「MAN ON MAN」と一致するもの

CHANGSIE - ele-king

 東京のアンダーグラウンドでその名を轟かせる実力派DJ、今年は〈BLACK SMOKER〉からミックス『THE FURY』をリリースしてもいる CHANGSIE (チャンシー)が、2020年1月24日、キャリア初にして渡英前最後のワンマン・パーティを WWWβ にて開催する。昨日公開されたRAのポッドキャストではUKガラージを軸にしたダイナミックなプレイを披露してくれているけれども、きたるパーティはオープンからクローズまでのオールナイトとのことで、より多彩なセットを楽しむことができそうだ。この機会を逃しちゃいけない。

NYクラブ・ミュージックの新たな波動 - ele-king

 NYダンス・ミュージック・シーンの10年代の変遷については前編で伝えたけれど、20年代が始まろうとする今のブルックリンのアンダーグラウンドはどうなっているのだろう?

 2012年、〈Mister Saturday Night Records〉によってその才能を見出された Anthony Naples は、それから7年経った今、もはやブルックリンのダンス・ミュージック・シーンを牽引するといっていいほど勢いのある存在だ。ヨーロッパを中心に毎週世界のどこかでブッキングされる人気DJの傍ら、2017年には、まだ発掘されていないNYの新しいアーティストにフォーカスするインデペンデント・レーベル〈Incienso〉をデザイナーの Jenny Slattery とともに設立。その第1弾としてフィーチャーされたのが、10年代のブルックリンのユース・カルチャー・シーンをともに歩んできた、“DJ Phython”こと Brian Piñeyro のデビューLP『Dulce Compãnia』だ。

 実は DJ Python のほかに、表現するモノによって DJ Wey や Deejay Xanax、Luis などの名義も使い分ける Brian Piñeyro は、DJ Python では〈Incienso〉の前身のレーベル〈Proibito〉時代からすでに、ディープ・ハウスやシューゲイザー、トランス、レゲトンなどをスローテンポにしたサウンドのうねりをゆったりサーフライドしていくような「ディープ・レゲトン」と呼ばれる新たなスタイルを打ち出してきた。この『Dulce Compãnia』のリリースは、オンライン・マガジン「ローリング・ストーン」における「2017年ベスト・エレクトロニック・アルバム」にランクインされるほど高く評価され、そのスタイルを確かなものにした。
 さらに、今年6月にはアムステルダムを拠点とするレーベル〈Dekmantel〉からEP「Derretirse」をリリース。『Dulce Compãnia』に続き2作目となる本作では、ラテンにルーツを持つ Brian Piñeyro らしく、南半球から生まれる陽気なパーカッションやリヴァーブ、ディープ・シンセのリズムとともにレゲトンとアンビエント、ポストIDMがよりメローに融合していくようなさらなる進化を遂げている。そんなブルックリンのアンダーグラウンドで育まれたオリジナルのサウンドが「ディープ・レゲトン」として世界に広まりつつある今、DJ Phython は、間違いなくこれから活動の場を外へ広げていくNYの新世代アーティストのひとりだといえるだろう。

「Derretirse」より“Be Si To”

 そして、〈Incienso〉の第2弾には、カナダの〈1080p〉やシカゴの〈Lillerne Tape Club〉からカセットテープを発表してきたダンス・ミュージック・シーンの新星 Beta Librae のデビューLP『Sanguine Bond』をフィーチャー。実はブシュウィックの「Bossa Nova Civic Club」がオープンした当時(2012)からプレイしている Beta Librae は、この「Bossa Nova Civic Club」で、女性特定のDJ集団「Discwoman」を主宰する同郷の Umfang とともに今のNYのアンダーグラウンドで重要なポジションを占める「Techno feminism」というパーティのレジデントDJを務めている。


Bossa Nova Civic Club 2013 flyer “Techno feminism”

 そんなバックグラウンドの片鱗を垣間見せるような『Sanguine Bond』では、アンビエントなディープ・ハウスにエレクトロニック・サウンドをレイヴ感たっぷりにミックス。この新しい質感こそがまさに“今のNYサウンド”だと思わせる、NYのダンス・ミュージック・シーンに新境地を切り拓くアルバムとなった。

『Sanguine Bond』より“Pink Arcade”

 レーベルについて、「ポリシーは、“私たちが真価を認めている人たちの、新鮮でおもしろさを見出せる音楽をリリースする”こと。これまでのリリースでは身近な友人だけをフックアップしてきて、これは絶対的なルールじゃないけど、その人のことを知っているからこそすでに彼らとの信頼関係があるのは制作においてかなりやりやすいの。そして、まだリリースのない人を紹介することが何よりもエキサイティング!」と、Jenny Slattery。
 その後〈Incienso〉は、CZ Wang と Joli B. のデュオ People Plus によるEP「Olympus Mons」や、まだ記憶に新しい工藤キキのEP「Splashing」、最新作には Sleep D によるLP『Rebel Force』など、レーベル設立からたった2年でコンスタントに7つのタイトルを発表し、NYナイズされた気鋭のダンス・ミュージックを発信し続けている。さらに、Jenny Slattery は、「最初はNYの友人たち、そして次は世界中の友人たちへ。レーベルを通じて作り上げたコミュニティとアーティスト自身の小さな世界をリンクさせていくのは楽しいし、それを続けていくことがこれからも楽しみ。2020年は、DJ Python のセカンドLPから始まり、これまででいちばん有望な年になりそう」。


L to R: People Plus, Kiki Kudo, Sleep D

 そんなアンダーグラウンド・シーンで最もフレッシュなリリースといえば、ブルックリンに拠点を置き、Anthony Naples や DJ Phython、Beta Librae たちと一緒に肩を並べてきた Galcher Lustwerk のLP『Information』を真っ先に挙げたい。

 そもそも Galcher Lustwerk が世界から注目されるようになったきっかけまで話を遡ると、2013年に発表した初めてのミックス「100% Galcher」が決定的だろう。エクスペリメンタルなダンス・ミュージックをはじめ、エレクトロニック・サウンドに関連するさまざまなアーティストのミックスに焦点を当てた実験的なプロジェクト「Blowing Up The Workshop」のために未発表音源を集めて制作した「100% Galcher」は、オンライン・マガジン「FACT」の「2013年ベスト・アルバム50」では4位、「Resident Advisor(以下、RA)」の「2013年ミックス/コンピレーション・トップ30」ではオンライン・ミックス部門で堂々1位を獲得し、“無名の新人が自身の音源のみでミックスを公開するのは2013年のベスト・サプライズだった”と「RA」から絶賛された。ディープ・ハウスのようなドラムマシンに独自のスモーキーなヴォーカルをかけ合わせたサウンドは、平たく言うと控えめなヒップハウスのようで、ありそうでなかったオリジナリティーにほかならない。Galcher Lustwerk はそれほど鮮烈なデビューを果たしたのだ。


