「S」と一致するもの

Cornelius - ele-king

 コーネリアスが新たな動きを見せている。デジタル・シングル「夢寝見(ゆめねみ)」が4月29日から配信開始、合わせてコーネリアス自身が制作したAI映像によるMVも公開されている。
 この “夢寝見” という曲はもともとは1989年に発売された井上陽水のシングル曲で、昨秋〈Mule Musiq〉傘下の〈Studio Mule〉から7インチでリイシューされたりと、人気のうかがえる1曲。
 次なる段階へと突入したコーネリアス、今後の動向にも注目です。

デジタル・シングル「夢寝見」
4月29日(水)配信開始
配信URL:https://Cornelius.lnk.to/yumenemi
配信元:ワーナーミュージック・ジャパン

[LIVE情報]
SPARKS・CORNELIUS
5/5(火)SGC HALL ARIAKE

WORLD HAPPINESS 2026
6/28(日)代々木第一体育館 

SUMMER SONIC 2026
8/15(土)MAKUHARI MESSE
8/16(日)EXPO‘70 COMMEMORATIVE PARK

Raja Kirik - ele-king

 インドネシアは、1万7000もの島々から成る、信じがたい構成を持つ国家である。国民性によって統合されてはいるが、静謐なヒンドゥーのバリから、イスラム教徒が多数派を占める過密な大都市ジャカルタ、そしてそのあいだに点在する数多くの驚くべき都市や島々、地域に至るまで、風習や宗教などは極めて多様で独特だ。そこでは、世界中の現在進行形、あるいはかつてのアンダーグラウンド・ムーヴメント(レイヴ、デスメタル、パンクなど)が熱狂的なファンを見出してきた。その結果、ジャンルに対する偏見がほとんどない状態で、多くのユニークなバンドが芽吹き、独自のユニットへと進化を遂げてきた。とくにここ10年ほどの動きは顕著だ。
 レジェンドである「Senyawa(セニャワ)」の名は頻繁に口にされるが、その輝きは「Kuntari(クンタリ)」や「Raja Kirik(ラジャ・キリック)」といった他のバンドとも等しく共有されるべきものだ。ラジャ・キリックは、インドネシアのアンダーグラウンド・シーンを支える中心的なレーベルのひとつ〈YES NO WAVE〉から最新作『Sengkala』をリリースしたばかり。彼らのリリースの大半は同レーベルから出されているが、2021年にウガンダのプログレッシヴなレーベル〈Nyege Nyege Tapes〉から発表した『Rampokan』は、彼らにより大きなプラットフォームと人気をもたらした。その後、2023年にはふたたび〈YES NO WAVE〉からより実験的な録音物『Phantasmagoria of Jathilan』をリリースしているが、2021年に多くの人びとを魅了したあの魔法をさらに発展させたのは、まさに今作。
 『Sengkala』でこのデュオは、レイヴ・ビートに、インドネシアの伝統的なガムランを想起させる金属音や自作楽器の響きをミックスした、いまや彼らのトレードマークとなったサウンドという馴染み深い領域に踏み込んでいる。そこで聴こえる音は、実際にはインドネシア現地のフルートを使用しているにもかかわらず、オーストラリアのディジュリドゥのような響きを想起させる。彼らが作る音のなかには、たしかに伝統的なメロディやビートのパターンを模しているものもあるかもしれない。しかし、それらの音を生み出すために彼らが選んだ手法は、彼らの唯一無二の道筋を物語っている。
 実質的にわずかふたりのミュージシャンによって作られるそのサウンドは、フォーカスと強度の面で、熱狂的なジャム・バンドと大差ないものだ。その響きは、以前にも増して、アルバムのジャケットを飾る森のように濃密である。ラジャ・キリックが驚くべきは、非常にシンプルなビートを、まるで巨大で唸り声を上げる木を抱きしめているかのような感覚を与えるほどのディテールで埋め尽くしている点だ。 “Kala Sengkala ” というトラックは、このキャラクターの氾濫を確認するのに最適だ。DJたちも、自分たちのセットをこれほどまでに面白くできればいいのにと思わされる。
 ダンスと実験音楽のあいだに位置するインドネシアのアンダーグラウンドの一部は、ガムランの影響にガバやバウンス・ミュージックのタッチを加えた、その中間を漂うようなビートを採用することが多い。それはしばしば強烈な疾走感を伴い、全員を汗だくにするような高揚感に満ちている。ラジャ・キリックの魔法のような側面のひとつは、決して曲を投げ出さない(急いで終わらせない)という意志だ。たとえば “Tangis Bumi” のような曲のダンス・パートを3分以上持続させることにまったく抵抗がなく、レコード上であってもそのビートを徹底的に楽しむことができる。
 日常生活において、都市のビルやアパートは、私たちが無視することを覚えた細部の平凡さゆえに、退屈なものになりがちだ。それとは正反対の体験が、東アジアや東南アジアの寺院、神社、あるいはモスクにある。そこでは神聖さが、細部を極限まで突き詰めることによって表現されている。ラジャ・キリックも同じ哲学を共有しており、どんなに中毒性のあるダンス・ビートであっても、最後のダウンビートに至るまで、タペストリーのように華麗で魅惑的なディテールを添えることなしに、ビートを単体で放置することはない。
 彼らの催眠的な手法は、儀式に近い。枝が茂り、閉所恐怖症的で、警鐘を鳴らすような霧に包まれたメロディの実験やノイズのなかにさえ、天へと届こうとする連打、ベース、金属音が存在する。その強烈さについては “Gunung. Into the Fold of Southern Mountain ” をチェックしてほしい。ラジャ・キリックは普通のダンス・バンドになどなりたくないのだ。それは明白であるべきだし、それゆえに一部の人びとを遠ざけるかもしれない。非常に残念なことだが。しかし、ホルン、金属の擦れる音、フルートのさえずりや唸り、カット&ペーストされたノイズの火花を徹底的にコラージュし、USBに依存するCDJからではなく、実際の人間から発せられるダンス・リズムの上に広げた先に現れるのは、至福の境地(エリジウム)である。
 
