「Man」と一致するもの

XOR Gate - ele-king

 昨年2017年はドレクシア関係の動きが目立った年であった。まず、ドレクシア=故ジェームス・スティンソンの変名ユニット、ジ・アザー・ピープル・プレイスの『Lifestyles Of The Laptop Café』が〈Warp〉からリイシューされた。さらにはドレクシアの『Grava 4』(2002)もリイシューした。そうかと思えば元メンバーのジェラルド・ドナルド(とミカエラ・トゥ=ニャン・ バーテルによる)の別ユニット、ドップラーエフェクトが10年ぶりのアルバム『Cellular Automata』を発表する。この作品はオーセンティックなシンセ的な音響を生成・展開しつつも、単なる懐古主義に陥ることなく、現代のエレクトロニクス・ミュージックのモードへと見事に接続されていた。

https://open.spotify.com/album/6Qf0Ot0oJb32jhtBl4L4Ol

 そして2018年、ジェラルド・ドナルドはXOR Gate名義でアルバム『Conic Sections』を送り出す。リリースはベルリンを拠点とするレーベル〈Tresor〉からである(ちなみに〈Tresor〉はSecond Womanの新作EP「Apart / Instant」もほぼ同時期にリリースしているのでそちらもぜひ注目していただきたい)。

https://open.spotify.com/album/3XwsVsVnnRKB3HnKNq3sAd

 ここで重要な点がある。先に記したようにジェラルド・ドナルドは2017年にドップラーエフェクト名義で『Cellular Automata』をベルリンの〈Leisure System〉からリリースしているが、本作『Conic Sections』もベルリンのレーベルからのリリースだ。つまりドイツ発の音楽でもあるのだ。
 その音楽と音響性にはドイツという電子音楽史における重要な土地への深いリスペクトを感じさせるものだ。端的にいえばどこかに(微かに)クラフトワークの影響を感じるのだ。私は不思議とクリス・カーターの新作との親近性を(あちらは多様な短い曲を集めたものだが)聴きとってしまったのだが、思い返してみればクリス・カーターの新譜もクラフトワークの影響を強く感じさせる作品である。つまり、フォームは違えども、どこかドイツ電子音楽への憧憬を強く感じ取れるのだ。これは現在の電子音楽がクラフトワーク的なるものに遡行しつつ例としても貴重な例ともいえよう。これはもちろん原型への回帰ではない。そうではなく、原型の拡張とでもいうべきものだ。

 では、本作における「新しさ」はいかなるものなのか。なぜなら、このアルバむは単なる「懐古」的な作品ではないからだ。クラウトワーク・リヴァイヴァルでもデトロイト・リヴァイヴァルでもない。同時代的な音響のアトモスフィアが濃厚に漂っているのである。それはいかなるものか。
 この『Conic Sections』は、『Cellular Automata』を継承するようにビートレス30分1トラックの長尺曲でもある。とはいえドローンやアンビエントのように一定の音響的な持続が変化していくサウンドではない。このXORでは複数(8つ)のサウンド・モジュールが次第に接続され、展開していく構造と構成になっている。音の数学的結晶体を思わせるトラックを形成しているのだ。
 まず、ユニット名からしてコンピュータの論理回路のひとつ「排他的論理和演算回路」のことを指しており、本作が極めてマシニックな音楽を目指していることがわかる。じっさい、私はマシンのなかにヒトの心が解体されていくかのような感覚を覚えてしまった。「アンビエント・インダスリアル」とでも形容したいほどに。
 しかし同時に、このアルバムの音響には、冷たい鉄の質感に触れたときに感じる独自の「哀しみ」も感じとれた。いわばマシン・ブルースとでもいうべきものである。といってもそれは音階のことではない。デトロイト・テクノを継承する抑圧された(というべきだろう)「感情」の発露といったものだ。いわば機械と心。このふたつの共存と拡散……。
 じじつ、冒頭の緊張と柔軟が交錯するシーケンスのトラックから、その機械と人間の交錯が鳴っている。以降、トラックはマシニティックとヒューマニティが交錯するような断続的なシーケンシャルなトーンへと変化し、まるで深海を潜航するようなムードを醸し出していく。持続と変化。接続と融解。対立と交錯。1トラックを通して変化する世界を形成しているわけだ。ビートの粒子が融解するかのごとき音響彫刻的なフォームを生成しているとでもいうべきか(まるでアクトレスの近作やアルカの作品のように……)。物質と粒子のニュー・マテリアル・テクノの実現である。

 ジェラルド・ドナルドは、たしかにドレクシアを継承し、デトロイト・テクノの本質を受け継ごうとしている。と同時にエレクトロニック・ミュージックを新しい同時代的な音響体へと結晶させようともしている。そのためにサウンドからビートを融解させ、多層的なエレメントが接続される30分のトラックにする必要があったのではないかと思う。
 XOR Gate『Conic Sections』は(2017年のドップラーエフェクトの『Cellular Automat』がそうであったように)、ジェラルド・ドナルドによるテクノロジカルな音響による同時代への研究報告書のようなアルバムである。同時に、この時代の無意識へと拡散する(言葉のない)「詩」のごとき音の結晶体でもある。ヒトとマシンの交錯と融解。その表現の実践と実現において非常に重要なアルバムといえよう。

王舟 & BIOMAN - ele-king

 窓からはそれほど強くない、だがぬくもりに溢れた陽光が差し込んでいる。猫がひなたぼっこをしている。コーヒーの香りが一面に広がる。談笑が聞こえる。喫茶店あるいはちょっとした食堂の昼下がり、それも見知らぬ人ばかりが集う都心のそれではなく、訪れる者たちがみな顔見知りであるようなローカルなそれ。もしかしたらその場では陽気なギターの弾き語りなんかもおこなわれているのかもしれない。これはきっと、気心の知れた友人たちと楽しいひとときを過ごすための音楽なのだと思う。

 今年に入って起ち上げられた〈felicity〉の「兄弟」に当たる新レーベル〈NEWHERE MUSIC〉は、「エレクトロニック・ライト・ミュージック」すなわち「電子的な軽音楽」を標榜している。その栄えある第1弾リリース作品に選ばれたのが、これまで〈felicity〉から作品を発表してきたシンガーソングライターの王舟(NRQの新作にも参加)と、neco眠るや千紗子と純太での活動でも知られるBIOMANによる共作『Villa Tereze』である。エンジニアを務めるマッティア・コレッティは、2006年にイタリアのファエンツァでライヴ録音されたダモ鈴木ネットワークのアルバム『Tutti i colori del silenzio』にも参加したことのあるギタリストで、山本精一や古川日出男、オシリペンペンズらとの共演歴もある。その彼がEP「6 SONGS」でコラボした王舟と来日ツアーをおこなった際に、大阪でBIOMANと出会ったことからこのアルバムの制作がはじまったのだそうだ。王舟とBIOMANのふたりは昨年末、コレッティを訪ねてイタリア中部の小さな町まで足を運び、そこで本作が録音されることとなった。

 その町の名前が冠された冒頭の“Pergola”がこのアルバム全体のムードを決定づけている。その穏やかなギターの調べはどこまでも聴き手に安心感をもたらすが、背後で繰り広げられるさまざまな具体音の饗宴が、たんに本作がひとりきりのメディテイションを目的としているわけではないことを告げている。その姿勢は4曲目“Ancona”のコイン(?)や7曲目“Falconara Marittima”のニワトリ(?)のような微笑ましい種々の具体音に、あるいはギターとドラムがポストロック的な展開を聴かせる8曲目“Senigallia”の、ひねりの加えられたリズムにも表れている。心地良さの追求と手の込んだ音選び、生演奏と電子音との幸福なる融合。アルバムはそして、冒頭と同じ旋律を奏でつつも具体音を排除したギター1本の小品“Tereze”で幕を閉じる。それら本作に仕込まれたギミックの数々は、ミュジーク・コンクレートやアンビエントの手法がけっしてマニアックな好事家だけのものではなく、ふだんJポップにしか触れる機会のないようなリスナーたちにも開かれたものであることを教えてくれる。

 さまざまな趣向を凝らす一方で、どこまでも人間の持つ温かな側面を伝えようとするこのアルバムは、たとえば友だちのほとんどいない僕にとっては、けっして訪れることのない幸せな語らいの時間を擬似体験させてくれる、VRのような作品である。この軽やかにして喚起力豊かなアンビエント・ポップ・サウンドに、あなたもひとつ身を委ねてみてはいかがだろう?


