「Low」と一致するもの

interview with Chip Wickham - ele-king

 2024年のフジロック・フェスティヴァルでオーディエンスをおおいに湧かせたサックス/フルート奏者のチップ・ウィッカムが3度目の来日を果たした。筆者は渋谷クアトロでのライヴを観たが、ファラオ・サンダースなどのスピリチュアル・ジャズをクラブ・ミュージック以降の感覚でアップデートしたような演奏は、ジャズとしてはもちろん、ダンス・ミュージックとしても秀でたものがあった。実際、オーディエンスのなかには踊っている者も多く、チップらの紡ぐグルーヴが身体に直に訴えかけてくるものだと証明する形となった。スタンディングのハコでライヴをおこなったのは大正解だったというべきだろう。特に目を惹いたのが、シネマティック・オーケストラにも参加しているルーク・フラワーズのドラムである。アンサンブルを立体的に見せるの長けた彼のプレイは、視覚的にもみどころたっぷりで、ドラム・ソロに目が釘付けになってしまったのは、筆者だけではあるまい。

 そんなチップ・ウィッカムのニュー・アルバム『The Eternal Now』は、現在のUKジャズ隆盛の一翼を担っている〈ゴンドワナ・レコーズ〉からのリリース。〈ゴンドワナ〉はマンチェスターに拠点を置き、ゴーゴー・ペンギン、ママル・ハンズ、ポルティコ・カルテットらの名作を発売しているレーベルである。新作では同レーベルの責任者であり、チップの親友のマシュー・ハルソールが共同プロデューサーを担当。ベテランとは思えない鮮度の高いアルバムに仕上げている。特に注目すべきは、ヴォーカリストが参加していることと、ストリングスが導入されていることだろう。チップがこれまでとは違う試みに挑戦したかったと言うように、風雪に耐えうる強度を備えた、普遍的な作風が特徴だ。おそらくチップは今回、ライヴと音源は別ものとして考えて制作に打ち込んだのではないだろうか。ライヴで再現不可能なことも音源に封じ込めることで、表現の幅が広がり、音源ならではのトライアルが多数可能になっている。そう言えるのではないだろうか。クアトロのライヴでの翌々日、チップに話を訊いた。

最近はストリーミングで次々に音楽を配信していかなきゃいけないというプレッシャーが音楽家にもあると思うけれど、それとは真逆の考え方で、自分たちで好きなだけ時間を取って創作に集中したんです。

一昨日(11月16日)の渋谷クアトロでのライヴ、とても良かったです。若いお客さんが多くて、皆、身体を揺らしたり踊りながら聴いている光景が印象的でした。ジャズ・ミュージシャンが来日すると、BLUE NOTE TOKYOやCOTTON CLUBなど、座って食事を楽しみながらライヴを観るクラブで演奏することが多いですが、あなたたちのライヴにはスタンディングが合っていたと思います。クアトロを選んだのはあなたの選択ですか?

チップ・ウィッカム(以下、チップ):そう、私がスタンディングのハコでやろうと決めました。若い人はライヴ・ハウスで踊りながら聴くのが好きですよね。イギリスでも若いジャズ・ファンが比較的多いので、クアトロみたいなハコでやることが多いです。ただ、ヨーロッパだと、もう少し大きくてフォーマルなコンサート会場でやることもありますし、そこは柔軟に対応してますけどね。BLUE NOTEのようなクラブでも、クアトロのようなライヴ・ハウスでも、分け隔てなく演奏できるとは思っています。

今年の9月5日に新作『ジ・エターナル・ナウ』がリリースされました。このアルバムのコンセプトやテーマについて教えてもらえますか?

チップ:冒険してみたかったというか、サウンド的にこれまでの作品からより拡張したものをつくりたいと思いました。なかでも大きかったのは、長年の友だちで〈ゴンドワナ〉のヘッドでもあるマシュー・ハルソールに共同プロデューサーで入ってもらったこと。今回は、彼と一緒にちょっと新しいことをやってみようという話になったんです。前作の『Cloud 10』も反響が良くて成功した実感があったんですけれども、そこからさらに可能性を拡げて、新たな領域、新たなサウンドを求めたいなと思いながら、マシューと親密に作業しました。

マシューとの付き合いは長いんですよね?

チップ:はい。彼が〈ゴンドワナ・レコーズ〉に入るずっと前からの知り合いなんです。〈ゴンドワナ〉の人気が上昇している頃、私はUKのシーンから離れてスペインにいたんですけれども、彼がスペインに遊びに来たら一緒に演奏したり、密な付き合いを続けてきました。だから、ずっと交流はあったんです。 私が〈Lovemonk〉というレーベルにいたときも、マシューがゴンドワナ・オーケストラという自身のプロジェクトを始めて、私もそこで演奏するようになりました。元々お互いの音楽に対するセンスとか、好きなものが同じなので、ずっと仲がいい。私が〈ゴンドワナ〉に入ることになったときも、「レーベルの一員になることで、君との友情関係を壊したくない」って言われたほどで。要するに、「ビジネス・パートナーという関係になってしまうのはどうなの? 友だちと仕事をするのって難しいじゃない?」っていうことだったんです。

そうなると、〈ゴンドワナ〉からリリースすることでのプレッシャーはなかったですか?

チップ:正直、結構ありましたね。それで、2022年に入門編じゃないけど、「Astral Travelling」っていうロニー・リストン・スミスの曲をカヴァーしたEPを出して、それに対する反応が良くて安心したんです。「これならイケるんじゃない?」って思ったというか。ちなみに驚くべきことに、ロニー本人から私に電話がかかってきたことがあったんです。共通の友だちがいるからなんですけど、すごくびっくりして緊張しました。ロニーが低い声で「最高だったよ、君のヴァージョン。でもコードがひとつ間違っているよ」みたいな指摘を受けて。ロニーが電話越しでピアノを弾きながら指摘してくれたんです。それ以降も2~3度、電話をする機会があって、音楽や人生の話をたくさんしましたね。本当に素晴らしい人であり、尊敬すべきミュージシャンだと思います。

〈ゴンドワナ〉からはゴーゴー・ペンギンもリリースしていますね。彼らはあなたにとってどんな存在ですか。音楽的なスタイルは違うけれど、同じレーベルに所属している。逆に言えば、それだけ〈ゴンドワナ〉というレーベルには、同じジャズ系アクトでも振れ幅があると言えるのでは?

チップ:その通りだと思いますね。ゴーゴー・ペンギンはクラシック的な要素や、エレクトロニック・ベースな部分がある。私はもう少しスピリチュアル・ジャズの領域にいるので、違うといえば違うと思います。でも、同じレーベルにいるのがおもしろい。〈ゴンドワナ〉に入ってからは、レーベルの中で自分たちの居場所とか位置づけを探していくのが大事だな、ということを意識するようになりました。

たしかに、スピリチュアル・ジャズの要素は感じますね。ジョン・コルトレーンアリス・コレトレーンファラオ・サンダースなどもフェイヴァリットでしょうか?

チップ:もちろんです。私にとって重要なルーツのひとつだと思います。

今回、ミックスをこれまでと違う人に託していますよね? 

チップ:グレッグ・フリーマンという〈ゴンドワナ〉の他のアーティストのミックスも手がけている人なんです。今回、アートワークもレーベルのヴィジュアル面を担当しているダニエル・ハールサブという人が担当してくれましたし。その意味で、今回のアルバムはレーベル・カラーに合わせてプロデュースされたアルバムになったと思いますね。ヴィジュアルもサウンドも一貫性のあるものになっているというか。自分がどう〈ゴンドワナ〉にフィットできるかを考えるようになったし、その結果、レーベル・カラーに沿いつつ、自分たちらしさも出せるような改良の仕方ができたと思っています。

根無し草だからこそ、どんなジャンルや地域の音楽にも気軽にアクセスできるんだと思います。

さきほど、これまでと違うことをやってみたかったとおっしゃいましたが、具体的にはヴォーカルやストリングスの導入が目立ちますね。

チップ:たしかにヴォーカルとストリングスは今回新しい要素として取り入れたものです。“Nana Black” っていう曲には Peach さんという素敵な女性ヴォーカリストを迎えているんですけど、7曲目の “Falling Deep” っていう曲にもラララ~というヴォーカルが入っていて、これは自分の娘が歌っている。彼女自身がアーティストであり、シンガー・ソングライターでもあるので。私が制作中の音源を「聴いてみる? 」と聴かせたら、その2日後にこの曲に合ったヴォーカル・テイクを何個も作ってくれて。アドリブも入っていたんですよ(笑)。親として誇りに思います。

ストリングスの導入に際してはどのような配慮をされましたか?

チップ:ストリングスのアレンジメントで気を付けたのは、レトロな感じではなく、フレッシュでモダンで洗練された響きにしようということ。私は弦楽器の音が大好きで、デヴィッド・アクセルロッドとかジョン・ハリソンなんかもよく聴くんですけど、今回は弦楽器の音が過剰にならないようにしました。余計な音を削ぎ落として本当にいいものだけを吟味して入れていったんです。

これまでと制作の仕方で変わったところはありますか?

チップ:今回、あまり時間に左右されずに制作に臨むことを心がけたんです。アルバムの制作においてクリエイティヴィティを優先するという観点から、どれだけ時間をかけても構わないからいいアルバムを作ろうと。もちろん予算はかなりかかったけれど、ビジネスとしての音楽よりもいいものを作ることを重視したんです。最近はストリーミングで次々に音楽を配信していかなきゃいけないというプレッシャーが音楽家にもあると思うけれど、それとは真逆の考え方で、自分たちで好きなだけ時間を取って創作に集中したんです。リズム隊は実力あるふたりだけれど、ベースもドラムもたくさんテイクを重ねて、そのなかから最良だと思えるものを選び抜きました。皆センスが良く、スキルのあるミュージシャンばかりだから、最高のクオリティの作品になったと自負しています。あとは永遠に残る作品をつくりたかったですね。

ああ、もしかしてそれがアルバム・タイトルの『The Eternal Now』と関係しているんでしょうか?

チップ:まさにそういうことです。たとえ未来に聴かれたとしても、「now」と感じられるようなもの。『The Eternal Now』というのは直訳すると「永遠のいま」という意味で、永遠に聴き続けてもらえるもの、というのが念頭にありました。

ドラマーがシネマティック・オーケストラにも参加しているルーク・フラワーズですね。彼はじつに巧みなプレイで、ライヴでもアンサンブルの軸となっているのが印象的でした。

チップ:そう、ライヴで観ると「手が何本あるんだ? タコなんじゃないの?」と思いますよね(笑)。彼の参加もマシューのおかげで実現したんです。マシュー自身もシネマティック・オーケストラのファンであるので。ライヴでは激しい演奏する方なんですけれども、レコーディング・スタジオではすごく集中をして、熟考の上でああいう演奏をするんです。スタジオとライヴの雰囲気がかなり違うというか。

今回のアルバム、スピリチュアル・ジャズもそうなんですが、モード・ジャズの伝統を継いでいるとも思いました。

チップ:その通りです。というのも、もともとジャズが好きじゃないけれどダンス・ミュージックとかエレクトロニック・ミュージックを愛聴するリスナーも、モーダルなジャズは入りやすいし、魅力的に感じる部分があると思うんですよね。僕自身、マイルス・デイヴィスやジョン・ヘンダーソンなどのモーダルなプレイが特徴のアルバムが大好きなので、自然とそういうものを採り入れることになったと思います。

チップさんはUKやスペインや中東など複数の拠点を持っていて、音楽的にも多ジャンルを股にかけていますよね。いまはジャズをやっているけれど、ザ・ファーサイドやザ・ニュー・マスター・サウンズ、ナイトメアズ・オン・ワックスなど、ヒップホップからファンク、トリップ・ホップまでに関わっている。根無し草(=rootless)みたいな感覚があるのかなと思ったんですけど。

チップ:そうだと思います。というか、根無し草だからこそ、どんなジャンルや地域の音楽にも気軽にアクセスできるんだと思います。最近の若い人の音楽の聴き方もそうですよね。ストリーミングの発達も手伝って、いろいろなジャンルにアクセスする回路があって、実際にいろいろなタイプの音楽を聴いている。それと同じことを私もミュージシャンとしてやっているんだと思います。もちろん、なんでもかんでも採り入れればいいとは思わない。腕のいいシェフのように、いい素材だけを集めておいしい料理をつくるのが理想だし、大事だと思いますね。

なるほど。それに加えて、あなたの音楽はUKのアシッド・ジャズの系譜にもあるようにも聴こえるんですよね。

チップ:アシッド・ジャズね、すごく聴いてましたよ。United Future Organizationとか、Kyoto Jazz Massiveも大好きだったし。若く多感な頃に聴いたので、とても素敵だなと思いました。日本とUKのミュージシャンのファンクとかソウルへのアプローチやそのセンスってけっこう近いと思うんですよね。ジャズを中心にいろいろな音楽の要素がブレンドされているところとか、DJ的なセンスが根柢にあるところとか。そうそう、アシッド・ジャズといえば、その黎明期からシーンの中心で活躍してきたラテン・ジャズの重鎮であるスノウボーイが、今作にはコンガとパーカッションで参加しています。

