「AY」と一致するもの

interview with secretsundaze - ele-king


JAMES PRIESTLEY & GILES SMITH - 10 YEARS OF SECRETSUNDAZE

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 ロンドンが誇るハウス、テクノ・パーティ、secretsundaze(シークレットサンデーズ)のことを初めて知ったのはたしか、アンドリュー・ウェザオールにインタヴューした時だったと思う。彼の口から長らく下火になっていた非定住型のウェアハウスやオープン・エアのパーティ、それも日曜午後の時間帯に始めた新世代として名前が挙がったことで、海の向こう彼らをチェックするようになり、ジャイルズ・スミスとジェームス・プリーストリーというふたりのDJからなるsecretsundazeがハウス、テクノの最前線と全体像を見事にとらえた人気パーティであることを知った。
 そして、ほどなくして届けられた初の、そして2枚組となるミックスCD『Secretsundaze vol.1』。この作品に衝撃を受けたこともよく覚えている。2007年当時、いまのように顕在化していなかったミニマル・テクノからディープ・ハウス回帰の流れをいち早く予見していたばかりか、スタジオ「Life's A Beach(Todd Terje Remix)」のようなバレアリック・トラックやDOCTOR'S CAT「Feel The Drive」のようなイタロ・ディスコまでもがそこにはミックスされていて、ジャンルの細分化をまるで無視するかのような、現場感覚のクロスオーヴァーがとにかく面白かった。そして、それからというもの、個人的にはダンス・ミュージックの新しい動きを知りたいときは、彼らの動向を気にするようになったほどだ。

 彼らの歴史と功績、その後の飽くなき進化は後述のインタヴューに譲るが、2004年のジェームス・プリーストリー初来日を皮切りに、secretsundazeとしてもたびたび来日してきた彼らが本国でのパーティ始動から11年目にして日本で心機一転。さすがにいきなりデイタイム・パーティとまではいかなかったが、今回は早い時間のパーティの楽しみを紹介するべく今週末に来日を果たす。ジャイルスは先頃、モダン・ディープ・ハウスの傑作と評されるデビュー・アルバム『Golden Age Thinking』を発表したトゥー・アーマディロスの一員として、ジェームスもダン・ベルクソンやマルコ・アントニオをパートナーに、プロデューサーとしても活躍。さらにはレーベル、secretsundazeやDJマネージメントのシークレット・エージェントも運営するなど、その活動は多岐に渡っているが、なにはともあれ、まずはパーティとしてのsecretsundazeについて掘り下げるべく話を聞いたのだが、意気上がる彼らの日本でのパーティが本当に楽しみだ。

僕らは好きな場所で、好きなようにDJできるパーティが作りたかった。ただそれだけで、最初はゲストDJすらいなかったし、それほど壮大なヴィジョンがあったわけではなかったんだ。のちに僕らの代名詞となる「日曜午後のパーティ」というアイディアについても、考えていなかったわけではなかったけど、どちらかといえば偶然でそうなったところが大きいね。

90年代末のスーパー・クラブの時代を経て、2000年代初頭のロンドンのハウス、テクノ・シーンは低迷期にあると言われていたように思うのですが、そんな2002年におふたりはどのような思いからsecretsundazeをスタートさせたんですか?

ジャイルス(以下G):はじめたきっかけは、他のあらゆるパーティと同じで、誰にも指図されず、自分たちが好きな音楽をかけて、好きな人を呼びたかっただけなんだ。その頃の流行はというと、エレクトロが台頭してきていて、イースト・ロンドンではブロークンビーツが人気で、いわゆるアンダーグラウンド・テクノ/ディープ・ハウスは人気もなく、そういった音楽がプレイされるパーティもいまのようにはなかった。だから、僕らは好きな場所で、好きなようにDJできるパーティが作りたかった。ただそれだけで、最初はゲストDJすらいなかったし、それほど壮大なヴィジョンがあったわけではなかったんだ。のちに僕らの代名詞となる「日曜午後のパーティ」というアイディアについても、考えていなかったわけではなかったけど、どちらかといえば偶然でそうなったところが大きいね。
 なぜかというと、僕たちが絶対ここでやりたいと思っていた(ブリックレーンの)「93 Feet East」というクラブがあって、いまもそのクラブ自体は存在しているんだけど、そこにはもう無くなってしまった「The Loft」という部屋があった。その部屋は、初めて足を踏み入れたときから、「ここだ!」と感じたところだった。理由はうまく説明できないんだけど、そういう場所ってあるだろう? とにかく、「ここでパーティをやりたい!」と思ったんだ。他にもロンドン中のクラブを見て回ったけど、「The Loft」以上の場所は見つけられなかった。そこで、店に話をしに行ったんだ。当初は金曜か土曜にやるつもりだったんだけど、クラブには他にも2つ部屋があったから、店側からは「金、土にやるのであれば、全部の部屋使うイベントを優先したい」って言われたんだよ。当時、僕たちはまだロンドンでパーティをやった経験がなかったし、いきなり3部屋を使ったパーティをやるのは荷が重過ぎた。そもそも僕らは「The Loft」を使いたかっただけだったから、話し合いのなかで「日曜日はどうかな?」って逆に提案したんだ。店側も、「日曜日?」と最初は驚いていたけど、普段は閉めている日だから、別に構わないということで日曜にやることになったんだ。

では、最初のsecretsundazeはクラブでの開催だったんですね。

G:そうだね、普通のクラブだった。「The Loft」は建物の二階にあって、テラスがついているところが普通のクラブとは少し違っていたところだね。キャパシティは150人くらいかな。テラス側の壁が全面窓になっていたから自然光が入って、まるで屋外にいるような雰囲気があったし、テラスにも自由に出入りすることができた。

その後、どうして、箱を移動することになったんですか?

G:1年目は「The Loft」の5月から9月にかけて隔週でやっていたから、それだけでもかなりの回数になるんだけど、2年目をはじめたところで近隣から騒音の苦情が来たんだよ。パーティ自体はすごく調子が良かったのに、会場からは追い出されることになってしまった。最初は50人くらいのお客さんからはじめて、1年目の終わりには150人くらい。その後、オフシーズン中に口コミで評判が広がったのか、2年目のシーズンになったらいきなりお客さんが増えて500人くらいになったんだけど、いずれにせよ、会場に収まり切らないほどだったから、「The Poet」という場所に移ったんだ。そこは「The Loft」よりさらに素晴らしいロケーションで、完全にイリーガルだった。表向きはイースト・ロンドンのパブだったんだけど、そこはビジネス街にあって、日曜日は人気がなかったし、その店には500~600百人収容できる大きな裏庭があったんだ。ここで1年半ほど続けたんだけど、結局、ここも警察に見つかって追い出されることになった。とてもスペシャルな場所だったんだけどね。

(会場の雰囲気が分かる映像見つけました:https://youtu.be/5g2I-J28SHw

では、secretsundazeは会場を変えて行うパーティにしようという意図は元々なかったんですね?

G:全くなかったよ(笑)。でも、何事にもそうなる理由があるんだろうね、そうこうしているうちに、僕らの会場に対する考え方もオープンになっていったし、色んな可能性を考えるようになった。そして移動することにも慣れた。いまの時点でも、「夢の会場」と思える場所を見つけられたかどうかは分からない。もし見つけられたならそこを離れる理由はないだろうし。でも、常に「よりよい会場」を探し続けることが日常になってしまった感じだね。お客さんも場所が変わることが当然だと思っているし。2007年からの2シーズンやった「Canvas」という会場は本当にアメージングなところで、僕たちは離れたくなかったんだけど、離れざるを得なかった。キングスクロスのビルの屋上で、3000人収容できたんだ。実際に3000人入ったことも何度かあったね。

(ここですね:https://youtu.be/mNnQ6TSGUJQ

都心の屋外でそんな大規模なパーティをやるなんて、東京では考えられないんですが、ロンドンではどうしてそれが可能だったんですか?

G:ロンドンでもいま現在は考えられないね。でも、2007年頃までのイースト・ロンドンはもっとカッティング・エッジな街だったんだ。いま頃になって「イースト・ロンドンはカッティング・エッジだ」って言ってる人もいるけど、いまはメインストリームな街だよ。仮にいま同じことをやろうとしたら、ずっと遠く東の住居がなくて工業ビルしかないような地域へ行かないと無理だ。でもそうすると、今度はそこまで出かけるのが大変になってしまう。だから、実際どんどん難しくなっているよ。でも、2002年にはじめた頃のブリック・レーンやイースト・ロンドンは、ずっとオープンマインドだったし、当局もずっと放任主義的だったんだ。

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最初は50人くらいのお客さんからはじめて、1年目の終わりには150人くらい。その後、オフシーズン中に口コミで評判が広がったのか、2年目のシーズンになったらいきなりお客さんが増えて500人くらいになったんだけど......。

ここ数年はロンドンでもクラブではない会場を使った「ウエアハウス・パーティ」がどんどん増えているようですが、これについてはどう思いますか?

G:そういうスタイルでパーティをはじめたのは僕らが最初じゃないし、日曜のパーティだって、90年代にはベン・ワットの「Lazy Dog」や「Full Circle」といったパーティがあって、実際に僕も行ったことがあった。でも、secretsundazeほどのスケールのものはなかったかもしれないね。だから、偶然の産物とはいえ、日曜の午後に本気で遊ぶパーティを確立させたとは言えると思う。ロンドンの「Half Baked」やローマの「Confused」はsecretsundazeに遊びに来た人たちが「俺たちもやりたい」といってはじめたsecretsundazeにインスパイアされたパーティで、これは賞賛だと受け止めているよ。
 日曜の日中という時間帯にやると、普通のクラブとはまた違った層のお客さんが来るんだ。月曜日の朝に会社に行かなくてもいいような、アーティスト系の人たちも多いし、ロンドンの平均的なクラブの金曜や土曜の夜の客層よりもいいお客さんが集まるんだよ。

クラブも多く、パーティ激戦区であるロンドンでこれほど成功できた理由は何だと思いますか? ふたりはケンブリッジからロンドンに移ったばかりで初めてオーガナイズしたパーティだったわけですよね?

G:理由はたくさんあると思う。ロンドンではないとはいえ、ケンブリッジは車で1時間ほどの街だから、ロンドンには十分馴染みはあった。北部から出て来た、というわけじゃなかった。当初は、僕とジェームスと、主に制作面を仕切ってくれていたクリストフという友だちと、もうひとりの4人で始めたんだけど、成功の理由は、まず情熱を持ってやっていたからじゃないかな。パーティをはじめること自体は誰でもできるけど、僕らはそれ以前にずっと音楽にのめり込んできた。だから自分たちのスタイルもある。
 あとは、レジデントである僕ら自身を強調した点も重要だったと思う。大物のゲストに頼るのではなく、自分たちのスキルを上げることに注力した。レジデントが1時間ずつやって後はゲストに盛り上げてもらって終わりっていうパーティは多いけど、とくに初期の頃はゲストではなく自分たちにお客さんがつくように努力したね。それと、プラスアルファの努力をして面白い会場を見つけて毎回お客さんを飽きさせないように心がけた。楽な選択肢を選ぶのではなく、ね。マーケティング/プロモーションの仕方も控えめに、ロゴやデザインもミニマルに、シンプルにアンダーグラウンドに、情報を与えすぎないようにしたのも良かったと思う。

ジェイムズ(以下J): 僕らに正しい土台、正しい理由があったからじゃないかな。つまり本当に自分たちがやりたいという純粋な気持ちからやり始めたことだったし、元々大きな計画を立てていたわけではなかった。はじめた当初はみんな別に仕事を持っていたし、これで稼がなきゃいけないというプレッシャーもなかった。若かったし、エネルギーもあった。愛情があったから育っていったんだと思う。それが最高のプロモーションだからね。当時はソーシャル・メディアなんかなかったから、僕ら4人自身が「パーティ大使」になって交遊を広げていた。その頃はそれぞれかなりパーティで遊びにも行っていたからね(笑)。情熱を持っていたこと、自分たちのやっていることを信じていたこと、そこに運が加わって、ちょうどいいタイミングにちょうどいい場所にいたんじゃないかな。いわゆるスーパー・クラブの時代が終わり、オルタナティブなものが求められていたときに、それを提供できたんだと思う。

当時、secretsundazeではどんな音楽をプレイしていたんでしょう?

J:secretsundazeの特徴のひとつは、午後の早い時間からはじまるから、リラックスした、ウォームアップの時間が長いところ。初期の僕はこの午後早めの時間にプレイすることが多かったから、ジャズやソウル、ファンク、ブロークンビートからはじまって、徐々にハウスに近づけていくような感じでやっていた。僕は自分をハウスDJだと思ったことはなかったけど、secretsundazeと共に成長して、いまはかなりハウスに寄ったスタイルになっていると思う。でも、元々フリースタイルだから、伝統的なハウスDJとはちょっと違うと思うんだけどね。

今では、かつて、オルタナティブだったディープ・ハウスも再び主流になってきているように思うんですが、おふたりはいまのsecretsundazeをロンドンのクラブ・シーンでどのように位置づけられていますか?

J:secretsundazeのサウンドは、レジデントである僕とジャイルスと、僕らが選ぶゲストによって定義づけられている。それは常に進化してきたし、もともと戦略のようなものがあったわけでもない。単純に僕らがインスパイアされた音楽や、好きなものを取り入れて来ただけなんだ。いつも新しいアーティストや違うDJをブッキングするのもそういう理由からさ。現在のsecretsundazeがどんなパーティかという点に関しては、パーティ自体は11年目になるんだけど、いまも全く新しいDJを呼んでいるし、いまもカッティング・エッジであり続けていると思いたいね。とくに僕とジャイルスは、最近、元気だと感じられるイギリスのプロデューサーに注目しているんだ。
 ここ3~4年、イギリスから面白いものがたくさん出ていると思うよ。パーティをはじめた頃は、UKのアーティストで呼びたい人はほとんどいなかったんだけど、いまはたくさんいる。僕らはそうしたプロデューサーたちの多くをサポートしているつもりだし、secretsundazeにも出演してもらっていて、その何人か、例えばジョージ・フィッツジェラルドやジョイ・オービソンはいまやかなり成功している。彼らはダブステップやUKガラージをバックグラウンドとしていて、根っからのハウス・プロデューサーではないけれど、クロスオーヴァーする可能性を持っている。そういうアーティストをハウスのパーティにブッキングするプロモーターはほとんどいなかったけど、secretsundazeではそれをだいぶ前から試みているんだ。

secretsundazeは新しい才能、知られざる才能の紹介の場としても機能していますよね。リカルド・ヴィラロボスにルチアーノ、スティーヴ・バグ、マティアス・タンツマンといった才能をロンドンで始めて招聘したパーティとも言われていますが、secretsundazeのブッキング・ポリシーは?