Vincent Moon - ele-king

 パリ出身の映像作家、ヴィンセント・ムーンの名前は、2006年にはじまったウェブ向けの音楽シリーズ「Take Away Show」によって広まった。「Take Away Show」ではミュージシャンを街の至る所へ連れ出し、彼らの素顔を捉えたリアルな映像を収めている。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLB11F2A75B21884EC&feature=plcp

 ちなみに現在彼は、2019年の実施を目指し、日本のシャーマニズムや伝統音楽を追いかける「響 HIBIKI」プロジェクトの準備をすすめている。
 牧野貴もまた、映画、音楽、インスタレーション、オーディオビジュアルパフォーマンスなど多分野で活動し、ジム・オルーク、大友良英、坂本龍一など著名な音楽家とのコラボレーションも活発に行っている映像作家。3台のプロジェクターから作られるイメージの重なり合いが幻想的だ。

(『ENDLESS CINEMA』音楽:ジム・オルーク2017)

 当日は、ヴィンセント・ムーンと写真家で作家のプリシラ・テルモンによるライブ・シネマと、牧野貴 によるライヴ・パフォーマンスが予定されている。
 映像詩人たちによる当日限りの特別プログラムに足を運んでみてはいかがだろうか。

■ FOUNDLAND feat. VINCENT MOON + 牧野貴

2018年6月11日(月)@ VACANT
18:30 open / 19:00 start
前売 3,500yen / 当日 4,000yen(+1D別途)

出演:
Vincent Moon & Priscilla Telmon
牧野貴
音響:福岡功訓(Fly sound)
予約:https://foundland.us/archives/1961
イベント詳細:https://foundland.us/archives/1961

Vincent Moon web site:VINCENTMOON.COM
響HIBIKI project web site:https://hibikiproject.com
牧野貴 web site:https://makinotakashi.net/
Priscilla Telmon web site:www.priscillatelmon.com

Grouper - ele-king

 点々のグリッド(Grid Of Points)──グリッドとは、網や格子、基盤目のようなものを意味するから、そもそもグリッドは線であり点ではない。が、点々のグリッド──この不思議な題名は、これまでのリズ・ハリスの作品において、『丘の上に死んだ鹿を引きずりながら(Dragging A Dead Deer Up A Hill)』や『ボートで死んだ男( The Man Who Died In His Boat)』『廃墟(Ruins)』のような具象的なイメージを喚起させる言葉とは違っている。『A|A』のように抽象的だ。しかしこのアルバムから聴こえる音/歌は、ある意味まったく変わることのない彼女のものだ。そこでぼくたちは、世界でもっとも孤独なフォーク・ソングと言いたくなる感情を抑えながら話を進めなければならない。

 情緒障害ははじまった
 私が扉を開けることのできなかったその夜
 外からロックされていたから
 私は泣き叫んで悪魔になった
 ふちに身体を叩きつけて
 ドアノブに力を込める
 根元がゆるくなるまで
 そして私の血は床にしたたり落ちる
“BIRTHDAY SONG”

 歌詞を訳せたのは彼女にしては珍しくこの曲のみ歌詞を掲載しているからだが、それにしてもこの国は、ネイティヴでも聞き取りが困難だと思われるほど歌にエフェクトがかけられている。もともと彼女の歌は、歌らしからぬ歌というか、歌としての輪郭が煙か水に浸した水彩画のように茫洋としているのだが、とはいえほかの歌は、これまでの彼女の作品においては抑揚があると言えるだろう。彼女がポップ・ソングに近づくことは500%考えられないが、少し前までを思えば、歌としての体はあるといえばある。前作『Ruins』に引き続き、ときおりフィールド・レコーディグや抽象音などがミックスされるものの、楽曲を構成するのは歌らしからぬ歌と簡素なピアノの伴奏だ。

 それにしてもなぜリズ・ハリスは、“BIRTHDAY SONG”のみ歌詞を掲載したのだろう。記憶は点である。グリッドとは時間のことだろうか。

 グルーパーは、OPNやハイプ・ウィリアムスやティム・ヘッカー、あるいはザ・ケアテイカーなどなどが注目されはじめたほぼ同じ時期に注目されたひとりだった。フリー・フォークの流れで登場したアーティストで、呟きと歌の境界線上をぼやかしながら彷徨うかのようなその作風は、ドローン・フォークなどと呼ばれもした。いくつかの作品のジャケットにプリントされた女性の写真はすべて彼女以外の人の写真だった。2012年に来日して、その幽居なたたずまいと超現実的な静けさで、そこにいることができたじつに幸運なオーディエンスにとって忘れがたい演奏を披露した。いま思えばよくあのとき取材できたものだ。彼女ほどの厭世主義者めいたひとを。

 そして、こうして〈クランキー〉から新しいアルバムをリリースしてくれた。全8曲、全体でわずか22分少々という平均からすればずいぶん短いアルバムではあるが、だから注意深く聴かないといつの間にか終わってしまう。そのかわりにこの音楽に集中すると、やかましかった世界は静まりかえり、スローモーションになる。リズ・ハリスにしか作れない歌とはいつもそういうものだ。

Novelist - ele-king

 デビュー・アルバム『Novelist Guy』をリリースしたノヴェリスト。これまでマムダンスとのコラボEPを2014年に〈XL・レコーディング〉よりリリース、スケプタのヒット・アルバム『Konnichiwa』への参加、チェース&ステータスの客演など印象的なコラボレーションをいくつも重ねてきている。その注目のデビュー・アルバムは何回かの発売延期の末、自身のレーベル〈ウーンイェア・レコード〉(Mmmyeh Records)からのリリースとなった。ほぼ全曲をノヴェリストが制作し、グライムのBPM140からラフサウンド(BPM160)までと幅を広げた。浮遊感のあるシンセが奏でるもの悲しげな雰囲気、モノトーンでエネルギッシュなラップが独特のサウンドを鳴らしている。
 もしノヴェリストのエネルギッシュなスタイルを知りたければ、まず“マン・ベター・ジャンプ・アップ”や”ノヴ・ウェイト・ストップ・ウェイト”を聴いてみればいい。ソウルが滲み出るラップ、歪んだキックと無骨なビートが組み合わさり、鋭くもポップな曲となっている。アルバムはそれだけではない。より重要なのは、若干21歳のノヴェリストがロンドンの同世代の若者に向けられたメッセージにあると思う。

 伝えられる情報は間違っている
 だからおまえ自身でおまえの欲するものを学べ
 そう、欲するものを学ぶんだ
“ドット・ドット・ドット”

 2曲目“ドット・ドット・ドット”には、ロンドンの若者を夢中にさせるノヴェリストからの責任感あるメッセージが込められている。彼はこの曲で、「自分で考えて行動しろ」と伝えている。だからといって、彼は上から目線で、聖人君主のようにロンドンの若者に教えを説いている存在ではない。ノヴェリスト自身が「俺らにはギャングスタのやり方しかわからない」と告白する3曲目“ギャングスタ”は、ノヴェリスト自身がギャングスタ、反抗的な若者の側であると主張する。

 ビッグボス・スピッター、それが俺のなるべき者
 フッドで生まれ育った、俺の邪魔はするなと奴らに言ってやらなきゃな
 郵便番号(コード)にこだわる、実はそれが俺のポリシー
 ギャングスタとしてそこは誠実にやるって自分に言い聞かせる
“ギャングスター”

 ノヴェリスト自身が、先日ツイッター上で「このアルバムがiTunesにエクスプリシット・マーク(Explicit)*を付与されたこと」について強く抗議していた。じっさい『Novelist Guy』には性的な表現やNワードのような露骨なスラングは一切使われていない。抗議の背景には、注意深く言葉を選び、スラングや“汚い”言葉を使わずに若者に広くメッセージ届ける、ロールモデルたる姿勢が感じられる。