2012年のトラックを集めたプロモミックス「100% Galcher」

 そして、同年 Young Male と DJ Richard が主宰するブルックリンの〈White Material〉からヴァイナル・デビューとなるEP「Tape 22」をリリースするやいなやその新鮮なサウンドが世界のダンス・ミュージック・リスナーの心をつかみ、2015年に立ち上げた Galcher Lustwerk 自身のレーベル〈Lustwerk Music〉から立て続けに、「100% Galcher」のシングルカットとなるEP「Parlay」と「I Neva Seen」、〈White Material〉の Alvin Aronson とのプロジェクト「Studio OST」名義でLP『Scene (2012-2015)』をリリース。その意欲的な活動とユニークなサウンド・スタイルで、Galcher Lustwerk という存在を揺るぎないものにしていった。

 話を本題に戻すと、今年11月にリリースされたばかりの最新作『Information』は、2017年〈White Material〉からのデビューLP『Dark Bliss』、翌年2018年〈Lustwerk Music〉からのセカンドLP『200% Galcher』に次ぐ、待望のサード・アルバム。しかも、Matthew Dear や Gold PandaTychoShigeto などのアーティストをダンス・ミュージック・シーンに輩出してきたミシガンの名門〈Ghostly International〉のデビュー作品だ。Galcher Lustwerk は〈Lustwerk Music〉のホームページにこうコメントを寄せる。
 「アメリカはミッドウェスト、クリーヴランド出身の自分が〈Ghostly International〉と一緒に作品を出すのであれば、最もミッドウェスト的な“フックの強い”トラックを選び出すことがしっくりくると思う。このアルバムでは、ほかのクリーヴランドのプロデューサーが作る曲のなかで聴いたビターウィートな質感を表現したかったんだ」。

 その言葉の通り、『Information』は、Galcher Lustwerk ならではのスタイルが顕在しながらもよりライヴ感のあるドラムとジャズ・サックスを含んだ、これまで以上にダイナミックなサウンドを生み出している。

 このラインでブルックリンのアンダーグラウンド・シーンを紹介したなら、前編からの一連で登場した〈L.I.E.S. Records〉や〈Proibito〉、さらには Maxmillion Dunbar が主宰するワシントンD.C.の〈Future Times〉など10年代のアメリカで重要なレーベルからリリースのある“Huerco S.”こと Brian Leeds についても特筆すべきだと思うけれど、彼は、2018年に自身のレーベル〈West Mineral〉を立ち上げるとともにブルックリンからベルリンへ拠点を移した。アンビエントやドローン、エスニックに通ずるエクスペリメンタルなエレクトロニック・サウンドを発表してきた〈West Mineral〉では、Brian Leeds の故郷であるカンザスのアーティストを中心にフィーチャー。20年代が始まろうとする今、Brian Leeds はもはや「NYサウンド」というこの本題にはくくりにくい存在となってしまったが、拠点をベルリンに移した今でもNYで培ってきた大もとのスタンスは変わらないはず。

 もちろんほかにここで紹介しきれなかった新世代アーティストもたくさんいるが、実は今回取り上げた DJ Python と Beta Librae、Galcher Lustwerk は、DJ/プロデューサーの Aurora Halal が主宰するNYで数少ない野外レイヴ・パーティ「Sustain-Release」の国外初となるサテライト・イベント「S-R Meets Tokyo」のために来年1月に来日を予定している。そもそも、「NY」とか「新しい世代」とか、日常的になじみの薄い字面だけでハードルの高さを感じる人もなかにはいるかもしれない。だけど、一度彼らを見てみたら、きっと好きになると思う人たちの顔も目に浮かぶ。

Sustain-Release presents “S-R Meets Tokyo”

2020年1月25日(土)東京・Contact
OPEN 22:00

出演
Aurora Halal (NY)
Galcher Lustwerk (NY)
Wata Igarashi (Midgar | The Bunker NY)

DJ Python (NY)
Beta Librae (NY)
AKIRAM EN
JR Chaparro

Mari Sakurai
Ultrafog
Kotsu (CYK | UNTITLED)
Romy Mats (解体新書)
Celter (Eclipse)

料金
BEFORE 11PM ¥2500 | UNDER 23 ¥2500 | ADVANCE ¥2500 | GH S MEMBERS ¥3500 | W/F ¥3500 | DOOR ¥4000
詳細:https://www.contacttokyo.com/schedule/sustain-release-presents-s-r-meets-tokyo/

The Gerogerigegege, Jon K & Peder Mannerfelt - ele-king

 ここ数年、順調にリリースを重ねている〈C.E〉オリジナルのカセットテープ・シリーズ。なんと新たに3本の発売が決定いたしました。
 1本目は、今年〈The Trilogy Tapes〉からLPを発表しているノイズの巨星、ザ・ゲロゲリゲゲゲの新作『>(decrescendo)』で、すでに12月7日に発売されています。
 もう1本は、マンチェスターを拠点に活動するジョン・K(デムダイク・ステアの〈DDS〉がイキノックスを出すことになったきっかけは彼だそう)によるミックスで、10月に開催された〈C.E〉のパーティ(素敵な一晩でした)にて録音されたもの。
 そしてもう1本は、近年どんどん存在感を増しているスウェーデン出身のテクノ・プロデューサー、ペデル・マンネルフェルトの新作『Work』で、来年頭に発売予定。
 いずれも〈C.E〉の旗艦店のみでの販売とのことなので、売り切れてしまうまえに急ぎましょう。

The Gerogerigegege / Jon K / Peder Mannerfelt



アーティスト:The Gerogerigegege
作品タイトル:>(decrescendo)
フォーマット:カセットテープ
収録音源時間:約80分(片面約40分)
発売日:2019年12月7日土曜日



アーティスト:Jon K
作品タイトル:Recorded live at WWW X, Shibuya, Tokyo on 25 October 2019
収録音源時間:約90分(片面約45分)
発売日:2020年1月頭予定



アーティスト:Peder Mannerfelt
作品タイトル:Work
収録音源時間:約70分(片面約35分)
発売日:2020年1月頭予定

販売場所:C.E
〒107-0062 東京都港区南青山5-3-10 From 1st 201
#201 From 1st Building, 5-3-10 Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, Japan 107-0062
問合せ先:C.E
www.cavempt.com

Mark De Clive-Lowe - ele-king

 ソロ・アルバム『Heritage』にロウニン・アーケストラにと、今年ノりにノっているマーク・ド・クライヴ=ロウだけれど、さらなるリリースのお知らせだ。彼の主催するパーティ《CHURCH》のセッションが音源化される。発売は年明け後の1月22日(水)。ソロ作もロウニン・アーケストラのアルバムも充実の内容だったので、このセッション録音盤もしっかりチェックしておきましょう。

Mark De Clive-Lowe
CHURCH Sessions

多岐なシーンで活躍を続けるキーボード奏者/プロデューサー“マーク・ド・クライヴ・ロウ”が主催する、セッション・イベント「CHURCH」。
ジャズ/ソウル/ヒップホップを代表するミュージシャンが多数参加した、躍動的な熱気と演奏が集約された音源が9周年を記念して一枚に!!