G:リカルドやスティーヴ・バグは、たしかに彼らがビッグになる前、かなり早い段階で呼んだのは間違いないけれど、secretsundazeがはじまったのと同じ頃にオープンした「Fabric」が先か僕らが先か、という感じだった。それ以外ではジョシュア・イズやドック・マーティンといったサンフランシスコのDJをよく呼んでいたのと、キャシーやローソウル、サッセのUKデビューもsecretsundazeだった。Innervisionsの面々なども、かなり早い時期に呼んだと思う。今年もいままでイギリスに来たことがなかったエイビー(Aybee)を呼んだしね。もっと楽をしようと思えば、確実に人が入って盛り上がるDJをブッキングすることはできるけど、それはやらないようにしている。

J:僕たちが好きでリスペクトしている人たちを呼ぶという以外では、どんなにプロデューサーとして名前が知られていてもDJがちゃんとできる人しか呼ばない。それは僕らにとって最初から守っているとても重要なポリシーだ。ただ新しくハイプなだけのプロデューサーには飛びつかず、DJとしてのバックグラウンドがあるかどうかを確認してからブッキングする。そして、少なくとも、彼らにプロフェッショナルなレヴェルまで成長できる時間を与えるね。
 例えば、サシャ・ダイヴは、5年ほど前に僕らがふたりとも作品をすごく気に入っていたアーティストだったけど、ずっとブッキングしなかったんだ。なぜなら、彼はDJをはじめて間もないことと知っていたから。いいレコードを作ることとDJをすることは別物だからね。結局数年経ってからブッキングしたよ。他には、僕たちはオリジナルというか、生粋のUSアーティストも積極的に呼ぶようにしている。彼らは取り組み方が真剣だし、ヴァイブもアプローチもヨーロッパのアーティストとは全く違う。よりハードコアでピュアリストというかね。そういう、既に確立されたアーティストと、カッティング・エッジなアーティストを両方ブッキングすることで面白いコンビネーションにしようと努めているんだ。そして、もちろん、単にフライヤー上の見栄えがいいからというだけでなく、きっちりとパーティ全体の流れを考えてその組み合わせを考えるようにしてるね。

G:パーティをはじめた頃といまではブッキングするアーティストもだいぶ変わっていると思うけど、変わっていないのは質の高いハウスとテクノを核とする点だ。僕らのルーツはシカゴとデトロイトにあって、それは揺るぎないね。僕らがやっているDJのマネージメント・エージェンシーにシェ・ダミエやデラーノ・スミスやパトリス・スコットが入っているところにもそれは表れている。
 ただ、それだけが全てではないよ。僕たちはただ、いい音楽に対してオープンマインドでいようとしているだけなんだ。僕個人はかなりテクノも聴くし。でも1回1回のパーティのブッキングについては、全体の流れの中でそれをどうバランスよく配分するかを考える。secretsundazeの特徴、あるいは強みのひとつは、その日のパーティの流れをとても慎重に考えてプログラムするところにあるんだ。例えば今年のオープニング・パーティではクラシックなサウンドとフレッシュなサウンドの両方を取り入れたかったから、ジョイ・オービソンとリル・ルイスをブッキングしたんだけど、ジョイ・オービソンはとてもUKっぽいサウンドのアーティストでリル・ルイスとは全然違うから、僕たちがそのバランスを取るようにして、その日の最初から最後までの流れを上手く作るようにしたんだ。

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情熱を持っていたこと、自分たちのやっていることを信じていたこと、そこに運が加わって、ちょうどいいタイミングにちょうどいい場所にいたんじゃないかな。いわゆるスーパー・クラブの時代が終わり、オルタナティブなものが求められていたときに、それを提供できたんだと思う。

おふたりはいまお話に出てきたように、自分たちで運営するエージェンシーでたくさんのアーティストを抱えていますよね。

G:そうなんだ。30名ほどのアーティストがいるから、その中だけでパーティを回そうと思えば、それもできる。でも、エージェンシーの方は必ずしもsecretsundazeに合うアーティストばかりではないんだ。エージェンシー名にsecretsundazeとつけずにThe Secret Agencyとした理由もそこにあるんだよ。パーティの枠に縛られず、UKガラージやベース系など、もっと幅広い音楽を紹介したいからね。だからエージェンシー所属のアーティストでsecretsundazeにブッキングするのは8割くらい。オクトーバーやパトリス・スコット、Wビーザ、スヴェン・ヴァイズマンなんかがそうだね。

近年、secretsundazeはパーティだけでなく、DJのマネージメント・エージェンシー、さらにはレーベルと、その活動範囲を広げていった理由は?

J:エージェンシーをはじめた理由は、これまでやって来たことから自然に派生したということ。つまり、僕たちの願いであり、恐らく特技でもある「新しい才能の発掘」だ。僕らは、他から有名アーティストを引っ張って来たりすることに興味はなくて、草の根から一緒に育っていくようなアーティストを応援しているんだよ。そして、エージェンシーとしてプロモートすることで、そういう人たちに対して、1回や2回の出演チャンスをあげるだけでなく、もっと踏み込んで共にキャリアを築いていくことができる。僕とジャイルスは、これまでとても幸運に恵まれていて、音楽でここまでやって来ることができた。だから、その分、僕たちで力になれるなら、他のDJやプロデューサーのゴールなり夢なりを実現する手助けをしたいんだ。
 実際、エージェンシーをはじめたことによって、家族のような絆もできたしね。そして、もちろん、イベントやパーティをやる際にラインナップに加えられるようなアーティストが既に揃っていることも心強いよ。それからレーベルは、エージェンシーの機能を補完する役割、それからsecretsundazeの精神とサウンドを世界中に伝えることにあるんだ。僕たち自身がいつも色んなところへ出かけられるわけじゃないし、例えば日本も通常年に一度しか行かない。だから、レコードで少しでも楽しんでもらうことは、secretsundazeにアクセスするひとつの方法になる。
 来年はもしかしたらサブレーベルもはじめるかもしれないよ。まだ決まってはいないんだけど、secretsundazeに縛られずより幅広い音楽もリリースしていけたらと思っているからね。さらにそうやってエージェンシーとレーベルの両方を機能させることで、アーティストは次のステージに成長していける。実際に、エージェンシーに入った時はほとんどギグをやっていなかったのに、いまは忙しくなったり、より遠いところへブッキングされたり、より高い出演料をもらえたりしているアーティストを見ると自分のことのように嬉しいし、そうやって、全てがとても有機的に発展したのがいまの状況なんだ。

おふたりがいま注目しているDJ、プロデューサーは?

J:いい質問だね。えっと......ブレイデン(Braiden)というロンドンのアーティストがいるんだけど、彼はDJとしてとてもエキサイティングな才能で、既に二回出演してもらっている。リリースは現時点でジョイ・オービソンのレーベルDoldrumsからの1枚しかないけれど、もうすぐRush Hourから2枚目が出るよ。僕が今年最も気に入っているレコードのひとつだ。とてもユニークでフレッシュな、UKベースにインスパイアされたテクノという感じ。うちのエージェンシー内でいうと、Fear of FlyingなどのレーベルもやっているBLMというプロデューサーかな。secretsundazeレーベルの8枚目も彼の曲なんだけど、テクノのヴァイブを持ったハウスを作っているんだけど、そのバランス感覚がフレッシュだね。
 エージェンシー以外では、まだほとんどヨーロッパでプレイしていないシカゴのスティーヴン・タンかな。彼はここ2年ほどの僕のお気に入りだね、デトロイトの影響を受けたハウス/テクノでとても最高なんだ。もうひとりはトレヴィーノ(Trevino)かな。彼は僕らのエージェンシーに所属しているわけではないけど少し関係している。彼はかつて、マーカス・インタレクスという名義でドラムンベースを作っていて、実は昨年出した僕らのミックスCD『10 Years of Secretsundaze』にも彼が2001年に出した曲を収録したんだ。その曲「Taking Over Me」は僕以外で誰もかけてなくて、ちょっとした秘密兵器だったんだよね(笑)。その彼が、今年からトレヴィーノという名義でハウス寄りのトラックを作るようになって、実は今度secretsundazeから出る僕の曲「Speed」も彼にリミックスしてもらったんだ。
 この曲は、かつてLTJブケムがレジデントだった「Speed」というパーティにインスパイアされていて、ブケムが「Horizons」というドラムンベース・クラシック曲に使ったのと同じヴォーカル・サンプルを使っているんだ。だからリミキサーとしてトレヴィーノはぴったりだったんだよね。あとはWビーザとジョン・ヘックル、エティル(Ethyl)とフローリ(Flori)、それからアンソニー・ネイプルズというニューヨークの新人も注目株だね。

おふたりのDJプレイに関して、実体験した印象としてはジャイルズがどちらかといえばテクノ寄り、ジェームスがディスコ寄りのプレイに特徴であるように思ったんですが、DJのパートナーとして、お互いの音楽性についてはどのように思われていますか?

G:そうだね、僕がディープ・ハウス~テクノ寄りで、ジェームスは元々ドラムンベースがバックグラウンドにあって、そこからディスコ、ハウスへと変化していった。僕もガラージやベースものをかけたりもするけど、基本的にハウス/テクノのピュアリスト(純粋主義者)だ。僕から見たジェームスの強みは、僕よりも「パーティDJ」だということ。何をプレイするかよりも、プイレのし方の面においてね。僕がプレイする曲を彼もプレイするんだけど、プレイのし方が違って展開がもっと速い。僕はどちらかといえばもっと伝統的なスタイルで、徐々にビルドアップして、また落としていくルーティーンをなるべくスムースに繰り返していくスタイルで、終盤の、着地に向かっていく時間帯が得意なんだけど、ジェームスは自分のプレイしたいものを恐れることなく奔放にぶち込んでいくスタイルだね。そして、常にお客さんの期待に応えるだけでなく、いい意味での裏切りがあるんだ。だから、ジェームスはパーティの前半や中盤にプレイすると映えると思う。
 僕らは毎年Robert Johnson(フランクフルト近郊のクラブ)でロングセットをやるんだけど、そのときのジェームスのプレイが僕はいつも楽しみなんだ。そこでは音楽好きのお客さんが集まることもあって、ジェームスの幅の広さが発揮されるんだよ。ディスコ、ブレイクビーツ、ブロークンビーツ、ハウス、テクノ......彼のそういう多彩な部分が僕は好きだね。

J:ジャイルスは、伝統的なハウスのプログラム方法で、物語のように曲をつなげていき、流れを作ることができるDJだね。彼のようにそれができる人は他にはそう多くない。僕は逆に、リスクを恐れずに異なるジャンルや時代、リズムの曲を織り交ぜてかけることが多いよ。UKベース/ガラージ系の曲をかけるのも好きだしね。お客さんにサプライズをもたらすようなプレイを目指しているんだ。お客さんにショックを与えることなく、いい驚きをもたらすことができるのも優れたDJの条件だと思うからね。だから、僕のプレイは、ファンク・パンクやテクノを多めにかけていたときもあれば、ディスコを多めにかけていたときもあるし、その時々で変化しているんだ。

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ジョイ・オービソンとリル・ルイスをブッキングしたんだけど、ジョイ・オービソンはとてもUKっぽいサウンドのアーティストでリル・ルイスとは全然違うから、僕たちがそのバランスを取るようにして、その日の最初から最後までの流れを上手く作るようにしたんだ。

そんなおふたりが続けてきたsecretsundazeはイビザやベルリンを含むヨーロッパでの評価を確立しながら、トレンドの移り変わりが激しく、飽きっぽい遊び人相手に、11年に渡って良質なパーティを提供してきましたよね。この11年のハイライトは? 

G:ハイライトはあり過ぎて挙げ切れないけど...... 強いて3つ挙げると、ひとつはイースト・ロンドンのストリート・パーティだな。元々は小規模のサイクリングのプロモーション・イベントだったんだけど、secretsundazeがそれを乗っ取ったようなかたちになったんだ。あれはたしか、2004年か2005年頃だったと思うけど、道路に3つサウンドシステムが出ていて、他ではレゲエなんかがかかっていて、その一つをsecretsundazeが担当したんだ。その道路に沿って電車の高架があったんだけど、そこにミラーボールを吊るしてね。4000人かそれ以上の人たちが集まったよ。フリーパーティだったから、イースト・ロンドンの地元の人たちが遊びに来ていて、とても特別な雰囲気だった。
 ふたつめは、2006年にイビサ島でリカルド・ヴィラロボスを呼んでやったパーティだね。その頃の彼は有名になりはじめたばかりの頃だったんだけど、イビサ島というのは、地元にネットワークがないとパーティをするのがとても難しいところでね、それでも僕たちはパーティの数日前に島へ渡って、とにかく死にものぐるいでパーティをオーガナイズしたんだ。「The Blue Marlin」という島の南側にある美しいロケーションでできることになって、いまは金持ち向けの気取った店になってしまったけど、その頃はとてもシンプルなビーチ・バーだった。サウンドシステムもとても良くてね。この日も2000人くらいが詰めかけて、ビーチが人でいっぱいになって近くの道路も渋滞するほどだったんだけど、そのときの雰囲気が素晴らしかった。イビサでも、他の場所であんなヴァイブのパーティは体験したことはないね。もう6年も前のことなのに、いまでもイビサに行くと、そのときのパーティの話をして来る人が時々いるよ。
 3つめは...... どれにしようかな。2年目の「The Poet」でやったシーズンは全て最高だったね。イヴァン・スマッグ、ルチアーノ、ローソウル、トレヴァー・ジャクソンなんかを呼んだけど、どのDJも会場に入ると顎が外れそうに驚いていたよ(笑)。屋外だったけど、壁に囲まれていたから音も良かったし、何人かのDJは、お客さんの勢いや会場の雰囲気に飲まれそうになって緊張していたほどだったよ。僕らは毎回やっていたから慣れていたけど、それくらいパーティに勢いがあったんだ。

最後の質問です。いま、日本のクラブ・シーンは古くからある法律を振りかざした公権力の過度な取り締まり対象になっていて、箱自体が営業停止に追い込まれたり、極端にいえば、深夜に踊ることが禁止されているような状況下に置かれていて、ダンス・ミュージックというもの、そして、パーティを続けることの根源的な意味が問われています。そこでお聞きしたいのは、ふたりが困難な状況に直面しても続けてきたパーティとは?

J:多くの人にとって、パーティをすること、踊ることは極めて重要な意味を持っていることは間違いないよね。とくに震災のような厳しい体験を経た日本では、厳しい状況のときこそ、多くの人で集まって楽しい時間を共有する体験が必要だと思う。ただ楽しいから遊びに行くというのも十分な動機だけど、日常のことや心配事を忘れて自己を解放したくなるときもあるだろ?  そういうときこそ、パーティはより大きな意味を持つんだと思う。
 日本が今直面している法律の問題はとても難しい課題だから、向こう数年どんな変化が起こるのかということにも興味があるよ。今回の僕たちのツアーも早めにはじまって深夜に終わるスタイルだから、それがどう受け入れられるのかも気になるね。例えば、ここ数年ロンドンではナイトクラブではなく、ウエアハウスのパーティが主流になってきている。そういう単発のイベントの方が、クラブを営業するよりも規制が緩いからだ。そのせいで、クラブの営業が厳しくなって来ている現実があって、実際に何軒ものクラブが閉店してしまった。クラブ営業だけでやっていける店は本当に少なくなって来ているんだ。新しいお店の多くは、クラブだけではやっていけないので日中はアートスペースとして運営しているよ。それは面白い動きだと思うけれど、残念なのはクラブとしての設備投資が十分にできないから、音響などに資金が回らないこと。この経験が日本でどう応用され得るかはわからないけど、いま起きている問題のせいで日本の素晴らしいサウンドシステムを持ったクラブが存続できなくなるとしたらとても悲しいね。日本のクラブの素晴らしいところ、そして世界中のDJから愛される理由は、妥協を許さない音作りにあると思うから。
 とはいえ、みんなの音作りの情熱が消えることはないだろうから、ロンドンのようにアンダーグラウンドなウエアハウス・パーティが主流になっても、仮設の素晴らしい音響を実現してくれるのかもしれないけどね。あるいは今後、時間帯を早めた、日中のパーティが多くなってくるのかもしれないよね。少なくともロンドンではそうなって来ているし、僕らが最初に日曜の日中のパーティをはじめた動機のひとつに、ロンドンの土曜日の夜だと多くのクラブが3時に閉店してしまって、ひとつのパーティを作り上げるには時間が短過ぎるという不満があった。だから日曜の午後2時~10時半までの時間があれば、もっと色んなことができると思ったんだ。だから、そうやって遊び方を変えてみるのもひとつの方法かもしれない。

つまり、secretsundazeみたいなパーティをやってみれば? と(笑)。

J:その通り(笑)!

