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sound cosmology - 耳の冒険

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第1回 FULXUS

松村正人 Dec 05,2009 UP

1 終わりなき日常のフルクサス〈序〉

 フルクサスを語り尽くすためにはゆうに一冊の束のある本を書かなければならないわけで、野田さんも無体なことをいう。私はアートの専門家ではないが、フルクサスは運動のピークを60年代なかばと仮定するとそこから30年ちかく経った94~95年にはワタリウム美術館で、04年にもうらわ美術館で同名の『フルクサス展』が開催され、コレクションをもつギャラリーや地方の美術館でもフルクサスは定期的に回顧されてきて、現在も水戸芸術館でヨーゼフ・ボイス(をフルクサスと見なすかどうかには異論もあるだろうけど)の展覧会が来月末まで行われていて、妻の実家が水戸であるので正月をはさんだ里帰りのついでにみることもあるとおもっているが、この20年間のフルクサスにまつわるトピックに興味をひかれ、じっさい足を運びもした。時代はやっぱりいま(だに)フルクサスなのか? 私はそれを考えはじめるまえにフルクサスのはじまりを考えたい。

  フルクサスの中心にはジョージ・マチューナスがいた。彼は1931年、リトアニア人の父とロシア人の母の間にリトアニアのカウスでリトアニア名、ユルギス・マチウーナスとして生まれたが、一家はソ連軍の侵攻を逃れドイツへ、その後父の職を求めアメリカに渡った。ディアスポラのようにして居着いたアメリカで彼はグラフィック、建築と音楽、美術史を学び、美術史を研究する傍ら、有史以来の芸術様式や学派、人物名を図解したチャートの制作をこころみた。マチューナスは50年代のポロックやマーク・ロスコらの抽象表現主義、つづくラウシェンバーグやジャスパー・ジョーンズらのネオ・ダダの活動に罹患したように、運動をたちあげアート業界への参入を考え、61年にそれから半世紀が経とうとするいまでも私たちをなにかと幻惑&困惑させるひとつの言葉を見いだした。

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