 俺は明確なヴィジョンを持ったきちんとした大人
 俺みたいに考えたいか、なら聞いておけ
 俺は与えられたものを受け取る奴じゃない
 選択肢が見えないときでも選択肢が見える
 太陽が登って落ちる訳ではない、地球が回ってるんだ
 俺には光と闇が見える、
 輝きがないときでもそこに光はある
“アフロピック”

 この曲は、アフロの櫛(Afro Pick)を自身のブラックネスを象徴する存在として取り上げているのだろうか**。そこで語られるのは、黒人の若いギャングスタでありながら、違う考え方でものごとを捉える姿勢、それによってなるべき姿に近いているということだ。
 次の“ストップ・キリング・ザ・マンデム”でも、ブラックネスは強く意識されている。マンデム(Mandem)はロンドンの黒人の間でよく使われているスラングで、マン(Man)とほぼ同じ意味だが、「友だち」とか「身内」というようなニュアンスが含まれている。つまり、俺の友だちとか俺の身内を殺すな、というメッセージなわけだ。“ストップ・キリング・ザ・マンデム”という言葉は、ロンドンのブラック・ライヴス・マターの運動でノヴェリスト自身がデモ中に掲げたプラカードのメッセージでもあった。彼は世界中で黒人がターゲットされて警察に暴力を振るわれていることを問題視し、黒人を潜在的な意味で危険視するメディアにも厳しい目線を向けている。
 https://www.instagram.com/p/BhhYei2HVhs/

 法を破ることは文化のせいじゃない
 法を破ることは社会のせいじゃない
 問題にガンフィンガーを立てたからといって、
 俺はしょっぴかれる訳じゃないだろ
 黒人は世界的にターゲットになっていて
 ニュースはまるで俺ら自体のせいみたいに扱う、
 それは遠く、ローカルで起きていることみたいに話しやがる
 問題は、俺がこの問題について話すからって訳じゃないだろ
 少年が反社会的になるのは、
 彼らがもっと人生をソウルフルに過ごしたいってことなんだ
“ストップ・キリング・ザ・マンデム”

 ここで彼がBLMついて話すことは、なにも大文字の「政治」について話すことだけではない。彼の周りの若者やギャングスタについて話すことなのだ。
 アルバムの後半ではライヴのエネルギー溢れる雰囲気の曲が続き、スキットではインターネットラジオでのMCとのセッションの様子が垣間見える。(これがまためちゃくちゃ速射のラップで凄い)
 そして、ラストソング“ベター・ウェイ”のふたたび内省的なリリックでこのアルバムを締めることになる。ここでは、“アフロピック”で出てきた太陽の喩えが再び登場する。先ほど太陽は人生に選択肢を与える存在として出てきたが、ここではイナーピース***を象徴している。

 陽が落ちる。いい気分だ、疲れ切っていない。
 空を見上げる、理由はわからないが、頭は雲のうえにある
 疑いようもない、俺のエネルギーが尽きることはない
 俺は俺のギャングスタにリアルであり続ける、
 俺たちのママに俺らを誇らしくする
“ベター・ウェイ”

 『Novelist Guy』にはノヴェリストから団地の若者へ、ロンドンの黒人へ、ギャングスタへ向けられたポジティヴなメッセージが詰まっている。そう、アルバムのジャケットのように、彼らの頭上にいつか陽が昇り、光が照らすように。


* 教育的に問題のあると見なされた露骨な表現が含まれるというマーク、iTunes版のParental Advisory
**彼は最近アフロピックを刺したままフリースタイルをしている。
https://www.youtube.com/watch?v=AujWZ-SVsXM
***精神が落ち着いていて、内面的に落ち着いたな状態

Huerco S. - ele-king


Pendant
Make Me Know You Sweet

West Mineral

Ambient Musique ConcrèteExperimental

Bandcamp

 かつてOPNの〈Software〉からファースト・アルバムを発表し、以降その独特のロウファイなサウンドで10年代のエレクトロニック・ミュージックに一石を投じてきたフエアコ・エスことブライアン・リーズ。今年の頭には新たにレーベル〈West Mineral〉を起ち上げ、ペンダント名義の新作も発表したばかりの彼がこの5月、なんとも絶妙なタイミングで来日を果たし、東京・大阪・富山をめぐる全4公演のツアーを開催する(5/11と5/12の公演では、フエアコ・エスと共演者のアンソニー・ネイプルズによるカセットテープも販売されるとのこと)。そんな来日直前の彼が急遽われわれの取材に応じてくれた。以下その言葉をお届けしよう。


Central park 2017, credit: Mathilde Chambon

まずHuerco S.という名義についてなのですが、発音が難しく、日本語で表記するとしたら「ホアコ・エス」でしょうか?

Huerco S.(以下、HS):いろんな発音で名前が呼ばれるのを僕自身とても楽しんでいるよ。イタリアのナポリ語が由来で、正確には「フー・エア・コ・エス」さ。

カンザスシティご出身とのことですが、どのような街なのでしょう? その街はあなたの音楽に影響を与えていると思いますか?

HS:生まれ育ったのはカンザスシティではなく、そこから車で1時間ほど離れたユーポリアという郊外なんだ。19か20のときに街のほうに移ってから、いわゆる「シティライフ」と呼ばれるものを体験するようになって、週末は友だちと一緒に、倉庫で開かれるとあるレイヴ・パーティに遊びに行ったね。あそこで初めて、テクノやクラブ・ミュージックとか、そういった類の音楽に触れたんだ。

音楽を作り始めることになったきっかけはなんでしたか?

HS:10代の頃にバンドをやっていたんだけれど、17歳のときに他のメンバーたちとうまくいかなくなって、それぞれが自分のやりたいことにシフトしていったんだ。ちょうどそのとき、叔母を訪ねてフランス旅行に出た前のバンドのドラマーが戻ってきて、向こうで覚えたドラムンベースとエクスタシーを僕に教えてくれてね。それからすぐに、FL Studioの初期のソフトをネットからタダで拾ってきて、母親のパソコンでいじるようになったのさ。そこから始まってもう10年以上、自分がいわゆる「エレクトロニック」な音楽を作り続けているなんて信じられないね。

現在の活動の拠点はニューヨークですか? 他のニューヨークの実験的なエレクトロニック・ミュージックの作り手たちとは交流があるのでしょうか?

HS:ああ、いまはクイーンズのリッジウッドに住んでいるよ。人が集まるという意味ではニューヨークはたしかに途方もなく大きな都市に見えるけれど、「シーン」自体はそこまで大きくはないんだ。僕がプレイするのはおもにヨーロッパで、じつはそれほどニューヨークですることはないんだけれど、たくさんの友だちのミュージシャンが地元に関わっているし、街にいるときは彼らと一緒にプレイしているよ。全体的に見てアメリカは、複数のシーンがまとまるよりも、個々の部族意識みたいなものが強いと思うけれど、それもいま変わりつつある。ノイズやパンク、メタルといった音楽と、テクノの境界がニューヨークではもはや消えつつあるというひとつの例のようにね。

あなたの音楽にはロウファイさ、あるいはくぐもった感じ、こもったような感じがあります。そのような音色を追求するのはなぜですか?

HS:僕自身もわからないよ。はじめはいくつかのプロセスを経て、そういった誰かが作った「既存」の音を模索していたけれど、いまはもう自身の一部だから。音と自分が一体になっているというか。音がそのままの僕を表しているのさ。


Kansas city 2017, credit: Mathilde Chambon

1月にはPendant名義で新作『Make Me Know You Sweet』がリリースされましたが、そこではミュジーク・コンクレートの手法も導入されており、鳴っている音がこれまでとは異なっているように感じました。本作のリリースにあたって新たにレーベル〈West Mineral〉も立ち上げていますが、音楽家として何か大きな変化を迎えたのでしょうか?