インタヴューの完璧な〆をどうもありがとうございました。それでは日本でお待ちしてますね。

J:ありがとう。パーティで待ってるよ。

11/8(木) 21:00~ secretsundaze presents Giles Smith and James Priestley @ Dommune
観覧の予約はこちら:https://www.dommune.com/reserve/2012/1108/

11/10(土)20:00~ secretsundaze tokyo @ Galaxy
出演:Giles Smith, James Priestley & Kez YM
https://www.thegalaxy.jp/programme/secretsundaze.php

11/11(日)19:00~ secretsundaze osaka @ Circus
出演:Giles Smith, James Priestley, Ageishi & Ono
https://circus-osaka.com/events/secretsundaze/

interview with DJ Fumiya - ele-king


Beats For Daddy

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 DJ Fumiyaは、リップスライムのトラックメイカーとして瀟洒たるポップネスをグループにもたらし、ヒップホップ/ラップ・ミュージックを広く世間に知らしめた立役者のひとりであり、今日まで一貫してカラフルでダンサブルなトラックを作り続けている。
 『ビーツ・フォー・ダディ』は、DJ Fumiyaの長いキャリアのなかで意外なことに初のソロ・アルバムである。ここでも、彼はブレることなくクラブ・ミュージックを彼なりにポップに咀嚼した楽曲を、人気のシンガー奇妙礼太郎や森三中といったような想定外だがその軽妙なキャスティングに納得させられるユニークな共演を交えて披露している。
 今作でのトラックの行き先は、リップスライムで見せてきたカラフルさを持ちつつも、ダンス・ビートをいかに親しみやすく聴かせることができるかに向かっている。"ENERGY FORCE"などを聴くとギャング・ギャング・ダンスがジャングルのなかJ-POPを流して満面の笑顔で踊っているみたいだ。とくにメロウなクラシック・ギターの音色に激しいドラムが絡むロリータ・ポップ"HOTCAKE SAMBA"は、聴いていて本当に幸福な気持ちにさせてくれる。DJ Fumiyaは、多彩なダンスの要素を取り入れ、ポップ・ミュージックとして結実させる。そこにいやみなく窮屈なメッセージは忍ばせようとしたりもしない。とにかく楽しそうなトラックと声、そしてスクラッチがここにある。

 しかし、そのヒップホップ/ポップのトラックメーカーとしての熱量は、池を何時間でも見ていられるという自然児の平静な心にともなって生まれている。今作のテーマカラーらしきパープルは、いささか性的で猥雑な印象をあたえる色でもあるが、冷静のブルーと興奮のレッドの間に位置する色だ。寡黙なヒップホップ/ポップ・ヒーローに、クラブ・ミュージックとポップの関係について語ってもらった。

僕は単純に動物が、とくに水辺の生き物とかが、すごく大好きなんですよ。池とか小川とか田んぼとか海とか。なのでメダカとか亀とか。犬とか猫も飼っているんですけど。小学生のころは毎日のようにザリガニとかカエルとかを捕っていましたね。

野田:フミヤさんのことはリップスライムがデビューした時から名前は存じていたんですけども、デビューの頃はテクノDJの田中フミヤと間違えられたりしませんでしたか?

DJ Fumiya:全然ないですね。僕がデビューした時にはすでに田中フミヤさんは有名な方だったので。僕はまだお会いしたことないんですけども。

野田:まあ、ジャンルも世代も違いますしね。とはいえ、田中フミヤはテクノの第一人者でやってきているので、フミヤさんがリップスライムでデビューした時、「あ、もうひとりのDJでフミヤがいる」と思ったんですよ。

DJ Fumiya:ああ、いえいえ......!

野田:なんか、すみません。

......では、はじめます。すみません。

DJ Fumiya:はい!

リップスライムでメジャーデビューしたのが2001年で、遡るとインディーのリリースは1995年からですね。長いキャリアをお持ちですが、元からソロ・アルバムを出したいっていう願望はあったのですか?

DJ Fumiya:(※即答)もう、ずっとありましたね。24~25歳のころから。リップ(スライム)で使っていないトラックのなかで自分のお気に入りトラックをまとめて出してみたいなと思っていました。

おお、ということは、2004年前後からすでに構想があったのですね。リップスライムでのインタヴューで、トラックは70%くらいまで作ってラップが乗る約30%の隙間をつくるとフミヤさんが仰っていたんですけども、今作『ビーツ・フォー・ダディ』はどうですか?

DJ Fumiya:今回はもうオケの状態でけっこう作り上げていたので、声が乗ってからシンプルにしていくという作業があったかもしれないです。

ああ、削ぎ落としていったわけですね。

DJ Fumiya:そうですね。どういうレコーディングをしていらっしゃるのか把握できていない人たちと共演したので、やりながら探っていったという具合でした。トリプル・ニップルズ(Trippple Nippples)は曲を通してつくるのではなく、断片をいっぱい録っていって、「ではフミヤさん、あとよろしくお願いします」みたいな。

素材だけで、まさにサンプリング的な感じで。

DJ Fumiya:そうですね。「べつに意味が通らなくてもいいんで」という具合でした。

リップスライムのときから、ありもののサンプリングというより、スタジオ・ミュージシャンの方を呼んでレコーディングしていたんだと思いますが、それは今作でも同様ですか?

DJ Fumiya:いや、今作はほとんど自分でギターなどを演奏しましたね。リップ(スライム)のときも、スタジオ・ミュージシャンとはいえど、家に来て弾いてもらって、僕がそれをサンプリングするというやり方が多かったんです。だいたいもの凄くバラバラにチョップして、レコードからサンプリングして録ったかのように乗せるというのをよくやっていたので、そのまんま乗せるっていうことはあまりしたことがないんです。

野田:とくに好きな音楽エディターっています?

DJ Fumiya:チョップとか打ち込みが上手いと思うのはテイ(・トワ)さんですね。緻密ですし、チョップされたスネアとかを聴いてすぐテイさんだとわかるその個性が打ち込みに表れてますね。あとは、アトム(Atom™)とかもそうだと思いますし、まりんさん(※電気グルーヴの砂原良徳)とか。

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鎮くんはどうしても1回やってみたいというのがありましたね。声がすごいし、本人自体もすごいですけど、やっぱ、声がすごいなって。で、この曲が一番時間かかったんですよ。3ヶ月くらいかかったかな。


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フミヤさんはテイ・トワさんによる事務所〈huginc.〉に所属していますね。今作の"HOTCAKE SAMBA"という曲に参加している事務所メイトのBAKUBAKU DOKINというユニットについて調べたんですが、情報があまりなく、謎めいていて......。いったいどういう人たちなんですか?

DJ Fumiya:もう5年位前にクラブで「プロデュースしてください」って。

おお、急に頼まれたんですか!

DJ Fumiya:そうですね。それからよくデモを作っていたりなんかして、2年前にはテイさんのところからちょこっと出していて、今回の曲もほんとうは彼女たちにあげてたんですけど、ちょっと返してって言って(笑)。

(一同笑)

DJ Fumiya:そして、もうひとり参加してもらった方が僕のソロっぽくなるかなと。BAKUBAKU DOKINがオモチャっぽい声をしているので、大人っぽい声の人とギャップを出してもらうためにorange pekoeのナガシマさんにお願いしました。

なるほど。共演の話でいくと、ライムスターや鎮座DOPENESSやリップのリョージさんなどのラッパーをフィーチャーするのはよくわかるのですが、芸人である森三中の黒沢かずこさんをフィーチャーしていますね。これにはどういう思惑があったんですか?

DJ Fumiya:森三中のことはむかし「ガキ使」(テレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』)とかに出はじめた頃からすごく好きで、黒沢さんもリップのことを好きでいてくれて、自分でチケットを買ってライヴに来てくれていたんです。テレビでよく黒沢さんがフリースタイルで歌いはじめたりするのを観ていて、「この人、やっぱ、歌いけんじゃね~かな~」と思って、なにか曲をふってみたいなという考えがありましたね。

すごくクレイジーな歌ですよね。

DJ Fumiya:クレイジーでしたね。

イントロからすごいなと思って。

DJ Fumiya:あのモードにガラっと変わるのが、やっぱ......。

すごいですよね(笑)。演技力がヤバいなと思いました。

DJ Fumiya:プロだな、っていう。ただ、その、歌は上手いんですけど、やっぱ、こう、人とは違うな、っていう。全然キーと違うところを歌ったりするんで。

面白いですね。

DJ Fumiya:面白いですし、それが大変でした。

大変そうですね(笑)。"TOKYO LOVE STORY"でフィーチャーしている奇妙礼太郎はいま人気の歌い手ですけども、どういう経緯で共演になったんですか?

DJ Fumiya:名前をずっとお聞きしていました。やっぱり、声が好きなんです。この曲が今作中で一番最後に声録りをした曲だったんですけど、録音の1週間前くらいにお願いをして、お忙しいギリギリのなかでウチに来てもらって、その場で詞も書いてもらうようなかたちでした。

野田:あと、"JYANAI?"で鎮座DOPENESSをフィーチャーしてるのがいいと思いました。

DJ Fumiya:や、もう鎮くんはどうしても1回やってみたいというのがありましたね。声がすごいし、本人自体もすごいですけど、やっぱ、声がすごいなって。で、この曲が一番時間かかったんですよ。3ヶ月くらいかかったかな。

野田:どこでかかったんですか?

DJ Fumiya:鎮くんは、やっぱ、けっこうリリックで悩んでくれて。あのフリースタイルを見てると、すごく早く書けるんじゃないかって思うんですけど。

たしかに。

DJ Fumiya:逆なんですね。たぶん言葉が出て来すぎて。それで言葉のチョイスに時間がかかるっていう。だから、ほぼ飲んで終わるみたいなのがすごく続きましたね。

(一同爆笑)

打ち合わせという名の飲み会だったり。

DJ Fumiya:飲んで終わるみたいな。

野田:そういうキャスティングするうえでの基準というかポイントってどんなところに置きました?

DJ Fumiya:まずオケがあって皆さんにふっていくというかたちが多かったので、そのオケに対してのカウンターでもイメージどおりでも、パッと思いついた人たちと共演したという感じでしたね。



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僕はやっぱポップが好きなので、もともと聴いているヒップホップなどの音楽にしてもそういうのが多かったと思いますし、とくに無理してるっていう感覚はないんですね。


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音に関して言うと、今作『ビーツ・フォー・ダディ』もそうですし、リップスライムのときから一貫してポップなトラックをつくってきていますね。このインタヴューで主に訊きたいのは、フミヤさんがポップに開けていることについてなんです。一貫したポップさはやっぱり意識的なものなのですか?

DJ Fumiya:僕はやっぱポップが好きなので、もともと聴いているヒップホップなどの音楽にしてもそういうのが多かったと思いますし、とくに無理してるっていう感覚はないんですね。

僕は中学生の頃からリップスライムのファンで、インターネットも普及していたのでいろんな情報が見れたわけですが、例えばキングギドラの"公開処刑"という曲でK・ダブ・シャインがリップスライムとキック・ザ・カン・クルーの二組にちょっかいを出していたことをインターネットを通して当時知りました。その二組はラップというものを知らなかった子供さえファンにしてしまうポップ・スターでもあった訳ですが、ポップを打ち出していたフミヤさんの側に葛藤みたいなものはありましたか?

DJ Fumiya:僕個人はまったくなかったんですよ。

おお、そうなんですね。

DJ Fumiya:なんでしたっけ、「屁理屈ライム」と言われたんでしたか。いや、もう、めっちゃ「屁理屈」だしなって思いましたね(笑)。

あ、でも、「屁理屈」だと思ったんですか?

DJ Fumiya:そうですね、なんというか、詞が言葉遊びのグループなんで、そのとおりと思いましたね。でも、僕はそれが全然悪いと思っていないし、そこが楽しいとこだと思っているから、ちっきしょーとかは全然思わなかったですね。

その横槍へのアンサーだと言われている"BLUE BE-BOP"のミュージック・ヴィデオの最後に出てくるメッセージ「THANK YOU FOR YOUR KIND ADVICE AND SUPPORT!」は誰の発案だったんですか?

DJ Fumiya:俺、全然知らなかったんですよ。できあがったらああなってたんです。

そうなんですか(笑)。

DJ Fumiya:あの頃、すごく忙しかったので記憶があまりないんですよ。

野田:とくに当時はいろんな意味で熱かったし、「ヒップホップとはこうでなければいけない」みたいな空気も強かったように覚えていますね。

DJ Fumiya:そうですね。いまでこそあまりないですが、僕が昔にやっていたころは強くあったなという気がしましたね。

野田:まあ、いきなり売れてしまったわけだし(笑)。

DJ Fumiya:そうですね。だから、逆に「ここで守んない! もっと破んなきゃ!」という......(笑)。自分はずっとヒップホップ好きで聴いてきて、だから「僕が新しいことをしていかないと」というか。「僕がやることはヒップホップだから」っていう。なんかこう、変な......(笑)。

おお、使命感みたいなものはあったんですね。

DJ Fumiya:はい。そうですね。

野田:そう考えてみると、リップスライムみたいなグループのほうが少数派かもしれないね。

DJ Fumiya:本当にそうなんですよね。たぶんアメリカのヒップホップ・シーンでさえ少ないんじゃないかと思います。

今作『ビーツ・フォー・ダディ』のタイトルは、自分と同じ父親の立場にいるような世代のひとたちに向けた音楽だという意味だそうですね。

DJ Fumiya:僕が父親になったっていうのと、ビル・エヴァンスの"ワルツ・フォー・デビー"をちょっと捩らせてもらいました。それで1曲目もワルツなんです。

そういった父親世代とは逆に、リップスライムやキック・ザ・カン・クルーを聴いて育ってきたような子ども世代からユニークなヒップホップのアーティストがインターネットを通じるなどして現れていますが、そういう若い世代の音楽って気にされたりますか?

DJ Fumiya:あ、はい、ちょくちょく。例えば、鎮くんなんかも曲作り終わってみて、やあ、本当に頑張ったね、時間かかっちゃったね、みたいな話をしてる時に、「本当すみません。すっげー緊張してました」って言い出してきて。「5年前じゃフミヤさんとやるなんてことは有り得なかったから」と言われて、「そうなんだ」と思いました(笑)。全然わからなかったです。

なるほど(笑)。

野田:一応、斎藤くんもラップをやってるんで。

DJ Fumiya:あ、そうなんですか!

野田:それを言いたかったんじゃないかと(笑)。

DJ Fumiya:ははは(笑)。

いや、全然そういうことじゃないですよ(笑)! 僕だけではなくて、例えばシミ・ラボ(SIMI LAB)の人たちもele-kingのインタヴューでアメリカならエミネムあたり日本ならリップスライムやキック・ザ・カン・クルーを聴いていたと言ってるんです。なんていうか、言ってみればフミヤさんはヒーローなんですよ、本当に! ヒップホップの道をひとつ切り拓いたひとりだと思います。

DJ Fumiya:いやいや(笑)。僕はネットとか恐いのであまり見ないんですが、嫌われてるんじゃないかとずっと思ってたんです(笑)。

えー! そうなんですか?

DJ Fumiya:でも最近、そういったお褒めの言葉を言われることが多いから、嬉しいですね。

あ、でもそれは最近になって改めて言われるようになったという感じなんですか?

DJ Fumiya:そうですね。それこそ、小学生くらいだった子が大きくなって自分でも音楽をやるようになって、「あの子たち、リップ好きらしいよ」っていう話を聞くようになりました。リョージくんなんかは日本語ラップをよく掘っているので、そういう話をよく聞くみたいですね。

ではまさにシミ・ラボはその一例ですね。リップスライムとは方向性が違いますけど、シミ・ラボについてはどういう感想をもっていますか?

DJ Fumiya:すごくカッコいいと思います。なんか、爆発力というと違うかもしれないですけど、なんていうんですかね。初期衝動っていう感じのものがありますし。

野田:『ビーツ・フォー・ダディ』はとても良いアルバムだと思ったんですね。リミックスしているからっていうわけではないのですが、やっぱディプロっぽいというか、コミカルな感じとか、パーティっぽい調子、ビートや展開がころころ変わる面白さなんか、ある意味メイジャー・レイザー(Major Lazer)のヒップホップ版かなと思いました。彼らはダンスホールですけど、フミヤさんはああいう突き抜けた感覚をヒップホップのスタイルでやってるのかなと思ったんですね。彼らに対する共感はありますか? 

DJ Fumiya:ありますね。音楽を楽しんでる感じのところに。ディプロが歳も同じくらいの同世代で、あの音楽の雑多さが......たぶん色んなの好きじゃないですか。あのふたりには「さすが!」って思いました。ビートとメロディで好きなように遊んでるなっていう。なんかこう、例えばテクノのいいところも入ってるんですけど、全部それとは言えなくて、完璧にメイジャー・レイザーの音楽というか。すごく楽しそうだなと、やっぱり「楽しそう」というのが重要ですね!

野田:バカなことやりながら、アンチ・ゲイ的な暴力を批判したりとか、ああいうところも良いですよね。あとフミヤさんと共通しているのは、リズムの面白がり方だと思うんです。色んなリズムをカット・イン/カット・アウトして。

DJ Fumiya:で、レゲエやっても、それがすごく楽しそうで。本場のひとに言わせたら思うことがあるのかもしれないですけど。

野田:しかも、あれがジャマイカで売れたっていうのがすごいですね。

DJ Fumiya:やっぱり、ディプロだけでなくスウィッチ(Switch)がいるからすごくいいんだと思います。

野田:ああ、なるほどねー。

ディプロと実際にお会いしたことはありますか?

