MOST READ

  1. Dirty Projectors - Dirty Projectors (review)
  2. interview with Thundercat「ファンタジー」とソウル、その調和 (interviews)
  3. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓) (news)
  4. interview with Shota Shimizu10年目の情熱 (interviews)
  5. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  6. Campanella - PEASTA (review)
  7. interview with Jeff Mills100年先の人びとへ (interviews)
  8. TAKKYU ISHINO×WESTBAM──STERNE15年目の夜、石野卓球×ウエストバム (news)
  9. Clap! Clap! - A Thousant Skies (review)
  10. interview with Bo Ningen - UK発ジャップ・ロック、その正体とは! (interviews)
  11. Gabriel Garzón-Montano - Jardín (review)
  12. Kan Sano――カン・サノ、全国ツアー決定! ツアー会場では数量限定のカセットも発売 (news)
  13. Arca──アルカが〈XL〉と契約、4月にニュー・アルバムをリリース、新曲も公開 (news)
  14. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  15. MAJOR FORCE 25th ANNIVERSARY - メジャー・フォース25周年にリスペクトを (news)
  16. interview with Dirty Projecters - コンテンポラリー・ポップの知性 (interviews)
  17. Solange - A Seat At The Table (review)
  18. 『すべすべの秘法』The Secret to My Silky Skin (review)
  19. interview with Sampha心を焦がす新世代ソウル (interviews)
  20. Visible Cloaks - Reassemblage (review)

Home >  Reviews >  DVD+BD Reviews > 電気グルーヴ- 野球ディスコDVD

DVD+BD Reviews

電気グルーヴ

電気グルーヴ

野球ディスコDVD

Ki/oon

Amazon

渡辺健吾   Jan 07,2010 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 さて、2作目の『野球ディスコ』には、特典として94年末に横浜アリーナで行われた『Dragon』発表後のステージがプラスされている。最初、アナログのジャケを頭にかぶって卓球がステージに出てくるこのライヴ、何かと思ったらつるっぱけになっている(そういえば、その直後の年越しパーティにもハゲ頭で現れたのを思い出した)。表現の基本路線は変わっていないが、電気グルーヴのワンマン・ライヴ史上最大の会場である横アリなのに、このルックス。そして挙動は少し落ち着きながらも相変わらずせわしなく手を浮遊させて踊りまくる。この映像では"新幹線"くらいでしか確認できないが、それまでマイクを握ってステージ最前列にいた卓球が、後ろで卓をいじりはじめたというのは結構大きな変化だ。また、ステージ後方には巨大スクリーンが設置され、田中秀幸のVJが映し出されている。巨大な鉄のオブジェにも見えるトラス含め、5年後に同会場でスタートする〈WIRE〉と共通するエレメントはすでにほぼそこにあるのだが、何かが決定的に違っている。後半の怒濤の瀧タイムで、ミカン・しめ飾り・海老・お年玉などが貼りついた"お正月"衣装で客を煽る瀧と隅の方でピンライトの下黙々と踊りつづける卓球の姿を捉えたショットがすごい。普通だったら、こんな分裂したグループ、続くわけがないしこの頃に方向を見失っていてもおかしくない。だが、その分裂すらも個性に転化するパワーが彼らにはあったのだということだろう。

 続く本編、97年の赤坂ブリッツでのステージを収めた映像は、本人たちもコメンタリーで自画自賛しているように、相当にかっこいい。そして、ここでもまたそれまでとの隔絶が如実に映像として立ちあらわれる。それをもたらしたクラブでの遊びがあらゆる部分に活かされていて、あれやこれやの細かい解説は喜々としてコメンタリーでも語られている。まりんはもうあまりシンセは弾かず、ステージ上に設置されたミキサーやターンテーブルを操り、卓球もマイクはたまに握るものの、その注意の大半は卓のコントロールに費やされている。曲はDJミックスのようにすべてつながっていて、ある曲のパーツがまったく別の部分で鳴らされたりもしている。そして当時のクラブの現場で使われていたVestaxのミキサーやアイソレーターが存分に活躍し、レーザーが交錯する一方でステージは暗いというそれまでのコンサートの様相から完全にクラブ仕様に移行。客席もスタンディングで、リキッド・ルームやイエローで遊んでいた層もかなり混ざっているようだ。そもそも、このツアーの前に発表された出世作でありまりんの残した最後の作品『A』の素晴らしさがほとんどそのままステージに持ち込まれているこのライヴ、つまらないはずもなく、それまでの暴走や過剰を最高の演出としていた彼らとは、やはり何かが決定的に違う。そして、このとき、30歳という彼ら。いやぁ、才能というのは恐ろしい。"猫夏"~"Dinosaour Tank"~"あすなろサンシャイン"という奇跡的な流れもレコードに忠実なアレンジなのにゾクッと来るようなかっこよさだし、例の卓球ソロの代表作のひとつ、PS『攻殻機動隊』サントラ曲にそっくりなバックトラックを使った"CATV"の変貌ぶりにも驚かされる。あれだけ売れたのに、その最中に"Shangri-La"をやってないというのも電気らしくて、最高。(こちらへ続く)

渡辺健吾