「K Á R Y Y N」と一致するもの

Neighbours Burning Neighbours - ele-king

 今年、2024年はオランダのインディ・ロック・バンドの盛り上がりに確信を持たせるような年になった。素晴らしい2ndアルバムを出したアムステルダムのパーソナル・トレーナー(2枚目のアルバムはなんとも優しいギター・ロックだった)、ポスト・パンクの領域を広げたデビュー・アルバムを出したロッテルダムのトラムハウス、リアル・ファーマーのアルバムにザ・クリッテンスのEP、軽く考えただけでも次々に名前が出てくる。そのほとんどのバンドがイングランドにツアーに出かけ、音楽的影響を持ち帰り自身の音楽をさらに広げていく。
 比較的、地理的に近いということも大きいのかUKのバンドとの交流も多い。ノッティンガムのオタラ(これからサウス・ロンドン・インディ・シーン以降の重要バンドになるのではと期待しているバンドのひとつだ)にインタヴューしたときに、いままででいちばん印象に残ったライヴは何かと尋ねたのだが、オランダ、ロッテルダムのサーキット・フェス、レフト・オブ・ザ・ダイアルの名前を挙げていたのも印象的だった。曰く、こんなにたくさん好きなバンドが見られるフェスはなかった、と。レフト・オブ・ザ・ダイアルのラインナップは本当に凄く、UKを中心にヨーロッパやアメリカ、アジア、世界各国のアンダーグラウンド・シーンの気配を持った100を超える若手バンドが集まっている。そのラインナップはどのメディアの期待のバンド・リストと比べても遜色がないだろう。こうしたフェスが毎年おこなわれているというのもまたオランダのインディ・シーンの地盤の固さを物語っている。

 そんなオランダ・シーンの中で自分が今年いちばん期待していたのがロッテルダムを拠点に活動するネイバーズ・バーニング・ネイバーズのアルバムだった。ザ・スイート・リリース・オブ・デスやソロとして素晴らしいアルバムを作り上げたアリシア・ブレトン・フェラーのバンドであり、パーソナル・トレーナーやトラムハウスなどがインタヴューでおすすめのオランダのバンドを聞かれたときに毎回名前をあげるようなバンドで、このシーンの重要バンドと言ってもいいかもしれない。ノイズとポスト・パンクの間でうごめく冷たい炎が宿ったカオス、バンド結成初期の時期がコロナ禍と重なるという難しさもあったのかデビュー・アルバムのリリースまで長い時間がかかったが、しかしついにアルバムがリリースされた。金属のメロディを刻むギターに、高い位置で膨らむベース、陶酔した意識を引き戻すかのようなドラム、そぎ落とされたネイバーズのストイックな音楽は冷たく強烈な衝動でもって心を後ろ暗く躍らせる。それは庭で遊ぶ子どもが壁の隙間から何かを除き見るときのような、背徳と期待が入り交じった感情で、否が応でも胸を高鳴らせるのだ。

 たとえば “Familiar Place” と名付けられたその曲は、何かを伝える信号と引っかいたようなノイズを生み出す二本のギターが相まって心を落ち着かなくさせる。不安にゆれる “Always Winning” のアルペジオにしても同様で、アリシア・ブレトン・フェレールとダニ・ファン・デン・アイセルのふたりのギターとヴォーカルは交互に行き来しながら虚空に意味を刻んでいく。暴力的でありながら優しく静かに。あるいはそれはカミソリで指先を傷つけたその瞬間に似ているのかもしれない。糸を引くように線が生まれ、血が噴き出し、わずかに溜まり、そうして重力に引かれ落ちていく。痛みを感じるのはその後だ。
 おそらくこのアルバムのなかで最も古い曲であろう2019年から演奏されてる “Hesitate” はやはり素晴らしい曲で、ソリッドなアレンジを施されてこのアルバムのなかで一際輝きを放っている。はやる心にシンクロするようなアラム・シーヴのドラムに、爆発するキャット・カルクマンのベース、そして落ち着くことを許さない二本のギターのフレーズ、鋭く薄い金属の刃で幾重にも切りつけるかのようなこの曲は、ノイズのカオスのなかでいかにこのバンドが特別であるのかを証明する。

 そう、このバンドは特別なのだ。この1stアルバムがリリースされる直前にギターとヴォーカルを務めるアリシア・ブレトン・フェラーの脱退が発表されて、ここに収められたネイバーズの姿はすでにない。だが記録された楽曲がバンドの輝きを示し続ける。抑制が効いたノイズのカオス、コントロールされた衝動が封じ込められた青白くゆらめく炎、このバンドのライヴをもう見ることができないのは残念だが、いまはしかしこの素晴らしい1stアルバムを残してくれたということに感謝すべきだろう。地下でうごめく静かな熱を僕は感じる。

GEZAN - ele-king

 驚きのニュースが飛びこんできた。東京でオルタナティヴな試みをつづけるバンド GEZAN が11月14日から17日にかけてウガンダで開催されるフェスティヴァル《Nyege Nyege Festival》に出演することになった。ネゲネゲといえば、南アフリカのゴムやアマピアノ同様、2010年代以降のエレクトロニックなダンス・ミュージックに新しい風を吹き込んだカンパラのコレクティヴである。そのフェスティヴァルに GEZAN が出演することは日本のアンダーグラウンド・シーンにとっても小さくはない意味をもつにちがいない。彼らの新たな一歩に注目しよう。

2024/11/14~17 at Uganda Jinja Golf Course
https://nyegenyege.com/tickets/

アフタートーク - ele-king

水谷:昔はダーティーな感じって、今よりもっとカッコ良かったですよ。ぶっきらぼうで悪そうなんだけれど、真っ直ぐで不器用っていう人が「かっこいい男」の象徴だった気がします。

山崎:確かにそうですね。若者の憧れの姿としてそういう人の方が味わい深くてかっこいい時代って確かにありました。・・・というかまた今回も「昔は」から入りましたね。この連載のお決まりになってきましたよ。

水谷:僕らもやっぱり毎晩のようにお酒が入ると「昔は」になるじゃないですか? ザ・老害ですが、老化の始まりの50’sとかってそんな年齢なんでしょうかね?

山崎:自分が若い頃は、「昔は良かった」って言う、おっさんに嫌気が差していましたが、いざおっさんになるとこれは避けて通れないですね。昔話って楽しいですから。で、話を戻すとこれは完全に時代が変わったことへの妬みですが(笑)、今はダーティーな人よりも小洒落ている人の方が優っている気がします。身なりも生き方も少しダーティーな方がカッコよく感じたのは00年代くらいまでかもしれません。今はすぐに悪い意味で『ヤバイ奴』っていうレッテルを貼られてしまいますからね。

水谷:昔はそのヤバさがカッコよかったと思います。そんな世の中だからか?最近、コアなソウルのレコードが他と比べてとても売りづらいんですよ。ブルースもしかりで。もう時代についていけないですよ。心地の良い爽やかでクリーンなものしか世の中の人たちは求めていないのでしょうか。

山崎:でもいま人気の日本のヒップホップの人たちはめちゃくちゃダーティーじゃないですか?