彼はある意味、時代の生き証人ですよね。その他に、ジャイルス・ピーターソンのようなDJが昨今のUKジャズの立役者のひとりでもありますね。彼は昨今また存在感が増してきているように感じます。

チップ:そうそう。彼は素晴らしいDJですし、プレイのなかでいろいろな音楽の要素を採り入れて、自分のものとしてDJで表現している。音楽に対する愛情や造詣も深さも含め、自分と共通性があるんじゃないかなと思いますね。

よくわかりますね、それは。ルートレスであるがゆえの自由さや奔放さが、あなたにもありますものね。

チップ:私もそれなりに人生経験が豊富といいますか、世界中でいろいろな演奏をしてきたので、それも役に立っているのかなと思います。あと、セッション・ミュージシャンですごく腕のいい人を見てきたので、そういう人たちに影響されてきたというのもありますし。サルサもファンクもブラジル音楽も、シンガー・ソングライターもアコースティック・ジャズもUKのポップスも全部好きなので、今回のアルバムにもそうした要素は入っていると思いますね。

DJ Narciso - ele-king

 何年も前なら、音楽のリリースに関しては眠たくなるような、まるで冬眠期間のようだった11月と12月が、いまや「ニンジャ・センバー(Ninja-cember)」なのではないかと、私はますます考えはじめている。ホリデーシーズンがわずか数日後に迫り、北半球の多くが暗い冬の極寒の突風に備えているなか、信じられないようなリリースが次から次へと我々に忍び寄ってきていることが近年ではよくある。
 たとえば昨年の今頃なら、我々は夏のリリースをさえも霞ませるような強力なアルバムに真剣に向き合っていた。デビュー・アルバムを提げたBLACKPINKのROSÉによる『ロージー』やケンドリック・ラマーの『GNX』などだ。そしてこの12月、すでに私はまたしても真剣な昂りを感じている。なぜなら、イギリスのレーベル〈SVBKVLT〉がDJ Narcisoの『Dentro De Mim』(ポルトガル語で「私のなかに」の意)をリリースしたばかりだからだ。彼らはこれをEPだと言っているが、7つの強力なトラックとふたつの素晴らしいリミックスが収録されているいま、それが本当に重要だろうか。

 もし君が、DJ Narcisoがヨーロッパやアフリカで関わっている素晴らしい「バティーダ(Batida)」シーンを追っているなら、こうしたプロデューサーの多くが独自のEPやシングルをリリースしていることを知っているはずだ。DJ Narcisoも、自身のBandcampや他のレーベルから多くの作品を出している(編註:2025年7月にセカンド・アルバム『Capítulo Experimental』を〈Príncipe 〉からリリースしている)。そうなると、「なぜ今回の新しいEPが、彼の他の作品と比べて特別なのか」という疑問が浮かぶだろう。
 その問いにできるだけ率直に答えるなら、このEPはとくに、とにかく「深い」のだ。フォーカスがより研ぎ澄まされている。1曲目の“Segredo”は、通常のダンス・トラックよりもわずかにテンポが遅く、導入部としては控えめだ。普段なら私はこのようなトラックを飛ばしてしまうところだが、この3分間は報われた。ビートが遅いことで、より荒涼とした力強さが許容されていたからだ。この種のアフリカン・ビートのミニマリズムは、まるでシャドーボクシングのようだ。それらがどのように打ち込んでくるのか、常に予見できるわけではない。その引きずるようなビートは、まるでアフリカ版の「Godflesh(イギリスのインダストリアル界の伝説)」を聴いているような気分にさせてくれる。

 各駅停車の“Segredo”が駅に到着した後は、“Pesadelos”で高速列車さながらの全速力へと移る。ここでもまた、意図的な閉所恐怖症を伴う激しいコール・アンド・レスポンスのトンネルが続く。オールドスクールなインダストリアル・ミュージックを愛する人で、ここでのアプローチを気に入らない者は想像できない。DJ Narcisoは、即座に体を揺らす要素に焦点を当てるだけでなく、ビートに対する単純なノイズに安住することもない。彼は、ビートの間にこれほどまでの「無」が存在する、最高のテクノに通じる「間」を求めている。ダンス・ミュージックの最高の楽しみは、しばしばビートそのものではなく、その間にある空間にある。“Pesadelos”は、イギリスのBurialのようなトンネル・ヴィジョンの雰囲気と、より安定したフックを併せ持っている。
 “Agancha”は、私にとってアルバムの中心のように感じられる。ベースの明瞭さ、ノイズ、そして遠くの残響がすべて引き離されて配置されており、大きなアンプの環境で聴けば魔法のように響くことだろう。
 残りのトラックも同様に中毒性がある。クラブやジムに非常に適しており、最後の1拍までダンスへの献身を呼び起こすのにちょうど良いBPMで、ドラムのように正確に刻まれる。多くのプロデューサーが、1曲だけパンチのある曲を作って他のトラックで集中力を欠くのを見てきたが、DJ Narcisoにとってプロデュースとはジムに通うようなものなのだと感じる。
 1日で筋肉は作られない。それゆえに、彼の1年間だけでも膨大なアウトプットがあるのだ。SwimfulとDigita NgecheのKop-Zによるふたつのリミックスも、決して引けを取らないが、確かに本編と同じマニアックなエネルギーはない。幸運なことに、それらは最後に配置されている。7つのオリジナル・トラックがよどみなく流れ、繰り返し聴くことに価値がある資産となっている。願わくは、1時間のミックスも提供してもらえないだろうか。

【編註】

Ninja-cember(ニンジャ・センバー)
「Ninja(忍者)」と「December(12月)」を掛け合わせた造語。忍者が音もなく忍び寄るように、予期せぬタイミングで衝撃的な新作が次々とリリースされる12月の状況のこと。

Batida(バティーダ)
ポルトガルのリスボンを中心に、アフリカ系移民(アンゴラなど)のコミュニティから生まれたダンス・ミュージック。伝統的なアフリカン・リズムと荒々しい電子音との融合を特徴としている。

Godflesh(ゴッドフレッシュ)
1988年に結成されたイギリスのインダストリアル・メタル・バンド。


I am starting to think more and more that November and December which many years ago would be sleepy and more like hibernation time with music releases, is now Ninja-cember. Incredible release after release sneaking up on us while the holiday season is only days away and much of the northern hemisphere is bracing for the frigid blasts of dark winter.

Last year around this time, we were seriously dealing with some heavy hitting albums that even eclipsed summer releases such as Blackpink`s ROSE with her debut album and Kendrick Lamar with GNX. Already now in December, I am getting some serious feels again cause UK label SVBKVLT just released DJ Narciso`s DENTRO DE MIM (Portuguese for “INSIDE OF ME”). They say it`s an ep but with 7 heavy hitting tracks and 2 stellar remixes does it really matter at this point?

Now if you are following the incredible Batida scene that DJ Narciso is a part of in Europe and Africa, then you should know that many of these producers release their own ep`s and singles. DJ Narciso has a plethora of them on his own bandcamp and other labels. Which would lead to the suggestion - why is this new ep special from his other stuff?

Well to answer that as frankly as possible, this ep in particuilar is SO much deeper. The focus much more laser sharp. The first track “SEGREDO” is unassuming as an introduction as it moves slightly slower than usual dance tracks. I normally would skip such a track but the 3 minutes of my time were rewarded as the slower beat

allowed more starkness. The minimalism of these types of African beats is almost like shadow boxing. You can`t always see how they are gonna hit you. The dragging beat seriously makes me feel like I am listening to African GODFLESH (UK industrial legends).

After the local train of “SEGREDO” arrives at the station, it`s full speed ahead on the high speed with “PESADELOS.” Again, a tunnel of call and response intense with its intentional claustrophobia. I can`t imagine anyone who loves old school industrial music not loving the approach here. Besides focus on instant booty movers, DJ Narciso doesn`t rest on simple noise against the beats, he wants the MA (間) of the best techno where

there is so much of nothing between the beats. The best enjoyment of dance music often isn`t the beat but the space in between. “PESADELOS” gives the moody feels of BURIAL UK tunnel vision vibes with a better constant hook.

“Agancha” really feels to me the center of the album. The clarity of bass, noise, and distant echoes all spaced far apart I am sure would sound magical in a larger amp setting.

The rest of the tracks are just as infectious. Very club or gym friendly and tighter than a drum in lock step with just the right BMP to invoke dance devotion to the very last beat. I have heard many a producer make a banging track and then lose focus on other tracks. I get the feeling that producing is like going to the gym for DJ Narciso.

One day doesn`t make a good muscle. Hence his large output just in one year. The 2 remixes by Swimful and Digita Ngeche`s Kop-Z aren`t shabby either though for sure they don`t have the same manic energy. Luckily they are at the end. Seven original tracks flow effortlessly making repeated listenings a valuable asset. Could we get an hour mix, perhaps?

The Bug vs Ghost Dubs - ele-king

 UKデジタル・ニュールーツ・レゲエのステッパーの「速さ」でもって、コンラッド・パック~DJゴンズらがダブ・テクノの新たなスタイルを切り拓いたとすれば、ゴースト・ダブスは、2024年リリースの『Damaged』で、サウンドシステム体験に由来するダブのヘヴィネスをある種の「遅さ」でもって表現し、さらなる「重み」を引き出したことでダブ・テクノのまた別の新たな道を作り出したと言えるのではないだろうか(どちらもUKデジタル・ニュールーツのサウンドシステムにその着想のルーツがあるのが共通しているとも言える)。本作はゴースト・ダブスが、〈Pressure〉のドン、ケヴィン・マーティンことザ・バグとともに、その「重さ」に対する過剰なオブセッションをさらに追究した作品と言えるだろう。もちろんサウンドの「重さ」は、長年のケヴィン・マーティンの音楽表現の核となるサウンド・コンセプトでもある。

 ゴースト・ダブスはドイツはレーバウ生まれ。現在はドイツの南西部シュトゥットガルトを拠点に活動するマイケル・フィードラーによるプロジェクト。2000年代中頃からダブ・ダウンテンポな「トーキョー・タワー」なる名義で活動をしているようだが、おそらくゴースト・ダブスへの直接の関連としては、ジャー・シュルツ名義での活動が挙げられるだろう。同じくドイツのダブ・レーベル〈Basscomesaveme〉にて、2018年よりリリースし、2枚の『Dub Over Science』というシリーズがある。当レーベルは比較的UKデジタル・ニュールーツ的なサウンドシステムに根ざしたダブに軸足がありながら、べーチャン/リズム&サウンド由来のミニマル・ダブ的なサウンドの影響も感じさせるのが特徴で、ジャー・シュルツもまさにそうしたサウンドと言えるだろう。ニュールーツ・ステッパー的なリズムをピッチダウンすることで得ることができる「重さ」と、かのジャンルのシンフォニックな要素を排除し、テクスチャー的にはリズム&サウンド的なミニマル・ダブなサウンド感を取り入れている。そしてゴースト・ダブス名義は、ジャー・シュルツ名義の作品をさらにスクリューし、さらにベース音以外をストリップダウン、まさにその「重さ」のみを追求。すなわちサウドシステムでのあの低音体験以外のほとんどの音楽的要素を、名義が示すように「不在」にしてしまった、そんなサウンドを展開している。しかし、恐らくサウンドシステムの経験者ほど、逆説的にその「不在」によって、生々しい現地での圧倒的な空間を埋め尽くすベース体験を思い起こす、そんな作品だった。

 一方、ここ数年、ザ・バグの方は2023年より「The Machine」というシリーズで、同〈Pressure〉より作品をリリースしており、Bandcampでは自身の解説として「Slower, lower, hypnotic and basically dirty as f-ck/より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」と言い、一時期のダンスホール・スタイルをスクリューしたような、インダストリアなノイズにまみれたダブのシリーズをリリースしている。ちなみに〈Pressure〉はレーベル屋号でもあるが、自身が主宰するサウンドシステム・パーティの名前でもある(今回のジャケットもそのシステムのスタック・スタイルとも)。こうした音楽性の追求の下でジャー・シュルツのサウンドと共鳴し、ゴースト・ダブスの音源をリリース、そして今回のスプリット・アルバムへと結実したことは想像に容易い。

