「IR」と一致するもの

Cantaro Ihara - ele-king

 今年2月に発表したウェルドン・アーヴィンの日本語カヴァー “I Love You” が話題となったイハラカンタロウ。70年代サウンドから大いに影響を受けたこのシンガーソングライターのニュー・シングル「つむぐように(Twiny)」がリリースされる。デジタル版は本日10月5日から配信開始、7インチ盤は12月14日に発売。リミックスには edbl をフィーチャー。
 なお、10月26発売の別エレ最新号『VINYL GOES AROUND presents RARE GROOVE──進化するヴァイナル・ディガー文化』には彼のインタヴューを掲載しています。なぜ70年代サウンドに惹かれるのか、ウェルドン・アーヴィンへの思いなどなど、一読の価値アリです。ぜひそちらもチェックを。

70年代からのソウル~AORマナーを踏襲したメロウなフィーリングにグルーヴィーなサウンドで注目のイハラカンタロウ最新シングルは、煌びやかなメロディと爽やかなコーラスが心地良い極上フリーソウルナンバー! c/wには、今サウスロンドンで最も注目を集めているedblによるRemixを収録!

70年代からのソウル~AORマナーを踏襲したメロウなフィーリングにグルーヴィーなサウンドで注目のイハラカンタロウ最新シングルは、軽快なギターにメロウなエレピ、グルーヴィーなベースにキレのあるドラム、そして煌びやかなメロディに爽やかなコーラスが心地良い極上フリーソウル! 全国ラジオ局でのヘヴィ・プレイを経て7インチが即完&争奪戦となったWeldon Irvineによるレア・グルーヴ~フリー・ソウルクラシック “I Love You” 日本語カバーで見せた70’sフィーリングに、さらにシティ・ポップの系譜を受け継いだ現代のジャパニーズ・ソウルと呼ぶに相応しいオリジナルナンバー! 7inchのカップリングには、今サウス・ロンドンで最も注目を集めているedbl(エド・ブラック)によるRemixを収録!

[リリース情報]
アーティスト:イハラカンタロウ
タイトル:つむぐように(Twiny)
フォーマット:7inch / Digital
Digital発売日:2022年10月5日
7inch発売日:2022年12月14日
レーベル:P-VINE
7inch品番:P7-6485
定価:¥2,365(税抜¥2,150)

[Purchase / Streaming / Download]
https://p-vine.lnk.to/Q2mP7w

【イハラカンタロウ】
1992年7月9日生まれ、作詞作曲からアレンジ、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまで手がけるミュージシャン。都内でのライヴ活動を中心にキャリアを積み2018年に1st EP「CORAL」を発表、聴き心地の良い歌声やメロディ、洗練されたアレンジやコードワークといったソングライティング能力の高さで徐々に注目を集めると、2020年4月に1stアルバム『C』(配信限定)、同年12月にはアルバムからの7インチシングル「gypsy/rhapsody」、そして2022年2月には最新7インチシングル「I Love You / You Are Right」をリリースし各方面から高い評価を受ける。またギタリスト、ミックス&マスタリングエンジニアなど他アーティストの作品への参加など幅広い活動を行なっている。

Twitter:https://twitter.com/cantaro_ihara

今年気に入っているミニ・アルバム - ele-king

 人類全体が正しい方向に行く気がしない今日この頃ですが、皆さんはどうお過ごしでしょうか。僕はワクチンの副反応で左腕が痛みます。4回もワクチンを打つと政府によってチップを埋め込まれたりするのも抵抗がなくなりそうで怖いです。さて、今年はいいなと思うミニ・アルバムが多く、しかし、ミニであるがゆえにレヴューなどで取り上げにくかったので、まとめて紹介してみました。ははは。それにしても藤田ニコルは吉野家には似合わない。


Ben Lukas Boysen - Clarion Erased Tapes Records

 ベルリンからヘック(Hecq)名義で知られるiDMのプロデューサーによる7thアルバム『Mirage』から“Clarion”をカット。優しくゆったりとビルドアップされていく原曲がとてもいい。ミニマル・テクノとモダン・クラシカルを柔軟に結びつけることでシルクのようなテクスチャーを生み出したアイスランドのキアスモス(Kiasmos)によるリミックスはベースを足したトランス風。食品まつりによる“Medela”のリミックスはヨーロッパの黄昏をドタバタしたジュークに改変し、モグワイもタンジェリン・ドリーム調の“Love”を強迫的にリミックス。新曲2曲はポリリズムやリヴァーブを効かせた幸せモード。


Andy Stott - The Slow Ribbon Modern Love

 ウクライナ支援を目的として3月18日から24日まで一週間だけ限定配信された7thアルバム。支援を優先したからか、全体的には未完成の印象もあり、通して聴くのは少しかったるいものの、最後まで仕上げたらすごいアルバムになるのではないかという予感をはらんだ作品。ほとんどすべての曲で逆回転が多用され、極端に遅いテンポ、あるいはベーシック・チャンネルそのものをスロウで再生しているような“Ⅲ”かと思えば無機質さが際立つ“Ⅴ”など、中心となるアイディアは「ベーシック・チャンネルをJ・ディラがミックスしたらどうなるか」というものではないかと。これらにリバーヴのループがしつこく繰り返される。


Mass Amore - Hopeless Romantic Not On Label

 デンマークから謎のドローン・フォーク。いきなり回転数を遅くしたヴォーカルで歌う「私はあなたを愛しているけれど、見返りはなにもいらない~」。そして、そのまま恍惚としたような世界観がずるずると持続していく。今年、最も気持ち悪いのはレヤ(LEYA)の2作目『Flood Dream』だと思っていたけれど、マス・アモーレもかなりなもので、アースイーターが全開にした扉は〈4AD〉リヴァイヴァルを通り越してもはや退廃の極みへと達している。エーテル・ミュージックやドリーム・ポップという範疇はもはや飛び越えてシガー・ロスさえ堅苦しく思えてくる。