DJ Fumiya:DJのとき一度だけ会いました。すごかったですね、彼のDJも.........テイ(・トワ)さんと「軍隊みたいだ」って。

野田:軍隊じゃないまずいじゃないですか(笑)、なんでですか!?

DJ Fumiya:身体も屈強そうだし、ずっとなんかもう、こう(※右に左に身体を動かして機材をいじっていく真似)......後ろから見たら兵隊に見えて。汗もビショビショで。

野田:ああ、ちょっとスポーツが入ってる感じなんですね。

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ピート・ロックとDJプレミアはコスリも上手かったですね。当時はコスリのコピーばっかりやっていました。DJプレミアのコスリは、いまでも口ずさめるコスリですね。


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「楽しそう」という面についてですと、リップスライムの『Masterpiece』がリリースされた頃、NHKの『トップランナー』に出演なさっていましたよね。そこでファーサイドの"ソウル・フラワー"を流していらっしゃったのが、当時エミネムしか知らない中学生だった僕にはすごく衝撃的でした。90年代のヒップホップというのはなかなか知りえなかったですし、「こんなに楽しそうでカッケえヒップホップがあるんだ!」と思うと同時に、リップスライムがそれを標榜していたのかなというのも感じました。

野田:僕もファーサイドは好きだったんですけど、でも、微妙ですよね、日本でも(笑)。昔「ヒップホップで何が好き?」って訊かれて「ファーサイド」って答えて怒られたこともありますね、硬派な人から。

そうなんですか...! 本国でも叩かれていたらしいですしね。

DJ Fumiya:ファースト・アルバムが売れて、本人たちもちょっとハードな感じに変わっていったりもしたんですけどね。それでメンバーやめちゃったりとかもあって。

アルバムを発表順番に並べると、メンバーがだんだんと減っていったのが目に見えてわかりますよね。

DJ Fumiya:やっぱり、ジェイ・ディーが参加していた頃が最高ですね。本当、5人揃って好きだって言えるグループってファーサイドくらいしかいなかったですね。

ソロをやるにしてもファットリップなんかもファーサイドをやめてからだったわけで。そういう意味ではリップスライムって、バラバラになっていったファーサイドとは対照的に、ソロ活動と並行してちゃんと5人揃ってグループが長く続いていますよね。それって凄いことだと思うのですけど、どういう実感がありますか?

DJ Fumiya:そうですね.........みんな、あんまり、深く考えてないのかもしれないですね。

フミヤさんはなにか考えていることってありますか?

DJ Fumiya:曲自体にはありますけど、「これからリップはこう変わっていくんだ」みたいなことは考えてないですね。俺だけ考えても絶対無理なんで! また具合悪くなっちゃうんで、そんなこと考えても。

なるほど。最近だとリップのペスさんもソロ活動をしてイルマリさんもバンドを始動させていますよね。リップスライム以外の横の活動が積極的に行なわれているように感じますが、そういう流れは自然にあるいは同時多発的に起こったりするものなのですか?それとも「ちょっとしばらく休もうか」とみなさんで決めていたりとか?

DJ Fumiya:どっちもと言いますか。たぶんこのタイミングで、休憩じゃないですけど、自分で違う場所に行ってみて呼吸して戻ってみて、またリップスライムの活動に活かすこともあるんだと思います。ちょっと、リップの一番最近のアルバム『STAR』を作り終わってから、それからどういう曲を作ったらいいのか個人的にわからなくなっていた時期でもあったので。次をすぐ作れって言われても無理だな、と。他の刺激が欲しかったんですね。

ソロ作品をつくることはメンバーと話してからでしたか?

DJ Fumiya:いちおう言いましたが、みんなも同じことを考えいたのではないかと。

リョージさんがツアーDVDのなかでリップスライムはスライムみたいに柔軟なんだというようなことを言っていたと思うんですが、まさにそのとおりですね。その柔軟さの出処はどういうところでしょうか?

DJ Fumiya:たとえば楽曲制作でいうと、どんなトラックを持っていってもラップを乗せてくれるので柔軟だなと思います。ふざけて作っためちゃくちゃ速い曲とかリズムがない曲とかでも、みんな詞を頑張ってつけてくれるので、自分の遊びを引き受けてくれる柔軟さがありますね。

そもそもトラックはいつから作られてたんですか?DJ活動は14歳からということですけども。

DJ Fumiya:トラックは16歳くらいからですね。

野田:最初のサンプラーはなんだったんですか?

DJ Fumiya:最初はAKAIのS01っていう、8個しか音が出ないし、ツマミが一個しかついてないもので、本当にただのサンプラーでした。ただ音が出てくるだけっていう。それからAKAIのS900とか950とかヒップホップの名機に戻ったっていう感じですかね。ピート・ロックだとかが使っていたような。

DJやトラックをはじめた時の模範の音っていうのはありましたか?

DJ Fumiya:やっぱりヒップホップでしたね。90年代前半の......。

ニュー・スクール的な?

DJ Fumiya:そうですね。それこそピート・ロック、DJプレミア、ジェイ・ディーとかですね。あと、トライブ。あそこら辺のひとたちはいまでも聴きますね。ピート・ロックとDJプレミアはコスリ(※スクラッチ)も上手かったですね。当時はコスリのコピーばっかりやっていました。DJプレミアのコスリは、いまでも口ずさめるコスリですね。

それを聴きながら、当時はどういう現場でやられてたんですか?

DJ Fumiya:DJでよくプレイしていたのはライムスターさんたちとの「FG NIGHT」が中心ですね。

野田:ああ、クラブは渋谷のFAMILYですよね。僕も行ったことあります。

その時からすでにFGの中にいらしたのは、ダンサーだったお兄さんとの繋がりがあってですか?

DJ Fumiya:ですね。リップのスーっていうやつとウチの兄が同じチームでダンスをしていて、イースト・エンドのダンサーになって、そこからですね。中二とか中三の頃だったと思います。

野田:黄金時代ですね。

DJ Fumiya:黄金時代ですね(笑)。まだイースト・エンドも売れる前の時代ですね。

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日本のクラブとターンテーブルがないところもありますからね。あってもメンテナンスされてないボロボロのものとか。「あー、もうダメかな」とけっこう諦めモードになる瞬間があります。


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リップスライムに加入した時はペスさんもトラックを作っていた訳ですが、ライバルというか、競い合っていましたか?

DJ Fumiya:あー、でも僕は最初ペスくんのトラックがカッコいいなと思って、ペスくんみたいな音を作りたいというところから始まってたんですよ。

あ、なるほど。

DJ Fumiya:"STEPPER'S DELIGHT"っていう曲がメジャー・デビューのシングルになるとき、「なんで俺のトラックじゃねえんだ」ってペスくんは怒ってましたね。

なるほど(笑)。

DJ Fumiya:でも、そのときの他の候補がペスくんの"ONE"だったので、どっちにしろリリースされたんですね。

リップスライムのベスト盤『グッジョブ!』が2005年の夏にリリースされた頃、フミヤさんが自律神経失調症でお休みになったじゃないですか。その後の1年間は沖縄県の小浜島で暮らしていたとのことですが、それらの一連の事象で音楽的に作用している事ってありますか?

DJ Fumiya:小浜島ではほとんど音楽を聴いていなかったです。信号もないような島だったので。民謡しか本当にないみたいな(笑)。その間に耳を休ませたっていうのがあって、また音楽活動をはじめるにあたって、どんな音楽も刺激的に聴こえましたね。だから、すごく作りたいっていう欲求が出てきたということがありました。

あー、なるほど。その島にいた間は自分の音楽も聴いたりしなかったんですか?

DJ Fumiya:一応機材は持っていったんですけど、打ち込みをするっていうことがまったく似合わない環境だったので(笑)。やる気が全然起きないっていう。でも、いいやそれで、と。無理して作ることもないしな、と思いましたね。

それで、逆に、制作を再開するときにまた気持ちがドライヴしたんですね。

DJ Fumiya:そうですね。気持ちが跳ね返りました。

野田:トラックの話でいえば、トラックを作るときにヴァイナルを掘るのってフミヤさんの世代が最後なんじゃないかと思うんですよ。いまの20代前半の子が曲を作るとき何処へ行くかって言ったら、TSUTAYAだっていう話を聞いたことがあります。

DJ Fumiya:TSUTAYAですか、あああ......(笑)。

野田:たしかに安上がりですからね。

SLACKなんかは父親のレコード・コレクションも使ってるんだと思いますが、たしかに若い世代になると、トラックを作るときって自分で全部打ち込んでしまうかサンプルネタをネットで拾うかということが少なくないかもしれません。

DJ Fumiya:僕は音の面でヴァイナルじゃないとっていうのがあるんですよね。ちょびっとでも隠し味的に入れると曲の表情が本当に変わるので。音域が広がりますね。

野田:お金をかけずにネットで拾ったようなデジタル音源のサンプルだと、音質が均質化されがちで、個性を出すのが難しいですよね。 

DJ Fumiya:僕もスクラッチは入れてるんですけど、PCのヴァイナルを使ってるんです。波形を見れば一目瞭然なんですけど、デジタルだとどんなに激しくコスっても波形が一定なんですよ。ちゃんとやるんだったら本当は皿(ヴァイナル)に焼いてやらないといけないくらい、アナログは深いですね。

いまアナログはどのくらい買っていらっしゃいますか?

DJ Fumiya:月に何万円とかですね。ビートポートでもいいんだけど、皿で持っていたいなっていうのがありますね。でもビートポートでしか売らない人たちもいますよね。

フミヤさんのいまのDJスタイルは完全にPCですか?

DJ Fumiya:僕はヴァイナルを買って、PCに取り込んでプレイします。4~5年くらい前からそうなりましたね。CDJはすごく下手で、それまではずっとアナログでした。アナログの感触でも回せるということでPCに移行しました。

デジタルのよさも活かしたいっていう思いもあったんですね。

DJ Fumiya:やっぱもう、(ヴァイナルは)重いっていう......。

(一同笑)

野田:最初にDJがデジタル化したのってヒップホップなんですよね。

DJ Fumiya:けっこう前にジャジー・ジェフ(Jazzy Jeff)が来日した時に、誰かが「PCでやってたよ」と言っていて、すげえなと。ジャジー・ジェフがPCでやっていたっていうのは自分にとって大きいきっかけでした。

野田:でも、また最近アメリカのヒップホップのDJもヴァイナルに戻ってきているみたいですよ。

DJ Fumiya:やっぱり、PCでの自分のDJから次のヴァイナルのDJに交代すると、ヴァイナルの音のほうが明らかに良くて、考えちゃいますね。

野田:ハウスのシーンでいえば、ニューヨークではギャラが違うっていう話も聞いたことありますよ。どこまで本当かわからないですけど、ヴァイナル使った方がギャラが高いとか(笑)。

DJ Fumiya:えー、そうなんですか......! じゃあ僕アナログにします(笑)。でも日本のクラブとターンテーブルがないところもありますからね。あってもメンテナンスされてないボロボロのものとか。「あー、もうダメかな」とけっこう諦めモードになる瞬間があります。もうCDにいくか、完全にアナログに戻るしかないかな、と。

フミヤさんから見て、いまの日本のクラブ界隈と言うか業界ってどういう風に見えますか? 機材のこともありつつ、昔と比べてでもいいですし。

DJ Fumiya:どーですかねえ.........。あの、その、いいかわるいかは別ですけど、みんなすぐDJになれていいなって思いますね。

(一同笑)

羨ましさもあるという。

DJ Fumiya:ピってCDをかけてBPMも合っちゃうのが、いいなあって思います。

クラブの話だと、いま風営法で営業形態に関して色んな議論がでていますが、フミヤさんとしてはどう思いますか?

DJ Fumiya:やっぱり、夜中から朝までというパーティを経験してきていますし、そういうところに入っちゃいけない中学生の頃から通っていたので、ちょっと悲しいなとは思いますね。逆に早い時間から終電までのイヴェントにして、それこそ高校生とかを呼べるようなパーティにしていくっていうのもありなんじゃないかと思いますね。そこでクラブって楽しいだろっていうふうに教えていくということができますし。もし日本が「(深夜営業を)絶対やらせないよ」ということになったら、そういうふうにしていくのもありだと。

風営法について、それこそリップスライム内で話題にあがることはありますか?

DJ Fumiya:「あー、また何処そこの箱がやられちゃったね」っていう感じですね。東京はまだそうでもないですが、ツアーで全国をまわっていると、僕が最後で夜1時までとかってあるので。みんな、いきなりバサッと終わられて可哀相だなと思います。

野田:あと、公共の交通手段が深夜に動いていないこともどうにかしてほしいと思うんですね。現代の都市として、ナイト・ライフというものに対する寛容さや公共の施設がなさすぎるっていうか。

DJ Fumiya:そうですね。お正月だけですもんね。

野田:ロンドンなんかだとなぜか3時までのパーティってあるじゃないですか。

僕が行ったイヴェントもそうでした。

野田:あれいいと思うんですけどね。別にがんばって朝5時までやる必要ないっていうか。

DJ Fumiya:けっこうみんな3時とか4時で帰りますからね。

みんなどこかで休んでから始発で帰りますよね。

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ディプロなんかはアメリカなので、雑なんですよね。スウィッチがそれを綺麗にまとめる構図がメイジャー・レイザーはいいですね。僕の今作のリミックスでもディプロはザックリしてますね。


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野田:レコードは中古屋さんに売らないですか?

DJ Fumiya:ヴァイナルは売ったことないですね。全然かけない曲とかでも思い入れがあるというか。CDはちょいちょい友だちにあげたりします。

ヴァイナルの話でいうと、リップスライムは主に『Masterpiece』あたりのちょっと昔のリリースがヴァイナルでも出ていますよね。最近だとフミヤさん選曲のベスト盤ですね。最近の若い世代でも、ヴァイナルとかカセットを聴くというアナログの風習が、アメリカとかイギリスのインディーの精神といいますか、日本にも流れてきてはいるんですよ。

DJ Fumiya:ふーむ。ふむふむふむ。

子供のときからデジタルだった世代にしてみれば、リヴァイヴァルというよりは、アナログの音が新しいものとして受け止められているんです。そういう世代に対して、ヴァイナルのべテランとしてなにかコメントはありますか?

DJ Fumiya:やっぱり、あの音を知ってるか知らないかっていうのはけっこう変わってくるんじゃないかと。とにかく自分が聴いてきたなかで一番いい音なので。箱とかで聴いてもいい音だし。たとえば、レコーディングのとき音の設定で僕は44kHzにするんですが、96kHzとかでやる人もいるんですよね。本当にノイズも聞こえるくらい、違った意味でめちゃくちゃいい音っていうか。僕の趣味はわざと44kHzでやっています。結局CDを取り込んだときに44kHzになっちゃうんですが、でも、アナログを取り込むときはなるたけそのままの音を取り込みたいという気持ちはあります。

アナログのリリースはリップでも一昔前ですし、今作『ビーツ・フォー・ダディ』もアナログではリリースされないですよね。せっかく若い世代がアナログを買いはじめているので、ぜひこれからもアナログを作って欲しいのですが、そういう願望はありますか?

DJ Fumiya:ありますあります! こないだもリップのヴァイナル・リリースのときに、レコードの溝を見るマスタリングの技をイギリスまで観に行きました。本当、手に職っていう感じでしたね。

野田:あれはもう職人芸ですよね。海外だと、プロデューサーの次にクレジットが書かれてるくらいマスタリングは地位が高いというか、認められていますよね。

DJ Fumiya:ヴァイナルは盤にマスタリング・エンジニアの名前が彫られているので、見たりします。

リップスライムのマスタリングはロンドンのスチュアート・ホークス(Stuart Hawkes)という人がずっとやっていらっしゃいますよね。どういう経緯でそうなったんですか?

DJ Fumiya:テイ(・トワ)さんが同じエンジニアさんで、おすすめされたんです。その人はドラム'ン'ベースもやっていて、僕もロニ・サイズ(Roni Size)とか〈フルサイクル〉系のドラム'ン'ベースをずっと聴いていたので、いい音だな、と。その人は4ヒーローもやってましたし。でも、去年くらいにロンドンへ行ってはじめて会ったんです。

あ、そうなんですか(笑)?

