「IR」と一致するもの

interview with Bullsxxt - ele-king


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 まずサウンドの変化が耳に飛び込んでくる。とりわけベースが豊かになった。UCDをフロントに据えた若きヒップホップ・バンド、Bullsxxtのファースト・フル・アルバム『BULLSXXT』は、IDM的な要素も聴きどころだった自主制作盤『FIRST SHIT』から一変し、ぐっとジャズやファンクに寄ったグルーヴィなアンサンブルを展開している。とはいえ生演奏の心地良さに安住してしまっているわけではなく、パキッとしたスネアの質感(ドラマーの菅澤によると、打ち込みっぽく響かせたかったのだそうだ)や、“Poetical Rights”のエレクトロニクスなど、いわゆるバンド・サウンドからの逸脱も厭わない。かつてのブラック・ミュージックの大いなる遺産を受け継ぎながら、近年のジャズの潮流も視野に収めた同時代的なアルバムと言えるだろう。まずはサウンド面で勝負をかける――それがかれらの意気込みなのだ。
 しかし、である。MCを擁したヒップホップ・バンドである以上、多くのリスナーが最初に注目するのはやはりUCDのラップだろう。「ブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかった」と菅澤が語るように、『BULLSXXT』を際立たせている特徴のひとつに、彼らの「コンシャス」なアティテュードがある。
 今回の取材で意外だったのは、UCDが「国家じゃない共同性のあり方だってある」という話をしてくれたことだ。僕は勝手にSEALDsにリベラルなイメージを抱いていたので、そして“Sick Nation”のリリックは「ニセモノの愛国に対してホンモノの愛国を提示する」というある意味では危険な構図をとっていたので、彼らは国家の存在自体は保留しながらそのなかで少しずつ情況を改良していく、というような方向を目指しているのかなと想像していたのだけれど、そしてじっさいUCDはそういう側面も否定はしないのだけれど、「国家じゃない共同性のあり方」という考えに影響を与えているのは、リベラルというよりもむしろラディカルな現代思想であり、そしてそれはアナキズム的な発想とも通ずるものだ。じっさい以下のインタヴューでもベンヤミンやルジャンドルといった思想家の名が挙がっているが、UCDがだてに研究をやっているわけじゃないことがひしひしと伝わってくる。それこそがラッパーとしてのUCDの魅力であり強みでもある、とドラマーの菅澤は言う。たしかに、そのような彼の思想とヒップホップ的なマナーとのせめぎ合いもまた『BULLSXXT』の魅力のひとつだろう。
 このアルバムで興味深いのは、直接的なメッセージ性を持った曲が意外に少ないという点だ。声高にプロテストを表明しているのは“Sick Nation”と“Fxxin'”くらいで、他は日常を描いたものや抽象的な思考を吐き出したもの、音楽への愛や大切な人への想いを綴ったものなど、リリックのテーマは多岐にわたっている。本作において直接的な政治性は、あくまで要素のひとつにすぎないのである。それ以上にこのアルバムには、「ひとり」の人間が抱くさまざまな想いや思考が凝縮されている。まさにそのようなあり方にこそUCDの考えるポリティクスや、Bullsxxtというバンドのコンシャスネスが体現されているように思われてならない。
 だからこそ、“Sick Nation”に登場する「ひとりひとり孤独に思考し判断しろ」という一節が鋭く胸に突き刺さる。たしかに、孤独なくして友情や恋愛はありえないし、共同性もまた孤独なくしては生起しえない。そういう意味で『BULLSXXT』は、濃密なバンドの「団結(band)」を示しているとはいえ、多分にUCDの「孤独」から生み落とされたアルバムなのではないかと思う。以下のインタヴューで語られる「自分の意見なんかゼロ」「器になる」という話も、まさにそのことを象徴しているのではないか。ここで僕は、かつてとあるMCが繰り出したパンチラインを思い出さずにいられない。
 「サイの角のようにただ独り歩め」。
 この『BULLSXXT』というアルバムは、これからやって来る世代、場合によってはまだ生まれてすらいない人びとに向けて作られていると、そうUCDは言う。僕は本作が10代の、とりわけ「孤独」であることに悩んだり引け目を感じたりしている人たちの耳に届くことを願っている。かつてUCDがBOSSのラップに突き動かされたように、いまUCDが紡ぎ出している言葉たちもまた、そんな誰かの人生を変えてしまうかもしれない可能性を秘めているのだから。(小林拓音)

直接ポリティカルなことを言っていなくても結果としてポリティカルなことになるというのはあると思うんですよ。例えばPUNPEEの今回のアルバムもけっこうポリティカルだと思うんですけど、そういうふうにもやってみたいと思ったんですよね。 (UCD)

=野田 ●=小林

もしこのCDが全然売れなかったとしたらBullsxxtはどうなるんでしょうか?

菅澤捷太郎(以下、菅澤):ああ、意地悪ですね(笑)。

UCD:はははは。僕は続けたいと思っていますけど、どうなんでしょう。

菅澤:次のアルバムがPヴァインさんから出ることにはならないかもしれないですけど(笑)。

(一同笑)

菅澤:出ることにはならないかもしれないですけど、Bullsxxtは別に売上のためだけにやっているバンドじゃないので、続けることになると思います。あとはメンバー同士のやりたい音楽が一致している限りはこのバンドは続くと思いますけどね。

UCD:そうですね。それで例えば無理やりポップ路線にいこうとか、そういうことは考えないと思いますね。

僕はこのCDが売れることを望んでいますけどね。万が一売れなかったときの話(笑)。

(一同笑)

菅澤:たぶん落ち込みますね(笑)。

UCD:でも売れなかったら逆に俺は調子に乗ると思う。

でもさ、結局10代の多くは自民党に票を入れるじゃない? 全然Bullsxxtの言葉が届いてないよねー。それが不満なんだよ。

UCD:本当にそうなんですよね。でもタイミング的に選挙ギリギリだったというのもあるんですけどね(笑)。出たばっかりなのでこれから浸透していくとは思うんですけど。あとはBullsxxtもそうですけど、SEALDsの声が届いていないとは思いますね。そもそも若者は政治に関心があるというイメージに反して、じつはSEALDsが超マイノリティだったという結論なのかなと思いますね。

枝野(幸男)さんはマイノリティじゃないと言っていたけどね。

UCD:そうですね(笑)。僕らもマイノリティじゃないぞとは言っていたんですけど、でも結局マイノリティだったということだと思うんですよね。

今回はBullsxxtが力及ばずってことか。

(一同笑)

UCD:全部僕らにかかっているんですね(笑)。

菅澤:背負わされてるね(笑)。でも本当に背負っていくしかないね(笑)。

だいたいさー、リリックで、こんな上から目線な表現で、「くだらねえ」とか「~じゃねえ」とか「抗え、もしくは闘え」とかさ、こういうのはいまも通用するの(笑)?

UCD:通用しないと思います(笑)。

ハハハハ。

UCD:いまだったらもうちょっと言いかたを変えると思いますね。

こういうのは初期の曲なの?

UCD:そうですね。メッセージが強い曲ほど最初のほうに書いた曲ですね。大学2、3年生のときの僕がただ怒って書いていたものなので、いまだったらもうちょっとやりかたを変えるかなとは思いますけど。

菅澤:この歌詞を書いてからもう4年くらい経っているよね。でもその4年前に言っていたことがいまでも通用するというのが恐ろしいですけどね。

Bullsxxtのアルバムをすごく楽しみにしていた人間のひとりとして言うと、“Sick Nation”みたいな曲をもっとたくさん聞きたかったなと思いますね。

UCD:なるほど(笑)。

Bullsxxtって「コンシャス」なイメージがあるのに、今回のアルバムは直接的なメッセージの曲が意外と少ないなと思いましたね。

そうなんだよ。それはちょっと不満だよな。

UCD:最初はもっとポリティカルな内容にすることを構想していて、(1st EP)『FIRST SHIT』の曲を過去の話としてアルバムの真ん中に置いて、例えば戦争後から見た『FIRST SHIT』の僕というのを未来から事後的に語っている曲を前後に置くとか、いろいろと考えていたんですけど、ちょっとそれも違うと思ってしまって。まずは普通の曲としてちゃんとしたものを作れるようになりたいなと思ったんですね。

菅澤:今回のアルバムのために作った新曲はあまり政治的な内容じゃないんですよね。

UCD:1曲共謀罪についての政治的な曲を入れようとしたんですけど、詞とトラックが合わないということになって入れなかったんですよね。

ブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかったというか。 (菅澤)

やっぱ牛田君には去年までのSEALDsでの経験があって、あの熱気はBullsxxtにも引き継がれているわけでしょう?