 少々本筋とはズレるが、ザ・バグことケヴィン・マーティンと言えば、もちろん数少ないベリアルとのコラボレーターでもあり、2003年の〈Rephlex〉からの早すぎたテクノ・ダンスホール・アルバム『Pressure』(ちなみにこちらはセカンドで、同名義でのデビューは最近スペクターの再発やらなにやら注目が集まりそうなNYの「イルビエント」レーベル〈WordSound〉から)のリリースなどその先鋭的なサウンドは後々驚かされることばかりでもある。またこれまでのコラボレーターや〈Pressure〉からのリリースの人選なども一癖も二癖もあるが、そのラインナップにUKのグライムMCからジャマイカン・ディージェイ、果てはインダストリアル・メタル方面からのJKフレッシュ(ゴッドフィッシュ/ナパーム・デス)、ストーナー・ロック方面のアル・シスネス(スリープ)、さらにベリアルを列べられるのは彼ぐらいのものだろう(この交点に彼の音楽性の核があるとも)。また〈Mo' Wax〉からの『Now Thing』(2001年)と、その続篇として2020年代のテクノ/ベース・ミュージック界隈からのダンスホール再評価として話題となった『Now Thing 2』(2021年)もあったが、その間を中継するコンピとしてケヴィンが選曲を半分担当した〈Soul Jazz〉からの、当時のベース・ミュージック的な目線でダンスホールを捉えた2011年のコンピ『Invasion Of The Mysteron Killer Sounds』も忘れてはならない(1990年代、〈Virgin〉のアンビエント・シリーズからリリースされた、彼がコンパイルした『Macro Dub』も、トリップホップやジャングルなどダンス・ミュージックのダブを横断するまさに『DUB入門』的には名盤だ)。と、なにが書きたかったかというと、そのセンスは先鋭的で、彼のやることには、あとあと「アレって早かった」と思うことがなにかと多い。おそらく本作も新たな文脈を作り出すのではないか、そんなことも考えてしまう。

 と、話は戻るがそんなザ・バグがゴースト・ダブスとともに今回『Implosion』と名付けたスプリット・アルバムは、さらに「より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」をこれまた体現したサウンドで、そのタイトルは強大な質量ゆえに光すらも脱出することができないブラックホールの内向きの強力な重力を想起させ、ここで展開される音はそれくらい重いということなのだろう。とにかく冷たく、不穏で重い、インダストリアルでノイジー、そんなダブ・サウンドが全体を覆い尽くしている。アルバムはそれぞれの楽曲が交互に収録され、いわばレゲエのサウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイルで展開していく。初回に聴いたときにはいわゆる純然たるコラボ楽曲かと思っていたがそうではなかった。マッシヴ・アタックの『Mezzanine』の冒頭 “Angel” のイントロを彷彿とさせる冷たく重いザ・バグの楽曲からスタートし、不穏な霧がかったエコーとスロウにピッチダウンされたミニマル・ダブ・サウンドのゴースト・ダブス、と交互に進んでいく。ザ・バグの方がノイジーで、ゴースト・ダブスの方は空間を生かしたダブ・ミックスが特徴のように思える。そしてザ・バグの “Burial Skank (Mass, Brixton)”、“Dread (The End, London)” やゴースト・ダブス “Into The Mystic” といった重量級のスロウ・ステッパーの合間に聞こえてくるノイズは、まるでサウンドシステム特有のホワイトノイズや耳鳴り、巨大な低音ゆえに建物の躯体が共振して生まれるノイズを追体験しているかのようでもある。もはやその低音は空気の暴力とも言えそうな物理的な圧迫感すらある。それでいて、そのサウンドの感触は、もはやストーナー・ドゥームのレコードの隣にあっても、そういうものだと思ってしまいそうなところもある。

 ノイズやドローン・メタルの轟音体験と、レゲエのサウンドシステムによるダブの轟音体験に同様のものを見出す、それを音像として体現してきたのがケヴィン・マーティンのある種の表現の核にあるように思える。そして本作では、まさにサウンドシステムの出音、轟音の低音体験をいかに音楽表現に変換し伝えるかというのがひとつコンセプトなのだろう。過剰なまでに増幅されたドローンにも似たベースライン、ノイズとエコーは物理的な現場の状況をシミュレートしているかのようで、サウンドシステムの轟音体験の記憶を生々しい音楽として顕現させている。ジャケットのモチーフ、サウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイル、さらにはザ・バグにいたっては、その曲名には、例えばジャー・シャカがサウンドシステムをよく開催していた〈Rockets〉など、UKレゲエ~サウンドシステム~ベース・ミュージックの重要なヴェニューや地域の名前がつけられている。まさにサウンドシステム・カルチャーに捧げられた1枚と言えるだろう。ある意味で目の前にヴァーチャルなサウンドシステム体験を顕現させようとするようなそんな作品でもある。もちろんそれなしでも楽しめる作品だが、サウンドシステムでのダブ体験、それがあって作品のディティールに触れることで、さらなる驚きと理解が生まれる作品でもあるだろう。


Naive Melodies - ele-king

 良質な発掘で知られるUKの〈BBE〉から、またも興味深い企画の登場だ。いわく、ソウルやゴスペル、スピリチュアル・ジャズ、ラテン音楽などからトーキング・ヘッズをとらえなおしたコンピレーションとのことで、アレンジャーとしてひっぱりだこのミゲル・アトウッド=ファーガソン、〈Stones Throw〉や〈Brainfeeder〉などLAシーンで活躍してきたシンガーのジョージア・アン・マルドロウ、新世代アフロ・パンクのウールー、NYハウスの巨匠、マスターズ・アット・ワークのケニー・ドープとUKインディ・ダンスのヴェテラン、ロイシン・マーフィーからなるコンビ、詩人にして活動家でもあるアジャ・モーネイ、ソウルクエリアンズから浮上してきたNYのシンガー、ビラル、21世紀ジャズにおける有力なトランペット奏者のひとり、シオ・クローカーなどなど、なんとも豪華な面々が集結している。
 年明け後、CDは1月23日に、LPは2月6日に発売。トーキング・ヘッズの数々の代表曲がどのように生まれ変わっているのか……これはチェックしておくべき1枚です。

アーティスト名:various artists 
アルバム名:『ナイヴ・メロディーズ』
『Naive Melodies』
フォーマット:2x12”、CDとデジタル配信
CDと配信の発売日: 2026年1月23日/ アナログ盤の発売日:2026年2月6日
カタログ番号: CD: BBE424CCD/ LP: BBE424CLP

『ナイーヴ・メロディーズ』は、トーキング・ヘッズの音楽への大胆かつ先見的なオマージュであり、「ブラック・ミュージックの革新」というレンズを通して再解釈された作品である。『モダン・ラブ』(デヴィッド・ボウイのトリビュート・アルバム)を手掛けたクリエイティブ・マインド、ドリュー・マクファデンが監修したこの新作は、トーキング・ヘッズの紛れもないニュー・ウェーヴ・サウンドを形作る一助となった、アフリカ系ディアスポラのリズムと実験的なソウル・ルーツの深淵 へと潜り込む。フェラ・クティ、パーラメント、アル・グリーンといったアーティスト(彼らの影響はこのバンドのリズム的な遺伝子に大きく刻まれている)に触発された、トーキング・ヘッズの芸術性を支えたブラック・ミュージックの伝統に光を当て、従来のトリビュートとは一線を画し、ジャンルを超越する新世代のアーティストたちの声とビジョンを通じて、このバンドの楽曲群を再構築している。

アナログ盤のトラックリスト

DISC 1
SIDE A
1. Heaven - Miguel Atwood-Ferguson
2. Sugar On My Tounge (Dub) - Pachyman
3. Once In A Lifetime - W.I.T.C.H.
4. Girlfriend Is Better - Georgia Anne Muldrow
5. Mind - Wu-Lu

SIDE B
1. Psycho Killer - Astrønne
2. Born Under Punches (The Heat Goes On) - Kenny Dope feat. Róisín Murphy
3. I Zimbra - Liv.e
4. The Book I Read - Aja Monet
5. Burning Down The House - Rosie Lowe

DISC 2
SIDE C
1. Uh-Oh Love Comes To Town - EBBA
2. Road To Nowhere - Rogê
3. And She Was - Vicky Farewell
4. Crosseyed and Painless - Florence Adooni

SIDE D
1. Seen And Not Seen - Bilal
2. Born Under (More) Punches (The Heat Goes On) - Theo Croker feat. Theophilus London
3. Take Me To The River - Dominique Johnson
4. This Must Be The Place (Naive Melody) - Leon Jean-Marie

CD のトラックリスト

01. Heaven - Miguel Atwood-Ferguson
02. Sugar On My Tounge (Dub) - Pachyman
03. Once In A Lifetime - W.I.T.C.H.
04. Girlfriend Is Better - Georgia Anne Muldrow
05. Mind - Wu-Lu
06. Psycho Killer - Astrønne
07. Born Under Punches (The Heat Goes On) - Kenny Dope feat. Róisín Murphy
08. I Zimbra - Liv.e
09. The Book I Read - Aja Monet
10. Burning Down The House - Rosie Lowe
11. Road To Nowhere - Rogê
12. And She Was - Vicky Farewell
13. Crosseyed and Painless - Florence Adooni
14. Seen And Not Seen - Bilal
15. Born Under (More) Punches (The Heat Goes On) - Theo Croker feat.
Theophilus London                            
16. Take Me To The River - Dominique Johnson
17. This Must Be The Place (Naive Melody) - Leon Jean-Marie

flows - ele-king

 2010年にヌジャベスが他界して15年が経つ。彼の音楽を未来につなぐプロジェクト、Nujabes Metaphorical Ensembleによるイヴェント「flows」が、12月28日(日)恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催される。

 ラインナップには70歳を超えたいまもシーンに影響を与え続けているフランソワ・K.、ヒップホップを中心に幅広いリリースを重ねるレーベル〈Stones Throw〉に所属する次世代プロデューサー・Knxwledge、ヒップホップの枠を飛び越えた活躍を続けるSTUTS、東京が世界に誇るヴァイナル・ディガー、DJ NORIとMUROによるユニット・Captain Vinylを迎えるほか、レコード・コレクターとして知られ、さまざまパーティで辣腕をふるうAbiuと、メンバーそれぞれが個性ある活動をするクリエイティブ・コレクティブw.a.uの出演も決定している。

 開催当日は、Nujabes Metaphorical Ensembleと、ニューヨークを拠点に活躍する現代アーティストMeguru YamaguchiとのコラボレーションTシャツや、Francois K. のキャリアをモチーフにしたTシャツなどを会場限定で販売するとのこと。親子でも楽しんでもらえるよう、子どもたちとともに休息できるセーフティ・スペースも設置されるようだ。

flows
2025.12.28( Sun) 2PM-9PM
at The Garden Hall(東京都目黒区三田1-13-2)

LINE UP:
Nujabes Metaphorical Ensemble
Francois K.
Knxwledge
STUTS
Captain Vinyl(DJ NORI & MURO)
Abiu
w.a.u

ADV TICKET:
https://flows.zaiko.io/item/375732

Early Bird / ¥6,000 (Limited 100) SOLD OUT
Category 1 / ¥7,800 SOLD OUT
Category 2 / ¥8,800 SOLD OUT
Category 3 :¥9,800
U-23:¥6,000 (100枚限定)

HP : https://flows-jp.com
Instagram : https://www.instagram.com/flows_jp
X : https://x.com/flows_jp

GEZAN - ele-king

 現代日本におけるオルタナティヴ・シーンの筆頭とも呼ぶべきバンド、GEZANが7枚目のニュー・アルバムを2月11日にリリースする。『あのち』以来およそ3年ぶりのそれは『I KNOW HOW NOW』と題されており、日本各地でのツアーや世界をめぐった経験が活かされているようだ。
 3月14日には日本武道館での単独公演を控える彼らだが、今年つづけられてきたツアー「47+TOUR『集炎』」の最後の追加3公演が決定してもいる。詳しくは下記より。

GEZAN、7枚目のアルバム『I KNOW HOW NOW』を来年2月に発売決定。
先行シングル“数字”のMVを本日21時にYouTubeにて公開、12/15(月)0:00より配信スタート。
現在敢行中のツアー「47+TOUR『集炎』」最後の追加3公演も同時解禁。

GEZANが、“予感”と“新呼吸”をテーマに制作した7枚目となる最新アルバム『I KNOW HOW NOW』を、日本武道館での単独公演を控える来年2月に発売することを発表した。全国ツアーや世界を旅した痕跡が編み込まれた今作は、全編が透明な歌もので構成されている。

最新アルバムからの先行シングル「数字」は、12/15(月)0:00より各サイトにて配信リリース。アートワークは写真家 Kohei Kawatani が担当。
さらに、映像作家の堀田英仁が監督した同曲のミュージックビデオが12/14(日)21:00にYouTubeにて公開された。
ツアーの合間を縫って全編ロケされた映像は、新潟を舞台に、まるで映画のような重量感を持つ作品に仕上がっている。