Official HP: https://www.ringstokyo.com/mark-de-clive-lowe-church-sessions

CHURCH はマーク・ド・クライヴ・ロウが2010年からLAで始めたパーティ。ミュージシャンのライヴとDJのプレイを垣根なく楽しむ場だ。「教会」の名が付いているのは伊達じゃない。飛び入りのセッションもあって、時間と共に様々な人々が混じり合う特別な空間が出来上がる。パーティ9周年を祝うセッションを収めた本作からは、その熱気と演奏のクオリティの高さが伝わるはず。LAのみならずNYでも評判となった CHURCH は、ハイブリッドでオープンマインドなジャズを追求してきたマークのライフワークである。 (原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : MARK De CLIVE-LOWE (マーク・ド・クライヴ・ロウ)
タイトル : CHURCH Sessions (チャーチ・セッションズ)
発売日 : 2020/1/22
価格 : 2,400円+税
レーベル/品番 : rings (RINC63)
フォーマット : CD (日本企画限定盤)

Tracklist :
01. Kamau Daaood & Mark de Clive-Lowe / Invocation
02. Mark de Clive-Lowe / Smoked Something
03. Colectivo Arte & Manha / Mystic Brew (feat. Mark de Clive-Lowe, Ricardo Pino,
Antonio Bruheim & Joao Leandro)
04. John Robinson & Mark de Clive-Lowe / A.C.H.H.
05. Colectivo Arte & Manha / Atlantic Journey (feat. Mark de Clive-Lowe, Ricardo
Pino, Antonio Bruheim & Joao Leandro)
06. Joy Jones & Mark de Clive-Lowe / Steps Ahead
07. Stro Elliot, 14KT & Mark de Clive-Lowe / Part One
08. Stro Elliot, 14KT & Mark de Clive-Lowe / Part Two
09. Stro Elliot, 14KT & Mark de Clive-Lowe / Part Three
10. Mark de Clive-Lowe / Blueberries
11. Mark de Clive-Lowe / ESSS [Love the Space] (feat. Todd Simon & Te'amir)
12. Tommaso Cappellato / Ancient Prophecy (feat. Mark de Clive-Lowe)
13. Myele Manzanza, Mark de Clive-Lowe & Matt Dal Din / Montara
14. Mark de Clive-Lowe / Ryūgū-jō (Live at Grand Performances) [Bonus Track]

interview with Kode9 - ele-king

 今年で設立15周年を迎える〈Hyperdub〉。ベース・ミュージックを起点にしつつ、つねに尖ったサウンドをパッケージしてきた同レーベルが、きたる12月7日、渋谷 WWW / WWWβ にて来日ショウケースを開催する。
 目玉はやはりコード9とローレンス・レックによるインスタレイション作品『Nøtel』の日本初公開だろう。ロンドンでの様子についてはこちらで髙橋勇人が語ってくれているが、サウンドやヴィジュアル面での表現はもちろんのこと、テクノロジーをめぐる議論がますます熱を帯びる昨今、その深く練られたコンセプトにも注目だ。この機会を逃すともう二度と体験できない可能性が高いので、ふだんパーティに行かない人も、この日ばかりは例外にしたほうが賢明だと思われる。
 ほかの出演者も強力で、アルカのアートワークで知られるジェシー・カンダの音楽プロジェクト=ドゥーン・カンダ(11月29日に初のアルバム『Labyrinth』をリリース済み)や、昨年強烈なEP「Enclave」を送り出したアンゴラ出身のナザールと、なんとも刺戟的な面子が揃っている。さらにそこに〈Hyperdub〉からリリースのある Quarta 330 をはじめ、Foodman や DJ Fulltono、Mars89 といった日本のアンダーグラウンドの最前線を牽引する面々が加わるというのだから、これはもうちょっとしたフェスティヴァルである。
 というわけで、来日直前のコード9にレーベルの15周年や『Nøtel』、まもなく発売されるベリアルの編集盤などについて、いくつか質問を投げかけてみた。(小林拓音)


photo: David Levene

『Notel』の世界はデジタル化された不死の概念を展示するような場所でもあって、そこでは死んだ友人たちが生き続けている。

今年で〈Hyperdub〉は15周年を迎えます。2004年にレーベルをスタートさせたとき、どのような意図や野心があったのですか?

スティーヴ・グッドマン(Steve Goodman、以下SG):はじめたときは、亡きスペースエイプと一緒にやっていた自分の音楽をリリースするレーベルにしたいと考えていただけだった。それ以上の目標は持っていなかったよ。

それは、いまでも続いていますか? この15年で大きな転換点はありましたか?

SG:それが、当初の目的はあっという間にどこかへ行ってしまって、他のアーティストたちの作品をリリースするようになった。ある意味、まったく逆のことをやっている──いまでは自分の音楽をやる時間はほとんど持てないからね。ベリアルのアルバムを出したのは、間違いなく大きな転機だった。2014年に起こったDJラシャドとスペースエイプの死もそうだ。

『Diggin' In The Carts』のリミックスは、あなたのオリジナル作品と言っていいくらい独自にリミックスされていましたけれど、そのとき意識していたことや、4曲の選出理由を教えてください。

SG:2017年から、アニメイターの森本晃司が制作した映像を使って、オーディオヴィジュアル・ライヴを続けている──音楽は、コンピレイション・アルバム『 Diggin' In The Carts』の中から14曲を自分でリミックスしたものを使っている。リミックスEPには、その14曲から好きなトラックを選んだだけなんだ。

12月7日の来日公演に出演するドゥーン・カンダ(Doon Kanda)はヴィジュアル・アーティストとしてのほうが有名ですけれど、その音楽についてはどう思っていますか?

SG:彼の映像表現は、驚きに満ちていてすごく独特だ。音楽にかんしては、鋭敏で優美なメロディ・センスを持ち合わせていると思う。初めてその音楽を聴いたとき、これは アルカの曲だろうかと思ったんだけど、いまでは彼独自のサウンドを徐々に見つけていると思う。今回のアルバムはリズムもすごくおもしろくて、電子音でワルツを刻んでいると言ってもいいくらいだ。


photo: David Levene

おなじく今回来日するアンゴラのナザール(Nazar)ですが、彼の音楽の魅力とは?