UCD:もうちょっと普遍的なことも言いたいと思って、別に直接ポリティカルなことを言っていなくても結果としてポリティカルなことになるというのはあると思うんですよ。例えばPUNPEEの今回のアルバムもけっこうポリティカルだと思うんですけど、そういうふうにもやってみたいと思ったんですよね。

PUNPEEのアルバムはどこがポリティカルだったんですか?

UCD:やっぱり日本に対する諦念みたいなものは確実にあって、「ニュースではひどいことばっかりだ」みたいなことをところどころで言ったりしているんですね。基本的には未来のPUNPEEが過去のアルバムについて言及しているという構成になっているんですけど、最後の曲ではおじいちゃん(未来のPUNPEE)が消えて、本当のPUNPEEが出てくるんです。PUNPEEが「友だち、兄弟ありがとう。でも大事なのはこれからだぜ」と言って最後の“Hero”という曲がはじまるんですけど、「過去には戦争があったけど、その犠牲者のなかにも偉大なアーティストがいたはずだ。そういう人の意思を引き継いで僕らはものづくりをしなくちゃいけないんだ。つくりだそうぜ、Hero」って内容なんですよ。ヴァルター・ベンヤミン(註:ドイツの思想家)の「歴史哲学テーゼ」かよ! って思いました。

デモでマイクを握っているときのほうがライヴ・ハウスでマイクを握っているときよりも迫力があるように感じてしまったんだけど、まだデモのときのエネルギーをライヴ・ハウスで出し切れていないんじゃない?

UCD:たしかにそうですね。

機動隊に囲まれているほうが燃えるんですか?

UCD:いや、むしろ逆でライヴ・ハウスのほうが気負っているんですよね。僕はコールを国会前でやっているときは基本的に自分をゼロにしようと努めていて、「自分の意見なんかゼロなんだ」というのが僕が一番やろうとしていることなんですよ。器になるというか、僕の後ろにいる何千、何万人という人たちの声の集約地点というか、その声が全部僕のなかに入ってきて語っているというイメージでずっとコールをしていたんですよね。だからもちろん僕の言葉でもあるんですけど、僕だけの言葉ではないというか。無意識のエネルギーを自分のなかに吸収して吐き出していたという感じですね。だから詞も本来はそうあるべきなので、ライヴ・ハウスでももっと周りの目線を吸収して吐き出さないといけないんですけど、正直言ってたぶんまだ僕にそこまでの力がないんだと思います。だから僕はこの1枚(『BULLSXXT』)は次に繋げるための1枚だと思ってます。やっぱり前のアルバムの出し直しということも含めてなんですけど。

そういう言葉でのスタンスと今回煮詰めようと思ったジャジーでメロウな音楽性はどういうリンクのしかたをしているの?

菅澤:今回のアルバムはメンバー同士で言葉にすることはなかったですけど、「ブラック・ミュージック」というものを意識しようという、テーマみたいなものがあって、それは集まったメンバーがもともとブラック・ミュージック系の音楽サークルに入っていたというのもあると思うんですけど。そうやってブラック・ミュージックをやるなかで、体制にプロテストしていくという要素を無視して、音楽的な部分だけすくい取るということをしたくなかったというか。

UCD:バンドだけでしかできないことを考えたときに、僕の主張だけならソロでもできるはずで、バンドだとみんなで作った演奏のトラックに沿うように歌詞を書くということがバンドでやるおもしろさだと思っているんですね。だから歌詞は曲からイメージされるものとして書いている感じではあったんですよね。“Sick Nation”みたいな曲は僕のなかではラップと曲が乖離していると思うんですけど、それが逆にいいというか。ATCQの最新アルバムもそんな感じになっていて、「右翼じゃなくて左翼になるときだ」ってフレーズからはじまるけど曲はオシャレみたいなことになっているからいいんですよ。だからもうちょっと僕がバンド全体を政治的に調教しなきゃいけないとは思いますね。

(一同笑)

問題発言が出た(笑)。ケンドリック・ラマーからの影響は?

菅澤:ケンドリック・ラマーの2枚目ですよね。3枚目もみんな聴いていましたけど、どちらかと言えば2枚目の影響のほうが強いと思いますね。

UCD:ケンドリックってデモとか批判していますよね。あとは投票も行かないとか、そんな感じじゃないですか。だから内側からのコンシャスのほうが大事だってことを言っていて、それは僕も共感するところではあるというか、段階的にはSEALDsや立憲民主党みたいな動きは必要だと思うんですけど、僕の根本的な思想で考えたときに別に国家がある必然性はないとは思うんですよね。ほかの共同性もありえるはずというか。

それほど国家にこだわりがないという話はおもしろいですね。というのも、“Sick Nation”は「俺のほうが本当の愛国だ」というニュアンスの曲ですよね。戦略的にこういうリリックを書いたのか、それとも4年前の時点では本気でそう思っていたのか、どちらなのでしょう?

UCD:いや、書いた当時も戦略的でしたね。戦略というか、いま言われているような右翼よりかは俺のほうが日本好きだよっていう思いは確実にあって、日本語というもの自体に対する愛とか、そこに生まれてしまっているから、自分の足場はそりゃ捨てられないというのはありますね。できるだけよくするしかないという気持ちはあります。そういうものとして捉えたときには愛国的な歌詞かもしれないですけど、半分は皮肉ですね。

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イメージ的には未来を見ている感じですね。これから来る世代、むしろまだ生まれてもいない世代にとって悪い世のなかにならないようにするということ。 (UCD)


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だんだん怒りが薄まっているということはない?

UCD:(笑)。怒りの方向性が変わっているというのはたしかにありますね。もともと僕はヘサいんですよね。だからちょっと前に「お前ら俺が本気で怒っていると思うなよ」って書こうと思っていたんですけど(笑)。「俺をヒーローにするな、ふざけるな」みたいな歌詞を書こうと思ったんですよ(笑)。

恐ろしい自意識!

(一同笑)

UCD:いやいや(笑)。でもSEALDsをやっているとヒーローとして扱われちゃうんですよ。とくに地方に行くと「うわ~、UCDだ!」みたいな人たちがいたんですけど、「いやいや、俺は何者でもねえよ」っていう(笑)。

菅澤:ネットでもいるもんね。

UCD:ネットでも僕がツイートするたびに「ですよね!」って言ってくる人たちがいて。そういう人に対する怒りとか(笑)。あとは知識人に対する怒りですね。当事者性がない連中に対しての怒りはあります。怒りが薄まっているのかなあ。

サウンドが大人びた方向に行ったじゃないですか。それは演奏している側が牛田君の言葉を聴いて、こっちの方向が正しいと思ったわけでしょ?

菅澤:前はなんだかんだ言ってラップが引き立たないようなトラックもあったと思うんですよ。でも今回はトラック・メイカーのベーシストが入ったというのもあって、どうやってラップを引き立てていくかというのを考えたときにああいうかたちになったんですよね。

UCD:ラップ入れようとするとこいつ(菅澤)のドラムが邪魔で、邪魔で。

で、パチパチやり合っていた?

菅澤:けっこう火花は散ってましたよ。

UCD:練習の段階ではけっこうバチバチでしたね。

DJとか、サンプリングとか、そういうことは考えなかったの?

UCD:いや、考えたんですけど単純に周りにいなかったんですよね。本当にそれだけの理由ですね。本当はサンプラー使って女の人の声だけで作られているような曲のほうが好きなんですよ(笑)。女の人の歌声が不自然に出てくる曲のほうが好きですね(笑)。

じゃあMC+DJというかたちでやる可能性もある?

