「New Gen」と一致するもの

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 「地球上でもっとも活きのいいジャズは、ケープタウンやヨハネスブルグそして国中から集まった南アフリカに拠点を置くプレーヤーたちが発している」──これは『Wire』誌のリード文だが、パクってしまおう。『Indaba Is』を聴いていると、悲壮感に満ちた北半球の音楽が嘘のように感じられてくる。いや、南半球とてもちろんCovidはまん延し、ロックダウンもしている。昨年末は感染力の強い変異種が確認されたばかりだ。しかし、『Indaba Is』は最終的には、“希望に満ちた喜びのジャズと即興の暴動”になっている。『We Out Here』に次ぐジャイルス・ピーターソンの〈Brownswood〉が手掛けた素晴らしいコンピレーション・アルバムだ。紹介しよう。

 『Indaba Is』には南アフリカ産の現代ジャズが全8曲収録されているが、アルバムに参加したのは総勢52人。収録された8曲は、既発の曲ではない、すべてこのアルバムのために新録さている。ロックダウンの合間をぬって昨年6月の5日間で制作されたそうだ。南アフリカのジャズ・シーンで現在注目されているほとんどすべての若いプレーヤーは楽曲のいずれかでフィーチャーされている。
 南アフリカにはジャズの歴史があるが、アパルトヘイト時代には多くのジャズ・ミュージシャンは国外に亡命した。1990年に釈放されたネルソン・マンデラが1994年に大統領に就任するとアパルトヘイトは廃止され、タウンシップ・ジャズ、クウェラ、クワイトといった彼の地の音楽が国際的にも知られるようになった。近年のゴムやアマピアノなどは欧米や日本の新しモノ好きたちのちょっとしたトレンドにさえなっている。しかし、『Indaba Is』はそうしたいま旬の最新情報集ではない。「(国外には)南アフリカにいまルネッサンスが起きていると考えている人が大勢いる。しかしそうではない。それは私にとって、起こり続けているものだ。継続されてきたもの。ずっと続いていて、その勢いがいますべてが起きているかのように見えているだけ」、本作にも参加しているピアニストでシンガーのタンディ・ントゥリ(Thandi Ntuli)は『Wire』誌の記事のなかでこう話している。

 ヨハネスブルグのレーベル〈Afrosynth〉は昨年9月に地元のDJの選曲のもと、『New Horizons』と冠して『Indaba Is』とほぼ同様のコンセプトのコンピレーションを出している。だから『Indaba Is』だけが南アフリカの現代ジャズを伝えるものではない。ただ、本作はそのきっかけを作ったのがシャバカ&ジ・アンセスターズだったという点において必然の産物だった。ジ・アンセスターズがそもそも南アフリカのジャズ・ミュージシャンから成っているバンドだし、シャバカは以前から彼の地で演奏し、彼の地のジャズ・ミュージシャンたちと交流し、また彼らのほうでもUKで演奏する機会を得ていた。ジ・アンセスターズはもちろん本作に参加している。

 ザ・ブラザー・ムーブス・オンなる集団のリーダー、シヤボンガ・ムセンブ(Siyabonga Mthembu)はタンディ・ントゥリと並んで本作のキューレター役を担っている。ザ・ブラザー・ムーブス・オンは、音楽のみならずDIYによる演劇やパフォーマンス・アートも展開し、しばし(本人たちの意志とは関係なく)サン・ラーのアーケストラと比較されがちだそうだ。ロゴの入った服は着ないと言い切るムセンブは、『Wire』誌が言うには、オーソドックスなジャズ物語とはほど遠く、大学でジャーナリズムや政治を専攻していたそうだが、このコミュニティには純然たる音楽家以外にも、ドラマーであり学者でもあるトゥミ・モゴロシ(ジ・アンセスターズ)のような人も混じっている。『Indaba Is』はたいした考えもなくショーケース的に曲が並べられた編集盤ではない、深い思考があったうえでの音楽が記録されている。

 アルバムはボツワナ生まれのピアニスト、ボカニ・ダイアーによる意気揚々とした美しい曲、“Ke Nako”にはじまる。セツワナ語で「The Time Is Now」を意味するこの言葉は、反アパルトヘイト運動のスローガンだったというが、これが本作のオープナーを務める意味は大きい。なぜならひとつには、「ネオアパルトヘイト」と呼びうる情況がいまは存在するのだとタンディ・ントゥリは説明する。制度としてのアパルトヘイトはたしかに廃止された。しかし1994年に感じていた楽天主義は年を追うごとに衰退し、結局のところ国からのサーヴィスを受けられる白人居住区と非白人が暮らす貧困なエリアとの分断は依然としてあると。
 そしてもうひとつ、ゆえに、本作が2020年6月に録音されたことの意味も大きい。5月25日米ミネアポリスでジョージ・フロイド暴行事件が起き、それが発火点となってブラック・ライヴズ・マターなる歴史的な蜂起が世界のいたる都市で起きたまさにその真っ直中だったからだ。
 『We Out Here』において、反植民地主義の先駆的思想家フランツ・ファノンによる有名な著作『黒い皮膚・白い仮面』へのオマージュ──シャバカ・ハッチングスの“Black Skin, Black Masks”────がアルバムに確固たる意志を与えたように、『Indaba Is』にもファノンの影響下による1曲──ザ・レチッド(The Wretched)の“What is History”──がある。話は逸れるが、スラヴォイ・ジジェクが新刊『パンデミック2』のなかでBLMについてなかなか多くを言及しており、ファノンの話も出てくる。そこでジジェクは、(あれだけヨーロッパの植民地主義を糾弾した)ファノンが決して現代の白人社会に17世紀の奴隷商人の責任を要求したりはしなかったことに着目している。白人の心の内側に罪責感を植え付けることが彼の目的ではなかった。
 良いエピソードがある。『Wire』誌によれば〈Brownswood〉は、このアルバムの制作中(つまりBLM熱の最高潮のとき)、(白人である)自分たちは植民した側の人間であり、今回のこのようなコンピレーションは搾取になるではないかと、一時はリリースすべきではないと考えたそうだ。ムセンブに電話で、これが搾取にならないためにはどうしたらいいのかを訊いたという。結果、レーベルと彼らとの関係性は強化されることになった。契約内容は思いやりのある内容に改訂されて、作品はこうして世に出たわけである。

 『Indaba Is』には、南アフリカのジャズのハイブリッドな魅力が詰まっている。UKジャズにレゲエやソカが混じっているように、こちらには当地の多彩なリズムがあり、また、伝統的でスピリチュアルなハーモニー、南アフリカのメロディとモダンなソウルとの融合、インド音楽との対話まである。ぼくのお気に入りは先に挙げた“Ke Nako”、マーティン・ルーサー・キングの暗殺が語られる、まるでCANめいたファンクの“What is History”、牧歌的なアコースティック・ギターが美しいシブシル・ザバの“Umdali”、ジ・アンセスターズによるグルーヴィーなジャズの“Prelude to Writing Together”、タンディ・ントゥリによるネオ・ソウルめいたメロウな“Dikeledi”……ザ・ブラザー・ムーブス・オンによる瞑想的な“Umthandazo Wamagenge”もいいし、ま、どの曲もいいす。

 南アフリカのジャズ・シーンはいま、まったく楽天的ではない。Covidの真っ直中であり、それ以前から文化的なインフラを持たない同国のミュージシャンはますます窮地に追い込まれている。そこで彼らは現在デジタル・アーカイヴとそのネットワークを構築中だという。だが、昨年の6月にアフリカ大陸の最南の国にいる彼らの団結によって録音されたこの音楽──頭と身体と心のこもったジャズの変種──はいまこうして日本で聴ける/CDやレコードを買うことができる。

interview with KANDYTOWN (Neetz & KEIJU) - ele-king


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 東京・世田谷を拠点にするヒップホップ・コレクティヴ=KANDYTOWN。グループとしてはメジャーからこれまで2枚のアルバム(2016年『KANDYTOWN』、2019年『ADIVISORY』)をリリースし、さらにほとんどのメンバーがソロ作品をリリースする一方で、音楽のみならずファッションの分野でも様々なブランドとコラボレーションを行なうなど、実に多方面に活躍する彼ら。コロナ禍において、ほぼ全てのアーティストが活動を自粛せざるをえない状況であった2020年、彼らは『Stay Home Edition』と題したシリーズを自らの YouTube チャンネルにて開始して新曲を立て続けに発表し、多くのヒップホップ・ファン、音楽ファンへ勇気と活力を与えた。

 この『Stay Home Edition』で公開された3曲をブラッシュアップし、さらに3つの新曲を加えて2月14日にリリースされたEP「LOCAL SERVICE 2」。タイトルの通り、このEPは2年前の同日にリリースされた「LOCAL SERVICE」の続編であり、この2月14日という日付が KANDYTOWN のメンバーである YUSHI の命日ということを知っているファンも多いだろう。今回のインタヴューでは KANDYTOWN のメイン・プロデューサーである Neetz と昨年、アルバム『T.A.T.O.』にてメジャー・デビューを果たした KEIJU のふたりに参加してもらい、彼らにとって非常に大きな意味を持つ 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」がどのような過程で作られていったのかを訊いてみた。

注:これまで配信のみでリリースされていたEP「LOCAL SERVICE」と「LOCAL SERVICE 2」だが、今年4月に初めてCD化され、2枚組のCD『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』として〈ワーナー〉からリリースされる予定。

スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。(Neetz)

あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって〔……〕。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。(KEIJU)

前回インタヴューさせていただいたのがアルバム『ADVISORY』のリリースのタイミングで。その後、コロナで大変なことになってしまったわけですが、やはり KANDYTOWN の活動への影響は大きかったですか?

KEIJU:NIKE AIR MAX 2090 にインスパイアされた楽曲の “PROGRESS” (2020年3月リリース)を作っていたときが、世の中が「やばい、やばい」ってなっていた時期で。自分たちも世間の皆様と同じように困ることもあったんですけど、人数が多いグループなので集まりづらいっていうのがいちばん大きくて。どうしても目立つ集団でもあるので、人目を気にして、外では会えなくなりました。けど、一昨年から、自分たち用のスタジオや事務所を用意するっていう動きをしていたのもあって。ちょうど去年の4月くらいに事務所とスタジオを借りて。それで音楽を作ろうってはじまったのが、今回出た「LOCAL SERVICE 2」にも繋がる『Stay Home Edition』で。

『Stay Home Edition』はどういったアイディアから来たものでしょうか?

Neetz:スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。

『Stay Home Edition』では結果的に3曲発表しましたが、あの順番で作られたんですか?

Neetz:そうですね。最初が “One More Dance” で、次が “Faithful”、“Dripsoul” という順で。

KEIJU:1ヵ月半とかのうちに全部曲を出し切って、それをEPとして完成させちゃおうって話になっていたところを〈ワーナー〉とも話をして。ちゃんと段取りをして、しっかりやろうっていうふうになったので(『Stay Home Edition』を)一旦止めて。

Neetz:どうせならちゃんとオリジナル・トラックで作って、まとめてEPとしてリリースにしようっていう話になって。

KEIJU:だから、ほんとは8月とかには曲もほぼできている状態だったんですよ。でも、〈ワーナー〉の人にも会えなくて、話し合いができなかったりもして。それにそのタイミングで出してもライヴもできないし。

では、リリースまでのタイミングまでにけっこう温めていた感じなんですね?

Neetz:そうですね。3月から5月にかけてレコーディングを全部終えて、そこから既に出ている3曲のトラックを差し替える作業をやって。ミキシングも自分のなかで時間がかかっちゃって。それで全部が終わったのが9月くらい。それなら「LOCAL SERVICE 2」として2・14に出そうっていうことになって。

いまおっしゃった通り、『Stay Home Edition』と今回のEPでは全く違うトラックになっていますが、『Stay Home Edition』のほうは Neetz くんのトラックだったのですか?

Neetz:ではなかった。だから、どうせなら全部変えてやろうっていう意気込みで俺独自の感じで作ったので、その色が強くなったのかなと思います。

改めて “One More Dance” がどのように作られていったのかを教えてください。

Neetz:IO が最初にオリジナルのトラックを持ってきて、フックを最初に入れて。Gottz と柊平(上杉柊平=Holly Q)がそのとき、スタジオにいたので、IO のフックを聴いて柊平と Gottz がそのフックのコンセプトに当てはめてリリックを書いていった感じですね。

KEIJU:自分が聞いた話では、IO くんと柊平が中目黒に新しい事務所の家具を買いに行った帰りにスタジオに寄って。「このまま曲を作ろうか?」って流れで作ったら Gottz が来て、それで3人で作ってったそうです。

完全にノリで作ったわけですね。

KEIJU:今回の『Stay Home Edition』はいちばん昔のノリに近かったかなってちょっと思ってて。突発的に「会って遊ぼうよ」から、なにかを残そうじゃないけど、ノリで「曲やろう!」ってなってできた感じだった。自分は結構「コロナ大変なことになってるな」と思っていましたし、自分のソロ・アルバムのこともあって、その時期はあんまりみんなに会わないようにしていたんですよ。だから、自分は客観的にみんなの動きを見てたんですけど、さっき LINE が飛び交っていたと思ったら、その5、6時間後には曲ができていたりして。そういうのが、すごく昔の感じだなって思いましたね。

Neetz:そうだね。KEIJU はみんなの動きを客観的に見てた側だったのかもしれない。

そういうこともあって、今回は KEIJU くんの参加曲が1曲なわけですね?