 少なくとも東京では、ジャム・バンドは化石産業のようになってしまい、DJとバンドが等しく求められ人気を博していた20年前のようには求められなくなっている。しかしインドネシアには、発明的な音楽創造の火花がいまもなお散っている。このアルバムが音楽に果たした記念碑的な貢献について詩的に語る一方で、その音楽の源流にある哲学を看過したくはない。あの森のように濃密なジャケットを思い出してほしい。もしこの音楽に土着的、あるいは大地のような響きを感じるとすれば、それはラジャ・キリックが植民地主義と土地所有の負の遺産に強く取り憑かれているからだ。
 インドネシア人がそれを直接語るか否かにかかわらず、オランダによる植民地支配の遺産とその余波は彼らの意識に深く刻み込まれており、通奏低音として留意されるべきである。各トラックのビートを包み込むあの濃密さは、奪われ、転用された土地の根源から来ている。かつて誰がその土地を所有し、耕したのかを大地は覚えている。その栄養分からどんな食べ物が生まれたのか、そしてそれらすべての音が何であり得たのか。『Sengkala』はそれらの記憶やトラウマを描き出し、それらに声を与えると同時に、生存と再生を称えているのだ。
 記憶としての音、そして「ウィットネシング(証人となること)」としての音。
(※この「witnessing」という言葉は、他者の痛みや喜びを認め、分かち合うという、アフリカ系アメリカ人のキリスト教的信仰に基づいている)

SCARS - ele-king

 今年で20周年を迎えるSCARSのファースト・アルバム『THE ALBUM』。設立50周年を迎えたP-VINEとのコラボとして、同作のジャケット・デザインを用いたTシャツが発売されることになった。完全限定受注生産、受付は5月8日正午まで。予約はこちらから

A-THUG率いる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARSの名盤ファースト『THE ALBUM』のジャケットデザインを用いたTシャツが完全限定の受注生産で発売!LookにはSCARSのメンバーでもあるBESを起用。

2025年12月に設立50周年を迎えたP-VINEと2006年9月リリースの名盤『THE ALBUM』でのデビューから今年で20周年となるA-THUG率いる日本語ラップ・シーン最重要グループ、SCARSとのコラボ・プロジェクト第二弾として、その『THE ALBUM』の印象的なジャケットデザインを用いたTシャツが完全限定の受注生産で発売!
ボディーはPRO CLUB 6.5 oz ヘビーTシャツを使用し、カラーは黒と白の2色、サイズはM~XXXLで完全受注生産での発売になります。受注受付は本日から5/8(金)正午まで、発送は2026年6月上旬頃を予定しております。 購入していただいた方には1着につきSCARS『THE ALBUM』アクリルキーチェーン1個が特典として付属します。
また、LookにはSCARSのメンバーでもあるBESを起用。 

*SCARS『THE ALBUM』ジャケットTシャツ ご予約ページ

<商品情報>
アイテム: SCARS『THE ALBUM』ジャケットTシャツ
カラー:ブラック / ホワイト
サイズ: M / L / XL / XXL / XXL
販売価格: M~XXL 7.000円(税抜) | XXL 7.500円(税抜)
受注締切:2026年5月8日(金)正午
発送予定: 2026年6月上旬頃

※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※1着のオーダーにつきSCARS『THE ALBUM』アクリルキーチェーンが1個、特典として付きます。
※商品発送は2026年6月上旬頃を予定しております。
※受注受付:2026/4/27(月)18時~2026/5/8(金)正午

R.I.P. Afrika Bambaataa - ele-king

 2026年4月9日、ヒップホップの開拓者として広く知られるアフリカ・バンバータが、ペンシルバニア州にて前立腺がんのため他界した。68歳だった。「開拓者」という言葉が本当にふさわしい人物がどれほどいるか、と問われれば、バンバータはその数少ないひとりに確実に数えられる。

 本名ランス・テイラー。ジャマイカとバルバドス系移民の家庭に育ち、ニューヨーク・ブロンクスのブロンクス・リバー・プロジェクツという荒廃した地域で少年期を過ごした。青年期にはストリート・ギャング「ブラック・スペーズ」に身を置いたが、アフリカへの旅が彼の人生を一変させる。映画『Zulu』で描かれた民族の連帯に感銘を受け、「愛情深き指導者」を意味するズールー族の指導者の名にちなんで「アフリカ・バンバータ」と名乗り、地域コミュニティの変革に乗り出した。改名とは多くの場合、自己演出に過ぎない。しかし彼の場合、その名はしばらくのあいだ、実践の宣言として機能した。

 1970年代、バンバータはブロンクス各地でブロック・パーティを開くようになる。ファンクやソウルを素材にブレイクビーツを駆使したそのDJセットは大勢の若者を引きつけ、ヒップホップ文化の四大要素──DJ、MC、ブレイクダンス、グラフィティ・アート――の礎を築いた。1979年にブロンクスのジェームズ・モンロー高校で録音され、後に『Death Mix』としてリリースされた音源は、ヒップホップがまだ「文化」という言葉を与えられる前夜の熱気を封じ込めている。クール・ハークがその音楽を「発明」したとすれば、バンバータはそれに思想と名前を与えた人物だと言っていい。

