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オカシオ・コルテス現象について

文:cargo Apr 02,2019 UP

 音楽ファンにこそぜひ覚えておいて欲しい。オカシオ-コルテスこそが、政治だけじゃなくカルチャーをひっくり返す存在になり得ることを。
 去る2月7日、米国民主党の女性新人議員アレクサンドリア・オカシオ-コルテスと同僚議員が、かねてから待望されていた「グリーン・ニューディール法案」を米国議会に提出した。

 米国では昨年6月に同議員が初当選したその瞬間から、主流メディア/ネット問わず彼女とその一挙手一投足に、そして法案提出以前から口にしていたグリーン・ニューディールの話題で持ちきりとなり、当選の前後比でこのグリーン・ニューディールに関するするツイート数がわずか数ヶ月で100倍にまで増えたほどだ。
https://www.vox.com/energy-and-environment/2018/12/21/18144138/green-new-deal-alexandria-ocasio-cortez

 “AOC”、彼女のツイッター・アカウントからくる愛称がネット上で散見されるようになるのは昨年夏に遡る。
 2018年6月に行われたニューヨーク州第14選挙区予備選挙で、ほとんど注目もされていなかったダークホースのAOCが下院議員を10期務めた現職のジョー・クローリーを破り、晴れて史上最年少で民主党下院議員となった。

 オカシオ-コルテスは、89年にブロンクスに生まれた29才。プエルトリコ系の労働者階級の両親のもとに育ちボストン大学で政治経済を学んだ。卒業後は地元のタコス・レストランでウェイトレスやバーテンダーの職に就くかたわら政治活動を続けた。
 そして2016年の大統領選で熱い旋風を起こしたバーニー・サンダースの主催するSanders Instituteのサポートを受け、民主社会主義の“パダワン”として頭角を現した。

 日本でも左派界隈を中心に、その物怖じしない発言の数々と、民主主義の理想を力強く掲げ為政者に立ち向かう姿勢が称賛されることとなったが、ミュージシャンでもある筆者の目には“ブロンクスのHip Hop姉さん”にも映った。

 1月19日、Women’s March におけるキング牧師を彷彿とさせる演説ビデオが、日本のリベラル左派界隈でも話題となったことは記憶に新しい。
▼ Watch Alexandria Ocasio Cortez’s Inspiring Women’s March Speech | NowThis

 アナキズムをも連想させる黒地に赤文字の背景の前で、漆黒の装いのオカシオ-コルテスが、「誰一人として見捨てないのが民主主義だ」と力強く語るストリート叩き上げの姿に感動を覚える。

 しかし彼女の革新性は、日本のメディアに語られない点にこそその真髄がある。それはグリーン・ニューディール法案の内容に見て取ることができる。GNDは米国の化石燃料に依存した従来型の産業を、環境保護重視の観点から再生可能エネルギーを中心とした産業構造に変えようとする野心的なものとなる。同法案にはスマートなインフラ整備への公共投資、国民皆保険(Medicare for All)や国民総雇用保障(Job Guarunteed Program)を目指す前代未聞のアイデアが内包される。
 さらに、実に7兆ドルから32兆ドル((約770兆円〜約3520兆円)とも推計されるその財源の多くを、政府の「赤字支出」によって賄おうという稀に見る案を示したのだ。

 29才の跳ねっ返り新人議員が提案した、この革新的な法案に全米が騒然としたことは想像に難くないだろう。
https://edition.cnn.com/videos/tv/2019/02/07/alexandria-ocasio-cortez-green-new-deal-q--a-ed-markey-sot-cnngo.cnn
 各所で賛否両論が沸き起こり、3月2日現在でも同法案の実現可能性に関して絶えず議論が続けられている状況となる。

「インフラや福祉、格差是正に赤字国債を発行して、7兆ドル(推計)を支出する」

 誰もが無謀で荒唐無稽に感じたこのGND法案に、現在までに全ての民主党大統領候補と、およそ70名の民主党議員が、さらには敵対する共和党議員までもが賛同している。長く国際政治をウォッチしている人間たちにとっても、“革命”とも言える異常事態が起こっていることを認めるだろう。

 日本のリベラル左派のあいだには、戦前の教訓から長く“赤字国債発行アレルギー”が蔓延していたが、この革命的現象を、いま語らずして民主主義社会のパラダイムシフトを肌に感じることはできないだろう。

 結びに、先日2月27日の米『ローリング・ストーン』誌のインタヴューに「もっとスケールの大きな話をしよう」と、矢沢栄吉ばりに答えたオカシオ-コルテスの発言を引用し、本コラムを終えようと思う。

「Alexandria Ocasio-Cortez Wants the Country to Think Big」

私にとっての最大の課題は、常識の枠を変える(Move the Overton window)ことです。
私は新米ですから、あらゆる方法を使います。議論の枠を変えることが力になります。
もし私の、議員としての時間が4日間しかなかったら、何よりも私は富裕層の最高税率に関する議論を巻き起こします。
   (中略)
かつて、大不況から脱出した方法は何か、それは大規模な公共投資です。
そして、人々が志を高くし、この国の可能性を信じることです。
ちょっとずつ変えてゆこうという了見ではダメです。
私たちにはMoonshot(月ロケット打ち上げ)が必要なのです。
https://www.rollingstone.com/politics/politics-features/alexandria-ocasio-cortez-congress-interview-797214/

Profile

cargocargo
House/EDMプロデューサー。90年代からHIP HOPシーンで活躍したGOKUが'04年にcargoを始動。i-tunesチャートで7週連続1位を記録するなど、シーンを代表する存在となる。映画NANAや東京ガールズコレクション、上海万博・日本館、東京ミュージック花火の音楽も手がけた。

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