HS:それほど大きな変化はなくて、より純粋に音の探求を拡げていった結果さ。ミュジーク・コンクレートにはたしかに影響を受けている。この2年半多くの時間をパリで過ごして、僕の彼女のおかげで、音楽を超えた音の世界に興味を持つようになったんだ。
このPendantでの作品は、しばらく時間をかけて僕がこれから向かおうとしているものだ。前作の『For Those Of You Who Have Never』(2016年)をリリースしてから、僕を気に入ってサポートしてくれた人たちには感謝しているけれど、これからは「アンビエント」的と言われるような安らぎのあるものではなく、メロディから離れて、より深い音を掘り下げていきたい。ダークなものを作りたいね。

そのアルバムの曲名はすべて記号になっていますが、これには何か意味があるのでしょうか?

HS:架空の空港コードなんだけれど、取り立てて意味はないよ。

音楽には聴き手を楽しませたりリラックスさせたりする側面と、聴き手に何かを考えさせる側面があると思うのですが、ふだんあなたはどのように音楽を聴いていますか? たとえば「自分ならこの音はこうする」のように職業的な耳で聴くのでしょうか?

HS:どちらの側面からもだね。それは聴いている音楽にもよるし、聴いている時に頭の中で考えていることにもよると思うよ。ここ8ヶ月はほとんどハウスやテクノには触らず、トラップやメンフィス・ラップ、デスメタルをよく聴いていて、それぞれから思いつくことがいろいろあった。現行のヒップホップも純粋に好きだし、新しいアイデアを発見できるという理由もあってよく聴くね。そうしたものをポップ・ミュージックだと一言で片付けて無視する人もいるけれど、頭でっかちな電子音楽よりもはるかに未来的だし、真実味があると思う。

あなたはHuerco S.やPendantの他にもRoyal Crown Of Swedenという名義ではハウスを作っていますが、それぞれの名義にはコンセプトやテーマがあるのでしょうか?

HS:プロジェクトの名前はすべてオリジナルがあって、それぞれに異なった意味があるのさ。たとえばMio Mioのレコードはリカルド・ヴィラボロスのスタイルのようなものを作りたくてあの名前を思いついたし、The Royal Crown Of Swedenは祖母のスウェーデンの家系と、フランスのハウスのレ・ナイト・クラブとクリムダールに敬意を評してつけた名前。Loidisはリーズという街のもともとの名前に由来しているよ。

ファースト・アルバムの『Colonial Patterns』(2013年)はOPNの〈Software〉から発表されましたが、そのときは彼からオファーがあったのでしょうか?

HS:うん、あのレコードは、あのときの他の作品と同じように、SoundCloudがきっかけだった。ダニエル(・ロパティン)のアカウントからダイレクト・メッセージを送ってくれて、リリースすることになった。そのときすでに僕は彼のファンで、カンザスに住むひとりの男子がOPNと一緒にレコードを作れるなんて、ほんとうに光栄だったよ。

その後のOPNの音楽は聴いていますか? 彼の音楽についてどう思いますか?

HS:KGB ManChuck Person名義の初期作品、それにローランドのJunoを使った作品はすべて大好きだよ。『R Plus Seven』を出して以降は、個人的にはあまり興味のない方向に行ってしまったけれど、彼のことは尊敬してる。

音楽家としてのいまのあなたを形作る契機となった、重要なアーティストを教えてください。

HS:エリアーネ・ラディーグ、アクトレス、ヴラディスラフ・ディレイ、ミカ・ヴァイニオ、ジャマール・モス、エレクトロ・ミュージック・デパートメント、スリー・シックス・マフィア、ロバート・アシュリー、トーマス・ブリンクマン、ジョン・ハッセル、横田進、マーカス・ポップ、キャバレー・ヴォルテール、リュック・フェラーリ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、DJスクリュー、ウォルド。

あなたの音楽をひとつのジャンル名で括るのは難しいですが、アンビエントからは大きな影響を受けているように思います。ブライアン・イーノが創始した「アンビエント」というスタイルまたはコンセプトについてはどうお考えですか?

HS:多くのアーティストは既存のカテゴリに分類されるのを嫌うけれど、聴き手の観点から見て、その気持ちはとても理解できるよ。ただ僕はブライアン・イーノのような、クラシックで、BGM的な発想のアンビエントを作りたくて始めたわけではないし、むしろそうした既存の概念を拒むようなものを作りたいと思っている。
Pendant名義のアルバムをBoomkatが「中間の音楽(Mid-ground Music)」と称してくれたけど、それこそがまさに自分の追求したいものなんだ。音楽のヒーリング力は無視できないし、自分も恩恵を受けているけれど、いわゆる「無害」や「和やか」、「静けさ」みたいな言葉で形容できるような、アンビエントのクリシェには陥りたくないのさ。


Tokyo,liquid room 2015,credit: anthony naples

今度の5月23日、ブルックリンで高田みどりと共演されますね。昨年は彼女の作品がリイシューされ話題となりましたが、彼女の音楽はどのようなところがおもしろいと思いますか?

HS:彼女の音楽はとてもクリエイティヴで、パフォーマンスにも強いエネルギーを感じる。一緒に演奏できることが嬉しいし、何より人びとが彼女の作品にふたたび注目を集めていることを光栄に思う。ときを経ていろんなアーティストやスタイルが繋がっていくということにはすごく興味があるんだ。

昨年は他にも吉村弘がリイシューされたり、あるいはヴィジブル・クロークスのアルバムが人気を博したりと、アンビエントやニューエイジが盛り上がりましたが、ご自身の音楽もそういった潮流とリンクしていると思いますか?

HS:僕の音楽が吉村弘や、当時の日本のアンビエント・ミュージックに大きな影響を受けていることはたしかだ。前作の『For Those Of You Who Have Never』を聴けばメロディに軸を置いていることからもわかるようにね。でもそれがすべてではなくて、あらゆるところからインスピレイションを受けているよ。

(質問:小林拓音 翻訳:◎栂木一徳)(「◎」は木へんに父)

Huerco S.(フエルコ・エス)来日情報

■5/11(金) UNIT
C.E presents

ANTHONY NAPLES & HUERCO S. (B2B)
LOW JACK
NGLY (Live)
KEITA SANO (Live)
DJ HEALTHY
CHANGSIE
JR

※Anthony NaplesとHuerco S.のカセットテープ販売もあり。

Friday 11 May 2018(2018年5月11日金曜日)
Open / Start: 11:30 PM
Venue: UNIT www.unit-tokyo.com
Advance ¥2,800 / Door ¥3,500
Tickets available from Resident Advisor / Clubberia / e+
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います (Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

■5/12(土) CIRCUS Osaka
C.E presents

ANTHONY NAPLES & HUERCO S.
LOW JACK

※Anthony NaplesとHuerco S.のカセットテープ販売もあり。

Saturday 12 May 2018(2018年5月12日土曜日)
Open / Start: 11:00 PM
Venue: CIRCUS Osaka circus-osaka.com

Advance ¥2,500 / Door ¥3,000
Tickets available from Resident Advisor / Clubberia / Peatix
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います (Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

■5/13(日) The local
The Local presents Anthony Naples B2B Huerco S.

[Guest DJ]
Anthony Naples & Huerco S.
[LOCAL DJ]
DJtaiki/CJ/□△○

Open / Start: 18:00 PM
Venue: The local
Entrance: ¥2,500

■5/17(木) SuperDeluxe
Huerco S. Live with Yoshio Ojima & Satsuki Shibano and Ultrafog