 その信念のもと、バンバータはユニバーサル・ズールー・ネイションを設立。ヒップホップを単なるエンタテインメントではなく、社会変革のツールとして位置づけた最初のDJのひとりとして、その名を歴史に刻んだ。「平和、愛、結束、そして楽しむこと(Peace, Love, Unity and Having Fun)」というスローガンは理想論に聞こえるかもしれないが、ギャングの抗争が日常だったサウス・ブロンクスでそれを掲げることの意味は、言葉の額面以上のものだったはずだ。

 思想家としての顔と並行して、音楽的な転換点となったのが、ソウルソニック・フォースを率いて発表した1982年のシングル “Planet Rock” だ。クラフトワークの “Trans-Europe Express” のシンセ・フックを骨格に、ドラムマシンとシンセサイザーでファンクとヒップホップを再構築したこの曲は、エレクトロ・ファンクという新たなジャンルを確立。後の音楽シーンに計り知れない影響を与えた。デュッセルドルフとブロンクスという、およそ結びつきそうにない二都市が音の上で邂逅したこの瞬間は、ポピュラー音楽史における最も豊かな接続のひとつだろう。

 「Planet Rock」の影響を挙げていけばキリがないが、その射程は半世紀近くを経た現在のK-POPにまで及んでいる。ハードなエレクトロ・サウンドを全面に打ち出した aespa の “Supernova” におけるクラフトワーク “Trans-Europe Express” の引用は、その音楽的文脈からして明らかに “Planet Rock” を経由したものだ。エレクトロ・ヒップホップとマイアミ・ベースへのオマージュが色濃い NewJeans の “How Sweet” のイントロにも、あの曲が蒔いた種の残響が聴き取れる。

 そもそも1980年代のバンバータは、ジャンルの越境という点でも際立っていた。1984年にはジェームス・ブラウンとの “Unity” でファンクとヒップホップの世代間継承を体現し、自身のグループ、タイム・ゾーンにパブリック・イメージ・リミテッドのジョン・ライドンを迎えた “World Destruction” ではポスト・パンクの反骨心を取り込んでみせた。また、1986年のアルバム『Beware (The Funk Is Everywhere)』ではMC5の “Kick Out the Jams” をカヴァー。デトロイトのハード・ロックをブロンクス流に解体したこの一曲もまた、ジャンルの壁など最初から存在しないというバンバータの雑食的な確信を轟音で叩きつけるものだった。

 音楽を社会変革の武器として使うという姿勢は、その後も一貫していた。1985年にはスティーヴン・ヴァン・ザント主導の反アパルトヘイト・プロジェクト「Sun City」に参加し、ラン-D.M.C.、U2、ブルース・スプリングスティーンらと連帯して南アフリカの人種隔離政策への抗議を世界へ発信。1988年には「ストップ・ザ・ヴァイオレンス・ムーヴメント」に加わり、KRS-ワンらと制作した “Self Destruction” の収益40万ドルを全米都市連盟へ寄付した。ブロンクスの路上から始まった「平和、愛、結束」という思想は、音楽という形をまとって確かに世界へ届いていた。

 バンバータはヒップホップを国際的な現象へと押し上げた最も重要な人物のひとりでもある。1980年代初頭にはラメルジー、ロック・ステディ・クルー、ファブ5フレディらとヨーロッパ・ツアーを敢行し、当時まだニューヨーク限定の文化だったヒップホップを初めて大陸の聴衆の前に披露した。その伝道師的な役割は晩年まで続き、2012年にはコーネル大学の客員研究員として招聘され、ヒップホップの歴史と文化を学生たちに伝えた。ストリートで生まれた音楽が学術の場で語られるようになったこと自体、バンバータが切り開いた道の長さを物語っている。

 しかし、その晩年は深刻な影を帯びる。2016年以降、複数の男性から子どもの頃に性的虐待を受けたという告発が相次ぎ、バンバータはユニバーサル・ズールー・ネイションの代表を辞任。2025年には民事裁判でデフォルト判決を受けた。これらの疑惑はその功績に深い影を落とし、ヒップホップ界の権利擁護団体「ヒップホップ・アライアンス」は追悼声明の中で「彼のレガシーは複雑であり、コミュニティ内で真剣な議論の対象であり続けている」と述べた。

 功績と疑惑、その両面が複雑に絡み合うアフリカ・バンバータという存在。ヒップホップ文化の誕生と世界への普及に果たした彼の役割は、音楽史において否定しがたい重みを持つ。その名が冠した「愛情深き指導者」の意味が、どこまで真実だったのか──世界はその問いを抱えたまま、ひとりの開拓者を見送った。

world's end girlfriend - ele-king

 この6月、EXシアター六本木にて『抵抗と祝福の夜 2026』を控えるworld's end girlfriendがニュー・シングル「Angelus Novus(新しい天使)」を発表するする。バンドキャンプでは無料or投げ銭形式で、5月8日リリース。Ngatariのヴォーカル、Jessicaとトラックメイカー Fellsiusがゲストとして参加、アートワークは山田 優 アントニが担当している。なおこの曲は「戦地に降りた天使の歌」というのがテーマだそうで、クレーでもベンヤミンでもないとのこと。サブスクはこちらからバンドキャンプはこちらから

天使とは、
誕生を告げる。
破局を告げる。
運命を宣言する。
世界を書き換える時の声。
では新しい天使とは?