DJ Fumiya:飛行機が恐くて。

(一同笑)

どんな人でしたか?

DJ Fumiya:(リップの)イルマリに似てましたね。イルマリに似てるなっていう...。

.........(笑)。

DJ Fumiya:あと、飯が激マズいっていう。「いい加減お前ら聴きにこい」と言われたので、リップのメンバーでその人に会いにいったんです。ロンドンには何回か行っているんですが、マスタリングに立ち会ったのはそのときが初めてでした。イギリスのクラブは音もいいし。でも、日本になんとなく似てるなと思いますね。音楽の好みとか、曲の作り方も緻密な人が多いイメージがありますね。

なるほど。

DJ Fumiya:だから、ディプロなんかはアメリカなので、雑なんですよね。スウィッチがそれを綺麗にまとめる構図がメイジャー・レイザーはいいですね。僕の今作のリミックス("Here We Go feat. Dynamite MC(Diplo Remix)")でもディプロはザックリしてますね。

ロンドンでDJはやらなかったんですか?

DJ Fumiya:ミレニアム・パーティというか、年末にもの凄く広いところでドラムンベースやらテクノやらをかけるパーティに行きました。DJはやらなかったんですけど、レコードは買いました。

ロンドンでやりたいと思いますか?

DJ Fumiya:やりたいと思いますね。もうすこし飛行機が速かったら......。

(一同笑)

DJ Fumiya:一睡もしなかったこともありました。映画を観たり、飯をいっぱい食べたり。でも最初に海外の飛行機に乗ったとき、英語が分からなくて全部「Yes」と答えてたらご飯がでてこなくて。

(一同爆笑)

アメリカではなくロンドンというのも......。

DJ Fumiya:イギリスの音楽が好きだからですね。それこそドラム'ン'ベースですね。

野田:ミックスCD『DJ FUMIYA IN THE MIX』なんかだと、ヒップホップって感じではなかったですよね。

ダンス・ミュージックで。

DJ Fumiya:そうですね。あれはもう本当に四つ打ちでいくっていうのがコンセプトだったんです。

野田:それはDJをやっていくうちに選曲の幅が広がっていったということなんですか?

DJ Fumiya:時期によってはドラム'ン'ベースばっかり回してることもあったし、いまは、四つ打ちカッコいいなあと思ってハウスとかを掘り下げています。打ち込みの音楽だと四つ打ちが一番難しいとずっと思っていて、奥が深いなあっていつも思いますね。

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いまは、四つ打ちカッコいいなあと思ってハウスとかを掘り下げています。打ち込みの音楽だと四つ打ちが一番難しいとずっと思っていて、奥が深いなあっていつも思いますね。


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最近聴いた音楽でとくに素晴らしかったものととくにくだらなかったものをそれぞれ教えてください。

DJ Fumiya:えー! なんでしょう.........。

言いづらかったら、無回答で大丈夫ですので。

DJ Fumiya:今作の"LOVE地獄"っていう曲はすごくくだらないなーと思いますけどね。

ご自身の曲ですか(笑)。

DJ Fumiya:あはははははは(笑)! いや嘘です、嘘です(笑)。

くだらない音楽というか、嫌悪感がわく音楽ってありますか?

DJ Fumiya:嫌悪感のわく音楽ですか...(笑)。大丈夫かな......。なんですかね...。でも本当に家でテレビの音楽番組とか観ないので.........最近よかった音楽の話をしましょうか!

(一同笑)

DJ Fumiya:最近よかった音楽は.........。

(沈黙。8秒)

DJ Fumiya:サブトラクト(SBTRKT)とかすっごく好きですね。

野田&斎藤:おー!

DJ Fumiya:打ち込みなんだけどいい音していて、耳にガッて来ない。あと黒人のシンガーの声もよくて。制作作業に入る前によく聴いていましたね。

野田:そろそろ最後の質問にしましょうか。

最後にカッコいい質問をしたいんですけど......。あ、ではふたつお願いします。ペットが家にたくさんいらっしゃるそうですがそれはなぜなのか、というのと、リップスライムのウェブサイトを見たら「将来の夢:バカみたいな幸せ」と書いてあったのですが、現在のその達成率を教えてください。

DJ Fumiya:僕は単純に動物が、とくに水辺の生き物とかが、すごく大好きなんですよ。池とか小川とか田んぼとか海とか。なのでメダカとか亀とか。犬とか猫も飼っているんですけど。小学生のころは毎日のようにザリガニとかカエルとかを捕っていましたね。

それは地元柄(※神奈川県藤沢市辻堂)ですか?

DJ Fumiya:そうですね(笑)。田舎だったからっていうのもあります。でも、つい最近も用水路に手を突っ込んでザリガニを捕りましたね。嫁さんはビックリしてたんですけど(笑)。

(一同爆笑)

DJ Fumiya:気持ち悪いって言って、走って逃げてっちゃいました。僕は自然児だったので、毎日のように虫とか捕っていましたね。

野田:まさかタガメとかゲンゴロウとかは飼ってないですよね?

DJ Fumiya:さすがに......子供が生まれてからペットに手間をかけれなくなりましたね。

でも、時間があったら......。

DJ Fumiya:もう自分の家に池つくりたいですね。

ははは(笑)。クラブの文化とは真逆の......。

DJ Fumiya:真逆だから、それがなんかこう.........池とか見て何時間でもボーっとしていられるというか。

なるほど。では、最後の「バカみたいに幸せ」についてお願いします。

DJ Fumiya:「バカみたいに幸せ」.........いま「幸せ」ですけど、まだ「バカみたいに」はなってないですね...。

まだ未経験なのですね。

DJ Fumiya:「バカみたいに幸せ」って生きてるうちに経験できるのかがわからないですけど。もしかしたいまのこの状態で「バカみたいに幸せ」だったのかもしれないですけど......。

ああ、あとで気づくかもしれないと。なるほど。

(沈黙。5秒)

DJ Fumiya:なんかちょっとさみしい感じになりましたけど。

(一同笑)

いえいえ、それはそれで、また味わいが。今日はありがとうございました!

DJ Fumiya:ありがとうございました。楽しかったです。これで大丈夫ですかね?

滅相もないです。長い時間ありがとうございました!

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 帰り際、エレヴェーターを待つ間、なにとなく「『自分もラップをしたい』と思ったことはありますか?」とDJフミヤに問うた。その答えは、同時に話しかけてきた野田編集長の声によって僕の記憶から消えてしまった。DOMMUNEでもういちど訊こうか.........。


禁断の多数決 - ele-king

 面白い。くだらない。そして、素晴らしい(田中宗一郎なら「ははは」と書くところだ)。てんぷらちゃん、尾苗愛、ローラーガール、シノザキサトシ、はましたまさし、ほうのきかずなり、処女ブラジルを名乗る、まったく名乗る気のない7人組=禁断の多数決のデビュー・フルレンス『はじめにアイがあった』は、最初からリミックス・アルバムとしてレコーディングされたような、奇妙な位相差を含んだ作品である。

 半年ほど前になるだろうか、編集部から送られた『禁断の予告編』なるプレ・デビュー作は、はっきり言ってパロディとしか思えなかったが、本作がそこから遥かに飛躍しているのは、すべての行為がパロディ/引用として振る舞ってしまうポストモダンの辛さを、前向きな貪欲さで迎撃しているからだろう。TSUTAYAで面陳されたJ-POPと、親の書棚から拝借したオールディーズと、YouTubeで聴き漁ったアニコレ以降のUSインディを片っ端からメガ・ミックスしたあと、派手なエディットでぶっ飛ばしたような......そうした音楽がここにある。
 あらゆる表現においてメモリがほぼ食い尽くされた同時代への意識がそうさせるのだろうか、そうした編集者目線は彼らのポップに奇妙な分裂性(リミックス感)をもたらすことになる。驚いたことに、もしかすると本人らは意識していないかもしれないが、"The Beach"や"Night Safari"は完全にヴェイパーウェイヴ・ポップで、人工度の高いオフィス・ミュージック(のフリをしたサイケデリック・ミュージック)の上に、メンバーの声が無表情に浮かんでいる(これがけっこう、コワい)。
 また、壊れたロックンロール、ないしブルックリンのフリーク・フォークを思い出させる"World's End"、ノイジーなハウス・ビートにクリーン・ギターが浮つくシンセ・ポップ"アナザーワールド"、フレーミング・リップスを思わせるハッピー・サッドなドリーム・ポップ"チェンジ・ザ・ワールド"と、目まぐるしいエディットのなかで世界というタームがクリシェのような使い方をされ、問題を提起する前にさらっと消費されているあたり、このバンドの身軽さを象徴するようだ。



 まんまオールディーズ・パロディな"Sweet Angel"もいい。けれども、教養主義的な名盤ガイドで仕込んだようなポップ音楽の記憶は、もしかしたらもう邪魔なだけなのかもしれない。昨今のポップ・ミュージックをめぐる膨大な情報量(https://www.ele-king.net/columns/002373/)は、これまでの常識からすれば、すでに一人の人間が体系的に俯瞰できる量を物理的に超えている。だから、極論すれば、iTunes/Soundcloud/Bandcampなどのネイティブ・ユーザーにとって、録音音楽の一義的な差異は、もはやURLやタグの違いでしかないわけだ。
 『はじめにアイがあった』は、あるいは音楽をそのように扱っている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとパフュームのどちらが偉いかなんて、まるで考えたこともない。そう、禁断の多数決は、例えばそのような狭量さの先へとずんずんカット・インしていく。批評性を失効させることで立ち上がる何か。正史が定められたかに見えるポップ音楽の記憶を、彼らはリズミックに改ざんしている。「ポップ(多数)」なき時代のポップはどこにある? 一見、軽薄に見える態度とは裏腹に、彼らの問いかけは切実である。

 もっとも、『はじめにアイがあった』に一票を投じるなら、村社会内での終わらない相互孫引き(=近親相姦)がこの国のポップ・ミュージックを疲弊させている事実にも目を向けなければならないだろう。ぐるぐると無限に再流通する音楽群を前にして、「俺たちは音楽を知らない」とシャウトすること。無限に可視化されてしまった情報を前に、目を閉じて叫び散らすこと。批評性と呼ぶのが大げさなら、神聖かまってちゃんが体現したそれは、何かしらのSOSとも言えただろうか。
 とするならば、禁断の多数決から感じるのは、この広い海を引用にまみれながらも泳ぎ切ってやろうとする前向きさである。どう聴いてみても、器用さやシニカルな愛情だけでなせる業ではない。彼らはここで、どこにも行けないその場所で、楽しんでやると決めたのだ、おそらくは満場一致の多数決で。みんなで寝そべって、ポップ音楽のアーカイブをフラットなトランプにして、ババ抜きでもして遊んでいるようじゃないか。副題を付けるなら「さらば相対性理論」。J-POPの退屈さを呪ったJ-POPによる逆襲である。

Kaoru Inoue - ele-king

9/12に個人名義では3枚目になるアルバム「A Missing Myth」と、10/24にギタリスト小島大介とのユニット"Aurora Acoustic"の新作「Harmony of the Spheres」とベスト盤「The Light Chronicles」を、全て自主レーベル「Seeds And Ground」よりリリースしました。「A Missing Myth」のCD盤は限定生産とはいえ一ヶ月強で在庫がなくなるという、自分でも驚くべき結果となりました。真摯に音楽を作ることで応えてくれる人々がどんな時代状況でもいるという、もしかしたら当たり前のことに改めて気づかされ勇気づけられました。来年に向けさらなる制作もプランしつつ、今後もDJやライブをやり続けます。

11/3 @ Vision 1st Anniversary
11/4 Life Music @ Time Out Cafe & Diner
11/10 "A Missing Myth" Release Party @ Nattsu (Takamatsu)
11/17 "A Missing Myth" Release Party @ Troop Cafe (Kobe)
11/24 Komamo 2012 @ 東京大学駒場際
11/24 Blafma @ eleven (Aurora Acoustic)
12/1 Groundrhythm 10th Anniversary @ AIR
12/8 "A Missing Myth" Release Party @ Labo Underground (Miyazaki)
12/15 "A Missing Myth" Release Party @ Add (Sendai)
12/21 "A Missing Myth" Release Party @ Orb (Nagasaki)
12/23 "A Missing Myth" Release Party @ Yebisu Ya Pro (Okayama)

https://www.seedsandground.com
https://soundcloud.com/kaoru324

CHART


1
Mungolian Jetset - Smells Like Gasoline - Smalltown Supersound

2
Kaoru Inoue - Etenraku - Seeds And Ground

3
Kaoru Inoue - Ground Rhythm (The Backwoods Remix) - Seeds And Ground

4
Awane - Atom - Seeds And Ground

5
Secret Circuit - Jungle Bones (Prins Thomas Bonus Beat) - Internasjonal

6
Tornado Wallace - Rainbow Road (Lewie's Bowser Castle Remix) - Instruments of Rapture

7
Bepu N'Gali - I Travel To You - International Feel

8
Den Ishu - High U Gonna Feel - Supernature

9
Chymera - Death by Misadventure (Album) - Connaisseur

10
Kaoru Inoue - Malam - Seeds And Ground

DBS 16th. Anniversary - ele-king

 UKアンダーグラウンド・サウンズのリアル・ヴァイブスを伝えるべく1996年11月にスタートしたドラムンベース・セッション、通称DBSが16周年を迎える。
 この16年間、ジャングル/ドラム&ベース、ダブ、ブロークン・ビーツ、クラック・ハウス、グライム、ダブステップ等、さまざななベース・ミュージックを紹介し数々の伝説を生んできた。
 今回、ダブステップの最高峰、DMZからDIGITAL MYSTIKZのCOKIが初来日! 
 Deep Medi Muzikからフューチャー・ソウルの才人、SILKIEが待望の再来日! UKベース・ミュージックのブラックネスを体感してほしい!


2012.11.03 (SAT) at UNIT

feat.
COKI / DIGITAL MYSTIKZ
(DMZ, Don't Get It Twisted, UK)
SILKIE
(Deep Medi Musik, Anti Social Entertainment, UK)

with: KURANAKA 1945 , G.RINA

vj/laser: SO IN THE HOUSE

B3/SALOON: ITAK SHAGGY TOJO, DX, KEN, DOPPELGENGER, DUBTRO
FOOD:ポンイペアン"ROOTS"

open/start 23:30
adv. ¥3500 door ¥4000

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.dbs-tokyo.com

★COKI / DIGITAL MYSTIKZ (DMZ, Don't Get It Twisted, UK)
ダブステップのパイオニア、DIGITAL MYSTIKZはサウス・ロンドン出身のMALAとCOKIの2人組。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。05年からDMZのクラブナイトをブリクストンで開催、着実に支持者を増やし、FWD>>と並ぶ二大パーティーとなる。COKI自身は05年以降、DMZ、Tempa、Big Apple等からソロ作を発表、ダブステップ界の重鎮となり、08年にBENGAと共作した"Night"(Tempa)は爆発的ヒットとなり、ダブステップの一般的普及に大きく貢献する。10年末にはDIGITAL MYSTIKZ 名義でアルバム『URBAN ETHICS』を発表(P-VINEより日本盤発売)、血肉となるレゲエへの愛情と野性味溢れる独自のサウンドを披露する。その後もDMZから"Don't Get It Twistes"、Tempaから"Boomba"等、コンスタントに良質なリリースを重ねつつ、11年から謎のホワイト・レーベルのAWDで著名アーティストのリワークを発表、そして12年、遂に自己のレーベル、Don't Get It Twistedを立ち上げ、"Bob's Pillow/Spooky"を発表、今、ノリに乗っている。悲願の初来日!
https://www.dmzuk.com/
https://www.facebook.com/mista.coki
https://twitter.com/coki_dmz

