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『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』

『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』

2015/日本/115分予定/カラー/DCP5.1ch
監督:大根仁
キャスト:電気グルーヴ(石野卓球、ピエール瀧)ほか
製作:ソニー・ミュージックアーティスツ
制作:オフィスクレッシェンド
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
http://www.denkigroove.com/themovie/

渡辺健吾   Dec 07,2015 UP

 『トレインスポッティング』や『スラム・ドッグ・ミリオネア』のダニー・ボイルが監督した新作映画『スティーヴ・ジョブズ』をロンドンで観た。脚本は、『ソーシャル・ネットワーク』『マネーボール』のアーロン・ソーキン。ソーキンお得意の、しゃべりまくる個性的な登場人物たちの言葉の応酬でドラマを展開する奇妙なセリフ劇である。ダニー・ボイルだし、iTunesやiPodを発明したジョブズを主人公にした映画なのだから、音楽的なのかと思ったら、まったくそんなことはない。皆が知ってるジョブズの功績、iPhoneやiTunes、iPadなどは影も形もないし、U2のボノみたいなミュージシャンが彼の素晴らしさを讃えるわけでもない。ただ、ジョブズのカリスマ性を炙りだすのに、彼にとってのステージ、“発表会”という場とその舞台裏にフォーカスしたという意味では、十分にライヴ的な映画とは言えるかも。

 批評家のウケは極上だったこの映画、あまりにコアなところを狙いすぎたのか、すでに公開された海外各国での興行成績はふるわなかったようだ。さて、電気グルーヴの映画のレヴューをするのに、なぜこんなに長々と別の映画のことを書いたかというと、異端の存在でありながら26年も続いてきた“電気グルーヴの歴史”を総括する映画なんてものこそが、こういう罠に簡単にはまりそうだからだ。だってあの卓球と瀧が、ストレートな回顧ものを撮らせるわけがないと思うじゃない。監督もテレビ/映像業界でサブカルのご意見番的に有名で、なおかつかなりの電気ファンを自認する大根仁だというし。それこそ、ファンのオタク度を測るようなレア映像や特殊なシーンばかりをつなげたり、主だったできごとはすでに皆当然知っているものとして省いてしまったりネタとして処理するというような作りだってありえたと思う。もしくは、ダニー・ボイルのジョブズ映画に倣うなら、野村ツアー以前(つまり、『Vitamin』以前)のライヴ3回のバックステージでの様子や会話を捉えた楽屋裏映像だけで構成しちゃう、みたいなことも。
 いや、そういう“マニアの皆さん大歓喜”な映像がまったく入ってないというわけではないんだけど、この映画がすげーまっとうに作られていることに最初はちょっと面食らって、でもどんどん自分もその映像の一部になっていくような感覚を得て、最後には「うわ〜、電気グルーヴってやっぱりものすごい存在だわ。この人たちとこんなに長い歴史の時間を共有できてホント良かった」みたいな感慨を抱いた。仕事で電気に関わったようなひとたちはもちろん、劇場にこの作品を見に行こうと思っちゃうようなひとも皆、それぞれの思い出のフラッシュバックとともに、そういう感覚に包まれるんじゃないかと思う。

 初めて世に出るという89年8月の大阪でのデビュー・ライヴの映像から、ほぼ時系列にそって電気グルーヴの歴史をなぞりつつ、国内外の17人の関係者の証言を随所に折り込むことで、内と外から電気グルーヴとは何か? をすげーまっとうに炙りだす。昨年の〈Fuji Rock Festival ‘14〉グリーンステージでのライヴは、今回の映画で主要なステージのフッテージとしてたくさん使われているんだけど、WOWOWで放送された同時期のソロ・ライヴの様子を収録した番組を見た人だったら、類似性と大きな違いに気付くはず。〈塗糞祭〉のライヴでは、CMJKや砂原良徳、DJ TASAKA、スチャダラパーといったゲスト陣にインタヴューして、やはり電気グルーヴのことを語らせていた。今回も同じようなメンツが話している。でも、やっぱり今回の方が取材に時間をかけているだろうし、楽屋コメントよりもずっと冷静に、いきなり内臓に切り込んでくるみたいな鋭さが見られる。もっと重要なのは、(僕らはよく知ってるけど)普段はほとんど表にでてこない、マネージャーの道下さん、元所属レーベル社長の中山さん、リキッドルームの山根さん、ROCKIN’ON JAPANの山崎さんといったひとたちが喋っていることだ。油断しているとすぐ足下をすくわれ毒を盛られるという、いたずら好きで辛辣で、斜に構えたイメージの電気グルーヴではなく、ある意味ものすごい愛されキャラとしての電気の本質が彼らの証言によってだんだんと見えてくるのが、いい。
 歴史的な映像の大半は、VHSテープに残っていたようなざらざらのローレゾ映像なわけで、新撮のインタヴューや最新のライヴのきれいな映像は、否応なく目立ってしまう。そんな風に暗闇のでかいスクリーンに旧知の連中の顔が大写しになって次々出てくると、「うわぁみんな老けたなぁ」と思うのは当たり前だ。でも、不思議なことに映画が進むにしたがって、どんどんその老けたおっさんたちが、卓球と瀧だけじゃなくて、彼らと一緒に歴史を作ったきたCMJKやまりんやTASAKAたちみんなが、超かっこいいじゃんという印象に変わってくる。いやいや、ほんと、マジだって。そういう効果をしっかりだすために、今現在リアルにかっこいいしルックスだけでモテそうな関係者一番の若手、agraphこと牛尾くんを出さなかったじゃないかなとか勘ぐりたくなるくらい。

 もっとディテールのこと(特にKAGAMIへの言及のことなんか)を本当は話したいんだけど、まだ公開前だし、それはこれから観る皆さんの楽しみをスポイルしちゃうと思うので、やめておきます。どっかのパーティーのバー・カウンターとかで、誰かと語りあいたいわ。
 でも、実はこの映画の一番のターゲットって、電気グルーヴのことをあまりよく知らない人じゃないかなとも思うんだよね。テレビや映画に瀧が出てるの見て「へぇ、この人ミュージシャンなんだ」って興味持ったり、偶然フェスでライヴを体験してとか、そういう入り口でいきなりこの映画観たら、最高だろうなぁ。僕も、自分の子供がもう少し大きくなったら絶対これ見せようと思ったし!

渡辺健吾