MUSIC & LYRICS : world's end girlfriend
Vocal : Jessica
Beat Programming : Fellsius & world's end girlfriend

SIMI LAB - ele-king

 その独創的な音楽性で2010年代日本のヒップホップ史に小さくはない足跡を残したSIMI LAB。その記念すべきファースト・アルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』(2011)と、飛躍を遂げたセカンド・アルバム『Page 2 : Mind Over Matter』(2014)が初めてアナログ化されることになった。どちらも歌詞カード・オビ付きの2枚組。完全限定プレスなので、お早めに。

SIMI LAB(シミラボ)が2011年にリリースした名盤1st『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』と2014年にリリースした傑作2nd『Page 2 : Mind Over Matter』が帯付き2枚組仕様/完全限定プレスで待望の初アナログ化!

2009年に神奈川県相模原で結成し、初レコーディング曲“Walk Man”のMV公開によってその存在が広まったHIP HOPグループ、その後QN、Earth No Mad(QN)、DyyPRIDEらメンバーの各ソロ作品のリリースを経て、SIMI LABがグループとして2011年に満を持してリリースした記念すべき1stアルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』。その1stアルバム以降、メンバーの脱退や新規加入などを経て2014年にリリースした傑作2ndアルバム『Page 2 : Mind Over Matter』。日本のヒップホップ・シーンのみならず広く音楽シーンの歴史にも大きな爪跡を残したこの2作品が帯付き2枚組仕様/完全限定プレスで待望の初アナログ化!
客演、外部プロデューサーなし。彼等にしか出来ない音楽を、彼等にしかできないやり方で構築した純度100%のデビューアルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』はリリース直後から話題となり、今では名盤としてシーン内外で広く認知されている作品。グループの代表曲である“Uncommon”や“Show Off”を収録!その『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』リリース以降、ヒップホップだけでなくロックやジャズ・シーンといった多方面での客演、活発なソロ作品のリリース、フェスへの出演など精力的な活動を続けていたSIMI LABがメンバーの脱退、DJ ZAIとRIKKIの新規加入などを経て、約2年強の時を経て再び結集した傑作2ndアルバム『Page 2 : Mind Over Matter』。OMSB/WAH NAH MICHEALやHi’Spec、MUJO情が先鋭的なトラックを手掛け、個性的なMC達に加え、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔がサックスで参加。グループの代表曲である“Avengers”を収録!
両作品ともカバーアートワークは同じくSIMI LABのメンバーとしても活動するMA1LLが担当している。

<「Page 1 : ANATOMY OF INSANE」概要>
アーティスト:SIMI LAB
タイトル:Page 1 : ANATOMY OF INSANE
レーベル:SUMMIT / P-VINE, Inc.
仕様:LP (歌詞カード・帯付き2枚組仕様/完全限定プレス)
発売日:2026年7月15日(水)
品番:SMMT-264
定価:6,930円(税抜6,300円)
*Stream/Download/Purchase
*P-VINE SHOPにて予約受付中!

<トラックリスト>
SIDE A
1. Intro Anatomy Of Insane
2. Show Off
3. Natural Born
4. Uncommon
SIDE B
1. Twisted
2. The Blues
3. That’s What You Think
SIDE C
1. Red Bull / How Are You
2. Get Drowned
3. Moonbeam
SIDE D
1. Brave New World
2. Light / Spot Light

<「Page 2 : Mind Over Matter」概要>
アーティスト:SIMI LAB
タイトル:Page 2 : Mind Over Matter
レーベル:SUMMIT / P-VINE, Inc.
仕様:LP (歌詞カード・帯付き2枚組仕様/完全限定プレス)
発売日:2026年7月15日(水)
品番:SMMT-265
定価:6,930円(税抜6,300円)
*Stream/Download/Purchase
*P-VINE SHOPにて予約受付中!

<トラックリスト>
SIDE A
1. Intro Mind Over Matter
2. Avengers
3. Dawn
4. Oasis
5. Karma
SIDE B
1. $$$$$
2. Kommunicator
3. Circle
4. Mind Over Matter
SIDE C
1. Worth Life
2. Player
3. Street
4. Yawn
SIDE D
1. Roots
2. Come To The Throne
3. We Just (Album Ver.)

4月のジャズ - ele-king

Nat Birchall
Path of Enlightenment

Ancient Archive of Sound

 昨年はジャマイカ音楽のスカにフォーカスした『Liberated Sounds』というアルバムをリリースしたサックス奏者のナット・バーチャルだが、ここ数年はレゲエやダブに傾倒した作品リリースが目立っていた。一方で、ナット・バーチャル・ユニティ・アンサンブルとして『Spiritual Progressions』(2022年)や『New World』(2024年)をリリースし、これらはモード・ジャズ、スピリチュアル・ジャズのアルバムとなっていた。2020年代を振り返っても、古代アフリカへの回帰をテーマとした『Ancient Africa』(2021年)、アフリカ色を強めていた頃のジョン・コルトレーンを彷彿とさせる『Afro Trane』(2022年)、その続編でファラオ・サンダースにも捧げた『Songs Of The Ancestors - Afro Trane Chapter 2 -』(2023年)、モーダルで美しい『The Infinite』(2023年)などをリリースしていて、これが従来の彼のスタイルと言える。このたびの新作『Path of Enlightenment』も、そうしたモード~スピリチュアル・ジャズ路線の作品。ナット・バーチャル・ユニティ・アンサンブルはじめ、これまで数々の作品で演奏してきたアダム・フェアホール(ピアノ)、マイケル・バードン(ベース)、ポール・ヘッション(ドラムス)という久しぶりのカルテット編成で、彼がもっとも信頼する面々との録音である。