KEIJU:そうですね、参加曲が少ないのはそれが理由っすね。兄に子供ができたりもして、みんなとは会わないほうがいいと思って。

Neetz:KEIJU は KEIJU のスタンスを貫いてましたね。

KEIJU:みんなが新しい事務所に溜まっていて、自分は「いいなぁ、楽しそうだな」って感じで見てて。でもさすがに(EPを)出すっていうから、「参加したいです!」って言って参加させてもらった感じです。

ちなみに最初の3曲には IO くんと Holly Q が3曲とも参加していて、それってなかなか珍しいですよね? 特に IO くんは前回の「LOCAL SERVICE」には1曲も入ってなかったと思いますし。

KEIJU:最初の “One More Dance” を作った流れで自然と、その感じで2、3曲目も動けたんじゃないですかね。コロナのこのタイミングで出そうっていうイメージまでもって。

Neetz:それがみんなにも伝わったのがデカかった。

ちなみに『Stay Home Edition』で “One More Dance” の説明の欄にヘレン・ケラーの言葉が引用されていましたけど、あれは誰が考えたんでしょうか?

Neetz:あれも IO くんのチョイスですね。

曲自体はノリで作られたのかもしれないけど、そういう部分も含めてすごくメッセージ性がある曲だなと思いました。

KEIJU:作る過程で「こういう人に向けて、こういう曲を書いてみよう」みたいな話は若干あったんだと思います。

Neetz:“One More Dance” に関しては統一性がしっかり取れていて。より統一性を出すために、リリックを書き直してもらったりもしました。

たしかに『Stay Home Edition』とEPでは、若干リリックが違いましたよね。

Neetz:曖昧になっている部分を、曖昧にしないで具体的にしようかなって感じで柊平に直してもらって。

KEIJU:Neetz から言ったんだ? 柊平ってけっこう、自分の作ったものに対してのクオリティが保たれているかすごい気にするじゃん。「これで良いのかな?」って訊いてくるもんね。

Neetz:そういう人には言ってあげたほうが良いかなって。

『Stay Home Edition』のコメントを見ると Holly Q 人気が高いというか。あの3曲で改めて彼の評価が上がっていますよね。

KEIJU:“One More Dance” のラップも初めて聴いたとき、1個違うレベルというか、柊平の新しい面が見えたなって。いままでは全部出し切るっていう感じだったけど、ちょっと手前で止めるみたいな歌い方であったり。そういう新しさをすごく感じて。

俳優としてもすごく活躍されていて、テレビドラマとかにも出ていますけど、ちなみにメンバーはどういうふうに見ているんですか?

KEIJU:俺は率直にすごいと思うし、みんなそう思っていると思う。ポッと出ではないですし、19歳とかそのくらいからバイトをしながらモデルをやったり、事務所を変えたりっていう過程を見ているので。ただ、柊平が出ていると客観的に観れなくて、内容が入ってこなくなっちゃう(笑)。だから、あんまりがっつりは観ないんですけど、普通にできないことだなと思います。

Neetz:すごいなと思いますね。

その中で今回みたいにちゃんと曲にも参加しているのが凄いですね。

KEIJU:前回の『ADVISORY』のときも、柊平の撮影が忙しくて1ヵ月間いられなくなるってなって。けど、柊平が「入れないのは嫌だから」って言って、誰もまだリリックを書き出していない頃にひとりで書いて、3、4曲とか録って撮影に行ったんですよ。意欲が本当に凄くて。柊平のあのヴァイブスにみんなも感化されて、負けていられないから、自分もやろうってなったのは感じましたね。

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いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。(Neetz)

「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。(KEIJU)


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EPの後半3曲は完全な新曲となるわけですけど、まず “Sunday Drive” は Ryohu くんがトラックを担当で。以前のインタヴューのときに KANDYTOWN の曲は基本 Neetz くんが作って、さらに Neetz くんが出していない部分を Ryohu くんが埋めるみたいなことは仰ってましたが、今回も同様に?

Neetz:そういう感じで作っていました。このEPの中の俺にはないような曲(“Sunday Drive”)を入れてきてくれたので、すごくバランスが良くなって。結果、Ryohu のビートがスパイスになっていますね。

“Sunday Drive” はおふたりともラップで参加していますが、トラックを聴いてどういう感じでリリックを書いたのでしょうか?

KEIJU:最初はもっとブーンバップというか、ベースが効いてるヒップホップなビートだったけど、最終的には最新っぽさも足されたものが返ってきて。ビートを聴かせてもらったときに、「これだったらいますぐリリックを書こうかな」って。そのとき、一緒にいたっけ?

Neetz:一緒にいたな。

KEIJU:リリックを一緒に書いて、「どうしようか?」ってなって。

Neetz:それで、KEIJU が伝説の2小節を入れて。

KEIJU:伝説の2小節からはじまったけど、タイトルが “Sunday Drive” になって「アレ?」ってなった(笑)。「俺の伝説の2小節は?」って。それでその2小節はやめて、新たにフックを書いて。

Neetz:まとまっていないようでまとまってる。いつもの俺らですね。

(笑)

KEIJU:俺はとにかく、あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって、その思いが全部出ているような恥ずかしい感じのリリックになっちゃって。サビも書いてって言われていたから、メロディーとかも考えながら、「ああじゃない、こうじゃない」を繰り返していて。高揚している自分と地に足付けるバランスの中で、あのリリックとフロウが出てきて。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。でも、サビはすぐできたよね?

Neetz:そうだね。

KEIJU:4小節自分で書いたものを Dony(Joint)と Neetz、MASATO に歌ってもらって。

Neetz:結果、みんな自分に向かって書くようなリリックになって。

KEIJU:渋い曲になったよね。

ビートへのラップの乗せ方もすごく気持ち良いです。

Neetz:そうですね。EPのなかでいちばんリズミカルな感じになっていて。4曲目でそれが出てくることによって、すごく映えるようになってる。

あと曲の最後のほうに「届けるぜローカルなサービス」ってラインがありますが、この時点でタイトルを「LOCAL SERVICE 2」にするっていうのはあったんですか?

Neetz:まだですね。MASATO がたまたまそのワードを入れて。EPのタイトルは完全に後付けです。

次の “Coming Home” ですけど、これは Gottz&MUD のコンビを指名したんですか?

Neetz:本当は Gottz&MUD のアルバム用に作ったビートで、それに入る感じだったんだけど。コンセプト的にも今回のEPに入れたほうが良いかなってなって。MUD にワンヴァース目をやってもらって、Gottz も書いてくれたけども。(今回のEPに) KEIJU のヴァースが少なすぎるってなって、KEIJU も入れようと思ったけど……。

KEIJU:まあ、そういうことがあったんですけど、良い曲だなって。

あのふたり用に作った曲っていうのは伝わってくるようなトラックですよね。

KEIJU:それに、なんかあのふたりのセットを(ファンが)求めている流れもありますから。そういうこともあって自分は身を引こうと思って。

最後の曲の “Sky” ですが、リリックもトラックも KANDYTOWN そのものを表している感じがしますね。

Neetz:いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。

この曲で言っていることがまさにいまの KANDYTOWN のスタンスにも感じますね。

Neetz:そうですね。変わらずあり続けるのもそうだし、この仲間とやっていくことがすごく大事だと思うし。そういうスタンスでこれからもやっていけたらなって思いますね。

ちなみに、客観的に見てどの曲が好きですか?

Neetz:トラック的に上手くできたのは3曲目(“Dripsoul”)。

KEIJU:俺はやっぱ、最初に聴いたときの “One More Dance” のインパクトが強くて。IO くんがああいうメロディーをつけるときのモードがあるじゃない?

Neetz:たしかに、たしかに。

KEIJU:そのメロディーが聴こえたからすごく印象に残っている。

覚悟みたいなものですかね?

KEIJU:そう、覚悟があるなって感じて。あと、好きな曲というと、自分が入っている曲(“Sunday Drive”)は制作現場にいて、みんなの雰囲気とかも含めてすごく良かったと思うし。それに対して自分はスムースで昔っぽさもある感じにできたので、“Sunday Drive” は良いなと思う。サビの掛け合いとかもしばらくはやっていなかったので、「一緒にリリックを書くのも良いよね」って話をしながらやったのも憶えているし、結構楽しかったよね。

Neetz:久々に楽しかった。

久々にみんなが会うというのは、やなり何か違うものがありますか?

KEIJU:それはもう、だいぶ違いましたね。あのときってみんな寂しくてとかじゃないけど、「うわぁ、浮足立つなぁ」って。言わなくてもいいことを言っちゃいそうだなみたいな。しかもそれをリリックに書いちゃいそうなくらい、普段は言わないことを言おうとしちゃう。それが嫌だなって部分もあったんですけど。

Neetz:若干どんよりしたというか。そういう雰囲気だった気もするけど。違う?

KEIJU:それもあったかもね。この先どうなるか分からないし。俺とか本当にコロナを気にしていたので、みんなに「手洗った?」ってすぐ訊くような勢いだったんで。

それだけ人数いれば、人によって考え方も全然違いますしね。

KEIJU:あの活動(『Stay Home Editon』)がはじまったときに、「はじまったそばから、すげぇやってるな?!」とか思いながら。俺は羨ましくもあり、みんなに会いてぇなっていうのもあったし。置いてけぼり感もすごくあった。いま思うとそんなに(以前と)変わりないと思うんだけど、久しぶりに会ったときは違ったね。

KANDYTOWN の次の作品に向けてもすでに始動していると思いますが、現時点でどのような感じになりそうでしょうか?

Neetz:とりあえず、ビート作りははじまっていて。このEPの音作りは俺独自で進めたので、次の作品に関してはもっとみんなの意見を取り入れたものを作れたらいいなと思ってます。あと、「KANDYTOWN に合うサウンドとは?」っていうのをめちゃくちゃ考えていて。「それって何だろう?」って考えてたときに、昔のソウルフルな感じであったり、1枚目(『KANDYTOWN』)の感じの音なのかなって思ったりもするし。まだ答えは分かってないんですけど。

KEIJU:さっきふたりで車の中で話をしていて。もっと幅を広げたり、Neetz の言うように昔のソウルフルなスタイルで続けていくのも良いよねって。やれる範囲で幅を広げていこうって話をしてはいて。ビートのチョイスもいままでやっていなかったこともやってみようって。

Neetz:結果的にそれが KANDYTOWN のサウンドになるので。

KEIJU:そう。自分たちのこれまでの活動の中でも、それまでやらなかったビートをチョイスしてやってきて、それでちょっとずつ進化している。昔、YouTube にもアップした “IT'z REVL” って曲とか、当時は自分たちの中ではすごく新しいチョイスで、新しい感覚だと思ってやってたし。少しずつ、そういう変化を上手く出せていけたらいいなって思う。あと、「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。そうやって、深い部分で切磋琢磨していけたら、新しいものが生まれるなって思っているので。

メンバー間のコミュニケーションの部分などで何か以前と変化はあったりしますか?

KEIJU:最近はコミュニケーションを高めていて。自分らは最近野球をやっているんですけど。(インタヴューに同行していた)DJの Minnesotah はバスケをやっていて。KANDYTOWN の中でもバスケと野球とサッカーってチームが分かれているんですけど、そういう感じで集まれる時間を増やしていこうよって話をしていて。それが音楽に直結するわけではないですけど、日々の言葉のキャッチボール的なことができればなと思ってて。そうすることで、これからの KANDYTOWN の作品が、もっと密なものになればいいなって思いますね。

KANDYTOWN
2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より
“One More Dance” の MUSIC VIDEO 公開

国内屈指のヒップホップクルー KANDYTOWN が本日2月14日配信の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より、
先行配信トラック “One More Dance” の MUSIC VIDEO を公開。この映像は前作 “PROGRESS” に引き続き盟友:山田健人が手掛ける。楽曲に参加している IO、Gottz、Holly Q、Neetz に加えクルーから Ryohu、Minnesotah、KEIJU、Dony Joint、Weelow がカメオ出演。

2月14日より配信となった 2nd EP は2020年の4月・5月の Stay Home 期間中に公開された楽曲3曲を再度レコーディングしリアレンジしたものに新曲3曲を収録。楽曲のレコーディングやプロデュースをメンバーの Neetz が担当。海外作家との共作やアレンジャー起用して作られたトラックなど意欲作が並ぶ。

そして、4月21日には、配信リリースされていた2019年2月14日発売の 1st EP「LOCAL SERVICE」と2021年2月14日発売の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」の両作品を2000枚限定で初CD化し1枚にコンパイル。
DISC 1 の「LOCAL SERVICE」は過去に限定でレコードのリリースはあったがCD化は初となる。

“One More Dance” MUSIC VIDEO
https://youtu.be/iY340Z3BTdA

2nd EP「LOCAL SERVICE 2」& 限定生産2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』
https://kandytown.lnk.to/localsevice2

[MJSIC VIDEO CREDIT]
KANDYTOWN LIFE PRESENTS
FROM""LOCAL SERVICE 2""
『One More Dance』

Director : Kento Yamada
Director of Photography : Tomoyuki Kawakami
Camera Assistant : Kohei Shimazu
Steadicam Operator : Takuma Iwata

Lighting Director : Takuma Saeki
Light Assistant : Hajime Ogura

Production Design : Chihiro Matsumoto

Animal Production : SHONAN-ANIMAL

Editor & Title Design : Monaco

Colorlist : Masahiro Ishiyama

Producer : Taro Mikami, Keisuke Homan
Production Manager : Miki SaKurai、Rei Sakai、Shosuke Mori
Production Support: Wataru Watanabe, Yohei Fujii

Production: CEKAI / OVERA

STARRING
IO
Gottz
Holly Q

Ryohu
Minnesotah
KEIJU
Dony Joint
Neetz
Weelow
Kaz

[KANDYTOWN 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE 2」
release date:2021.02.14
price:¥1,400 (without tax)

track list
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Sterling Sound 
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

[限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」
release date:2021.04.21
price:¥2,500 (without tax)

track list (DISC1)