33EMYBW & Gooooose - Trans-Aeon Express SVBKVLT

 エイフェックス・ツインとのコラボレートで知られるウィアードコアがロックダウン中に幻想的な新幹線や時空の旅を題材に北京で開いた初エキジビジョン「オリエント・フラックス」で、そのサウンド面を担当したハン・ハンとウー・シャンミン(共に上海の元ダック・ファイト・グース。詳しくは『テクノ・ディフィニティヴ改造版』P245)がその延長線上に作成した7曲入り。2人の曲を交互に並べたもので、いつものブレイクビーツ・スタイルから離れてリスニング・タイプを志向し、とくにグースことハン・ハンが新たな側面を見せている。


Coco Em - Kilumi Infiné

 パリはアゴリアのレーベルからケニヤのエマ・ンジオカによるデビュー作。パンデミックで映像の仕事に行き詰まり、ロックダウン中にショ・マジョジがフリーで提供していたビートを使って行われた「セナ・アラ(Sena Ala)チャレンジ」に手応えを得て音楽制作を本格化。ラテンからアフリカに逆輸入されたリンガラ(ルンバ)に強く影響を受け、60年代にケニヤ東部のカンバで流行っていた音源をサンプリングし、トラップやアマピアノなどとミックスしたハイブリッド・タイプ。不穏な始まりからヒプノティックなドラミングが冴え、伝統とモダンの壁を飛び越えたタイトル曲や“Winyo Nungo”など粒ぞろいの曲が並ぶ。


Bernice - Bonjourno my friends Telephone Explosion

 トロントからロビン・ダンを中心とする5人組ポップ・バンドが21年にリリースした4thアルバム『Eau De Bonjourno』のリミックス盤。プチ・ダンサブルに仕上げたイヴ・ジャーヴィスを皮切りにヤング・マーブル・ジャイアンツを思わせる“Personal Bubble”をサム・ゲンデルがジューク風にリミックスするなど、インディ・ポップを小さな引き出しからはみ出させず、徹底的にスケールの小さな空間に押し込んだセンスがたまらない。カルベルズによる“Big Mato”はJ・ディラを悪用し尽くし、オリジナルも実にいい”It's Me, Robin”はニュー・チャンス・レトログレードがふわふわのドリーム・ポップにリミックス。


Tentenko - The Soft Cave Couldn't Care More

 元BiSによるレジデンツ・タイプの4曲入り。Aサイドは80年代テクノ・ポップ風。無国籍サウンドを追い求めていた日本人の想像力を完全に再現した感じ。打って変わってBサイドはマーチを複雑にしたような変わったビートの“Stalactite”と控えめなインダストリアル・パーカッションがじわじわと効く“The Fish Stone”は部分的にキャバレー・ヴォルテールを思わせる。実にオリジナルで、まったく踊れないけどなかなか面白い。ハンブルグのレーベルから。


Tsvi & Loraine James - 053 AD 93

 〈Nervous Horizon〉主宰とウエイトレスのルーキーによるコラボレーション。昨年の白眉だったベン・ボンディとスペシャル・ゲストDJによるワン・オフ・ユニット、Xフレッシュ(Xphresh)と同傾向で、刺すようなビートと柔和なアンビエントを明確に対比させ、美と残酷のイメージに拍車をかける。エイフェックス・ツインが切り開いたスタイルにモダン・クラシカルの要素を加えて荘厳さを増幅させている。耳で聴くパク・チャヌク。レーベルは改名した旧〈Whities〉。


Luis - 057 AD 93

 上記レーベルからさらにDJパイソンの別名義2作目。レゲトン色を薄めてアブストラクト係数を高めている。アルバムやシングルに必ず1曲は入れていたウエイトレスを様々に発展させ、ファティマ・アル・ケイデリやロレイン・ジェイムスの領域に接近、無機質でクールな空間の創出に努めている。6年前の1作目「Dreamt Takes」ではパイソン名義とそんなに変わらなかったので『Mas Amable』以降の大きな変化が窺える。


Sa Pa - Borders of The Sun Lamassu

 上記のアンディ・ストットほど大胆ではないにしてもミュジーク・コンクレートを取り入れてダブ・テクノを大きく変形させた例にモノレイクとサ・パがいる。モノレイクは具体音を駆使し、即物的なサウンドに仕上げるセンスで群を抜き、〈Mana〉から『In A Landscape』(19)をリリースして頭角を現したサ・パことジャイムズ・マニングはデッドビートとのジョイント・アルバムから間をおかずにブリストルの新たなレーベル〈Lamassu(=アッシリアの守護神)〉から新作を。ここではミシェル・レドルフィばりにベーシック・チャンネルを水の表現と交錯させ、日本の語りとスラブの昔話に影響を受けたという桃源郷モードに昇華。収益の半分はブリストルのホームレス支援団体(caringinbristol.co.uk)へ。


Daev Martian - Digital Feedback Alpha Pup

 南アからエレガントなビート・ダウン・ハウス。スポエク・マサンボジョン・ケイシーと活動を共にしていたようで、ビートの組み立てに影響が窺えるも、独自のメロウネスはむしろDJシャドウやフライング・ロータスといった西海岸の流れを思わせる(だからレーベルも〈Alpha Pup〉なのか)。LAビート直系といえる“Gratitude”からフィッシュマンズとフィル・アッシャーが混ざったような”Never Changes”まで。陽気なマサンボも昨年は抑制された『Hikikomori Blue(アフリカ人引きこもり低音)』をリリースし、ブリ(Buli)『Blue』など南アのボーズ・オブ・カナダ化が進んでいる?


Daniele Luppi, Greg Gonzalez - Charm Of Pleasure Verve Records

https://ototoy.jp/_/default/p/1358819

 シガレット・アフター・セックスのヴォーカルをフィーチャーしたイタリアの作曲家による5曲入り。ドリーム・ポップのレッテルを貼られてしまったけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド“Sunday Morning”を思わせるオープニングから全体的にはアコギに分厚いストリングス・アレンジなどミシェル・ルグランやバート・バカラックといった60Sポップを正面から受け継ごうとする。キーワードは慈しみ。最近のザ・ナショナルからカントリー色を差し引いた感じかな。ダニエル・ルッピはデンジャー・マウスやレッド・チリ・ホット・ペパーズとの共作などでも知られる映画音楽家。

現役看護師がコロナ禍で見つめた葛藤の日々

「新興感染症はいつも、医療従事者への差別とセットだ」
平穏だった日常はやがて逼迫する状況に押し流される──ささくれ立つ心、SNSや報道へのとまどいと動揺、恋人や家族への不安、医療現場の崩壊、そして自身も感染
Covid-19、通称新型コロナウイルス感染症、その最前線を経験した現役の医療従事者が思いを綴った手記!