UCD:ありましたね。というかそれはやるつもりなので、今後もありますね。

菅澤:Bullsxxtができたのも、バンドをやっているやつしか周りにいなかったって理由なんだよね。

アルバムを聴いてすごく思ったのが、THA BLUE HERBからの影響がすごく大きいってことなんだよね。S.L.A.C.K.はあまり感じなかったね。

UCD:THA BLUE HERBは大きいかもしれないです。僕がS.L.A.C.K.(5lack)のことを好きなのは自分ができないからかもしれないですね。ああはなれないというか、タイプが違うというか。S.L.A.C.K.の影響があるとしたら、ただ日常を歌うというところですね。怒りも含めて日常であるということを歌うということですかね。
 とはいえ、ラップを書くときには意識していないんですけど。僕は最近だとC.O.S.A.が好きですね。C.O.S.A.は、ちょっと違うところもあるんですけど現代版THA BLUE HERBというか、ゴツッとした感じのラップで好きですね。

ちょっと任侠の世界が入っているような?

UCD:なんだコイツは! という感じにちょっと憧れますね。(自分の)キャラクターとは違いすぎるんですけど(笑)。

菅澤:牛君は任侠っぽくはないもんね。

UCD:心のなかではいつも任侠的な気持ちがあるけどね(笑)。「なめてんじゃねえぞ」っていう。

小岩が任侠的な街なんじゃないの(笑)?

UCD:たしかに僕は不良を目指してました(笑)。優等生なのに(笑)。

菅澤:不良に囲まれざるをえないからね(笑)。

UCD:たしかに粋がってるやつのほうがカッコいいでしょ、みたいな不良文化はありましたね。

アルバムを聴いて、1音1音に間が入るようなラップだと感じて、そこはそれほどBOSS的ではないなと思ったんですよね。もちろん曲のなかでラップが流れるようになるところもあるんだけども、全体的に言おうとしている言葉を優先しているという気がしたんですが、そんなこともない?

菅澤:詞先みたいなことですか?

モーラごとにほんの少し間があるというか、喋るようにスラスラ流れるというよりは、1音1音区切っているようなラップのしかただと思ったんですね。

UCD:たしかにそうですね。なにを意識しているのかはもうわかんないな。

「Bullsxxtのアルバム聴いた?」「聴いたよ!」というやり取りでの繋がりかたを作るという意味では音楽にしかできないことだと思いますね。〔……〕国家じゃないところでの人々の繋がりを作れるというところは大きいと思いますね。 (UCD)

10曲目(“Reality”)は2ヴァース目からそのラップが変わって、それがすごくおもしろかった。

菅澤:“Reality”こそ、このアルバムの曲のなかではS.L.A.C.K.に近いラップだと思うんですけどね。

UCD:正直自分ではなにっぽいのかよくわかんないですね(笑)。

とくに影響を受けた人がいるわけではない?

UCD:そうですね。いろんな人のラップを聴いて、こういうのもありなのかとは思うんですけど、とくに脚韻を重視する必要がないというのはいとうせいこうが“東京ブロンクス”とかでやっているんですよね。全然踏んでいなくてもいいじゃん、っていう割切りはしていますね。BOSS、S.L.A.C.K.、ISSUGI、仙人掌からの影響は大きいかなあ。

菅澤:ISSUGIさんからの影響は大きいんじゃない?

UCD:ISSUGIさんはデカいっすね。“Classix”はISSUGIさんのラップのイメージですね。

ISSUGIさんのどういうところが好きなんですか?

UCD:ノリですかね。言葉がたくさん埋まっているほうがノリを出しやすいんですけど、言葉が少ないのにノリを出すのは難しいんですよね。ISSUGIさんは言葉がそんなに多くなくて詰まっているのにノリが出ているんですよね。それがスゴいと思って、真似しました。

菅澤:レコーディングのときもビートに対して後ろでノるか、真ん中でノるかをいろいろ試したりしてたよね。

UCD:後ろでノるか、真ん中でノるか、前でノるかというのはけっこう悩みどころで、その日の体調によってどこになるかが決まっていないんですよ(笑)。なにが正しいのかは僕もよくわかっていないですね。ただ僕がノレてるなと思うときはノレていると思うんですけど。

アルバムのなかで1曲ラジオで流すとしたら、いまだったらなにをかけたい?

UCD:ラジオとなるとやっぱりキャッチーな曲に忖度したくなりますね(笑)。“Stakes”かな(笑)。

(一同笑)

菅澤:俺は“Poetical Rights”かなあ。けっこうラジオ乗りもよさそうだし。

Bullsxxtを紹介するための重要な1曲を選ぶとしたら?

菅澤:俺は“Poetical Rights”がすごくBullsxxtらしい曲だと思っているんですよね。そんなことない?

UCD:どうかなあ。

菅澤:“Poetical Rights”には、フックの「詩的権利の行使/理解してるぜ/これはギャンブル」とか、牛君らしいパンチラインが多い。この曲はパンチライン続出の曲だと思っているんだけど(笑)。「詩的権利の行使」ってフレーズはあれだよね?

UCD:(ピエール・)ルジャンドルだね(註:フランスの法制史家、精神分析家)。ルジャンドルの本を読んでいて、そのなかで「詩的権利」って言葉が出てくるんですよ。

ラッパーでルジャンドルなんて言う人、他にいないよ(笑)。牛田君にとって「詩」とはなんですか?

UCD:難しいですね。直接関係してないように見える比喩と物事を並べているのに、なぜかリアリティが出るものだと思いますね。それ(リアリティ)は仙人掌さんのリリックがスゴいなと思いますね。具象と抽象が交互に出てくるような感じで、具体的なものに焦点が当てられているのに、抽象的に聞こえたり、抽象的なことがリアルに描写するよりも現実味をもつということが詩的であることの条件だと思うんですけど、僕はまだまだですね。これからって感じです。でもそういうものが書けるようになったらいいなと。

音楽面では、無名時代から蓄積されてきたものを全部吐き出した感じ?

UCD:音楽の面ではそうですね。僕もどちらかと言うとグルーヴのほうを重視していたんですよね。グルーヴを出そうという方向性を重視していて、今回はバンドのノリとの関係でグルーヴを出せるようになったとは思いますね。ただ詩として見たときはまだまだかな。例えば“Poetical Rights”に関してもガースーは俺っぽいと言っていたし、もちろん頑張って書いたんですけど、俺のなかでは哲学者がラップしている感じがするんですよ。詩人じゃないなというか、哲学なんですよね。もうちょっと詩的に言いたいし、具体的なものをラップできるようにならないとダメだなと思いますね。それはすごく難しいですね。単純に苦手なんですよね(笑)。

聴き手の顔っていうのでまず見えるのは、やっぱり同世代の人たちになるのかな?

UCD:SEALDsのときもそうでしたが、イメージ的には未来を見ている感じですね。これから来る世代、むしろまだ生まれてもいない世代にとって悪い世のなかにならないようにするということ。だから集まりましょうということは全世代に呼びかけていたというか。だからこれは矛盾しているとは思うんですけど、Twitterではやっぱり同世代に向けているように見えるし、メディアでもそういうふうにしていましたけど。実際に周りの人とかに呼びかけたときに、陰で「牛くんってSEALDsのこと言ってきてめんどくさいよね」って言われたとしても、僕はしつこいしめげないんでやめないんですよ(笑)。最終的にはみんながデモに来るようになったということもあったし。それはみんなそれぞれ考えていたということもあるんですけどね。ただ基本的にはそういうことを言うと煙たがられるというか、地元の友だちにも「あいつは頭が狂った」とか「革命を起こそうとしている」とか、ヤバいやつだと思われたりしたんで(笑)。

(一同笑)

UCD:いちばん仲がよかったやつからも遊びに誘われなくなったりしたし、やっぱり誘えないですよね。そうとう難しい。

菅澤:俺でさえもそういうことはありましたね。SEALDsには参加してないし、Twitterで「デモに行きました」とかつぶやいているだけで、「お前最近左に行ってんじゃん」とか言われたりしましたね(笑)。

よく(日本は)同調圧力が強いと言われるじゃない?

UCD:そうだと思います。いま俺らの世代で政治的なことに関心をもっているやつがそれを一言でも発したら、その瞬間、いまいる偏りのないコミュニティのなかから排除されますよね。それはもう間違いないと思いますね。それが怖くてそのコミュニティの外に出られないというのはたくさんあると思います。それが普通になっているんじゃないかな。

だからこそ率先して馬鹿をやる人間が重要になってくる。

UCD:そうだと思います(笑)。反時代的というか。だから僕はラッキーだと思っていますけどね。みんな内輪でやっていることなので(笑)。僕も詩的レヴェルとしてはそんなに高くないと思うんですけど、だとしてもある程度は尖っているように見えるというか。

音楽だからこそできることってなんだと思いますか?