水谷:ダーティーというかサグというか?そっちはびっくりするくらいの不良っぷりをアピールしていて(笑)。この感じは昔とはずいぶん違います。うまく言えませんが両軸を持った絶妙な味わい深いものがあまりウケない。例えば厳つい輩の作品の中にインテリジェンスを感じたり、時にはそんな漢が女々しく歌ったり、ヒップホップなんかもあれは黒人特有のセンスで、素でやっていたと思いますが、そんなゴリラみたいな男が、繊細で気の利いたサンプリングをしたり。そんなのがよかったのですが・・僕は造詣があまりないですがパンクとかもそうでしょ?その衝動と時に見せる計算高いセンスの良さに“上がる”というか。あんまりそういう感覚って今の若者は無いんですかね?最近のJ-POP的なのは大丈夫なんでしょうか。そのような観点で音楽を聴いてきた僕のようなジジィにはとても受け入れ難いのですが。

山崎:なんだか血の通っている生々しさや人間らしさを避けている傾向もありますね。アートでもアニメでもアイドルでも綺麗でわかりやすい偶像をみんな求めていて、リアルなものから目を背けている気がします。たとえば白土三平とか寺山修司のようなものは今、流行らないかもしれません。

水谷:そういうのを『サブカルチャー』って言っていましたが、そんな言葉も今はあまり使われませんね。なんでこういう話をしたかと言うと、Groove-Diggersのコンピレーションの選曲をする中で今の時代を意識する必要があったんです。

山崎:今回のコンピレーション、『Groove-Diggers presents - "Rare Groove" Goes Around : Lesson 1』とても良かったですね。飽きずに最後まで聴ける流れと選曲で、ハズレ曲というか、無駄な曲がなかったです。

水谷:僕にとってその『ハズレ曲』や『無駄な曲』って、存在意義としてとても重要なんですよ。そういう曲で周りを固めるとキラー曲が、より栄えますので。ただ、全部が最高のタイパ、プレイリストの時代にそぐわない気がしましたので、あえて入れませんでした。リック・メイソンとかも候補にはあったんですけど(笑)。

RICK MASON AND RARE FEELINGS / Dream Of Love

山崎:リック・メイソンの「Dream Of Love」はヘタウマ系の最高峰ですね(笑)。とてもいい曲です。収録アルバムのオリジナル盤も人気で10万超えの高額盤ですが、一部のコアなファンにしかウケないんですよね。
前談が長くなりましたが、今回のコラムは『Groove-Diggers presents - "Rare Groove" Goes Around : Lesson 1』についてです。

水谷:今回、僭越ながら選曲をさせていただきました。そしてこんな選曲なので、 ジャケットは僕らのMOMOYAMA RADIOスタジオからの風景を山崎さんが撮影してくれて、すなわち、僕らVINYL GOES AROUNDメムバーによる合作となりました。

山崎:自画自賛ですがいい写真ですよね。でも僕の腕ではなくてテクノロジーの進化のおかげです。
さて、選曲はこれまでGroove-Diggersでリリースしたアルバムからのピックアップですが、特に思い入れのある曲はなんですか?

水谷:音楽的じゃない話しになってしまうのですが、マシュー・ラーキン・カッセルをリリースしたときの話なんですけれど、原盤の所有者にたどり着くのがすごく大変でした。本当に全然見つからなくて。いろいろな方法と角度から辿っていったのですが、そしたらアメリカのローカルのラジオ局にマシュー本人が出演したという情報を得ることができたんです。それでそのラジオ局に連絡したら局員の方がマシューに繋いでくれたんですよ。

山崎:2008年の話ですよね。その頃、レアグルーヴ界隈でもマシュー・ラーキン・カッセルの再評価なんて誰もしていない時代でしたよ。今ではオリジナル盤は高すぎてすごいことになっていますが。

MATTHEW LARKIN CASSELL - Fly Away

水谷:連絡したら「なんで日本人のお前が俺のレコードなんて知っているんだ?」ってびっくりしていました。当時は大して売れもしなかったレコードが数十年以上経てマニアに人気が出ているなんてことを本人は知らないんですよ。だから連絡すると驚く人は多いです。継続してミュージシャンをやっている人なんてほとんどいませんから。マシューは学校の先生をやっていました。リリースのオファーを快く受け入れてくれてとても歓迎されましたよ。

山崎:本人は当時、想いを込めて作った作品でしょうから「よくぞ見つけてくれた」っていう喜びは大きいでしょうね。こういうところもレコード・ディギングの素晴らしいところかもしれません。

水谷:あとはやっぱりイハラ・カンタロウの「つむぐように(Twiny)」ですね。70年代〜80年代に制作された楽曲とは40年以上の時間差がある中、それらの曲に影響されて同じマナーで音楽制作をしている彼へのリスペクトもあって、この選曲の中に入れたかったんです。なので一番人気のウェルドン・アーヴィンのカバー曲「I Love You」ではなくて彼のオリジナル楽曲を収録しました。

CANTARO IHARA – つむぐように(Twiny)

山崎:これはイハラくんにとって、すごく良いことですね。

水谷:彼もAORとかライトメロウな曲に詳しいので「こんな素晴らしい楽曲たちの中に自分の曲を並べていただいて嬉しいです」と言っていました。はじめからイハラくんでコンピレーションを締めくくることを考えていたので最後の曲にしたのですが、「つむぐように(Twiny)」の美しい旋律は、今回の「締め」に相応しかったと思っています。

山崎:このコンピレーションをどういう人に届けたいと思っていますか?

水谷:入門編として聴き心地の良い曲を並べたとても聴きやすいアルバムなので、若い人たちにとって、古き良き時代の音楽“にも”触れるきっかけになればいいと思っています。
この世界(レアグルーヴなど)ってレコードが高額なイメージが強いので、自省も込めて言いますと、オリジナル盤にこだわるマニアたちが敷居を高くしてしまっていると思うんです。すると若い人たちは入りづらい。レアだからすごいってことではないが、もちろんプレス数による現存云々はありますが、基本内容の良くないモノは高くはなりませんので、こういうコンピレーションで、レア・エクスペンシヴ盤の世界への間口を広げることができれば良いです。

山崎:本作には通して聴くからこそ良く聴こえてくる化学変化みたいなものがあると思います。そこがこのアルバムの良さですね。いままでこれらの曲に出会わなかった人たちが出会える盤になるといいですね。