堀田監督コメント

いつも楽曲を初めて聴いたときに浮かんできた映像のイメージをなるべく大事にするようにしているんですが、それが”耳から血飛沫”と”車の横転”でした。
ちょうど日比谷野音のライブを観た後だったので、マヒトくんのMC、「俺たちはGEZAN。おまえらの退屈をぶち壊すバンド。」って言葉が脳裏に焼き付いていたので、そことリンクしたんだと思います。 その”耳から血”というキービジュアルからストーリーを逆算し、過ぎ去っていく日常にどこか退屈を感じているキャストの3人が、GEZANの音楽に触発され、耳から血が噴射するといった企画にしました。血飛沫と言っても、ネガティブな破壊ではなく、身体がどんどん解放され、清々しくなっていくイメージを大事にしながら撮影しました。

撮影で意識したことは、GEZANをアイコニックに、POPに描くこと。GEZANのこれまでとこれからを考えたときに、今回はその方向性がタイミング的に良さそうという僕のなんとなくの勘です。

そして全国47都道府県に中国・上海公演を加えた全50公演で展開してきたGEZANのツアー「47+TOUR『集炎』」より、最後の追加3公演が決定した。
LIVE HOUSE FEVERでの2デイズ(DAY52&DAY53)にはNikoん、NOT WONK、the hatch、DOGOが出演。
そして最終追加公演となるDAY54では、11月の「尽未来祭 2025」で30周年を迎えたばかりのBRAHMANとの一騎打ちが再び実現する。
2025年4月より開始し駆け抜けてきた本ツアーの最終追加公演として、見逃せない3公演が出揃った。

ツアーの最終地点は、2026年3月14日(土) ・日本武道館での単独公演。
チケットのプレオーダー(抽選)はただいまよりe+にて受付スタート。

▼GEZAN最新アルバム情報
発売日:2026年2月11日(水曜日)
アルバムタイトル : I KNOW HOW NOW
※アルバムジャケット、トラックリスト等の詳細は追って公開予定。

▼先行シングル「数字」
配信LINKs : https://linkco.re/f6nqNp76
Music Video : https://youtu.be/sEDOdlmU2I8

▼十三月 presents GEZAN 47+TOUR「集炎」追加公演詳細

▽DAY52
・出演:GEZAN/Nikoん/NOT WONK
・日時:2026年1月20日(火曜日)開場/開演 17:45/18:30
・会場:LIVE HOUSE FEVER
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : info01@fever.co.jp

▽DAY53
・出演:GEZAN/the hatch/DOGO
・日時:2026年1月21日(水曜日)開場/開演 17:45/18:30
・会場:LIVE HOUSE FEVER
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : info01@fever.co.jp

▽DAY54
・出演:GEZAN/BRAHMAN
・日時:2026年2月23日(月曜日・祝日)開場/開演 17:00/18:00
・会場:CLUB CITTA'
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : CLUB CITTA' 044-246-8888 (平日12:00~19:00)


チケット情報
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・一般発売 : 2025年12月27日(土曜日)12:00
・前売券取扱箇所:e+ < https://eplus.jp/gezan/
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※チケット抽選先行あり
・受付URL : https://eplus.jp/gezan/
・受付期間:2025年12月14日(日曜日)21:00 ~ 12月21日(日曜日)23:59
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▽「47+TOUR『集炎』」会場限定 : GEZAN live album『炎奏録集』発売中!
詳細 : https://gezan.net/2025/07/08/ensourokusyuu/

▽47+TOUR「宣誓」動画URL
https://youtu.be/-OtsRrKevDk

▽47+TOUR「DAY1 難波BEARS」ドキュメンタリー動画URL
https://youtu.be/S-g5MZGwdgM

▽47+TOUR『集炎』日程
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DAY1・4月11日(金) 大阪・難波BEARS *SOLD OUT
DAY2・5月5日(月)  中国・上海 MAO Livehouse
DAY3・5月30日(金) 千葉・LOOK *SOLD OUT
DAY4・5月31日(土) 栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
DAY5・6月7日(土)  北海道・札幌PENNY LANE24 *SOLD OUT
DAY6 ・6月12日(木) 広島・4.14
DAY7・6月14日(土) 山口・BAR印度洋
DAY8・6月15日(日) 香川・TOO-NICE *SOLD OUT
DAY9・7月12日(土) 東京・Spotify O-EAST *SOLD OUT
DAY10・7月15日(火) 埼玉・HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
DAY11・7月17日(木) 群馬・前橋DYVER
DAY12・7月19日(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
DAY13・7月20日(日) 山梨・甲府KAZOO HALL
DAY14・7月23日(水) 長野・松本ALECX
DAY15・7月29日(火) 茨城・club SONIC mito
DAY16・7月31日(木) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA *SOLD OUT
DAY17・8月2日(土)  島根・出雲APOLLO
DAY18・8月3日(日) 鳥取・米子AZTiC laughs
DAY19・8月9日(土)  福島・club SONIC iwaki
DAY20・8月10日(日) 山形・酒田市 出羽遊心館 *SOLD OUT
DAY21・8月11日(月祝) 宮城・仙台MACANA
DAY22・8月19日(火)  宮崎・LAZARUS
DAY23・8月20日(水) 鹿児島・SR HALL
DAY24・8月21日(木)  熊本・NAVARO
DAY25・8月23日(土) 福岡・BEAT STATION
DAY26・8月24日(日) 長崎・STUDIO DO!
DAY27・8月26日(火) 佐賀・RAG.G
DAY28・8月27日(水)  大分・club SPOT *SOLD OUT
DAY29・8月30日(土)  静岡・磐田 FMSTAGE *SOLD OUT
DAY30・8月31日(日)  愛知・CLUB UPSET *SOLD OUT
DAY31・9月14日(日) 沖縄・Output
DAY32・9月18日(木)  福井・CHOP
DAY33・9月20日(土)  富山・Soul Power
DAY34・9月21日(日)  石川・金沢vanvanv4
DAY35・9月23日(火祝) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE *SOLD OUT
DAY36・9月25日(木)  岩手・the five morioka
DAY37・9月27日(土) 青森・ 八戸 6かく珈琲
DAY38・9月28日(日) 秋田・Club SWINDLE
DAY39・10月3日(金)  兵庫・太陽と虎 *SOLD OUT
DAY40・10月5日(日)  大阪・GORILLA HALL OSAKA *SOLD OUT
DAY41・10月7日(火)  滋賀・B-FLAT
DAY42・10月9日(木) 京都・磔磔
DAY43・10月11日(土) 和歌山・CLUB GATE
DAY44・10月12日(日) 奈良・NEVER LAND *SOLD OUT
DAY45・10月13日(月祝)三重・LIVE SPACE BARRET *SOLD OUT
DAY46・10月15日(水) 岐阜・柳ヶ瀬ANTS
DAY47・10月21日(火) 高知・X-pt.
DAY48・10月23日(木) 徳島・CROWBAR
DAY49・10月25日(土) 愛媛・W studio RED
DAY50・10月26日(日) 岡山・YEBISU YA PRO
DAY51・12月14日(日) 東京・LIQUIDROOM *SOLD OUT
DAY52・1月20日(火)  東京・LIVE HOUSE FEVER new!!
DAY53・1月21日(水)  東京・LIVE HOUSE FEVER new!!
DAY54・2月23日(月祝) 神奈川・CLUB CITTA' new!!

47+TOUR FINAL
2026年3月14日(土)日本武道館 単独公演 『独炎』
――

▼GEZAN
2009年、大阪にて結成。
独自の視点とスタイルで表現を続ける一方、自主レーベル「十三月」を主宰。

2021年2月、Million Wish Collectiveと共に制作したフルアルバム『あのち』をリリース。
2023年にはFUJI ROCK FESTIVALのGREEN STAGEに出演し、11月にはコロナ禍を経て4年ぶりとなる主催企画「全感覚祭」を、“Road Trip To 全感覚祭”と題して川崎・ちどり公園にて開催。
2024年には初の中国5都市ツアーおよび台湾公演を実施。8月には結成15周年を記念し、日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブを開催。11月には、唯一無二のブッキングで世界中から注目を集めるウガンダのNyege Nyege Festivalに出演。
2025年6月にはドイツ北東部の旧ソ連軍秘密基地跡地にて開催された音楽フェス・Fusion Festivalに出演。

現在、全国47都道府県に中国・上海公演を加えた全54公演におよぶ「47+TOUR『集炎』」を開催中。
ツアーファイナルは、2026年3月14日(土)・日本武道館での単独公演『独炎』となる。

Member : マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo/gt) / イーグル・タカ(Gt) / 石原ロスカル(Dr) / ヤクモア(Ba)

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Shintaro Sakamoto - ele-king

 2026年1月23日に発売される坂本慎太郎の新アルバム『ヤッホー』からの、“おじいさんへ”に続くニュー・シングル曲、“あなたの場所はありますか?”(坂本バンドはこの深い意味を含んだこの曲を去るアメリカ/メキシコ・ツアーで演奏している)のライヴ演奏MVが公開された。見よう! 自分たちの居場所を確保しよう。
 
 zeloneからのメールによると「今回のMVは、アルバム『ヤッホー』のレコーディングが行われたスタジオ、ピースミュージックにて撮影され、演奏もライヴ録音された、このMVでしか聴けないエクスクルーシヴなライヴ音源となっています。監督は山口保幸。演奏は坂本慎太郎バンドー 坂本慎太郎 (Vocal & Guitar)、AYA (Bass)、菅沼雄太 (Drums)、西内徹 (Flute) ——そして録音は中村宗一郎」

 なお、別冊エレキングは、来年1月末に『坂本慎太郎の世界』を刊行します。こちらもこうご期待です。

ヤッホー / 坂本慎太郎 
(Yoo-hoo / Shintaro Sakamoto)

2026年1月23日(金) Digital/CD/LP/リリース
国内デジタルPre-save / Pre-add: https://virginmusic.lnk.to/Yoo-hoo_pre

1. おじいさんへ (Dear Grandpa)
2. あなたの場所はありますか? (Is There A Place For You There?)
3. 正義 (Justice)
4. 脳をまもろう (Protect Your Brain)
5. 時の向こうで (On The Other Side Of Time)
6. 時計が動きだした (The Clock Began To Move)
7. 麻痺 (Numb)
8. なぜわざわざ (Why Do This?)
9. ゴーストタウン (Ghost Town)
10. ヤッホー (Yoo-hoo)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo, Japan 2025

Vocals, Bass (10), Keyboard, Acoustic, Electric & Lap Steel Guitar: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums & Percussion: Yuta Suganuma
Flute & Saxophone: Tetsu Nishiuchi
Marimba: Manami Kakudo (8, 9)

CD (zel-029): 価格: ¥2,600+税 (2枚組/インストBONUS CD付)

LP (zel-030): 価格: ¥3,200+税
Distribution: Bridge Inc. https://bridge-inc.net/

interview with NIIA - ele-king

みんな同じ曲を歌っているのに全然聞こえ方が違っていた。ジャズでは自分自身のオーセンティックなサウンドが求められることにすごく惹かれた。

 昨今のジャズにおいて新世代のミュージシャンの活躍が目覚ましいところがある。そのなかでジャズ・ヴォーカルという分野に関して、アメリカの女性ジャズ・シンガーに限ってみると、2000年代半ばから2010年代にかけてエスペランサ・スポルディング、グレッチェン・パーラト、チャイナ・モーゼス、ベッカ・スティーヴンス、サラ・ガザレク、サラ・エリザベス・チャールズ、セシル・マクロリン・サルヴァントなどが登場し、新たな時代を築いてきた。近年でもグラミー賞を受賞したサマラ・ジョイのような新星が話題となっているが、この度インタヴューを通して紹介するナイアは、サマラのような伝統的なジャズ・シンガーとは異なるタイプのシンガーである。ナイアの本名はナイア・ベルティーノで、1988年にマサチューセッツ州で生まれた。母親はイタリア出身のピアニスト、祖母はオペラ歌手という音楽一家出身で、ニューヨークのニュー・スクール大学でジャズ・ヴォーカルを専攻している(学歴的には中退)。

 しかし、彼女は一般的なジャズ・シンガーの道を進まなかった。2017年のファ-スト・アルバムと2019年のセカンド・アルバムは、クアドロンやライで活躍してきたロビン・ハンニバルがプロデュースし、どちらかと言えばオルタナティヴR&B的な内容だった。もちろん下地としてジャズ・ヴォーカルもあるのだが、それよりももっとコンテンポラリーでポップ寄りのアルバムだったと言える。その後、2022年の3枚目のアルバム『OFFAIR:Mouthful of Salt』はアンビエントな作品集で、2023年の『Bobby Deerfield』はR&B、ポップス、フォーク、ロックなどが融合したシンガー・ソングライター的なアルバムと、作品ごとに表情を変えてきた。いずれにしても、過去の4枚のアルバムはジャズ・ヴォーカルと括るには難しいものだった。


NIIA
V

Candid / Silent Trade

JazzPopR&B

Amazon Tower HMV disk union

 そんなナイアが通算5枚目となるニュー・アルバム『V』をリリースした。驚くべきことは、リリース元が1960年創設のジャズの老舗レーベルである〈キャンディッド〉からということだ。これまでのナイアのイメージと〈キャンディッド〉は全く結びつかないのだが、ナイア自身は決して〈キャンディッド〉のレーベル・カラーに寄せているわけではない。今回のアルバムはいままでに増してジャズの要素が強くなってはいるが、これまで彼女がキャリアのなかで培ったいろいろな音楽的要素も結びつけられたオルタナティヴなものだ。ジャズのスタンダード・ナンバーである “Angel Eyes” も歌っているが、ナイアによればこれは「パンク/ゴス・ジャズ」とのこと。一般的なジャズのイメージを破壊し、新たなジャズの世界を創造する気概に溢れたアルバムである。

みんな「彼女はR&Bだ」「ジャズだ」と言いがちだけど、最高のアーティストというのは、ジャンルの間を変化しながら渡り歩いていける人だと思う。

まずプロフィールから伺います。アメリカ生まれのあなたの母親はイタリア出身で、祖母はオペラ歌手をしていたそうですね。ニュー・スクール大学ではジャズ・ヴォーカルを専攻していたそうですが、お祖母様に倣ってオペラやクラシックの声楽からの影響もあるのでしょうか?