SG:ナザールは、ここ最近〈Hyperdub〉で契約した新人でもとくに楽しみなひとりだ。他にはまったくないサウンドを持っていて、それを自分で「ラフ・クドゥーロ」(訳註:クドゥーロはアンゴラ発祥の音楽形式)と呼んでいる。彼がふだん鳴らしている音を説明するなら、ベリアルの音楽をさらに騒々しくしたヴァージョンと、マルフォックスニディア、あるいはニガ・フォックスらによる〈Príncipe〉レーベルの音楽の中間にあると言える。パフォーマンスをするときは、自分の音楽だけを演奏していて、何から何まで独創的な音の世界を聴かせてくれる。彼の作品テーマはアンゴラの内戦と関わりがあって、それで僕の著書『Sonic Warfare』とも共鳴する部分がある。そこがたいていのプロデューサーとちがうところだ。

まもなくベリアルのコンピレイションがリリースされます。彼のことですので、たんにレーベル15周年を祝ってという理由だけでなく、何か考えがあるように思えます。すべて既出の音源ですが、曲順も練られているように感じました。これは実質的に彼のサード・アルバムと捉えてもいいのでしょうか?

SG:彼は適切な流れをつくれるように考えて曲順を決めていた。厳密にはサード・アルバムとは言えないだろう──アルバム『Untrue』以降にリリースされたトラックをほぼすべて網羅したものでしかない。ここに収録されたトラックはどれも、アルバムに入っていないからという理由で、見過ごされてきたように感じられる。われわれとしては、今回の楽曲には、アルバムの収録曲より優れたものさえ存在すると確信している。

今年はサブレーベルの〈Flatlines〉も始動しましたね。第1弾はマーク・フィッシャーとジャスティン・バートンによる作品『On Vanishing Land』で、フィッシャーゆかりのアーティストが多く参加しています。この作品は彼への追悼なのでしょうか?

SG:そうだと言ってかまわない。レーベルの名前は、彼が博士号を取得したさいのテーマにちなんでつけたもので、この作品は、彼の最後の著書『The Weird and the Eerie』に記されたアイディアのいくつかをオーディオエッセイというかたちで実践したものだ。

今後〈Flatlines〉はどのような作品を出していく予定なのでしょう?

SG:もしかしたら、僕自身のオーディオエッセイをいくつか出すかもしれない。

AIやテクノロジーのことがよく話題にのぼる昨今、「もともと人間のために作られたシステムが、人間消滅後もシステム自らのために稼働し続ける」という『Nøtel』の設定は示唆的です。作品のもととなったあなたのアルバム『Nothing』が出てから4年たちましたが、『Nøtel』にはどのような反応が返ってきていますか?

SG:『Nøtel』は興味深いプロジェクトとして続いてきた。最初は僕とローレンス・レックが加速主義(訳註:現行の資本主義プロセスを加速することで根本的な社会変革に結びつけようとする思想)について意見を交わすことからはじまった。それがアルバムの2つ折りジャケットのアートワークにつながった。それから仮想空間に建造物を再現し、僕がライヴ演奏をしているあいだにローレンスがゲーム用コントローラーを使って内部を移動する様子を映し出す(それぞれのトラックにひとつの部屋が割り当てられている)という形式ができて、さらにはユーザー参加型のVR作品に仕上がった。そして『Nøtel』を実際のホテルに見立てた架空の広告を制作し、香港のアート・バーゼルというイヴェントで最大規模のヴィデオ展示をおこなった。12月には上海での展示がおこなわれる──『Nøtel』はこれまで突然変異を繰り返して異なる環境をつくり出し、いまもなお発展を続けている。今回、初めて日本でのパフォーマンスが実現する。


photo: Philip Skoczkowski

『Nøtel』では、資本主義を打ち破るコンセプトとして、ジャーナリストのアーロン・バスターニが描いた全自動ラグジュアリー共産主義(Fully Automated Luxruy Communism)が、資本主義的に読み替えられた全自動ラグジュアリー(Fully Automated Luxury)というコンセプトとして登場します。『Nøtel』は、人間がいなくなったあとも資本主義リアリズムがテクノロジーによって構築され続ける世界です。わたしの記憶が正しければ、『Notel』のなかには、亡くなったスペースエイプやDJラシャドがまるで幽霊のようにホログラムや映像として登場します。人間のいない『Nøtel』の世界に幽霊がいるとすれば、それはどのような意味を持つのでしょうか?

SG:『Nøtel』の世界はデジタル化された不死の概念を展示するような場所でもあって、そこでは死んだ友人たちが生き続けている。『Nøtel』は、富裕な人びとが求める社会的分離が行き着くところまで行ってしまった皮肉な事態(従業員が機械化されたのみならず、『Nøtel』には、もはや宿泊客がやって来ない──ただ、なぜそうなったのかをわれわれは語らない)をあらわすと同時に、「完全自動ラグジュアリーコミュニズム」(訳註:技術革新によって実現できるとされる豊かな共産主義社会で、アーロン・バスターニの著書『Fully Automated Luxury Communism』のタイトルと一致する)という概念があっても、それが企業体によっていかに容易に私物化されうるかという皮肉を示している。『Nøtel』では、ドローンが従業員として仕事をする。そしてこの作品は、自分たちを使役する人間が存在しなくなったと認識したドローンが自由を獲得することで結末を迎える。

あなたは、今回一緒に来日するローレンス・レックの映像作品『AIDOL』に、声優として出演していますね。『AIDOL』の舞台は東南アジアです。では『Nøtel』の世界では、「東洋」はどのように存在しているのでしょう?

SG:物語の上で、『Nøtel』は国有の中国企業によって経営されている──そのブランド戦略を担うコンサルタントのひとりはロンドンのアートスクールで学んだ経験があり、そこで「完全自動ラグジュアリーコミュニズム」という言葉を耳にして、意味をとりちがえたまま中国に持ち帰り、迂闊にも高級ホテルチェーンのキャッチフレーズに転用してしまったんだ。

『Nøtel』における機械(ドローン)には、われわれ人間と同じような肉体があるわけではないですが、人間性のようなものが宿っているようにも見えます。われわれは機械の尊厳についても考えるべきでしょうか?

SG:ドローンには、自由になりたいという欲望がプログラムされていて、それは、主人である人間に仕えるよう定めたプログラムよりも根源的なものとして機能する。どうあれ、人間は自動化を進めたまま、やがて終焉を迎えたということだ。

Hyperdub

Kode9 率いる〈Hyperdub〉の15周年パーティーが "Local X9 World Hyperdub 15th" として WWW にて12月7日(土)に開催決定!
また、孤高の天才 Burial が歩んだテン年代を網羅したコレクション・アルバムが国内流通仕様盤CDとして12月6日(金)に発売決定!

