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フラッシュバックメモリーズ4Dライブ

フラッシュバックメモリーズ4Dライブ

@渋谷WWW

Apr 15, 2014

綾門優季   May 26,2014 UP

■フラッシュバックメモリーズ4D
事故によって高次脳機能障害の症状が後遺してしまったディジュリドゥ奏者GOMA。そのリハビリと復活の過程を独特の手法で描き、第25回東京国際映画祭で観客賞、韓国の全州国際映画祭でNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞し、インディペンデント映画ながら国内で2万人を動員したドキュメンタリー作品、『フラッシュバックメモリーズ3D』。本イヴェント〈フラッシュバックメモリーズ4D〉とは、同作の本編を3Dで上映しつつ、劇中ほぼノンストップで流れるGOMA&The JRSのライヴを生演奏で再現するという異色のイヴェントである。観客は3Dメガネをかけつつ、GOMAの失われた記憶と復帰後のスタジオ・ライヴを3D映画のレイヤー構造によって体感し、さらに「現在」=生ライヴによる4Dの世界を堪能できるという仕掛けだ。
公式サイト http://flashbackmemories.jp/

 デジャヴ? いや、もちろんデジャヴではない。このライヴを目撃するのは生まれてはじめてのはずだ。それでも目の前で展開されている光景はたしかに見覚えのあるものだった。そう、まさに映画のなかで映し出されていたライヴ映像、そのまま。ちがうところといえば服装ぐらいしか見いだせない、曲目や楽器や演奏はもちろん、目配せまでほとんど同じタイミングで過去のライヴと同期していることに、これまであまり経験したことのないタイプの興奮を禁じえないでいた。

 現代映画に疎いわたしが松江哲明監督の存在を知ったのは、元日の東京・吉祥寺を、ミュージシャンの前野健太が歌い歩く姿を74分ワンカットでとらえた衝撃的なドキュメンタリー映画『ライブテープ』によってだった。ライヴよりも生々しいライヴのドキュメンタリーに心酔したわたしは松江哲明監督のこれまでの映画を漁り尽くし、いつの日かまたライヴのドキュメンタリーを撮ってくれることを待ち望んでいたのだ。『フラッシュバックメモリーズ』が公開されることを知ったときには歓喜したものだ。しかし、『フラッシュバックメモリーズ』は見ごたえのあるライヴの記録映像、と言うにとどまるたぐいのものではまったくなかった。ライヴハウスに足を運ぶのと同じノリでわくわくして映画館に足を運んだわたしはしたたかに打ちのめされた。そこに映し出されていたのは、目覚ましい活躍のさなかに不慮の事故で記憶の一部が消えてしまったり新しいことを覚えづらくなるという高次脳機能障害を負い、一時はディジュリドゥが楽器であることすらわからないほど記憶を失っていたGOMAが、リハビリ期間を経て徐々に復活する過程を丹念に追った、数奇な運命に思わず眩暈がしてしまう真摯なドキュメンタリーだったのだ。そして映画のなかでフラッシュバックする、いまはもうGOMAの記憶には残っていないライヴの舞台がここ、〈WWW〉なのである。

 GOMAのライヴの最中ずっと、バックでは映画『フラッシュバックメモリーズ』が最初から最後まで途切れることなく映し出されている。事故前のGOMAの映像と事故後のGOMAの本人をついつい比べ、複雑な気持ちを抱いてしまう。やはり、MCは事故後のほうがどこかたどたどしいことは認めざるを得ない。それも当然のことだ。「久しぶりに昔の映像を観たけどやはり何処か他人のフィルムを見ている様な感覚になってしまった。僕はここに映っている僕を思い出せない。」と映画のラスト・シーンで挿入されたコメントのとおり、GOMAは完全に覚えていない自分のドキュメンタリー映画についてのMCをしているのである。いや、それどころか、昔の自分が「僕はここに映っている僕を思い出せない。」と発言したことさえ、下手をすると覚えていなかったかもしれないのだ。その意味では、事故前のGOMAの完全復活というのはありえない。GOMAはすでに別の人生を歩みはじめている。そもそもGOMAが事故にあっていなければ、『フラッシュバックメモリーズ』も存在せず、『フラッシュバックメモリーズ4Dライブ』は〈WWW〉で行われず、『フラッシュバックメモリーズ4Dライブ』についてのライヴ・レヴューをわたしが執筆することもなかったのだ。それでもこれだけはいっておきたい。GOMAのステージは、事故前も事故後も、何ら遜色のない素晴らしいものであったと。事故によってGOMAの音楽そのものが致命的な損傷をおったわけではないと。GOMAの脳が覚えていなくとも、今日のライヴをGOMAの体はきっと覚えていると。

 唯一、映像で映し出されるGOMAが、現実のGOMAとは歴然とちがうときがあった。ラスト近く、GOMAはくるっと振り返って観客に背を向け、映像の中のGOMAに向かって演奏をはじめたのである。それは奇妙に姿を歪ませる鏡の前にいるようにも、失った記憶と対峙しているようにも、祈りを捧げているようにもみえた。

綾門優季