UCD:端的に層が違うというのはありますよね。僕らはデモも音楽としてやろうとしていたところがあって、やっぱり「特定秘密保護法、はんたーい!」よりも「特定/秘密保護法/反対」ってラップっぽくリズミカルにコールしたほうが引っかかりやすいですよね。それは音楽もデモも同じなんですよ。つまり演出されているということなんですけど、それに加えて音楽にしかできないこととなると……。うーん、デモを強制的にいろんなところに配信できるということじゃないですかね(笑)。

(一同笑)

触発させるということね。

UCD:デモという空間自体をいろんなところに拡散させることによって、いろんなところで勝手に蜂起しているという感じですかね(笑)。あとは国家という枠組みに囚われなくてもいいというか、それ自体が共同体を作りうるというか。国家という意味の共同性だけじゃなくて、「Bullsxxtのアルバム聴いた?」「聴いたよ!」というやり取りでの繋がりかたを作るという意味では音楽にしかできないことだと思いますね。とくにヒップホップはそういう要素が大きいと思うんですけど、国家じゃないところでの人々の繋がりを作れるというところは大きいと思いますね。

Bullsxxt、リリース・パーティの追加ゲストに入江陽、DJに高橋アフィ(TAMTAM)が出演決定!

10/18に1st Album『BULLSXXT』を発売したBullsxxtが、12/10に恵比寿BATICAでリリース・パーティを行う。本日、このイベントの追加ゲストを2組発表した。ライヴ・アクトに入江陽、また、DJには、TAMTAMの高橋アフィの出演が決定! これは見逃せないパーティになりそうだ。

すでにアナウンスがあった“In Blue feat. 仙人掌”でも共演した仙人掌、BullsxxtのNaruki Numazawa(Key, Syn, Vo)とPam a.k.a. Ecus Nuis(Ba, Syn)によるユニット「odola」がオープニング・アクトとして出演する。チケットの取り置きは、会場へのメール予約で受付中。お早めにどうぞ。

[イベント情報]
BULLSXXT RELEASE PARTY
日時:2017年12月10日(日)
場所:恵比寿BATICA
開場/開演:17:00
チケット前売価格:¥2,000(+2D)
予約先:batica@club251.co.jp

DJ:
高橋アフィ(TAMTAM)
tommy(Bullsxxt)
オークダーキ
Death mix

ライヴ:
odola(O.A)
入江陽
仙人掌
Bullsxxt

East Man - ele-king

 ビッグ・ニュースが舞い込んできた。これまでイマジナリー・フォーシズとして活動し、近年はベイシック・リズム名義で尖った作品を発表し続けている鬼才、アントニー・ハートが、新たにイースト・マン(East Man)という名義でアルバムを用意していることが判明。同作はグライム、ダンスホール、ドラムンベース、テクノのハイブリッドとなっているそうで、ほとんどの曲にロンドンの若きMCがフィーチャーされている。タイトルは『Red, White & Zero』で、発売日は来年2月16日。
 そして驚くべきことに、同作は〈Planet Mu〉からリリースされる。さすがはマイク・パラディナス、目の付け所が違うというか、今回のアントニー・ハートとの契約は、これまで果敢にグライムやジューク/フットワークを世に送り出してきた〈Planet Mu〉の、新たなる態度表明と言っていいだろう。
 そしてさらに驚くべきことに、今回のアナウンスに際して、カルチュラル・スタディーズの大家たるポール・ギルロイが紹介文を寄せている。彼はそこで今日のロンドンの若者が置かれている情況について記述しており、曰く、かれらは排除され周縁化された存在だが、まさにかれらのエナジーと想像力こそがロンドンの文化を駆動させている、云々。なんでもギルロイはアントニー・ハートと友人関係にあるそうで、今回の新作のライナーノーツも執筆しているという。
 このように二重にびっくりな告知となった『Red, White & Zero』だけれど、リリースに先駆け収録曲の“Look & Listen”が先行公開されている。これがまたかっこいいのなんの。ベイシック・リズム改めイースト・マン、年明け最初の台風の目となること必至である。

アーティスト:East Man
タイトル:Red, White & Zero
レーベル:Planet Mu
品番:ZIQ395
リリース:2018年2月16日

[Tracklist]
01. East Man - East Man Theme
02. East Man & Saint P - Can't Tell Me Bout Nothing
03. East Man & Darkos Strife - Cruisin'
04. East Man & Killa P - Mission
05. East Man - Stratford
06. East Man & Irah - War
07. East Man - Drapesing
08. East Man & Eklipse - Safe
09. East Man & Lyrical Strally - Mmm
10. East Man & Kwam - Tear Down
11. East Man & Darkos Strife - Look & Listen
12. East Man - And What? (Blood Klaat Version)

more information:
https://planet.mu/releases/red-white-zero/

Mura Masa - ele-king

 UK出身のムラ・マサが通算2枚目、メジャー・デビューとなるアルバム『ムラ・マサ』をリリースした。

 3年程前にサウンドクラウドでよくチェックしていたムラ・マサのことを思い出したのは、今年の3月にロンドンのオールドストリートの人気クラブ、XOYOのグライム・パーティでKahn & Neekがプレイしたのを聴いた時だった。その時かかっていたのは、ムラ・マサのヒット曲“ロータス・イーター(Lotus Eater)”のジャロウ・バンダル(Jarreau Vandal)のエディットで、アジアンなフルートに客は合唱する大盛り上がりだった。盛り上がりに応えてKahn & Neekは4回リワインドした。

 Kahn & Neekだけでなく、ムラ・マサのリリース・パーティを〈ナイト・スラッグス〉マムダンスがサポート、自身はグライムMC、ストームジーのプロデュースをするなど、ロンドンのクラブ・カルチャーとの関わりも強いアーティストだ。

 ムラ・マサことアレックス・クロッサンは、イギリス海峡の島ガーンジー島に生まれた。音楽教育を受け、10代のはじめにはゴスペルやパンク・バンドでプレイしていたという。16歳でAbleton Liveを使って打ち込みを始め、サウンドクラウドから人気を広げた彼は、他のサウンドクラウドのプロデューサーが流行らせた「フューチャーベース」とは趣を異にし、こじんまりしていて音の粒を大切にするような空間づくりがユニークなプロデューサーであった。先述した“ロータス・イーター”が収録されているファースト・アルバム『サウンドトラック・トゥ・ア・デス(Soundtrack to a Death)』では、ストイックにメロディを聞かせるインスト曲がメインである。

 その後、自身のレーベルを立ち上げて、リリースしたEP「サムデイ・サムウェア(Someday Somewhere)」は、ベッドルームからスタジオへ拠点を移し制作されたのだろう、シンガーとのコーラスワークを特徴とするプロダクションへと成長していく。特に今作に再録されている“ファイヤーフライ(Firefly)”で歌っている、ライヴでのサポートシンガーも務めるナオ(NAO)のコーラスワークは、今作へ繋がる重要な要素である。

 今作は、ロンドンのバスがニュー・パーク・ロードへ到着するアナウンスから始まり、少し狂気じみたラヴ・ソング“メシー・ラブ(Messy Love)”から、マリファナをチキンナゲットに例えた“ナゲッツ”、そしてエイサップ・ロッキーを迎えた“ラヴシック(Love$ick)”へと流れていく。“ラヴシック”のイントロのタイトなドラムは、クラシックなヒップホップ・ブレイクスの質感を匂わせる。曲中のスチールパンのメロディに対して、エイサップ・ロッキーは「イビザにいるみたいな気分だ」と言ってリリックを書いたらしいが、自分にはむしろトリニダード・トバゴの祝祭をルーツに持つ、ロンドンのノッティングヒル・カーニヴァルが思い浮かんだ。

 チャルリ・XCXを迎え、ワンナイト・ラヴを歌う“1 Night”では、iPhoneの着信音「マリンバ」を彷彿とさせるメロディが印象的だが、チャルリ・XCXがサビで少しだけ高めに外れる声に、彼女の歌唱力の高さを感じられた。続く“オール・アラウンド・ザ・ワールド(All Around the World)”では、USのラッパー、デザイナー(Desiigner)が共演している。しかしこの曲については、オリジナルのテーマを生かしたUKのギャングスタ・ラップ・グループ、67(シックスセヴン)によるシックなリミックスの方が素晴らしかった。