00年代初期よりサウス・ロンドン発祥のダブステップ/グライムに始まり、サウンドシステム・カルチャーに根付くUKベース・ミュージックの核“ダブ”を拡張し、オルタナティブなストリート・ミュージックを提案し続けて来た Kode9 主宰のロンドンのレーベル〈Hyperdub〉。本年15周年を迎える〈Hyperdub〉は、これまでに Burial、Laurel Halo、DJ Rashad らのヒット作を含む数々の作品をリリースし、今日のエレクトロニック・ミュージック・シーンの指標であり、同時に先鋭として飽くなき探求を続けるカッティング・エッジなレーベルとして健在している。今回のショーケースでもこれまでと同様に新世代のアーティストがラインナップされ、東京にて共振する WWW のレジデント・シリーズ〈Local World〉と共に2020年代へ向け多様な知性と肉体を宿した新たなるハイパー(越境)の領域へと踏み入れる。

Local X9 World Hyperdub 15th

2019/12/07 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
Early Bird ¥2,000@RA
ADV ¥2,800@RA / DOOR ¥3,500 / U23 ¥2,500

Kode9 x Lawrence Lek
Doon Kanda
Nazar
Shannen SP
Silvia Kastel

Quarta 330
Foodman
DJ Fulltono
Mars89

今回のショーケースでは、Kode9 がDJに加えシミュレーション・アーティスト Lawrence Lek とのコラボレーションとなる日本初のA/Vライブ・セットを披露。そして最新アルバム『Labyrinth』が11月下旬にリリースを控える Doon Kanda、デビュー・アルバムが来年初頭にリリース予定のアンゴラのアーティスト Nazar、そしてNTSラジオにて番組をホストする〈Hyperdub〉のレジデント Shannen SP とその友人でもあるイタリア人アーティスト Silvia Kastel の計6人が出演する。

BURIAL 『TUNES 2011-2019』

Burial の久しぶりのCDリリースとなる『TUNES 2011-2019』が帯・解説付きの国内流通仕様盤CDとしてイベント前日の12月6日にリリース決定!

2006年のデビュー・アルバム『Burial』、翌年のセカンド・アルバム『Untrue』というふたつの金字塔を打ち立て、未だにその正体や素性が不明ながらも、その圧倒的なまでにオリジナルなサウンドでUKガラージ、ダブステップ、ひいてはクラブ・ミュージックの範疇を超えてゼロ年代を代表するアーティストのひとりとして大きなインパクトを残したBurial。

沈黙を続けた天才は新たなディケイドに突入すると2011年にEP作品『Street Halo』で復活を果たし、サード・アルバム発表への期待が高まるもその後はEPやシングルのリリースを突発的に続け、『Untrue』以降の新たな表現を模索し続けた。本作はテン年代にブリアルが〈Hyperdub〉に残した足取りを網羅したコレクション・アルバムで、自ら築き上げたポスト・ダブステップの解体、トラックの尺や展開からの解放を求め、リスナーとともに未体験ゾーンへと歩を進めた初CD化音源6曲を含む全17曲150分を2枚組CDに収録。

性急な4/4ビートでディープなハウス・モードを提示した“Street Halo”や“Loner”から、自らの世界観をセルフ・コラージュした11分にも及ぶ“Kindred”、よりビートに縛られないエモーショナルなス トーリーを展開する“Rival Dealer”、史上屈指の陽光アンビエンスが降り注ぐ“Truant”、テン年代のブリアルを代表する人気曲“Come Down To Us”、そして最新シングル“State Forest”に代表される近年の埋葬系アンビエント・トラックまで孤高の天才による神出鬼没のピース達は意図ある曲順に並べ替えられ、ひとつの大きな抒情詩としてここに完結する。

label: BEAT RECORDS / HYPERDUB
artist: Burial
title: Tunes 2011-2019
release date: 2019.12.6 FRI

Tracklisting

Disc 1
01. State Forest
02. Beachfires
03. Subtemple
04. Young Death
05. Nightmarket
06. Hiders
07. Come Down To Us
08. Claustro
09. Rival Dealer

Disc 2
01. Kindred
02. Loner
03. Ashtray Wasp
04. Rough Sleeper
05. Truant
06. Street Halo
07. Stolen Dog
08. NYC

Gang Starr - ele-king

 90年代のヒップホップ・シーンを代表する存在であり、その後に繋がるヒップホップ・サウンドの基礎を作ったデュオである Gang Starr が、まさか16年ぶりとなるニュー・アルバムを完成させるなんて、筆者も含めて誰も予想していなかったであろう。2003年にリリースされた前作となる『The Ownerz』を最後に、Gang Starr はグループとしては事実上、活動停止となり、その状態のまま2010年にMCである Guru がガンによって命を落とす。以降、Guru の相棒であった DJ Premier はDJ/プロデューサーとして精力的に活動を続けながら、Gang Starr 名義での作品の制作およびリリースについて度々言及していたものの、実現まで到ることはなかった。しかし、Gang Starr が活動停止していた時期に Guru のDJ/プロデューサーを務めていた Solar という人物が保有していた未発表のヴォーカル音源が2016年に売却され、それが DJ Premier の手に渡り、今回のアルバムが制作されたというわけだ。

 今年9月に本作リリースの一報と同時に、先行シングルとして J.Cole をフィーチャした“Family and Loyalty”が発表されたのだが、往年の Gang Starr のフレイヴァーがそのままダイレクトに表現されたこの曲に、Gang Starr ファンであれば誰もが驚かされたに違いない。もちろん、厳密な意味で技術的にはいま現在の質感の上にあるものであるが、チョップ&フリップによるサンプリング・ループにワードプレイを駆使したスクラッチが随所にはめ込まれたトラックは、一聴してすぐにわかるあの当時の DJ Premier のシグネチャー・サウンドそのもの。そして、J.Cole という現トップクラスのラッパーを従えながら、Guru のラップは相変わらずの最高の相性で DJ Premier のトラックの上でドライヴし、全盛期とも寸分違わない Gang Starr としての完成形に仕上がっている。それは本作『One of the Best Yet』も同様で、DJ Premier と Guru のふたりでなければ成立しない、誰もが思う Gang Starr サウンドそのものがアルバムの隅々にまで行き渡っている。

