「Nothing」と一致するもの

Matt Kivel × Satomimagae - ele-king

 人と人がつながり、点が線になって、新たな関係が生まれていく──カリフォルニアはサンタモニカ出身、現在は(おそらく)テキサス州オースティンを拠点とするギタリスト、2013年のファースト『Double Exposure』がピッチフォークで高く評価されたシンガー・ソングライターのマット・キヴェル。温かなアコースティック・ギター・サウンドで魅せる彼(以前はプリンストンというバンドでも活躍)は、東京のアンビエント・フォーク・シンガー、サトミマガエが『Hanazono』(2021)を出したとき、彼女にコンタクトをとったのだそうだ。どうやらそこから交流がスタートしたらしく……というわけで、USの注目のSSWによる初来日公演と、サトミマガエのパフォーマンスを一度に楽しめる夜がやってくる。5月19日(金)@七針。すでに予約が埋まりつつあるとのことなので、お早めに。

Matt Kivel初来日公演@七針〜共演Satomimagae
カリフォルニア州サンタモニカ出身のギタリスト、シンガー・ソングライターで、かつては双子の兄とバンド、Princetonで活動し、ソロになってからはOESB、Woodsist、Driftless Recordings、Cascineなど様々なレーベルから作品をリリースしてきた才人、Matt Kivelの初来日公演が決定致しました。

共演はSatomimagae。彼女が2021年にRVNG Intl.から『Hanazono』をリリースした際にMattが連絡したことをきっかけに交流が始まったとのことです。

Poster artwork: Glen Baldridge | Poster design: Sterling Bartlett

Matt Kivel ~ Satomimagae

日程:2023年5月19日(金)
会場:七針 (map: https://www.ftftftf.com/#map)
時間:OPEN 19:00 / START 19:30
料金:予約 ¥2,300 / 当日 ¥2,800(ご予約が定員に達した場合は当日券の販売はございません)
※チケットのご予約は以下のご予約フォームからお願い致します。

出演:
Matt Kivel
Satomimagae

予約フォーム:https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/news/matt-kivel-20230519/


Matt Kivel:
カリフォルニア州サンタモニカ出身のギタリスト、シンガー・ソングライター。双子の兄Jesse Kivelとバンド、Princeton(自分たちが育った通りの名前から)を2005年に結成しLAを拠点に2000年代に活動、並行してガレージ・ポップ・バンドGap Dreamのギタリストも務めていた。そして2011年頃、他のバンド活動を休止し、ソロ活動に専念するようになる。最初の作品は限定生産のカセット・テープだったが、2013年にOlde English Spelling Beeレーベルからリリースされたフル・アルバム『Double Exposure』(日本ではRallye Labelから国内盤化)で本格的に活動を開始した。このアルバムのミックスはBonnie “Prince” BillyことWill Oldhamの弟で、Palace BrothersのメンバーであるPaul Oldhamが手がけているが、翌年には彼と共にレコーディングをし、WoodsのJeremy EarlとJarvis Taveniere等が参加したアルバム『Days of Being Wild』をWoodsistからリリースし、2016年には、美しく生々しい『Janus』と、Bonnie “Prince” BillyやFleet FoxesのRobin Pecknoldとのデュエットを収録した長尺の『Fires on the Plain』という2枚の作品をJoel FordとPatrick McDermottが運営するDriftless Recordingsから発表した。そして彼は西海岸からテキサス州オースティン、さらにはニューヨークと頻繁に移動し、オースティンにて5枚目のアルバム『Last Night In America』制作し、2019年にCascineからリリースした。その後はPyl Recordsから2020年にインストゥルメンタルのアンビエント〜ニューエイジ的作品『that day, on the beach』、2022年には再びBonnie “Prince” Billy等が参加した『bend reality ~ like a wave』を発表し、現在も精力的に活動をしている。


Satomimagae:
東京を中心に活動しているアーティスト。ギター、声、ノイズで繊細な曲を紡ぎ、有機的と機械的、個人的と環境的、暖かさと冷たさの間を行き来する変化に富んだフォークを創造している。
彼女の音楽的ルーツは中学生の時にギターを始めたことから始まる。父親がアメリカからテープやCDに入れて持ち帰った古いデルタ・ブルースの影響もあり、10代の頃にはソング・ライティングの実験をするようになる。その後PCを導入したことで、より多くの要素を加えた曲を作ることができるようになり、彼女の孤独な作業はアンサンブルへの愛に後押しされるようにななった。大学で分子生物学を専攻していた時にバンドでベースを弾いていたことから、様々な音の中にいることへの情熱と生き物や自然への情熱が交錯し、それが彼女の音の世界を育んでいったのである。
この間、アンビエント音楽、電子音楽、テクノなどの実験的でヴォーカルのない音楽に没頭するようになり、聴き方の幅が広がっていった。サンプラーを手に入れ、日本のクラブやカフェでのソロライブを始めた。苗字と名字を融合させた「サトミマガエ」は、彼女の独特のフォークトロニックな考察を伝える公式キャラクターとなった。
初期のアンビエント・フォーク・シンセサイザーを集めたファースト・アルバム『awa』(2012年)は、ローファイ/DIYのセルフ・レコーディング技術を駆使した作品である。2枚目のアルバム『Koko』(2014年)では、彼女は控えめでライヴ感のあるパフォーマンスと、フォークの伝統に馴染んだ温かく牧歌的なエネルギーの冷却を追求した。続いて、『Kemri』(2017)では、より豊かな和音とリズムで伝えられる人間的な感覚に触発されて、この効果をバランスよく調整している。彼女の2作品をリリースしたレーベル、White Paddy Mountainとそのディレクター畠山地平の影響を受けて、スタジオ環境の中でよりコンセプチュアルな方向に進むことができたが、彼女の作曲やレコーディングのプロセスは、自分で作ったものであることに変わりはない。
そしてNYの最先鋭レーベル、RVNG Intl.へ移籍してのリリースとなる『Hanazono』では、URAWA Hidekiのエレクトリック・ギターとバード・コールが加わったことで、子供のような魅力を持つSatomiの微細なヴィジョンが融合している。Satomiの姉であり、アルバムやウェブサイトのすべての作品を担ってきたNatsumiの直感的なビジュアルが、温かみのあるものとクールなもの、手作りと機械で作られたものが混ざり合うというSatomiの夢を、彼女の別世界への窓のように機能する木版画で見事に表現している。
2021年には最新アルバム『Hanazono』に由来する繊細な周辺の花びらの配列である“コロイド”を構築した。自身の楽曲から4曲を選曲しリアレンジした『Colloid』を引き続きRVNG Intl.から発表した。2023年には、2012年にセルフリリースしていたデビュー・アルバム『Awa』のリマスター・拡張版『Awa (Expanded)』をRVNG Intl.よりリリースした。