ショーで前の晩酔っ払っても、朝の飛行機に乗り遅れない
海外のショーの方が多いけど、それはイギリスが退屈だから

I'm drunk from the show last night but I gotta catch a flight in the morning
More time we overseas doing shows 'cause the UK got boring

... Liquez - Mura Masa - All Around the World (67 Version) より

(67のラップ・ショーは大人気なのにも関わらず、「治安上の問題から」イギリスの警察によって弾圧され、イギリス国内ではショー自体が中止になってしまうことが多い。)

 後半の客演陣の中で、ジェイミー・リデルがプリンス顔負けの80sバイブスを披露する「ナッシング・エルス!(NOTHING ELSE!)」のポップネスが素晴らしく、ブラー(Blur)のヴォーカリスト、デーモン・アルバーンを客演に迎えたラスト・ソング“ブルー(Blu)”のコーラスには、ムラ・マサのルーツのひとつであるゴスペルを感じさせた。

 全体を通して漂うドライな雰囲気と空間の隙間は、ラウドで感情的なメインストリームの音楽とは真逆である。ひとつひとつの音はバランスが取れていて、ヘッドルームに余裕があり、ひとつひとつの楽器の音の粒までがきちんと聴こえる。こうした音像は、ヘビーな808ベースに則ることが「ルール」となってしまったエレクトロニック・ポップスの流行のなかでとりわけユニークに響くし、2018年以降のエレクトロニック・ポップスのルールを書き換えてしまうだろう。そして、808ベースに代わりコーラスとメロディが再び主役となる。しかし、コーラスによって曲がエモーショナルになりすぎぬよう、ファットな生ドラムやスチールパンのメロディ、そしてロンドンの街のフィールド・レコーディングが添えられ、全体に乾いたクールネスを醸している。

Nicola Cruz - ele-king

 〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉からのリリースで知られるニコラ・クルースが初来日、神戸Troop Cafeと東京・代官山Unitでライヴを行います。ニコラ・クルースは、ニコラス・ジャーのステージでフロント・アクトをつとめたり、彼の主宰レーベル〈クラウン&サンセット〉のコンピにその名を連ねたことをきっかけに注目を集めた南米エクアドルの首都キトを拠点とするエレクトロニック・プロデューサーです。〈MULTI CLUTI〉や〈ZZK〉に加え、ニコ・デマスのワンダーホイールやエジプトのマジック・ムーヴメントにも楽曲やリミックスを残し、直近では、現在日本をツアー中のトーマッシュ主宰、ヴードーゥー・ホップのコンピ『Entropia Coletiva』のCD版にも新曲「Elephant」を提供しています。
 東京公演は野外フェスティバルRe:Birth主催のパーティで、ミニローグ、クニユキ・タカハシ、ミックスマスター・モリスも出演します。

■Nicola Cruz Japan Tour in Kobe

2017.11.23 THU

16:00 START - 23:00 CLOSE
Mail Resevation \2000(w/1D)Door \3000(w/1D)Under23 \1500(w/1D)

LINE UP :
Nicola Cruz -Live-
Shhhhh
KND -Live-
halptribe
FUKAMIDORI
職人
TAIPEIROD
KEYWON

SHOP :
DUMBO

FOOD :
tamu tamu cafe
Beinelmilel

COFFEE :
nomadika

https://troopcafe.jp/music-program/1388

■Nicola Cruz Japan Tour in Tokyo
Re:birth feat. El Folclore Paradox supported by Global Chillage

2017.11.24 FRI

OPEN : 23:00
START : 23:00
CHARGE :
ADV 3,000yen
DOOR 3,500yen
You must be 20 and older with photo ID

【UNIT】

LIVE :
Nicola Cruz
Marcus Henriksson aka Minilogue x Kuniyuki

DJ:
Shhhhh (El Folclore Paradox)
Kojiro (Re:birth)

【UNICE】

[new album "KiraKira" release special]
Mixmaster Morris
Peter Power (voodoohop)
Koss aka Kuniyuki
Hiyoshi (Labyrinth/Global Chillage)
7e

DECO:
聖紅 (seiko-nose.com)

LIGHTING:
Yamachang

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2017/11/24/171124_rebirth_featefp.php

【Nicola Cruz ~ニコラ・クルス~】
彼は自分のサウンドを”andez step”と定義するDJ / プロデューサー。南米はエクアドルの都市キト在住。パーカッショニストとしてキャリアをスタートし、次第にそのリズムの感性と興味はエレクトリック・ミュージックにも向かう。同時に自身のルーツである南米大陸の儀式や音楽現象への探求を開始。2015年にデジタル・クンビアのレーベルとして日本でも紹介されたZZK Recordsよりアルバム、"Prender el Alma"をリリース。Nicolas Jaarの前座に指名され、翌年のバルセロナのソナー・フェスティバルを始めとする、欧米から南米のビッグフェスやBoiler Room にも出演。2017年、モントリオールのレーベル、Multi CultiよりEPを数タイトルリリース、他にもsoundcloudやBandcampにて、クオリティの高いトラックをハイペースで発表し続けている。2018年には新アルバムをリリース予定。
2010年代中盤から南米を中心に勃発した、過去と未来、伝統とモダンを行き来する進行系の現象。ナチュラルでオーガニック、世界各地の土着性を吸収した、BPM控えめで、ミニマル、スローハウス、ラテン/クンビアらを通過した酩酊しトランスするダンス・ミュージック・ムーヴメント。その動きの中でも代表的なアーティストである。待望の初来日。

Flava D - ele-king

 昨年1月にスウィンドルとともに来日し、UKハウス、ガラージ、グライムなどを変幻自在に操るDJスタイルでフロアを熱狂させたフレイヴァ・Dが待望の再来日を果たす。前回の来日後も『FabricLive88』や、今年に入ってからはロイヤル・TおよびDJ Qとのユニット、t q dのアルバム『ukg』など快進撃を続けているだけに、いまの彼女がどこを向いているのか確認する良い機会となるだろう。ベース寄りになるのかハウス寄りになるのか、それとも……。詳細は下記より。

"FLavaD" Japan Tour 2017

UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーン
最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD、待望の再来日決定!

[ツアー日程]
●11.21 (火) @Dommune (東京)

●11.22 (水/祝前日) @OUTER (高知)
https://outerkochi.strikingly.com/
open 21:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 3000 yen (+1d)

●11.24 (金) @CIRCUS TOKYO (東京)
https://circus-tokyo.jp/
open 23:00 adv: 2500 yen door: 3000 yen
ticket: https://ptix.co/2w9gyKQ

●11.25 (土) @CIRCUS OSAKA (大阪)
https://circus-osaka.com/
open 22:00 open 23:00 adv: 2000 yen (+1d) / door: 2500 yen (+1d)
ticket : https://ptix.co/2fcJnPN

[プロフィール]
■Flava D (Butterz, UK)
UKガラージ、グライム、UKベース・ミュージック・シーンにおいて最重要、女性プロデューサー/DJに君臨するFlavaD。幼少からカシオのキーボードに戯れ、14歳からレコード店で働き、16歳から独学でプロデュースを開始。当時住んでいたボーンマスでは地元の海賊放送Fire FMやUKガラージの大御所、DJ EZの『Pure Garage CD』を愛聴、NasやPete Rockにも傾倒したという。2009年以降、彼女のトラックはWileyを始め、多くのグライムMCに使用され、数々のコンピに名を残す。12年にはグライムDJ、Sir Spyroの〈Pitch Controller〉から自身の名義で初の「Strawberry EP」を発表、13年からは自身のBandcampから精力的なリリースを開始する。やがてDJ EZがプレイした彼女の“Hold On”を聴いたElijahからコンタクトを受け、彼が主宰する〈Butterz〉と契約。「Hold On / Home」のリリースを皮切りにRoyal Tとのコラボ「On My Mind」、またRoyal T、DJ Qとのユニット、tqdによる「Day & Night」などのリリースで評価を高め、UKハウス、ガラージ、グライム、ベースラインなどを自在に行き交うプロダクションと独創的なDJプレイで一気にブレイク。16年の『FabricLive88』を経て17年5月にtqdのデビュー・アルバム『ukg』をリリース、その勢いはますます加速している。

https://flavad.com/
https://soundcloud.com/flava_d
www.facebook.com/FlavaDMusic/
www.twitter.com/flavad

Oneohtrix Point Never - ele-king

 昨年同様オリジナル・アルバムのリリースはなかったものの、坂本龍一のリミックスイシュマイル・バトラーとのコラボなど、今年も何かと話題の尽きないワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン。夏には映画『グッド・タイム』のサウンドトラックを、そして先日はそのディレクターズ・カット版をリリースしたばかりの彼が、今度はUKの音楽メディア『FACT』の企画「FACT mix」の一貫として、新たなミックス音源を公開している。ジョルジオ・モロダーから幕を開けるそのミックスは、ロパティンが『グッド・タイム』の劇伴を制作するにあたって影響を受けた曲を集めたものとなっており、彼の音楽的なバックグラウンドの一部を探ることができる。しっかり芸能山城組も入っており、じつに興味の尽きないミックスである。

ONEOHTRIX POINT NEVER
話題の映画『グッド・タイム』のUKプレミアに合わせて
映画音楽制作のインスピレーションになった音源ばかりをフィーチャーした最新MIX音源を公開!