 繰り返しになるが、本作は Guru が『The Ownerz』以降、亡くなるまでの間にレコーディングした未発表のヴォーカル音源に、DJ Premier が後からトラックを合わせ、そして、曲によってはゲストを入れた上でアルバムとして完成させている。つまり通常のアルバム制作の流れとは異なるわけであるが、不思議なほどに不自然さを感じることはない。そんなことを考える前に、DJ Premier によるDJプレイで Gang Starr クラシックが“Full Clip”から全11曲立て続けに飛び出すイントロの“The Sure Shot”で一気に気持ちを持っていかれるだろう。Gang Starr Foundation とも呼ばれる彼らのクルーから M.O.P. (“Lights Out”)、Group Home (“What's Real”)、Jeru the Damaja (“From a Distance”)といったメンツが再度結集し、さらに Big Shug と Freddie Foxxx に到っては“Take Flight (Militia, Pt. 4)”にて Gang Starr クラシックである“The Militia”の続編を『The Ownerz』ぶりに披露。また、当時では共演の叶わなかった Q-Tip (“Hit Man”)や Talib Kweli (“Business of Art”)などもゲスト参加していたり、あるいはインタールード(“Keith Casim Elam”)で Guru の実の息子がシャウトアウトを送ったりと、こちらの予想を超える様々な仕掛けが盛り込まれており、さらにこのアルバムを魅力的なものにしている。

 もちろん、90年代や2000年代のヒップホップ・サウンドを知らないリスナーがこのアルバムを聴いても、単なるオールドスクールなものにしか感じないかもしれない。だが、10年以上も前にレコーディングされた Guru のラップのスタイルやリリックの内容も含めて、時代を超えたヒップホップとしての普遍的な魅力が本作には詰まっており、Gang Starr をリアルタイムでは経験していない世代にも、その良さが少しでも伝われば幸いです。

Burial - ele-king

 12月6日に編集盤『Tunes 2011 To 2019』のリリースを控えるベリアルだけれども、新曲“Old Tape”がストリーミングにて公開されている。同曲は〈Hyperdub〉と Adult Swim のコラボによるレーベル15周年記念コンピ『HyperSwim』に収録されているトラックで、コンピじたいもすでに配信開始となっている。同盤には他にアイコニカリー・ギャンブルファティマ・アル・カディリローレル・ヘイローといった精鋭たちに加え、マイシャやDJハラム、エンジェル・ホなど最近レーベルに加わった面々も名を連ねている(もちろんコード9も)。『HyperSwim』の試聴・購入は下記のいずれかより。

 Adult Swim / Spotify / Bandcamp

 なお〈Hypedub〉は12月7日に渋谷 WWW にて来日ショウケースを開催予定。

HyperSwim

Tracklist:
01. MHYSA - Games
02. Okzharp & Manthe Ribane - In Your Own Time
03. Ikonika - Primer
04. Proc Fiskal - Devlish River
05. DJ Taye - Inferno
06. DJ Haram - Get It
07. Angel-Ho - Chaos
08. Burial - Old Tape
09. Doon Kanda - Perfume
10. Mana - Climbing The Walls
11. Dean Blunt - Darcus
12. Scratcha DVA - Baka
13. Cooly G - Nocturnal
14. Nazar - Unruly
15. Kode9 - Cell3
16. DJ Spinn - Opioids
17. Lee Gamble - Chain 9
18. Laurel Halo - Crush
19. Fatima Al Qadiri - Filth

Jon Casey - ele-king

 これは〈トランスマット〉が出さなければいけないアルバムだったのではないだろうか。南アの実質的な首都プレトリアからジョン・ケイシーによるデビュー・アルバム。ブリティッシュ・テイストのダブステップ「Geneva / Trigger Happy」で2年前にデビューし、ごく短期間に「Rockefeller EP」「6 Caliber EP」「Wave013」「On The Storm EP」と立て続けにリリースを重ね、ゴムやトラップをミックスしていく過程で独自のアマルガメイションを起こしたハイブリッド・ベース。これまでのリリースからは完全にひと皮向けてしまい、この夏にリリースされた「Catharsis EP」からも完全にかけ離れた内容となっている。オープニングは意表をついてメカニカルなタンゴ。”Militant(過激派)”というタイトルとは裏腹にファニーなムードでゲートウェイは開かれる。初期から音づくりは基本的に派手な方ではあったけれど、“Birdbrain”(18)あたりがターニング・ポイントとなったのか、それまでまったくといっていいほどアフリカ的な軽やかさには欠け、むしろブリストル産を思わせるウォッブリーな振動を運んでくることが多かったのに、続く“TV Room”と“Jaded”ではデリック・メイもかくやと思うようなカラフルで空間的に広がりのあるドラム・パターンを連打。デトロイト・テクノとUKファンキーを足して2019年に着地させたら、こうなっただろうか。この開放感は予想外だった。これに"Jaded(=疲れ切った、うんざりした)”というタイトルをつけるセンスは100%理解不能。ピアノのループがとてもいいです。先行シングルとなった“Banga(波)”はゴムやバングラにジュークも混ぜて、もはやどこまで行ったかよくわからないリズムに。スクリュードさせたヴォーカルからコロコロとリズム・パターンが変わる複数の「波」に翻弄される3分6秒。同曲を共作しているダバウ(Dabow)はアルゼンチンでケイシーと似たようなことをやっている新鋭で、この人もユニークな存在だけれど、面倒なので省略。続いて“Ransack(略奪)”。ジュークをスクリュードさせたような短い曲で、またしても穏やかではないタイトルだけれど、アルバム・タイトルとなっている『Flora & Fauna』が「(特定の地域に住む)動物と植物」のことを指し、ジャケット・デザインに象牙らしきものがあしらわれているのを見ると、やはり密漁によってアフリカの動物が乱獲されていることに心を痛めているという意味なのかなと。そう思うと少し悲しい曲に聴こえてくる。

 後半は初期にやっていたダブステップに立ち返りつつ同じことはやらないぞという気概を見せてトラップを意識したような曲が続き、まずはスローモーションでどんちゃん騒ぎをしているような“2 Slice”、タイトルを裏切らずにカチャカチャとにぎやかな“Pac Man”、のったりとした“Playlust”はPlaylistとlust(欲望)を掛け合わせた現代の鎮魂歌のようで、これはデリック・メイというよりはカール・クレイグかな。最後がトラップとダブステップを不可分なく融合させてしまった“Plymouth”で、レーベルのアナウンスも含めて『Flora & Fauna』が過度にトラップであると強調して紹介されるのはこの曲のせいではないかと思われる。重苦しく優雅で、南アフリカが複雑で込み入った生活環境に覆われていることがざっくりと伝わってくる。同曲に参加している清水ではないチー(Chee)もまた南アのプレトリアでドラムンベースを軸に音楽制作を行い、2017年にセカンド・アルバム『Fear Monger』が注目を集めた新鋭。「南アにはまだ数え切れないほどのアーティストが眠っているよ」とは、2年前にチーが語っていた言葉で、そのなかにはすでにジョン・ケイシーもいたということなのだろう。チーにはEDMの残像がちらついている。年齢的に見て、そこが音楽への入り口だった可能性は十分にありうる。しかし、彼はそこから類まれなる克己心を持って自らの音楽性を掘り下げ、アンダーグラウンドへと突き抜けてしまった。クワイトやアヨバネスから数えて彼が南アのクラブ・ミュージックにおいて何世代目に当たるかはもはやよくわからないけれど、チーの背中を追ったジョン・ケイシーにはEDMのメソッドを振り払う苦労はなく、あっさりと次に歩を進められる条件が整っていたのだろう。「6 Caliber EP」あたりは『Fear Monger』とそれほど大きな差があるとは思えないものの、『Flora & Fauna』ははるかに遠くまでリーチを延ばし、カリフォルニアのレーベルからこうして手が伸びてきたと。