Todd Terje - ele-king

 少しずつ暖かくなっていきますね。春の予定は決まっていますか? そろそろファースト・アルバム『It's Album Time』から10年が経ちそうですが、きたるゴールデンウィーク、ノルウェイからニューディスコの王者トッド・テリエがやってきます。5月3日から6日にかけ岡山、東京、大阪の3都市を巡回するツアー。今回はDJとしてのプレイです。詳細は下記をご確認ください。

Todd Terje Japan Tour 2023

北欧NUディスコシーンの牽引者、Todd Terje (トッド・テリエ)の来日ツアーが決定!
代表作「Inspector Norse」を始め、「Eurodans」「Ragysh」「Snooze 4 Love」「Strandbar」といったヒット作で知られ、米ローリングストーン誌の「世界のトップDJ25人」のひとりに選ばれた。
アルバム『It's Album Time』収録曲「Alfonso Muskedunder」がテレビドラマシリーズ『Better Call Saul』シーズン3・エピソード3で使用されている。
2020年にはイラストレーター、Bendik Kaltenbornによる短編映画『LIKER STILEN』のサウンドトラックを担当した。

Todd Terje Japan Tour 2023

5.3(水/祝) 岡山@YEBISU YA PRO

DJ: Todd Terje (Olsen Records / from Norway) and more

Open 22:00
Advance 4000yen
早割チケット 3/14(火)10:00~ 3/24(金)23:59まで
一般チケット 3/25(土)10:00~
Door 5000yen
早割 3000yen
※ドリンク代別途要

Info: Yebisu Ya Pro http://yebisuyapro.jp
岡山市北区幸町7-6ビブレA館 B1F
TEL 086-222-1015

5.4(木/祝) 東京@ZEROTOKYO
- B4 Z HALL -


Todd Terje (Olsen Records / from Norway)
SPECIAL SECRET GUEST
CYK


REALROCKDESIGN

Open 21:00
Close 4:30
Advance 4500yen
Door 6000yen

Info: ZEROTOKYO https://zerotokyo.jp
東京都新宿区歌舞伎町1-29-1 東急歌舞伎町タワー B1-B4

5.6(土) 大阪@CLUB JOULE

=2F=
DJ:
Todd Terje (Olsen Records / from Norway)
AKIHIRO (NIAGARA)
SSSSSHIN

PA: Kabamix
Lighting: Gekko Abstract

=4F=
DJ:
SISI (Rainbow Disco Club / Timothy Really)
GUCHI (WALLS AND PALS)
misty
Ashikaga (C2C)
MIYUU

FOOD: KitchenMUMU

Open 22:00
Advance 3300yen
Door 4000yen

Info: CLUB JOULE https://club-joule.com
大阪市中央区西心斎橋2-11-7 南炭屋町ビル2F
TEL 06-6214-1223

Total Info: AHB Production http://ahbproduction.com

<アーティスト詳細>
TODD TERJE (Olsen Records / from Norway)

ノルウェー、オスロ在住のプロデューサー/DJ/ソングライターであるTODD TERJE(トッド・テリエ)。
数々の傑作リエディットでその名を知られ、本人によるリエディットやリミックス作品で構成されたベスト盤的コンピレーション&ミックスCD 『Remaster Of The Universe』がリリースされている。リエディットだけでなくオリジナル作品でもその才を発揮し、「Eurodans」「Ragysh」「Snooze 4 Love」はクラブアンセムとなった。『It’s The Arps』EP収録曲、「Inspector Norse」は世界的ヒット作となり、彼の代表曲である。
2014年、ファーストフルアルバム『It's Album Time』をリリース。ソロライブやフルバンドTHE OLSENSを率いてライブ・アクトとしても活動してきた。
2016年、TODD TERJE & THE OLSENS名義でのカヴァーEP『The Big Cover-Up』をリリース。
2020年、今回のツアーイメージを描いたイラストレーター、Bendik Kaltenbornによる短編映画『LIKER STILEN』のサウンドトラックを担当した。

● Todd Terje アーティストリンク
Web http://toddterje.com
Instagram https://www.instagram.com/toddterje
Facebook https://www.facebook.com/ToddTerje
Youtube https://www.youtube.com/@ToddTerje

Pardans - ele-king

 時代と場所、タイミング、シーンを構成するいくつかの要素。コペンハーゲン・シーンには遅く、サウス・ロンドンのインディ・シーンには早すぎた。デンマーク、コペンハーゲンのバンド、パーダンスはある意味で時代の隙間に入り込んでしまったバンドなのかもしれない。
 アイスエイジ、ロウアーを中心とした暗く激しい熱を帯びたコペンハーゲンのパンク/ポスト・パンクのシーン、工場を改装したリハーサル・スペースであり同時にヴェニューでもあったメイヘムに集まりそこで小さなコミュニティが作られ流れが生まれた。メイヘムにはまたジャズや 〈Posh Isolation〉のカタログに連なるようなエレクトロニクスやエクスペリメンタル・ミュージシャンたちもいて、それがまたここに集うバンドに影響を与えていった。そんななかで学校を卒業したばかりの、少し年下のパーダンスはシーンが移り変わろうかというようなその時期に遅れて参加してそこでアイスエイジ、マーチング・チャーチ直系のエネルギーに溢れるギター・サウンドとジャズを混ぜたような音楽を作ることを目指したのだ。