[Live]
Huerco S.
尾島由郎 & 柴野さつき
Ultrafog
[DJ]
荒井優作
Refund
DJ Healthy

開場 / 開演: 19:00
会場: SuperDeluxe www.super-deluxe.com
料金: 予約¥2,500 / 当日¥3,000(ドリンク別)
チケット予約: スーパーデラックス / RA

interview with Joe Armon-Jones - ele-king


Joe Armon- Jones
Starting Today

Brownswood/ビート

JazzSoulFunkAORDubBroken Beat

Amazon

 ジョー・アーモン・ジョーンズは、UKジャズの新世代を代表する20代半ばのピアニストであり、先日リリースされた彼のデビュー・アルバム『スターティング・トゥデイ』には、いままさにはじまりの真っ直中にいるUKジャズの前向きなヴァイブレーション/喜びが詰まっている。いち音楽ファンとして、こうした新しい音楽にワクワクできるのはこのうえない幸せだとつくづく思う。
 そもそも昨年リリースされた「Idiom」がいまだ12インチにしがみついている粘り強いファンのあいだで話題になった。マクスウェル・オーウェンとの共作になるこの6曲入りは、ジャズ・セッションによる(つまり即興性のある)ハウス・ミュージックで、ディープ・ハウスやデトロイト・ビートダウン系のファンからロバート・グラスパー/サンダーキャットが好きなリスナーまで虜にした。自慢じゃないが、ぼく(=野田)もそのヴァイナルを所有している。というのも、アーモン・ジョーンズの音楽には、若さや勢いだけではない、極上のメロウなフィーリングがあるからだ。嘘だと思うなら、アルバム2曲目の“Almost went Too Far”を聴いて欲しい。
 無論のことUKジャズ印の雑食性はある。アルバム『スターティング・トゥデイ』を聴いていると、この2年ほどの音楽トレンド(フュージョン、ハウスなど)も見えるだろう。ただいま絶賛制作中の別冊エレキングのジャズ特集号には、アーモン・ジョーンズのインタヴューも掲載されているが、紙メディアゆえにカットせざるえない部分があった。せこい考えだがそれはもったいないし、アシッド・ジャズ以来の活況を見せているUKジャズの逆襲、その第一弾としてお届けすることにした。質問は菅澤(ブルシットのドラマー)がほとんど考えてくれた。

チック・コリアに影響を受けたとお聞きしました。彼はオーセンティックな4ビートのジャズからエレクトリック・マイルス・バンドの脱退後に結成したサークルでのフリージャズ、そしてリターン・トゥー・フォーエヴァーでのプログレッシヴなフュージョン的アプローチまで、その音楽性は幅広いですよね。彼の音楽のどんなところに影響を受けたのでしょうか?

JAJ:難しいな。僕はもちろん、チック・コリアの大ファンで……うまく言えないけど、彼のチューンを聴けばもうすぐに、彼だってわかるんだよね。彼のスタイルはそのくらいユニークなんだ。どんなことをやっていても。ハービー・ハンコックみたいな人とプレイする時でさえ、それが伝わってくる。本当にユニークな彼独自のスタイルがあるってことなんだ。そこじゃないかな。

UKにはジョン・テイラーやスタン・トレイシーをはじめとした素晴らしいピアニストがいますが、UKのジャズ・ピアニストで影響を受けた人はいますか?

JAJ:大勢いるよ。いまだったら、サラ・タンディ(Sarah Tandy)とか。ものすごいピアノ・プレイヤーで、イカレてるっていうか、クレイジーなんだよね。アシュリー・ヘンリー(Ashley Henry)っていう人もいる。うん、正直言ってロンドンのピアニストで僕が今好きなのは、その二人。でももちろん、他にも大勢いて……ロバート・ミッチェル(Robert Mitchell)も驚異的なピアノ・プレイヤーだし、デイヴ・コール(Dave Koor)も。彼はジ・エクスパンションズ(The Expansions)っていうバンドでやってる。最高だから、チェックする価値があるよ。うん、今は大勢才能のある人たちがプレイしてる。

現在のロンドンのジャズ・シーンを語るうえで〈jazz re:freshed〉の存在はかなり大きいと思います。ここで演奏されているジャズはオーセンティックなジャズに対するカウンターとしての側面もあるように感じるのですが、そういった意識はあると思いますか?

JAJ:うん。僕自身はあんまりそれぞれの音楽に定義とか、名前を付けすぎたくないんだけど、〈jazz re:freshed〉にはもちろん……『独自のサウンドがある』とは言いたくないな。むしろ、もともとジャズにはなかったようなサウンドを受け入れてるんだよ。ストレートなジャズ以外のサウンドを受け入れてる。他のサウンドをプッシュしてるんだ。そこが大きな違いを作ってると思う。例えば、僕らが最初に始めた頃、〈jazz re:freshed〉ではどんなバンドでもプレイできるチャンスがあった。彼らがその音楽を気に入って、好きになれば、自分たちがやりたいことがやれたんだ。〈jazz re:freshed〉をやってるアダム(・モーゼズ、Adam Moses)とジャスティン(・マッケンジー、Justin McKenzie )にはギグに来る観客とかからもたくさんリクエストが来てるはずなんだけど、実際、彼らは自分たちが気に入った音楽をギグに出す。それだけなんだ。

“Starting Today”で歌っているラス・アシェバーはどんな人なんでしょう? その場の即興ということは、彼があの歌詞を書いたんでしょうか。

JAJ:彼が“書いた”っていうより、フリースタイルでやったんだよね。彼がスタジオにいて。あれはかなり遅い時間、その日のセッションを終えようとする頃だった。アシェバーはその時間まで来られなかったんだけど、僕らはその日ずっと“スターティング・トゥデイ”のインストゥルメンタル部分をレコーディングしてた。で、アシェバーが夜の7時頃来たのかな? で、セッションの最後にワンテイク録ってみよう、って。彼の場合ワンテイクで十分だしね。彼にトラックを聞かせる暇もなかったし、今どうなってるかよく説明もしないまま、セッティングして始めたんだ。そしたら彼がその場であのフレーズを歌いだしたんだよ。

英語が苦手なので教えて欲しいのですが、たとえば表題曲の“Starting Today”ではどのような詞が歌われているのでしょうか? またそれぞれの曲の詞はその曲のヴォーカリストが書かれているのですか?

JAJ:うん、そう。僕が歌詞を渡して、シンガーに歌ってもらうなんてできないからね。歌うっていうのは、すごくパーソナルなことだから。“スターティング・トゥデイ”では、アシェバーが最後の方で『アシェオ』って繰り返すんだけど、あれは『生まれ変わる』って意味なんだ。生まれ変わって、再び始める。曲自体、新たにもういちどはじめること、新しい旅をはじめることについてなんだ。歌詞っていうのはもちろん、それぞれの人に違う意味を持つものだけど、僕にとってあの曲はそれについて歌ってるんだよ。

“Almost Went Too Far”はアルバムのなかでもAOR寄りの曲ですよね。この曲では自身が歌われていることもあって、MndsgnやサンダーキャットといったLAのミュージシャンと共振する要素を感じさせますが、彼らの音楽はあなたにとってどんな存在ですか? またAORで好きなミュージシャンはいますか?

JAJ:彼らのことは大好きだから、そう言ってもらって嬉しいね。どんな存在かっていうと難しいけど……彼らの音楽で一番好きなところ、もっともインスパイアされるところのひとつは、彼らは特に訓練を受けたシンガーとかじゃないんだけど、自分の言葉を音楽に乗せられる。そこがクールなんだ。あとホーム・スタジオで作られてて、サウンドに手作り感があるし。だから、そう、僕も自分の音楽を外に出せる、っていう自信を与えてくれたような存在かな。

サウス・ロンドンのジャズを聴いているととくにドラマーがアフロビートの影響が強いように感じます。今回のアルバムに参加しているモーゼス・ボイドもトニーアレンからアフロビートのレクチャーを受ける動画があがっていたりもしますが、あなたにとってアフロビートの魅力は?

JAJ:もちろん、エズラ・コレクティヴを通して、アフロビートの影響は僕も受けてる。でも、僕より通じてる連中がいるから。実際、エズラ・コレクティヴのフェミ(・コレオソ、ds.)、TJ(・コレオソ、b.)、ディラン(・ジョーンズ、Tp.)、ジェームズ(・モリソン、sax.)もみんなフェラ・クティやそのあたりの音楽にすごく影響されてるんだ。だから、あのリズムは確実に僕にも大きな影響を与えてる。アルバムでプレイしたドラマーも当然そうだし……ただ僕にとっては個人的に、このアルバムではダブやサウンドシステム・カルチャーからの影響の方が大きいんだ。でもアフロビートの影響ももちろんあるし、実際、影響されない方が難しい。ただ今回は、サウンドシステム・カルチャーの方が前面に出てると思う。

”Ragify ”に参加しているBIG SHARERについて調べたのですが、ほとんど情報を集められませんでした。彼はラッパーとして活動しているのですか?