水谷:今はレコードブームの中で、レコードをBGMとしてかけるカフェやバーも多いので、そういうところでかけてもらえたら嬉しいです。店内で流しても誰も傷つかない選曲をしていますので。昔はカフェとかでよくかかっていた、『ホテル〇〇』とか、そういうお洒落系CDコンピレーションがたくさんあって、個人的には好きではなかったけれど、でも今、そういうのは全然ないじゃないですか。当時はそのようなコンピレーションはすごく意味があって、一般的に聴かれるはずのない曲たちが日の目を見ることにもつながっていました。そういえば最近の僕らの流行の新語SJ(以前の『情熱が人の心を動かす』の回、参照)の話しを友達にしたら、クラブでプレイしないDJをDJ-Bar DJって云うらしいですよ。

山崎:それはもう体力の低下でクラブのテンションにはついていけてない僕のことですね(笑)

水谷:あとは、ここに収録の曲はいわゆるAORベストみたいなチャートには入らない曲ですが、そういう大物ミュージシャンがやっている王道系もいいんですけど、こういうオルタナティヴな側面を一般的なAORファンにも是非聴いてほしいです。

山崎:レアグルーヴなんてローカルな低予算レコーディングの自主制作に近い盤ばかりですから、世の中の音楽シーン全体で考えたらB級作品なんですけど、でもB級作品の美学ってありますからね。

水谷:それこそ『サブカルチャー』ですよ。昔は『サブカルチャー』を掘っていくと、誰も知らないところで自分だけが知っているみたいな嬉しさがありました。でも今はネットでほとんどの情報がすぐに手に入るから、見え方として『サブカルチャー』というカテゴライズが必要無いのかもしれません。でもマスメディアやネットに流されないで自分が何を取捨選択するかをちゃんと考えて、自分の趣向に合いそうならこういう世界も覗いてほしいと思います。

山崎:僕らはひねくれ者なのかもしれませんが、若かりし頃は「王道ソウルはあいつ聴いているし、俺はいいや」って思って深掘りしていましたね。

水谷:ヒップホップにおけるサンプリングの表現も一緒ですよ。だれも知らないものをディグる精神は重要だと思います。

山崎:新しいカルチャーもこういうところから生まれますしね。

水谷:だからってこのコンピレーションを買って欲しいと言っているわけではなくて、どこかで聴いて、シャザムしてスポティファイで聴いてもらってもいいです。おかげさまで、レコードはまもなくPヴァインのメーカー在庫も売り切れますが、本連載冒頭にもリンクがありますのでYouTubeのMOMOYAMA RADIOで聴いてみてください。全編通してアップしていますので。気に入った曲があったらそこからその曲が収録されているアルバムまで辿ってもらえると嬉しいですね。
他にもいい曲あったりしますし、文化ってこういうことで次世代に継承されていくと思いますので。

山崎:そんな次世代の仲間募集中!ご連絡は履歴書や自己紹介文を添えてこちらまで。
vinylgoesaround@p-vine.jp


Groove-Diggers presents
"Rare Groove" Goes Around : Lesson 1

A1. ERIK TAGG - Got To Be Lovin You
A2. LUI - Oh, Oh (I Think I'm Fallin' In Love)
A3. CHOCOLATECLAY - The Cream Is Rising To The Top
A4. TED COLEMAN BAND - If We Took The Time (Where Do We Go From Here)
A5. BABADU! - All I've Got To Give
A6. DANNY DEE - My Girl Friday
B1. POSITIVE FORCE - Everything You Do
B2. JIM SCHMIDT - Love Has Taken It All Away
B3. MATTHEW LARKIN CASSELL - Fly Away
B4. MOONPIE - Sunshine Of My Life
B5. CANTARO IHARA – つむぐように(Twiny)

Neek - ele-king

 ブリストルの重要人物のひとり、ヤング・エコーのメンバーにしてカーンとのコラボでも知られるニークが9年ぶりの来日を果たす。サポートするのは、ゲットー・サウンド~ベース・ミュージックを再解釈するパーティ《SUPER PLAY》と、東京でブリストル魂を発露させるコレクティヴ BS0。10月25日(金)@渋谷R Lounge、総勢13組が集う一夜、響きわたる低音に身体を揺らせ!

『UKブリストルのモダンDubミュージックのダークサイド最重要人物、Neekが9年ぶりの来日』

Neekは、コレクティヴYOUNG ECHOのメンバーとしても活動しているが、その中で最もよく知られているのはKahnとのコラボレーションだろう。BS0第1回を彩った2015年の初来日ツアーは、このKahn
& Neekとその別名義Gorgon Soundとして世界のヘッズを魅了するブリストルミュージックの先端が日本中に届いた瞬間でもあった。

グライムやダブステップ、ダンスホールレゲエやUKダブ、レフトフィールド・アンビエントまで、作品/名義ごとに様々な魅力をみせるNeekは、’10年代前期以降、Deep
Medi、Butterz、Hotline
Recordingsといった名門レーベルからのリリースを続ける。近年ではJabuとの独創性が鈍く光る実験音楽ユニットO$VMV$Mの存在感も強く、ブリストルの外へ、そしてベースミュージックリスナーの外へも影響力を広げていくことになる。

パーティクルーSUPER PLAYは、MEGURO、kobachiが主催しBDS、neneeedy、yunioshiがレジデントを務めるゲットーサウンドのグルーヴ、ベースミュージックを新解釈するニューエラなパーティで、下北沢LIVE
HAUSやclubasiaで回を重ねながら9月に2周年を迎えた。今回のパーティではアグレッシブなプレイでジャングル、ダブステップ、テクノを横断するMEGUROとUKベースカルチャーを軸にストイック&エンジョイなプレイが広く愛されるBDSがそれぞれNeekをサポートする。このBS0とのセッションでも、彼らの稀有なキュレーションは炸裂している。スタイリスト兼プロデューサーで謎多きOZZY’S
VISION、先述のBS0初回にも出演したSakanaは国産グライムレーベルnullrebelのMC、YammyBox、吐黒とのセッションを披露。ヒップでブレイキンなスタイルのMaya
Bridgetとスモーキーで黒い感性をもつyayoiとのドラムンベースB2B、ルーツと現行の解釈を交差させ新たなDUBシーンを担う“重低”からakiiが名を連ねる。

ブリストルの音とスピリッツを都内に表出させるパーティ/コレクティブBS0からは、オリジナルメンバー1TA、Dx、Osam Green
Giantが揃ってBS0 Gangとして登場。BS0のスピンオフ・クルーBS0xtraから、ヒップホップ、ダブ、サウンドシステムミュージックを咀嚼して、独自のRebel
Beatzを追求するDADDY VEDAが出演。