「LOCAL SERVICE」
1. Prove (Lyric: Gottz, KEIJU, MUD Music: Neetz)
2. Till I Die (Lyric: Ryohu, MASATO, BSC Music: Neetz)
3. Explore (Lyric: Gottz, MUD, Holly Q Music: Neetz)
4. Regency (Lyric: MASATO, Ryohu, KIKUMARU Music: Neetz)
5. Fluxus (Lyric: Neetz, DIAN, Dony Joint Music: Neetz)
6. Kapital (Lyric: BSC, KIKUMARU, Dony Joint, DIAN, Ryohu Music: Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi at RDS Toritsudai
Masterd by Rick Essig at REM Sound
Sound Produce: Neetz
Additional Arrange: KEM
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

track list (DISC2)
「LOCAL SERVICE 2」
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Stearing Sound
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

空間現代 × 三重野龍 - ele-king

 近年は〈Editions Mego〉傘下の〈Ideologic Organ〉からアルバムを発表したり、吉増剛造とコラボしたりと、独自の表現をつづけている空間現代。彼らと、関西のデザイン~アートワーク・シーンで活躍するグラフィック・デザイナー、三重野龍の映像とのコラボ映像が公開されている。
 昨年10月にロームシアター京都にて開催された「ZOU」のパフォーマンスの記録で、空間現代の最新長編楽曲 “象” に三重野のグラフィックが併置・交錯されていく。この京都拠点の2組による初のコラボは大いに注目を集め、当日は入場制限もおこなわれるなど、限られた観客のみが体験することのできるものだった。
 その貴重な映像が2月7日から2月14日まで、1週間限定で無料配信される。下記URLより。

1週間限定の無料配信が決定
KYOTO PARK STAGE 2020 / OKAZAKI PARK STAGE 2020
空間現代 × 三重野龍「ZOU」映像配信

[配信概要]

KYOTO PARK STAGE 2020 OKAZAKI PARK STAGE 2020空間現代×三重野龍「 ZOU」 映像配信
配信日時:2021年2月7日(日)10:00~14日(日)23:59〔日本時間〕
配信場所:ロームシアター京都公式
YouTubeチャンネル(無料配信)
https://www.youtube.com/channel/UC17J354cZsjO_0QOta8sAZw

出演:空間現代
グラフィック:三重野龍
グラフィックサポート:Takuma Nakata
音響:西川文章
照明:藤原康弘
舞台監督:夏目雅也
制作:松本花音(ロームシアター京都)
記録映像撮影・ 編集:片山達貴
撮影協力:顧剣亨
企画製作:ロームシアター京都

[空間現代×三重野龍「ZOU」開催概要]

開催日時:2020年10月17日(土)20:00
会場:ロームシアター京都 ノースホール(雨天のため会場変更して実施)
主催:文化庁、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市 文化庁令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「JAPAN LIVE YELL project」

[プロフィール]

空間現代 Kukangendai
2006年、野口順哉(Gt, Vo)、古谷野慶輔(Ba)、山田英晶(Dr)の3人によって結成。編集・複製・反復・エラー的な発想で制作された楽曲をスリーピースバンドの形態で演奏。これによるねじれ、 負荷がもたらすユーモラスかつストイックなライブパフォーマンスを特徴とする。2016年9月、活動の場を東京から京都へ移し、自身の制作および公演の拠点としてライブハウス「外」を左京区・錦林車庫前に開場。新たな試みとして、60分のライブ作品の制作を開始。これまでに『擦過』(2016)、『オルガン』(2017)、『象』(2020)を発表。地点、Moe and ghosts、飴屋法水、吉増剛造、contact Gonzo など、先鋭的なアーティスト達とのジャンルを超えた作品制作も積極的に行う。2019年度、京都市芸術文化特別奨励者。

三重野 龍 Ryu Mieno
1988年兵庫県生まれ。 2011年京都精華大学グラフィックデザインコース卒業。大学卒業後、京都にてフリーのグラフィックデザイナーとして活動開始。美術や舞台作品の広報物デザインを中心に、ロゴやグッズなど、文字を軸にしたグラフィック制作を実践。主な展示に個展〈GRAPHIC WEST8: 三重野龍大全 2011-2019 「屁理屈」〉@京都 dddギャラリー、 2019年。

R.I.P. BIG-O / OSUMI - ele-king

 90年代の日本のヒップホップ・シーンを代表するグループのひとつ、SHAKKAZOMBIE のメンバーとして活躍し、その後、進出したファッション業界でもデザイナーとして大きな成功を収めた BIG-O ことオオスミタケシ氏が、2021年1月24日、敗血症にて亡くなった。享年47歳であった。
 ファッション・ブランド「MISTERGENTLEMAN」のデザイナーとして世界的にも知られる存在であったオオスミ氏だが、本稿では彼のルーツであるラッパー、BIG-O/OSUMIとしてのキャリアを振り返ってみたい。

 ヒップホップ誌『FRONT』の1996年6月号に掲載されたインタヴュー記事によると、彼がDJの TSUTCHIE と組んで活動していたところに二つ歳上の HIDE-BOWIE (のちの IGNITION MAN)が加わり、1994年、2MC1DJのグループとして SHAKKAZOMBIE が結成されたという。ちなみに「SHAKKAZOMBIE」というグループ名はキミドリのクボタタケシのアイディアによるものだ。

 グループ結成の翌年にはEP「SHAKKATTACK」にてインディー・デビュー、さらに1996年春にはシングル「手のひらを太陽に」によって〈カッティング・エッジ〉からメジャー・デビューを果たす。当時の〈カッティング・エッジ〉と言えば、ECD、You The Rock、Buddha Brand といったアーティストを抱える日本のヒップホップ・シーンを象徴するレーベルのひとつであり、そのラインナップに SHAKKAZOMBIE が入るということは彼ら自身にとっても大きな意味を持つ出来事であった。さらに彼らの名前をシーンに知らしめたのが、Buddha Brand とともに結成したユニット、大神(おおかみ)名義で制作した “大怪我” という曲だ。彼らは1996年7月に日比谷野外音楽堂で行なわれた伝説的なヒップホップ・イベント『さんピンCAMP』のオープニングにも登場して “大怪我” を披露し、強烈なインパクトを残した。

 1997年に SHAKKAZOMBIE は1stアルバム『HERO THE S.Z.』をリリースし、その後、『JOURNEY OF FORESIGHT』(1999年)、『THE GOODFELLAZ』(2003年)と通算3枚のアルバムを発表している。時代の風潮もあり、デビュー当初はハードコアなイメージも強かった SHAKKAZOMBIE であるが、『HERO THE S.Z.』に収録された彼らの代表曲である “虹” や “共に行こう” における独自のメッセージ性や視点は明らかにいままでの日本のヒップホップ・シーンにはなかったもので、プロデューサーである TSUTCHIE の先進的で高い音楽性と共に、作品を重ねるごとにさらにグループの個性が磨かれていく。

 当時、筆者も取材やクラブ、イベントの現場などで彼らと会う機会があったが、体も大きくて一見強面なイメージのオオスミ氏が、実は誰からも愛されるような親しみやすいキャラクターであることに驚いた記憶がある。また、非常に繊細な部分も持ち合わせており、そんな彼の一面はリリックやラップのスタイルにも現れている。オオスミ氏の魅力はグループ外の作品でも強く発揮されており、1996年にリリースされた Indopepsychics プロデュースよる “百万光年のやさしさが注がれる限り” は彼の代表曲のひとつと言えるだろう。さらに SHAKKAZOMBIE の活動と並行して、1998年には OSUMI 名義でソロ・アルバム『control (the spiritual matters)』もリリースしており、DJ WATARAI、DEV LARGE らがプロデュースを手がけたこのアルバムは、90年代後半の日本のヒップホップ・シーンの空気感を充満した傑作だ。

 ロックのシーンとも繋がりが深かったりと、さまざまなカルチャーと結びつきを持つ SHAKKAZOMBIE であったが、彼らがそのマルチな才能を発揮したプロジェクトのひとつが、1996年に原宿にオープンしたヒップホップ居酒屋「龍宮」であった。オオスミ氏と HIDE-BOWIE がプロデュースを手がけたこの店はヒップホップ業界の交流の場としても機能し、筆者自身何度も訪れたことがある。

 1999年にはオオスミ氏と HIDE-BOWIE がディレクターを務めるファッション・ブランド「SWAGGER」がスタート。ヒップホップ・アーティストが手がけるブランドの先駆者ともなった「SWAGGER」は東京を代表するストリート・ブランドのひとつとして人気を博した。さらに2004年に自ら立ち上げたブランド「PHENOMENON」にてオオスミ氏はデザイナーとしてファッション・シーンでも一目置かれる存在となり、「PHENOMENON」を離れた後は「MISTERGENTLEMAN」のチーフデザイナーとして手腕をふるった。

 音楽業界からファッション業界へと華麗な転身を遂げたオオスミ氏であったが、2007年には BIG-O & DJ WATARAI 名義でアルバム『STRAIGHT TO NEXT DOOR』をリリースしており、このアルバムには Lupe Fiasco や O.C. といった海外の大物アーティストがゲスト参加するなど、この幅広い人脈も彼ならではだ。さらに2018年にリリースされた MONDO GROSSO (大沢伸一)のアルバム『Attune / Detune』収録の “One Temperature” という曲にて、彼は10年以上振りにラップを披露している。この曲の中の「俺は今も渋谷の住人」というラインは、90年代からの彼を知っている人であれば何か心の琴線に触れるものがあるに違いない。

 2019年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコのレコードショップ「WAVE」のプロジェクトにもディレクターのひとりとして参加していたオオスミ氏であるが、その渋谷パルコのオープニング・レセプションが筆者にとっても彼本人と会った最後のときであった。会うこと自体が久しぶりだったのだが、こちらの挨拶に返してくれた昔と全く変わらない彼の笑顔が忘れられない。
 ご冥福をお祈りします。

R.I.P. Double K (People Under The Stairs) - ele-king

 LAを拠点に活躍し、2019年に引退を発表していたヒップホップ・デュオ、People Under The Stairs (以下、P.U.T.S.)のメンバーとして知られる Double K (本名:Michael Turner)が、1月30日に入院先の病院にて亡くなった。享年43歳で、詳しい死因は明らかになっていないが、彼の友人であるLAのベテランDJ、Mark Luv によると Double K は「安らかに亡くなった」という。


来日時の様子(写真:大前至)

 P.U.T.S.ではMC、プロデューサー、ライヴDJも担当していた Double K が、Thes One と共にグループを結成したのが1997年頃のことだ。LAのミッドシティと呼ばれるエリアにある高校に通っていた彼は、同じ高校に通う(のちに Living Legends を結成することになる) Murs、Eligh、Scarub らが中心となっていたクルー、Log Cabin Crew の一員として活動しながら、すでにビートも作りはじめていた。16歳のときにサンプルネタを探すために訪れたレコード屋にて出会ったのが同じくまだ十代であった Thes One で、それぞれ自分の作ったビートを聴かせあいながらお互いを認めるようになり、その後、彼らは P.U.T.S. としての活動をスタートすることになる。

 USC (University of Southern California)に通う大学生であった Thes One の学生ローンを元手に、1998年、彼らは最初のシングル「The Next Step II」とアルバム『The Next Step』をリリース。ともにDJでありラッパーでありビートも作っていたふたりに共通するのは、彼らが強く影響を受けた80年代から90年代半のヒップホップのフレイヴァーを継承しながら、自ら見つけ出した誰も知らないサンプリング・ネタで新しい音楽を作り出すという点で、いまで言うブーンバップのスタイルを彼らはデビューの時点で確立していた。自主制作盤を手に彼らは契約できるレーベルを探していたが、しかし、LAのヒップホップ・シーンの中で徒党を組むようなタイプではなかった彼らに後ろ楯はなく、最終的に契約を結んだのがサンフランシスコを拠点とするヒップホップ色の薄いレーベル、〈OM〉であった。しかし、〈OM〉と契約を結んだことで彼らはヨーロッパにファン・ベースを築くことに成功し、さらに世界的なアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの盛り上がりの波にも乗り、日本を含む世界中に数多くのファンを獲得する。

 グループ結成から解散までの22年の間に、P.U.T.S.は通算10枚のフル・アルバムと2枚のコンピレーション・アルバムを残してきた。彼らの作品の中でも特に個人的に思い出深いのが、筆者がLAに住んでいた期間にリリースされた通算5枚目のアルバム『Stepfather』と次の『FUN DMC』だ。『Stepfather』リリースのタイミングに合わせて彼らの日本ツアーが行なわれたのだが、そのタイミングで筆者も一時帰国し、彼らが日本のヒップホップ・ファンから強く愛されていることをダイレクトに感じた。『FUN DMC』発売時のLAでのリリース・イベントではステージ上にビールサーバーが置かれ、様々なアーティストや関係者と共にステージ上でビールを飲みながらライヴを観るという貴重な経験もさせてもらった。そして、『FUN DMC』の後にシングル・リリースされた「Trippin At The Disco」のPVになぜか一瞬だけ出演することになったことも忘れられない。

 P.U.T.S.のふたりには取材などもさせてもらったが、一緒にいて感じたのがグループとしてのふたりのバランスの良さだ。Thes One は P.U.T.S.のスポークスマンであり、細かい事柄にも気を配りながら、オーディエンスを強く惹きつける勢いや爆発力もあり、明るくポジティヴな面も持っている。ライヴ中はラップもしながらDJもする Double K は、少し下がって Thes One の後ろのポジションにいながら、落ち着いて全体を見ながらムードを作っていくタイプで、決して口数は多くはないが彼のメローな雰囲気は人に安らぎを与える。全く異なるタイプのふたりだからこそ、お互いを補完することができたであろうし、絶対的な信頼が彼らの22年間のキャリアを支えてきたに違いない。

 前述したように、2019年にリリースされたラスト・アルバム『Sincerely, the P』を最後に音楽業界から引退し、ファンを驚かせた彼ら。地元LAでも引退に合わせたライヴは一切行なわれず、ラスト・アルバムだけを残して突然いなくなってしまった印象が強い。彼らの引退に関しては唯一『LA Times』にインタヴュー記事が掲載されているが、彼らが音楽をはじめたときとの環境の違いや自らの年齢なども理由としながら、アーティストとしてやり切ったという前向きな姿勢も感じられる。その一方で記事では Double K の健康状態にも少し触れており、もしかしたらそれが彼らが突如引退した理由のひとつであったのかもしれない。

 Double K の死は本当に悲しい出来事であるが、P.U.T.S.が残してきた音楽はこれからも色褪せることはなく永遠に残っていくだろう。彼らのライヴでの定番曲であり、間違いなく彼らの一番の代表曲である “San Francisco Knights” を聴きながら、この追悼文を締めたい。


https://open.spotify.com/track/0msneWUDfYKAGrifwEDhtl

Mouse On Mars - ele-king

 マウス・オン・マーズが2月26日に新作『AAI』をリリースする。ビッグなゲストを多数招いた『Dimensional People』以来3年ぶりのアルバムだ。
 タイトルは「アナキック・アーティフィシャル・インテリジェンス」の略だそうで、すなわちA.I.シリーズのさらなる解放と拡張……というわけではなく、作曲ツールとしてガチのAIを使用していることに由来するみたい。なんでもこの新作のために、AI技術者やプログラマーたちと新たなソフトウェアまで制作したそうで。すごいです。
 現在シングルとして “The Latent Space” と “Artificial Authentic” の2曲が公開中。どちらもドラム部分と上モノの応酬がとんでもないことに。これはアルバム、かなり期待できそうじゃない?