目次

はじめに
第1章 差別
第2章 恋愛
第3章 組織
第4章 感染
第5章 医療崩壊
第6章 記憶
終章
あとがき

著者
1992年生まれ。日本赤十字看護大学卒。
2015年より看護師として急性期病棟に勤務。
手術や抗癌剤治療など、病気や怪我の集中的な治療を必要とする患者のケアに携わる。
2018年に医学書院「看護教育」にて、「学生なら誰でも知っている看護コトバのダイバーシティ」というタイトルで1年間連載を行う。
2020年に晶文社より『医療の外れで──看護師のわたしが考えたマイノリティと差別のこと』を刊行。
本書は2冊目の著書となる。


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TYPE NINE - ele-king

 東京からハード・テクノを発信する〈09recordings〉と最近はテクノやハウスをモチーフにすることの多いファッション・ブランド〈WATERFALL〉がコラボTシャツをリリース。これは10月22日、青山VENT(Wall&Wall)にて開かれる〈09recordings〉主催の「TYPE NINE」にて限定発売される。
 ちなみに、同パーティには〈09recordings〉レーベルのオーナーで、東京のハード・テクノ・シーンを代表するDJ/プロデューサーのひとり、SHINICHIRO IMANARIをはじめ、レーベルの共同運営者でありDJのShintarø Kanie、テクノ界のレジェンド、DJ WADA、欧州からハード・テクノの使者AnGy KoRe & Gabriel Padrevitaなど、“ハード”にこだわったDJたちが集結する。速めのBPMのテクノやミニマルでがっつり踊りたい人たちはチェックして欲しい。

 なお、太っ腹な〈09recordings〉と〈WATERFALL〉から、エレキング読者に「TYPE NINE」コラボTシャツ1枚、〈WATERFALL〉から「DETROIT TECHNO」Tシャツ1枚、12月24日にCircus Tokyoにて開催される「TYPE NINE」へ来日予定のハード・テクノのレジェンド、PETDuoがデザインした「got techno ?」Tシャツ1枚の計3枚(サイズはL)をプレゼントします。
 応募は、info@ele-king.netまで、「好きなハード・テクノ・トラックを1曲」とご希望のTシャツを書いてメールをください(件名は、「〈09recordings〉〈WATERFALL〉Tシャツ・プレゼント」。名前不要)。当選者には編集部からメールを差し上げます。締め切りは、10月18日正午。Tシャツを着て「TYPE NINE」で踊りましょう!


①TYPE NINE×WATERFALLLコラボTシャツ L


②デトロイトTシャツ


③PETDuoデザインTシャツ


Kendrick Lamar - ele-king

 Kendrick Lamarの新譜、『Mr. Morale & The Big Steppers』を巡って様々な衝撃があった。 発売前に公開したシングル「The Heart Part 5」のディープフェイク演出、収録曲“We Cry Together”の凄まじい隠喩的演技で表現したフェミニズム・メッセージ(*1)、ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判例が覆されてまもなく“Savior”の舞台の締めで女性人権伸長を叫んだ事件など。そのなかで、トランスジェンダーの親戚を物語に呼んで彼らの人権を擁護するに当たってこれまでの宗教的スタンスを全面覆す“Auntie Diaries”はニュースボードの一欄を埋めるに値する。

 ただ、実際に話題になったのは曲中のクィア嫌悪的俗語(以下 ‘f-slur’)を繰り返す表現と登場人物に対するミスジェンダーリング、デッドネーミングなどによるものだった。実のところ、曲は意図的に問題領域に入る。例えば、伯母(伯父)について語る際に「伯母はゲイじゃない、女を食ったさ /she wasn’t gay, she ate pussy, and that was the difference」と口ずさむ俗語の爆撃を含め、幼い頃の話者がなんと「誇らしげに」f-slurを言わせたというマッチョイズムは価値判断に混乱を呼ぶ。曲の最後、「Faggot, faggot, faggot みんな言えるさ、その白人の子にniggaと言わせれるなら Faggot, faggot, faggot. We can say together. But only if you let a white girl say “nigga”」の句もまた聴者に判断を任せる場面で、まるでキリスト教聖書の「あなたたちのなかで罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」(ヨハネによる福音書 8:7 新共 同訳)という節の変容を見せるようだ。前に彼がn-wordの意味を覆そうとしたように、f-slurに 関しても同様に試みる。

 しかし、“i”(2015)にて黒人軽蔑的俗語のn-wordのプライド化を望めたのはその言葉がすでに一種の結束軸として作動するからである。その一方、f-slurはどうだ?  Eli Clareは卑猥な単語には感情的で社会的な歴史を荷に持っており、その悲しみと鬱憤の記憶からどのような欠片がプライドを見出せるか問い詰めることの重要性を強調する(*2)。 そのような限界を考慮した上でも、曲の価値を却下したくはない。まずこれは曲に対して「トラン スジェンダーについて話せるか」(*3)を尋ねるいくつかの意見に同意しがたいし、曲はそれでも有効な転覆と旋回を示している。その結果、倫理と正体化のグレーゾーンに暖かな風を押し寄せる感動を、私は大事にしたい。

