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トータス『ザ・カタストロフィスト』を読み解くための10枚+

トータス『ザ・カタストロフィスト』を読み解くための10枚+

文:松村正人、デンシノオト Jan 19,2016 UP

 トータスによる約7年ぶり7作めのニュー・アルバム『ザ・カタストロフィスト』。多様な音楽性を折衷し、ひとつの時代を築きつつ20年にわたって飽くことなき実験を繰り返してきたバンドによる新作──ヨ・ラ・テンゴのジョージア・ハブリーが歌い、デヴィッド・エセックスのカヴァーまで登場する本作を“読み解く”ために聴いておきたいアルバムを約10枚ご紹介。

Tortoise - Tortoise (Thrill Jockey 1994)


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 記念すべきファースト・アルバム。「亀」というロックバンドらしからぬ名を冠した彼らの歩みはここからはじまった。ジョン・マッケンタイアの出自であるハードコアやダグ・マッカムな叙情的なメロディが生々しくも未分化まま、乾いた熱量と共に封じ込められている。ポストパンク的ともいえるダビーな処理や電子音への耽溺に加え、サウンドのポスト・プロダクション的実験も行われており、90年代のポスト・ロックの鼓動が聴こえてくる。(D)

Tortoise - Millions Now Living Will Never Die (Thrill Jockey 1996)


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 トータスの名を一気に広めることになった傑作セカンド。ポスト・プロダクション志向はさらに強まり、演奏と編集、編集と作曲の境界をスムーズに遡行/移行しながら、90年代のポスト・ロックの基本形を完成させた。ジャーマン・ロックや電子音楽の影響を臆さずに導入し、90年代中期のDJモード=リスナー主義的な雰囲気も象徴している。乾いたギターの音色や旋律に、グランジ以降を「生き延びてしまった」ロックの叙情性を感じる。(D)

Tortoise - A Digest Compendium Of The Tortoise's World (Tokuma Japan Communications 1996)


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 ファースト・アルバム収録曲や95年リリースのリミックス盤、さらには初期7インチ盤などを収録したコンピレーションアルバム。ジャズ、ヒップホップ、テクノ、音響派、電子音楽、映画音楽など多種多様な音楽のショウケースといった趣で、いま聴きなおすとバンドの試行錯誤が刻印されているのがわかる。傑作セカンド・アルバムへと繋がっていくエレメントをはっきりと聴き取ることができる。スティーヴ・アルビニのリミックス曲も注目。(D)

Tortoise - TNT (Thrill Jockey 1998)


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 トータス初期の歩みの集大成にして彼らの代表作。ハードディスク・レコーディングを大幅に導入し、編集と作曲の境界はさらに滑らかに。シカゴ音響派の代表格といわれる彼らだが、この作品においてストラクチャー志向にモード・チェンジしている点は重要なポイントに思える。ジャズ的なものに接近しているのは本アルバムでジェフ・パーカーが正式メンバーになった影響大か。印象的なアートワークはメンバーのジョン・エルドンの落書き。(D)

Tortoise - Standards (Thrill Jockey 2001)


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 トータス史上、もっとも過激で、もっとも過剰で、もっとも怒りに満ちているアルバム。『TNT』的洗練への反動か、穏やかなムードをあえて破壊するようなノイジーなサウンドが展開されている。1曲め“Sensca”のエレクトリック・ギターはジミヘンの霊が乗り移ったかのようだし、ドラミングはハードコアの亡霊のよう。機材もハードディスク編集からアナログ機材へと回帰し、その太い音像が魅力的だ。過渡期故の過剰な魅力が本作にはある。(D)

Tortoise - It's All Around You (Thrill Jockey 2004)


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 前作が「破壊」とするなら、本作は「再生」だろうか。リラクシンなムードが漂う中、緻密に再構成させるサウンドは『TNT』を想像させるが、前作の過剰なポスト・プロダクションを経由したそのサウンドは、トータス史上、最大級に洗練されており、ストラクチャー志向であった『TNT』よりも、サウンド志向の強いアルバムともいえる。本作においてトータスは初めて演奏と音響の融合に成功したといえるのではないか。声の導入もバンド初。(D)

Tortoise - Beacons Of Ancestorship (Thrill Jockey - 2009)


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 『イッツ・オール・アラウンド・ユー』から5年を経て発表された6枚めのアルバム(06年にボニー・プリンス・ビリーとの競演作を発表していたが)。前作がサウンドなら本作は演奏に焦点を当てたアルバムか。あるい『スタンダーズ』に内包していた過激さの再認識か。プログレッシヴ・ロックを彷彿させる叙情的でダイナミックな演奏はロック・バンド・トータスの面目躍如といった趣。以降、7年間、オリジナル・アルバムのリリースは途絶える。(D)

Various - CHICAGO 2018... It's Gonna Change (Clearspot 2000)