Mouse On Mars『AAI』
マウス・オン・マーズ『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』

企画番号:THRILL-JP 53 / HEADZ 250(原盤番号:THRILL 537)
価格:2,100円+税
発売日:2021年2月26日(金)※(海外発売:2021年2月26日)
フォーマット:CD / Digital(デジタル配信も同時リリース)
バーコード:4582561393624

01. Engineering Systems 00:22
 エンジニアリング・システムズ
02. The Latent Space 06:26
 ※2020年10月29日リリースの海外での1stシングル(配信のみ)
 ザ・レイタント・スペース
03. Speech And Ambulation 07:06
 スピーチ・アンド・アムビュレイション
04. Thousand To One 05:31
 サウザンド・トゥ・ワン
05. Walking And Talking 06:19
 ウォーキング・アンド・トーキング
06. Youmachine 04:08
 ユーマシーン
07. Doublekeyrock 02:25
 ダブルキーロック
08. Machine Rights 01:42
 マシーン・ライツ
09. Go Tick 04:20
 ゴー・ティク
10. The Fear Of Machines 01:43
 ザ・フィア・オブ・マシーンズ
11. Artificial Authentic 03:35
 ※2021年1月13日リリースの海外での2ndシングル(配信のみ)
 アーティフィシャル・オーセンティク
12. Machine Perspective 00:43
 マシーン・パースペクティヴ
13. Cut That Fishernet 05:31
 カッツ・ザット・フィッシャーネット
14. Tools Use Tools 00:31
 トゥールズ・ユーズ・トゥールズ
15. Loose Tools 01:02
 ルース・トゥールズ
16. Seven Months 02:31
 セヴン・マンスス
17. Paymig 00:47
 ペイミグ
18. Borrow Signs 01:50
 バロウ・サインズ
19. New Definitions 04:15
 ニュー・ディフィニションズ
20. New Life Always Announces Itself Through Sound 01:16
 ニュー・ライフ・オールウェイズ・アナウンシズ・イットセルフ・スルー・サウンド
21. How Will They Talk 05:54
 ハウ・ウィル・ゼイ・トーク

※ Track 21 …日本盤のみのボーナス・トラック

Andi Toma - Instruments, Electronics, Production
Jan St. Werner - Instruments, Electronics, Production
Dodo NKishi - Drums & Percussion
Louis Chude-Sokei - Text & Voice
Yağmur Uçkunkaya - Voice
Tunde Alibaba - Percussion
Drumno - Drums
Eric D. Clarke - Loose Tool
Nicolas Gorges, Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmann, Rany Keddo, Derek Tingle - AI
Zino Mikorey - Mastering(Zino Mikorey Mastering)
Kitaro Beeh - Vinyl Cut
Casey Reas - Computer Graphics
Rupert Smyth Studio - Art Direction
Paraverse Studios Berlin 2020

https://www.mouseonmars.com/

あのポップでキャッチーなエレクトロニック・サウンドが戻って来た。
常に革新的なサウンドを追求しながらも、人懐っこさを失わず、ダンス・ミュージックとしても秀逸で、圧等的なオリジナリティを更新し続けるマウス・オン・マーズの最新作。

マウス・オン・マーズは(2011年より)ドイツのベルリンを拠点とした、ヤン・エスティー(St.)・ヴァーナーとアンディ・トーマの電子音楽デュオ(以前はヤンはケルン、アンディはデュッセルドルフを拠点としていた)で、1993年の結成以来、実験性とポップさを持ち合わせた、常に刺激的なエレクトリック・サウンドを追求してきた(近年、海外ではIDMにカテゴライズされることが多いが、それに留まらない多彩な音楽性を持ち合わせている)。

ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)、アーロン&ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)、ザック・コンドン(ベイルート)、サム・アミドン他が参加した(生楽器や生演奏をフィーチャーし)壮大で重層的な2018年のThrill Jockey帰還作『ディメンショナル・ピープル』以来、約3年振りとなる新作アルバムは、AI(人工知能)技術を大胆に導入し(作曲ツールとしても活用)、アルバム・タイトルそのものが『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』となった。

ライブではドラム&ヴォーカルとして欠かせない存在であったドド・ンキシがドラム・パーカッションで復帰して(前作には未参加)、作家・学者・(英語)教授であるボストン大学アフリカン・アメリカン学部長Louis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)の言葉(彼のテキストをベースにした)や声を大々的にフィーチャーし、新進気鋭のコンピュータ・プログラマー集団(AI技術集団のBirds on MarsのNicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya, Florian Dohmannの3人と、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingle)と共に、またしても独創的で革新的な、最先端なサウンドを創り上げた。

ヤンとアンディは、Birds on Mars、Rany Keddo(ラニー・ケド)、Derek Tingle(デレク・ティングル)と共同で、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを制作し、Louis Chude-SokeiやYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストや声を入力し、シンセサイザーのようにコントロールして、演奏できるようにした。ナレーションとして聞えるものも実際はAIが話しているものだったりする。

タイトルや、コンセプト、制作方法から難解な作品を想像されがちであるが、意外にも近年では最もポップで、フュー_チャリティックなダンスフロアーの高揚感を期待せずにはいられない、ユーザー・フレンドリーな内容となっており、サウンドだけでも十二分に楽しめる作品に仕上がっている。
まず、海外で先行シングルとなった「The Latent Space」と「Artificial Authentic」を聴いて欲しい。

本作のアートワークは、電子アートとヴィジュアル・デザインのためのプログラミング言語Processing(プロセシング)の開発者であるCasey Reas(ケイシー・リース)が担当している。
(ICCでも展示を行っているCaseyはマウス・オン・マーズの二人が参加したザ・ナショナルの2017年作『Sleep Well Beast』収録曲の4曲のMVの監督をしている。Caseyはザ・ナショナル結成前の Scott Devendorf、Matt Berningerとバンドも組んでいた)

マスタリングは、Nils Frahmの2020年の『All Encores』や2018年の『All Melody』、Penguin Cafeの2019年の『Handfuls Of Night』等のErased Tapes作品のマスタリングも手掛けているZino Mikorey(Zino Mikorey Mastering)が担当している。

◎ 全世界同時発売
◎ 日本盤のみ完全未発表のボーナス・トラック1曲収録


Mouse on Mars, the Berlin-based duo of Jan St. Werner and Andi Toma, approach electronic music with an inexhaustible curiosity and unparalleled ingenuity. Operating in their unique orbit within dance music’s nebulous echosystem, the duo’s hyper-detailed productions are inventive, groundbreaking but always possessing a signature joyful experimentation. A genre-less embrace of cutting-edge technologies have ensured that each Mouse on Mars release sounds strikingly modern, a fact made more remarkable when one reflects on the duo’s 25 years of making music. New album AAI (Anarchic Artificial Intelligence) takes Toma and Werner’s fascination with technology and undogmatic exploration a quantum leap further. Collaborating with writer and scholar Louis Chude-Sokei, a collective of computer programmers and longtime Mouse On Mars collaborator/percussionist Dodo NKishi, the duo explores artificial intelligence as both a narrative framework and compositional tool, summoning their most explicitly science-fiction work to date.

AAI compiles some the most immediate and gripping music in Mouse on Mars’ extensive catalogue. Emerging from a primordial ooze of rolling bass and skittering electronics, hypnotic polyrhythms and pulsing synthesizers propel the listener across the record’s expanse. Hidden in the duo’s hyper-detailed productions is a kind of meta-narrative. Working with AI tech collective Birds on Mars and former Soundcloud programmers Rany Keddo and Derek Tingle, the duo collaborated on the creation of bespoke software capable of modelling speech. What appears to be Louis Chude-Sokei narrating through the story is in fact the AI speaking. Text and voice from Chude-Sokei and DJ/producer Yağmur Uçkunkaya were fed into the software as a model, allowing Toma and Werner to control parameters like speed or mood, thereby creating a kind of speech instrument they could control and play as they would a synthesizer. The album’s narrative is quite literally mirrored in the music - the sound of an artificial intelligence growing, learning and speaking. Artwork was provided by the inventor of the computer graphics language Processing, Casey Reas, a further exploration of technology’s application in the context of art.

In Chude-Sokei’s text, as machine learning advances, robots begin to develop language, conscience, empathy - “anarchic” and unpredictable qualities. Drawing parallels between the evolution of human and machine, AAI uses technology as a lens to examine deep philosophical questions. The question of how we use technology and world resources feels particularly poignant and timely as we head into 2021. AAI posits that we must embrace AI and technology as a collaborator to break out of our current cultural and moral stagnation, and to ensure our survival as a species. As Werner explains: “AI is capable of developing qualities that we attach to humans, like empathy, imperfection and distraction, which are a big part of creativity. We need to get past the old paranoia that fears machines as the other, as competitors who will do things faster or better, because that just keeps us stuck in our selfishness, fear and xenophobia. Machines can open up new concepts of life, and expand our definitions of being human.”

ベルリンを拠点に活動しているヤン・エスティー・ヴァーナーとアンディ・トーマのデュオ、マウス・オン・マーズは、尽きることのない好奇心と比類のない創造力で、エレクトロニック・ミュージックにアプローチしている。
ダンス・ミュージックの漠然とした残響(エコー・)システムの範囲内で、唯一無二な軌道で活動している彼らデュオの、非常にきめ細かいプロダクションは、独創的で、革新的でありながらも、常に楽しそうな実験性を有しているのが特徴となっている。ジャンルレスな最先端のテクノロジーを積極的に取り込むことで、マウス・オン・マーズの各リリース作品のサウンドは際立って現代的なものとなっており、デュオの音楽制作の25年間を振りかえってみると、この事実は更に注目に値するものとなっている。ニュー・アルバム『AAI』(Anarchic Artificial Intelligence:アナーキク・アーティフィシャル・インテリジェンス:無秩序な人工知能)は、トーマとヴァーナーのテクノロジーへの強い興味と教養にとらわれない調査を、なお一層、飛躍的に前進させる。作家であり、学者であるLouis Chude-Sokei(ルイス・チュデ=ソキ)、コンピュータ・プログラマー集団、長年のマウス・オン・マーズのコラボレーターでパーカッショニストのドド・ンキシとのコラボーレーションにより、デュオはAI(人工知能)を物語の構想(フレームワーク)として、また作曲ツールとして、これまでで最も明確なSF作品を呼び集めながら、探求している。

『AAI』はマウス・オン・マーズの豊富なカタログの中で、最も即時的で、とても面白い(人を魅了する)音楽をコンパイルしている。
とどろくような低音と素早く軽快に動いているエレクトロニクスの根源的な分泌物から生まれた、催眠術のようなポリリズム、パルシング・シンセサイザーが、リスナーをレコードの範囲を超えたところに駆り立てる。デュオの非常にきめ細かいプロダクションの中には、ある種のメタ・ナラティヴ(歴史的な意味、経験、または知識の物語)が隠されている。AI技術集団のBirds on Mars(Nicolas Gorges、Yağmur Uçkunkaya、Florian Dohmann)、元SoundcloudプログラマーのRany KeddoとDerek Tingleと協力して、デュオは、スピーチをモデリングすることができる特注のソフトウェアを共同制作した。Louis Chude-Sokeiが物語を終始ナレーションしているように思えるのは、実際にはAIが話しているものである。Chude-SokeiとDJ/プロデューサーのYağmur Uçkunkaya(ヤムア・ウツコンカヤ)のテキストと声がモデルとしてソフトウウェアに入力され、トーマとヴァーナーが速度やムードのようなパラメーターをコントロールすることが可能になり、それによって彼らがシンセサイザーのように制御して、演奏することが出来る音声楽器のようなものが作成された。アルバムの物語は、まさに文字通り、人工知能が成長し、学習し、話すというサウンド(音)が、音楽に反映されている。アートワークは、コンピュータ・グラフィックス言語「Processing」の発明者であるCasey Reas(ケイシー・リース )によって提供されており、アートの文脈におけるテクノロジーの活用の更なる探求となっている。