 曲のフォーカスはやがて話者と家族の準拠集団、すなわち教会から排除されたもう一人に当てられる。 Kendrickとその家族がクリスチャンであることはアメリカでそんなに特殊な情報ではないはずだ。それでもKendrickにおいて神は「Real」(『good kid, m.A.A.d city』、2012)、 「How Much a Dollar Cost?」(『To Pimp a Butterfly』、2015)、「GOD.」 (『DAMN.』、2017)などのように彼の主なアルバムの結論部にいつも存在していた。つまり、 彼の音楽世界において宗教という要素は無視しがたいのだ。いや、 Kendrickだけではない。近現 代の大衆音楽史の根幹にあるスピリチュアル、ゴスペル、ブルースなどは奴隷制の時期、教会を媒 介にして登場した。教会は聖書の記録・読解権力を用いて奴隷制を内在化する戦略を建てたが、究極的な解放を説破したメシアのメッセージは平等と解放の火種となった。これは教会という空間の特殊性を表すとともに、大衆宗教においてヘゲモニーがどちらに向かうか知れる重要な指標とも考え得る。

 Mary-Annを排除する教会コミュニティと歓待する家族コミュニティの対比からもその構図はよく現れる。「牧師先生、あなたの隣人を愛すべきでしょ?  Mr. Preacher Man, should we love thy neighbor?」この節を境にクァイヤーの声は背景から曲の前景に現れて教壇の権威を覆 し、「宗教の代わりに人類愛を選んだその日、家族は和解し全ては許された /The day I chose humanity over religion, the family got closer. It was all forgiven」と、キリスト教で「許し」 を担う神の権威すらも簒奪する。イエス・キリストが同じ理由で当時の宗教指導者たちから迫害された話を思い浮かべると、Kendrickがカヴァーアートと舞台で荊棘の冠を被っている理由もまた推測できる。

 教会はクィア嫌悪などを通じて脱近代社会へのアンチテーゼ戦略をとって彼らの前近代的想像力を固執するなか、「神が死んだ」時代は教会という空間の存在理由を問い続けている。ただ記憶すべき なのは、教会は本来、権力の圧政に苦しむ弱者のための空間であったことだ。聖書の記録はすなわち長きディアスポラたちの歴史であり、そんななかで「集い」のもたらす価値は想像を超えるものだっ たであろうし、その過程での試行錯誤はそのまま新たな聖書に加わった(*4) 。個人と集団、言語の裏 面にて交差する複雑な脈絡を論じるに、この場は非常に狭いはずだが、足らない議論にもかかわら ずこのように記録を残したい。その脈絡の林をくぐり抜けたのち、個人が歓待されてこそコミュニ ティgが健康に回復することを曲が強弁するように、我らが各現場で書き綴る日記は、歴史になるはずだから。

(*1)  coloringCYAN, “Kendrick Lamar, 「Auntie Diaries」 (부제: 힙합의 노랫말과 여성혐오의 관계에 대한 단상)”, 온음(Tonplein), 2022.08.27, https://www.tonplein.com/?ckattempt=1

(*2)  Eli Clare, Exile and Pride: Disability, Queerness, and Liberation, Duke University Press, 1999.

(*3) Stephen Kearse, “Kendrick Lamar: Mr. Morale & The Big Steppers Album Review”, Pitchfork, 2022.05.16, https://pitchfork.com/reviews/albums/kendrick-lamar-mr-morale-and-the-big-steppers/

(*4)  拙稿, “사탄의 음악을 연주하고 말았습니다만?! : CCM에서 나타나는 대중음악과 예배음악의 경계 혹은 조건
サタンの音楽を奏でちゃったのですが?!:CCMに現る大衆音楽と礼拝音楽の境界もしくは条件”, Various Critics Vol. 3, 2022.01.25, https://posty.pe/l8f69k.

原本(韓国語):https://www.tonplein.com/?p=1875101.

Sonic Liberation Front: In Solidarity with Iran - ele-king

 日本では元首相国葬の話題で持ち切りだったここ最近、世界ではイランに注目が集まっていた。
 簡単に経緯をまとめておこう。9月16日、テヘランに来ていたクルディスタン出身の女性マフサ・アミニが、服装の規定に反しているとして「道徳警察」によって拘束され、そのさなかに問題が発生、死亡したことが国営メディアにより報じられた(その後、心臓発作とも脳卒中とも、あるいは殴り殺されたとも伝えられている)。
 これを受け、イラン各地で蜂起が勃発。女性たちがヒジャブを燃やしたり、髪を切ったりするプロテストをおこなう一方、当局は抗議を弾圧すべくネットを制限したり、催涙弾を使用して攻撃したりなどのとりしまりを実施。ジャーナリストを含めた逮捕者のみならず、すでに死者も多く出ている。ジョージ・フロイド事件以来というか、ここへ来てふたたびポリス・ブルータリティの問題が大きくクローズアップされたかたちだ。
 そんななか、音楽家たちも動きはじめた。現在イランで起きている抗議行動への連帯を示す「音速解放戦線──イランとの連帯(Sonic Liberation Front: In Solidarity with Iran)」なるショウケースが、Radio alHara (https://www.radioalhara.net/)にて放送される。同プログラムは9月29日と30日の、日本時間だと18時~20時に放送を予定。ロンドンの NTS やブリストルの Noods Radio、テキサスはオースティンの Shared Frequencies Radio など他のいくつかのラジオ局も番組の一部をミラーリングするという。
 このショウケースはイランの女性またはノンバイナリのアーティストによって構成されており、DJの Mariam Rezaei やラファウンダソテのレーベル〈Zabte Sote〉からリリースしている Rojin Sharafi らが名を連ねている。ぜひチェックしてほしい。

Zettai-Mu“ORIGINS” - ele-king

 大阪の KURANAKA a.k.a 1945 が主宰するパーティ、《Zettai-Mu “ORIGINS”》最新回の情報が公開されている。今回もすごい面子がそろっている。おなじみの GOTH-TRAD に加え、注目すべき東京新世代 Double Clapperz の Sinta も登場。10月15日土曜はJR京都線高架下、NOONに集合だ。詳しくは下記よりご確認ください。

Zettai-Mu “ORIGINS”
2022.10.15 (SAT)

next ZETTAI-MU Home Dance at NOON+Cafe
Digital Mystikzの Malaが主宰する UKの名門ダブステップ・レーベル〈DEEP MEDi MUSIK〉〈DMZ〉と契約する唯一無二の日本人アーティスト GOTH-TRAD !!! ralphの「Selfish」 (Prod. Double Clapperz) 、JUMADIBA「Kick Up」など(とうとう)ビッグチューンを連発しだしたグライムベースミュージックのプロデューサーユニット〈Double Clapperz〉Sinta!! CIRCUS OSAKA 人気レギュラーパーティー〈FULLHOUSE〉より MileZ!!
大阪を拠点に置くHIPHOP Crew〈Tha Jointz〉〈J.Studio Osaka〉から Kohpowpow!!
27th years レジテンツ KURANAKA 1945 with 最狂 ZTM Soundsystem!!
2nd Areaにも369 Sound を増設〈NC4K〉よりPaperkraft〈CRACKS大阪〉のFENGFENG、京都〈PAL.Sounds〉より Chanaz、DJ Kaoll and More!!