さらに、VJには音響ブランドM.A.S.F.の開発者で、ENDONのエレクトロニクス奏者Taro Aikoという驚きのサポーターが加勢する。

SUPER PLAY × BS0 feat. NEEK

2024年 10月25日 金曜日
Open 21:00
Door ¥3,500
ADV ¥3,000
Before 23:00 ¥2,000

Lineup:
Neek (Bandulu Records / Gorgon Sound / Young Echo / O$VMV$M)
Sakana + YammyBox, 吐黒 (nullrebel)
OZZY'S VISION
DADDY VEDA
yayoi × Maya Bridget (Smashee Break)
akii (重低)
BDS
MEGURO
BS0 Gang (1TA, Dx, Osam Green Giant)

VJ: TASC

Food: ちょっと遠いレコード

Flyer: OMEGA

ADVANCE TICKET (Livepocket):
https://t.livepocket.jp/e/zdsfu
R Lounge Web:
https://rlounge.jp/

Bonna Pot - ele-king

 2022年、川崎のちどり公園での開催が話題となった野外パーティ「Bonna Pot」。音響に対する高いこだわりで知られる、アンダーグラウンドでもっとも信頼の厚いこのレイヴが2024年も敢行されることとなった。
 今回は11月8日(金)~10日(日)の二晩、西伊豆の「オートキャンプ銀河」にてオールナイト・パーティとして開催。
 メルボルンのCS + Kreme、ベルリンのTHOMASH、O/Yのライヴが予定されており、DJには∈Y∋をはじめバンコクの人気テクノDJ、Sunju Hargun、デトロイトのScott Zachariasなどが登場する。出演者からサウンドシステム、タイムテーブルまでこだわり抜かれた二夜。秋の森で良質な音楽に浸りたい。

今年のBonna Potは西伊豆のオートキャンプ銀河で開催します。前回、会場の使用許可がおりなかった一番美しい森の中の空がひらけた芝生のサイトがダンスフロアになります。
サウンドシステムは前回以上に細部に至るまで磨きをかけ、この2年間で検証とアップデートを繰り返した、最先端のハイエンド機器とオリジナルで組んだ唯一無二の仕様です。しっとりとしたパワフルな低域の質感と、滑らかさと繊細さが同居し、聴覚を可視化するような立体感と表現力で楽曲制作者の細部に渡る意図/意思を再生します。とろけるような快楽性と浄化性、感覚のより深いところまで到達するサウンドを目指します。
そんなサウンドシステムを奏でるのは、一人一人が幅広い音楽性とオリジナリティを持ったDJ/ライブアクトです。海外からはデトロイト、ベルリン、バンコク、メルボルンから計7アーティストが来日します。初来日の人も複数いるので初めて聞く名前も多いかと思いますが、全てのアーティストのプレイを生で聴いて、BonnaPotで一緒にやりたいと思った人たちです。国内勢も初出演の4人を含め全員絶大な信頼をベースにイメージを共有しています。
太陽と月、星空と空間の移り変わりをベースに構成されたタイムテーブルを組んでいますので、是非金曜日から日曜日まで三連休にしてご参加下さい。あらゆる音楽や芸術、人々、世代、国籍、人種、宗教、それぞれの信じるもの、などが音楽の下で溶けて混ざり合うことをイメージし、それぞれが光を失わずにどう調和していけるのか、そういったことを考えながら全体を組んでいます。
持ち込みたい芸術作品や創作物、装飾やパフォーマンスなど、会場内に飾って頂いたり販売して頂いて大丈夫です。ぜひ自由奔放な発想で参加して頂ければと思います。ヴェジやハラル対応のフードなども用意します。
新しいモノに触れた時に伴う違和感や、どうなるのか分からないドキドキ感、でもあらがえない好奇心で未知の世界へ一歩踏み込むような、そんな気持ちで参加していただけたら嬉しいです。11月の澄み渡った空の下で広がる想像力とインスピレーションに溢れた音楽体験を一緒につくりあげることを楽しみにしています。

開 催 概 要
名 称:BONNA POT

日 時:
2024年11月8日(金)〜10日(日)

会 場:
オートキャンプ銀河 西伊豆

出 演(A to Z):
Abiu
AKIRAMEN
ALICIA CARRERA
An-i
CHIDA
CS + Kreme -LIVE-
∈Y∋
鏡民
nø¡R
O/Y -LIVE-
Scott Zacharias
Shhhhh
Sunju Hargun
THOMASH -LIVE&DJ HYBRID-
Toshio “BING” Kajiwara
7e

Sound Space:
HIRANYA ACCESS

Speaker System:
TAGUCHI

Lighting, Deco & Structure:
Hikariasobi Club
密林東京
RGB
SHINOBU HASHIMOTO
Stretch Tent Company
and more

料 金:
・早割入場チケット: ¥18,000 (販売終)
・GA(一般入場): ¥20,000
・駐車場A(再入場不可): ¥4,000
・駐車場B(再入場可): ¥7,000 (完売)
・テントチケット: ¥3,000 (1テント/タープにつき1枚必要、最大4m x 3.5m)

チケット購入:
https://bonnapot.zaiko.io/e/bonnapot24
※チケット販売は11月7日(木)23:59 JSTまで

Instagram:
https://www.instagram.com/bonnapot_nusic/

SoundCloud:
https://soundcloud.com/bonnapot

X:
https://x.com/Bonna_Pot

Fabiano do Nascimento and Shin Sasakubo - ele-king

 ブラジル音楽から影響を受けたリオ出身LA在住のギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメント。南米音楽を中心に世界各地の音楽とリンクする秩父出身のギタリスト、笹久保伸。両名によるコラボレーション・アルバムが12月11日に発売される。現在 “Após a Tempestade” が先行配信中で、公開されているMVには、レコーディングがおこなわれた大磯SALOスタジオやそのまわりの景色とともに、ふたりの演奏する姿が映し出されている。染みわたるギターの音を堪能したい。

Fabiano do Nascimento & Shin Sasakubo 『Harmônicos』
2024.12.11 CD, LP, Cassette Tape Release

日本でも人気の高いブラジリアン・ギタリストのファビアーノ・ド・ナシメントと、南米音楽を中心に世界各地とリンクする、秩父出身ギタリストの笹久保 伸が、日本でのライブ共演をきっかけに始まったギターデュオ作が、CD、LP、カセットテープでリリース!! 大磯SALOスタジオで作り上げられた2人だけの物語、今ここに新たな名盤が生まれた。

ファビアーノ・ド・ナシメントと笹久保 伸が初めて一緒にコンサートをやった4日後に、3日間に渡る録音は始まった。同じ空間と時間を共有して、異なるスタイルと出自を持つ二人のギタリストは、音を探り出して、共鳴や反発をさせ、対話とアイデアの交換を重ねた。身近で見たその一つ一つのプロセスから、この音楽は形作られていった。弦とボディの響きと共に、スタジオの空気も大切なものとして記録されている。アルバムという形あるものとして残し、聴き手に届けることにいつも以上にワクワクする気持ちを抑えられないでいる。ピュアで研ぎ澄まされていて、キュート(ファビアーノは「Kawaii」という)でもある二人の音楽を、自由に楽しんでもらえたら本望だ。 ──(原 雅明 ringsプロデューサー)