Chude-Sokeiのテキストでは、機械学習が進歩するにつれて、ロボットが言語、自制心、共感、つまり「無秩序」で予測不可能な資質を発達させ始める。人間と機械の進化の間での類似点を引用しながら、『AAI』はテクノロジーをレンズとして、難解な哲学的な問題を検討する。私たちがテクノロジーと世界の資源をどのように使用するかの問題は、2021年に向けて、とりわけ切実で、時宜を得ているように感じる。『AAI』は、現在の文化的で道徳的な停滞を打破し、種(人類)としての生存を確保するために、AIとテクノロジーを協力者として受け入れなければならないと、結論を下している。ヴァーナーが説明しているように、「AIは、共感、不完全さ、気晴らしのような、人間に付随している資質を開発することが出来、創造性の大きな部分を占めている。私たちは、機械を別のものとして、物事をより速く、またはより良くする競争相手として恐れる、古い被害妄想を克服する必要がある。なぜなら私たちがずっと、身勝手さ(利己主義)、恐怖、外国人恐怖症(外国人排斥)で行き詰まったままでいることになるからだ。機械は人生の新たな概念を解放し、人間であることの私たちの定義を拡大することが出来る。」

Theo Parrish - ele-king

 セオ・パリッシュが6年ぶりにアルバムをリリースした。6年という月日は随分と待たせたなと思うかもしれないが、個人的にはあまりそう待った感覚はしなかった。前作『American Intelligence』もなかなかの衝撃的な内容だったし、何より曲数も多かったのもあって……消化するのにかなり時間がかかった記憶がある。
 14年以降は自身が追求していたライヴ・バンド「The Unit」のプロジェクトも一段落したが、拠点であるデトロイトのアーティストをフィーチャーした「Gentrified Love」シリーズで彼のミュージシャンやプロデューサーとのいわゆる「コラボレーション熱」がより一層加速しているように思えたし、レーベルも個人のリリースよりも後輩や仲間のリリースが目立った印象だ。ジオロジー「Moon Circuitry」やバイロン・ジ・アクエリアス「High Life EP」は彼らのキャリア出世作になったし、UKのベテラン、ディーゴ&カイディ、そしてシカゴの同胞スペクターのアルバムも手がける姿を見ると、自身が先陣を切ってシーンの成長を後押ししているような動きも感じられるくらいだった。

 さて、満を辞してリリースされたアルバム『Wuddaji』。とにかく目を引くのはこの不思議なアートワークだろう。何か等高線のようなものが切り貼りされたアートワークはセオ・パリッシュ自身がコラージュしたもの。LPの中に1枚のインサートが入っておりアートワークについても脚注があるのだが、どうやら「Idlewild(アイドルワイルド)」という地図を用いているのだ。
 脚注の中でこの場所はデトロイトから北西部に300キロほど、シカゴからは北東に450キロほど離れたミシガン湖に近い避暑地のような場所で、1912年以降「アフリカ系アメリカ人(African Americans)」の憩いの場として親しまれ、自然観察やスポーツ・レジャーだけでなく、アレサ・フランクリンやフォー・トップスらがライヴを行なったとも記されている。1964年にアメリカで起きた「公民権運動」の影響で一時利用が禁止される時期があったなどしたが、先祖代々この場所での思い出や記憶を語り継ぐ事で第五、第六世代になった家族たちが現在もこの地でヴァケーションを楽しんでいると綴られている。
 おそらくインサートに記されたアイドルワイルドはまさしくハウス・ミュージックのメタファー(比喩表現)だと推測できる。多くの「アフリカ系アメリカ人」にとって精神的、肉体的な癒しの存在であったり、そこで行なわれてきた様々なクリエイション、そして世代を超えても忘れ去られることなく脈々と紡がれる文脈も非常にシンパシーを感じるところがある。「歴史」とは? 「伝承」とは? 過去から現在まで続くストーリーをセオ・パリッシュ自身はこのアルバムを通してとても丁寧に伝えている。

 アルバム全9曲(E1. “Who Knew Kung Fu” はアナログのみ)を通して基本的に全曲「四つ打ち」をベースとした5分から10分のストイックで全く隙のないロング・トラックがびっしりと並んでいる。アートワークのコンセプトに引っ張られてか少し開放的でオーガニックな雰囲気を随所に感じつつも、相変わらずのセオ・パリッシュ節が随所で炸裂している。
 エレクトリック・ピアノの美しい旋律と共に淡々とトラックが進むA1. “Hambone Cappuccino”にはじまり、アルバムに先駆けて先行でリリースされたB. “This Is For You” ではアルバム唯一のヴォーカル・トラックとしてデトロイトのソウル・シンガー、モーリサ・ローズが力強くもどこか妖艶に歌い上げている。

 タイトル・トラックにもなっているC1. “Wuddaji” では激しいリズム・セッションを披露したかと思えば、続くC2. “Hennyweed Buckdance” ではジャジーなギターリフのようなサウンドがアルバムの音楽性をグッと高めているなど、どの曲も非常にミニマルで渋さもありつつも、サンプリング主体のトラックメイクから本格的なバンド制作や数多くのプロデューサーとのコラボレーションを経て進化~深化したセオ・パリッシュがプロデューサーとして新たなステージに到達した証拠だろう。

 アナログから、CD、カセットテープ、ストリーミングまで全てのフォーマットで積極的にリスナーに届ける気概も含め、アルバム全体のコンセプトやパッケージングまでディテールに拘っている部分はさすがの完成度。ハウスの偉大な先生が2020年に見せてくれた「プライド」に背筋がピンと伸びる。

10 Selected Ambient / Downbeat Releases in 2020 - ele-king

 2020年のほとんどを、僕はロンドンの自分のフラットで過ごした。コロナ禍による二回に及ぶロックダウン(都市封鎖)や、それに準ずる段階的外出規制によって、イギリスに住む者の行動はかなり制限されていた。2月までクラブやライヴ・ヴェニューへ行っていたのが別の世界の出来事のように感じられるほど、自分の生活スタイルも変わった。運動のため頻繁に外出するようになったり、自転車で遠出するようになったり、人混みへ注意を払うようになったり。自分が4年ほど住んでいる街を違った視点から見る機会が増えた。
 今年自分が聴いてきた音楽を振り返ってみると、ダンス・ビートよりも、アンビエントやダウンビートと呼ばれる作品が多い。変わりゆく周囲の環境と自分との関連が放つ何かを理解するうえにおいて、頭やケツをバウンスさせる運動神経よりも、隙間がある音に消えていく感覚の方が研ぎ澄まされていくのかもしれない(と言いつつも、年末の紙エレで選んだエレクトロニック・ダンスたちには心底感動させてもらった。アンズのNTSレディオでのヘッスルオーディオ・スペシャルセットを聴くといまも涙が出そうになる)。
 というわけで、今回のサウンド・パトロールは、いわゆるダンス系ではないものを10作品選んだ。もちろんここに載っていない素晴らしい作品もたくさんある。これは自分の独断で選んだ作品リストに過ぎないが、2020年という音楽シーンである種の停止ボタンが押された一年とはなんだったのかを振り返るきっかけになれば幸いである。2年前と同様にフィジカルで持っているものを中心に選び、以下、テキストと写真とともに掲載する。

Kali Malone - Studies For Organ | Self-Released

 アメリカはコロラド出身で現在はストックホルムに拠点を置くパイプオルガン奏者、電子ミニマリスト、カリ・マローンの去年出たサード・アルバム『The Sacrificial Code』は、非常に多くの関心をひいた。この自主リリースされたカセット作品『Studies For Organ』は、去年作品のリハーサルとしてレコーディングされたもので、2017-18年の間にストックホルムとヨーテボリで録音されたと帯にはある。再生してみて驚いたのが低音の力強さである。その屋台骨の上でミニマルに展開されるメロディーは、スザンヌ・チャーニらシンセシストたちが描いてきたサウンドスケープと重なる部分があるかもしれない。不断なく動いていた旋律が変化をやめて持続のみに切り替わるエンディングに息を呑んだ。サラ・ダヴァチやカラーリス・カヴァデイルの活躍を鑑みるに、現代の電子音楽シーンにおけるパイプ・オルガンの存在感は増している。この「呼吸をしない怪物」が現在においてサウンドに内胞しているものを感じる機会が今後も増えていくのかも。

Alex Zhang Hungtai & Pavel Milyakov - STYX | PSY Records

 まさかのコラボレーションである。LAのサックス奏者、アレックス・チャン・ハンタイ(aka ダーティ・ビーチズ)とモスクワの電子作家、パヴェル・ミリヤコフ(aka バッテクノ)がタッグを組み、後者が今年新設したレーベル〈PSY X Records〉からリリースされたのが、このアンビエント作品『STYX』だ。フォーマットはカセット(とデータ)で、テープはモスクワのミリヤコフから直接届いた(彼は今作のミックスとマスタリングも手掛けている。ミリヤコフは自身のプロダクション技術をサブスクライバーに提供する試みも最近スタートした)。オクターバーなどのエフェクターを駆使したミリヤコフのギターとAZHのサックスが、朝焼けのような美しいテクスチャーを生んでいる。モジュラー・シンセが作り出すアグレッシヴなグリッチとサックスの掛け合いなどもあり、単なるアンビエント作品の範疇にもとどまっていない。半透明の青いケースに包まれたカセット・ケースのデザインも秀逸。化学記号のようなシンプルなタイトルは、音の物質性へとリスナーを誘い込む。

Lisa Lerkenfeldt - A Liquor of Daisies | Shelter Press

 オーストラリアはメルボルンを拠点に活動するリサ・ラーケンフェルドは、自身のデビュー・アルバム『Collagen』を、バルトローム・サンソンとフェリシア・アトキンソンが率いる〈Shelter Press〉から今年の8月に出していて、6月に先行する形で同レーベルからカセットでリリースされたのが今作『A Liquor of Daisies』である。アルバムは持続するシンセ、金属的テクスチャー、ディストーション・ドローンなど、手法面で多彩。それに対して、このテープ作は同じピアノのモチーフをループ+電子音というシンプルな構成ではあるものの、モチーフを変調させて驚きを生み、分厚い壁から高原を吹き渡る風のような音へと徐々に変化するエレクトロニクスが、39分48秒を永遠へと変化させる。この呼吸の長さが、LPよりもこのアルバムを特別なものにしている。ジャケットには「ゼロクライサム・ヴィスコサムへの詩、永遠のデージー(註:両方ともオーストラリアの花)、多様な祈る者たちと機械のためのプロポーザル」とある。なお、このカセットのバンドキャンプでの売り上げのすべては、ブラック・ライヴス・マター運動の一環として、オーストラリアのアボリジニ支援団体へと寄付された。

Jon Collin & Demdike Stare - Sketches of Everything | DDS

 2月、僕はロンドンのカフェ・オトで二日に渡って行なわれたデムダイク・ステアのライヴへ行った。そのときのライヴ・リハーサルがカセットになった『Embedded Content』が素晴らしいというのは、別冊紙エレの家聴き特集でも書いた。その次の彼らのリリースになったのが、このランカシャー出身で現在はスウェーデンに拠点を置くギタリスト、ジョン・コリンとのコラボレーション作品『Sketches of Everything』で、さらに連作となる形でカセット『Fragments of Nothing』も出た。フォークやブルースを電子的に自由解釈したコリンのギターを、DSがリヴァーヴやエコーで空間にちりばめ、それがフィルターでねじ曲げられ、カモメの音が遠くへと運んでいく。ジャケットにはコリンの家族写真アーカイヴが借用されていて、ある種、記憶がテーマになっていることは間違いない。ここには憑在論的ホラーではなく、「ああ、昔こういうことがあったよね」という単純な回想が音になっている優しさがある。冒頭10分のなんと綺麗なことだろうか。

Pontiac Streator - Triz | Motion World

 ポンティアック・ストリーターはフィラデルフィアを拠点に抽象的なビートとアンビエントを世界にドロップしている。その生態はアンダーグラウンドに潜っているため、サブスクにはコンピ参加以外作品がなく、流通が少ないレコードかバンドキャンプでその作品にアプローチするしかない。他にもいくつかグループでの名義があり、『Tumbling Towards A Wall』という傑作を今年発表した同じくフィラデルフィアのアンビエント作家ウラ・ストラウスとはアルバム『11 Items』を去年リリースしている。今作『Triz』はソロとしては2作目のアルバムにあたる。彼の作るビートは、LAのようにコズミックではなく、ロンドンのようなハードなホットさがあるわけでもなく、そのアンビエンスはベルリンのようにダークでグリッチィでもない。彼は自分の音を持っている。リズムはアメーバのように俊敏さ柔軟さを兼ね備え、ベースは鼓膜に息を吹きかけるように流れ、ベリアルのようにどこかから採取された音声が滑らかにこだまする。最後の曲名は “Stuck in A Cave” であり、抜けられない洞窟にいるものの、鳥の声が聞こえてくる。困難にいるときでも、想像力は外に向くことができる。ここには希望がある。

Experiences Ltd.