 バンドを組んで3ヶ月で録音されたという2016年の1stアルバム『Heaven, Treason, Women』はアイスエイジの暴力的なまでの初動と、暴れ回るそれを制御しようとするロデオのようなフリー・ジャズの要素を合わせ持つ狂気の熱を放ったアルバムで、2023年のいま聴くそれはまるでサウス・ロンドンのインディ・シーンの前夜のような音にも聴こえるような瞬間がある。2018年の2ndアルバム『Spit and Image』はそれよりももっと方向を定めたエネルギーを放っていて、マーチング・チャーチをラウンジ・リザーズに近づけたかのような雰囲気を持つ。吹き荒れるサックス、ピアノにヴィオラ、ブラック・カントリー、ニュー・ロードの登場以降のUKの新人バンドたちが即座に頭に思い浮かべ採用するようなこの編成はこのときすでに形作られていたのだ。

 だがそれはあまりに早すぎた。コペンハーゲンの次のシーンに流れが移り、サックスの時代が来るまでにすでに存在していた彼らの音楽は時代の狭間に吸い込まれ隠されてしまったのかもしれない。だからきっと少しやり方を変えて再発見される必要があった。この3rdアルバム『Peak Happiness』で聴かれるパーダンスの音楽はそれまでのアルバムよりもずっとサウス・ロンドンのポスト・パンク・バンドに近い。ジャズのアプローチを少し弱め、ポスト・パンクの要素を前に出し、そこに自ら破滅の道に向かうかのようなロマンティシズムを混ぜ込む。それは似ているけれど異質なもので、退廃的な色気と狂気がその音楽のなかで熟成され醸し出されていく(それはどこか優等生的で、ともすれば頭でっかちと捉えられかねなかったサウス・ロンドンのバンドたちにはなかった魅力だ)。

 夜の出口の見えない暗闇を手探りで進んでいくかのような “Big Summer” のダウナーなビート、サックスが歌いロード・ムービーのようなムードを作る “Warp Speed” はまるでパーダンス版の “Track X” のようで、その半自伝的な曲の中で “Track X” の作曲者たるブラック・カントリー、ニュー・ロードとロンドンの100Club で共演したというツアーの記憶が語られる。薄暗い、嘘がはびこる街で爆弾が爆発する、彼らは曲のなかでそう表現するが、しかしここでの爆発は火の手があがるようなそれとは少し趣が違う。長回しで淡々と描写するようなサウンドのなかに宿る静かな炎。1stアルバムから7年、2ndアルバムから5年が経ち、もう衝動で突き抜けるような感覚はない。それは押し殺された感情のなかにくすぶり続けた青白い情熱みたいなもので、ひんやりとした冷たいナイフを突きつけられているみたいなそんな感覚に陥る。
「ポスト・パンクのシーンをいくつかリサーチしてみたけど/なんの印象も残らなかった」。夜の色が薄くなり朝へと向かう時間の独白みたいにして紡がれる “The Scene” にしても、シーンから外れた疎外感のその裏に俺たちならもっとうまくやれるという暗く静かな意志を感じてしまう(群衆のなかでピッチフォーク・フェスのステージを眺めるというラインは哀しく、そしてとても美しく響く)。

 コペンハーゲン・シーンの最後に現れそこにろくに参加することのできなかった遅れてきたバンド、彼らはその後に起こったサウス・ロンドンのインディ・シーンのバンドたちと比べると年長で積み重ねた時間も過ごした場所も違がっていて、だから共感するところはあってもそれらをとても自分たちのものだと思うことはできなかったのだろう。だがそれゆえに、この音楽のなかにはどこにも属せなかったアウトサイダーの退廃的な美学が息づいている。野望に燃えていた少年時代の燃えさかるような炎ではない静かに燃やされる情熱、タバコとアルコールの匂いのするオープニング・トラック “Cringe City” から、アイスエイジに憧れたかっての自分たちを取り戻そうとしたかのような最終曲 “Mr. Coffee” に至るまで、ここにはくすぶり続けた情熱と暗く輝くロマンが詰まっている。

RP Boo - ele-king

 2年前、貫禄のアルバム『Established!』を送り出したシカゴのフットワークの偉人、RP・ブーが新作をドロップする。題して『Legacy Volume 2』。どうやら2013年発表のデビュー・アルバム『Legacy』の続編という位置づけのようで、2002年から2007年にかけて録音された13のトラックにより構成されているとのこと。映画や日常生活、機械などからインスパイアされた曲が収録されているそうだ。発売は5月12日。

artist: RP Boo
title: Legacy Volume 2
label: Planet Mu
release: 12th May 2023

tracklist:
01. Eraser
02. Heavy Heat
03. Total Darkness
04. Flo-Control
05. Under'D-Stat
06. Say Grace
07. Knock Out
08. Azzoutof Control
09. B.O.T.O.
10. Pop Machine
11. Porno
12. Off Da Hook
13. Last Night

Luminessence - ele-king

 多くのファンを持つジャズ・レーベル〈ECM〉が新たに手掛けるヴァイナル・リイシュー・シリーズ、「Luminessence」。その第一弾としてトランペット奏者ケニー・ホイーラーの『Gnu High』(1976)と、ブラジルのパーカッショニスト、ナナ・ヴァスコンセロスの『Saudades』(1980)が4月28日にリリースされる。
 発売に先がけ、4月21日金曜日、両作のリスニング・イヴェントが催されることになった。案内人は原雅明、会場はアナログ・サウンドに特化した南青山のレストラン&バー BAROOM とのこと。極上のシステムで1音1音を堪能しましょう。

ECMレコーズが、スタートさせる新しいオーディオファイル・ヴァイナル・リイシュー・シリーズLuminessenceを記念し、発売前にリスニング・イヴェントがロンドン、ベルリン、東京の3都市で開催されます。