GOTH-TRAD (Back To Chill/DEEP MEDi MUSIK/REBEL FAMILIA)
Sinta (Double Clapperz)
MileZ (PAL.Sounds)
Kohpowpow (Tha Jointz/J Studio Osaka)
and 27years resident
KURANAKA a.k.a 1945 (Zettai-Mu)
with
ZTM SOUND SYSTEM

Room Two
Paperkraft (NC4K)
FENGFENG (CRACKS)
Chanaz (PAL.Sounds)
DJ Kaoll
Konosuke Ishii and more...
with
369 Sound

and YOU !!!

at NOON+CAFE
ADDRESS : 大阪市北区中崎西3-3-8 JR京都線高架下
3-3-8 NAKAZAKINISHI KITAKU OSAKA JAPAN
Info TEL : 06-6373-4919
VENUE : https://noon-cafe.com
EVENT : https://www.zettai-mu.net/news/2210/15

OPEN/START. 22:00 - Till Morning
ENTRANCE. ADV : 1,500yen
DOOR : 2,000yen
UNDER 23/Before 23pm : 1,500yen
※ 入場時に1DRINKチケットご購入お願い致します。

【予約はコチラから】
>>> https://noon-cafe.com/events/zettai-mu-origins-yoyaku-7
(枚数限定になりますので、お早めにご購入ご登録お願い致します。
 LIMITED枚数に達した場合、当日料金でのご入場をお願い致します。)

【新型コロナウイルス感染症拡大防止対策】
・マスク着用での来場をお願いします。
・非接触体温計で検温をさせて頂き、37℃以上の場合はご入場をお断り致しますので、予めご了承ください。
・店内の換気量を増やし、最大限換気を行います。
・体調がすぐれないとお見受けするお客様がいらっしゃいましたら、スタッフがお声がけさせて頂きます。

【お客様へご協力のお願い】
以下のお客様はご来場をお控え頂きますようお願い申し上げます。
・体調がすぐれないお客様
・37℃以上の発熱や咳など風邪の症状があるお客様
・くしゃみや鼻水などによる他のお客様にご迷惑をかけする可能性があるお客様
・60歳以上の方のご入店をお断りしています 。

その他、会場 WEB SITE : https://noon-cafe.com を参照下さい。

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● Special Supported by Flor de Cana

Tribute to Ras Dasher - ele-king

 「ONE BLOOD, ONE NATION, ONE UNITY and ONE LOVE」。LIVE はいつもこの一言から始まった。本作は昨年惜しくもこの世を去ってしまった“RAS DASHER”。彼といっしょに音楽を作ってきた仲間から、 最大限の感謝を込めて、それぞれのアーティストが現在進行形の音を天に響かせる追悼と音の祭典が開催される。

10/14 (金) 場所: 新宿Loft
Open:18:00-Til Late 27:00

REGGAELATION INDEPENDANCE & Special Guests from Cultivator & KILLA SISTA
MILITIA (SAK-DUB-I x HEAVY)
光風 & GREEN MASSIVE
UNDEFINED

BIM ONE PRODUCTION
LIKKLE MAI (DJ set)
MaL & JA-GE
外池満広 *Live
I-WAH & MARIKA
176SOUND
OG Militant B
山頂瞑想茶屋 feat. FLY-T
And more

Sound System by EASS HI FI

Food:
新宿ドゥースラー


Adv. ¥4,000
Entrance ¥4,500

前売りチケット情報
ZAIKO
https://tokyodubattack.zaiko.io/e/voiceoflove
ローソンチケット https://l-tike.com/order/?gLcode=72177
( Lコード:72177)

INFO
新宿LOFT 
tel:0352720382 


About Ras Dasher:
 80年代後半〜90年代初頭、SKA バンドのトランペットから始まったという彼の音楽キャリア、 その後 JAMAICA や LONDON を旅して帰国後、レゲエ・ヴォーカリストとして歌うようになった。 下北沢のクラブ ZOO (SLITS) で行われていたイベント「ZOOT」などに出演し、Ska や Rockstedy のカヴァー曲を歌っていた。
 その後、Mighty MASSA が始めた Roots Reggae Band “INTERCEPTER" の Vocal として参加、 Dennis Brown や Johnny Clark の ROOTS REGGAE を主に歌っていた。 95年頃、前述の クラブZOOT では、MIGHTY MASSA が本格的にUK Modern Roots Styleの SOUND SYSTEM を導入し、自作の音源を発表し始める。 発足よりシンガーとして参加し、97 年に MIGHTY MASSA の1st 12inch 「OPEN THE DOOR/LOVE WISE DUB WISE」 (Destroid HiFi) がリリース。 (Singer RAS DASHER として録音された最初のリリース) 後の MIGHTY MASSA 作品への参加 (2001 年 Album『ONE BLOW』、2003年 7inch 「Love Wise Dub Wise」) や DUB PLATE の制作に繋がっていく。 また、INTERCEPTER も音楽性の趣向がUK Modern Roots色が強くなり INTERCEPTER 2 として活動が始まり、 後の DRY & HEAVY の 秋本“HEAVY" 武士と RIKITAKE が加入し、その出会いが CULTIVATOR の結成に繋がっていく。