【リリース情報】
アーティスト名:Fabiano do Nascimento and Shin Sasakubo (ファビアーノ・ド・ナシメント & 笹久保 伸)
アルバム名:Harmônicos (アルモニコス)
リリース日:2024年12月11日
フォーマット:CD, LP, Cassette Tape

●CD
品番:RINC128
JAN: 4988044124318
価格: ¥3,300(tax in)

●LP
品番:RINR18
JAN: 4988044124325
価格: ¥4,400(tax in)

●Cassette Tape
品番:RINT2
JAN: 4988044124332
価格: ¥2,750(tax in)

レーベル:rings
オフィシャルURL: https://www.ringstokyo.com/fabiano-sasakubo-harmonicos/
販売リンク: https://diskunion.net/latin/ct/news/article/1/125279

 空が澄んでいる。8月7日午後、僕は緑豊かなトイエン公園でノルウェーの夏を満喫していた。日本のサマー・フェスが温暖化に伴って年々危機的な状況に直面している一方で、北国は夏の野外イヴェントには最高の気候だ。とにかく心地いい。さっそくビールを買いに行くと、1杯125クローネ(約1700円)。…………。まあいっか! この開放感を躊躇していられない。

 前夜の〈Club Øya〉を腰が動かなくなるまで楽しんだのちにオイヤ・フェスティヴァル本番を迎えたわけだが、まず驚いたのが会場の近さだ。僕が宿泊していた街の中心地にあるホテルから地下鉄で2駅、ほんの5分ほどで着いてしまう。自転車やキックボードで来ているひとも多く、そういう意味でも環境負荷の少ない大型イヴェントになっているという。
 会場は思っていたより小さく、15分もあれば会場全体を歩き回れるくらいの規模感だ。ステージ間は2、3分で歩ける距離にあるので、隣同士のステージの時間をずらしてタイムテーブルが組んである。つまり、ひとつのアクトを見終えたらすぐに次のアクトを観られる状態なので、歩き回らなくても気軽に次々ライヴを楽しむことができる。天気に恵まれたということもあるけれど、正直に言って、これまで参加してきた音楽フェスでもっとも楽な環境だと感じた。ポンチョと上着とレジャーシートをバッグに突っこんでさえいれば、街の公園にリラックスしに来た感覚そのままで過ごせるのだ。


Øya 会場


Øya 会場

 ゴミの分別や資源の回収に力を入れているだけでなく、無駄なゴミが発生しないようにスポンサーには試供品の提供を禁止し、使い捨てプラスティックも禁止。トイレの排泄物ですら地域暖房のためにリサイクルに回しているそうだ。会場で売られているフードもオーガニックなものの割合を増やすよう努めている。また、近年の音楽フェスで議題となっているジェンダー・バランスの問題にも10年以上取り組んでおり、すべてのステージでアーティストの男女比をほぼ半々にしていることを発表している。こうした北欧らしい(と感じられる)「意識の高さ」は、しかし、実際に会場で過ごしていると無理している感じがしない。フェスティヴァル側が啓発的に上から目線でそういう取り組みをおこなっているというより、街ないしは社会全体にそうした意識が行き届いていて、参加者の想いに応えているような自然さが感じられるのだ。環境や他者に配慮することは、自分の心を整えることでもあるのだと。


Øya 会場


Øya 会場

 会場内にパートナーシップを組んでいるというLGBTQの権利を訴えるオスロ・プライドのブースがあったので、話を聞いてみた。このタッグは昨年オスロの歴史あるゲイ・クラブにテロ行為があったことに対するリアクションとして実現したそうで、プライド・イヴェントをプロモートすると同時に参加者に対してグリッターのフェイスペイント・サーヴィスをおこなっているという。そうしたテロ行為が起きることもあるし、世界中と同じようにトランスフォビアは問題だし、差別主義者は少数ながら存在するものの、ノルウェー社会全体で性の多様性を受容し合っているというコンセンサスがあるので、クィア当事者は暮らしやすいと感じているひとがほとんどなんじゃないかな、とブースにいたふたりは話してくれた。もちろん、そこにはコミュニティが権利を勝ち取ってきた自負もあるのだろう。このあと、僕はグリッターを顔につけて楽しそうに過ごす若者たちの姿を会場内で多く見ることになる。


オスロ・プライドのブースにて

 そんなわけで、よくオーガナイズされたフェスで僕は4日間まったく困ることもなく(トイレもまったく並ばなかった)、日本の暑さを忘れて存分に別世界を味わったのだった。ご飯がハチャメチャに高いのは致し方なし、というかフェスのせいではない。街のレストランが多く出店しているので味のレベルは高く、199クローネ(2700円ぐらい)のフィッシュ&チップスはフェス関係なく人生最高のうまさだった。


水も無料で飲むことができる


白身魚がものすごくおいしかったフィッシュ&チップス

 アクトについては細かく書いているとキリがないので、印象的だったものをいくつか挙げておこう。近年のフォーキーなテイストと初期の生々しいロックを行き来しながら、圧倒的な存在感で会場全体の空気を引き締めたPJハーヴェイ。ときには観客をステージに上げて踊らせながら、超ファンキー&エロティックなパフォーマンスで沸かせたジャネール・モネイ。クラブ・ミュージック新世代としてのニア・アーカイヴスやLSDXOXOの若いオーディエンスからの人気ぶりには目を見張ったし、カオティックなIDMとレゲトンをハチャメチャに混ぜながらスモークをまき散らしたりブランコに乗ったりやりたい放題だったアルカも痛快だった。個人的にずっと観たかったディスコ・モードのジェシー・ウェアは、クィア・ダンサーを引き連れ本人も踊りまくるアッパーなステージを披露。USインディ・ロックからは話題のウェンズデイやビッグ・シーフもそれぞれバンド・ミュージックとしてのロウな感覚を提示していた。パルプやエールに関しては、なぜ90年代のビッグ・アクトを僕は2024年にノルウェーで観ているのだろうか……と不思議な感覚を抱いたが、世代の異なるオーディエンスに受け入れられていて、これもストリーミング・サーヴィスによって時代感覚が撹拌している現代のフェスならではの光景と言える。パルプが “Disco 2000” をプレイしたとき、隣にいた20代前半くらいの女の子グループが大騒ぎしていて、思わず笑ってしまった。
 しかしながら、今回の僕のオイヤ・フェスティヴァル参加で強く印象に残っているのは、知らなかったノルウェーのミュージシャンたちだ。ジャジーなテイストを持ったヒップホップ・ユニットのトイエン・ホールディング(Tøyen Holding)のステージではなぜかステージ上からシェフが焼いた牡蠣が振る舞われ独自のユーモア・センスを提示していた(?)し、ノルウェーのひとから「絶対観て!」と言われていた「ハッピー・マンデーズへのノルウェーからの回答」というコピーのフョールデン・ベイビー!(Fjorden Baby!)もいい感じにやさぐれたダンス・ロックで楽しかった。スカンディナヴィアの先住民サーミの文化をするエラ・マリー(Ella Marie)は、フォークロアが持つ政治性を浮かびあがらせるとともに北欧社会で見落とされてきた音楽風景を立ちあげていた。アッパーなダンス・ポップで地元のオーディエンスを大いに沸かせていたカシオキッズ(Casiokids)や4日間の大トリを飾ったポップ・シンガーのガブリエル(Gabrielle)はノルウェー国内でよく知られたポップ・アクトだがグローバルにもっと人気が出る可能性のある存在だと感じたし、日本の音楽リスナーにもアピールしうる存在ではないだろうか。あと、バリトン・ヴォイスで渋いアート・ロックを演奏するシヴァート・ホイエム(Sivert Høyem)はノルウェー版のインディ叙情ロックという感じで、僕はすっかりファンになったのだった。レコード・ストアのひとが話してくれたようにジャンルもスタイルも本当に多様で、発見と興奮に満ちている。


