・パンクというか、70年代終わり~80年代頭ぐらいのノーウェイヴっぽいよなと思って、その手のバンドにいた人っていうことでサル・プリンチパートの名前が浮かんだから、声をかけてみたり。曲によって理由は様々なんだよ。

台湾の Prairie WWWW とはどのような経緯でコラボレートしたのでしょうか。

IW:彼らを観たのは4年くらい前、台湾の台北だった。とてもクールで変わったバンドだと思ったのを覚えている。彼らは、俺たちがいるステージの反対側に、クラブのフロアで準備していて、大きな帽子をかぶって床に座りながら、変な音をマイクから出していた。すごく奇妙だったんだけどクールな感じだった。だから彼らのことは覚えていて、連絡も取っていた。そこで今回の曲に参加してもらうことになって、クールなコラボレーションが実現したんだ。

アルバムの構想は、いつ、どのように生まれたのでしょうか。

IW:前作のツアーが終わった後、俺はひとりで新しい音楽の制作に取り組んだ。そしてデイヴが脱退した。俺たちが作る音楽は、何をやっても、良い音楽になるという自負はあった。それが成功するかどうかは全く分からないが、俺たちの音楽はクールなものになるだろうと思っていた。そこでジョンに、「この新しい音源で何かやってみないか?」と聞いたらジョンはやりたいと言った。だからこのアルバムの元となったのは、俺がしばらくの間、作っていた素材なんだ。

なるほど。それはどのような素材だったのでしょうか。

IW:俺はいつも新しい「楽器」に興味を持っている。「楽器」とカッコ付きで呼ぶのは、エレクトロニック・ミュージックでは色々なものが「楽器」になるからだ。ある種のソフトウェアも楽器だし、シンセサイザーも楽器、伝統的なギターやベースギターもそうだし、ペダルを通すものや、モジュラーシンセサイザーも楽器になる。その全てが今回のアルバムに使われた。俺は、そういう新しいものを使ってみるのが好きなんだ。毎回、違った結果が生まれるからね。色々なことをやってみて、努力して、事故が起きるという状態まで自分を持っていく。素敵な事故が起こるまで。幸運な事故が起こるところまで色々なことを試してみる。実際に起こるまでは、自分では予測や想像できなかったであろうことが起きるまで、機械と交流するんだ。そしてそういうことが起きたときに「すごいな、こんなことが起こったんだ」と思う。そういう作業が大部分を占める。そのような事故が起きるような状況まで自分を持っていく。そのために機材やツールを組み合わせる。今回のアルバムでは、モジュラーシンセサイザー、エイブルトン、スウェーデンの会社のエレクトロン、それから何本かのギターを使ったね。

8分くらいの大曲を書くよりも3分半の短い曲を書く方が難しい。バトルスではいくらでも複雑なことができるわけで、それを一口大で提示してみるっていうのがいわゆる「歌もの」をやることの醍醐味だと思ってる。

タイヨンダイ・ブラクストンが脱退した後にリリースされた2枚目のアルバム『Gloss Drop』にも多数のゲスト・ミュージシャンが参加されていましたよね。メンバーの脱退後にゲストを呼んでアルバムを制作する、という点では似た経緯を踏んでいるように思いますが。

IW:そういうふうに言う意味はわかる。けれども僕らは『Gloss Drop』のことは意識していなかった。ゲスト・ヴォーカルをたくさん入れるのってとても楽しい試みだと思うんだよね。それはバンドという関係ではできないことができるというか、歌う側もいつもと違うことができて楽しいのかもしれないし、いつもと少し違うヴォーカルを聴いてもらえる機会にもなるのかもしれないし。僕らとしてもバンドのメンバーじゃない人とやるからいい意味でプレッシャーがかかるところもあるんだ。インストの曲ってさ、どれだけ楽器が上手いかとか、どれだけ曲が長尺で複雑で、山あり谷ありで最後には感動させてみせるぞみたいなね、そういうことが問われてしまうところがある。ひけらかし的な部分とか、どれだけ宇宙の彼方まで行って戻ってこられるか的な部分とか。でもそういった側面から自由になれるっていうのが、歌の入った割とコンパクトな曲の醍醐味だと僕は思う。単純に音楽として楽しんでもらえるんじゃないかっていうのがあるんだ。それに実を言えば8分くらいの大曲を書くよりも3分半の短い曲を書く方が難しい。それはたぶん100ページで書くことを10ページにまとめるときの難しさと同じだと思うけど、バトルスではいくらでも複雑なことができるわけで、それを一口大で提示してみるっていうのがいわゆる「歌もの」をやることの醍醐味だと思ってる。もちろんだからといって簡単なことをやってるわけではけっしてなくて、一口大の中にものすごくいろんなものが入ってるっていうことは間違いないけどね。

一方でもちろん『Gloss Drop』にはなかったような要素も『Juice B Crypts』には数多くあります。前作『La Di Da Di』から今作をリリースするまでの4年間に新しく興味を持った音楽はありましたか。