 ナット・バーチャルが敬愛するジョン・コルトレーンやファラオ・サンダースは、アラビアやインドなどの音階を用いたモード奏法のパイオニアだが、『Path of Enlightenment』はそうしたエキゾティックなモードに則った作品集となっている。“Red, Gold & Green” はエチオピアの国旗に用いられる3つの色を示していて、それはラスタファリのシンボル・カラーでもある。ナットにとって重要な意味を持つ3色でもあるのだが、この楽曲においてはエチオピアの音階を基に作曲がおこなわれている。“Amenhotep” は古代エジプトのファラオ(王)の名を由来とする。過去にもファラオのアクエンアテン4世の名を示す “Akhenaten” という曲を書いたナットだが、“Amenhotep” はそのアクエンアテン4世の本名でもあり、同じ5/4拍子の作品となっている。ズールー語で美しい贈り物を意味する “Sphesihle” などアフリカ色の濃い作品の一方、“Menat” はビザンチン音階のアラビックなモードに基づき、タイトル曲の “Path of Enlightenment” はエキゾティック・モードの定番的なフリギア旋法を用いている。こうしたモード演奏はこれまでもいろいろおこなってきたナットであるが、改めて深く踏み込んで探求したアルバムが『Path of Enlightenment』と言える。


Work Money Death
A Portal To Here

ATA

 ワーク・マネー・デスはUKのリーズを拠点とするグループで、ザ・ソーサラーズ、ザ・ルイス・エキスプレスなど同じリーズのグループや、アダム・フェアホールなどナット・バーチャルのバンド・メンバーなどが集まって流動的に構成される。サックス奏者のトニー・バーキルが中心人物で、バンド名も彼のソロ・アルバムのタイトルから命名された。ファラオ・サンダースやアリス・コルトレーンなどにインスパイアされた音楽性を持ち、2021年のデビューから2024年まで3枚のアルバムをリリースしている。バンド・メンバーであり、ナイトメアズ・オン・ワックス、コリーヌ・ベイリー・レイ、ジミ・テナーなどの作品でも演奏してきたギタリストのクリス・ドーキンズが2025年に逝去し、その追悼の意を込めて最新作『A Portal To Here』は作られた。

 今回の録音にはマシュー・ハルソールの作品でお馴染みのハープ奏者のアリス・ロバーツが参加。そのアリス・ロバーツを通してアリス・コルトレーンの精神世界へフォーカスしていくと同時に、ヨークシャーを拠点とする木管・金管楽器隊のアンサンブルがサン・ラー・アーケストラのような空間を作り出す。ハンド・クラップを交えたパーカッシヴなリズムに導かれる “A Dance For The Spirits” は、ファラオ・サンダースの流れを汲むトニー・バーキルの荒々しいテナー・サックスの咆哮とともに、カルテット・トレ・ビアンのようなダンス・ジャズとしての要素も兼ね備えた作品。“Brother Earl” もハンド・クラップがシンクロしたリズムを持ち、こちらはファラオ・サンダースの祝祭的な影響が見られる。


Irreversible Entanglements
Future Present Past

Impulse!

 詩人のムーア・マザーことカマエ・アイワ、サックス奏者のキーア・ノイリンガー、ベーシストのルーク・スチュワート、ドラマーのチェスター・ホームズ、トランペット奏者のアキレス・ナヴァーロによるイレヴァーシブル・エンタングルメンツ。ニューヨーク・アート・カルテット、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、サン・ラー・アーケストラなどとも比較される現代のフリー・ジャズ集団で、ムーア・マザーのポエトリー・リーディングを配したパフォーマンスや思想はラスト・ポエッツに重なるところもある。シカゴの〈インターナショナル・アンセム〉を拠点に、『Who Sent You? 』(2020年)や『Open The Gates』(2021年)などでは混沌としてノイジーな演奏、スポンテニアスでフリーフォームな楽曲、怒りや恐怖といった感情や闘争のアジテーションを滲ませたムーア・マザーのポエトリー・リーディングが印象的だった。2023年には〈インパルス〉へ移籍して『Protect Your Light』をリリースしたが、収録曲の “Free Love” はある意味で聴きやすいスピリチュアル・ジャズと整理され、これまでとは異なる部分も感じさせるものだった。もちろん、アルバム全体ではそれまでの前衛的で実験的な姿勢は保ちつつ、“Free Love”やゴスペルの影響が見られる “Protect Your Light” はイレヴァーシブル・エンタングルメンツの新たな方向性を見せる楽曲だった。

 〈インパルス〉からの2作目となる『Future Present Past』は、中南米のラテン・リズムに彩られた “Panamanian Fight Song”、アフロ・キューバン・リズムに乗せた “Don’t Lose Your Head” や “We Know” など、これまでになくアフロ・ラテンの色彩が強い。 スポークンワードとフリー・ジャズやスピリチュアル・ジャズの融合では、デトロイトのジャズ・ドラマーのロイ・ブルックス率いるアーティスティック・トゥルースによる『Ethnic Expressions』(1973年)という伝説的な作品があるのだが、“Don’t Lose Your Head” からはそれに似た熱気を感じる。ヴードゥーの儀式のような “Juntos Vencemos” や、ムビラのような音色が瞑想的な “The Spirit Moves” も原初的なアフリカ音楽への回帰が見られ、音楽的には『Protect Your Light』以上に聴きやすく、シンプルに整理されたものとなっている。思い出すのはサン・ラー・アーケストラのドラマーで、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラやデトロイト・エクスペリメントにも参加したフランシスコ・モラ・キャトレット。彼はメキシコ系だが、ソロ・アルバムではアフロ・ラテンの色合いが存分に出ており、それに近いテイストを 『Future Present Past』から感じる。