ナイア(以下N):ええ、母がクラシックのピアニストだったから、クラシックやオペラをたくさん聴いて育った。おばもみんなピアノかオペラをやっていたから、私も子どもの頃にオペラをやってみたけど、ものすごく難しかった!(苦笑)……声はなかなか良かったからオペラも歌えるんじゃないかと思っていたけど、できなかった。求められるスキルの種類がまったく違うからね。でも子どもの頃から音楽は大好きだったし、オペラやクラシックから影響を受けていたのは間違いない。その感情表現の仕方にね。歌手たちの表現の豊かさに心から惹かれていた。クラシック音楽はとてもムーディでドラマティックだからね。ジャズに恋に落ちたときも同じで、ジャズの歌唱の何かが、特にスタンダードのときは感じさせるものがある。それもあってジャズに転向したんだけど、オペラとクラシックは私が聴いて育ってきた音楽。初めて好きになった音楽ね。

音楽一家らしいいきさつですね。そのオペラとクラシックの感情表現をジャズに活かしているのだと思いますが、ジャズ・シンガーではどんな人から影響を受けましたか?

N:そうね……私はクラシック・ピアノをやっていて、母が最初の先生だったんだけど、あまりうまくいかなかった。というのも、いつも楽譜に載っていないものばかり弾いていたから。それで母がジャズ・ピアノを習わせてくれた。ジャズ・ピアノだったらインプロヴァイズできるし、もっと自由に弾いていいからね。ジャズ・ピアノの先生は弾きながら歌わせる人で、こう言われた。「ナイアはなかなかいいピアノ・プレイヤーだけど、シンガーとしてはものすごくいい」って。それで歌いはじめたんだけど、小さい頃の私はとてもシャイだったから、独りのときに歌っていた。母がサラ・ヴォーンのレコードをくれてね。サラ・ヴォーンは低音でメロウな美しい声の持ち主で、私もダークで低い声だから、彼女の声が大好きになった。そこからいろんなヴォーカリストに夢中になった。エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、ニーナ・シモン……何が私にとってクレイジーだったかって、みんな同じ曲を歌っているのに……みんないわゆる「アメリカン・ソングブック」って呼ばれるアメリカで親しまれている曲の数々を歌っているのに、全然聞こえ方が違っていたことだった。ジャズでは自分自身のオーセンティックなサウンドが求められることにすごく惹かれた。ジャズにのめり込むきっかけになったのはサラ・ヴォーンの声だったと言える。

ニュー・スクールに学ぶためにニューヨークに来て、その後ワイクレフ・ジーンと一緒に仕事をするなど、ヒップホップやR&Bなどの影響もあり、ジャズというよりも一般的なポップ・ミュージックの分野でキャリアを積んでいきます。それからいまも住んでいるロサンゼルスに移り、2017年に発表したファースト・アルバムは、クアドロンやライで活躍してきたロビン・ハンニバルのプロデュースによるオルタナティヴR&B的な内容でした。セカンド・アルバムも彼がプロデュースしていますが、この頃の活動を振り返ってみていかがですか? ジャズとはかなりかけ離れた活動だったと思うのですが。

N:ジャズについてみんなが忘れがちなのは、それがブルースやソウル、それから本当にたくさんのものに由来しているってことだと思う。私が若かった頃は若者の間でいまほどジャズの人気が高くなくてね。ワイクリフに出会って……ほら、ジャズとヒップホップってずっとペアだったでしょう? ジャズのレコードをサンプリングするヒップホップ・アーティストも多いし。私はジャズを知っていたから、それで気に入ってもらえたんだと思う。音楽業界ではトレンドを把握しておくことが大事だって言われるけど、私は純粋主義者たちが気に入るような音楽をやりたいっていう確信があったのね。R&Bもソウル・ミュージックも大好きだし、私の声はR&Bのプロダクションに合っている感じだからね。ただ、あの頃の私の音楽はR&Bやポップ寄りだったかもしれないけど、音は昔から何となくジャズっぽかった。そんな私がR&Bのアーティストたちと比較されるのは興味深いものがあった。だってSZAとか、ほかの女の子たちみたいな音作りをしたことがなかったから。音楽は同じような感じだったけどね。自分の昔の音楽はとても気に入っている。自分のスタート地点や、当時周りから受けていた影響が見えるからね。ロビンは私がちゃんと自分に正直な音作りをできるようにするのがとても巧かった。
 アルバムの枚数を重ねるにつれて、私はより多くの要素を忍び込ませるようになっていった。必ずしもジャズではなかったけど、音楽性という意味でね。生楽器を増やしたり、ストリングスのアレンジだったり。いつも「私の目標は音楽を忍び込ませること」と言っている。いまはジャズもエクスペリメンタルになったし、アンビエント・ジャズの人気も上がっているし、ハッピー。素晴らしいこと。伝統的なジャズからエクスペリメンタルなジャズまで追求できるんだなって。R&Bやブルースは勉強したものという感じね。まだ20代前半と若かったし、たくさんの人が聴いているものにより傾いていたんだと思う。

通訳:おっしゃるとおり、ジャズやR&Bやブルースはきょうだいみたいなものなのかもしれませんね。ヒップホップもそうですし、あなたがR&Bやブルースに溶け込んでいったのも自然な流れだったのかも。

N:そうね。自分が何らかのジャンルに当てはまっている気はまったくしないんだけどね。それはいいことでもあり、悪いことでもある。みんな「彼女はR&Bだ」「ジャズだ」と言いがちだけど、最高のアーティストというのは、ジャンルの間を変化しながら渡り歩いていける人だと思う。いろんな要素を引っ張ってきて。

その後、2022年に発表した3枚目のアルバム『OFFAIR:Mouthful of Salt』はアンビエントな作品集で、新たな世界へ挑戦しています。また、ハープ奏者のブランディ・ヤンガーとコラボして、いままでになくジャズへ接近したアルバムと言えます。一方、2023年の『Bobby Deerfield』は、R&B、ポップス、フォーク、ロックなどが融合したシンガー・ソングライター的なアルバムで、ジョニ・ミッチェルやファイストなどに近い印象でした。このアルバムはロック畑のジョナサン・ウィルソンのプロデュースでしたが、あなたの音楽は作品ごとにいろいろな変化が感じられます。こうした変遷について振り返ってみていかがですか?

N:私が初期に学んだことは……私は家族に音楽家が多くて、しかもその多くは自分がすべてを知り尽くしているような気になっていたのね。でも音楽のすべてを知り尽くしている気になってしまったら最後、そこでキャリアがストップしてしまうと思う。私はつねに成長し、学ぼうとしている。コラボすることは私にとってとても大切なこと。例えばジョナサン・ウィルソンは間違いなくもっとアメリカーナ寄りで、エンジェル・オルセンやファーザー・ジョン・ミスティを手がけてきたけど、つまるところは信じられないくらい素晴らしいソングライターよ。私にとってはそれこそが私の音楽に純粋に合う点。いろんな人と組んで、そこから何かを得ようとするのは大切なことだと思っている。『Bobby Deerfield』にしても、私はジョニ・ミッチェルもフォーク・ギターも大好きだけど、そのまま取り入れたんじゃいい音にはならなかったと思う。私の声はジャズ・ギターほどアコースティック・ギターには合わない。ときには違う楽器編成を試してみたり、いろんな人と仕事してみたりするのもいいことだと思う。何が自分にとってうまくいって何がうまくいかないかがわかるし。そうやって模索していくのはすごく楽しいことだと思う。
『Bobby Deerfield』の頃に、ハリウッドのローレル・キャニオンに引っ越した。ジョニ・ミッチェルが住んでいたことがある場所。ジャジーなフォーク・アーティストになりきりたかったんだと思う。まぁ、ベストの音ではないかもしれないけど(笑)、学ぶのはいいこと。アーティストとしてはいろんなスタイルやものにトライし続けることが大事だしね。そんななかで、変わらずコアなものがいくつかある点は気に入っている。それは私の声とソングライティング。

私はヴィジュアル的にもジャズが大胆不敵でイケてるって感じにして境界線を押し広げたかった。安全で伝統的なだけじゃなくて、ある意味ちょっとハードコアにもなれるものだってね。

最新作『V』は1960年創設のジャズの老舗レーベルである〈キャンディッド〉からのリリースです。ただ1964年の経営危機以降は新録がなく、昔のカタログをライセンスして再発するなどしていたのですが、2024年頃からようやく新録がはじまりました。これまでのあなたのキャリアからすると意外な結びつきですが、どのようにして〈キャンディッド〉からリリースすることになったのでしょう?

N:私は昔から、最終的には伝統的なジャズを歌う人になりたいっていう気持ちが強い。〈ヴァーヴ〉や〈ブルーノート〉といったレーベルもあるし、〈キャンディッド〉はレガシー的な老舗レーベルだけど、若手アーティストたちがジャズの自分たちなりのヴァージョンを作りはじめていることに気づいたんだと思う。それで、すでに知られているアーティストだけじゃなくて、新しいアーティストで「競争」したいと考えたみたい。いまの音楽業界の情勢のなかで話題に入りたかったというか。それでリスクを冒して私を採ってくれてラッキーだった。今日のジャズの姿を切り拓いていく、新しいメンツのひとりだと思ってくれた。感謝している。彼らにはヴィジョンがある。ジャズはときに悪い意味で言及されてしまうことがあって、すごく伝統的なジャズか、極端にインストゥルメンタルかどっちかという感じで、ヴォーカリストがその間を渡り歩くことができないきらいがある。スタンダードや伝統的なスウィングを歌うか、サンダーキャットやロバート・グラスパー、フライング・ロータスみたいな、すごく現代的で実験的なものをやるかどっちか。そんななかで、私は単なる懐古趣味的なジャズを作るのは嫌だった。モダン・ジャズを作る道を見いだしたいと思って。2025年にジャズ・アーティストでいるということはどんなものなのか。そのリスクをキャンディッドは冒してくれた。信じてくれてハッピー。

通訳:子ども時代の経験から伝統的なジャズにも造詣が深いあなたですから、未来的なジャズへの架け橋にもなっているのではないでしょうか。

N:まったくその通りね。歳を重ねたら絶対にジャズ・スタンダード・アルバムを作るつもり。スタンダードを歌うのは大好きだしね。ただ、準備ができていない。だからいまは引き続き、自分にとってのジャズを模索しながら、そう思えるものを作っていくつもり。古いアルバムのような感触を得られるものをね。

〈キャンディッド〉からのリリースですが、『V』は一般的なジャズ・ヴォーカル・アルバムとは大きく異なります。今回のプロデュースはスペンサー・ゾーンとローレンス・ロスマンというこれまでとも異なる人たちが行っていますが、彼らを起用した理由を教えてください。

N:ローレンスとはしばらく前からの知り合いで、彼は何でもできるけど、アメリカーナやロック、ポップス界の色が強いね。彼もまた素晴らしいソングライター。彼が「ナイア、そろそろジャズ・アルバムを作ることを考えるべきだと思うよ」と言ってくれて。それで、いろんなミュージシャンを連れてきてくれた。今回はとにかくプレーヤーありきな作品にしたかったし、みんなでひとつになって何かを作り出したかった。スペンサーと私はある曲に別々に参加したことがあって。その曲がとてもスペシャルなものになって、ローレンスに「君もスペンサーと組むべきかもね」なんて言ってもらえた。スペンサーとはたくさん曲を作って、そのなかからいままでやってきたものとしっくり合うものをピックアップした。スペンサーも素晴らしいアーティストで、ベース・プレーヤーでもあり、強いコネクションを感じた。バンドでありながらも声やアーティストの存在感がちゃんとあるものにするにはどうすればいいか、というヴィジョンを見てくれたんだと思う。ふたりには感謝している。たくさんのことを学んだし、私がやりたかったものを高めてくれたという気がしている。それに自分の作った音楽に自分らしさを感じられるのはいつだっていいこと。自分っぽい音がするし、自分っぽいなって感じられるからね。

そのほかにアンナ・バタース、ニコール・マッケイヴといったロサンゼルスの若く才能溢れる女性ジャズ・ミュージシャンも参加しています。普段からこういったプレーヤーたちとは共演して、女性ジャズ・ミュージシャンのコミュニティ的なものがあるのでしょうか?