JAJ:彼もサウス・ロンドンでやってて……ビッグ・シェアラーはルーク・ニューマン(Luke Newman)としても知られてるんだ。〈STEEZ〉っていうイベントをオーガナイズしてて、僕らも出たことがあって。あと、彼はサウスポートっていうバンドもやってた。すごく面白い男で、彼とはギグを通じて知り合ったんだ。実際、僕は彼がオーガナイズしたギグでいろんなミュージシャン、いろんな人たちについて知ったし。彼はサウス・ロンドンの音楽シーンが盛り上がってきた頃からずっとやってるんだ。しかもものすごく才能があって、歌も歌える。“Ragify”ではラップしてるけど、アウトロ・トラックで歌ってるのも彼なんだよ。

最後の曲”OUTRO (FORNOW)”からはディアンジェロの影響を感じさせますが、いかがでしょうか?

JAJ:もちろん、そうだね(笑)。とくにサウンド・プロダクション。ヴォーカルのレイヤーがたくさんあって、いろんなことが起きてる、っていう。あのトラックで歌ってるのはビッグ・シェアラー、ルークと、あとエゴ・エラ・メイ(Ego Ella May)っていう女の子も歌ってるんだ。素晴らしいシンガーだから、彼女はチェックした方がいいよ。若いシンガー・ソングライターで、EPが6月に出るはず。きっとすごい作品になると思う。彼女は僕の家に来て、ほとんどの曲でバッキング・ヴォーカルとかをやってくれたんだけど、“アウトロ”は彼女とルークのヴォーカルを混ぜたものになった。それが気に入ってるんだ。

※UKジャズの逆襲(2)に続く……

惑星観測 - ele-king

 おかげさまで好評をいただいております『ボーカロイド音楽の世界 2017』ですが、その刊行を記念してなんと、トーク・イベントが開催されます! 出演は、同書の監修を務め、またweb ele-kingのレヴューでもおなじみのしま、そして同書に原稿を寄せてくださったマンボウおよびアンメルツPの3氏。
 当日はボカロとジャズの関係についてや、初音ミクと同じく昨年10周年を迎えた鏡音リン・レンについてなどのトークをはじめ、数多くの楽曲が紹介される予定です。あなたのまだ知らない1曲に出会えるかも。
 5月26日、ぜひ会場まで足をお運びください。

惑星観測
『ボーカロイド音楽の世界 2017』刊行記念トーク・イベント

初音ミク10周年という節目を迎え、大きな盛り上がりを見せた2017年のボーカロイド音楽シーン。その実態を振り返る書籍『ボーカロイド音楽の世界 2017』の出版を記念して、トーク・イベントを開催!

『ボーカロイド音楽の世界 2017』はどのような意図のもと生まれたのか? 2017年はどんな作品があったのか、そして2018年の現在はどんな動きが出てきているのか? 『ボーカロイド音楽の世界 2017』監修者のしま氏とクリエイターのマンボウ氏にゲストを交え、アングラからジャズまで、さまざまな切り口で現在のボカロ・シーンを大観測!


[イベント情報]

会場:ロフトプラスワンWEST(大阪)
日時:5月26日(土)
OPEN 17:00 / START 18:00
出演:しま、マンボウ、アンメルツP

前売り ¥2,000 / 当日 ¥2,500(飲食代別)※要1オーダー¥500以上
前売券はイープラス、ロフトプラスワンウエスト電話予約は4/28(土)10時~発売開始!
■購入ページURL(パソコン/スマートフォン/携帯共通)
https://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002259240P0030001
ロフトプラスワンウエスト電話→0662115592(16~24時)
※ご入場はプレイガイド整理番号順→ロフトプラスワンウエスト電話予約→当日の順となります。

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/87385


[書籍情報]

ボーカロイド音楽の世界 2017
2018年3月14日 発売
ISBN: 978-4-907276-93-5
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4907276931/

[contents]

VOCALOIDはボサノヴァ――an interview with EHAMIC (しま+小林拓音)

The World of Vocaloid Music 2017
ボーカロイドに関する2017年の重要トピック (しま)
初音ミク10周年のトピック (しま)
鏡音リン・レン10周年のトピック (アンメルツP)
まえがき ~みんながよく話す「ボカロ」という言葉~ (ヒッキーP)
2017年は新陳代謝の年 ~初音ミク10周年を祝った旧世代と無視した新世代~ (ヒッキーP)
ぼからんで見る「2017年」という時代 (あるか)

The 50 Essential Songs of 2017 (キュウ+しま)
The 20 Essential Albums of 2017 (キュウ+しま)

Various Aspects of Vocaloid Music
ボカロとジャズ (Man_boo)
ボーカロイド・アンダーグラウンド (ヒッキーP)
中国ボーカロイド・シーンの発展と現状 (Fe+しま)
VOCALOIDタグ動画におけるニコニ広告の拡大とそのランキングへの影響 (myrmecoleon)


[CD情報]

合成音声ONGAKUの世界
2018年3月14日 発売
PCD-20389
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0797M1GSY/

[tracklist]

01. 春野 「nuit」
02. Treow 「Blindness」
03. piptotao 「春 etc.」
04. 羽生まゐご 「阿吽のビーツ」
05. 拓巳 「Kaleidoscope」
06. cat nap 「ぺシュテ」
07. 鈴鳴家 「フリーはフリーダム」
08. 松傘, mayrock, sagishi, 緊急ゆるポート, trampdog 「人間たち」
09. でんの子P 「World is NOT beautiful」
10. のうん 「箒星」
11. ぐらんびあ 「孤独、すべて欲しい」
12. キャプテンミライ 「イリュージョン」
13. Dixie Flatline 「シュガーバイン」
14. yeahyoutoo 「lean on you」
15. Noko 「只今」

Oneohtrix Point Never - ele-king

 先日ニュー・アルバム『Age Of』のリリースがアナウンスされたOPNだが、ついにその詳細が発表されることとなった。同時に新曲“Black Snow”もフルで公開されている。

 公開されたクレジットを確認してまず驚くのは、多くのゲストが参加している点だ。これはOPN名義のオリジナル・アルバムとしては初めてのことである。ダニエル・ロパティンはこれまでもじつにさまざまなアーティストとコラボを繰り返してきたけれど、どうやら『Age Of』にはその経験が直接的に反映されているようだ。

〔新作には〕僕がここ数年、他のアーティストたちのために働いて経験したことに対する直感的で忠実な反応が詰まっているんだ。『Garden of Delete』の後に注目されるようになって、“グロテスク・ポップ”を作った後に、実際にポップ・ミュージックを作るようにもなった。音楽的な労働、つまり、音楽を収獲するということ、つまりは、誰かの音楽的なゴールのために働くということについて考えるようになった。また僕自身についてや、僕の作曲家として、またプロデューサーとしてのアイデンティティについてもね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そのような経験はロパティンにシュルレアリスムを想起させるものだったらしい。オフィシャル・インタヴューにおいて彼は「自分が欲しい音と、他人が欲しいと思うような音との両方を混ぜ合わせたシュールレアリスム的な音の組み合わせは、まるで誰かに切り裂かれたクレイジーな彫刻のようなものになった」と語っている。そのように「労働」と「シュルレアリスム」というふたつの観点を発見した彼は、新作『Age Of』に関して次のように宣言している。

僕はこのアルバムを「ブルーカラー・シュルレアリズム(労働階級のシュルレアリズム)」と呼ぼうと思ってる。 (オフィシャル・インタヴューより)

 じっさいに招かれているゲストたちも興味深い。クレジットにはローレル・ヘイローラシャド・ベッカーの作品への参加で知られるパーカッショニストのイーライ・ケスラーや、昨年『Hopelessness』でハドソン・モホークとともにOPNにもプロダクションを担当させていたアノーニなどに加え、なんとジェイムス・ブレイクの名までもが記載されている。
 なかでも4曲で参加しているアノーニの存在は、このアルバムの成り立ちそのものに関わっているようだ。環境問題をめぐる会話でアノーニを怒らせてしまったロパティンは、それをきっかけに環境について考えるようになり、それこそが本作の始まりとなったのだという。