Dave Stapleton
Quiet Fire

Edition

 デイヴ・ステープルトンはもともとクラシックを学び、カーディフの音楽大学でキース・ティペットからジャズを学んだピアニスト/作曲家。ドラマーのエリオット・ベネットとクインテットを編成する一方、女性シンガーを交えたスロウリー・ローリング・カメラを結成するなどいろいろな活動をおこなっている。ミュージシャンと同時に〈エディション・レコーズ〉も運営し、キース・ティペット、ノーマ・ウィンストンなど英国ジャズ界の大御所から最新の現代英国ジャズ、そして北欧のアーティストの紹介まで幅広い活動をおこなっている。2000年代半ばよりソロ・アルバムもいくつかリリースしているが、2012年の『Flight』ではストリングスを交え、クラシックの素養のある彼ならではの重厚な現代ジャズを披露していた。それからしばらくソロ・アルバムはなかったが、このたび久しぶりの新作『Quiet Fire』がリリースされた。

 今回は『Flight』やほかのアルバムなどのスコア重視のプロセスではなく、ビートを中心とした作曲、ループをベースとした構成となっている。演奏家というよりも、プロデューサーとしての立ち位置に重きを置くものだ。自身はアコースティックなピアノではなくローズとシンセを演奏し、メンバーは盟友のエリオット・ベネット(ドラムス)ほか、スロウリー・ローリング・カメラのヴィクトリア・ステープルトン(ヴァイオリン)、〈エディション〉でも作品をリリースするスチュアート・マッカラム(ギター)、ノルウェーの巨匠ニルス・ペッター・モルヴェル(トランペット)などが参加。オルガ・アメルチェンコのアルト・サックスをフィーチャーした “Music For Evolution” は、ブロークンビーツ的なビートの未来派ジャズ。かつて2000年代にニルス・ペッター・モルヴェルやブッゲ・ウェッセルトフトなどの北欧勢、そしてウェスト・ロンドン勢の一部はフューチャー・ジャズと紹介されていたことがあるが、それに近い雰囲気を感じさせる作品だ。“Recall” はヒップホップ調のビートから倍速のジャズ・ファンクへと推移するビート・ミュージック的な作品で、ニルス・ペッター・モルヴェルをフィーチャーした “What Next” もヒップホップとジャズが融合したような作品。カマール・ウィリアムズユセフ・デイズなどサウス・ロンドン勢にシンクロする部分を感じさせる作品だ。

Iration Steppas - ele-king

 ダブの流れは止まらない。もともとアイタル・ロッカーズとしてブリープ・ハウスをやっていたマーク・ミリントンが、90年代前半、デニス・ルーティカルとともにはじめたリーズのサウンドシステムがアイレーション・ステッパーズだ。現行UKサウンドシステム文化を代表する彼らが8年ぶりの来日を果たす。5月31日(日)は新宿Bridgeへ。

2026.5.31 (SUN) TOKYO
wOrld connection x
IRATION STEPPAS in Japan 2026

THE VANGUARD OF DUB “世界最高峰のサウンド”
サウンドシステム・カルチャーの大ボス 『IRATION STEPPAS』が 約8年ぶり待望の来日 !!

Line-up :
IRATION STEPPAS from UK
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
PRIMAL DUB
1TA (Bim One Production, riddim Chango)
OG Militant B
CHIKI CHIKI RAMBO (Bungo / Ceriseboy / zenzenheiki)
DUB-HONJIN

at Shinjuku Bridge
TEL: 03-6384-1053
ADDRESS: 〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目19-9 角ビル B1
Kado bldg.B1F, 2-19-9,Shinjuku , Shinjuku-ku , Tokyo 160-0022 Japan
WEB SITE : https://djbar-bridge.com/shinjuku/schedule/world-connection-72/
ZETTAI-MU WEB SITE : https://www.zettai-mu.net/news/2605/irationsteppas

OPEN : 17:00 - 24:00
ADV. ¥2,000 / DOOR. ¥3,000 / U23. ¥1,000

▼前売りチケット購入はこちらから (Advance Tickets)
https://livepocket.jp/e/wc_iration-steppas


2026.5.29 (FRI) Hong Kong
Heavy Hongkong

Coming soon

@ The Fringe Club 藝穗會
ADDRESS: 2 Lower Albert Rd, Central, Hong Kong
WEB SITE : https://www.hkfringeclub.com
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IRATION STEPPAS from UK
SUBDUB/Exodus/Outlook Festival

THE VANGUARD OF DUB “世界最高峰のサウンド”
サウンドシステム・カルチャーの大ボス 『IRATION STEPPAS』が 約8年ぶりの来日 !!

IRATION STEPPASは、イギリスで最も有名なダンスの一つ『SUBDUB』や MALA率いるDMZとの連携でも知られる『Exodus』のメイン・サウンドであり、世界最大級のベース・ミュージック&サウンドシステム・カルチャーの祭典『OUTLOOK FESTIVAL』のメイン・アクト。また『ROTOTOM SUNSPLASH - Dub Academy』をはじめ、世界中のレゲエ、ダブ、フェスティバルのヘッドライナーを務める世界をリードするサウンドシステムである。

Mark IrationとDennis Rooticalの運命的な出会い以来「Scud Missile」「Killamanjaro」のキラー・チューンをはじめ様々なレーベルから数多くのビッグ・チューンをリリース。
’24年には Iration Steppas x OBF のジョイントアルバム「REVELATION TIME」 をリリース。コロナ以降の世界的アンセムとしてヘヴィ-プレイされている。2022年にはその活動を追ったドキュメンタリー映画『INA VANGUARD STYLE』を公開

サウンドシステムの技術的な限界を押し広げ続け常に進化しながらトップの地位を維持する彼らの音楽は
O.B.F、Dubkasm、Sinai Sound、King Alphaなど、多くの新世代サウンドシステムやダブ・プロデューサーに影響を与え続けている
現在注目を集めているダブ・レゲエ・ベースミュージック界の中心的存在。
膨大なダブプレートやスペシャル音源を駆使した世界最強のステッパーズ・レエ・サウンド!!!