東京は、南青山のレストラン&ミュージックバーBAROOMにて、4月21日(金)20時より開催。世界同時リリースとなるケニー・ホイーラーの『Gnu High』とナナ・ヴァスコンセロスの『Saudades』の2枚を、アナログ・サウンドに特化したBAROOMの極上のシステムで再生します。ナヴィゲーターは原 雅明が務めます。

日時:2023年4月21日(金曜日) 20:00〜22:00

Navigator: 原 雅明
会場:song & supper BAROOM(バルーム)
東京都港区南青山6丁目10−12 フェイス南青山 1F
https://baroom.tokyo/
Music charge:free

主催:BAROOM
企画:ECM
協賛:ユニバーサル ミュージック(同)
協力:dublab.jp

■Luminessenceシリーズ

ECMのディープなカタログの宝石に光を当てるエレガントで高品質なヴァイナル・シリーズ。このシリーズの特徴は、唯一無二の刺激的な音楽、想像力豊かな演奏、繊細なプロダクション。ECMの音の世界の広さと多様性を強調する録音で、様々なフォーマットのLPがリリースされる予定だ。

クリエイティヴな音楽制作の概念を変えたアルバムや、今やクラシックと呼ばれるようになったアルバムを取り上げており、また長い間廃盤になっていたアルバムや、ヴァイナル初登場となるアルバムもあるとのことだ。ほとんどの作品はオリジナルのアナログ・マスターテープからカットされ、すべてのLuminessence盤はECMの名声を高めた印象的なオリジナル・アートワークを基に追加した新しいパッケージ・デザインで蘇る。
https://youtu.be/rCW6Vx9okho

■作品情報

4月28日発売
ケニー・ホイーラー 『Gnu High』
https://Kenny-Wheeler.lnk.to/Gnu_HighPR


ナナ・ヴァンコンセロス 『Saudades』
https://Nana-Vasconcelos.lnk.to/SaudadesPR

『Gnu High』はトランぺッター、ケニー・ホイーラーのECMデビュー・アルバムで、ピアノのキース・ジャレット、ベースのデイヴ・ホランド、ドラムのジャック・ディジョネットとの見事なカルテットを率いての演奏。このアルバムは、ホイーラーを叙情的な即興演奏家/ジャズ作曲家として世界に知らしめ、その後に影響力を与え、高く評価された作品の基礎を築いた重要な1枚だ。一方、『Saudades』は、ブラジルの打楽器奏者ナナ・ヴァスコンセロスが、オーケストラの中でベリンバウを聴くという夢をかなえた作品で、エグベルト・ジスモンチが弦楽器の編曲を担当し、共同作曲家、サポート・ソリストとして参加したことで実現したもの。ジスモンチとヴァスコンセロスの創造的なパートナーシップは、多くの録音で強調されているが、このように音楽表現が織り成す魔法のようなオーケストラの録音は二度とないだろう。

■情報ページ
https://dublab.jp/show/ecm-luminessence/

U.S. Girls - ele-king

 ミーガン・レミーはふざけている。いや繰り返し聴いていると一周まわって大真面目なようにも思えるし、描かれるモチーフはつねにシリアスな社会風刺を含んでいるが、何よりも音自体のあっけらかんとしたユーモア感覚が遊戯性を強調しているのだ。近年の彼女のスタイルはジャンルのクリシェをあえて大げさに引用しミックスするもので、20世紀のアメリカの大衆音楽への郷愁と皮肉を同時に立ち上げつつ、それ以上に反射的に笑える。いまや〈4AD〉とサインして以降のポップなイメージが強いため初期のU.S.ガールズのハチャメチャなローファイ音楽は忘れられがちだが、当時よく言われていたのは「意味がわからん」ということだった。で、現在レミーが探求している思いきりキャッチーなポップ音楽にも「意味がわからん」ところがあり、そこがたまらなく痛快だ。

 8作目となる『Bless This Mess』はディスコやエレクトロ・ファンクの色がやけに強く、ダンスフロアを志向したと思われるアルバムだ。奇しくもパンデミック初期(2020年3月)にリリースされることでセッションの喜びを喚起するようだった前作『Heavy Light』に対し、ダンスの現場が復活していることとタイミング的にリンクしていると言える。イメージとして80年代の音をを引っ張り出していることから感覚的にはビビオの最近作『BIB10』のような無邪気さがあるが、U.S.ガールズの本作の場合レミーがパンデミック中に双子を妊娠・出産した経験が反映されているので、そうした人生の慌ただしい変化が大げさなダンス・サウンドにどうやら表現されているようだ。
 引き続き夫のマックス・ターンブルと共同プロデュースで、ホーリー・ゴースト!のアレックス・フランケル、ジェリー・フィッシュのロジャー・マニング・ジュニア、コブラ・スターシップのライランド・ブラッキントン、マーカー・スターリング、ベイシア・ブラット、そしてベックと多彩なコラボレーターが集まっているものの、全体を貫くファンキーなトーンを統率しているのはあくまでレミーそのひとだろう。ゆったりしたテンポのシンセ・ファンク “Only Deadalus” で幕を開けると、続く “Just Space for Light” ではゴージャスなコーラスを引き連れて眩いステージ・ライトを一身に浴びる。前作がデヴィッド・ボウイ的なら本作はプリンス的で、グリッターでセクシーなファンクやR&Bを参照して妖しく弾けてみせる。子どもを産んだばかりの母親がスパンコールをつけたドレスを着てフロアで踊り出したら世間体を気にする人びとはぎょっとするだろうが、もちろんレミーはそんな窮屈な規範をものともせず、ミラーボールのもとで輝いてみせるのだ。やたらキレのいいパーカッションが鳴らされるエレクトロ・ハウス “So Typically Now” はロボット・ダンスが目に浮かぶ直角的なシンセ・リフだけで可笑しいのに、ソウルフルなコーラスが現れると大仰な盛り上がりとともに腹を抱えずにはいられない。