僕らは欲張りで地球から多くを取り過ぎることになる。自分たちのことしか考えないからね。アノーニの気持ちを傷つけてしまったことからはじまって、もうそうしたくないと思った。そしてなぜ自分が無感覚だったのかということについても考えた。もう少し気遣えるようになりたいし、コンピュータードリームの一端になりたくないんだ。このアルバムはちょっとした警告ようなものなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そして、もっとも驚きを与えるだろうゲストのジェイムス・ブレイクについてロパティンは、「彼とは気が合うんだ。付き合いは長くはないよ。お互いに存在は知っていたけどほとんど話したこともなかった」と振り返っている。OPNは一昨年、ハドソン・モホークとジェイムス・ブレイクとの論争を仲裁しているが、その前年あたりから交流が始まったのだろうか。ともあれ、ブレイクは3曲でプレイヤーとしてキイボードを担当するとともに、アルバム全体のミックスを手がけてもいる。ロパティンは、今回のアルバムのミキサーにはエンジニアではなく自身でも音楽を演奏する人がふさわしいと考え、ブレイク本人に依頼することになったのだそうだ。

彼〔ジェイムス・ブレイク〕は、自分が作ったジェイ・Zの曲をSpotifyで聞いた時、これは正しいミックスじゃないと言ってSpotifyから曲を落とさせて、彼が思った通りの、より良いものと入れ替えさせたって話があるんだ。とてもクールだよね。それに強い。インスパイアされたよ。それで彼にアプローチしてみたんだ。そしたら「いつスタートする?」ってすぐ返事が来て、とてもいいエネルギーを感じた。 (オフィシャル・インタヴューより)

 他方、ブレイクのキイボーディストとしての腕前についてロパティンは、「デレク・ベイリーのような即興演奏者やフリージャズピアニストのようだ」と語っている。「音楽とは何かということに気づかせてくれる。つまり音楽とはアイディアではなく、人から出てくる直感のようなものなんだ」。
 クレジットを眺めていてさらに驚くのは、本作にはなんとロパティン本人の歌までもがフィーチャーされているということだ。「ただ歌が好きなんだ。歌が声を必要とする」と彼は言う。「何を言っているかわかりづらくても、何かしらの意味を発しているというだけで奇跡的だと思うんだ」。前作『Garden Of Delete』では音声合成ソフトのChipspeechが導入されていたが、本作ではオートチューンが用いられている。

僕とアノーニの声を使ってオートチューンやエフェクトをかけてる。声が別のものになるってのがいいんだ。モンスターとか生物が好きだからね。SFとかへの愛情の現れでもあるね。声がリッチで興味深くなる。音の鳴り方自体が物事を説明できてしまうほどパワフルになる。その一方で何も伝わらなかったとしてもオブジェになるというようなパワーもある。声の持つ色々な側面が好きなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 サウンド面で言えば、チェンバロのサンプリングが使用されているのも新作の大きな特徴のひとつだろう。先月部分的に公開された新曲にはルネサンス音楽~バロック音楽の要素が表れ出ていたが、それもチェンバロの響きから誘導されたものと思われる。

チェンバロは面白い楽器だ。音楽的なマシーンってのがいい。僕にとってチェンバロは、色々な開発が進んでいた時代に、物事を発展させて世の中を変えようとしていた中で生まれたもので、工業的な強みを持った、バイオリンのような弦楽器の複雑なバージョンだ。開発された当時は、例えばシンセサイザーの音を最初に聴いた時のような衝撃があっただろうね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 コンセプト面もおもしろい。本作にはふたりの哲学者が影響を与えている。ひとりはミハイル・バフチン。彼がラブレーの『ガルガンチュワとパンタグリュエル』について論じた文章(おそらく『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』)を読んだことが、このアルバムを作るきっかけのひとつとなったらしい。

彼〔バフチン〕が本の中で言っていてとても好きな部分があって、それは「歴史は嘘だ」というようなことなんだ。つまり我々が認識している歴史は、混沌とした複雑な世界を注意深く整えて残したもので、真実は街の市場で起こっているということ。人々が笑いあったり、悪いジョークを言っていたりする中にね。それを読んだ時に、すぐにこのアルバムのことが思い浮かんで、その昔の16世紀の時代に同じことを思っていた友達がいたということに気づいて嬉しかったんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 もうひとりはニック・ランドだ。今回公開された新曲“Black Snow”のリリックは、ランドの主宰する研究機関Cybernetic Culture Research Unit(CCRU)が2015年に出版した本(おそらく『Ccru: Writings 1997-2003』)からインスパイアされているのだという(ランドについては、コード9のインタヴューを参照)。

 ……とまあ、このように、今回のOPNの新作は、さまざまな面でじつに興味深い作品に仕上がっているようである。リリースは5月25日。カンヌ映画祭でのサウンドトラック賞の受賞や坂本龍一のリミックス・アルバムへの参加を経て、ダニエル・ロパティンは次にどこへ向かおうとしているのか? 混沌とした現代を象徴することになりそうなこの新作を、しっかりと迎える準備を整えておこう。

最新にして圧倒的傑作『AGE OF』から
自ら監督した新曲“BLACK SNOW”のミュージック・ビデオを解禁!
ジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかに!

アルバム発表と同時に待望の来日公演も発表され、謎めいたトレーラー映像も話題となっているワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、最新アルバム『Age Of』から、初のフル公開曲となる新曲“Black Snow”を解禁! ミュージック・ビデオはOPNことダニエル・ロパティン自らが監督を務めている。さらにジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかとなった。

ONEOHTRIX POINT NEVER - BLACK SNOW
https://opn.lnk.to/BlackSnow-video

本楽曲の歌詞は、イギリス出身の哲学者・著述家であるニック・ランド、そして彼が設立に携わり、90年代に活動した「サイバネティック文化研究ユニット(Cybernetic Culture Research Unit)」にインスパイアされており、我々人間が、いかに混乱に向かうことを運命づけられているかということを突きつける。奇異さとポップネスを絶妙なバランスで同居させ、内臓を貫くようなハーモニーがもたらす心地良さも、異端なミニマリズムが生む緊張感も、すべてが美しいメロディーの海原へと溶け込んでいく。

また今回の発表に合わせて、アルバムの全クレジットが公開され、OPN名義の作品としては初めて、他のアーティストがゲスト参加していることが明かされた。ジェイムス・ブレイクがアルバム全体のミックスを担当している他、3曲でキーボードを演奏、さらにアノーニがヴォーカルで参加している(*OPNはアノーニの最新アルバム『Hopelessness』でハドソン・モホークと共にプロデューサーを務めている)。他にも、ローレル・ヘイローやラシャド・ベッカー、日野浩志郎らとのコラボレーションでも知られる気鋭パーカッショニスト、イーライ・ケスラー、ケレラやブラッド・オレンジ、ファーザー・ジョン・ミスティ作品への参加でも知られるシンガーにしてチェリストのケルシー・ルー、ノイズ・アーティストのプルリエントらが参加。ミックスを依頼したジェイムス・ブレイクについて、ダニエル・ロパティンは次のように語っている。

ジェイムスとうまく仕事ができたのは、ミキシングに必要なのは技術的なことじゃなくて、良いアレンジだという点で同意していたことにあると思う。正しいサウンドが並び合っていればミックスも簡単だ。でも間違った音が並んでクレイジーな場合は、技術に頼らざるを得なくなってくる。スタジオでの判断基準はすべてどうアレンジするべきか、だった。音楽的な視点でのミックス作業で、それこそ僕が必要としているものだった。とても彼が助けてくれたことに満足してるよ。ジェイムスはノッてくるとキーボードも演奏してた。

大型会場パークアベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)で二日間開催予定だったニューヨーク公演が即完したことを受け、ニューヨークでの追加公演、ロンドン公演、そしてデンマーク(ハートランド・フェスティバル)、スペイン(プリマヴェーラ・サウンド)でのフェスティバル出演を経て、9月に一夜限りの東京公演(Shibuya O-EAST)の開催も決定! 売り切れ必至のチケットは、各プレイガイドにて現在絶賛発売中。

公演日:2018年9月12日(WED)
会場:O-EAST

OPEN 19:00 / START 19:30
前売 ¥6,000(税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可