Iration Steppas Sound System is the foundation of the West Yorkshire underground bass music scene. Mark Iration and Dennis Rootikal met in the early 1990’s when sound system culture was changing and the music was evolving. This partnership led to the development of the most progressive style of reggae and dub, which has inspired a generation of new sound systems and dub producers such as O.B.F, King Alpha, Dubkasm and many more. It also left a mark on other genres, with many other big names taking influence from the front man Mark Iration. For the past 30 years Iration Steppas have pushed boundaries on sound system technology, continually improving to stay at the top of their game, and have collected possibly the widest plethora of dubplates and specials of any sound system. Mark (Iration Steppas) is an entertainer and provides an experience you will not find anywhere else and you will not want to miss.
Iration Steppas have built a proud discography with albums such as Original Dub D.A.T., Dubs from the High Regionz and Dub Arena - as well as many singles, and all are still bought in heavy numbers around the world.

Courtney Barnett - ele-king

 現代に限ったことではないのかもしれないけれど、それにしたっていまは様々な場所で選択を迫られているような感じがする。何を着て、何を食べて、何を聞くか、我々はつねに正解を探している。それしかないから決まっているなんていうのは怠惰だと見なされるような考えで、選択とそれに伴う結果がつねに付きまとう。たとえばスーパーマーケットで何か飲み物を買うとする。棚には様々なメーカーの様々な色のドリンクが意図を持って配置されている。値段があって、量があって、気温があり、移動手段が存在し、店で流れているBGMが聞こえてきて、横の大人が缶に入ったビールを選ぶ。なんでそのメーカーのビールを選んだんだろ? 売れているからなのか? そういえばみんなこれを手にしている……なんて横道にそれながら、僕はビールではなく赤いコーラを選ぶ。それはだってどんな味か知っているから安心だし、飲みきれなかったとしても家でお酒を割るのに使えると買っても良い理由を頭に浮かべてレジに向かってお金を払う。そうやって店を出て蓋を開け口をつけてから、あっちのドラッグストアで買った方が安かったのにどうしてそれをしなかったの? という誰かのコメントが頭のなかから飛んできて憂鬱になる(Wi-Fiに包まれたこの世界で僕らはつねに誰かの意見に囲まれている)。冷たいコーラの爽快さを感じたのは一瞬だ。お金を払って快感を得ようとしたはずなのに次の瞬間にはもうこの言葉への反論を考えている。もうスーパーに来ていた、いま必要、最初からコーラを買おうと思っていなかった等々、自分が間違いを犯した間抜けではないことを必死に証明しようとする。コーラが冷たくて最高だってただそれだけでいいはずなのに頭のなかの情報がその快感に浸らせてくれない。我々はいつだって正解を求め探す。しかし正解という言葉の裏にはそれ以外は間違いであるというような暗黙の了解が潜んでいる。だからそうではないと証明し続けないといけないのかもしれない。対戦型のSNSとは言い得て妙だ。僕らはそんな選択と閉塞感のストレスを抱えて現代を生きている。

 そんな閉塞感のはびこる世界の憂鬱をコートニー・バーネットの『Creature of Habit』は見事に吹き飛ばしてくれる。オーストラリア出身、現在はLAとの二拠点で活動するアーティストの4枚目のオリジナル・アルバム、このアルバムのなんと軽やかなことか。淀みのないリズムの上に、キレの良いギターが響き、素っ気ないが耳に引っかかる歌がなんでもなく唄われてそれだけで気分が良くなる。流れる音がすぐさまに心地の良い過去に変わり、次へと切り替わる瞬間を待つワクワクがずっと続く。ここには縛りつけるものは何もないのだ。だから解放されたような気分になる。2枚目のアルバム『Tell Me How You Really Feel』にあったような重みはなく、3枚目の『Things Take Time, Take Time』の迷いながら進むというようなフィーリングは減少し、最初のアルバムに存在した静かにギラつく野心もない。ともすれば魅せるという意思や伝えるという思いがないのではと感じるかもしれない。だがこのアルバムに僕は素晴らしく惹きつけられる。それはギター・ソロにしても歌にしてもドラムやシンセ、全ての音がそうであるのが自然であるというように過度に飾り立て、主張することなく素っ気なく配置されているからだ。ワクサハッチーが参加した “Site Unseen” やレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーがベースを弾く “One Thing At A Time” はその最たる例だろう。マーケティング的な「正解」を求めるならここは間違いなく主役にすべき部分だが、バーネットはこれらを大きな見出しにしない。声が目立つように組み立てられた曲でもなければフリーがベースを弾くための曲でもない。ただそれらがフィットするようにサラリとそこに置かれる。あたかもその場所にいて欲しいと思ったふたりを連れてきただけだというように。だからこそそれが最高のスパイスになりえるのだ(そうしてそのスパイスがバーネットのスコンと突き抜けるギターの音と調和して心を躍らせる)。