 ただ、その “So Typically Now” がCOVID-19以降の住宅問題をモチーフにしているように、あくまで生活に根差した政治性が含まれているのがU.S.ガールズの神髄でもある。資本主義に対する異議申し立てはそこここに発見できるし、また、フェミニストして母になったレミーはあらためて「母性」に押しつけられた負担や性役割について想いを巡らせている。80年代R&Bのパロディのように妙にキラキラしたバラッド “Bless This Mess” はタイトル・トラックということもあって示唆的だ。アートワークで妊娠した腹を囲む正方形はインスタグラムの投稿のようで、添えられた言葉は「この混乱を祝福せよ」。すべてがSNSで消費される風潮に対する皮肉と、こんな時代に親になることの不安や混乱が入っているのだ。
 それでも、性規範が根強く残っている現代を風刺する “Tux (Your Body Fills Me, Boo)” がタキシードの視点から不満を語るという突飛な設定になっているように、レミーの社会批評はユーモアをけっして忘れない。しかも激ファンキーなディスコ・ナンバーで、だ。レミーは回転しながら手を叩き、「あんたの身体がわたしを満たす、ブー!」と歌う。やっぱり、ふざけているとしか思えない。けれどもその悪戯心は、メチャクチャな時代を生き抜くための武器なのだ。
 スマートフォンの振動を思わせるサウンドで始まる “Pump” は、そこに太いベースラインが入ってくればたちまち愉快なダンス・チューンとなる。慌ただしい生活も殺伐とした社会も、遊び心さえ忘れなければダンスと笑いの種になる。「何も間違ってない/すべてうまくいく/これはただの人生なんだから(“Futures Bet”)」──そして、けっして捨てられないオプティミズム。U.S.ガールズのひょうきんな音楽はいま、冷笑に硬直しそうなわたしたちをまずは踊らせ笑顔にするところから始めようとしている。

talking about Yves Tumor - ele-king

 今日のポピュラー・ミュージックの中心はラップである。そんな時代にあって、次世代のロックはどんな姿をかたどるのだろう──もしかしたらイヴ・トゥモアの試みに、そのヒントが隠されているのかもしれない。エレクトロニック・ミュージックに出自を持ちながらその後ロックへと大きく舵を切り、己の美学を貫くイヴ・トゥモアの新作『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』について、Z世代のライター・yukinoise と、ロックをルーツとした初期衝動をダンス・ミュージックに落とし込むDJの arow が自由気ままにロック・ヴァイブス溢れる音楽談義をカマします。

イヴ・トゥモアは自身のキャリアの歩みの中で音楽と真摯に向き合いつつ、関わる人やコミュニティが広がっていく中でも、周囲からの期待を跳ねのけることなく、かつその上で自分自身の美学をクリエイションに反映させている。(arow)

yukinoise:前作に引き続き、今回のアルバム・リリースでもイヴ・トゥモアは相変わらずインタヴューを受け付けてないみたい。最近で唯一彼がインタヴューを受けたのはコートニー・ラヴとの対談くらいしかなかったので、今回は以前ライヴを観に行ったことのある自分と、ロックに詳しい同世代のDJ・arowくんとイヴ・トゥモアの魅力について対談するわけですが、5年前の来日ライヴは観に行った?

arow:そのライヴ行けなかったんだよね、たしかいまはなき渋谷の Contact に緊急来日したんだっけ?

yukinoise:そうそう。Contact に普段遊びに来るタイプのクラバーよりか、イヴ・トゥモアが気になってる音楽好きの層が集結して、平日のデイ公演なのにメインフロアの Studio X がお客さんでパンパンだった光景を覚えてる。その後、渋谷のWWWで speedy lee genesis さん主催の《Neoplasia》ってパーティーにも出演してたんだけど、ヘッドライナー級なのに出番が日付越える前という独特のパフォーマンスをしてたらしい。〈Warp〉からの異色デビューっていうので彼の存在を知ったのと来日がちょうど同時期で、すぐにライヴを観れたのはラッキーだったな。

arow:イヴ・トゥモアはもともとエレクトロニカやエクスペリメンタル系のアーティストだし、パフォーマンスもスタイルも華やかだから当時は新進気鋭のファッショナブルな印象があったな。でも、そういった印象や解釈を変えてくれたのが “Jackie” を収録した2021年リリースのEP「The Asymptotical World」。ロックやバンド・サウンドが好きな人にはかなり刺さる作品だし、いままでのリリースの中でいちばん好きかも。

yukinoise:“Jackie” でこれまでのエレクトロニカ、インダストリアルR&Bやグラム・ロック的な印象から少し雰囲気が変わったよね。シューゲイズ、ドリーム・ポップ、ポスト・パンクなテイストが取り入れられていて、バンドというかギター・サウンドに対して欲を出してきたな、と。

arow:ディープな電子音楽から活動をスタートして、キャリアを積み重ねていくごとに見える景色の変化に応じてちゃんとクリエイションも進化していくのはアーティストとしてひとつのあるべき姿だと思う。というのも、音楽をやっている全員がそういうことができるわけではないと思っていて。生計を立てるためとかいろいろあると思うんだけど、どうしてもいままでついてきたファンを離さずに活動するために既存の路線から外れないよう、いわゆる正解を取りに行くようなスタンスが活動を通して透けて見えてしまうようなアーティストも中にはいるわけで。だけど、イヴ・トゥモアは自身のキャリアの歩みの中で音楽と真摯に向き合いつつ、関わる人やコミュニティが広がっていく中でも、周囲からの期待を跳ねのけることなく、かつその上で自分自身の美学をクリエイションに反映させているし、少なくともそう勤めようとしている気概が音を通してリスナーにも伝わってくるような説得力があるよね。

yukinoise:美学ね。インタヴューを受けずにソーシャルと距離を置くスタンスや、来日公演でもレーベルや国外アーティストだからって肩書は関係なしに、セルフ・プロデュースで世界観を徹底してるところに惹かれた。イヴ・トゥモアを語ればグラム・ロックが必ずキーワードに登場するけど、たしかに彼のクィアなファッションや強烈なスタイル然りロック・スター的なカリスマ性は持ってる。