一般発売日:4月21日(SAT)
チケット取扱い:
イープラス [https://eplus.jp]
チケットぴあ 0570-02-9999 [https://t.pia.jp/]
ローソンチケット (Lコード:72937) 0570-084-003 [https://l-tike.com/opn/]
BEATINK [www.beatink.com]

企画・制作:BEATINK 03-5768-1277 [www.beatink.com]

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9577

OPN最新アルバム『Age Of』は、日本先行で5月25日(金)リリース! 気鋭デザイナー、デヴィッド・ラドニックがデザインを手がけたアートワークには、アメリカ現代美術シーンで最も影響力があるヴィジョナリー・アーティストと称されるジム・ショーの作品がフィーチャーされている。国内盤には、ボーナストラックとして、ボイジャー探査機の打ち上げ40年を記念して制作された映像作品「This is A Message From Earth」に提供した“Trance 1”のフル・ヴァージョンが初CD化音源として追加収録され、解説書と歌詞対訳を封入。SF小説家の樋口恭介が歌詞の翻訳監修を手がけている。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Age Of

release date:
2018/05/25 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-570 定価:¥2,200+税

国内盤CD+Tシャツ BRC-570T
定価:¥5,500+税

【ご予約はこちら】
beatink:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9576

amazon:
国内盤CD https://amzn.asia/6pMQsTW
国内盤CD+Tシャツ
S: https://amzn.asia/0DFUVLD
M: https://amzn.asia/4egJ96i
L: https://amzn.asia/g0YdP88
XL: https://amzn.asia/i0QP1Gc

tower records:
国内盤CD https://tower.jp/item/4714438

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music :https://apple.co/2KgvnCD

【Tracklisting】
01 Age Of
02 Babylon
03 Manifold
04 The Station
05 Toys 2
06 Black Snow
07 myriad.industries
08 Warning
09 We'll Take It
10 Same
11 RayCats
12 Still Stuff That Doesn't Happen
13 Last Known Image of a Song
14 Trance 1 (Bonus Track for Japan)


ALBUM CREDITS

Written, performed and produced by Oneohtrix Point Never
Additional production by James Blake

Mixed by James Blake
Assisted by Gabriel Schuman, Joshua Smith and Evan Sutton

Mix on Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen by Gabriel Schuman

Additional production and mix on Toys 2 by Evan Sutton

Engineered by Gabriel Schuman and Evan Sutton
Assisted by Brandon Peralta

Mastered by Greg Calbi at Sterling Sound

Oneohtrix Point Never - Lead voice on Babylon, The Station, Black Snow, Still Stuff That Doesn’t Happen
Prurient - Voice on Babylon, Warning and Same
Kelsey Lu - Keyboards on Manifold and Last Known Image Of A Song
Anohni - Voice on Black Snow, We’ll Take It, Same and Still Stuff That Doesn’t Happen
Eli Keszler - Drums on Black Snow, Warning, Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen
James Blake - Keyboards on We’ll Take It, Still Stuff That Doesn’t Happen and Same
Shaun Trujillo - Words on Black Snow, The Station and Still Stuff That Doesn’t Happen

Black Snow lyrics inspired by The Cybernetic Culture Research Unit, published by Time Spiral Press (2015)
Age Of contains a sample of Blow The Wind by Jocelyn Pook
myriad.industries contains a sample of Echospace by Gil Trythall
Manifold contains a spoken word sample from Overture (Aararat the Border Crossing) by Tayfun Erdem and a keyboard sample from Reharmonization by Julian Bradley

Album art and design by David Rudnick & Oneohtrix Point Never

Cover image
Jim Shaw
The Great Whatsit, 2017
acrylic on muslin
53 x 48 inches (134.6 x 121.9 cm)
Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Black Snow

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music : https://apple.co/2KgvnCD
Spotify : https://spoti.fi/2HZc1kL

Brett Naucke - ele-king

 現代的電子音楽シーンにおいて注目すべきレーベルのひとつ〈ウモール・レックス〉からリリースされたカセット作品『エグゼキュータブル・ドリームタイム』(2016)でも知られるシカゴのモダン・シンセシスト、ブレット・ナウケの新作が、〈エディションズ・メゴ〉傘下にして、元エメラルズのジョン・エリオットが運営する〈スペクトラム・スプールス〉からリリースされた。マスタリングを手掛けたのはベルリンのD&M。ちなみに〈スペクトラム・スプールス〉からは2014年の『シード』以来、2作目のアルバムである。

 ブレット・ナウケの活動歴は(意外と)長い。彼は2007年に自身のカセット・テープ・レーベル〈カトリック・テープ〉をスタートさせ、2010年にマイケル・ポラードのレーベル〈アーバー〉からソロ作品『サザン・カリフォルニア』をリリースしている。
 以降、ブレット・ナウケ自身のアルバムや音源のリリースのみならず、そのレーベル運営によって幾多のアーティストや音源を送り出してきた。いわば00年代末期から10年代にかけてアメリカのモダン・シンセサイザー・ミュージック・シーンを支えてきた人物のひとりといっても過言ではない。

 それにしてもブレット・ナウケのモジュラーシンセを駆使する電子音楽家の音を聴いていると、不思議と「音楽」から遠く離れていく感覚になる。正確には音楽から記憶の層へと遡行するような感覚に陥るのだ。これはいったいどういうことか。
 むろん、ブレット・ナウケの音楽が「音楽的ではない」というわけではない。むしろこの種の電子音楽の中ではニューエイジやアンビエントの要素が適度にミックスされ、とても聴きやすく「音楽的」といえなくもないくらいだ。とはいえ現代において無数に存在するこの種のニューエイジ・リヴァイヴァルなアンビエント・電子音楽作品とはどこか違う気がする。

https://hausumountain.bandcamp.com/album/multiple-hallucinations

 そう、彼の電子音は不思議な官能性がある。まるで「記憶=ノスタルジア」のように。これは興味深い音楽現象である。電子音楽の「モノ=現在性」と「記憶=ノスタルジア」の結晶とでもいうような。
 この新作『ザ・マンション』も同様である。一聴するとシンセに細やかな環境音などがレイヤーされ、天国的ともいえるマテリアルなアンビエント作品に仕上がってはいる。だがその電子音のモノ性のむこうに、感情を淡く揺さぶる記憶の層は煌めいているのだ。モジュラー使いとして知られているブレット・ナウケならではのノイズ音響を生成している「だけではない」点も面白いのだ。

 アルバムには全7曲が収録されているが、中でも冒頭の“The Vanishing”は、そのような「モノ」と「記憶」の層が交錯するような音楽性を象徴するトラックである。電子音のアルペジオ、微かに騒めくノイズ、聖歌隊のような声など複数の音響が複雑に折り重なりつつも、しかし全体として「大袈裟な物語」を描くことはなく、「記憶=ノスタルジア」を遡行するようなミュジーク・コンクレートとなっているのだ。
 続く“Youth Organ”、“Sisters”も同様だが、特に“Born Last Summer”は、シンセサイザーの魅惑と環境音などのマテリアルな質感とノスタルジックな抽象性が同居するトラックに仕上がっている。以降、“The Clocks In The Mansion”、“A Mirror In The Mansion”、“No Ceiling In The Mansion”の3トラックは、まるで記憶の層をコンポジションするような音響空間を生成している。

 それもそのはずで、本作はどうやらブレット・ナウケの子供時代の記憶をイメージしているアルバムなのだ。タイトルの「マンション」も、それに関連しているのだろう。加えて曲名に散りばめられた「オルガン」(Youth Organ)、「妹」(Sisters)、「時計」(The Clocks In The Mansion)、「鏡」(A Mirror In The Mansion)といったワードもまたその家の記憶に関連付けられているのかもしれない。
 つまり本作は、記憶の音響であり、記憶のアンビエントでもあるわけだ。「記憶」と「電子音」が生成・交錯をしていくことで、ある種のオブジェクト感覚が生まれた。たとえば「写真」のように。つまり記憶の定着化である。音響によって生まれる記憶のイマージュ、その結晶。
 マテリアルな魅惑と、記憶(ノスタルジア)への誘惑と横溢。本アルバムに横溢する電子音質感に、そのような物質と記憶がもたらす官能性のようなものを強く感じてしまうのである。

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