本年度のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、主演のロバート・パティンソンが彼のキャリア史上最高の演技を披露していると話題を呼んでいる映画『グッド・タイム』が、先週の日本公開に続き、11月17日(金)よりUKでも公開される。それに合わせ、音楽を手がけたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが、本映画の音楽制作において、インスピレーションになったという音楽ばかりをフィーチャーした最新MIX音源を、『FACT』にて公開した。

FACT mix 627: Oneohtrix Point Never
https://www.factmag.com/2017/11/13/oneohtrix-point-never-fact-mix-good-time/

Giorgio Moroder – "Cacophony"
Bernard Szajner – "Welcome (To Death Row)"
Alan Parker – "Synchrotech"
Abigail Mead – "Ruins"
Brad Fiedel – "Tunnel Chase"
Daft Punk – "Television Rules The Nation"
Geinoh Yamashirogumi – "Requiem"
Dopplereffekt – "Z Boson"
Howard Shore – "01 – 9PM"
Harold Faltermeyer – "Main Title, Fight Escape"
Giorgio Moroder – "Chase"
Sick Le Lapin – "Flashcore Mix"
Heldon – "Le Retour Des Soucoupes Volantes"
Lewis – "Like To See You Again (OPN Remix)"
John Abercrombie – "Timeless"
Steve Hillage – "Palm Trees (Love Guitar)"

アメリカで8月に公開された際には、セレーナ・ゴメスやザ・ウィークエンドが大絶賛するなど注目を集めると同時に、音楽を手がけたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンが、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞を受賞。映画のエンディング・テーマにもなっている“The Pure and the Damned”でイギー・ポップとコラボレートしたことも大きな話題となった。

同映画のサウンドトラック『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は、8月のアメリカ公開に合わせてリリースされている。また日本公開時には、監督を務めたジョシュ・サフディの意向で、『グッド・タイム』の世界観をより深く理解するためのフォーマットとして、全曲フィルム・エディットで収録されたディレクターズ・カット版『Good Time... Raw』も日本限定でCD化されている。また対象店舗にて、『Good Time... Raw』、『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のいずれかを購入すると、オリジナル・クリアファイルが先着でもらえるキャンペーンを実施中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time... Raw
cat no.: BRC-561
release date: 2017/11/03 FRI ON SALE
国内限定盤CD: ジョシュ・サフディによるライナーノーツ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとジョシュ・サフディによるスペシャル対談封入
定価: ¥2,000+税

【ご予約はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002199
amazon: https://amzn.asia/gxW5H63
tower records: https://tower.jp/item/4619899/Good-Time----Raw
hmv: https://www.hmv.co.jp/artist_Oneohtrix-Point-Never_000000000424647/item_Good-Time-Raw_8282459

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-561

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack
cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

映画『グッド・タイム』
2017年11月3日(祝・金)公開
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』、『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

ニューヨークの最下層で生きるコニーと知的障がい者の弟ニック。
2人は銀行強盗を行うが、弟が捕まり投獄されてしまう。しかし獄中で暴れ病院へ送られると、それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、警察が監視するなか弟ニックを取り返そうとするが……。

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給:ファインフィルムズ


Kelela × Bok Bok - ele-king

 エルヴィス1990とともに〈Night Slugs〉を主宰し、最新シングル「Salvage 2017」では久々のグライムを打ち鳴らし、またケレラのファースト・アルバム『Take Me Apart』にプロデュースで関わったことも話題となったボク・ボクが、『Dub Me Apart』と題してそのケレラの最新作をリミックス、25分におよぶミックス音源を公開している。

 評判の高いケレラの『Take Me Apart』はボク・ボク以外のタレントも魅了しているようで、昨年EP「Tan」で話題をさらい、今年はローレル・ヘイローの新作に参加したことでも注目を集めたラファウンダ(ラフォーンダーと読むのかしら?)が、“Frontline”のリミックスを手掛けている。こちらも要チェック。

KELELA × BOK BOK
ケレラの1stアルバムをボク・ボクが大胆にリミックスした
25分の最新ミックス音源『DUB ME APART』が公開!

メインストリーム/ポップとレフトフィールドとの見事な邂逅を果たしたと高い評価を受けるケレラのデビュー・アルバム『Take Me Apart』を、アルカやキングダムとともにプロデューサーとしてアルバムに携わったプロデューサー、ボク・ボク(Bok Bok)が大胆にリミックスした25分の最新ミックス音源『Dub Me Apart』が公開された。

KELELA X BOK BOK DUB ME APART
https://soundcloud.com/kelelam/kelela-x-bok-bok-dub-me-apart

1. Truth Or Dare (edit)
2. S.O.S. (edit)
3. Turn To Dust (edit)
4. Jupiter (edit)
5. Frontline (edit)
6. LMK (edit)
7. Bluff (edit)

また昨年〈Warp〉からデビューを果たし、ポストFKAツイッグスとして注目を集めるラフォーンダーが手がけたアルバムのオープニング・トラック“Frontline”のリミックスも公開されている。

KELELA- FRONTLINE (LAFAWNDAH REMIX)
https://soundcloud.com/lafawndah/frontline-lafawndah-remix-nov-9-l

アルカ、ボク・ボク、キングダムといった盟友たちがプロデューサーとして名を連ね、モッキーやロミー・マドリー・クロフト(Thexx)、タレイ・ライリーがソングライターとして参加したケレラ待望のデビュー・アルバム『Take Me Apart』は現在好評発売中。ポップの新基準を打ち出すと共に、革新的なR&Bの過去20年を見渡し、さらにその先へと推し進めた傑作には、ピッチフォーク「Best New Music」獲得を筆頭に、主要メディアからも続々と称賛の声が集まっている。

label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: KELELA
title: Take Me Apart
release date: 2017/10/06 FRI ON SALE

国内盤特典
ボーナストラック2曲収録
歌詞対訳/解説書封入
BRC-560 ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002185
amazon: https://amzn.asia/dpODgJy
tower records: https://tower.jp/item/4589687/
hmv: https://bit.ly/2wAEwkY
iTunes Store: https://apple.co/2vrIP2G
Apple Music: https://apple.co/2w4MiRS

[Tracklisting]
01. Frontline
02. Waitin
03. Take Me Apart
04. Enough
05. Jupiter
06. Better
07. LMK
08. Truth Or Dare
09. S.O.S.
10. Blue Light
11. Onanon
12. Turn To Dust
13. Bluff
14. Altadena
15. A Message (Bonus Track for Japan)
16. Rewind (Bonus Track for Japan)