刹那的な盛り上がりより、パフォーマンスを目撃したアーティストの曲を帰り道でも聴きたくなるくらい世界観で圧倒されたい。そういう意味ではソロ時代からもステージングを徹底してたし、どんなかたちであれちゃんと自分の個性を100%表現しているアーティスト。(yukinoise)

arow:クィアもロックもどっちも彼のルーツにあるけど、意識的にも無意識的にもステージングや社会との関わり方とかの、自らのパブリック・イメージに関わる細かな部分にまで自分の意思を反映させて世界観を表現できるアーティストはそれだけで希少価値が高い。イヴ・トゥモアの最近のライヴがバンド・セットなのもそのイメージの強化に一役買ってるというか。バックDJがいて、オケを流してる上にマイク通して声を乗せるだけというヒップホップ由来のスタイルがいまでは当たり前のようになった中で、パフォーマンスを差別化するとしたらいちばん効果的なのはやっぱり音楽の捉え方とライヴの見せ方になるんじゃないかな。たとえば普通にラップやってる若いアーティストのライヴだと、いまこの場所をいかに盛り上げるかという点だけに重きを置きがちになる感じがあるけど、その場限りの高揚だけじゃ訴求できない部分って受け取り手のオーディエンスからしても絶対的にあるはずだし。

yukinoise:ライヴの体験価値はオーディエンスにとって欠かせないポイントだよね。刹那的な盛り上がりより、パフォーマンスを目撃したアーティストの曲を帰り道でも聴きたくなるくらい世界観で圧倒されたい。そういう意味ではソロ時代からもステージングを徹底してたし、どんなかたちであれちゃんと自分の個性を100%表現しているアーティストだったな。

arow:60~70年代まで遡るとロック・オペラとかもあったくらいだし、ひとつの世界観を作り上げていくジャンルとしての美学がロックにはある。当然、時代性やバックグラウンドによってアプローチは多種多様なんだけど、自分なりの世界観を築きやすいのがロックというフォーマットの魅力だと思うんだよね。もちろんやりようによってはどんなジャンルの音楽であっても独自の世界観は作れるものだと思うんだけど、記号化される前のロックでは一曲単位の持つ強度に加えてアルバムの構成だったりでいろんな見せ方がされてきたし、とくにリスナーにとっては何のことかわからないような歌詞だったり、音楽的にも新しい試みを取り入れやすかったという点において、ある種音楽の持つ非日常的な側面を反映させやすいという強みがあったんじゃないかな

yukinoise:なるほど。ロックの対比としてのヒップホップ、現代のトラップ・カルチャーはどちらかと言えばストリートやライフ・スタイルの延長線上にある音楽かもね。リアルを大事にしてるし。個人的にはロックは夢を見せてくれるジャンルだと思っていて、たとえば日本でいうヴィジュアル系はサウンドやファッション、世界観を徹底して作り上げて非日常的な雰囲気のステージングがメインだし。でもイヴ・トゥモアにも意外と人間味のある瞬間もあって、インスタ・ライヴとかもたまにする(笑)。Joji や Drain Gang の Ecco2k みたいな同世代のアーティストともコラボしてるし、隣接するシーンとクロスオーヴァーしていく視点はきちんと持ってる人なんだなと。ただ孤高のロック・スターを目指してるわけじゃない。彼の場合は孤高じゃなくて、シーンの中で異質な存在であるという想いが原動力になっている気もするんだけど、なんでロックが王道のサウンドではない時代にあえてこの路線を選んだんだろう?

arow:孤高のロック・スターのイメージに当てはめすぎちゃうと、本当にただ突っ走るだけになっちゃうからそれは本人にとっても良くない(笑)。カート・コベインやフレディ・マーキュリーあたりも世界的な成功を手に入れたからこそ反面自分が理解されていないって葛藤に陥ってしまったりした歴史もあるくらいだし。そもそもロックという音楽自体がR&Bやブルースから発展しているわけで、そういったブラック・ミュージックと呼ばれる音楽自体マイノリティが他者に理解されないところをモチベーションにして、自分たちはここに存在しているんだと主張するために育まれてきたものでもある。イヴ・トゥモアの場合、「マイノリティでありながら電子音楽をやっている」という情報だけじゃ大衆への大胆なアプローチはやっぱり難しいけど、そこにロックという記号を持ち込むだけでオリジナリティが増す。自分たちはすでにロックが一度終わった後の時代にいるわけだけど、かつては王道だった過去があって常識的にロックというものがジャンルの前提として根付いているからこそ、いままではあまり触れられてこなかったマイノリティ性や異質さ、普遍さとかいったものを組み合わせることによってバランスが取れるという。

yukinoise:エレクトロニカ時代の彼のサウンドは大衆的に受け入れがたくとも、ロックがベースになっている最近のサウンドなら受け入れやすいリスナーも多そう。とくに今回の新作はグラム・ロックとダンサブルな感じである種のポップさも含んでるし、去年ヒットしたイタリアのマネスキンの功績で新世代のロックがやっとメインストリームに頭角を現してきた時代ともマッチしてる。

arow:時代によってあり方が変化していったロックがちゃんとメインストリームな音楽だったのは、体感でしかないけど2007年くらいまでかなあ。90年代にいわゆるオルタナティヴ・ロックの時代があり、そこから地続きでインディー・ロックも盛り上がりを見せる一方、スタジアム級のバンドもいて、だんだんその幅が開いていったのが2000年代。個人的な印象では、メジャーで人気になるほど王道なロックが飽きられてしまって、逆に2010年代にかけてはどんどんインディーが盛り上がって、バンドマンと言えどロック・スターにはなろうとしないみたいな、ちょっと内向的なアティチュードのアーティストが増えていった。実際本人のパーソナリティが内向的なのかは置いておいて(笑)、ヴァンパイア・ウィークエンドなんかはその最たる例かも。あくまでも地に足つけて音楽を好きでいるってスタンスのロックが多くなる中で、ザ・1975みたいにインディーの方法論でメジャーとの間に生まれた壁をぶち壊そうとするバンドも現れてから、同レーベル所属の Pale Waves や Beebadoobee といったソーシャル・スター的なロック・アーティストたちが次のフェーズを作っていった感じ。