 ベルリン拠点のプロデューサー、シャイ(Shy)はスペシャル・ゲストDJやフエコSとのゴースト・ライド・ザ・ドリフトなどの名義で活動している。彼は〈bblis〉や〈xpq?〉のレーベルを通して、いわゆるアンビエントやダウンテンポという既存ジャンルの両地点の間を漂う楽曲を紹介してきた。それに加えて彼が2019年に開始した〈Experiences Ltd.〉は、今年に入り、頭一つ抜けた力作を続々とリリースした。フィラデルフィアのウラ・ストラウスのウラ名義『Tumbling Towards A Wall』は、テープ・ループで劣化してくような淡いベールに包まれたテクスチャーを、ピアノなどのサウンド・マテリアルのループや重低音で色づかせ、3~5分ほどの長さの楽曲で8つの異なる光景を描いた傑作である。彼女がベルリン拠点のペリラ(Perila)と組んだログ(LOG)はよりクリアなテクスチャーのもと、肉声などを取り込み、異なる角度から静寂へとアプローチ。他にレーベルからは、ニューヨークのベン・ボンディや、日本のウルトラフォッグも参加しているプロジェクト、フォルダー(Folder)といったトランスナショナルな人選が続いている。2020年最後のリリースになったカナダのナップ(Nap)による7インチ「Íntima」は、90年代のアブストラク・ビートがよぎるなど、レーベルが今後もそのカタログを変形させていく可能性を示唆している。なお、レーベル・リリースのマスタリングの多くを手掛けているのは、デムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカー。

Vladislav Delay | Bandcamp Subscription

 今年僕が最も聴いたプロデューサーはヴラディスラフ・ディレイことサス・リパッティである。〈Chain Reaction〉諸作をコンパイルした『Multila』のリマスター、ソロ作『Rakka』とスライ&ロビーとの『500-Push-Up』、マックス・ローダーバウアーとの『Roadblocks』、ルオモ名義の『Vocalcity』リマスターなど、力強いリリースが今年は続いた。いま、彼はバンドキャンプで自身の作品のサブスクリプション・サービスを行なっている。この機会に彼のキャリアを聴き込んでみようと思い、僕は現在それをサブスクしている。月10ユーロでVD名義の作品ほとんど全てが非圧縮音源でダウンロードできるうえ、サブスク限定の音源発表も毎月ある。フィンランドの孤島に建つスタジオで、グリッチ・ノイズからフットワークにいたるあらゆる音像を、毎朝早起きしてリパティはせっせと作り、自然とジャズ、読書からインスピレーションを受けている(まるで村上春樹である)。あるインタヴューによれば、リパッティはオシレーターとフィルターでできることの限界に早い段階で気づいたらしい(といっても充実したユーロラックのセットを使用している)。そして向かったのはダブである。その可能性をミュージック・コンクレートやテクノ以外のリズムへ切り開いた点において、彼は当初つけられたベーシック・チャンネル・フォロワーという枠を超えて自身のスタイルを確立した。改めて、すごい作家である。グリッチの空間化を極めた『Anima』(2001)と高揚感溢れるリズム&サウンドの “Truly” のリミックス(2006)は同じ宇宙に存在しえるのだ。

Suzanne Ciani - A Sonic Womb: Live Buchla Performance at Lapsus | Lapsus Records

 ブクラ・シンセサイザーを駆使し、電子音楽からピンボールの効果音に至るまで、70年代から歴史的な仕事をしてきたシンセシスト/作曲家、スザンヌ・チャーニ。彼女の昨今の電子音楽シーンにおける再評価は、デザイナー/DJ、アンディ・ヴォーテルが共同設立者に名前を連ねる〈Finders Keepers〉からの2016年作『Buchla Concerts 1975』にはじまる。それ以降、彼女はブクラ200eを抱え世界をツアーし、コンサートとトークによる教育を通し、いまもなお音を合成する意義を説いている。今作は2019年のバルセロナでのコンサートの録音であり、70年代にチャーニが使用していたシーケンサーを発展させた即興演奏を聴くことができる。往年のチャーニ作品で使われているアルペジエーターの旋律が、ステレオの左右を拡張せんとばかりに旋回し(オリジナルは左右ではなく四方の異なるスピーカーを使用したクアドロフォニック)、スネア化した短波ノイズが連打されるとき、客席から歓声が上がる。今作の開始と終わりには波の音がある。ただ理想化しているだけかもしれないけれど、あなたがブクラで作る波の音はなぜかとてもオーガニックに聞こえるんです、という2016 年のレッドブルミュージック・アカデミーの受講生の質問に、チャーニはシンプルに「それは複雑だからです」と答えている。楽曲が生む興奮に加え、独自の発振回路を持つブクラでオシレータとフィルターを入念に組み合わせて生まれる彼女の波の音は、自然を人間の側から思考する重要な事例でもあるのだ。

Drew McDowall - Agalma | Dais Records

 70年代から90年代にかけて、コイルやサイキックTVの長年の共作者、あるいはそのメンバーとしても知られる、スコットランド出身で現在はブルックリンを拠点に置くドリュー・マクドウォル。近年はモジュラー・シンセを表現メディアの主軸においている。2年前に出た、同じくニューヨーク拠点のモジュラー・シンセシスト、ヒロ・コーネとのEP「The Ghost of George Bataille」が示唆していたかのように、ソロとしては5作目の『Agalma』は、数々の客演が目白押しになっている。ともに実験的シンセシストであるカテリーナ・バルビエリロバート・アイキ・オーブリー・ロウとの共同作業において、逆行するサウンドや加工された肉声が、ハープなどの異なるマテリアルとともに、あらゆる方向から飛び交ってくる。先に書いたカリ・マローネの参加曲は、とぐろを巻くようなベースと左右の空間を埋め尽くすリードが、オルガンと奇怪に絡み合う。ヴァイオリンやダブルベースといった楽器も今作には多数散りばめられている。ノイズ/エクスペリメンタルの若手として知られるバシャー・スレイマン、エルヴィン・ブランディや、カイロのズリとの共作や去年のデビュー作『Dhil-un Taht Shajarat Al-Zaqum』で頭角を現したサウジアラビアのシンガー、ムシルマ(MSYLMA)らが参加したLP盤の終曲は、楽器とエレクトロニスのオーケストレーションとヴォーカルが圧巻のシンフォニーを見せる。ギリシャ語で彫像を意味する「agalma」が各楽曲の番号とともに割り振られた今作は、曲ごとに異なるサウンド・フォームを模索している。一貫して広がる暗さに引きずり込まれ、聴くことを止めることができない傑作だ(レコードは手に入れるタイミングを逃してしまった……)。

Burial + Four Tet + Thom Yorke - Her Revolution / His Rope | XL Recordings

 最後はウワサのアレ。ロンドンの三つのレコ屋がこの12インチの入荷を告知した翌日に在庫をチェックしたところ、すべての店舗ではソールドアウトになっていた。限定300枚だしな、と諦めていたところ、その一週間後にとあるレコ屋のサイトを眺めていたら、どういうわけか入荷していて入手することができた。フォー・テットが自身のレーベル〈Text〉から、それまでのデザインとは異なる黒ラベルで発表したベリアルとの最初のコラボ12インチ「Moth / Wolf Club」が出たのが2009年。そこにトム・ヨークが加わった「Ego / Mirror」が2011年、そして翌年には再び2人に戻って「Nova」をリリースしている。今回の曲調は前回のようにハウスではなく、減速したツーステップでもなく、いわゆるダウンテンポと括られるスローなビートになっている。これまでもそうであったように、今作にもベリアル的なクラックル・ノイズが散りばめられ、フォー・テット的な色彩を加える流浪のシンセ・リードがあり、どこからか現在に回帰してくるサンプリングが澄んだ情景を生む。ヨークの声はトラックの前面に出ているというよりは、キックによって区切られる間隔でこだましているかのよう。レコードのランナウト(曲とラベルの間)に「SPRING 2020」とあるので今年になって録音されたものなのだろうか。であるならば、ヨークの歌詞が放つ、犠牲がともなう革命、完璧な自己破壊といったモチーフは、パンデミックやブレグジットとも時代的に呼応しているのかもしれない。それが透き通るようなトラックのなかで鳴っている。2021年、この12インチ はどのように聴こえるのだろうか。

interview with Yoh Ohyama - ele-king

 ゲーム音楽に対する風向きが変わった。あるいは、ゲーム音楽が現在一線で活躍する様々なミュージシャンたちのルーツになっていることが、多くの人びとに理解されはじめた。そのきっかけのひとつを作ったのが、2014年のドキュメンタリ作品「Diggin' In The Carts」だったことは間違いないだろう。同ドキュメンタリのディレクターであるニック・ドワイヤーは2017年、〈Hyperdub〉主宰コード9と共同で「Diggin'~」のレトロゲーム音楽コンピレーションを制作する。このとき ele-king はニックへの取材を通してゲーム音楽研究家 hally こと田中治久の存在を知り、そこから『ゲーム音楽ディスクガイド』の刊行へと歩みを進めるのである。
 同書はゲーム音楽を「ゲームプレイの追体験装置」ではなく、ゲームを知らなくても楽しみうる「一個の音楽」として捉え直し、40年に及ぶ歴史のなかから950枚の名盤を選びぬいた。ありがたいことにこの試みは高く評価され、本年には続刊を実現するとともに、〈Pヴァイン〉もゲーム音盤の復刻を手掛けるようになった。
 その第一弾となったのが、名だたるレア盤のひとつ「ガデュリン」(スーパーファミコン)のサウンドトラックである。大山曜氏はそのBGMの生みの親のひとり。ゲーム音楽家であると同時にプログレ・バンド、アストゥーリアスでの活動でも高名だが、その人物像には謎も多い。ふたつのシーンをまたいで活動してきた大山氏の歩みを、この機に改めて追いかけてみよう。

「ドラゴンクエスト」しか聴いていなかったんですよ。参考にしつつも、似たようには作れないと思いました。そこに自分の色が出たのが「ガデュリン」をはじめとする当時の音だったのではないかなと。

まずは、「ガデュリン」サントラ再発、おめでとうございます。

大山:古いサントラにまた光を当てていただいて、ありがとうございます。聴いて喜んでくださる方、思い出に思ってくださっている方がいらっしゃるなんて夢にも思いませんでした。実は「ガデュリン」のサントラが当時出ていたことを、ほとんど覚えていなかったんですよ。正直なところ、作ったまま埋もれているものだと思っていました。

当時のゲームサントラはアーティストではなくゲームメーカー主導で作られることも多かったので、そのせいかもしれませんね。

大山:そもそも実際にゲーム中で鳴っている音を聴いたことがなかったんですよ。僕たちは作曲だけで、データ化は別の方々がやっていたんですね。今回のリイシューにあたって初めて聴かせていただいたんですが、自分でも十何年ぶりに聴いて、面白いなと思いました。まだ「ゲーム音楽はこう作る」みたいなセオリーを持っていなかったので、戦闘シーンひとつとっても、作り方にいろいろな工夫がされていて、頑張ってるなと。むしろ、こういう尖った感じをいまやっていることに活かしたいなと思いました。

いまのご自身の作風とはだいぶ違っていると思われますか?

大山:いえ、基本は一緒だと思うんですよ。ただ、いまのゲーム音楽はまず発注があって、「なんとか風にしてくれ」と言われることが多いですが、当時はそういった依頼がなくて、何もないところから形にしていっているのが面白いなと思いました。プログレが大好きなので、出てくる音はやっぱりプログレのエッセンスがどこかに詰まっているのだと思います。変なところで変拍子が使われていたりとか、ホールトーンの音階が使われていたりとか(笑)。

旧サントラの未収録曲も、今回ご自身のアレンジという形で収録しました。

大山:ゲームの音がすごく素朴な印象だったので、それに近づけたものを今回5曲作らせていただきました。やっぱり同じCDに入る以上、あまり音質的に差が付いちゃいけないなと思ったので、チープな感じも出しつつ、いま聴いても面白いかなと思えるギリギリの線でやってみました。どうやったら当時の音源に近づくか、色々試しながら作りました。

データ化は別の方々だったとのことですが、そのあたりをもう少し。

大山:当時手掛けたゲーム音楽は、すべてそうですね。ゲーム会社さんのほうに耳コピーでデータ作成するチームがあったんです。僕らはカモンミュージック(MIDIソフト)を使っていて、作った楽曲はそのデータをお渡ししたり、あるいはテープに録音してお渡ししたりしていました。音色などもデータ作成の方々に作っていただいています。ドラムのなかった曲に、後からスネアっぽい音を足してもらったりもしましたね。

そういう意味では、アレンジャー的な役割も担ってもらっていたわけですね。

大山:ただそんな流れだったので、実は耳コピーが間違えていたのか、僕が作った曲とは音符が違ってしまっているところがあったりもします。和音が変わって、逆に面白い感じになっている曲もありましたね。あとは仕様の関係か本来16分音符のリズムが8分音符になっていたりもしました。いずれにしても、もうその音で世に出たわけだし、ゲームをプレイした皆さんはむしろその音に馴染んでいらっしゃるわけだし、そのままでいいかなと思っています。

データ作成の人と顔を合わせることは、あまりなかったのでしょうか?

大山:そうなんです。「ディガンの魔石」(1988)のデータ作成が崎元仁さんだったことなども、だいぶ後になってから知りました。もう崎元さんがすっかり有名になった後にお会いする機会があって、そのときに「実は僕がやっていました」と教えていただいたんです。

ちなみに、当時のテープがいまも残っていたりは……。

大山:今回探してみたら見つかったんですが、いや、ひどいものです(笑)。YAMAHA DX-7 などで作っていますが、いま聴かせるのはお恥ずかしいところがあります。リメイクであれば喜んでやらせていただきます(笑)。「シルヴァ・サーガ」(1992)の頃まではそういうやり方でした。Performer とかを使いだしたのは少し後で、ZIZZ STUDIO の時代になってから Cubase に乗り換えて、以降ずっと Cubase ですね。

「ガデュリン」は「ディガンの魔石」と世界観が繋がっていて、楽曲も半分ほどは「ディガンの魔石」からのリメイクになっています。やはり音楽制作にあたっても「ディガンの魔石」と関連付けてほしいというオーダーがあったのでしょうか。

大山:確かあったと思います。スーパーファミコンで出すにあたって足りない部分を補った感じだったのかなと。仕様が変わって作り替えた部分もあるかもしれません。発注の流れは同じでしたね。

リメイクとあわせて、同時に「ガデュリン」のための新曲を書き下ろして、みたいな。

大山:そういうことだったと思います。たしか「こういうシーンにこういう曲を書いて欲しい」というクライアントとの打ち合わせがあったと思うんですよ。津田(治彦、当時のフォノジェニック・スタジオの責任者)さんは全然覚えてないとおっしゃっていましたけど。ともあれ、全体の流れはプロデューサーである津田さんが把握しておられて、僕は「こういう音楽を」という指示を受けて作っていたというのが正しいと思います。

「湖のシーンです」というような文章が三つぐらいあるだけで、それを見て曲をどんどん作っていく。ゲームとほぼ同時進行で作っているので、制作途中にゲーム画面を見ることはほとんどありません。

大山さんといえば、やはりルーツであるプログレについてお聴きしないわけにはいきません。まずはプログレッシヴ・ロックとの出会いについてお教えください。

大山:14歳、中学二年生のときに『クリムゾン・キングの宮殿』と出会ったのが最初です。それからマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』。この二枚をほとんど同時期に聴いて、それまでポップスばかり聴いていたので非常に衝撃を受けたのをおぼえています。それからいろいろと漁り初めて。

エグベルト・ジスモンチにも傾倒されていたそうですね。そのあたりもアストゥーリアスのアルバムには反映されていますよね。

大山:はい。だいぶ影響を受けたと思います。

プログレ以前はミッシェル・ポルナレフにハマっておられたとか。

大山:プログレに行く少し前ですね。ポップスも色々好きだったなかで、ポルナレフがいちばん気に入っていました。アメリカンなロックよりもヨーロッパの香りのほうが好きな性分だったみたいで、それでプログレに見事にハマってしまったという感じですね。

中学生時代からバンド活動をされていたそうですが、当時はハードロックやフュージョンなどを?