IW:シンセサイザーをいじることかなあ。具体的なレコードとか人物というよりも、新しいシンセを手に入れて遊んだりすることがすごく刺激になっている。

今作のプレス・リリースであなたは、モダニズムの概念を鍛錬した美術批評家クレメント・グリーンバーグの「メディウム・スペシフィシティ」に言及していましたよね。

IW:あれは〈Warp〉が勝手に入れたんだよ(笑)。たしかに雑談をしているときに名前を挙げたり、グリーンバーグのコンセプトを語ったりはしたかもしれない。でもそれを元に曲を作ったという話は一切してないよ。ただ、そうだね、たとえば曲の意味を問われたときに「これは恋人のことを想って書いた曲です」とか言っちゃえば簡単なんだけれども、俺の場合は「こういうビートがあります」とか「こういうテクスチャーのサウンドがあります」とか、それがそのまま曲になっているから、モダン・アートの考え方に似てるんじゃないかとは思う。モダン・アートって、たとえばブロックと木片があってそれらを組み合わせて何かを作ったときに、「これは支え合いを意味するのです」とかいう説明をしたらそうなるかもしれないけど、でも実際には単にブロックと木片があるだけだよね。白いキャンバスの上に白い輪っかを描いたとして、何を意味するのかって言われても、それは単純に白だよね。もしくはペンキをぶちまけて何かを描いたとして、それが牛みたいに見えることもあるかもしれないけど、でもそれはただのペンキなんだよね。そういうことなんだよ。素材がそのまま曲になってるっていう意味では、そういう一部のモダン・アートの考え方と近いところがあるよね。

バトルスの音楽はモダンだと思いますか?

IW:うん。そういうイデオロギーの方が好ましいと思う。

Stereolab - ele-king

 10年ぶりの活動再開とともに順次リイシュー企画の進んでいたステレオラブですけれども、なんと来日公演が決定しました! 2020年の3月、稀代のバンドが東京と大阪の地に降り立ちます。来日公演はじつに11年ぶりとのことで、いやーこれは見逃せません。ちなみにリイシュー企画最後の2作、『Sound-Dust』と『Margerine Eclipse』は明々後日、11月29日の発売です。イアン・F・マーティンによる深い深いステレオラブ論はこちらから、レティシア・サディエールのインタヴューはこちらから。

STEREOLAB
10年ぶりに再始動をしたオルタナティヴ・ミュージック界の皇帝
ステレオラブ
11年ぶりの来日公演が決定!!

80年代のギター・ポップ・バンド、マッカーシーに在籍していたギタリスト兼ソングライターのティム・ゲインと、英語とフランス語を使い分けながら歌うヴォーカルのレティシア・サディエールを中心として90年代にロンドンで結成され、クラウトロック、ポストパンク、ポップ・ミュージック、ラウンジ、ポストロックなど、様々な音楽を網羅した幅広い音楽性で、オルタナティヴ・ミュージックを語る上で欠かせないバンドであるステレオラブ。その唯一無二のサウンドには、音楽ファンのみならず、多くのアーティストがリスペクトを送っ ている。10年ぶりに再始動を果たした彼らは、過去タイトルから一挙7作品を再発すると共に、Primavera Sound Festival や Pitchfork Music Festival など様々な大型フェスティヴァルを含む大規模なツアーを敢行中。そしてついに11年ぶりとなる来日公演が決定した。

https://youtu.be/nYDtWdyIUiQ

今回の再発キャンペーンでは、メンバーのティム・ゲインが監修し、世界中のアーティストが信頼を置くカリックス・マスタリング(Calyx Mastering)のエンジニア、ボー・コンドレン(Bo Kondren)によって、オリジナル・テープから再マスタリングされた音源が収録されており、ボーナストラックとして、別ヴァージョンやデモ音源、未発表ミックスなどが追加収録される。国内流通盤CDには、解説書とオリジナル・ステッカーが封入され、初回生産限定アナログ盤は3枚組のクリア・ヴァイナル仕様となり、ポスターとティム・ゲイン本人によるライナーノートが封入される。

Japan Tour 2020
STEREOLAB

東京 3/16 (月) LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
¥6,500 (前売 / 1ドリンク別)
03-3444-6751 (SMASH)

大阪 3/17 (火) UMEDA SHANGRI-LA
OPEN 18:00 / START 19:00
¥6,500 (前売 / 1ドリンク別)
06-6535-5569 (SMASH WEST)

■チケット発売

主催者先行:11/26 (火) 17:00 ~ 12/2 (月) 23:00 (抽選制)
https://eplus.jp/stereolab/

一般発売:12/14 (土)
東京:e+ (Pre: 12/4 12:00 ~ 12/8 23:59)|ぴあ (P:171-039)|ローソン (L:74870)|岩盤 ganban.net
大阪:e+ (Pre: 12/4 12:00 ~ 12/8 23:59)|ぴあ (P:171-116)|ローソン (L:55768)

クレジット
協力:BEATINK

お問合わせ
SMASH:03-3444-6751|smash-jpn.com

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: SOUND DUST [Expanded Edition]
release date: 2019/11/29 FRI ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: MARGERINE ECLIPSE [Expanded Edition]
release date: 2019/11/29 FRI ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: EMPEROR TOMATO KETCHUP [Expanded Edition]
release date: NOW ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: DOTS AND LOOPS [Expanded Edition]
release date: NOW ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: COBRA AND PHASES GROUP PLAY VOLTAGE IN THE MILKY NIGHT [Expanded Edition]
release date: NOW ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: Transient Random-Noise Bursts With Announcements [Expanded Edition]
release date: NOW ON SALE

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: Mars Audiac Quintet [Expanded Edition]
release date: NOW ON SALE

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