バンド・サウンドはシンプルになればなるほどひとつの音に対する向き合い方もストイックに成らざるをえなくて、今回のアルバムも曲の構成自体はシンプルだけどギターの印象でかなり喰らわせてきてる。(arow)

yukinoise:ソーシャル・スターね。ザ・1975のマシュー・ヒーリーもかなりアイコニックな存在だし最近も炎上騒ぎがあったし、いまやロックのアーティストですらインフルエンサー的な立ち位置になってしまう時代なのか……。SNSの流行でかつては遠い存在だったアーティストのライフ・スタイルを手軽に知れたり、ちょっとした発言もすぐキャッチできたりするようになった時代の中で、イヴ・トゥモアがソーシャルとうまく距離を置いてるのは正解だね。

arow:それでも、イヴ・トゥモアはいまめちゃくちゃ真正面からロックにぶつかってきてるアーティストだと思う。新作のライナーノーツや本人自身からも異物というワードがよく登場するけど、ロックという音楽として触れたときに異物感は全くないしもはや王道だとも言える。新しい音楽を、誰も見たことのないロックをやるぜ! というタイプでもない。

yukinoise:きっと往年のバンド・サウンドやいろんなロックに触れて育ってきたんだろうな。ロックのアーティストはバンドを経て晩年を迎えたりソロになったりしてから電子音楽に傾倒する節があるけど、イヴ・トゥモアはどんどん初期衝動的なバンド・サウンドに回帰していってるのが面白いところ。

arow:しかも意図してやってるわけじゃないと思わされるところもまたイイ。本当にロックが好きでいまこの音楽がやりたいと素直に思ってるだろうし、世の中での売れ方や音楽産業に振り回されずサウンドを突き詰めてる。俺がいちばん深くロックに触れていた高校時代、教室の隅っこでヘッドホンして爆音でアイスエイジとか聴いて救われてた、あの心が揺らされる感覚こそ、まさに初期衝動でありロックの美学のひとつだね。

yukinoise:彼自身、初期衝動やそういった美学は元来持っていたのに、いまこうしてロックに真正面から向き合っているのは、キャリア的にちゃんとしたクリエイションができる環境でハイクオリティに実現したかったからなのかな、とも思うわけよ。もちろんソロのときでも荒削りに実現できたと思うけど、キャリアが浅い時期にDIYでチャレンジしていたら時代的に宅録系みたいなジャンルで括られてしまった可能性がなきにしもあらず。本人のスタンス的に絶対クオリティ面は重視しているから、自分の理想が実現できる万全な状態でやりたかったんだと思うよ。

arow:ソロでロックに挑戦するのはかなりハードルが高いしね。サンプリングでそれっぽい音はDAWで作れても、結局は打ち込み系の解釈になってしまうし、イヴ・トゥモアはそういうのを嫌がるタイプな気がして。特にバンド・サウンドはシンプルになればなるほどひとつの音に対する向き合い方もストイックに成らざるをえなくて、今回のアルバムも曲の構成自体はシンプルだけどギターの印象でかなり喰らわせてきてる。特にギター・ソロはバンド・サウンドの中でもアンプのつまみがちょっと違うだけで全く印象が変わってしまうようなシンプルだからこそシビアな世界でもある。こだわろうと思えばどこまででも時間をかけられるからこそ、この音でいくぞと決心をするのにどれだけ勇気がいることかはバンドを経験した身としてよくわかるし、その葛藤の末に生まれたサウンドなんだと意識して聴くことでまたそれまでとは違った聴こえ方になったりするところが生音の面白さだと思うな。

yukinoise:タイトルが『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』、和訳すると「齧るが喰わぬ主君を讃えろ」──なんだかスケールが大きくて意味深な感じ。収録曲のうちシングルとして先行リリースされた “Echoalia” のMVからも見て取れるように、本作は『ガリヴァー旅行記』がコンセプトになってるそうで。『ガリヴァー旅行記』は巨人などの異質なキャラクターと世界の関わりが描かれている物語だし、イヴ・トゥモアのクィア性やいまの時代におけるロック・スター的なスタンスといった持ち前の個性が反映されているなと。この曲はビート感が強くてダンサブルだからアルバム全体の中でも割とポップで好きなんだけど、arowくんはどう?

彼が他と一線を画してるのは忠実にロックと向き合ってるところと、ソーシャルやハイパーなカルチャー・シーンと距離をきちんと置いてるところ。その美学の貫き方こそが、イヴ・トゥモアなりにロックを解釈したひとつのかたちなんだろうな。(yukinoise)

arow:このアルバムはダークなところからどんどん曲が進むごとにちょっとずつ光が見えてくる展開だと思った、歌詞もメンタルヘルスや他者との関わりを内包しつつ明るく振る舞おうとしている感じで。となると、中盤の “In Spite of War” がやっぱり好きかな。ヴォーカルもエモいしこのギターの感じも無条件で嬉しくなるサウンド。

yukinoise:このオクターヴを上げた歌い方のヴォーカルのエモさって、2015年くらいのリル・ピープみたいなエモ・ラップ、トラップ・カルチャーとも世代的に親和性があると思うんだよね。イヴ・トゥモアやうちらの世代ならではのエモさだし、王道なロックが入りじゃないからこそグッとくる要素として欠かせない。ただ往年のロックにチャレンジするんじゃなくて、現代に届くロックをやろうとしてる。