AFX - ele-king

 ランキングは難しい。候補を選び、なんらかの判断を下し、意見を交換しながら、順位を決める。一見単純に見えるこの作業、じつはとんでもなくいろんなことを考えさせられるのだけれど、きっとこの時節、数々の音楽メディアがその作業に頭を悩ませているに違いない。
 今年2017年は、『Artificial Intelligence』や『Selected Ambient Works 85-92』のリリース25周年にあたり、一部でIDM回顧の機運が高まった。たとえば『ピッチフォーク』は年明けに「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集を組んでいる。そのランキングは一瞥する限りではきわめて王道のセレクションのように見えるのだけれど、どこか妙に違和を感じさせるものでもあった。
 選盤や順位付けが著しく偏っているわけではない。まあ個人的には「ブラック・ドッグの『Bytes』が入っていないじゃないか」「オウテカの『Chiastic Slide』を落とすなんてけしからん」といった文句はあるものの、「IDM」という言葉から多くの人びとが思い浮かべるであろうアーティストや作品が、それなりに順当にセレクトされている。
 選ばれた50作をアーティスト別に眺めてみると、エイフェックス・トゥインが最多の4作を送り込み(ポリゴン・ウィンドウ名義含む)、次いでオウテカとボーズ・オブ・カナダが3作、スクエアプッシャーとマウス・オン・マーズが2作と続く。この並びもとりたてて不自然というわけではない。あるいはレーベル単位で眺めてみると、〈ウォープ〉が最多の20作を送り込み、続く〈ドミノ〉と〈プラネット・ミュー〉の3作を大きく引き離していて、これはやや偏っている感じがしなくもないが、かのレーベルが果たした役割を思い返せば、けっして不可解だと騒ぐほどの事態ではないし、サイモン・レイノルズによるリード文でも〈ウォープ〉の功績が強調されている。
 では、違和はどこに潜んでいるのか? それは、選ばれた50作を年代別に眺めたときに浮かび上がってくる。リストアップされたアルバムを発表年でソートすると、90年代のものが27作、00年代のものが21作、10年代のものが2作(ジェイリンとジョン・ホプキンス)となっており、これはいくら90年代がゴールデン・エイジだったからといって、だいぶ偏っているのではないだろうか。つまりこのランキングは、「10年代には取り上げるに足るIDM作品が出てきていない」、あるいはもう少し控えめに言っても、「10年代のIDMは90年代のそれを超えられていない」と主張しているのである。
 さらに細かく整理していくと、軽視されているのが10年代の作品だけではないことに気がつく。00年代から選ばれている21作も、そのほとんどが2003年以前のものであり、2007年以降の作品にいたってはフライング・ロータスとSNDの2作しかランクインしていない。90年代の27作が各年にバランスよく分散しているのとは対照的だ。すなわち、この「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集は、10年前の2007年の時点で企画されていたとしても、ほぼ同じランキングになっていただろうということである。要するに『ピッチフォーク』は、IDMは10年前の時点でもう「終わっている」と言っているのだ。
 興味深いのは、『ピッチフォーク』が、ジューク/フットワークの文脈から登場してきたジェイリンに関してはIDMの歴史に組み込み、「IDM」という概念そのものを更新しようと試みているのにもかかわらず、OPNやアルカに関しては完全にリストから除外している点である。たんにOPNやアルカの音楽には「IDM」の「D」、すなわち「ダンス」の要素が欠けているという判断なのかもしれないが、それにしたってかれらをIDMの歴史に位置付けることで新たに浮かび上がってくるものだってあるだろうに、それに何よりリード文を執筆したサイモン・レイノルズ自身は「IDM」の「I」、すなわち「知性」とは何かという問題を提起し、OPNやアルカ、アクトレスについても言及しているというのに、はてさて『ピッチフォーク』はいったい何を考えているのやら(「排除します」?)。

            *

 その「The 50 Best IDM Albums of All Time」で見事1位の座に輝いたエイフェックス当人は、そんな面倒くさい価値判断からは1万光年離れたところで、相変わらず好き勝手にやっている。
 2014年に『Syro』で華麗にカムバックを遂げて以降、『Computer Controlled Acoustic Instruments Pt2』『Orphaned Deejay Selek 2006-08』『Cheetah EP』、と毎年欠かさずリリースを続けてきたリチャード・Dだけれど、その活力は今年も一向に衰える気配を見せない。オウテカに影響されたのか、7月に自らの音源に特化したオンライン・ストアを開設した彼は、そこで一挙にこれまで入手困難だったり未発表だったりした音源を大量に放出している。なかでも目玉となったのが以下の3作である。

 グリーンのアートワークが鮮やかな「London 03.06.17 [Field Day]」は、タイトルに記されているとおり、今年6月3日にロンドンで開催されたフィールド・デイ・フェスティヴァルの会場で限定販売されていた12インチで、今回のストアのオープンに伴い、めでたくデジタル・ヴァージョンとして再リリースされることになった(新たに6曲が追加されている)。これが相当な曲者で、「ちょっとしたサプライズ、あるいは単なるアウトテイク集でしょ」とナメてかかると痛い目を見ることになる。
 1曲目の“42DIMENSIT3 e3”からもう絶好調。その勢いは2曲目“MT1T1 bedroom microtune”からそのまま3曲目“T18A pole1”へと受け継がれる。新しいかと問われればそんなことはないと答えざるをえないが、エイフェックスらしい流儀でドラムやアシッドやメロディが並走していくその様は貫禄すら感じさせる。以降アルバムは多彩さを増していき、ワールド・ミュージックから影響を受けたのではないかと思わせるような奇妙な揺らぎを聴かせる4曲目“T03 delta t”のようなトラックもあれば、音響上の実験を探究した7曲目“42DIMENSIT10”や10曲目“T47 smodge”、声のイミテイションを試みた11曲目“sk8 littletune HS-PC202”のようなトラックもある。その合間に、鳥の鳴き声と叙情的な旋律が美しい5曲目“em2500 M253X”や9曲目“MT1T2 olpedroom”のようなメロディアスなトラックが挟まれていて、全体の構成も考え抜かれている。ボーナスとして追加されたトラックも強者揃いで、転がっていく音の配置感が心地良い12曲目“T13 Quadraverbia N+3”や折り重なる残響が耳を捕えて離さない13曲目“T16.5 MADMA with nastya”など、最後までリスナーを飽きさせない。はっきり言って、なぜこれを通常の形でフル・アルバムとしてリリースしなかったのか、さっぱりわからない。

 このように気合いの入った「London 03.06.17 [Field Day]」と比べると、ショッキングなピンクのアートワークが目を引く「Korg Trax+Tunings for falling asleep」の方は、いくらかリスナーにリラックスすることを許してくれる。こちらもタイトルが的確に指示しているとおり、Korg の機材を使用した2曲と、それ以外の試験的な11曲が収録されているが、冒頭の“korg funk 5”は件のオンライン・ストアのオープンに先駆けて公開された曲で、うねるように重なり合うシンセがじつにエイフェックスらしいサウンドを紡ぎ出しており、そこにドラムとベースが絡み合っていく様は往年のファンにとってはたまらないものがあるだろう(ちなみにときおり挿入される音声はリチャードの息子によるもの)。「眠りにつくための」と題された後者の11曲はすべてタイトルに「tuning」と冠されていて、いずれも機材の細かい残響具合をテストしているかのようなトラックとなっている。こちらはアンビエントとして聴くことも可能だろう。

 同じくオンライン・ストアのオープンと同時にリリースされたEP「Orphans」は、AFXによるルーク・ヴァイバートのリミックス2ヴァージョンと、AFX自身によるオリジナル・トラック2曲とから構成されている。前者の2曲(“Spiral Staircase”)は以前 SoundCloud で公開されていたもので、これまたエイフェックスらしい儚げなメロディとアシッドがノスタルジックな90年代の風景を想起させる。『RA』によればこのリミックスはもともと、ワゴン・クライスト『Sorry I Make You Lush』のリリース後に開催されたコンペに、リチャードがこっそり変名で参加して見事優勝してしまったときのトラックなのだそうだ(「ルークの好みがわかるから有利だったぜ」って、それほとんど八百長じゃん……)。オリジナル曲の“Nightmail 1”もエイフェックスらしいドラムとアシッドが輝くトラックで、変形されたジャングルのリズムが彼のダンス寄りの側面を強調している。そして最高に素晴らしいのが、最後に収められた“4x Atlantis Take1”だ。これは Sequentix のシーケンサーである Cirklon をテストするために作られた曲で、4月に先行公開されていたもの。ビートに頼らず、シンセの折り重ねだけでグルーヴを生み出し最後まで持っていく手腕はグレイトと言うほかなく、こんなキラーなトラックをさらりと投下してみせるあたり、ヴェテランの面目躍如たるものがある。

 IDMの古株がこれだけ高密度な作品をすまし顔でぽんぽん投下してくるのだから、『ピッチフォーク』が00年代後半以降の作品を切り捨ててしまいたくなるのも、しかたがないことなのかもしれない……なんて、エイフェックスおそるべし。