N:ふたりともそれぞれ自分たちのことをやっているからね。……みんな独自のキャリアを持っているのが素晴らしいと思う。アンナもニコールもすごくうまくいっているけど、私が彼女たちを必要としているときにはいてくれた。ジャズのなかで小さなコミュニティができつつあるのは素晴らしいことだと思う。あと、私はできるだけ女性プレーヤーを見つけようとしていて。男性が優勢な分野であることは間違いないからね。女性ヴォーカリストがたくさんいるのは確かだけど、楽器をやる女性も続々出てきているって喜んで報告できる。私はラッキー。あんなに素晴らしいプレーヤーたちと、今回のアルバムを作ることができたんだから。

『Bobby Deerfield』にあったエレクトロ・ソウル、テクノ・ポップ的な作品を継承していて、“Throw My Head Out The Window”はハウス・ミュージック的な要素がありますし、“Pianos and Great Danes”はブロークンビーツ調だったりと、クラブ・サウンドをかなり意識した印象です。これら作品はどんなイメージで作られたのですか?

N:私はバラードが大好きだから、いつもスローなものに走る傾向があるのよね。今回自分自身に課したチャレンジとしては、特にその2曲に関しては、能動的なリスニングをすることだった。もっとエネルギーが感じられて、テンポが速くて、ドラムンベースみたいなアグレッシヴな要素があって。“Throw My Head Out The Window” ではドラムを2セット使ったの。それから私はヴィジュアルを思い浮かべるアーティストだから、この曲ではLA中をドライヴしている状態を思い描いた。LAはものすごい車社会だから、よく犬が車の窓から顔を出しているのよ。あの解放感って最高! と思ってね。あのエキサイティングな解放感を表現したいと思った。
 あと “Pianos and Great Danes” は……私の頭のなかはいつもゴチャゴチャで、いろんなことを同時に考えている。ピアノから犬のグレート・デーン、それからセックスまで、あらゆることを同時にね。頭のなかがクレイジーになっている状態を音で表現している感じ。いろんな思いが侵入してくる様子を、カオスな感じのサウンドで表現したかった。それで、トラックが忙しい感じだから、私のヴォーカルはもう少しラウンジ的というか、もっとメロウなものにしようと考えたの。
 そうやって遊んでみるのもいいことだと思うのよね。曲によっては本当に声を張り上げているものもあるし、楽器の一部になっているものもあるし。その2曲はどちらも気に入っている曲。どちらもエネルギーがあるし、作ろうと思えばダンス・リミックスも作れそうだしね。もしかしたら本当に作るかもしれない。そうなったらエキサイティング。
 このアルバムのテーマのひとつが現実逃避とか空想だと思う。クレイジーな考えがいろいろあるこのご時世に、いかに自分の心を静めるか。そのふたつの曲で陰と陽を表現しているようなもの。“Throw My Heads Out The Window” で心の平安を探して、“Pianos and Great Danes” は「何てこと、頭のなかがカオスになっている。頭を鎮めるにはどうしたら?」みたいな感じ。

私はジャズの創造的破壊者であり続けたいと思っている

なるほど。いま「自分の声が楽器の一部になっていることがある」という話でしたが、“Ronny Cammareri” はアンビエントを意識したジャズ・ナンバーで、あなたのワードレスなヴォーカルもハーモナイザー的な役割を果たしています。“Again with Feeling” はダークな雰囲気の作品で、一種のトリップホップに近いというか、ベルギーのメラニー・デ・ビアシオを想起させるようです。

N:そう言ってくれるなんて最高! あとはハイエイタス・カイヨーテとかリトル・ドラゴンみたいに、R&B寄りのことをやっているけど、びっくりするくらい高度で、ジャズの要素を取り入れている音楽もあるよね。“Again with Feeling” にR&Bの要素や、加えたら役立つかもしれないと私が思った要素があるのは間違いない。

通訳:メラニーやハイエイタス・カイヨーテらもジャズの枠にとらわれないオルタナティヴな活動で知られますが、意識するようなところはありますか? 例えばよく聴くとか、交流があるとか。

N:交流はしていない。私はシャイだから畏れ多くて(笑)。聴いてはいるけどね。ただ、模倣はしたくない。でもいろんなジャンルの要素を引っ張ってきているのを聴いていると、とても励まされる。ハイエイタス・カイヨーテなんかは私にとってすべて。ギター1本だけを伴っているときはフォーク・ソングみたいだし、前衛的なジャズ・シンガーみたいに聞こえるときもあるし、シンセを多用しているときもあるし。彼女たちの存在は、私に挑戦をさせてくれる。音楽に境界線なんてないんだって気づかせてくれる。ひとつの世界にしっくりはまりさえすれば何をやってもいいってね。アルバムが本みたいにいろんなチャプター(章)を持っていることが大事だって思う。全部同じに聞こえないためにね。
 本当にたくさんのアーティストに影響をもらっているわ。「私がこれをやっていいのか」「私のヴァージョンだったらどうなるんだろう。どんな歌詞や音色、響き、ハーモニーになるんだろう」って考えさせてくれる。

通訳:自由にジャズの枠を超えて実験してもいいと思わせてくれる存在なのですね。

N:ええ。ジャズはとても純粋主義的なジャンルだけどね。でもジャズを勉強していた当時、私はジャズが怖かった。私にとってはとてもハードコアなものだった。昔のジャズ・アーティストはチンピラだったし、ドラッグ中毒だったし、反逆者だったし……好き勝手にやっていたからね。保守的でもなかったし、お堅い感じでもなかった。いまはジャズというと高尚で伝統的で、温厚でマナーのいいジャンルだなんて思われているけど、私に言わせれば、その昔の彼らはロック・スターみたいなものだからね。ヘロインを打ってクレイジーだったんだから(笑)。パンクみたいな要素があった。尖っていてね。私はヴィジュアル的にもジャズが大胆不敵でイケてるって感じにして境界線を押し広げたかった。安全で伝統的なだけじゃなくて、ある意味ちょっとハードコアにもなれるものだってね。こういう言い方をするのもなんだけど、一般的なジャズのイメージは年配向けの音楽っぽい感じよね。でもジャズは若々しくてとても自由なジャンル。昔の彼らはパンクスだった。

通訳:だからこそあなたは “Angel Eyes” のようなスタンダード中のスタンダードみたいな曲を「パンク/ゴス・ジャズ」と呼んでいるのですね。あなたのファンも、あなたのことを「ゴス・ジャズのプリンセス」と呼んでいますし。

N:そうそう。パンクはアティチュードの話に過ぎないから。パンクの感性だってありだと思う。私はジャズの創造的破壊者であり続けたいと思っている。同じアルバムにスタンダードも “Pianos and Great Danes” みたいな曲も入れていいってね。そしてそれでもジャズと見なされる自分でいたい。ジャズはすべてだからね。ジャズはその解釈の仕方次第というか……ミュージシャンシップとか、必要とされるものはあるけど、好きなものにならせてくれるのがジャズだと思う。歴史と、作られてきたものに敬意を表してさえいればいいと思う。

ちなみにどうして “Angel Eyes” を取り上げたのでしょう? あなたの好きなエラ・フィッツジェラルドも歌ってきた曲ですが。

N:お気に入りのジャズ・ソングが本当にたくさんあってね。ただ、さっきも言ったけど、まだスタンダード・アルバムだけのアルバムを作る準備はできてない。でも同時にジャズ界が純粋主義であることもわかっているから。「きみはジャズじゃない。ジャズだってことを証明してくれ」という感じで。だからジャズ・スタンダードを1、2曲入れたいというのはわかっていた。“Angel Eyes” は私のお気に入りのひとつで、ミステリアスで、あまり自分を見せないというか、人と共有しないような感じがこのアルバムに合うと思った。
 いつも考えると凄すぎると思ってしまうのだけど、フランク・シナトラが最後にライヴで歌ったのもこの曲だったそう。つまり彼が最後に歌ったのは “Excuse me while I disappear(失礼、姿を消すよ)” というフレーズだったってこと。その後、彼は二度と歌うことがなかった。あまりにクールな曲。エラ・フィッツジェラルドも、他の人もみんな歌った曲だけど、私なりのジャズへの敬意を表した曲。フル・バンドと一緒に録音して、その後ピアノとヴォーカルだけで録音してみて、必要なのはピアノとヴォーカルだけだって思った。ただコード進行にだけ耳を傾けて歌いたいと思った。とにかく美しい曲だから。メランコリーで謎めいた雰囲気にも合っていたと思う。

“Angel Eyes” や “I Found The Restaurant” などは丹念に歌い上げていて、あなたのジャズ的な要素がしっかりと現れていますね。そこもすてきな面のひとつだと思いますが、こうして話を聴かせていただいて、ジャズに対する見方が変わりそうです。

N:嬉しい! それが私の目標でもある。いろんなものに耳を傾けて、ジャズ・シンガーが特定の箱にはまらなくてもいいってことを感じてもらえればと思っている。


本邦初のイギリス現代思想案内

インタヴュー
國分功一郎毛利嘉孝田崎英明宮﨑裕助

資本主義リアリズム、思弁的実在論、加速主義、ゼノフェミニズム
そしてカルチュラル・スタディーズの功績とは
押さえておきたいキーワードを解説

●マーク・フィッシャー入門――その音楽批評から加速主義との関係、うつ病、最終講義のポイント、現代アートへの影響まで
●初めて触れる読者のための、マーク・フィッシャー著作案内――『資本主義リアリズム』『わが人生の幽霊たち』『奇妙なものとぞっとするもの』『K-PUNK』『ポスト資本主義の欲望』それぞれの解題から未邦訳テキストの紹介、そして彼が手がけた出版事業まで
●ポール・ギルロイの功績、現代のキーパーソンたち=レイ・ブラシエ、オーウェン・ハサリー、アルベルト・トスカーノらの思想、サイバーフェミニズム、イギリスにおけるマルクス主義の系譜、ほか

執筆
イアン・F・マーティン/野田努/河野真太郎/鈴木慎一郎/有元健/仲山ひふみ/幸村燕/清水知子/水嶋一憲/平山悠/大岩雄典/宮田勇生/安藤歴/杉田俊介/大橋完太郎/原塁/飯田麻結/山本浩貴/星野真志/長原豊/小林拓音

装幀:SLOGAN
菊判220×148/並製/256ページ

目次

【インタヴュー】
國分功一郎 今こそ階級闘争を仕掛けるとき──イギリス滞在時に感じたこと
 ▶イギリスと日本の違い│社会の幼年期に注目する必要がある│こちらから階級闘争を仕掛けなければならない│自然と満足できるように│新しい病としての「うつ病」│今こそフィヒテを読みなおすとき
毛利嘉孝 自分たちの知をつくること──大衆文化にラディカルな思想が流れこむ
 ▶イギリスだからこそカルチュラル・スタディーズは生まれた│知をアカデミズムに閉じこめない風土│スチュアート・ホールの功績│ストリート出身のポール・ギルロイが変えたこと│ヨーロッパの理論はイギリスでどう受けいれられたのか│マーク・フィッシャーが残したもの
田崎英明 ジェンダーも人種も、階級とセットで考えよう──アイデンティティ・ポリティクスが批判される背景
 ▶加速主義を切り捨ててはいけない│なぜ労働はなくならないのか│イギリスとフランスは交流が盛ん│イギリスにはアルチュセール派の影響が大きい│マルクス主義とフェミニズム/クィア理論は共闘できるか│シニシズムに陥らないために
宮﨑裕助 私たちの世界には根本的に幽霊がいる──デリダ研究者から見たマーク・フィッシャー
 ▶デリダ研究を牽引していたのは英語圏だった│ロンドンは世界各地から知が集まる場所│亡命知識人たちがつなぐ世界│ポップ・カルチャーに思想が侵入する│もともとの憑在論の意味について│イギリス現代思想の未来