 1stアルバムのリリースから10年以上が経ったタイミングで、こうしたひとクセあるシンプルなアルバムが聞けるというのはまったく胸がすく思いだ。原点回帰というのは少し違う。このアルバムには在りし日の情熱を取り戻そうという気負いがないからだ。あるのはただシンプルにいま良いと感じる選択だけ。自らの表現が他者と比べどんなに新しく、優れているかを主張し衆目を集めるアクションが美徳とされるような世のなかで、この表現はことさら新鮮に映る。“Great Advice” のなかで彼女は唄う。「素晴らしいアドバイスをありがとう/でも髪を綺麗に整える気はないんだ/このままでいい、このままで」ポエトリー・リーディングのポスト・パンクのそれよりもずっと明るくユーモラスに彼女はこの憂鬱な監視社会に断りをいれる。もっと自由でもいいはずなのに。誰かの意見を気にし、最適化された行動を自らが選ぶことへの軽やかなノー、至極丁寧なヴァージョンの「知ったことか」僕はここに解放を感じる。

 オルタナ・ファンはいつの時代も心のどこかで「それとは違うもの」を求めている。インターネットが発達し、あるのが当たり前になりネットを中心に仕組みが作られる現代社会で、そこから距離を取った場所を作ろうという試みはまさにオルタナ的な姿勢だろう。誰かをコントロールしようとしない、誰かの意見にコントロールされたくもない。インターネットを否定せずに、違ったアプローチの仕方を試みる、そこには他者の視線から逃れた自由さがある。この姿勢は同世代のシンガー・ソングライター、ミツキと重なる部分でもある(本作と近い時期にリリースされたミツキの『Nothing's About to Happen to Me』はまさにSNS的な世界の呪縛からの解放を求めるような側面を持ったアルバムだった)。それ以前の世界の姿を知り、インターネットの発展とともに生きてきたミレニアム世代の彼女たちがキャリアを重ね、かつて現実の代替だったインターネットが中心になった世界で別のオルタナティヴを模索しようとしているのはなんとも興味深い。それだけがあればよいわけではない、正解を求める心とは別の、間違いのなかにこそ違いはあるのだ。

 あぁそれにしてもこのアルバムのなんと軽やかなことか。インディ・ポップの名曲然としたキラキラと輝く “Mantis” のリフに一見不釣り合いな素っ気ないくすんだ色をした歌が重ねられる。そのズレのなかに僕は解放を見つける。完璧なメロディは存在しない。だけども探す、意味を見つける。その繰り返しのなかにこそ違った人生を生きるポップ・ミュージックの興奮が潜んでいるのだ。

Boards Of Canada - ele-king

 ここ半月ほど、気になって気になってなかなか眠れなかった方もおられるにちがいない。ボーズ・オブ・カナダがなにかをしているらしい痕跡が各地で報告されていたのだから。
 流れはこう。まず、ロンドンのオンライン・レコード・ショップ〈Bleep〉の利用者の一部に、謎めいたVHSが送りつけられたのが4月7日(ちなみにそのなかには哲学ポッドキャストのAcid Horizonも含まれていた)。その後ロンドンやNY、LA、そして東京(恵比寿LIQUIDROOM)などに不気味なポスターが出現し、4月14日に〈Warp〉がそれらの画像をポスト。そこからさほど間を置かず、4月16日にはついにボーズ・オブ・カナダによる新曲 “Tape 05” がYouTubeで公開。かくして去る4月22日、ニュー・アルバムのリリースがアナウンス、と。
 2013年の『Tomorrow's Harvest』以来、じつに13年ぶりのオリジナル・アルバムだ。タイトルは『Inferno(地獄)』、発売日は5月29日。どんな内容に仕上がっているのか気になって気になってまたしばらく眠れなさそうだけれど、なにはともあれボーズ・オブ・カナダの復帰を祝いたい。

13年の沈黙を破り
ボーズ・オブ・カナダ 再始動
最新アルバム『Inferno』を発表
〈Warp Records〉より5月29日リリース

13年の沈黙を破り、ボーズ・オブ・カナダが最新アルバム『Inferno』を発表。〈Warp Records〉より5月29日にリリースされることが明らかとなった。本作は、マイケル・サンディソンとマーカス・イオンによる音楽プロジェクト、ボーズ・オブ・カナダにとって2013年の『Tomorrow's Harvest』以来となる待望の5thアルバムとなり、18の新曲が収録される。

ボーズ・オブ・カナダ最新アルバム『Inferno』は、5月29日(金)にCD、LP、デジタル配信で世界同時リリース。国内盤CDには解説書を封入。LPは通常盤2枚組LP(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定スペシャル・エディション2枚組LP(レッド・トランスルーセント・ヴァイナル)が発売。通常盤2枚組LPおよび限定スペシャル・エディション2枚組LPは、いずれも数量限定の日本語帯付き仕様(解説書付)でも発売される。国内盤CDと日本語帯付き仕様の限定スペシャル・エディション2枚組LPは、Tシャツ付きセットも発売決定。


Tシャツ付きセットのTシャツデザイン


タワーレコード先着特典:ポスター


HMV先着特典:ステッカー


ディスクユニオン先着特典:バッチ


Amazon先着特典:マグネット


その他法人先着特典:ロゴステッカー

label:BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist:BOARDS OF CANADA
title:Inferno
release:2026.05.29
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15790
tracklist:
01 Introit
02 Prophecy At 1420 MHz
03 Hydrogen Helium Lithium Leviathan
04 Age Of Capricorn
05 Father And Son
06 Somewhere Right Now In The Future
07 Naraka
08 Acts Of Magic
09 Memory Death
10 The Word Becomes Flesh
11 Into The Magic Land
12 Blood In The Labyrinth
13 Deep Time
14 All Reason Departs
15 Arena Americanada
16 The Process
17 You Retreat In Time And Space
18 I Saw Through Platonia


CD+Tシャツセット


LP+Tシャツセット



CD



限定LP(レッド・トランスルーセント・ヴァイナル)



通常盤LP

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