大山:そうですね。友達が好きなバンドとかを。でも、四人囃子もやっていましたね。中学生のときに初めてやったバンドで。ファースト・アルバムの曲などをカヴァーしていました。四人囃子はリアルタイムで聴いていたんですが、1976~77年ぐらいからですね。『Printed Jelly』以降なので、森園(勝敏)さんが抜けた後ですね。

その少し後に、マルチカセットレコーダーで多重録音の実験をはじめられたと。

大山:18~19歳の頃ですね。高校時代はバンド活動ばかりやっていました。この頃はスペース・サーカスが好きでしたね。当時はちょうどフュージョン・ブームで、テクニカルなベーシストにあこがれたころもありました。

そこからフォノジェニック・スタジオ入社に至ったのは?

大山:23歳のときに脱サラをしまして、音楽関係の仕事を探していたところ、津田さんの会社の張り紙が石橋楽器にあったんです。レコーディングとシンセサイザー・マニュピレートの両方をやっているということで、話をうかがいに行ったら「じゃあ、来なよ」ということになって、そこで働きはじめたんです。津田さんから「実は僕もプログレ・バンドをやっていたんだ」という話を聞いたのは、その後なんです。新月の名前は知っていましたけど、門を叩いたのは本当に偶然だったんです。そこでプログレ好きに改めて火がついたという。普通のジャンルの方だともう少し違う生き方になっていたんじゃないかなといま思います。

ご入社が1985年ですね。しばらくはマニュピレータ業務が主だったのでしょうか?

大山:そうですね。特にカモンミュージックでの打ち込みが多かったです。あの頃はスタジオに呼ばれて行って、譜面を渡されて「一時間後にみんな来るからそれまでに全部打ち込んでおいて」というのが多かったです。バンド・メンバーがいるときだと大変でしたね。こっちのせいで遅れてはいけないので、必死でした。いろんな現場に行って、おかげ様でだいぶ鍛えられました。猛スピードで入力していると、見ている皆さん圧倒されて驚かれるんですよ。それで場の雰囲気が変わったりすることもありましたね。とにかく毎日やっていたので、相当早かったと思います。

マニュピレータ時代には、レベッカのお仕事を多くされていますね。

大山:呼ばれればどこにでも行っていたんですけど、そのなかで、当時とても売れていたレベッカのお仕事を数多くさせていただきました。リーダーの土橋安騎夫さんとはそれ以来の付き合いで、バンドが解散してからもお仕事でご一緒させていただいております。弊スタジオ(ZIZZ STUDIO)代表の磯江(俊道)も、その流れでレベッカと一緒に回っていたことがあったりして。ファミリーのような感じというか、僕らは土橋さんの人脈から派生した子分たちがやっている会社みたいな感じではありますね。最近はご一緒に仕事をすることはなくなっていますけど、最もお世話になったバンドかもしれません。

そうした業務のなかに「ゲーム音楽の制作」が舞い込んでくるようになったのは?

大山:単純に、当時ゲームの音を作る音楽会社が少なかったというのが、まずあると思うんです。最初に「ミネルバトンサーガ」(1987/ファミコン)の音楽をやって、それを気に入っていただけたので、続けてお仕事をいただくようになりました。フォノジェニックで請けていたのは、たぶんアーテックさんの仕事だけだと思います。

発売時期でいえば「獣神ローガス」(1987/PC-9801)が先ですが、制作そのものは「ミネルバトンサーガ」のほうが先だったのですね。

大山:そうだったと記憶しています。ゲームの音楽を作るのはもちろんこのときが初めてでした。セオリーみたいなものがまだない時代だったので、すぎやまこういち先生の作品を参考にして、どうやって三つの音で全部作ればいいのかなど、音の組み立て方を研究したりしましたね。逆にいうと、「ドラゴンクエスト」しか聴いていなかったんですよ。参考にしつつも、似たようには作れないと思いました。そこに自分の色が出たのが「ガデュリン」をはじめとする当時の音だったのではないかなと。FM音源ならもう少し多く音数を使えたと思いますが、効果音で使うから結局3音だけになったりもしましたね(筆者注:たとえば「獣神ローガス」が3音のみ)。

1987年ごろにアストゥーリアスを結成しておられます。80年代に3回ライヴがおこなわれて、第1回のライヴのときに後にバッファロー・ドーターを結成する大野由美子さんが参加しておられました。

大山:大野さんは津田さんの知り合いといいますか、フォノジェニック・スタジオに彼女のバンドがよく出入りしていたんです。それで仲良くさせていただいて。僕の曲はピアノがけっこう大変なので、大野さんにピアノを頼んで、花本(彰。新月メンバー)さんにも割と簡単なところを弾いてもらう形で、当時ライヴをやりました。彼女はピアノもヴァイオリンも弾ける方で、クラシカルな素養があるんです。当時、20歳ぐらいだったんじゃないですかね。大野さんのバンドは津田さんのところに録音に来て、色々学んでいたんだと思います。僕自身も多くを学ばせてもらいました。いい環境の仕事場だったと思います。

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現代のプログレってプログレ・メタルが主流で、いわばドリーム・シアター系列のすごく巧い人たちも数多くいるわけですが、それは真似はできないですし、そういう人たちとは違うなというのをいつも思いますね。

2回目のライヴでは、桜庭統さんの DEJA-VU と対バンをされていますね。

大山:桜庭さんとは、当時はレーベルメイトのような感じで仲良くさせてもらっていました。その後すっかり大物になられて、最近はお会いしていませんが、「竜星のヴァルニール」(2018)では桜庭さんと ZIZZ STUDIO が一緒に音楽をやらせていただいたりもして。

桜庭さんが楽曲を手がけた「アイルロード」(1992/メガCD)という作品では、音楽録音がフォノジェニック・スタジオでした。

大山:ああ、そういうこともあったかもしれません。これは僕がエンジニアをしていますね。桜庭さんがここで録らせて欲しいと相談に来たと思うんです。DEJA-VU をやっていた頃。彼はまだ学生で、フォノジェニックに手伝いにきたこともあったんですよ。

アストゥーリアス結成当時にデモ・テープを制作しておられますね。あれは市販もされたのでしょうか?

大山:そうです。ファースト・ライヴをやったときに一本いくらかで売って。売上はみなさんへのギャラに回したような気がします。音のほうはいま聴くとお恥ずかしいですね。

後の作風にはない、プログレハードっぽい曲もあったりして新鮮でした。

大山:当時作っていた曲を色々入れていたんだと思います。

デモテープには「ミネルバトンサーガ」や「ディガンの魔石」の楽曲、それに、後に「シルヴァ・サーガ」に使われる曲なども入っていますね。順序としては、ゲーム用に作った曲をアストゥーリアスに持ってきたのか、それともその逆か、どちらになりのでしょうか?

大山:まずゲームの音楽として作って、気に入ったものをアストゥーリアスで使わせていただいたという形です。フレーズを使わせていただいたりもしていますね。アストゥーリアスでの作曲とゲームでの作曲は、僕のなかですごく似ているところがあるんです。特にRPGの世界観とは通じるものがあるんですよね。湖のシーンや森のシーン、そういったもののために作るというお題があると、すごくイマジネーションが湧いてきて、自分でもお気に入りのメロディがたくさんできたんです。これはぜひ使わせてほしいと(ゲーム制作サイドに)言って、入れさせていただいたと思います。

ゲームのために作曲する場合、まず何かしら資料が来るわけですよね。

大山:当時はペラ1枚くらいの紙資料しかいただいていなくて。少しは絵もあったと思いますけど、基本的には「湖のシーンです」というような文章が三つぐらいあるだけで、それを見て曲をどんどん作っていくという。これはいまでもそうなんですけど、ゲームとほぼ同時進行で作っているので、制作途中にゲーム画面を見ることはほとんどありません。画面をみるのはほとんど最後ですね。もっとも僕自身はゲームが下手で、「獣神ローガス」も最初の面どまりだったんですけどね。

しっかり画面と合致しているかどうかは、終わってみるまで自分ではわからない。

大山:逆にいえば、こちらの思う通りに作って、それが気に入っていただけたからよかったというところですね。気に入ってもらえると、若かったので調子づいちゃって、じゃあ次はもっと気に入ってもらおうと、楽しく前向きに作らせていただいたのを覚えています。

当時はあまりリテイクなどもない感じだったのでしょうか。

大山:いまと比べるとだいぶ少ないかもしれません(笑)。昔はシーンの指定などもいまほど細かくありませんでしたし、アーテックさんもあまり発注した経験がなく、お互い手探りだったなかででき上がったものを気に入っていただいたので。ただ、「ガデュリン」のサントラはいま聴くとすごく短いなと思いますね。あれっ? もうこれで終わり? みたいな。当時はデータサイズの問題があったのかもしれません。

アーテック作品では「サイコソニック」という名義を使っておられましたが、あれはバンド名か何かでしょうか?

大山:津田さんがフォノジェニック・スタジオを会社登録するときに、音楽スタジオ以外の業務はサイコソニックという株式会社名にしたんです。それでサイコソニックとフォノジェニックを使い分けていたんだと思います。どちらも一緒なんです。

サイコソニックからシリウスAというユニットのアルバムが出たりもしていました。

大山:僕はお手伝いしただけだったのであまり記憶にないのですけど、ありましたね。津田さんが手がけてCDになっていましたね。ああ、そういえば津田さんのバンドで「Phonogenix」というのがありましたね。

1988年に岡野玲子原作コミック『ファンシィダンス』のイメージ・アルバムで『雲遊歌舞』というのが出ているのですが、そこに Phonogenix 名義の楽曲が1曲ありますね。手塚眞さんがプロデュースされていて、メンツがかなり豪華なんですよね。

大山:これ面白いですよね。サエキけんぞうさんとかも入っていて。ライヴをやった記憶もありますね。

Phonogenix の活動はどのような感じだったのでしょうか。

大山:津田さんと花本(彰。新月メンバー)さんが中心で、バンドとしてレコードを出していた他に、手塚眞さんと仲が良かったこともあって、そちらからお仕事をいただいたりとかしていましたね。そんなにしょっちゅうライヴをやったり制作をしたりということはなかったかと思います。依頼があればチームでやっていました。

アストゥーリアスで3枚のアルバムを発表しておられますが、その後しばらく休眠期間に入っておられます。

大山:アルバムがあまり売れなくて、〈キングレコード〉との契約期間も終わり、それでいじけて9年間休んでいたというところです。

1996年ごろに、Soul Bossa Trio のアルバムに参加しておられましたね。

大山:はい。(東京パノラマ)マンボボーイズの方ですよね。マニュピレートで参加させていただきました。スタジワーク中心で。この頃は呼ばれればどこへでも行って、ということが多かったですね。ゲーム音楽を再び作るようになったのは、ZIZZ STUDIO がはじまったあたりからですね。色々と依頼をいただいて再び作るようになりました。

ZIZZ STUDIO が初参加したニトロプラス作品「Phantom -PHANTOM OF INFERNO-」が2000年ですね。大山さんが ZIZZ STUDIO に参加することになった経緯は?

大山:僕は1994年ごろにフォノジェニック・スタジオを辞めていて、磯江くんもその後に辞めているんですが、彼がゲーム音楽業界を開拓していって、ニトロプラスさんとお付き合いができて、それで手伝ってくれないかみたいな話が来たのが「Phantom」あたりからだったと思います。いまは社員ですが、当時はお手伝いだけだったんです。磯江くんがいなければゲーム音楽の世界とは交流がなかったですね。ZIZZ STUDIO と出会えたことを感謝しています。

ニトロプラスさんという先鋭的なメーカーとのタッグで、ZIZZ STUDIO の存在感はより強まったように思います。

大山:そうみたいですね。当時新進メーカーだったニトロさんは、すごく音楽に力を入れている会社で、とことんやってくれと言われて。BGMを打ち込みだけで済ませてしまうところも多かったなかで、とにかく全部に生楽器を入れてくれと。そんなに予算がなかったので、自宅でギターやベースを弾いたりして。それでニトロさんやお客さんに喜んでいただいたのが、いまにつながっている感じがします。

とても低予算とは思わせない、高密度な音だったと思います。

大山:実際のところは、採算度外視でやっていたようです(笑)。弊スタジオが現在の場所に移転したのは7~8年前なんですけど、それ以前は磯江くんの自宅でした。いまこの場所で使っている2畳の防音ブースが、当時は古ぼけた一軒家にありまして、そこで何でも録っていましたね。いまは下の階にフォーリズムを録れる広いスタジオがあって、このブースではたまに歌を録ったりするくらいですが、2000年ごろはこれがフル稼働していました。何かというとこれで録って、生楽器を使っているぞというのを売りにして、ZIZZ STUDIO は頑張っていたのだと思います。

アコースティック・アストゥーリアスの結成もその流れですよね。生楽器のアコースティック編成でのバンドというのが、素晴らしいなと思いました。

大山:ZIZZ の仕事で、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノの方々と知り合いまして、それでチームを組んだんです。最初はお願いしてやってもらっていたんですけど、やがてうまく息が合ってきたという感じですね。とにかく生楽器を売りにしている会社ですので、ここにいると色んなミュージシャンとの出会いがあります。

1980年代のアストゥーリアス結成時のプログレ観と、2000年以降のエレクトリック・アストゥーリアスの結成以後とでは、プログレ観は変わりましたか?