NITRODAY × NOT WONK - ele-king

 ミニ・アルバム『少年たちの予感』が話題のニトロデイが、年明けの1月12日に新代田FEVERにて自主企画イベント《ヤングマシン4号》を開催する(この日はヴォーカル小室の20歳の誕生日なのだという)。共演相手に選ばれたのはなんと、こちらも今年話題のアルバム『Down the Valley』を発表した NOT WONK! これは素敵な一夜になりそうだ。詳細は下記をば。

NITRODAY、ヴォーカル小室の20歳の誕生日となる、2020年1月12日(日)新代田FEVERにて自主企画ヤングマシン4号を開催!
共演は NOT WONK が決定!

来年2020年1月12日(日)NITRODAYヴォーカル小室の記念すべき20歳の誕生日に、自主企画シリーズ「ヤングマシン」の第4回「ヤングマシン4号」の開催が発表された。
対バンは以前自身のツアーにも招き、メンバーがリスペクトを公言している、NOT WONK の出演が決定!

まさにヤングでロックでオルタナティブな夜になること間違いない。
先行受付も本日からスタートするので、ロックファンは間違いなく来て欲しい夜になるだろう。

【LIVE INFO】
ヤングマシン4号
2020年1月12 日(日)東京・新代田FEVER
出演:NITRODAY / NOT WONK and more...
open 17:30 / start 18:00
2,800円(ドリンク代別)

オフィシャル先行受付
11/22(金)12:00~12/1(日)23:00
https://www.nitroday.com/

NITRODAY "ブラックホール feat.ninoheron" (Official Music Video)
https://youtu.be/YCz0RcZWXHA

NITRODAY "ダイヤモンド・キッス" Official Music Video
https://youtu.be/Q_B-7kmMcjc

NITRODAY "ヘッドセット・キッズ" Official Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=GAysdh-dL1U

“少年たちの予感”各配信サイト
https://ssm.lnk.to/premonition_of_kids

NITRODAY
NEW MINI ALBUM「少年たちの予感」
発売日:2019年10月23日(水)
税込価格:¥1,650 税抜価格:¥1,500
品番: PECF-3244
収録曲
01. ヘッドセット・キッズ
02. ダイヤモンド・キッス
03. ブラックホール feat.ninoheron
04. アンカー
05. ジェット (Live)
06. ボクサー (Live)
07. レモンド (Live)
08. ユース (Live)

【other live】

■2019年12月8日 「極東最前線~にゅーでいらいじんぐ2019~」 
会場:渋谷CLUB QUATTRO 出演)eastern youth / NITRODAY

■2019年12月13日 「Doors Music Apartment -1213-」
会場:仙台LIVE HOUSE enn2nd + 3rd 
出演:NITRODAY / オレンジスパイニクラブ / osage、Slimcat / TETORA / CRYAMY / MINAMIS

■2019年12月20日 「年末調整GIG 2019」
会場:名古屋CLUB UPSET
出演:EASTOKLAB / キイチビール&ザ・ホーリーティッツ / PELICAN FANCLUB / NITRODAY

■2019年12月31日 「AFOC x Shelter presents ROCK 'N' ROLL NEW SCHOOL 19/20」
会場:下北沢SHELTER
出演:a flood of circle / SAMURAIMANZ GROOVE / The ManRay / THE PINBALLS /突然少年/ NITRODAY  / DJ:片平実 [Getting Better]

■2020年2月15日 「ROOTS NEW ROUTE TOUR」
会場:心斎橋Pangea
出演:Jurassic Boys / No Buses / CAR10 / NITRODAY / DJ:DAWA [FLAHE RECORDS]

■2020年2月16日 「ROOTS NEW ROUTE TOUR」
会場:名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
出演:Jurassic Boys / No Buses / CAR10 / NITRODAY / DJ:⽚⼭翔太(BYE CHOOSE)

【PROFILE】
小室ぺい(ギボ) やぎひろみ(ジャズマスター) 松島早紀(ベイス) 岩方ロクロー(ドラムス)

独特の語感で描かれる小室の歌詞世界を軸に、様々なロックミュージックへのリスペクトと愛情を感じるサウンドをポップにそして、時にエモーショナルに表現し、今後の日本ロックミュージックを担うであろう大きな可能性を秘めたバンド。2018年7月2nd EP「レモンドEP」をリリースし、Apple Music「今週のNEW ARTIST」、SPACE SHOWER NEW FORCE 2018、タワレコ メンなどにも選出され、2018年12月1st アルバム「マシン・ザ・ヤング」をリリース。2019年3月22日新代田FEVERにてバンドとして初のワンマンライブを開催。7月19日渋谷WWWにて自主企画第3弾「ヤングマシン3号」を開催。そして11月より盟友betcover!!とのスプリットツアー“エノシマックスツアー”を開催中。

▼TOTAL INFO
NITRODAY OFFICIAL WEBSITE
https://www.nitroday.com/

NYクラブ・ミュージックの新たな波動 - ele-king

 日本では平成から令和へと新たな元号を迎え、アメリカではバラク・オバマからドナルド・トランプへ大統領が交代するなど歴史的な瞬間の多かった10年代はあと1ヶ月残し、もうすぐ20年代が始まろうとしている。
 10年代を振り返ると、iPhone をはじめとするスマホが瞬く間に世界へ浸透し、万国共通のソーシャル・ネットワーキング・サービスはフェイスブックから同じくフェイスブック社が2010年に開発したアプリ、インスタグラムへシフト。Spotify や Apple Music などの音楽ストリーミングサービスが日常の一部になるどころか、そういったサービスにわざわざ加入しなくても YouTube や SoundCloud などの無料の共有サービスによって、メディアを使わずにスマホひとつで音楽を聴くことができるエポックメーキングな時代に変わった。
 出だしが長くなったけれど、ここで触れたいのは、時を同じくして変化していったNYはブルックリンのミュージック・シーン。それも、今では世界的な実力のある Anthony Naples や Aurora Halal らを筆頭に、“NYサウンドの新世代”ともいえる10年代のユース・カルチャー・シーンについて紹介していきたい。