【マーク・フィッシャー著作案内】
『資本主義リアリズム』(仲山ひふみ)/『わが人生の幽霊たち』(平山悠)/『奇妙なものとぞっとするもの』(大岩雄典)/『K-PUNK』(宮田勇生)/『ポスト資本主義の欲望』(安藤歴)/その他のテクスト(仲山ひふみ)/ゼロ・ブックスとリピーター・ブックス(仲山ひふみ)

【ポール・ギルロイの功績】
黒い大西洋(鈴木慎一郎)/ポストコロニアル・メランコリア(有元健)

【コラム】
道は一本ではない、とマーク・フィッシャーの音楽批評は示している(イアン・F・マーティン/青木絵美訳)
ポピュラー文化との共鳴にこそ興奮するイギリスの論客たち──レイモンド・ウィリアムズからバーミンガム学派へ、そしてフィッシャーへ(野田努)
成人教育はポストフォーディズムの侍従か──マーク・フィッシャーのカルチュラル・スタディーズ的出自(河野真太郎)
レイ・ブラシエと哲学の未来(仲山ひふみ)
加速主義以後の加速主義と加速主義的なもの(幸村燕)
憑在論的メランコリアを超えて──マーク・フィッシャーとサイバーフェミニズムの行方(清水知子)
月曜の朝のかすかな光──マーク・フィッシャーと加速主義(水嶋一憲)
鬱病リアリズムという提案──生き延びることの肯定に向けて(杉田俊介)
『ポスト資本主義の欲望』講義の続き──欲望の向きをいかに定めようか(大橋完太郎)
旅をして夢をみる──《消滅していく土地について》とふたつの「イーリーなもの」(原塁)
亡霊の足跡(あるいはDo It With Style)(飯田麻結)
イギリス現代アートにおけるマーク・フィッシャーの影響──オトリス・グループとスペキュラティブ・テートを中心に(山本浩貴)
オーウェン・ハサリー──闘争するモダニスト(星野真志)
馬鈴薯と袋と資本とその主義(ファシズム)(長原豊)
ぎょっとするホブゴブリンがブリテンのあちこちではびこっている──イギリスにおけるマルクス主義の大雑把な見取図(小林拓音)

[共同監修者プロフィール]
仲山ひふみ(なかやま・ひふみ)
批評家。主な寄稿に「加速主義」(『現代思想』2019年5月臨時増刊号)、「ポストモダンの非常出口、ポストトゥルースの建築――フレドリック・ジェイムソンからレザ・ネガレスタニへ」(『10+1 website』2019年10月号)など。レイ・ブラシエ『解き放たれた無──啓蒙と絶滅』(河出書房新社、2026年)を共訳。

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・仲山ひふみによる記事
Aaron Dilloway Japan Tour 2023@落合Soup (2023/2/11) ライヴ(デッド)レポート
不気味なものの批評を超えて──マーク・フィッシャー『奇妙なものとぞっとするもの』紹介

2025年のFINALBY( ) - ele-king

 この過去の夏、大阪の歴史的建造物であるミソノビルの閉鎖/解体の発表に対する悲しみは、その歴史と長寿を祝うための一連のパフォーマンスによって明るいものとなった。7月5日に予定されていたそのパフォーマンスのひとつは、∈Y∋(BOREDOMS)による新プロジェクトFINALBY( )(発音 ― Final B Empty/ファイナルビーエンプティ)であり、大阪を拠点とするCOSMIC LABとのコラボレーションであった。大阪音楽シーンの伝説である∈Y∋は、間違いなく、このビルの長寿を祝う最適な人物だった。興奮した私は、すぐにチケットを購入し、関西への旅を計画した。不運なことに、いまはもう11月の終わりであり、スケジュールの都合でその旅をキャンセルせざるを得なかったことに、いまだに軽い痛みを覚える。ああ、なんという惨めさ! 叶わなかった夏の記憶。家に居なければならなかった悲しみは、ほとんど耐えがたいものだった。

 しかし運命とは不思議なもので、東京では∈Y∋関連のイベントが次々と行われている。逃した夏の機会を補って余りあるほどに。∈Y∋は渋谷の中心ど真ん中、ミヤシタパーク3階のgallery SAIで開催された新しい展覧会Mapocy(まぽチー)のために東京に戻って、さらに、歌舞伎町のZERO TOKYOにおけるFINALBY( )の東京初演があった。それから、歌舞伎町の王城ビルでのBENTEN2のための∈Y∋の2024年のARV100パフォーマンスのマルチスクリーン・インスタレーションもあって、Art Tokyo Week でのC.O.L.O.(COSMICLAB)による小さなサプライズ・コンサート、さらに締めくくりとしてMUTEK Japanの巨大ステージでのC.O.L.O.とのユニークなオーディオ・ヴィジュアル・パフォーマンスがあった。
 日本のオルタナティヴ・シーンにおける最大級の革新者としての∈Y∋の多く多くの年月にもかかわらず、BOREDOMSの非活動とより散発的なソロ活動が相まって、∈Y∋は数年間“混沌の中心”にいなかった。だからこそ、半年の間にこれだけ多くのイベントがあることは、一種の“再紹介”のように感じられる。新たな歴史をつくるための完璧なタイミングだ。私が最後にBOREDOMSのライヴを見たときのひとつは、∈Y∋がステージ上で足を骨折し、痛みにもかかわらず演奏を続けたときだった。だから、まだ気づいていないなら言っておくが、∈Y∋関連の出来事はしばしば歴史的なのだ。私はこの秋のこれらすべての素晴らしい体験をレポートにまとめた。

MAPOCY

 5つの部屋に分かれ、とくに4つ目はほとんど“隠し部屋”のようなサプライズになっている。本展「MAPOCY」は、∈Y∋のジャンク・アート的な作風を巨大インスタレーションとして展開したもので、現在も活動をともにするPUZZLE PUNKSのパートナー、マルチメディア・アーティストの大竹伸朗の気配と、彼がしばしば扱うドラムのシンバルというモチーフが混ざり合っている。
 まず圧倒されるのは、とにかく“緑”。これでもかというほど緑。壁に取り付けられたキャンバス、シンバル、ビニールシート、ガラクタの数々——あらゆるものに緑のペンキがぶちまけられている。床にまで飛び散っていて、空間全体が緑色の施工現場のようでもあり、同時に、初期∈Y∋作品でも見られた木片の寄せ集めによるギザギザの形状がそこかしこに出現している。
 ひとつ目の部屋は床と壁にオブジェが置かれた比較的ゆとりのある空間だったが、ふたつ目に入ると一転、大小さまざまな物体が山のように積み上がり、すべてが同じ緑に染められている。天井からはビニールシートが垂れ下がり、換気用のファンが絶えず唸っている。最初はまとまった形など見えず、ただ“ノイズ”だけがある。正直なところ非常に混乱を招く展示だが、もし音楽におけるノイズに惹かれる人なら、聴覚的ノイズと物質としてのノイズに大差はないとすぐ理解できるだろう。
 混沌は3つ目の部屋でも続く。奥の隅にほとんど真っ暗な空間へと続く黒い入口が見え、その向こうに“4つ目の部屋”がある。ここはFINALBY( )のメンバーたちと制作した映像作品が、三面の細長いクリーンに巻物のように投影されるダイナミックな空間だ。黒いビニールシートで覆われた小さな穴をくぐって入ると、モノクロームの点滅するプログラム図形と、轟音のノイズ・ミュージックが部屋全体を震わせている。精密にピクセル化された映像は、伝統的なアジアの雲や花の意匠を再構成し、左右から現れては中央でぶつかり、新たな幾何学へと変容していく。その視覚的なカオスは池田亮司のもっとも衝撃的な作品を思わせつつ、より柔らかく親しみのある感触を残す。ここを先に観たことで続くFINALBY( )のライブがどのようなものになるのか、無自覚のままヒントを得ることになった。
 最後の5つ目の部屋は、これまでの強烈な表現から一度“息をつかせる”空間だ。出口前の壁一面に、古い手描き作品と実際のアナログ盤が組み合わされて展示されており、紙のドローイングという∈Y∋の原点的な表現へと立ち返る、一種の後味として配置されている。

FINALBY( )

 FINALBY( )が初めて姿を現したのは、観客の多くがその存在を知らぬまま迎えた2021年のフジロックだった。以来、その公演歴は香港、大阪、そして今回の東京のみと極めて限定的だ。∈Y∋が音楽家であると同時に卓越したヴィジュアル・アーティストであることはよく知られているが、これほどまでにステージ上で視覚と音響が正面衝突した例は稀だ。私の目には、テクノロジーを全面的にアップデートして蘇った現代版ハナタラシのようにも映る。∈Y∋は、身体性を伴う新しいパフォーマンスを構築しており、それはパフォーマンス・アートと、ノイズマシンや照明、センサーと接続されたオブジェ群とが密接に絡み合ったものだ。この技術面を支えるFINALBY( )の共同制作者は、COSMIC LAB(C.O.L.O.主宰)、アートエンジニアの堀尾寛太、そしてプログラマーの新美太基である。デジタライズされた∈Y∋——まさにテクノロジー時代が生んだ独自の結晶だと言える。
 私自身、この新しい方向性の萌芽を、パンデミック前の原宿で偶然目撃する幸運に恵まれた。2019年、TOKYO CULTuART by BEAMS Harajuku で開催されたBOREDOMSのTシャツ展でのことだ。∈Y∋はフェイスマイクを付け、両手に装着したモーション・センサー内蔵のサウンドマシンからノイズを放ちながら、黒いジャケットの下に隠れた装置を動かし、通常のマイクに縛られない歌唱を試みていた。ここにはすでにFINALBY( )の原型があった。また、このとき∈Y∋は巨大な円錐形オブジェへの偏愛を初めて披露している。黒いコーンの底部にセンサーが仕込まれており、それを持ち上げて振るたび、音は揺らぎ、形状の奇妙さも相まって視覚的にも滑稽で魅力的だった。背後には技術面を支えるエンジニアが控えており、30名ほどのファンしかいない小部屋での濃密な光景は、後に東京で結実するまでに6年かかった構想の出発点を示していた。

 FINALBY( )を観に行く前、気分を高めようと私はBOREDOMSの入手困難な問題作『Super Roots 5』を久々に取り出した。重厚なドラムとシンバルへ傾斜していく初期段階にあたる一枚で、1曲=1時間という構成、ほぼ一本調子の宇宙的トーンに泡立つノイズとシンバルが折り重なる——「曲」というより「体験」だ。これを聴くと、1982年のある出来事を思い出す。
 1982年、前衛ギタリスト/作曲家グレン・ブランカは『Symphony No.2 – The Peak of the Sacred』をライヴで披露した。副題「聖性の頂」は本来その作品固有のものだが、彼のエモーショナルな創作全般を言い当てる表現でもある。複雑な転調をほぼ廃したこの交響曲は、天上のエネルギーが雷鳴のように連続して吹き荒れる、彼の作品中もっとも強烈な体験のひとつだった。
「聖性の頂」とは、人間が自己を超越するための、絶えず恍惚と狂喜を更新し続ける音楽を指す。∈Y∋がBOADRUMシリーズやその他の公演で追求してきた方向性は、明言されていなくとも、まさにその頂点に向かう試みだったと私は感じている。「曲」よりも「経験」を重視する姿勢——それは彼の精神性と音楽性が複雑に深化してきた証でもある。FINALBY( )の公演中、∈Y∋はまさにその「聖性の頂」に到達しようとしていた。

2025年10月25日 FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED
presented by COSMIC LAB & TST ENTERTAINMENT CO.,LTD.

FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda

 当日の「FINALBY( )Live in 歌舞伎町Expanded」というフルタイトルの公演は、実に2時間ノンストップのパフォーマンス作品だった。事前告知からは想像もできない構成である。チケットを買った時点で「2時間」とあったため、DJか何かが挟まるのだろうと勝手に思っていたが、違った。2時間まるごとが、巨大なノイズの奔流と悦楽的ヴィジュアルの対話で満ちていた。
 ステージ中央には、光に照らされ巨大なカップケーキのように見える“何か”が鎮座している。後にそれが、∈Y∋ がジェンベのように叩くノイズ・ジェネレーターであると知った。ステージ上には複数のコーンが配置され、最大のものは宙吊りになっていて、∈Y∋の身長を完全に覆うほど巨大だった(実際、後半で∈Y∋がその内部に隠れる場面があった)。さらに、フロア中央、観客のほとんどが囲むようにして別の巨大コーンが置かれ、公演後半ではそのコーンが発光し、∈Y∋の手で回転させられる仕掛けになっていた。
 ZEROTOKYOという会場は、巨大なメインスクリーンに加え、左右と背後にも細長いスクリーンが連なる独特の構造で、360度的な没入感を生み出す。MAPOCYで見たモノクロームのデジタル雲はここでも再登場し、背面や側面から湧き上がるため、観客は携帯で“映え”を狙う余裕を失い、その瞬間に没入せざるを得なくなる。近年まれに見る、記録では再現不可能な体験だった。
 奇妙なパンク・バンドから出発し、90分超の儀式的公演を構築できる存在へと変貌したBOREDOMS。その中心人物である∈Y∋は、観客の細胞レベルに作用する「悟性の構造」を知り尽くしている。聖性の頂。

 公演の最後、∈Y∋は稀にみる“口頭での解説”を行い、コーンの群れを「家族」だと呼んだ。FINALBY( )の本当のメンバーはコーンであり、人間はその媒体にすぎないのだと。※詳しくは∈Y∋本人が10月26日付でInstagramに投稿した説明を参照してほしい。
 この一連の経験は、初期舞踏、ローリー・アンダーソン、フィリップ・グラスらの系譜に連なる、ダイナミックなパフォーマンスアートの華麗な再誕に等しかった。


FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda

∈Y∋ × C.O.L.O(COSMICLAB)@ MUTEK JAPAN

 渋谷で開催されたMUTEK JAPAN 2025で、∈Y∋はC.O.L.O.とともに初めてこのフェスのステージに立った。ART WEEK TOKYO(11月5日)のサプライズ公演をさらに拡張し、より長く、より“怪物的”な形で提示したものだ。FINALBY( )とは異なり、形式上は伝統的なオーディオビジュアル公演に近いが、幸いにも遥かに奔放だった。多くのMUTEK出演者が“引き算の美学”で勝負するなか、これは「足し算の極北」とも呼べる公演だった。
 FINALBY( )が2時間のノイズの海へ沈めるような体験だったのに対し、今回の2人は長いテーブルに並んで立ち、背後の巨大スクリーンとともに、∈Y∋のDJ PICA PICA PICA的な狂騒を現代化したような世界を作り上げた。FINALBY( )のノイズ成分と、モノクロームのフリッカー映像、そして近年∈Y∋が執着するハイパー・サイケデリックなシンゲリ(singeli)が高密度に衝突し合う。言語化困難なコラージュも大量に挟まれる。
 ∈Y∋の音楽とヴィジュアルは、まるでドラッグまみれのポップアートだ。C.O.L.O.は∈Y∋の衝動を鏡のように反射し、狂気じみたフリッカー花、精神を攪拌する幾何学模様、スクリーンいっぱいの“眼”、ハートやブタの絵文字が奇妙な規則性で踊り、そのあとにはスローモーションのデコトラ事故寸前3D映像が続く。強度は綿密に計算され、現実味がないほど完璧だった。息つく暇もない全頭脳的ラッシュ。

 ここ数ヶ月の間に、∈Y∋の唯一無二の表現が多角的に更新される様子を目撃してきた者として、2026年にさらに何が生まれるのか、ただ祈るばかりである。


FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda


Sadness at the announcement of the closing / demolition of the historic Misono building in Osaka this past summer was brightened with a string of performances to celebrate the history and longevity of the famous landmark. One of those performances, scheduled on July 5th, was EYE`s (Boredoms) new project FinalBy ( ) **(pronounced - Final B Empty) (ファイナルビーエンプティ), a

collaboration with Osaka based COSMICLAB. EYE, a legend in the the Osaka music scene, was definitely the best choice to celebrate the building`s longetivity. Excited, I immediately purchased and planned my trip to Kansai. Unfortunately, it`s now the end of November and I still feel a light sting of having had to cancel said trip due to schedule conflicts. Oh the misery! A summer memory unrealized. My sadness at having to stay home was almost unbearable.

Fate though works wonders and Tokyo is enjoying a string of of EYE related events. More than enough to make up for the missed summer opportunity. EYE has returned to Tokyo for a new exhibition, Mapocy (まぽチー), smack dab in the center of Shibuya

on the third floor of Miyashita Park at gallery SAI, the Tokyo premiere of FINALBY ( ) at ZERO TOKYO in Kabukicho, a multi- screen installation of EYE`s ARV100 performance in 2024 for BENTEN2 at 王城ビル (also in Kabukicho), a small surprise concert

with C.O.L.O. (COSMICLAB) at Art Tokyo Week, and a unique audiovisual performance with C.O.L.O. on a huge stage for MUTEK Japan to round it out. Despite EYE`s many many years as one of the greatest innovators in the alternative scenes of Japan, the inactivity of the Boredoms coupled with more sporadic solo

activities means that EYE hasn`t been at the center of the chaos for some years. So with this many events within just half a year, it feels like a reintroduction of sorts. Perfect for creating new history. One of the last times I saw the Boredoms live was when EYE broke his leg on stage and kept performing despite the pain. So if you haven`t guessed so far, anything EYE related is often historic. I have compiled all of these great experiences this fall in a report.

MAPOCY

Separated into 5 rooms with the 4th almost a secret surprise, MAPOCY reflects EYE`s junk art style as a large installation closely in line with his ongoing PUZZLE PUNKS partner, multi-media artist Ohtake Shinro, mixed with his other common collaborator, the drum cymbal.

The installation is very, very, very, very, very green. Green paint splattered on canvases installed on the walls, on cymbals, on plastic sheets, on junk items. There is green paint literally everywhere including the floor. Almost like an artistic, construction site mixed with wooden assemblages, created into jagged shapes you can see in older EYE works. While the first room was spacious with objects on the floor and wall, the second room was chaotically littered and piled up with numerous objects of different types completely splattered with the same green paint, plastic sheets hanging down and a fan constantly going to keep possible fumes from making anyone sick. There were no coherent shapes at first, just noise. The site is honestly incredibly confusing and confounding but if you have any taste for noise in your music, I would say there is no difference between aural noise or physical noise.


The chaos continues in the 3rd room where in the far corner you might see a dark entrance way into a near pitch black room. The 4th room is a dynamic 3 wall screen scroll-like video of his work with the other members of FINALBY ( ). Only viewable by entering through a small hole created with black plastic sheets, the room literally reverberates with the intensity of the monochrome flashing programmed shapes and the noise music blasting. The images carefully pixelated reimagine traditional Asian cloud flower designs colliding into each other becoming new geometry. Often starting from the far left and far right side, they eventually meet in the center and evolve into new forms. The visual cacophony reminded me of Ikeda Ryoji`s most impactful works but with a fresh and friendly take. Visiting this exhibition first gave me a good unknowing hint of what the following FINALBY ( ) would be like.

The last room is a calm down from the bold expressions of the previous ones. Only one wall of older very familiar hand drawn art combined with physical lps before the exit, it was an interesting last taste offering a comparison to EYE`s initial choice of expression - paper drawings.

FINALBY ( )

FINALBY ( ) first debuted at Fuji Rock in 2021 in front of an unknowing crowd. Since then, FINALBY ( ) has performed only in Hong Kong, Osaka, and now Tokyo. We all know that EYE is a visual artist on top of being a musician but rarely has his visual side collided justly with the music on stage. Like an updated and rebirthed technological Hanatarash (by my eye), EYE has developed a new strong, physical performance more like


performance art coupled with objects connected to noise machines, lights, and sensors. His technical collaborators = other members of FINALBY ( ) are COSMICLAB (directed by C.O.L.O.), art engineer Horio Kanta, and programmer Niimi Taiki. This is very much a digitized EYE. Without a doubt a unique combination of our technical age.

I was lucky enough to witness the beginning of this new venture toward multi media in a small room in Harajuku before the pandemic. At TOKYO CULTuART by BEAMS Harajuku in 2019 for a BOREDOMS t-shirt exhibition, EYE wore a face mic and a black jacket somewhat covering two motion detecting sound machines attached to both his hands that emitted noises. Activating the sensors with motion and singing unbound by a regular mic, EYE was experimenting with the beginning of what would become FINALBY ( ). Here EYE also introduced his obsession with large cones as sound devices. To match his clothing, EYE had a black cone with sensors on the bottom. Picking it up and waving it around affected the sounds emitted and provided funny eye candy as cones are naturally bottom heavy and odd shaped. Behind EYE was an engineer to support the technical side of the performance. Having witnessed this very intimate performance in a room full of 30 or so fans, I can now see the initial development and vision that took 6 years to materialize in Tokyo.

To prepare and hype myself up for going to see FINALBY
( ), I dusted off a copy of the Boredoms` Super Roots 5, one of their most difficult to attain recordings and also their most abstract. At the beginning of their heavy drum and cymbal phase, the one track album is one hour long and basically one long cosmic tone

maintained straight with bubbling noise and cymbals. There is no song per se. Only a holy experience. This reminds me of 1982.

In 1982, the avant garde guitar composer, Glenn Branca performed live his work Symphony 2 with the added title “The Peak of the Sacred.” Only meant for that work in particular, that title though often describes much of his most emotional work. Symphony 2, one of the least complex of his works in terms of multiple chord changes, was one of his best for the sheer intensity and almost god-like continuous blasts of angelic amorphous energy that felt like thunder in the air.

The idea of the peak of the sacred evokes music that is continuously euphoric and orgasmic for humans to rise beyond themselves. EYE`s direction of the Boredoms with the BOADRUM series and other performances I feel were meant to reach “ the peak of the sacred” whether explicitly expressed or not. EYE`s focus on the “experience” over the “song” illustrates his evolving and complex mental state and music focus since then. Throughout FINALBY
( ), I keenly felt EYE reach “ the peak of the sacred” as only he could.

FINALBY ( ) Live in Kabukicho Expanded (the full title of the night) was a 2 hour uninterrupted performance art piece which didn't advertise itself to be that. Genius. When purchasing the ticket, I noticed that the performance was supposed to be 2 hours but I assumed that there would be a dj or something. No, it was 2 full hours of huge blasts of noise with EYE and matching euphoric visuals designed to create a dialogue that worked very perfectly.

On stage at the center was a “thing” that I could only describe as a light illuminated huge cupcake. That “thing” I learned later was a noise generator that EYE could tap at like a djembe. Across the

stage were several more cones with the largest suspended in air at the front of stage so massive it could cover EYE from head to toe (which it later did). In the center of the floor surrounded by the majority of the audience right before the sound and visual mixing booth of another huge - I do mean huge - cone on a platform that later would light and spin in a circle pushed by EYE. During the performance EYE moved back and forth from the stage to the floor centered cone. ZEROTOKYO, for the many who have never been inside it, is a venue unique in having not only a huge stage screen but long thin screens on the left, right, and back wall making a 360 degree surround experience.

The monochrome digital clouds from Mapocy re-introduced themselves here, they emerged from the back and the sides making everyone have to be present in the moment instead of looking for the next instagram moment with their phones. Unlike any performance I have been to in years, this was first time in ages where no documentation could do justice to each person`s experience that night. Whether with the noise assault or the constantly shifting orientation of the images.

EYE, having changed the Boredoms from an unusual, quirky punk group to a band capable of performing hour and a half concerts has attained the psychological knowledge few have of how to construct enlightening performances of such depth that change the molecules of the crowd. The peak of the sacred.

EYE named the group of cones a family and stated so at the end of the performance in a rare commentary of his ideas to the audience. The cones were a family and the real members of FINALBY ( ) making the human members only conduits. *** Please refer to his exact explanation of the cones posted on

October 26th on EYE`s own Instagram account. The total experience felt like a great rebirth of dynamic performance art in the tradition of early Butoh, Laurie Anderson, Philip Glass, and others.

EYE with C.O.L.O of COSMICLAB at MUTEK JAPAN

Held in Shibuya, EYE for the first time ever graced the stage of the 2025 edition of MUTEK JAPAN with C.O.L.O. (COSMICLAB) presenting a more fantastic and longer version of the surprise performance they did for ART WEEK TOKYO on Nov. 5. Unlike FINALBY ( ), this performance was closer to a traditional audiovisual performance but luckily more unhinged. Most performers of MUTEK try to impress with a less-is-more aesthetic but this was a case of more-is-so-much-more one. The FINALBY (
) concert was a submersion in 2 hours of near constant noise. The MUTEK performance of C.O.L.O. and EYE, standing together at a long table shadowed by a huge screen behind, was closer to EYE`s manic DJ PICA PICA PICA mix style. An incredible soup of noise portions of FINALBY ( ) with the same monochrome flicker visuals side by side with hyper psychedelic hardcore singeli music reflecting his ongoing fascination with the manic genre. And tons of near indescribable collages in between.

EYE`s music and visual style is like pop art on acid. C.O.L.O. convinced me he was the best collaborator for EYE, brilliantly reflecting EYE`s impulses assaulting the audience with demented flicker flowers, mind-altering geometry, a sea of eyes (totally tongue in cheek), heart and pig emojis dancing across the screen in similar patterns followed by near collision slow motion disaster 3D video game scenes of Dekotora trucks loosing their wheels. The intensity


was beautifully calculated and unreal. A full head rush with barely a moment to breath.

With so many perspectives of EYE`s singular always evolving expression in only a few months time, I can only pray that 2026 brings us more.

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