Tøyen Holding


Fjorden Baby!


Sivert Høyem

 クラブ・シーンの充実も垣間見ることができた。klubben(ノルウェー語でクラブ)という名前のステージではジョイ・オービソンらが出演していたのだが、地元ノルウェーのアクトとしては日本にもしばしば来てプレイしている人気のDJスケートボードはベテランらしい卓越したプレイでオーディエンスを気持ちよく踊らせ続けていたし、新世代のアーティストも多数登場していた。なかでも面白かったのは、冷たくアグレッシヴな感覚を持ったエレクトロニックなトラックとオルタナティヴR&Bをミックスするスワンク・マミ(Swank Mami)。ケレラFKAツイッグスらと北欧からシンクロする存在と言えるかもしれないが、奇抜な衣装で歌い踊るパフォーマンスにはユーモラスな風合いもあって引きこまれる。これからの躍進を予感させる個性を放っていた。


Swank Mami

 またフェス関連イベントとして、チケットは別なのだが〈Øyanatt〉というプログラムもあり、これは各日の深夜、街のクラブやヴェニューでDJプレイやライヴが観られるもの。僕は2日目の深夜にクラブに行ってリンドストロームを観ることができた。当然だが会場は大入りだ。勝手にDJと思いこんでいたら、生ドラムとシンセも入れた3人編成のライヴで、誰もが彼に期待する「コズミック」な大らかさや楽天性を感じさせる高揚感があり、ああ、自分はいまノルウェーで踊っているんだなあ……! という感慨に浸ったのだった。
 ライヴが終わったあとの深夜2時ごろ、横で踊っていた兄ちゃんに「これから別のクラブに行くけど、きみも来る?」と誘われたのだが、やはり腰が限界なので残念ながら断った。元気だなー。聞けば彼はオイヤ・フェスティヴァルそのものには参加していないそうで、街を挙げた音楽イヴェントとして多様な楽しみ方ができるのもよいと思った。

 3日目に少し小雨が降ったくらいで、4日間と半日、僕はひたすら快適な気候と穏やかな街と多彩な音楽を味わったのだった。フェスティヴァルがグローバルな産業として似通ってくるなかで、僕が体験したオイヤ・フェスティヴァルはオスロという街、ひいてはノルウェーの音楽文化のムードをたっぷり吸いこんだものだ。それは社会のあり方とも繋がっている。ノルウェーも近年は移民・難民問題の議論で荒れているところもあると聞くし、一週間少しの滞在ごときでいち観光客がわかった気になってはならないとは思うが、日々の暮らしを快適にすることと社会をよりよくしていこうという意識がこの街では地続きであると僕には感じられた。


自転車で来ているひとも多い


キックボード派も

 とにかく、オスロの街の空気感と音楽を同時に堪能するには最高のフェスティヴァルであることは間違いない。僕は行く前よりもはるかにノルウェーを身近に感じられるようになったけれど、もっともっと知りたくなったし、何よりこの国の音楽をもっと聴きたい。そう遠くない未来に、オスロの明るくて涼しい夏をまた体験したいと思う。

Special Thanks:キティさん、髙橋くん。ありがとう!

世界の終わりとは何か?

表紙・巻頭『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
浅野いにお(原作)インタヴュー

宇川直宏 宮台真司 小川公代
world's end girlfriend sasakure.UK
藤田直哉 野田努 飯田一史 北出栞 後藤護 福田安佐子 冬木糸一 藤井義允 伊藤潤一郎 小林拓音 松島広人 しま Flat

古くは『デビルマン』から『風の谷のナウシカ』、『AKIRA』、『新世紀エヴァンゲリオン』を経て、『進撃の巨人』、『君の名は。』、そして『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』まで、あるいはボーカロイドの奏でる「世界の終わり」的風景まで──なぜ日本のポップ・カルチャーはかくも「終末」を描いてきたのか。大衆文化の側から「世界の終わり」を、ひいては日本文化を考察する。

菊判/192頁

表紙ヴィジュアル
©浅野いにお/小学館
©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

目次

終末論的文化はいま世界を駆け巡る 野田努

◆『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

浅野いにおインタヴュー──世界が終わらなかった後で
くそヤバい地球で、僕らは未来の夢を見ることができるか?──『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』論 藤井義允
我々の勝利――浅野いにお作品における「世界の終わり」 藤田直哉

◆なぜ日本のポップ・カルチャーはかくも「終末」を描いてきたのか

[インタヴュー]
宇川直宏──次の地球の番人、ナメクジのために
宮台真司──世界が終わろうとも、周りの人を幸せにすることで、幸せになれ
小川公代──ケアと対話で「終末」を乗り越える
world’s end girlfriend──「世界の終わり」も自己も個も越えた「新たな世界」を提示すること
sasakure.UK──人類が消えてもボーカロイドは歌い続ける

[エッセイ・論考・コラム]
戦後日本の特撮・アニメにおける、「世界の終わり」の変容 藤田直哉
セカイ系の時代精神 飯田一史
「世界の終わり」にあなたは泣けますか?──楳図かずお『14歳』とおさなごころ(ロックンロール) 後藤護
終末SF小説概観──核戦争から感染症、気候変動、隕石衝突、人口減少、AIまで 冬木糸一
ポップ・カルチャーとしての「終末ソング」、その常態化 野田努
パンデミックの回想──「来そうで来なかった終末」のなかで育まれた音楽 松島広人
「世界の終わり」をテーマにしたボカロ曲 しま
〈ポスト・セカイ系〉における「世界の終わり」 北出栞
2分前と2分後のあいだ──アポカリプスにおける「人間らしさ」について 福田安佐子
人類最後の世代の苦しみ──田村由美『7SEEDS』から 伊藤潤一郎
『花物語』から想像する、世界の終わりと資本主義の終わり 小林拓音