 00年代、NYのハウス・ミュージック・シーンにおいて唯一無二の存在は、かつてマンハッタンのミートパッキングにあった「Cielo Club」。2003年にオープンしてから François K. や Louie Vega、Kenny "Dope" Gonzalez などの名だたるメンツがレジデントDJを務めるハイクラスなレギュラー・パーティが話題を集め、翌年(2004)にはアメリカの「Best Club- Dancestar Awards」を受賞。ウィリアムズバーグにあった共同オーナーのヴェニュー「Output」とともに今年始めに幕を閉じるまでの15年間、とにかく“グッド・ミュージック”を提供し続けた老舗だ。
 そんなパーティへ遊びに行っていたヤング・ジェネレーションにとっても前述したようなDJがビッグネームであることには間違いないが、彼らが目指したスタイルは一時代を築いたDJたちと同じものではなかった。むしろ「自分たちと同世代がやりたいことをやれるような場所がNYには少なかった」と話す当時まだ名もないDJや、DIYで新しいことを始めたいと思う人たちによって、NYのダンス・ミュージック・シーンは2010年を境に、地価の高騰するマンハッタンからやりたいことを合理的にできるブルックリンへと移り変わっていった。

 今年11月、再び日本で開催された「Mister Saturday Night」は、まさにそんな時代背景を写したようなブルックリンを代表するパーティのひとつだ。『ガーディアン』誌で“NYで最も優れたDJデュオのひとつ”と称賛された、アイルランド人の Eamon Harkin とアメリカ人の Justin Carter のふたりは、00年代後半にマンハッタンの老舗「Santos Party House」で前身となるパーティをスタート。その後ブルックリンに拠点を移し、ゴワナスのバックヤードやロフトスペースなどのオープンエアーな場所を利用したデイタイムの屋外パーティ「Mister Sunday」を始め、ここだけでしか体験できないDIYなスタイルの「Mister Saturday Night」へと大成させた。
 そんなパーティの常連であるNYのアーティストを取り上げていくことを当初のコンセプトに、2012年には同名義のレーベルを設立。パーティから生まれた理想的なレーベルの第1弾には、まさに当時フロアで踊っているうちのひとりにすぎなかった Anthony Naples をフィーチャーしたEP「Mad Disrespect」をリリース。シカゴ・ハウスのようなドラムマシンにエモーショナルなヴォーカルを乗せたソウルフルなサウンドは、ピークの「Mister Saturday Night」のフロアを思い起こさせる、“新時代のエクスペリメンタルなトラック”として注目を集めた。その後、Hank Jackson や気鋭のデュオ General Ludd などを次々と世に送り出しただけでなく、2015年には「Mister Saturday Night」のホームとして、今のブルックリンで最も旬なヴェニュー Nowadays もオープン。最初は屋外のスペースだけで運営をしていたが、2017年にはより多角的なパーティをおこなうことを目的とした屋内のフロアをオープンさせ、キレイで快適なメインフロアとレストラン&バー、好きな時にチルアウトできる屋外スペースを備えた“現代の大箱”を作り上げた。


Nowadays flyer


DJ Python@Bossa Nova Civic Club

 ここで「Mister Sunday」が開催されていることは言わずもがな、2010年以降に頭角を現しヨーロッパを中心に世界でプレイするほど人気DJとなった Anthony Naples や Aurora Halal、DJ Python などの新世代がレジデントを務めるハウス、テクノのパーティがスケジュールのほとんどを占める。2018年末のカウントダウン・パーティへ行った時は、なんと24時間という長丁場で、22時までは床に敷いたマットに寝そべりながらNYの気鋭なレーベル〈RVNG Intl.〉ファウンダー Matt Werth らによる上質なアンビエントを、朝8時まではレジデントDJたちによるカッティングエッジなテクノを、そして、昼14時まではこの日のゲストであった Theo Parrish による往年のハウスやディスコをフロアに残ったまだまだ遊び足りないみんなで聴いて、踊り明かすような、いい意味で新しい世代にバトンが渡っている場所だと思った。


Nowadays flyer 2018-2019 New Years Party "Nowadays Nonstop"

 「Mister Saturday Night」はさておき、圧倒的にヴェニューが不足していた同時期に、同じくブシュウィックで確立していった特筆すべき場所がもうひとつ。話を10年代初期に一旦戻すと、ベルリンを中心に世界的にミニマル・テクノが主流だった当時、NYのダンス・ミュージック・シーンに新風を吹き込んだのが2010年に設立された〈L.I.E.S. Records (Long Island Electrical Systems、以下L.I.E.S.)〉だ。ファウンダーの Ron Morelli は、ダンス・ミュージックをソフトウェアで作るという当時のスタイルを覆し、今でこそ「ローハウス」といわれるようなザラついたローファイなエレクトロニック・サウンドをDIYで作り、打ち出してきた人物。

 2012年にオープンしたバースタイルの「Bossa Nova Civic Club」は、そんな Ron Morelli を筆頭に〈L.I.E.S.〉が才能を見出したまだ無名の Terekke や Bookworms、DJ Steve O たちがプレイし、当時まだアンダーグラウンドだったサウンドがひとつのジャンルとして確立されていくとともにメイド・イン・ブルックリンのキャッチーなダンス・ミュージックを聴ける場所として不動の地位を築いた。〈L.I.E.S.〉を目当てに通うパーティ・フリークはとにかくぶっ飛んで踊り狂い、100人キャパほどの小さいフロアでありながらもほかのヴェニューと一線を画す、強烈なエナジーがここにはあった。


Bossa Nova Civic Club のバー

 オープンからずっとパーティを続ける Bookworms や、同じくスターティング・メンバーで Anthony Naples のレーベル〈Incienso〉からリリースされたLPが注目を集める Beta Librae、この場所で始まった女性特定のDJ集団「Discwoman」の中心メンバー Umfang、〈White Material Record〉のメンバーでハウス・ミュージックの新星 Galcher Lustwerk などがプレイする今でも、その勢いはほとんど変わらないと思う。もちろんほかに新しくできたヴェニューへ移っていくDJもいるけれど、オープン初期にプレイしていたDJたちが今のブルックリンのダンス・ミュージック・シーンで活躍していると言っても過言ではない。
 ちなみに、10年代初期からDIYを掲げたウェアハウス・パーティを開催する Aurora Halal が主宰し、2014年にスタートしてから今では1000人限定の“特別なパーティ”となるまでに成長したNYで数少ない野外レイヴ・パーティ「Sustain Release」のセカンド・ステージには「Bossa Nova Civic Club」の名前がつけられている。それほど、10年代のダンス・ミュージック・シーンにとってここは重要なポジションであり、オーナーの John Barclay はシーンの立役者でもあるということだ。

 そんなわけで、この10年代をざっと振り返ってみるとブルックリンこそ、冒頭で話したスマホ並みにエポックメーキングなミュージック・シーンに変わった。そんな新世代のアーティストをこれから取り上げていこうと思う。

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