★SILKIE (Deep Medi Musik, Anti Social Entertainment, UK)
ダブステップのソウルサイドを代表するプロデューサーとして"ダブステップ界のLTJブケム"とも称されるSILKIEはウエストロンドン出身の26才。2001年、15才でシーケンスソフトを使って音作りを始め、多様なビーツを探求、またDJとしてReact FMでR&B(スロウジャム)をプレイする。03年にDAZ-I-KUE (BUGZ IN THE ATTIC)の協力でシングル"Order" (P Records)を初リリース。その後QUESTらとAnti Social Entertainmentを立ち上げ、"Sign Of Da Future"(05年)、"Dub Breaks"(06年)を発表。やがてDMZのMALAと出会い、08年に彼のレーベル、Deep Medi Musikから"Hooby/I Sed"、"Skys The Limit/Poltigiest"を発表、またSoul JazzやSKREAM主宰のDisfigured Dubzからもリリースがあり、SILKIEの才能は一気に開花する。そして09年、Deep Mediから1st.アルバム『CITY LIMITS VOL.1』が発表されるとソウル、ジャズ、デトロイトテクノ等の要素も内包した壮大な音空間で絶賛を浴び、ダブステップの金字塔となる。その後も彼のコンセプト"City Limit"(都市の境界)は"Vol. 1.2"、"Vol. 1.4"、"Vol.1.6-1.8"とシングルで継続され、11年6月には2nd.アルバム『CITY LIMITS VOL.2』を発表(P-VINEより日本盤発売)。DJとしても個性を発揮し、11年の"FACT Mix 255"に続き、12年7月に盟友Questと共に名門TempaのMixシリーズ『DUBSTEP ALLSTARS VOL.9』を手掛けている。震災直後に単独でDBSにやって来てくれた11年4月以来、1年半ぶりの再来日!
https://deepmedi.com/
https://www.facebook.com/silkie86
https://twitter.com/silkierose

Ticket outlets: NOW ON SALE !
PIA (0570-02-9999/P-code: 179-674)、 LAWSON (L-code: 70250)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/ https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、
TECHNIQUE (5458-4143)、GANBAN (3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、
Dub Store Record Mart(3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

vol.4 『Fez』 - ele-king

 みなさんこんにちは。連載もあっという間に4回めですが、今回は前回の予告通り今年発売されたインディーズのゲームから1本、『Fez』をご紹介したいと思います。

 『Fez』はカナダのインディーズ・スタジオ〈Polytron〉が開発で、今年4月にXbox Live Arcadeで発売されたアクション・パズルゲームです。このゲームは内容的にも業界内の立ち位置的にも、いろいろな意味で現代のインディーズ・ゲームを体現している作品で、本連載でもインディーズ・ゲーム紹介の第1号としてこの上なく適任だと判断しました。

 まずそもそもインディーズ・ゲームとは何かという説明からはじめると、その業態は音楽におけるインディーズ・シーンと似たようなものだと考えてもらっておおむね間違いないでしょう。メジャーの流通や資本に頼らず、小規模な体制で自主制作的に開発・販売が行われるゲームを指します。

 2000年代中頃からゲーム業界では既存の流通にかわりダウンロード販売が台頭しはじめ、それによって後ろ盾のない個人でも、容易に自作のゲームを販売できる手段として注目されるようになりました。インディーズでもゲームを世界規模で販売できる時代がやってきたのです。

 現代のインディーズ・ゲームのほとんどはパッケージとして店頭販売されることはありません。しかし〈Steam〉や〈GOG〉、〈Xbox Live Arcade〉等のゲームのダウンロード販売サービスを見ると、インディーズ・ゲームはメジャー作品たちと並んで確たる市場を形成しているのが見てとれるでしょう。


ダウンロード販売サービス最大手の〈Steam〉では、毎日のようにインディーズの新作が発売されている。

 『Fez』はこうした近年勢いを増すインディーズ・ゲーム業界内で、ひとつの象徴としてかねてから注目を集めつづけていた作品です。2007年の開発開始から5年という長い歳月をかけて作られた本作は、その斬新なアイディアが発売前から高く評価され、インディーズ・ゲームの一大祭典、IGF(Indie Game Festival) での08年の受賞をはじめ、各方面で多くの賞を獲得しています。

 また今年公開されたインディーズ・ゲームの開発現場にスポットを当てたドキュメンタリー映画、『Indie Game: The Movie』で中心的に取り上げられていたことも記憶に新しいでしょう。

『Fez』以外にも『Super Meat Boy』や『Braid』といった数々のヒット作の舞台裏が描かれている。

 本作のディレクターで〈Polytron〉代表のPhil Fish氏もなにかと話題になることが多い人物です。彼は過激な言動で知られており、今年のGDC(Game Developer Conference)では最近の日本のゲームはひどいという趣旨の発言をしたり、ゲームのパッチの配信の際には〈Xbox Live Arcade〉のオーナーであるMicrosoftと規約の件で揉めることもありました。その姿勢は常識知らずとも呼べれば、勇敢とも言えるでしょう。とにかく彼は業界の慣習やタブーに臆しません。

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■多くのインディーズゲームにとっての理想の体現者

 以上駆け足で『Fez』の周辺事情について解説してみましたが、既存のゲーム業界に対するカウンターとしての存在感の強さを感じていただけたかと思います。そしてそれは肝心のゲーム内容においても同様だと言えます。

 『Fez』はパッと見は昔懐かしい8bitスタイルの2Dプラットフォーマーです。しかしそれは半分は当たっていますが、もう半分は間違っている。本作の画面は、じつは奥行きのある空間が平面に錯視して見えているのです。ゲーム中は基本的にいつでも画面を90度ずつ回転させることができ、そうすることで平面に見えていたマップも、遠近感がないだけでしっかり奥行きがあることがわかります。


ちょうど45度の角度から見るとこんな感じ。

 本作がユニークなのはここからで、画面を回転させると当然奥行きに応じて物の角度や位置関係は変わるわけですが、プレイヤーは画面に映っているものは手前奥の関係を無視して、地続きの同一平面として歩き回れるのです。

 これは例えればエッシャーの騙し絵のなかを歩き回っている感覚とでも言いましょうか。しかしこう説明してもたぶんサッパリわからないでしょうし、僕もこれ以上うまく説明できる自信がありません。なので論より証拠ということで、実際のゲーム中の映像を見ていただきましょう。どういうことか一発で理解できるはずです。

まさにヴァーチャルでしか表現できない空間である。

 本作はまさに「発想の勝利」のゲームであり、3Dの概念を一風変わった方法で2Dプラットフォーマーに落とし込んだそのスタイルは、いままでにない新鮮な魅力があります。

 またその発想をプレゼンテーションする術に長けているのも評価できるポイントです。本作は全編を通じてこの錯視を利用したパズルで構成されていますが、この錯視効果はともすればかなり複雑で難解になってしまうおそれもあります。しかしそれを回避し直感で遊べるとっつき易さと錯視の不思議さをうまく両立できているのはみごとと言うしかありません。

 少し話が逸れますが、インディーズ・ゲームでは『Fez』のような8bitスタイルの2Dプラットフォーマーは非常によく見るジャンルのひとつです。それはメジャー・ゲームへのアンチテーゼ=過去の2D時代のゲームの復権という意識がインディーズ業界全体にあるからでしょうし、また限られた開発環境でも作りやすいスタイルであるという現場の事情もあるでしょう。

 ただ多くの作品はそこからもうひとつアイディアが足りず、流行の後追いどまりだったり、単なる懐古趣味に落ちついてしまったりすることがほとんどです。『Fez』もまたその王道路線の上に立っている作品であるのは間違いありませんが、しかしひたすらに典型的な立ち位置でありながら、錯視というアイディアによって並みの作品とは一線を画す存在になっています。

 おそらくはそれが本作がインディーズ・ゲーム業界内で多くの支持を集める理由でもあるのでしょう。ビジュアルからゲーム・システム、はたまた作中に散りばめられたオマージュの数々に至るまで、本作はかつての2Dゲーム時代の郷愁に満ちています。あるいはそれは現在のメジャー・ゲームへの痛烈な批判にも映るでしょう。その上で他にはない最高のアイディアを持っている。

 これはまさに多くのインディーズ・ゲームが望み、求め、しかし得られない条件をすべてクリアしているのです。言うなればインディーズ・ゲームの黄金比。このへんの事情は業界を普段から眺めていないと見えてこないかもしれませんが、確かなおもしろさや新しさとしては誰しも等しく感じとることができるはずです。

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■面倒くささはおもしろさたり得るのか

 ここまで褒めちぎってみましたが、それだけではフェアじゃないので問題点も挙げてみることにしましょう。ご愛嬌といえばそれまで程度のものかもしれませんが、しかし決して無問題というわけでもありません。

 問題は大きくわけてふたつあり、ひとつは難易度がやさしめか激ムズの両極端で中間領域がやや貧しいという点。先ほどの項で本作は直感で遊べてとっつきやすいと書きましたが、それは言いかえれば難易度が低いということでもあるのです。通常のステージは全体的に難易度は低めに抑えられており、後半はもう少し歯ごたえがほしいと感じる場面がいくつかありました。

 一方でクリアのために絶対必要というわけではない、一種のチャレンジ的なパズルも用意されているのですが、こちらはうって変わって非常に難易度が高い。ほとんどの場合はノー・ヒントで、ヒントがあってもそれ自体もまた謎のひとつになっており、相当注意深くないとそれがヒントであることすら気づけません。本気で解こうと思ったらすべてを疑う心持ちと、メモは必須と言えるでしょう。


大きな謎のヒントがここに......ってわかるかい!

 もうひとつの問題はアクションの鈍重さや複雑なマップ構成等による、移動にまつわる部分での快適さに欠けている点です。本作のステージは相互に連なるハブ状になっており、同じ箇所を何度も通ることが多い。それは一度解いたパズルをもう一度解き直すということでもあり、プレイヤー・キャラのノソノソした動作も相まって次第に面倒になってきます。またファストトラベルも限定的。

 この移動にまつわる問題は、ひとつめの難易度の問題とも連動してくるのが厄介です。なぜなら本作のパズルは複数のステージをまたぐものも多いからです。ときには正反対のステージへ向かわなければいけない場合もあり、ファストトラベルを駆使してもたどり着くだけでひと苦労。また先ほども述べたようにゲーム側からのヒントはほぼ無くプレイヤー自身の推理に頼るしかないので、思い違いによる骨折り損も多々起こり得たりと、情報の整理を難しくしています。


全体マップ。わかりやす......くない!

 しかしこれがいまどきのメジャー・ゲームだったら、「ユーザビリティがなっていない」と即批判の対象になりかねないところですが、本作にいたってはそんな頭ごなしの批判をすべきかやや迷ってしまいます。上記の問題点はかなり意識的にそうデザインされている節があるからです。

 メモが必須であること、それがすべての意図になっている気がします。思えば昔のゲームもそうでした。かつてのゲームはいまほど親切ではなかったし、理不尽な難易度のものも少なくありませんでした。インターネットを使って攻略サイトという便利な方法もなかったので、必然メモを取る機会がいまよりずっと多かったのです。本作はわざと不親切、高難易度にすることで過去のプレイ・スタイルを復刻しようとしたのかもしれません。

 だとすればその意図はうまく実現できていると言えるでしょう。それを愛嬌ととるか欠陥ととるかはプレイヤーの嗜好次第というわけです。こうした前提の上で意見を述べると、少ないヒントから自ら推理しメモを使いながら解いていく楽しさは確かにあるでしょう。しかしそこに面倒くささが介在してはならないというのが僕の考えです。

 面倒くさいこと、それ自体は郷愁を取りのぞくと何のおもしろみもありません。同じおもしろさの遊びでより面倒くさい要素の少ないゲームがあれば、そっちの方がいいはずだし、それを信条にして面倒くささを徹底して省いていったことが、今日のメジャー・ゲームの広範な訴求力につながったと思っています。

 たとえノスタルジーがテーマの作品でも、現代で作る以上そこは追求するべきであって、『Fez』の場合はマップの使い勝手の悪さ、移動の億劫さが足を引っ張っているように思えます。現状の全体マップでは各ステージが小さいサムネイルで表示されるのですが、ここで個々のステージの全体像をもっとしっかり確認できれば、思い違いもなくなりかなり効率が上がるでしょう。

 またステージの気になる箇所をスクリーン・ショットを撮っていつでも参照できる機能があってもいいかもしれません。もちろんファストトラベルはもっと拡充するべき。以上ざっと思いつくことを書いてみましたが結局は面倒くささが払拭されればそれでいいのです。こうしたユーザビリティへの配慮がもっと全体に行き届いていれば、『Fez』はより完璧に近い作品になれたのでしょう。その点がやはり少し残念でした。

■まとめ

 インディーズ・ゲーム入門に最適な1本です。枝葉の部分で多少の問題点はありますが、ゲームの核心部のできは確かなものがあり、とくに錯視のシステムのユニークさはメジャーもインディーズも問わず突出した魅力があります。またいろいろな面で王道路線を行く作品なので、インディーズ・ゲームとは何たるかを理解する上でも非常にわかりやすい実例のひとつと言えます。

 最後に本文中ではほとんど触れませんでしたが、Phil Fish氏の過激な言動についてひとつ。何かと槍玉に挙げられやすい彼の発言ですが、とりわけ今年のGDCでの日本のゲームへの批判は国内外問わず大きな議論を呼ぶことになりました。

 それでなくとも近年は日本のゲーム業界の衰退論が話題に上がりやすく、そのたびに日本は終わったいや終りじゃない等といった水掛け論が繰り返されています。そうした状況下で、インディーズ畑出身のPhil Fish氏がGDCという場で、しかも日本人質問者に対して強い口調で批判的な回答をしたことは、相当センセーショナルなできごとだったのです。

 しかし彼の発言の是非はおき、個人的にはインディーズの開発者の発言がここまで話題になるということ自体に、時代は変わったのだと感慨深く思わされます。数年前まではこんなことは考えられなかったわけで、それだけインディーズの重要度が高まったということなのでしょう。

 もちろん彼の発言内容は聞き捨てならないところが多々ありますが、そこでちゃんと議論が起こるのはむしろ健全で、喜ばしささえ感じます。願わくばPhil Fish氏においては今後もひるむことなく、その挑戦的な姿勢で引き続き業界を引っ掻き回してほしいと思う次第であります。

YYU - ele-king

 「Can I watch you?」という言葉が、プレイヤーが故障でスキップしたかのように「I watch you」に短縮され、こだまする。この気味の悪い演出で締めくくられるにも関わらず、このカセット・テープは通して聴いても不気味な印象はなく、鬱屈していながらも不思議と爽やかでさえある。ジェームス・ブレイクは「愛の限界」をつきつけられ悲哀のポルターガイストを引き起こしていたが、YYUことベン・シュトラウスによる『タイムタイムタイム&タイム』は、決して贅沢ではないアパートの一室において、雨の降る町を横目に歌う地縛霊/背後霊めいたアヴァン・フォークのカセット・テープ作品である。

 タイニー・ミックス・テープスはこの作品のスタイルを「vaporwave, post-dubstep, avant-folk, wonky, footwork」と形容している。うさんくさいと思われるかもしれないが、ヴェイパーウェイヴ以外は納得のいくところだ。実際、僕もそれらを思い浮かべた。基本的にフィーチャーされているのはYYU自身と思われるフォーク風の弾き語りなのだが、エディットのされ方には、ジュークのBPMと細かいカットアップと、拍を把握しづらいポスト・ダブステップ的なリズムなんかがたしかに息づいている。そして、それが自慢げに披露されるわけでもなく、なにげなくさらっと聴くことができてしまう調合の妙には驚いた。クラシック・ギターとIDMの組み合わせとしてはローリー・モンクリーフを思い出したが、ローリーがあくまでトラックのうえに自らの歌を乗せていたのに対し、YYUは自らの弾き語りそれ自体をカットアップの対象のひとつと捉えている。さらには、今作にはアンビエント/ドローンの下敷きがそれとなく挟み込まれている。

 「vaporwave」というタグづけに関しては......とにかくタイニー・ミックス・テープがその語を言いたかったんだろう。ここには、正直なところレトロ・フューチャリスティックなヴィジュアルもなければ、ニュー・エイジを嘲るような舞台演出も、資本主義のもとでテクノロジーだけが現在進行形で果てもなく加速することへの懐疑的な戯れもない。あるのは、めまぐるしく毎日がすぎるのを感じている生活者の呻きのような歌である。そういう意味では、これはヴァーチャル・プラザから帰宅した、なんとなく肩こりを感じる生活者の歌とも言えるかもしれないね、タイニー・ミックス・テープス。
 ピッチが上がっていたり下がっていたりしてどれが地声なのか判断し難いほどだが、なんにせよ、声は疲れている。発語しているのはわかるが、滑舌はうやむやにされており、言葉はなかなかききとれない。明るいようでもあれば、哀しいようでもあるが、そのどちらをも悟らせないかのように、上手なヴォーカルはその内面を語らない。しかし、がむしゃらなフィンガー・ピッキングでクラシック・ギターの弦が弾き倒される音が、ときに叩きつけられるビートが、そしてそのジュークやポスト・ダブステップを思わせる複雑なリズムが、平坦に聴こえるヴォーカルの奥底に切迫したエモーションが胎動しているのを示唆しているようでもある。 