[共同監修者プロフィール]
藤田直哉(ふじた・なおや)
批評家。日本映画大学准教授。1983年札幌生まれ。著書に『虚構内存在』『攻殻機動隊論』『新海誠論』『シン・エヴァンゲリオン論』『新世紀ゾンビ論』『シン・ゴジラ論』『ゲームが教える世界の論点』『現代ネット政治=文化論』『娯楽としての炎上』、編著『東日本大震災後文学論』『3・11の未来』など。

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 ジェニー・ヴァルジャガ・ジャジストリンドストロームトッド・テリエスメーツ……。乗り継ぎを含めて計22時間のフライトのなかで朦朧としながら、僕は自分が好きなノルウェー出身のミュージシャンをあらためて思い返していた。いや、たしかに好きな音楽や映画はあるし、北欧はいいところなんだろうなあー……程度の漠然とした憧れはあったものの、まさか自分がノルウェーに来ることになるとは思っていなかった。30代のうちにひとりで海外でも行きたいなー、などと呑気なことをコロナ禍前には考えていたが、大混乱のパンデミック、そしてこの円安。なかば諦めていたところを、どういうわけか縁あってノルウェーの首都オスロで開かれる音楽フェスティヴァルに招待していただき、39歳にして生まれてはじめて北欧の地を踏むことになったのだった。いや、というかヨーロッパですらはじめてだ。だからこれは、フェス・レポートであると同時に、海外慣れしていない中年のオスロ初体験記として読んでいただければ幸いだ。

 8月6日の朝、ヘロヘロになってオスロの空港に到着。そこから街の中心地までは電車で30分足らずだ。市街地に着いてまず感じたのは、す、す、す、涼しい……。感覚としては日本の春ぐらいなんじゃないか。地獄のような暑さの日本から逃れ、一週間この気候で過ごせることにまず感動する。すっかり元気を取り戻した僕は、ホテルに荷物を預けてさっそくオスロの街を歩き回るのだった。

 今回、僕が参加したのは毎年夏にオスロの街なかで開催されているオイヤ・フェスティヴァル(Øya Festival)。聞いたことがあるというひとも多いのではないだろうか。日本でも人気のあるビッグ・アーティストが多数出演してきた、いまやノルウェーを代表する音楽フェスティヴァルだ。逆に言うと、僕もその程度の知識しかなかったので渡航前にいろいろと調べてみたのだが、1999年の初開催以降、場所を変えつつ規模を大きくしてきたイヴェントで、オスロの中心地にあるトイエン公園で開かれている現在も高い環境意識のもとに運営されており「世界でもっともグリーンなフェスティヴァル」とも言われているそうだ。
 2024年は4日間の開催で、ヘッドライナーはパルプ、ジャネール・モネイ、(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジが病気のためキャンセルになり)ジャック・ホワイト、そしてノルウェーのポップ・ミュージシャンであるガブリエル。英米のアーティストを中心にノルウェーのアーティストをミックスしたラインアップで、日本でいうとフジロックと似た傾向の、それよりはやや規模の小さい音楽フェスといった感じだろうか。海外慣れしていないとはいえ僕も音楽フェスは数多く参加してきたので、どういうところがオイヤ・フェスティヴァル独自の面白さなのかを見極めたかった。
 と言いつつ、街のなかで開かれるフェスなので、僕は何よりオスロの街を見られることに興奮していた。それは開催側としてもそういった狙いがあるようで、今回僕がわざわざ日本から呼んでもらったのも、〈Visit Oslo〉というオスロの観光案内会社とフェスが協力しているからだ。オイヤにはほとんどオスロの住民が参加しているそうだが、国外から来るひとに向けて豊かな音楽シーンのある街としてのオスロを見せる意欲があるのだ。


オスロの街なか

 そのことがよく表れているのが、前夜祭的な位置づけとなる〈Club Øya〉というイヴェントで、まずこれが本当に刺激的だった。オスロの街なかにあるヴェニューやクラブ、さらにはオシャレなワイン・バーみたいなところでノルウェーの新人アーティストがライヴを披露するもので、ノルウェーでもまだあまり知られていない存在をアピールするショーケースであると同時に、僕のような観光客にとっては街を歩く機会にもなっているのだ。


Club Øya会場周り


Club Øya会場周り


Club Øya

 それで僕もオスロに着いた初日から、ライヴを観ながら街のあちこちを見ることができた。オスロはちょっと歩いただけで中心部の位置関係が把握できるぐらいのこじんまりした街で、ほとんどのひとが公共機関と自転車、あと電動キックボードで移動している。公園とベンチがたくさんあり、レインボー・フラッグが至るところに掲げてあり、公共的な施設のほとんどはオール・ジェンダー・トイレで、平日昼間からパパが子どもの世話をしている……。ある意味、こちらが勝手に抱いている公共意識や環境意識やジェンダー平等意識が高いとされる北欧のイメージをそのまま引き受けてくれるような都市だ。そして、首都とは思えないぐらいゆったりした空気が流れている。

 街のレコード・ショップ〈big dipper〉(https://bigdipper.no/)にもさっそく行ってみた。オスロでは最大規模のお店だそうだが、店内はワンフロアでこじんまりしている。これがオイヤ・フェスティヴァルのラインアップにそのまま通じているというか、国外のインディ/オルタナティヴ系のアーティストのレコードとノルウェーのアーティストのレコードが6:3くらいの割合で置いてあり、あとは北欧メタル、ジャズなども混ざっている。


big dipper外観


big dipper店内

 お店のひとに話を聞くと、オスロの音楽リスナーはほとんど国内/国外を分けずに聴いているそうで、ノルウェーの音楽シーンはたしかにメタルやIDM/エレクトロニカといった北欧が強いとされているジャンルは人気があるけれども、じつのところものすごく多様なのだという。そのなかで根強く人気があるのはエクスペリメンタルな傾向のあるジャズ。最近はハイパーポップ周りも話題なんだとか。ノルウェーのアーティストって英語で歌うひとも多いですけど、あれはマーケティング的な戦略なんですかと尋ねると、それもあるけど、言葉の響きがまったく違うから音楽的な理由で選択しているミュージシャンも多いと思うよと話してくれた。ガブリエルなんかはノルウェー語で歌ってビッグなポップ・アーティストになったし、と。なるほど、日本にも置き換えられる話かもしれない……などと考えていると、20代前半ぐらいの店員の若者が日本に旅行したときにレコードを買いまくったという話をまくしたててくれた。やはり音楽オタクは世界共通である。


