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interview with Takkyu Ishino

interview with Takkyu Ishino

2010年のテクノ・クルージング

――石野卓球、ロング・インタヴュー

野田 努    Aug 05,2010 UP

石野卓球 / CRUISE
Ki/oon

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 石野卓球は、控えめなスタンスを貫いている。地味な卓球は、以前にも経験している。あれはたしかに『ベルリン・トラックス』の頃だったか。
 『クルーズ』は、しかしあの頃の張りつめた緊張感ともまた違う。控えめだが、音の向こうにリラックスした卓球が見える。そしてその佇まいからは無垢なものを感じる。それは彼と出会ってそれなりに深く話したことがある人なら知っている彼の音楽への純粋な気持ちである。サーヴィス精神を忘れないこの男は、そうした彼の本性を包み隠すようなトリックも楽しんできているが、『クルーズ』にはそれがない。『スロッビング・ディスコ・キャット』のギャグもないし、『タイトル』の深い密室感もない。毒舌も女装もなければ歌もない。素っ裸のテクノ・ダンス・ミュージックが展開されている。
 アルバムの最初に聴こえてくるシンプルだがヌケの良い4/4のキックの音に石野卓球のテクノ魂を感じる。1曲目の"Feb4"は彼がつねづね好んでいるトライバル・ビートとミニマリズムのコンビネーションで、ウォーミングアップとしては申し分のない心地よさを展開する。巻上公一の声とブラスの音をフックにした4曲目の"Hukkle"では、ヘヴィなバスドラとバウンドするベースラインが曲をドライヴさせていく。"Spring Divide"や"SpinOut"は力強いダンストラックで、いてもたってもいられなくなった石野卓球は"Arek"でエレクトロニックな陶酔に浸ろうとする。最後の"Y.H.F."はメロディアスで甘くディープなトラックだが、なんともさりげなく終わっていく。
 石野卓球はポップとダンスフロアの往復者だ。そして本人はそう言われることを嫌がるだろうが、この国でもっとも影響力を発揮してきたテクノ・ミュージシャンである。石野卓球が新作について、そしてカガミとラヴ・パレードについて、ヴァイナルとデジタルについて......話してくれた。

どっちにしろ売れないんだったら楽しんで作ろうって。戦略的なことを考えたところであんま意味がないっていうかさ。あとねー。値段を下げたかったんだよね。だからミニ・アルバムということにしたんだけど、フル・アルバムだと3千円を超しちゃうからね。

完全なソロとしては6年ぶりになるんだね。

石野:そう。ただ、川辺(ヒロシ)とやってたインクもあったから、そんなに空いている気持ちはないんだけど、なんかね......6年も空いたちゃったね。

まさに「石野卓球が帰ってきた」という音だと思ったんだけど、自分のなかで課したテーマはある?

石野:ポップスでもなく、DJツールにもなり過ぎない。そういうのあんまやってなかったからさ。電気ではポップスを追求していたから、DJツールをやるって感じでもないじゃん、メジャーから出しているわけだし。

作りはじめたのっていつ?

石野:6月ぐらい。時間が空いたときにスケッチみたいなのはその前から作っていたんだけど、方向が定まって、ちゃんと作業したのが実質、1ヶ月弱ぐらいかな。

方向性に関しての迷いはなかった? やろうと思えば歌モノだってできちゃうわけだし。

石野:それがけっこうあった。どこに照準を合わせるのかがなかなかわからなくて。作業はしているんだけど、落としどころがわからなくて足踏み状態というかさ。煮詰まることはなかったけどね。ひとりでやってるから、煮詰まったら止めればいいじゃん(笑)。たしかに歌モノというか、ポップスをまたやってみるというオプションもあったんだけど、それをやりたいとは思わなかったんだよね。うん、最初からポップスという考えはなかったな。かといって、完全なDJツールを作るって感じでもないから、自ずとこうなったというか。

しばらく電気グルーヴをやっていたしね。

石野:電気を長くやっていたから、そうじゃないものをすごくやりたいなというのはあったね。どっちにしても売れないからさ。

ハハハハ。

石野:いや、ホントに。冗談じゃなくて。俺に限ったことじゃないよ。

業界全体のことだよね。

石野:そう。それで久しぶりにやるからといって、ゲスト・ヴォーカルを入れて派手にやることも考えてなかったからさ、どっちにしろ売れないんだったら楽しんで作ろうって。戦略的なことを考えたところであんま意味がないっていうかさ。

ハハハハ。でもホントに、ケレンミのない作品だなあと思いましたよ。地味で無垢な作品というか。

石野:あとねー。値段を下げたかったんだよね。だからミニ・アルバムということにしたんだけど、フル・アルバムだと3千円を超しちゃうからね。

そうだね。

石野:いま、アルバム1枚3千円って高いでしょ。あ、野田兄、いまも(アルバム)買うの?

相変わらず、かなりの枚数買ってるよ。

石野:そうか、サンプルもらえないヤツも多いもんね。それでも輸入盤が3千円超えることはないじゃん。

2500円以内で済むよね。

石野:高くても2500円でしょ。安いのになると1600円ぐらいじゃん。いま無料ダウンロードで済ませちゃう人が確実にいっぱいいて、そういう人たちは最初から買う気がないからいいんだけど、買おうと思ってたけど、高いから違法ダウンロードにしちゃうっていう人たちもいるから、そこはちょっともったいないなっていうかさ。

値段で判断されちゃうんだったら、たしかにね。

石野:それを考えると、それぐらいの値段でやるのがいいかなと思って、それで、"ミニ・アルバム"にすると値段がこれぐらい(2300円)に抑えられるっていうさ。

じゃあ、ミニ・アルバムというフォーマットに落ち着いたのは、フル・アルバムの予告という意味じゃなく、単純に価格設定の問題なのね。

石野:あともうひとつは、尺的にもこれぐらいがちょうどいいなっていう。フル・アルバムという考えもまったくなかったわけじゃないのね。でも、それをやったらいろんな要素を入れ込もうとしちゃうと思うんだ。それはやりたくなかったんだよね。BPMをある程度近いものにしちゃうとかさ、フル・アルバムでそれは難しいと思うからさ。あと、ミニ・アルバムといっても尺で40分以上あるんだけど、それぐらいがちょうど集中して聴けるんじゃない?

まあね。

石野:フル・アルバムでも短いのあるじゃん。ラモーンズとかさ。ラモーンズと比べるのもどうかと思うけど(笑)。

まあね(笑)。つまらない質問なんだけど、作っている作業自体はいまでもっていう、今回も純粋に楽しいわけでしょ。自分が楽しめているわけだよね?

石野:もちろん。自分が楽しめてないときできたものって、結局は作品自体も楽しくないからさ。

久しぶりに聴くから余計そう感じるのかもしれないけど、たとえば1曲目の"Feb4"とか、4曲目の巻上公一さんの声をサンプリングした"Hukkle"とか、うまく言えないんだけど、「石野らしいな」っていうか、やりたいことをやっている無垢な喜びみたいなものをすごく感じたんだよね。

石野:それはある。いままでやりたくないことを無理矢理やっていたわけじゃないんだけど、縛りがあって作るものが多かったから。それはそれで嫌いじゃないんだけど。人に提供するものとか、そういうのが続いていたから......で、ソロを作るってなって、「何にも縛りがないですよ」って言われて、「さて、どうしよう?」ってなってさ(笑)。マゾヒスティックな悩みというか、「誰か縛って」って感じでさ(笑)。

ハハハハ。

石野:ま、それもやっていくうちに馴染んでくるっていうかさ。

文:野田 努(2010年8月05日)

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