 この作品にはYYUなりにコンセプトがあるようだ。それはタイトルを見てもらえばなんとなく感じられるだろう。ボっとしていたらあっという間に過ぎ経っていってしまう「とき」をつかまえようとしており、そのための手がかりとして「反復」が試みられているようだ。今作でのカットアップ&ループは、ヒップホップのサンプリングのようなスムースなループではない。先述したスタイルで並べられたタグが示唆するとおり、不自然なタイミングでカットされ、ときにポリリズムを用いて、リスナーをつまづかせるようにループしている。ある数秒の「とき」が決して平坦に流れることなくたえず不自然に「反復」され、その「とき」と時間軸とを引き剥がすことによってその両方の存在をリスナーに印象づけてつかまえさせる。そしてエディットはやはり繊細になされている。

 オープニングから「タイム」という語がサンプラーの連打で繰り返される。ピッチの下げられた声が「&」「&」と繰り返す"&&&&"。えんぴつでリビングのテーブルを叩いたかのようなビートの"yyyy"。メランコリックな音色のオルゴールの節をタイトルで視覚化した"ll l l l"ののち、カセット・テープは長い沈黙を経て、B面へと続く。この沈黙でさえ、音楽を聴取することで逆に忘れられてしまう可能性のある「とき」という概念をはっきりと聴き手に認識させようとするものであるかのように思える。
 B面は、自らの弾き語りを途中からカットアップしピッチを変えリズムを変え「タイム」を反復させる"&time"で始まる。つぎの"4.55am-aloneholdingmybreath"つまり「午前4:55―ひとり自分の息を止めている」......夜もふけ朝になろうとするころにまだ眠りにつけない生活者が描写されている。ここには歌はなく、誰かの意味不明な歌の節がカットアップされ、休まらない頭のなかで絶えず反響してしまっている(それこそメディアファイアードのように)。ジュークの高速ハイハットを思わせるリズムは、日常の記憶(「とき」)の駆け巡るっているようで、睡眠中に脳が記憶の整理をしているという話を想起させる。あるいは眠りにつけないまま意識が過剰に働いてしまっているかのようでもある。いずれにしろ、ここにはタイトル通りに、痛々しく、息(生き)苦しい気分が閉じ込められている。高速のギターが印象的な"when you said that"ののち、センチメンタルなピアノと動悸のようなフロアタムの音、そしてまたやってくる高速BPMのリズムが印象的な"11pm breakfast sandwich"――「午後11:00 朝食 サンドイッチ」が、バイオリズム(体内時計)が狂ってしまった生活者の「とき」の経過を示唆する。「どこで」「あんた」という意味不明な日本語がサンプリングされ、日本のバンドtoeを思わせる激しいドラミングとアナログ・シンセがフューチャーされた"(((*~*~ under that"を経て、冒頭でも挙げた、女性的なピッチのヴォーカルが「Can I watch you?」と歌う"i haven't left"――「私は......離れてない」でカセット・テープはA面へ戻る。

 YYUは過去作品からすでに自らのフォークをIDM風にカットアップする試みをしていたようだが、今作『タイムタイムタイム&タイム』はジュークやポスト・ダブステップという複雑なリズムのベース・ミュージックを取り込んだ。それが狙ったのか偶然なのか分からないが、いや、おそらく狙ったのだろう、結果的には注目されうる要素として機能している。おまけに、スクリュー的な加工やエコーやカットアップおよびスムースでない不自然なループ、そしてNew Dreams Ltd.(ニュードリームス株式会社。いや、「新しい夢限られた」か)の「関連会社」の作品が話題を呼んだ〈ビア・オン・ザ・ラグ〉からのリリースということで、ヴェイパーウェイヴの波にも脇道で乗ることになった。メディアファイアードのレヴューではあえて言及しなかったが、同レーベルはそもそもヴェイパーウェイヴ専門レーベルというわけではないし、今作もあくまで非常に人間的な生活感やエモーションが表れている点において、ヴェイパーウェイヴの夢想的な態度とは真逆の性格をもつ作品である。しかし、情報デスクVIRTUALのバズののちに、それとは真逆のこういったフォーク作品をリリースをしかける〈ビア・オン・ザ・ラグ〉の、ヴェイパーウェイヴに頭を悩ます批評家たちを喰ったような姿勢はこれからも注目を集めるだろう。タイニー・ミックス・テープスはまんまとハメられてしまったわけだ。なにに? しかし、それはあくまで、ヴェイパーウェイヴに、なのだった。

 最後に、YYU自身からの日本語によるメッセージを紹介しよう。

 「私の床の上に音楽終日たくさんのとたくさん遊ばせてみましょう」。
 YYUは無邪気な音楽なのであって、ヴェイパーウェイヴのようなポップ・アートのテロリズム(?)と混同する必要はまるでない。しかし、彼は今作で「とき」を捉まえることができたのだろうか。この亡霊のような生活者は満足(成仏)できたのだろうか。彼が出した結論は、「あなたを見てる」ということだけ。ちょっと背筋がくすぐったい。

HB, Traxman etc. - ele-king

 10月に入ってからいちにち中、寝て、食事して、雑務をこなしているとき以外は電子音楽を聴いている。聴いては書いて、聴いては書いて、聴いては書いている。三田格と『テクノ・ディフィニティヴ』というカタログ本を作っているのだ(自分の人生で来る日も来る日もテクノばかり聴いているのは、これで3度目である。レコードやCDを探すのが本当に大変で、あると思っていたものが見つからないと本当に悲しい)。
 聴いているのは、基本的には好きな音楽なので楽しい。とはいえ、禁欲的な生活をかれこれ10日以上も送っていると週末ぐらいは派手に遊びたくなる。そういう事情がなくても、トラックスマンには絶対に行こうと決めていたのだが、ちょうど同日の7時から渋谷でHBのライヴがあると教えられたのでそっちも行くことにした。HBのライヴを見て、続いてヴィジョンでクラークやサファイア・スローズなんかのライヴを聴いて、そして最後をジュークで締めようという企みだ。そうだ、二日酔いになるくらい酒を飲んでやる。


 7th Floorに到着するとムーグ山本がDJをしていた。ムーグさんはバーニング・スター・コア(ドローン)なんぞを、それから僕の記憶がたしかなら、『男と女』のテーマ曲かなにかをミックスしていた。しばらくしてHBが登場。じつは初めて見たのだが、これがまた、なんでいままで見なかったのだろうと後悔するほど良いライヴだった。
 HBとは女性3人組。アルバムも2枚出している。メンバーのひとりはラヴ・ミー・テンダーのドラマーのMAKIで、この日は彼女の産休前の最後のライヴだった。

 彼女たちの音楽は、メビウスとコニー・プランクとマニ・ノイメイヤーの3人によるクラウトロックの古典『ゼロ・セット』からメビウスのパート=電子音を抜いて、電気ベースを加え、パーカッションとディジュリドゥなどの生楽器を絡ませた......とでも言えばいいのか、シンプルな構成だが、多彩でオーガニックなグルーヴが次から次へと出てくる。演奏力の高さだけではなく、ユーモアもあるし、見た目も格好良い。

 30分ほど演奏すると、この晩のゲストとして柚木隆一郎が登場。久しぶりに見た彼は、リズムボックスをバックにソウルを歌ったティミー・トーマスのように、i-Padとコンパクトなミキサーを使ってソウルを歌った......が、この晩の彼はあまりにもはしゃぎすぎだった。しかし、その日7th Floorを埋めたオーディエンスにはそれが大受けだった。ところどころでは演奏の巧さも見せたり、余裕のパフォーマンスだった。

 DJを挟んでふたたびHBが登場。1曲目は4/4キックドラムを活かした踊りやすい曲で、あとは最後までエネルギッシュに突っ走った。小さな会場での割れんばかりの大きな拍手は、彼女たちのまったく素晴らしい演奏にふさわしいものだった。

 それから僕は、カメラマンの小原とヴィジョンに向かった。
 1時にはクラークのライヴがあるんじゃないかと勝手に思っていた。ブンやサファイア・スローズなんかのライヴも聴けるだろうとか図々しく。実際は1時間づつずれていた。12時前にクラブに入ってしまったので、小原といっしょにビールを飲みながら身体を休めつつ、どうしたものかと思案する。結局、1時前に我々をゲストで入れてくれたビートインクの方々に「どうしてもジュークを聴きたくなってしまいました」と謝って、代官山のUnitへ急ぐことにした。

 到着したときは、いわば「フットワーク講座」として日本人の方が丁寧に踊りのレクチャーをしているところだった。
 フロアは良い感じで埋まっていた。シカゴからやって来たダンサーが手本で踊ってみせると、フロアの温度は上がる。
 HBのメンバーのひとりは、前半の1曲、ディジュリドゥを吹いた曲を終えたあとに「これでやっとお酒が飲めます」とMCで言っていたものだが、フットワークもまた酒を飲んでいたらとてもじゃないが、踊れるものではない。汗が30メートル遠方まで飛んできそな勢いでダンサーは踊っている。
 日本人のダンサーも踊りはじめる。シカゴのダンサーがフロアに飛び降りて、踊って、しばらくすると何人かも踊りはじめる。とても良い感じ。このなかに自分も入れたら、さぞかし楽しいだろう!

 僕が思ったのは、これは現代版『ワイルド・スタイル』だなということだった。エネルギッシュで、ハードで、若々しい。昔『ワイルド・スタイル』で見たような光景が21世紀にアップデートされている。スポーツの要素も入っている(笑)。トラックスマンはステージで記念撮影したり、上機嫌だった。しばらく、日本人DJのフルトノのプレイを聴いていた......が、このあたりから記憶が断片的になっているのである......。スタートが早すぎた。翌日は当然のように二日酔いだった(おぇ)......ので、詳しいレポートは斎藤君にまかせるとしよう

野田 努

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UNIT PRESENTS
TRAXMAN with Red Legends footworkers : A.G. & DJ MANNY
@代官山UNIT & SALOON 斎藤辰也

 とあるレーベルのスタッフいわく、最近は若者がクラブに来ない、という。そう、きみみたいな人を、音楽を目的にひとりでクラブに来ている若いやつを見かけなくなったんだ、という。それはブラワン(Blawan)のDJを観に代官山UNITに行ったときの会話だったのだが、正直に言えば、23才の僕もクラブにはさして行かない。そのときUNITに行ったのも、注目していたレーベル(ジョイ・オービソンとウィル・バンクヘッドの〈ヒンジ・フィンガー〉)がブラワンのEPをリリースしていたから、どんな人なのか見たくて珍しくクラブに出向いていただけである。
 し か し 、 だ 。 そんなクラブに馴染みはないという人のなかでも、掲題の日を心待ちにしていたひとは少なくないだろう。当日の1週間ほど前から、僕は毎日のように胸騒ぎがしていた。あのクドいBPMとベースに向けた好奇心、昂揚感、恐いもの見たさが総出で湧き上がっていた。トラックスマンという超ド級のストレートさゆえに意味がよくわからなくなりそうなネーミング・センスに心が焦がされていた。

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 これは最新のブラック・マシン・ミュージックである。アフロ・フューチャリズム以外の何物でもない。西欧文化的なるものの内なる厳しいせめぎ合いだ。明日への新たな起爆剤、未来に向けて大いに狂ったダンス・ミュージックである。
野田努
Bangs & Works Vol. 2(The Best Of Chicago Footwork) のレヴューにて ------------

 会場に向かおうと0時過ぎに電車に乗ろうとするが、遅延。一刻もはやく会場に行きたいのに電車がこない。寒いホームを起爆剤に、線路に向けて大いに狂いそうになったが、なんとか深夜1時過ぎに恵比寿駅に着き、代官山UNITまで走った。これはすでにフットワークであったかもしれない。
 汗だくになりながら会場に着き、受付を済ませ、地下への長い階段を降りて、メインフロアに入り、ステージのほうへ駆け寄ると、ダンサーとして来日していたAGや、日本のフットワーカーによるステップのレッスンが行われている。DJ Mannyは、前日のDOMMUNEでも発表されていたが、飛行機に乗っていなかったので来日ならず。フロアは、動けなくなるほどではなかったが、前に行くのはためらわれるほど多くの人で賑わい、あたたまっていた。ヒリヒリした緊張感と熱気が会場にむせかえっていることを期待していたので、実際の和やかなレッスンの雰囲気に面食らったが、なによりまずフットワークというものがどういうものであるかを脚を動かすことでせめて来場者のみんなに覚えて帰ってほしいというアーティストたちの心意気がさっそく伝わってきた。この日この場所でみな一様にぎこちなく脚をがたがたと動かした記憶を、誰もが忘れないだろう。クラブに行く人間の誰もがうまくダンスできるわけではない。一口に踊るといっても、それは自分なりに体を揺らして動かすという喩えであることもしばしばあることだろう。しかし、このときばかりはダンスのできない人たちでさえ、恥らいながらも、型のあるダンスとして、脚をまずは動かした。なんとなくコツをつかんだ人たち、まったく要領を得ないままの人たち、基礎をあらためて確認したダンサーたち――この熱心なレッスンが20分ほど続くと、会場はじゅうぶんに熱くなった。

 DJ Fulltonoが見事なスピンをするうち、いつの間にかステージの手前、フロアの前線にてひとりのオーディエンスが大きく動きがむしゃらに踊りだしたことで拓けたスペースにサークルが成立し、周りの注目を集め始めた。誰しもがこれは幕開けの合図だと予感したに違いない。間もなくして、ステージからAG(いや、日本のダンサーだったろうか)が勢いよくサークルへ飛び降り、本場のフットワークを堂々と見せつけた。「おおおおー」という拍手喝采に包まれたそのスペースに、ステージ上のダンサーがつぎつぎと降りていった。モニターに映すカメラが間に合わないほど一連の流れはあっという間に起こった。カメラがやっとそのサークルを捉え、モニターに映されたダンサーのフットワークを観て誰かが言った。「(脚が)早すぎてカメラが追いついていない!」
 トラックスマンがその様子をステージ上から見守っていた。険しくもありしかし嬉しさの垣間見えるなんともいえない表情を浮かべながら、ときおりマイクを握り「DJフルトーノー!」とか「お前らもっと踊れ!」みたいに煽っていた。トラックスマン本人は踊らなかった。あんたも踊ってくれよ! という気持ちが会場にいたひとたちの半分以上の頭にチラッとよぎったことだろうが、彼は「俺は踊らないんだ」とボソッとつぶやいていた記憶がある。それもまた可愛らしくもあり、AGらダンサーがしっかり活躍している手前、彼自身はあくまでプロフェッショナルDJとしてのみステージに立っていたかったのではないかとも思う。ダンスに関しての主役は、あくまでAGをはじめとしたダンサーら、そしてオーディエンスひとりひとりなのだと。この夜、あくまで彼はダンスを盛り上げる役に徹していた。
 ステージから降りてきたダンサーたちがひととおり回し回しで踊った後、サークルを記録撮影していたカメラマンもカメラを投げ出して見事なフットワークを決めた。オーディエンス側から、つぎつぎと男子たちが背中を押されながらサークルへ飛び込み、みな一様に達者なフットワークを披露していく。みなさん踊れるんじゃないですか!
 その流れが15〜20分くらい続いた頃だろうか、突如、白Tシャツとタイトな白パンツできめ、髪をひとつに結んだ女性がサークルに現れ、すぐさまフットワークを踊りだした。一瞬、なにが起きたかわからなかったが、すぐに会場は感動の叫びと拍手喝采をその女性に送った。「うおおおおおおおおーーー!」。
 それを見て、ここまでサークルで踊っていたのは男子だけだったことに気付いた。会場には男性とおなじくらい女性もいたと思う。そしてギャルからすればいわばオタクとでも形容されてしまいそうな容姿の人、会社帰りらしきスーツ姿の人、久しぶりにクラブに遊びに来たのかもしれない年齢層の高めな人、ほんとうに「ヤンキー」(野田編集長談)の人、そして男女問わず若人もたくさん駆けつけていた。言ってみれば僕もそのうちのひとりだ。ふだんクラブに行かない若人さえ、この夜は、UNITで起きることを目撃しなければという気持ちがあったに違いない。そしてこの夜の感動を象徴するものが、オーディエンスとダンサーによって自発的に拓かれたサークルであり、サークルに飛び込まずとも自分の立ち位置でこそこそと脚を動かすオーディエンスであり、そして、女性がフットワークを踊りだした瞬間であり、そこに送られた握手喝采だった。トラックスマンが踊らなかった真意を、僕はそこに見えているような気がしている。このパーティの主役は、それぞれに脚を動かすオーディエンスだった。
 ふと僕の隣を見ると、おじさんから「森ガール」と形容されてしまってもおかしくなさそうな、ふわっとしたファッションのロングスカートを履いた小柄な女性が愉しそうに脚を動かしていた。僕もうやむや恥ずかしがっている場合ではないと、負けじとフットワークを試みた。