 CULTIVATOR は、何度かメンバーチェンジと試行錯誤を繰り返し 徐々にオリジナルの楽曲とサウンドアイディアで LIVE 活動が始まったのが90年代ももうすぐ終わる頃。 2000年に1st 12 inch Vinyl 「Promise Land/More Spilitual」を〈Reproduction Outernational〉レーベルからリリース.。この音源と DIRECT DUB MIX を取り入れた LIVE が注目される。
 2001 年 6月 1st CD mini album “BREAKOUT FROM BABYLON”をFlying Highレーベルから発表。 同年 FUJI ROCK FESTIVAL (RED MARQUIE)にも出演を果たした。また、 UK SOUND SYSTEM の重鎮 ABA SHANTI」の東京公演や、IRATION STEPPERS, ZION TRAIN の東京公演のフロントアクトを務めるなどLIVE も活発化し、2003年3月 2nd CD album 『Voice Of Love』 をリリース。 2004 年にこれらのシングル・カットとして 「Hear the voice love / In My Own / Freedom of reality」と 「Aka-hige /Spanish town」を発表した後、残念ながら活動を休止となった。


■Cultivator - 『Voice of Love』 レコードリリースについて
 Bim One Production / Riddim CHango Recordsの1TAによる、国産ルーツ/Dubの魅力を再評し新たな視点を深堀りするべくスタートするレーベル〈Rewind Dubs〉が始動!
 記念すべき第一弾は、2003年発表のCultivatorの名作CDアルバム『Voice of Love』 をLPアナログ用にリマスターした復刻盤! 本作は昨年惜しくもこの世を去ってしまった同バンドのフロントマン、Ras Dasherをトリビュートした限定300枚の再発作品である。
https://rewinddubs.bandcamp.com/releases

■ Voice of Love / Cultivatorオリジナルロゴ復刻T-シャツ販売決定
限定枚数販売!お見逃しなく!

Ras Dasher - Voice of Love T-Shirts (White / Black)
Cultivator Logo T-Shirts (Black)
M / L / XL / 2XL
¥3,000

The Lounge Society - ele-king

 何年か前にロンドンの新興レーベル〈Speedy Wunderground〉のインタヴューを読んだときに一際印象に残ったのは、イングランド北部の街ヘブデン・ブリッジの少年たちからデモが送られてきたというエピソードだった。サウス・ロンドンのプロデューサー、ダン・キャリー(ゴート・ガールフォンテインズD.C.のアルバムのプロデューサー)がはじめたこのレーベルは当時ノリに乗っていた。19年前半にブラック・ミディブラック・カントリー・ニューロードスクイッドを連続リリースし、このデモが送られてきたと思しき19年後半から20年はじめにかけてはツリーボーイ&アーク、シネイド・オブライエン、ラザロ・カネ、ピンチ、PVAをリリースしていたようなそんな時期だ。そしてロンドンから離れた場所に住むこの北部の15歳の少年たちは自分たちこそそれらに続くバンドにふさわしいと信じてメールを送った(同時にそれはこのレーベルがいかにクールなのかと少年たちが認識していたかということの証明でもある)。
 〈Speedy Wunderground〉に届いた一通のメール、そんなふうにしてはじまったバンドの物語。レーベルのA&Rを担っているピエール・ホールは20年5月の『Yuckマガジン』のインタヴューで少年たちのバンドについてこう語っている。「ダンが最初にこのバンドを聞いて、いかに素晴らしいかって興奮してそれを伝えるために僕にメールしてきたんだ。もちろん僕も気に入ったよ」「レコーディングの日、彼らは模擬テストがあって、ロンドンに出てくるのは校長先生の許可が必要だったんだ。友だちが試験を受けている間に、世界で最もホットなプロデューサーと一緒にレコーディングをしているってめちゃくちゃクールだよね」。そう笑って話すピエール・ホール。そのバンドこそがザ・ラウンジ・ソサエティであって、その曲こそが彼らのデビューシングルとなった “Genaration Game” だった。

 このエピソードを聞いたとき、僕はもうサウス・ロンドンの次のシーンがはじまったのかと驚きそして同時にワクワクした。ウィンドミルに出演していたようなバンドたちの音楽を聞いてバンドをはじめた少年たちが世の中に打って出る、盛り上がりを見せるシーンの裏で新たな物語が立ち上がる、そうやって音楽は脈々と受け継がれていく。ラウンジ・ソサエティの登場は次世代のバンドのはじまりを確かに感じさせるものだった。

 そうして少年たちは時を重ねる。21年にリリースされたEP「Silk For The Starving」、22年にリリースされたデビュー・アルバム『Tired Of Liberty』、幼さの残る子ども時代の面影は消え去り、その輪郭はどんどんシャープになっていく。このアルバム『Tired Of Liberty』に漂う空気はどうだ? 抑圧されるなかで生まれたエネルギーが理想的にやさぐれて、いにしえの時代から続くアートと不良とロックンロールが暗く輝くステージの上で混ぜ合わされている。
 この1stアルバムには彼らが影響を受けたであろう音楽の要素がそこらかしこに見え隠れする。ザ・ストロークスにトーキング・ヘッズ、NYパンクの匂いがあって、初期のサウス・ロンドン・シーンのバンドと共鳴するようなポストパンクの音も聞こえてくる。ギターの音は艶があり、少しクセのあるヴォーカルはライヴハウスの熱気をそのまま伝える。このアルバムはダン・キャリーとともに彼の自宅のスタジオで2週間で録音されたようだが、その手法はゴート・ガールの1stアルバムをプロデュースしたときに近かったのではないだろうか? つまりほとんどライヴ録音に近い形で、作り込まれた完成度よりも彼らの持つ熱と生々しさをそのまま閉じ込めるようにしてこのアルバムは作られたのではないかということだ。そしてそれはロック・バンドとしてのラウンジ・ソサエティの姿を浮き彫りにする。