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 独人ジャーナリスト主導で、現地コーディネーターにジム・オルークと〈スリル・ジョッキー〉のベッティナを立てたオムニバス。『Eureka』と『Insignificance』の狭間にいたジム、ポスト『TNT』としての『Standards』を世に問うたばかりのトータスはもちろん、サム・プレコップ、ケン・ヴァンダーマーク、アイソトープ217など2枚組にぎっしり18組。バンディ・K・ブラウンやプルマン、トー2000など、往時を偲ばせるメンツもふくめ、(はからずも?)90年代オルタナ~ポストロック~音響万博の趣だが、過渡期ならではの多様性はいまもってまぶしい。表題は「2018年――シカゴは変わっているだろう」の意。しかし予言の年を迎える前にシーンは激変した。(松)

Terry Riley - In C (Columbia Masterworks - 1968)


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 ジェフ・パーカーによれば「Gesceap」は「In C」を参照したとのことだが、同じライリーの「Rainbow In Curved Air」(69年)のラーガ的モードも彷彿させる。「In C」はミニマル・ミュージックの代表作のひとつで、すべてハ長調の短い53個のフレーズをモジュールに見立て、その反復と連動が楽曲を構造化する、ミニマル・ミュージックの代表曲だけあって、ロック畑にも無数に援用(ときに誤用)されてきたが、トータスはミニマルの解釈と更新において頭ひとつ抜けているようだ。(松)

David Essex - Rock On (CBS 1973)


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 英国のポップ・シンガーの、タイトル曲がビルボードでもヒットしたデビュー作。73年のUKといえば、ボウイは前年の『ジギー・スターダスト』で押しも押されもしない☆となり、ゲイリー・グリッターがチャートを席巻する、グラム全盛の潮流を見越したふしは冒頭の“Lamplight(邦題:魔法のランプ)”にうかがえるが、アメリカン・オールディーズやシングルB面のバラード“On And On”など、音楽性は幅広く、なかでも“Rock On”はつづく“Ocean Girl”と併せ、レゲエ~カリブ音楽の影響大で、幼少期のトータスの面々をとらえたのもむべなるかな。エントロピーが高まる世相のなかで、その引き算の戦略が新鮮かつセクシーだったのだろう、エセックスはのちに俳優業でそれをふるうことになる。(松)

George Lewis - Voyager (Avant 1993)


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 ジェフ・パーカーのいうシカゴの即興コミュニティとコラボレートした作品とはどのようなものか。発言ではうかがい知れなかったので妄想で、このようなものだったんじゃなかろうかと導き出したのがこちら。アンソニー・ブラクストンと並ぶAACM──ジェフ・パーカーもその一員──の論客であるトロンボニスト、ルイスによる自作即興対応ソフトウェア「Voyager」とのマンマシーン・インプロヴィゼーション集。発表当時は、アカデミシャンだけあって、気宇壮大なこころみのわりにDX7的な音色のダサさに耳がいって仕方なかったが、あらためて聴くとなかなかどうして味わい深い。シンクラヴィアと同じ寝かしどきの問題か、数日前ブーレーズを聴き直したせいか?(松)

Yo La Tengo - Fade (Matador 2013)


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 ホーボーケンの守り刀にしてUSインディの要石、ヨ・ラ・テンゴのスタジオ作13枚めのプロデュースは20年来の旧友ジョン・マッケンタイア。不変のスタンスはそのままに、しかし3年前の『Popular Songs』以上に濃縮した曲ごとの旨味をジョンマケのツボを押さえた音づくりがひきたてる。ほんのりサイケかつアシッドな風味はジョージアがヴォーカルをとった“Yonder Blue”に3年越しにフィードバックしていくかのよう。ジェフ・パーカーが2曲めで弦アレンジを担当。ロブ・マズレクらの参加も色どりを添えている。(松)

Chicago Underground Duo - Locus (Northern Spy 2014)


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 そのロブとチャド・テイラーによるシカゴ・アンダーグラウンドのデュオ名義は7作目にあたる最新作で電子音と即興によるこれまでの鋭角的な作風から新世代のジャズを念頭に置いたそれに舵を切った。ボウイの遺作への参加でときのひとになっ(てしまっ)たマーク・ジュリアナのように、抽象と抑制より具体と饒舌を前に、エチオピアン・ジャズやらIDMやらをおりこみながら『ザ・カタストロフィスト』に通ずる音色でコンパクトかつグルーヴィに攻める、なんと巧みで聡明なひとたちであることか。(松)

松村正人松村正人/Masato Matsumura
1972年、奄美生まれ。1999年より雑誌『STUDIO VOICE』編集部で音楽を担当。07年に『Tokion』編集長を、09年4月号から休刊した09年9月号まで『STUDIO VOICE』編集長をつとめた。「南部真里」の筆名を使うこともある。2010年初頭より編集者としてリトルパブリッシングの実験的試み〈天然(10's)文庫〉を開始します。湯浅学氏率いる湯浅湾のベース奏者でもあり、09年に新作『港』(boid)をリリースした。
Post-it (デンシノオト)
1971年生まれ。ブロガー。東京在住で音楽ブログ「デンシノオト」などを書いています。
http://d.hatena.ne.jp/post-it/

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