ハテナ・フランセ - ele-king

 みなさんボンジュール、今回は音楽の話題を取り上げたく。2016年世界の音楽市場でストリーミングやダウンロードなどのデジタルの収益が、全体の45%とCDやヴァイナルなどのフィジカルの売り上げを初めて上回った。フランスではまだ音楽市場の59%をフィジカルが占めているが、それでもデジタルは右肩上がりに数字を伸ばしている。このように音楽の聞かれ方が変わりつつある今、主にストリーミング配信が世界の市場で重要な位置を占め、音楽の聞かれ方は変わりつつある。音楽の好みは細分化し、音楽の聞き方も細分化しているようだ。それでも多くの人が共通してあげるツールがYoutubeだ。
 そんなYoutubeで楽曲をアップするやいなやあっという間に1千万回を超える再生数を獲得し(現在は5千万回を超えている)彗星のようにフランスの音楽シーンに現れたのがPetit Biscuit(プティ・ビスキュイ)だ。

 音楽性から取り巻く雰囲気までEDMを「下世話すぎて、音楽とは言えない」と最初から懐疑的に捉えていたフランスのインテリ層にもこの「Sunset Lover」は受けた。ロマンチックで聴きやすいけれどコード進行もちゃんとあると。この曲を発表した2015年当時、Petit Biscuitことメディ・ベンジョルンはまだ15歳だった。そして2017年11月10日、フランスでの成人年齢となる18歳の誕生日にファースト・アルバム『Presence』をリリース。18歳というのは、フランスではとても意味のある歳で、記念に残るような(裕福な家庭では高価な)プレゼントをする習慣があり、わざわざこの日に当ててリリースしたというほっこりした逸話を持つメディくん。フランスのバカロレアという高校卒業+共通一次試験のような試験で最上級評価「Tres bien(大変よろしい)」を取るような学業にも秀でた若者で、両親の方針で音楽、しかもエレクトロニック・ミュージックのような浮ついた世界でのキャリアより学業優先の姿勢を最初から貫いている。現在は大学に入学したが「あ、その月は期末テストがあるからフランス国外でのライヴはしません」とエージェントが平気でフェスティバルのオファーを蹴るような恐ろしい真似をやってのける。それもこれも2018年のコーチェラ・フェスティバルへのいいスロットでの出演が早々と決まるなど、ヨーロッパのみならず最重要マーケット、アメリカでもブレイクしたゆえの強気さと、アメリカのエージェントだときっと理解できないから、と学業優先を理解し実行するフランスのエージェントをキープする両親の厳格な管理があってからこそ。

 そんなPetit Biscuitと「Gravitation」を共作したのがMøME(モーム)。

 ニース出身現在28歳のMøME(モーム)ことジェレミー・スイラーは「Aloha」が2016年の”夏のアンセム”となり一躍トロピカル・ハウス・シーンの最前線に躍り出た。

 フランスは6月末に学期末を迎え、そこから一気に社会全てがヴァカンス・モードになる。フェスティバルやイビザ型リゾート地でのパーティなどが本格化、素人から大型フェスのDJまでいわゆるパーティ・アンセムが必要だし、スーパーからラジオまでここぞとばかり浮ついた気分を盛り上げようと今年の夏の1曲をヘビーローテーションする。その流れに乗ったMøMEはEDMとは一線を画したいけれど、オーディエンスも盛り上げたいフェスティバルにブッキングされまくった。

 そういった意味では、ダヴィッド・ゲッタのバックアップを受けたKungs(クングス)は、時に不当な扱いを受けることがあった。現在21歳のヴァロンタン・ブリュネルは2016年に発表したクッキング・オン・3・バーナーズのリミックス「This Girl」がYouTubeの再生回数で1億回を超え、ダヴィッド・ゲッタのベルシー(2万人キャパシティ)公演の前座に抜擢され、デビュー・アルバム『Layers』がフランスのグラミー賞ことLes Victoires de la Musiqueでエレクトロニック・ミュージック部門を受賞するなど、一気に大きな成功を手にした。

 先に挙げた「This Girl」はまだしもその後メジャーのレコード会社と契約し作られたMVは、Petit BiscuitやMøMEとはギリギリ同じトロピカル・ハウスというジャンルに入れられるものの、音楽的にもMVの表現としても明らかにEDMのフェスティバルで何万人ものオーディエンスが盛り上がることを想定したものになっている。そして現に彼はEDM、ロック、両方のフェスティバルでヘッドライナーの1人としてオーディエンスを最高に盛り上げている。だが、こうなるとフランスのスノッブなインテリ層に「下世話な音楽」のレッテルを貼られてしまうのもまた事実なのだ。
 そんなインテリ層に逆に愛されているのがパリのレーベル、Roch Musiqueだ。
Roch Musiqueはパリでその名前を冠したイヴェントをオーガナイズするたびに感度の高いオシャレ&音楽好きパリジャンが確実に集結し、カルチャー誌『Les Inrockuptible』では「フレンチタッチを彼らが復興させる!?」などとぶち上げるほどもてはやされている。レーベルとしては2012年にスタートしたもののその歩みは至ってマイペースで、日本でも大変な人気FKJに続いてようやくアルバムを作り上げた2人目のアーティストがDarius(ダリウス)ことテレンス・ンギュエンだ。ルイ・ヴィトンやカルティエなどのCMやM83などのMVを手がけきたLisa Paclet(リザ・パクレ)監督によるアーティスティックなMV「Lost In The Moment」も大好評を得ている。

 ベルリン在住のナイジェリア人シンガー、ウェイン・スノウをフィーチャーした浮遊感溢れるメランコリックなこの曲を含む1stアルバム『Utopia』は11月24日にリリースされる。
 フランスのエレクトロニック・ミュージック・シーンは、カッパ頭の愉快な実験家Jacques(ジャック)から芸術的だけど社会的視点も含まれた短編映画のようなMVを自ら作るTha Blaze(ザ・ブレイズ。あのハウスの大御所ではなく)までなかなか活気があるけれど、日本まで届くアーティストは稀なのでこれからも定期的に紹介していければ。


RVNG Intl. - ele-king

 ヴィズィブル・クロークスにグレッグ・フォックスにスガイ・ケンにと、話題性とクオリティを兼ね備えた作品のリリースが続いているブルックリンのレーベル〈RVNG Intl.〉。同レーベルにとって初となるショウケース・ツアーが、ここ日本にて開催されます。レーベル主宰者のマット・ウェルス、ヴィズィブル・クロークス、スガイ・ケンらが東京、大阪、そして新潟を回ります。少しでも電子音楽に関心があるなら、これは見逃し厳禁でしょう。

RVNG Intl. Japan Showcase Tour 2017

本年を代表するアンビエントの大本命Visible Cloaks待望の初来日に加え、現代的な日本の“和”を世界へ広げるSUGAI KEN、そしてJulia Holter、Holly Herndon、Sun Araw、Maxmillion Dunbarなどを輩出、OPN主宰の〈Software〉も手がけた名ディレクターMatt Werthが帯同する、NYはブルックリンのオルタナ電子音楽の最重要レーベル〈RVNG Intl.〉がショーケースとなってジャパン・ツアーを開催。

最新アルバムが『Pitchfork』でBNMも獲得し、今年話題となったポートランドのVisible Cloaks、インディ、アヴァンギャルド、クラブ・シーンにまで及び、テン年代におけるオルナタティヴな電子音楽の傑作をコラボや再発含めリリースしてきたNYはブルックリンの最重要レーベル〈RVNG Intl.(リヴェンジ)〉主宰のMatt Werth、そしてコンテンポラリーな日本の“和”を世界へ広げ、同レーベルよりデビューを果たした注目のSUGAI KENが帯同する、レーベル初のショーケース・ツアーがレーベル関連のアーティストや国内外の多数のスペシャル・ゲストを迎え、東京はクラブ・ナイトとショーケースの2公演、大阪、新潟を巡る全4公演が開催。

Special Guests:

dip in the pool *Tokyo
Chee Shimizu *Tokyo
Ssaliva (Ekster) *Tokyo
SKY H1 (PAN) *Tokyo
食品まつり a.k.a foodman *Tokyo
Tomoyuki Fujii *Niigata
Phantom Kino Ballet (Lena Willikens + Sarah Szczesny) *Osaka
YPY *Osaka
7FO *Osaka
威力 *Osaka
etc

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