 やがてDJ Fulltonoの流すトラックはフェイドアウトし、トラックスマンはそのままDJ Fulltonoが用いていたMacBookに自分の外付けハードディスクをぶち込んだ。前日のDOMMUNEでも自慢げに見せびらかしていたが、彼のツアー機材はポケットにつっこんだハードディスク2個のみ。パソコンはバトンタッチなので一度フェイドアウトする必要があったのだろう。シカゴではよくある話、なのか。ワイルド。無音を利用してトラックスマンがコール&レスポンスをオーディエンスに要求し、観客も熱心に応える。「セイ、ゲローDJズ!セイ、テックライフ!」という具合だったろうか。すぐにはプレイせず、とにかく観客を煽りまくり、オーディエンスが声を振り絞ったころ、ようやく始まった。高速BPMの忙しないハイハット、ボボボボボボボボと響く衝撃的な低音――(史実的にどれほど劇的な瞬間なのかは理解できていないのだが)ついにトラックスマンが日本でプレイしている! この日メインの「盛り上げ役」を、オーディエンスは各々の喜びの声援とダンスとで迎えた。
 前日のDOMMUNEでいわゆるジューク/フットワークの楽曲をふんだんに披露したからか、トラックスマンのDJプレイはそれらに拘らず、むしろハウス・ミュージックを積極的にプレイしていたように思う。これもまた、ジューク/フットワークの種明かしをして日本のオーディエンスに叩き込む意図があったのだろう。矢継ぎ早に切り替わっていく楽曲群(トラックス)。それは彼なりの「Lesson」だったのではないだろうか。
 とはいえジュークもガンガンかけていた。おそろしいほど短く切り刻まれクドイほどループされるYMOの"ファイアークラッカー"のリフも、J.ディラによるファーサイドの"ランニン"とおなじスタン・ゲッツ&ルイス・ボンファによるボサノヴァも、DOMMUNEのときとはカットアップのエディットが違っていたような気がしたがどうだろうか。トラックスマンはマイクを握っていなかったが、同じことは繰り返さないぜという意気込みをひそやかに感じられた瞬間だった。ノトーリアスB.I.G.がくりかえしくりかえし哀しげに歌う。「Kickin' the door, waving the 44」! 彼は自分の出前からステージで煽りまくっていたので、自分のDJ中に針をちょびっとスキップさせてしまったあと、ステージから突如消え、しばらくして戻ってきたときに「おしっこ」なんて言ってたのも印象的だった。
 その後も高速の"ストリングス・オブ・ライフ"をプレイし、さらにブラック・サバスの"アイアン・マン"のリフをほぼそのままジュークに落とし込んだミックスを披露し、多くの人が笑いながら頭をふり腕をふり盛り上がっていた。どれも大ネタもいいところだったが、それらのキャッチーさでリスナーをジュークにぐいぐい引き付けていくトラックスマンの"Lesson"は大成功だったのではないかと思う。なにせほとんどの人が笑顔で、身体を、脚を、おもいおもいに動かしていた。野田編集長は「『ワイルド・スタイル』だと思った」と振り返っているが、まさに。ヒップホップの初期衝動にも似たフレッシュな勢いを、この夜、僕はジュークに見い出していた。いや、見せつけられたのだ。それによって突き動かされ、踊ったのだ。この日は踊りました。身体を揺らしたことの比喩ではなく、はっきりと、ダンスをしました。どう考えてもがむしゃらで下手くそだったとは思うが、はっきりそう言える。なぜか誇らしくもある。僕は踊りました。フットワークを踊りました。
 なにはともあれ、このパーティを最初から最後までステージではしゃぎながら盛り上げていたBooty Tunesの皆さんに、ありがとうございました、おつかれさまでしたと言いたい。DJ Aprilのハッピーなはしゃぎっぷりと熱にあてられて、オーディエンスも突き動かされていた部分が確実にあったと思う。
 この日、これから盛り上がろうとしているゴルジェ(Gorge)というジャンルのアーティストHANALIもライヴで出演していたということだが、僕は観ることができなかった。しかし、それは今月27日に開かれる「Gorge Out Tokyo 2012」のレポートで触れることにしたい。
 もし次クラブでジュークが聴こえたら、そこではフットワークのサークル/バトルがもっともっと多発的に興ればいいなと思う。そして、僕も踊れたらいいなと思う。部屋で練習もしている。いずれにせよ、この夜が波及して、もっと小さい数々のパーティーで人々がフットワークを踊るときがくるだろう。そのときこそ、トラックスマンとAGがシカゴから来日した意味が結実するのではないだろうか。

 以上、ジュークに詳しくもない、クラブに通わない、踊りらしい踊りをしない23歳男子によるレポートでした。ありがとうございました。フットワーク踊りましょう。

斎藤辰也

Mediafired™ - ele-king

Mediafired™ - Pixies

"we had Pepsi™ sponsorship" misssequence(メディアファイアード™本人。上記動画のコメント欄にて)

 違法ダウソしてますか?™
 愉快なコマーシャル映像まで作られたオンライン・ストレージ〈メガアップロード〉は、違法ダウンロードの温床となっていたとされ、現在は閉鎖されている(https://www.megaupload.com/)。いっぽう、おなじく人気だったオンライン・ストレージ〈メディアファイアー〉は存続してはいるが、共有が違法と思われるファイルについては積極的に削除しているようだ。アーティスト名やタイトルとともに「mediafire」を入力してグーグル検索すれば音源ファイルが見つかりますよと友人に教えられたのは3年ほど前。いま同じことをしても、ダウンロードへのリンクは見つけづらい状況だろう。それが道理なのかもしれない。しかし、利用するか否かに関わらず、オンライン文化も全盛だというのに息苦しい出来事だなとも感じる。™

 メディアファイアード™ことジョアン・コスタ・ゴンサルヴェス(Joao Costa Goncalves)もポルトガルでそういった違和感をすこしは抱えているに違いない。今作『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー』はあからさまに他者の著作物をカットアップして作られたものだ。素材となった曲を収録順に並べると、クイーンの“イニュエンドウ”/ヴァン・ヘイレンの“キャント・ストップ・ラヴィン・ユー”/インナー・サークルの“スウェット(アララララロン)”/ケイト・ブッシュの“嵐が丘”/バックストリート・ボーイズの“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”と、そうそうたる有名どころばかり――MOR(Middle Of the Road)的である。いずれも古い。商業的にも旬を過ぎたものであって、〈メディアファイアー〉にアップされていたとしてもちょっとイケてないではないか。™

 ビートルズやマイケル・ジャクソンをおなじように剽窃したジョン・オズワルドの『プランダーフォニック』との大きな違いとして、今作には過剰にエコーがかけられていることが挙げられる。これは、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパーティンによる『チャック・パーソンズ・エコージャムズVol.1』の、80年代のアダルト・コンテンポラリー(日本でいうAOR)やソウルの一節をループさせエコーの海に浸した手法「エコージャム」であり、「エコージャム」はタグの一種でもある(ちなみに、同アルバムの楽曲にダニエルがレトロな映像をつけたプロジェクト〈Sunsetcorp〉――斜陽企業がヴェイパーウェイヴの起こりだと思われる)。™

 今作でループさせられている一節一節は、ガンガンにエコーをかけられ、まるで巨大な聖殿に響き渡っているかのように祝祭的ですらある。景色はまるで真っ白で、鳩がパタパタと飛び立っていく画が見えるようだ。しかし、そんな演出とは対照的に、チョップとループのタイミングも展開も聴き手に心地よさを与えるものとはけっして言えないほど荒々しい。ピッチは原曲より低くされたりしながらも、スピードは上げられていたりする。祝祭的な響きをもちながらも、ポップソングがゾンビのように知性のないうめきを上げているようでもある。仕事中などにわけもなくなにかの歌の一節が脳内ループしてしまう体験に等しい。非常にストレスフルである。荒々しいが繊細に編集されている。ジェームス・フェラーロはポップ/ロックがリビングでつけっぱなしのMTVから垂れ流され平坦な環境音となり死んでいる様子を捉えたが、今作ではメディアファイアード™によってポップスがゾンビとして目覚め、リスナーに襲いかかってくる。™

 カセットのB面には「shit's cold / roam as you are」というサブタイトルがついているが、「私、キャシーよ!帰ってきたの。とても寒いから、窓から入れてちょうだい」と歌うケイト・ブッシュと、別れた恋人への未練を歌うバックストリート・ボーイズに対してメディアファイアード™が吐き捨てた言葉なのだろう。それらの曲名は“ピクシーズ”なんてバンド名がもろにつけられていたり、ソニックユースの曲名だったり、ニルヴァーナの“イン・ブルーム”の歌詞(“Spring Is Here”“Tender Age”)が引用されていたりする。俗なポップスに対して自分の趣味――すなわち自分にとっての聖(ノイジーなロック)をぶつけていく幼稚で原初的な対抗意識を演出している。™

 『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー™』が『プランダーフォニック』のようなカルト的な支持を得ることはないだろう。なにしろ元ネタが基本的にcheezyでダサい懐メロからだ。しかし、それらはストレスフルな編集がなされているぶん原曲以上に印象的でもある。繰り返すが、編集は凝っている。最後の曲のアウトロでは飛行機が風を切る音が聞こえるが、これは“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”のミュージック・ヴィデオのイントロで挿入されている音だ。そう。つまり、そういうことだろう(I want it that way)。™

[UK Bass Music, Darkwave, etc] - ele-king

Darkstar - Timeaway



 『ノース』への大胆な方向転換の直後に〈ハイパーダブ〉から〈ワープ〉へ移籍したダークスターによる2年ぶりの新曲。ヴァイナルは11月20日に発売される(https://bleep.com/release/39342-darkstar-timeaway)。野田編集長はいまだにデュオだと思っていたみたいだが、『ノース』の時点ですでにヴォーカルにジェームス・バタリーを迎えたトリオになっている。
 プロデューサーにはワイルド・ビースツ/スペクタクルズ/エジプシャン・ヒップ・ホップなども手がけたリチャード・フォーンビーを起用しており、「イギリス北部ペナイン山脈のどこか深いところ」にある「ヴィクトリア調のジェントルの邸宅」を借りて録音されたアルバムは、来たる2013年初頭にリリース予定とのこと。
 この録音場所がなるほどと思えるほど、"タイムアウェイ"の旋律は、荘厳なエコーでメランコリーなイメージを讃えている。ダブステップ期もいまは昔。たださえ意外な方角へ舵をきった『ノース』以上にヴォーカルとハーモニーがフューチャーされ、いくぶんか明るくなった印象もあるが、陰鬱さを讃える美学はよりいっそう磨かれている。

 ダークスターのYouTubeアカウントには、レコーディング中のスローモーション映像にドローン/アンビエント風で静かな音楽を添えたものが"Nowhere"として4つアップされている。

 忘れもしない2011年4月9日、ロンドンはショーディッチにあるヴィレッジ・アンダーグラウンドというヴェニューにて、ダブステップのダも知らなかった僕がダークスターを観た。日本では聴いたことがないほどバカデカいベース音に全身を震わせられたとき、心臓を潰されて死ぬかと本気で思った。おおきな教会を改修したような広い会場。酒で酔っ払い喋りまくる、カルチャーめいたオーディエンス。機材トラブルによる1時間近くの遅延を経て、不穏な空気が拭えないなか、殺気だちながら透き通った目の青年が喉を震わせた。

 日本でのステージが実現することを期待しよう。


Dazed and Confused Live PART 2 with Darkstar & Gang Gang Dance

 これは先述の〈DAZED LIVE〉での映像。ダークスターはもちろん、トリのSBTRKTも凄かった。1時間以上も時間が押した結果、ギャング・ギャング・ダンス終了後には25:30近くなりオーディエンスは続々と帰ってしまった。ガラガラの会場にイラついていたように見えたが、SBTRKTは圧倒的にベスト・アクトだった。

Trimbal - Confidence Boost (Harmonimix)



 ロンドンのグライム系ラッパーであるトリンバル(元ロール・ディープ・クルー、基本的にはトリム名義)と、ジェームス・ブレイクの別名義ハーモニミクスによる作品のミュージック・ヴィデオ。ツイッターを見ていても、発表されると同時に瞬く間に話題となっていた。リリースは〈R&S〉から。撮影は、ザ・トリロジー・テープスの記事でも紹介したロロ・ジャクスンである(と、このようにウィル・バンクヘッドの陰がロンドンの地下水脈では散見される)。
 ミスター"CMYK"がトリムの叩きつける言葉を名義のごとくハモるその後ろでは、ノイズが大胆にブーストしている。

ポーズをとれ。
アイツがどれだけ信頼を寄せていようと知ったこっちゃないなら。
ポーズをとれ。
ガール、自分の服を着て自分がイケてると思ったなら。
ポーズをとれ。
きみが問題を抱えているなら、気にするな、
誰も知ったこっちゃない。
ポーズをとれ。ポーズをとれ。
Strike a pose.

 ポーズをとっているのかはわからないが、時折出てくるジェームス・ブレイクがイケメンであり可愛いことは間違いない。

Eaux - i



 〈ソーシャル・レジストリー〉に在籍していた気高く美しいシアン・アリス・グループ(Sian Alice Group)は解散してしまったが、そのメンバーであったシアン・エイハーンとベン・クルックにステフン・ウォリントンが合流したトリオがオー(EAUX)だ。
 11月に発売される新作EP『i』からタイトル曲が先行公開された。以前にリリースしていた両A面7インチ『Luther / No More Power』はダークなシンセ・ポップで、それこそ女性ヴォーカルの気高いダークスターという印象だったが、今作はほぼインストゥルメンタルである。ドラムがいないため、打ち込みのリズムにベンのギターやステファンのシンセを被せるかたちに落ち着いている。シアンは1音節の語を繰り返し発語する。

i i i i i i i i i
gotten gotten gotten gotten

 ジ・XXの新譜の先行試聴会で思い出したのが、サウンドこそ違うが、似た編成のオーだった。こちらはメランコリーを秘めていながらも甘美な部分を見いださせようとはせず、むしろ厳しさをたずさえる姿勢は、シアン・アリス・グループから通じているものだ。
 これだけではまだなにも分かる気がしないので、EPの発売を待ちたい。

Eaux - Luther

Zomby - Devils

https://twitter.com/ZombyMusic/status/256219187247210496

 ゾンビー(Zomby)が1分半ほどの新曲"Devils"をツイッター上で突如フリーでリリースしている。おそらくアルバムには収録しないということなのだろう。ゾンビーが「5人目のビートルズ」と称える亡き父親を弔った『デディケイション』とはずいぶん違う忙しなさがある。EP「Nothing」にも高速ビーツのトラックはあったが、今作にはより不安を煽るような態度がある。
 ツイッターも相変わらず順調に挑発的でブッ飛ばしているし、次のアルバムはダークで扇動的なものになりそうだ。

 他にもホット・チップのアレクシス・テイラーから、彼がチャールズ・ヘイワード/ジョン・コクソン/パット・トーマスとともに組んでいるアバウト・グループ(About Group)のアルバムが完成したということと、彼のソロEPが12月にドミノからリリースされるという報告を受けました。これは喜ばしい。

 ちなみに、今日ご紹介したアーティストはすべて〈ザ・トリロジー・テープス〉主宰のウィル・バンクヘッドと関わりがある。

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