大山:だいぶ変わったと思います。多重録音でもやってはいますけど、基本的に4~5人編成の生演奏ですから、それだけしかパートがないという構造的な違いもありますし、実際にライヴでやると緊張感もありますし。海外にもけっこう行かせていただきまして、反応を見るにつけ、変わったバンドなんだなというのは実感しますね。現代では「ロック・バンドの人たちによるプログレ」が多いと思いますが、うちのメンバーはそうじゃないので、そこも変わっていますね。そういう人たちが作る音というのが出てくるんだろうなと思います。

アコースティック・アストゥーリアスも他にない感じですよね。

大山:ああいう形でプログレをやろうとはなかなか思わないですよね(笑)。海外のお客さんはビックリしていましたね。なんだこれはという感じで。現代のプログレってプログレ・メタルが主流で、いわばドリーム・シアター系列のすごく巧い人たちも数多くいるわけですが、それは真似はできないですし、そういう人たちとは違うなというのをいつも思いますね。

いまはなんでもヴァーチャルで出せるようになりましたが、やっぱりアナログ・シンセが使っていて楽しいですね。

ゲーム音楽のなかでプログレをやるということについてはどう思っておられますでしょうか? ゲーム業界には隠れプログレ・ファンが多いような気がします。

大山:ゲーム音楽はそれを避けては通れない感じがありますね。

そのなかでもキース・エマーソンの影響はかなり大きいのではないかと思います。大山さんもその影響を受けたものを作られていますよね。

大山:はい。もちろん僕も大好きですね。いまやゲーム音楽だけじゃなく、NHK大河ドラマの「平清盛」に “タルカス” が使われたりもして、昔だと考えられない状況ですよね。いま思えば90年代は冬の時代で、これは裏話ですけど、当時は仕事のときに「普段プログレをやっています」とは言いにくい空気もすごくあったんですよ。2000年代からは、ゲームとのつながりでプログレが認められてきたというところもありますよね。

ゲーム音楽ってジャンル的になんでもありというところがあるので、それで受け入れる人も増えてきているのではないかと思います。

大山:クラシックとかジャズとか、いろんな素養が必要になってくるので、普通のロック・バンドの人ではちょっと対応できないのがゲーム音楽というか。プログレあがりの人がみんなこっちに流れてきますね(笑)。

近年は、プログレ・フェス《PROG FLIGHT》にも携わっておられますよね。

大山:主催の栗原務さん(Lu7)に頼まれて、企画のお手伝いをさせていただいている感じですね。栗原さんと僕とで好きなプログレが違うので、互いの意見をすり合わせて出演バンドを決めたりしています。今年はちょっとできないですけど。

空港のなかにある会場もいいですよね。

大山:ありがとうございます。250人のキャパですけど、第1回(2017年)をやるときに「お客さんを満員にできるかな?」という相談を受けて、難波弘之さんを呼んだりしたんですよ。満員になってよかったです。あの規模で席が埋まるのは素晴らしいですね。90年代には考えられなかったです。老若男女、若い人も増えていますね。

ゲーム音楽経由でプログレを知る若い人は増えていると思います。最後に、お好きなシンセサイザーはなんでしょうか?

大山:一通り使っていましたけど、Roland の SUPER JUPITER とか、あれはいまでも持っていますね。いまはなんでもヴァーチャルで出せるようになりましたが、やっぱりアナログ・シンセが使っていて楽しいですね。

ありがとうございました!

 90年代前半、レア・グルーヴのムーヴメントでジャズを聴きはじめた人たちは、まずはジャイルス・ピーターソンら元祖ジャズDJたちがヘヴィプレイしていた〈Prestige〉の10000番台(*1)や〈Blue Note〉のBNLA期(*2)からはじまり、さらに奥深く掘っていくうちに、この〈Black Jazz Records〉や、〈Strata-East〉というレーベルにたどり着くのがお決まりコースでした。

*1:60年代末、名門ジャズ・レーベル〈Prestige〉の品番10000番以降はオルガンを多用したグルーヴのあるいわゆるソウル・ジャズと呼ばれるサウンドが主流になる。
*2:〈Blue Note〉レーベルのBNLAから始まる品番の時期はエレクトリックな楽器が多用され、ソウル~ファンクの影響を強く受けたフュージョンの元祖的なサウンドで人気を博した。

 1969年にカリフォルニア(オークランド)で設立された(初リリースは1971年)〈Black Jazz Records〉。1971年にニューヨークで設立された〈Strata-East〉。同時代でその性格も非常によく似たアメリカ東西のこのふたつのレーベルは、レア・グルーヴ的にほぼ同時に再評価され、スピリチュアル・ジャズという新ジャンル(?)をDJたちがでっちあげるきっかけとなった2大レーベル。共に多くのタイトルがリアルタイムで日本盤もリリースされており、シリアスなジャズ・ファンから無視されていた90年代前半までは捨て値で日本の中古レコード店で容易に見つかったことがレア・グルーヴ好きやDJたちにおける、世界的にもいち早かった日本での人気に拍車をかけたに違いありません。

 〈Black Jazz Records〉と〈Strata-East〉とは、互いに強く影響し合ってはいたでしょうが関係のないレーベル。なのでいきなり長い余談から入ってしまいましたが、個人的に、いや一般的にも、少なくとも日本では上記の理由でこのふたつのレーベルは切っても切り離せないはず。長くなるので端折りますが、とにかく今回のリイシューで〈Black Jazz Records〉が気になったビギナーには、余計なお世話かもですが〈Strata-East〉もぜひ聴いていただきたいものです。

 キーボーディストのジーン・ラッセルと、パーカッショニストのディック・ショリーによって設立されたレーベル、〈Black Jazz Records〉。この「Black」とは人種のことであり、思想性が強いレーベルでありながら、そういったレーベルにありがちなフリー・ジャズに陥ることなく、タイトなドラム、地を這うようなベース、そのシンプルで強いリズム隊にフェンダーローズなどのメロウネスも加わったサウンドでファンクネスを体現。同時代の名門ジャズ・レーベルもファンク路線に走ったけど、その思想性からくる(?)暗さ、重さのレベルが全然違っていました。レア・グルーヴからジャズを聴きはじめて到達した人たちはそこにヤラれたに違いないです。暗くて重いのに踊れるサウンドは新しかった。

 1971年から1975年までに、パーカッシヴなピアノが特徴的なレーベル・オーナーのジーン・ラッセル、後のディスコディーヴァで讃美歌のように歌っていたジーン・カーン(アルバム名義は夫のダグ・カーン)、分厚く重いウッドベースを弾くヘンリー・フランクリン等のアルバムを20枚リリース。その統一されたアートワークもレア・グルーヴ好きの物欲はもちろん、サンプリング・ソースを探すヒップホップDJたちの琴線も刺激しました。

 これまた余談ですが、ディック・ショリーはイリノイ州シカゴ近郊を拠点とするレーベル、〈Ovation Records〉のオーナーでもあったので、〈Black Jazz Records〉もシカゴのレーベルだったっけな? と時々混乱するのは私だけでしょうか。

 〈Black Jazz Records〉と聞いてまず私の頭に浮かぶのが、いくつかのタイトルのオリジナル盤において、向こう側が透けて見えそうというか、ソノシートかと思ってしまうほどの薄い盤があるということ。「オイルショックによる原材料費高騰によって薄くなったのでは?」と90年代当時は言われていたけど、いまでは「RCAが開発した薄くて高音質なダイナフレックス盤と関係あるのでは?」説が強い。というのも設立者のディック・ショリーは音楽家でありながら、元々はRCAの技術者でもあった人で、60年代のRCA高音質盤であるダイナグルーヴ盤の開発にも関わっていたとか。〈Black Jazz Records〉、〈Ovation Records〉共に4チャンネル、クアドラフォニック盤が多く、オーディオへの強いこだわりが明らかなのはそういうこと。

 そこら辺の詳しいことはオーディオマニアに任せるとして、〈Black Jazz Records〉のオリジナル盤はその盤の薄さゆえに、中古レコード屋で見つけたときに、喜びながらも「これ、ジャケットだけで中身(レコード盤)が抜かれているんじゃないか……?」という不安をレコード・ディガーなら一度は持ったことがあるはずですよね。それを分かち合いたくて書いてみました。Black Lives Matter の時代に〈Black Jazz Records〉が再びリイシューされるのは非常に意味があることなのに、こんなどうしようもないあるあるネタ的なことに多くの字数を割いてしまいました。すいません。

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Gene Russell / New Direction (1971)
レーベル第一弾はレーベル・オーナー自らのリーダー作。ピアノ・トリオにコンガを加えた編成で、まだジャズ・ファンクというより、ヤング・ホルト的なジャズ・ロックな内容。“Listen Here” のヘンリー・フランクリンによるブンブンなベースはいかにも〈Black Jazz Records〉ですね。

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Walter Bishop Jr. / Coral Keys (1971)
タイトル曲は、6年後の1977年に〈Muse〉レーベルからリリースされた自身のアルバム『Soul Village』でも再演した彼の最高傑作のひとつ。ハロルド・ヴィックやウッディ・ショウ、イドリス・ムハンマドなど〈Black Jazz Records〉には珍しく有名どころのジャズマンが参加。

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Doug Carn / Infant Eyes (1971)
ディー・ディー・ブリッジウォーターのデビュー作『Afro Blue』のヴァージョンがDJ人気の “Little B's Poem” 収録。ディー・ディーよりこちらが先だし、個人的には断然こちら。実はこの曲、ヴォーカルのジーン・カーン名義で7インチ・シングルカットされております。コルトレーンの “至上の愛” のカヴァーも最高のアルバム。

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The Awakening / Hear, Sense And Feel (1972)
〈Black Jazz Records〉がリリースした唯一のグループ作。おまけに西海岸ではなく、AACMとも関わりがあるメンバーが在籍するシカゴのグループ。〈Cadet〉レーベルの多くの作品に関わり、シカゴ・ソウルを代表するアレンジャー、プロデューサーであるリチャード・エヴァンスがベーシストとして一曲だけ参加。という風にレーベルの中では特異な作品ながら、そのサウンドはまさしくドンズバな〈Black Jazz Records〉。

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Gene Russell / Talk To My Lady (1973)
個人的に〈Black Jazz Records〉で一番好きな曲 “Get Down” 収録のアルバム。これもヘンリー・フランクリンの極太ベースのイントロ、そこにこれまた極太ドラムが入る瞬間が最高なシンプルなジャズ・ファンク。この曲は違いますが、多くの曲でエレクトリック・ピアノを使用。その音色がまた、まさに〈Black Jazz Records〉。

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Kellee Patterson / Maiden Voyage (1973)
フリーソウルとしても紹介されたせいか、90年代の日本では本作が〈Black Jazz Records〉の中で一番人気でした。フリーソウル人気は “Magic Wand Of Love”。ジョアン・グラウアーのアップテンポなヴァージョンがDJには知られる “See You Later” はおそらく本盤が初出。

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Roland Haynes / 2nd Wave (1975)
本作しか作品が確認されていない詳細不明な謎のキーボーディストのリーダー作。レーベル・カタログの中でも特異な劇画調イラストのジャケットがさらに謎を深くさせている。謎ではないキーボーディスト、カーク・ライトシーとのツインキーボードにリズム隊という面白い編成。ふたりが奏でるキーボードの音色はやはりドンズバ〈Black Jazz Records〉。

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Cleveland Eaton / Plenty Good Eaton (1975)
ラムゼイ・ルイスやドナルド・バードのグループで活動したベーシスト。ヴォーカルやコーラス、ストリングスを多用したディスコ寄りのサウンドは〈Black Jazz Records〉の中でも最もゴージャス。まるでブラック・ムーヴィーのサントラのようでもあります。

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Calvin Keys / Shawn-Neeq (1971)
パット・メセニーが彼に捧げた曲を書いたことでも知られるギタリストのファースト。ジャケ写のツラ構えから聴かずして最高の内容だとわかる処女作にして最高傑作。ギターは言うまでもなく、アルバム通してラリー・ナッシュのエレクトリック・ピアノ(フェンダーローズ)も素晴らしい。エレクトリック・ピアノも〈Black Jazz Records〉のサウンドを特徴づける重要な楽器。

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Rudolph Johnson / Spring Rain (1971)
いわゆるスピリチュアル・ジャズというよりも、ファンク色も控えめのモダン・ジャズなサウンドで、そんなところが〈Black Jazz Records〉では特異な1枚。30年ほど前に、当時好きだった女の子のために作った初めてのミックス(テープ)に “Fonda” を入れたので、個人的にも超重要アルバム。

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Henry Franklin / The Skipper (1972)
ヒュー・マセケラやフレディ・ハバードなど有名どころのアルバムにも参加のベーシスト。〈Black Jazz Records〉特有の這うような重いベースは大抵、彼が担当。自身の初リーダー作である本作ではヘヴィなだけではないメロウな面を見せております。DJ Mitsu The Beats の人気ミックスに収録された “Little Miss Laurie” はまさしくそれ。

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現在、〈Black Jazz〉作品のリイシュー・プロジェクトが進行中です。2020年最新リマスター音源を使用、それぞれLP/CDの両フォーマットが用意されています。今後も続々とラインナップは増えていく予定とのことで、下記リンク先よりチェック!
https://p-vine.jp/artists/series-black-jazz-2020

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