 オープニング・トラック “People Are Scary” の70年代の映画のような色合いの少し芝居がかったギターとドラムの音、その音は頭の中にある「銃口を見つめる世代」(“Genaration Game”)のロック・バンドの姿をアップデートさせる。モノクロの世界が色づき、色をまとい、そこにいにしえの映画スターやロックスターの姿が投影されていく。わずかに間を置き静かになだれ込む “Blood Money” のギターのリフがやはりスクリーンの世界の幻想を想起させ心をざわつかせる。ここにあるのは現代の、古典的なロック・スター/ロック・バンドの姿だ。『Tired of Liberty』(自由にうんざり)というアルバムのタイトルは皮肉にみちていて、抑圧された日常の中で存在しない自由を渇望し、押しつけられたものではない自由の形を追い求めているように僕には思える(あるいはそれはある種の解放で、周囲に押し込められた決めつけの箱──たとえばそれはこのバンドはサウス・ロンドン・シーンから出てきたポストパンク・バンドであるという言葉で終わらされるような──の中から出るというような意味合いも込められているのかもしれない)。

 若く反抗的なバンドのその姿は何度でも音楽シーンに興奮とロマンを付与する。そしてこの物語の先をもっと見てみたいという欲求を生じさせるのだ。「あんたの嘘は全て皮肉で塗り固められている」「いつだって金が優先だ/あんたがするように、俺たちがそうするように/その手は血にまみれている」。“Blood Money” においてラウンジ・ソサエティは不健全で不透明な世界に対してそういら立ちを滲ませる(政治的なテーマはどうしたって日常にリンクするとバンドは言う。それはたとえばブレグジットによってヨーロッパツアーが容易にできなくなるとういう形で現れる。あるいはその反対にヨーロッパのバンドが簡単にUKに入ってこられなくなるといった形で。いまやそれが許されるのは既に成功している人たちだけなのだと)。
 それらのフラストレーションは音楽として表現され、楽曲の中に現れる。エレクトロニクスのビートと組み合わされた “No Driver” はレトロムードが漂う世界観で、安っぽいドラマと譲れない美学が混じり合ったような焦燥と暗く沈んだ不安定な疾走が表現されている(逃避的な解放を求めて。だが結局はどこにもいけないのかもしれない。しかしだからこそラウンジ・ソサエティのような音楽が必要なのだと僕は思う)。最終曲、再録された “Genaration Game”、よりラフに崩されぶっきらぼうに吐き捨てられたヴォーカルの興奮はまさにゴート・ガールの1stにおける “Country Sleaze” を彷彿させて、時の流れが可視化され現在のバンドの姿がそこに重なる(それは1周して戻ってくる物語のタイトルの回収のようなものだ)。

 ラウンジ・ソサエティは決して爆発しない。その一歩手前で立ち止まりフラストレーションを抱え続ける。焦燥を煽るギター、不満をぶつける先を探すようなヴォーカル、不健全で不透明な世界へのいら立ち、彼らのEPに収録されている “Cain's Heresy” のビデオに映るゴードン・ラファエル(ストロークス初期2作のプロデューサー)はこのアルバムを聞いていったいなんて言うだろう。新しい世代のストロークスになりたいと野心を抱くバンドのヒリヒリとしたステージのその最初の幕がここに上がり、そしてつられてそのボリュームを上げたくなる。

Fontaines D.C. - ele-king

 ザ・スミスが引き合いに出されるなど、サウンドのみならずその文学性も称賛されているダブリンのバンド、4月にリリースしたサード・アルバム『Skinty Fia』がそれはもう高い評価を獲得しているザ・フォンテインズD.C.。残念なことにフジロックへの出演がキャンセルとなっていた彼らだが、ここへ来て一陽来復、あらためて初来日公演がアナウンスされている。来年2023年の2月、大阪(梅田 CLUB QUATTRO)と東京(Spotify O-EAST)の2か所を巡回。今日におけるインディ・ロック復権を担う5人組のパフォーマンスを、この目にしかと焼きつけるまたとないチャンスだ。これは行くしかないでしょう。

ニュー・アルバム『SKINTY FIA(スキンティ・フィア)』がUKアルバム・チャート1位、を獲得。
2022年を象徴するロック・バンドに成長したフォンテインズD.C.。
無念のフジロックのキャンセルを経て遂に初来日公演が決定!

『Japan Tour 2023』

FONTAINES D.C.

Fontaines D.C.はアイルランドのダブリン出身のポストパンク・バンド。2019年4月、デビュー・アルバム『Dogrel』をリリース。アルバムはNME(5/5)、The Guardian(5/5)、Pitchfork(8.0/10)と各メディアで高い評価を獲得。UKチャートの9位、アイルランド・チャートの4位を記録し、ツアーは軒並みソールド・アウト。Rolling Stone誌は「我々のお気に入りの新しいパンク・バンド」とバンドを絶賛。The Tonight Show with Jimmy Fallon にも出演し、アルバムはRough TradeとBBC 6Musicの年間ベスト・アルバムの1位を獲得。2019年のマーキュリー・プライズにもノミネートされた。2020年7月にはセカンド・アルバム『A Hero’s Death』をリリース。アルバムはUKチャートの2位、アイルランド・チャートの2位を獲得。アルバムは多くのメディアで年間ベスト・アルバムの1枚に選ばれ、第63回グラミー賞の「Best Rock Album」にもノミネートされた。また、2021年4月、バンドはブリット・アワードの「International Group」にもノミネートされた。アイルランドという自らのアイデンティティを問うサード・アルバム『スキンティ・フィア』はUKアルバム・チャート1位、アイルランド・アルバム・チャート1位を獲得し。待望の初来日公演が決定した!

