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RIP

Pat Fish(Jazz Butcher)

Pat Fish(Jazz Butcher)

安田理央 Oct 07,2021 UP

 10月7日の朝、Twitterを見たら「パット・フィッシュ(ジャズ・ブッチャー)さんがお亡くなりになりました。ご冥福をお祈り申します。」というGlass Modern Recordsの公式アカウントのツイートが目に飛び込んで来た。
 しばらく言葉を失った。慌てて検索し、その情報がどうやら間違いではないことを確信すると、三十数年前に買い揃えたレコードを引っ張り出して1stアルバムの『In Bath Of Bacon』から聴き直しはじめた。
 ザ・ジャズ・ブッチャーは、自分の中で五本の指に入るくらい好きなアーティストだ。そんなクラスの人が亡くなるのは8年前の大滝詠一以来だろうか。

 ザ・ジャズ・ブッチャーとの出会いは高校年の頃。御茶ノ水の輸入盤屋を漁っていて「モノクローム・セットが好きな人に! バウハウスのデビッド・J参加」と書かれていた2ndアルバム『A Scandal In Bohemia』(1984)に興味を惹かれて買ったのが最初だった。どちらのバンドも好きだったからだ。
 とは言うものの、手元にある『A Scandal In Bohemia』はキングのNexusレーベルから出ていた国内盤なので、輸入盤屋で購入したという記憶と矛盾がある。まぁ、三十数年前の話だから、しょうがない。
 とぼけたマンガが描かれたジャケットから、それがシリアス一辺倒のバンドではないことはわかっていたが、聴いてみるとネオアコっぽい曲、ガレージ・パンクっぽい曲、果ては童謡っぽい曲(しかも調子っぱずれなコーラスが入る)と、曲調はとりとめないのだけれど、ちょっとザラついた感触の歌声がそれらを上手くまとめていた。なんといっても全編に漂うユーモアのセンスが肌にあった。確かにモノクローム・セットと通じるものは感じる。
 しばらく『A Scandal In Bohemia』を狂ったように聴いたが、このザ・ジャズ・ブッチャーに関する情報は音楽誌には全く出てこない。もちろんネットで調べることなんて出来ない時代だ。頼りは国内盤についていた森田敏文氏の書いたライナーノートのみ。ジャケットを見ると4人組のバンドだと思ったけれど、どうやらザ・ジャズ・ブッチャーというのはヴォーカルのソロ名義でもあるらしい。ん? どういうことだ? 

 その後もレコード屋で見かけると購入していたのだが、ミニアルバムやらコンピレーションやらライヴ盤やらが多く、なかなかディスコグラフィーが把握できなかった。
 しかもこの頃発売されたサイコビリーのオムニバスにも、参加していたりして、もうなんだかよくわからない。
 途中でザ・ジャズ・ブッチャー・コンスピラーシーなんて名前になってたのも意味不明だったし。
 でも、情報が限られていたこの頃は、こんなことがよくあった。愛聴しているのに、そのバンドのことをよく知らなかったりするのは珍しいことではなかった。そしてその情報不足の得体のしれ無さが、まだザ・ジャズ・ブッチャーには似合っていたのだ。

 1988年の『Fishcotheque』からは、どインディーなグラス・レコードから名門のクリエイションへと移籍。以前よりも少しマジメになったような印象もあったけれど、唐突にJ.B.C.名義でローリング・ストーンズの“We Love You”を打ち込みダンストラックでカバーしてみたりと、わけのわからなさは健在だった。
 アラン・マッギーが「オアシスでもうけた金で、俺はジャズ・ブッチャーのアルバムをリリースし続けるのさ」と言ったなんて記事を読んだこともあったけれど、愛されてたんだなぁ、ジャズ・ブッチャー。
 クリエイション移籍以降も新譜が出れば買い続けていたけれど、正直グラス時代ほど熱心に聴き込むことはなかった。いや、それでもたまに聴くと「あれ、この時期のも悪くないな」なんて思ったりはしてたけれど。

 そして90年代後半からは次第にリリースの間隔も空いていき、ザ・ジャズ・ブッチャーの活動もフェードアウトしていった。
 でも、自分の中ではずっと重要なアーティストだった。『A Scandal In Bohemia』収録の“Girlfriend”はDJをやる時の定番だったし(あと初期のギタリストだったマックス・エイダーのソロ“My Other Life”も!)、ここ最近はサブスクリプションサービスをチェックする時にはザ・ジャズ・ブッチャーのアルバムがどれくらいあるかを目安にしていた。

 2018年に彼が「なんらかの病気」ということで治療の費用をクラウドファンディングしていると聞いた時はドキリとしたのだけれど、それからずっと闘病していたのだろうか。
 そういえば、彼がパット・フィッシュという個人名をクレジットするようになったのは1990年の『Cult Of The Basement』以降なので、あんまりパット・フィッシュという名前はピンと来ない。自分にとっては、彼はやっぱりザ・ジャズ・ブッチャー、もしくはブッチなのだ。
 お疲れ様、ブッチ。

安田理央

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