フレンドリーに話してくれたbig dipperのスタッフ

 そのあと実際にいくつかのヴェニューを回ってライヴを観て気づいたのは、ほとんどの会場が小規模で、この〈Club Øya〉というプログラム自体がオスロの音楽シーンをサポートするものだということだ。フェスの案内を読むまで知らなかったのだが、オスロの音楽シーンはコペンハーゲンやストックホルムに比べてヴェニューの数で比較してみてもかなり大きく、「スカンディナヴィアのライヴの首都」とも呼ばれているそうだ。ただ、それらの多くはインディペンデントな規模感で運営されていて、その活気がどの会場からも感じられた。
 僕は6つほどの新人アクトを観たのだけど、総じて音楽的な水準が高く、ジャンルも多様でそれぞれ個性も豊かだ。とくに気に入ったのが洒脱なハウス・トラックにテンション低めだが流麗なラップを乗せるノム・ド・ゲール(NOM DE GUERRE)と、ムードたっぷりのシンセ・ポップを艶やかに立ちあげるグレイトフルーツ(Greatfruit)、ジャガ・ジャジストが好きなひとはきっと気に入るだろうエクスペリメンタルでコズミックな感覚を持ったジャズ・バンドのモンステラ(monstera)。ここからグローバルに人気の出るアーティストもきっといるだろう。様子を見ていると全然違う音楽をやってるバンド同士が気軽にコミュニケーションを取っており、いい意味でシーンの狭さも窺えた。


NOM DE GUERRE


Greatfruit


monstera

 夜21時過ぎまでは明るいので、すっかりフワフワした気分で1杯1500円ぐらいのビールを飲みながら音楽に溢れたオスロの夜を満喫したのだが、朝からノンストップで動き回っていたため23時で腰が限界に。ヨロヨロとホテルに戻る。こんなことで明日からのフェス本番は持つんかいなと自分にツッコミを入れつつ、しかし高揚感と充足感で満たされていたのだった。

(続)

Nídia & Valentina - ele-king

 ダンス・ミュージック界には複数の新鮮が風が吹いている。当然そのなかには、アフリカ系ポルトガル人のニディア、イタリア系イギリス人の前衛ドラマー、ヴァレンティーナ・マガレッティというふたりの女性によるアルバム『エストラダス』も含まれるのだった。
 ニディアからいこう。彼女は、エレキングでもお馴染みの、リスボンは〈Príncipe〉レーベルで活躍するビートメイカー。いっぽうマガレッティは、すでに多くの共演作を持つロンドン在住の打楽器奏者。古くはRaime、グレアム・ルイス(Wire)とのUUUULafawndah、〈Incus〉から〈On-U〉を横断するスティーヴ・ベレスフォードとのFrequency Disastersニコラス・ジャーとのライヴ向井進とのV/Zおよび最近はシャックルトンとの共作を出したばかりのHoly TonguemRaimeのメンバーとのMoin、近年ではBetter Cornersでのアンビエント作品も注目されているが、広く知られているソロ作品は、おそらくCafe Otoのレーベル〈Takuroku〉からリリースされた『A Queer Anthology of Drums』だろう。去る6月には来日し、彼女のドラミングのみでひとつの世界を作れてしまえることを証明したばかりだ。
 その打楽器による表現力は、本作『エストラダス』において、ニディアのエレクトロニクスと融合し、駆動力をもった多彩なグルーヴへと変換されている。ポルトガル語で「道」を意味するという『エストラダス』のアートワーク——岩石のあいだを走る道路にタイヤの跡が付いたこの写真、本作の冒険的かつドライヴする作風にじつによく合っている。太陽に晒され、暑く、乾いた道路のカーヴ、疾駆した車の痕跡……自分のなかにひきこもっている場合ではない。

 〈Príncipe〉が昨年、クドゥロ(アンゴラ起源のアフロとハウスの融合)のコンピレーションを出しているように、近年はバイレ・ファンキといい、ジャージー・クラブといい、チリのセックストランスといい、200BPM以上の超ハイテンポで踊るタンザニア産シンゲリといい、アマ・ピアノほど広範囲な流行はしていないかもしれないが、ディアスポリックなマイクロ・ジャンルがあちこちで息を吹き返している(そしてオンライン上ではクラッシュクラブにフォンクにジャンプと……このあたりはいつか松島君と話したい。ぼくはいま20代の背中を追いかけているのだ)。そんなわけで、ダンス・カルチャーは、昔ながらの世界もデジタル世界も活気に満ちているのだった。

 ここでいきなり予告です。年末号のエレキングでは「ミニマリズム」を特集しようと思っている。ミニマル・ミュージックとは、白人文化における50年代〜60年代の、クラシックの前衛のみで定義できるものではない。たとえば、その分水嶺的作品『In C』においてテリー・ライリーがサックスを、ジョン・ハッセルがトランペットを吹いていることにもヒントがあるだろう。「ミニマリズム」はアフリカ起源のじつに多くの音楽(戦前ブルースからファンクほか)にも通底している。アフロ・ミニマリズムと呼びうるそれは、ことエレクトロニック・ミュージックに関して言えば、アシッド・ハウス以降、さまざまなスタイルを生みながら発展し、クドゥロやファンキのような明らかにエクスペリメンタルなサウンドをIDMとは呼ばないシーンのなかで力強く継承されているし、拡散している。ローレル・ヘイローラファウンダサム・カイデルなど、これまで知性派の作品を出してきたフランスのレーベル〈Latency〉がかようにも溌剌とした、ポリリズミックなアフロ・ダンス・ミュージック・アルバムを出したことが嬉しい。

 生ドラムと打ち込みのビートとの組み合わせ自体が新しいわけではない。本作では、それぞれの曲でそれぞれ魅力的なリズムが生成されていく、まるで生き物のように、その有機的な感覚が格好いいのだ……というわけで、このレヴューを読みながらコニー・プランクとマニ・ノイマイヤーとメビウスの『ゼロ・セット』などと口走ってしまう古参方には、4曲目の “Mata” から聴くことをお薦めしたい。もちろん、フィールド・レコーディングによる妙な雑音から親指ピアノ、そして未来的なシンセサイザーに重たいベースが地を這う、冒頭の “Andiamo” (イタリア語で「さあ、行こう」)からでもいい。未来はたしかにトライバルだった。
 だが、表題曲になるとどうだろうか。おそらくこの曲は、ヒップホップ/R&Bからの影響が注がれたダウンテンポのフュージョン・サウンドを画策している。路上の砂埃を巻き込みながら、親指ピアノと打楽器、エレクトロニクスの鮮やかな調和。それから、ザ・スリッツがエレクトロックに発展していったらこんなサウンドになったに違いない、というのがミドルテンポの “Tutta la note” のような曲だ。
 そうは言っても “Rapido” を聴けば、このアルバムの使命を思い出す。そう、 ベースとドラムが醸し出す強力なうねり、すなわちダンスすること。ま、ぼくはひとり、心のなかでダンスです。

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