2023年2月17日(金)大阪 梅田 CLUB QUATTRO

2023年2月18日(土)東京 Spotify O-EAST

(問)SMASH:https://smash-jpn.com/

2022.4.22 ON SALE[世界同時発売]

全英2位を記録しグラミー賞/ブリット・アワードにノミネートされた前作から2年、フォンテインズD.C.の新作が完成。
アイルランドという自らのアイデンティティを問うサード・アルバム『スキンティ・フィア』、リリース。

●プロデュース:ダン・キャリー

アーティスト:FONTAINES D.C.(フォンテインズD.C.)
タイトル:SKINTY FIA(スキンティ・フィア)
品番:PTKF3016-2J[CD]
定価:¥2,500+税
その他:世界同時発売、解説/歌詞/対訳付、日本盤ボーナス・トラック収録
発売元:ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ

収録曲目:
01. In ár gCroíthe go deo
02. Big Shot
03. How Cold Love Is
04. Jackie Down The Line
05. Bloomsday
06. Roman Holiday
07. The Couple Across The Way
08. Skinty Fia
09. I Love You
10. Nabokov
11. I Love You - Live at Alexandra Palace*

*Bonus Track

「Fontaines D.C.の最高傑作」- Rolling Stone ★★★★★
「インスタント・クラシック」- The Times ★★★★★
「息を呑むようなコレクション」- NME ★★★★★
「自分たちの進むべき道がはっきりしたバンド」- DIY ★★★★★
「Fontaines D.C.はここに留まるだけではなく、支配するためにここにいることを証明する」- The Line Of Best Fit (10/10)
「彼らはこれまでの最高傑作を作った」- Dork ★★★★★
「Fontaines D.C.はますます良くなっている」- The i Paper ★★★★★ (Album of the Week)
「この時代の最も重要なグループのもう一つの勝利」- Record Collector
「今世紀最もスリリングなギター・バンドの一つ」- Mr. Porter
「ファンタスティックなアルバム」– Uncut
「巨大なパワーと目的を持ったもうひとつの作品」- The Telegraph

NME (★★★★★)
DIY (★★★★★)
The Times (★★★★★)
Rolling Stone (★★★★★)
The i Paper (★★★★★)
Evening Standard (★★★★)
Daily Express (★★★★)
Daily Star (★★★★)
The Guardian (★★★★)
Upset (★★★★★)
Dork (★★★★★)
The Line of Best Fit (10/10)
Uncut (9/10)
Sunday Times Culture (★★★★ & Album of the Week)
Record Collector (★★★★)
MOJO (★★★★)
Loud and Quiet (9/10)
Louder Than War (9/10)
CLASH (8/10)
Gigwise (9/10)
Examiner (★★★★★)
Irish Times (★★★★)
Pitchfork (8/10)

●Fontaines D.C.はサード・アルバム『Skinty Fia』を2022年4月22日、Partisan Recordsよりリリースする。プロデューサーのDan Careyと3度目のタッグを組んだ『Skinty Fia』は、全英2位を記録し、BRIT Awards 2021(ブリット・アワード)とGRAMMY(グラミー)にノミネートされた2020年のセカンド・アルバム『A Hero's Death』に続く作品となる。バンドが最初に世界的な注目を集めたのは、2019年にリリースされたデビュー・アルバム『Dogrel』が、その年に最も高く評価された作品のひとつとなり、Mercury Music Prize(マーキュリー賞)のショートリストに選ばれた時だ。それ以来、彼らはここ数年で最も新鮮で刺激的な若いバンドの1つ、として認知されている。BRITS(Best International Group)、GRAMMY(Best Rock Album)、Ivor Novello Awards(Best Album)にノミネートされた後、バンドはパンデミックのロックダウンから戻り、『Skinty Fia』の作業を終える前に、ロンドンのAlexandra Palaceでのチケット1万枚全てをソールド・アウトさせた。『Skinty Fia』はアイルランド語で、英語に訳すと「the damnation of the deer(鹿の天罰)」となる。アルバムのカバーには、自然の生息地から連れてこられ、人工の赤い光に照らされた家の廊下に置き去りにされた鹿が描かれている。大きな鹿はアイルランドでは絶滅種であり、バンドのアイルランド・アイデンティティに対する考えは、『Skinty Fia』の中心をなす。『Dogrel』にはダブリンのキャラクター(「Boys In The Better Land」のタクシー運転手等)のスナップショットが散見され、『A Hero's Death』ではバンドがツアーで世界を回る中で感じた疎外感と断絶が記録されているが、Fontaines D.C.は『Skinty Fia』で、自分たちが新しい人生を別の場所で作り直す中、遠くからアイルランド性を訴えているのだ。D.C.は「Dublin City」の略で、故郷というものが体内に脈々と流れるバンドにとってのこのアルバムは、視野を広げる必要性と、残してきた土地と人々への愛情を解決しようとする姿を見せてくれるものである。『Skinty Fia』には『Dogrel』の荒々しいロックンロールや、『A Hero's Death』の荒涼とした雰囲気が存在する。しかし、三部作の三枚目となるこのアルバムは、より広大でシネマティックだ。Fontaines D.C.は常に進化を続けているバンドだ。結果、『Skinty Fia』には、移り変わるムード、驚くべき洞察力、成熟等が内包され、大きく感情移入できる作品へと仕上がった。

●Fontaines D.C.はアイルランドのダブリン出身のポストパンク・バンドだ。メンバーはCarlos O'Connell(g)、Conor Curley(g)、Conor Deegan III(b)、Grian Chatten(Vo)、Tom Coll(Dr)。5人がダブリンのミュージック・カレッジで出会い、バンドはスタートした。2019年4月、デビュー・アルバム『Dogrel』をリリース。アルバムはNME(5/5)、The Guardian(5/5)、Pitchfork(8.0/10)と各メディアで高い評価を獲得。UKチャートの9位、アイルランド・チャートの4位を記録し、ツアーは軒並みソールド・アウト。Rolling Stone誌は「我々のお気に入りの新しいパンク・バンド」とバンドを絶賛。The Tonight Show with Jimmy Fallon にも出演し、アルバムはRough TradeとBBC 6Musicの年間ベスト・アルバムの1位を獲得。2019年のマーキュリー・プライズにもノミネートされた。2020年7月にはセカンド・アルバム『A Hero’s Death』をリリース。アルバムはUKチャートの2位(1位はTaylor Swift)、アイルランド・チャートの2位を獲得。アルバムは多くのメディアで年間ベスト・アルバムの1枚に選ばれ、第63回グラミー賞の「Best Rock Album」にもノミネートされた。また、2021年4月、バンドはブリット・アワードの「International Group」にもノミネートされた。

■More info: https://bignothing.net/fontainesdc.html

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