arow:今回はポップスとしてもロックのカタルシスを踏襲してる気がする。王道もそうじゃないやり方もどっちも物怖じせずやれること自体、イヴ・トゥモアや自分たちの世代の特徴で、2010年代のインディー・ロックはたぶんそういうのがちょっと嫌だったとこもある。90年代のオルタナティヴなノリに回帰してカマしたくても自信ないみたいなヴァイブスだったけど、ベタな展開でも自分のモノにしちゃうスタンスがいまのロックの特徴かもしれない。

yukinoise:ダークなサウンドからアッパーまで雑多に聴く世代というか、当たり前にクロスオーヴァーしちゃう世代だもんね、わたしたち(笑)。

arow:それも大きいし、案外家で聴いたりディグったりするだけじゃなくていろんなライヴやパーティーに遊びに行って生で聴いて知ろうとする世代でもあるからね。イヴ・トゥモアが来日公演した Contact もクラブだけどバンドも出演してた箱だったし、いろんなものが混ざりつつもミクスチャーともまた違う新鮮な感覚を常に持ってる。

yukinoise:この世代や次世代で流行ってるハイパーポップにもロックのテイストは取り入れられてるけど、それでも彼が他と一線を画してるのは忠実にロックと向き合ってるところと、ソーシャルやハイパーなカルチャー・シーンと距離をきちんと置いてるところ。その美学の貫き方こそが、イヴ・トゥモアなりにロックを解釈したひとつのかたちなんだろうな。

interview with Genevieve Artadi - ele-king

 ジュネヴィーヴ・アルターディが歌う姿や歌詞を見ると、ついつい感情移入して、こんな気分の歌なんだろうな、と様々な感情が沸き起こる。しかし一方で、その感情表現で普通このハーモニーはないだろう、というような曲作りをしている気がして、冷静に音楽を聴いてクールだなと思ったりもする。実際、ジュネヴィーヴの歌は簡単に気持ちよく歌える展開にならず、聴いていくと「予測できること」からどんどん遠ざかっている。「ハーモニーと珍しいキーチェンジをつなぎ合わせて、メロディで接着する方法」という、ファンがジュネヴィーヴのチャンネルで書いていた説明には、なるほどと思った。そんな彼女の理知的にもみえる音楽プロセスや、音楽的リテラシーの高い人には出せないような感覚──衝動的で哲学的、皮肉でロマンチック、パンキッシュで繊細──といった絶妙なバランス感や身体的な感覚についても興味があった。

 今回の新作『Forever Forever』は、ラップトップ上で制作された前作『Dizzy Strange Summer』から一変、ルイス・コール(ds)、ダニエル・サンシャイン(ds)、ペドロ・マルチンス(g)、チキータ・マジック(Syn-Bs)、クリス・フィッシュマン(p)といった多くのメンバーが参加した、スタジオ・レコーディングだ。彼女が書いたビッグ・バンドのための曲が半数を占め、これまで積み上げてきたオーケストレーションのスキルがミュージシャンたちとの信頼関係によって一層発揮されている。ひとつひとつの素材が生き生きと立体的に描き出されているのだ。振り返れば、今作の重要人物、ベドロ・マルチンスが2019年に出していた、アントニオ・ロウレイロ(ds)、フレデリコ・エリオドロ(b)、デヴィッド・ビニー(as)、セバスティアン・ギレ(ts)、ジュネヴィーヴとのライヴ・アルバム『Spider’s Egg (Live)』では、ジュネヴィーヴの声がペドロのギターと有機的に重なる瞬間があり、今作に通じるような音色のレイヤーを聴くことができる。ここで共演したデヴィッド・ビニーは2021年にジュネヴィーヴを迎えたシングルもリリースしており、彼女がいかに現代の俊英たちに影響を与えているかよくわかる。

 そんなジュネヴィーヴが、新作に向かうまでのマインドや、それを形成している生活環境について答えてくれたことは、私たちにも前向きな生き方の示唆を与えてくれるものだった。
 昨年12月のルイス・コール来日公演のオープングステージを見た人は、ジュネヴィーヴが、今作でも存在感を誇るチキータ・マジックこと、イシス・ヒラルドらと組んだ女性チームの表現力の強さに目と耳を奪われたことだろう。そこで断片的に見せていた様々な感情を『Forever Forever』では、愛や感謝、安心といった肯定的な側面に目を向け、それらをミュージシャンたちとともに丁寧に表現している。もちろん彼女の言う「変なコードを使ったりというところは変わらない(笑)」のだけれど。

ポップ・ミュージックがシンプルなコードのみを使ったものでなければならないとは思わないし、ジャズは複雑なコードを多用するべきだとも思わない。ジャンルや曲のタイプに縛られずに自分の書きたいように書いている。

まずイシス・ヒラルドと、フエンサンタ・メンデスとの来日のパフォーマンスのことを聞きたいのですが、このふたりとはいまどんな活動をしているんですか?

ジェネヴィーヴ・アルターディ(Genevieve Artadi:以下GA):イシスとはよく一緒にやっていて。私も彼女のニュー・アルバムの “Dreams Come True” という曲で歌っているし、彼女が私の曲に参加してくれることもあれば、私が彼女の曲に参加することもあるし。パフォーマンスはよく一緒にやっているけど、共同で曲を書いたことはないから、近いうちに曲作りをすることを考えているところ。フエンサンタとは知り合って間もないんだけど、唯一一緒にやったのは、ルイス・コールのメトロポール・オーケストラとのコラボレーションプロジェクトだった。

あなたたちのパフォーマンスは様々な感情の表現があって、女性の感覚もうまく出ているように感じて私は共感したんですが、そういう部分も意識してスタートしたんですか?

GA:あまり男性とか女性とか深く考えたことはないんだけど……とにかくバンドのヴォーカルとして歌いたいと思っていたから、彼女たちとバンドを組んだら楽しいと思った。曲のいくつかは女性的な特性を持っているし、ヴォーカルをレイヤーで重ねるのが好きだから、女性の声の方がいいと思って。とにかく一緒にやったら面白そうと思ったのが理由かな。もちろん男性のミュージシャンともたくさんプレイしているし自分の音楽性に合えば、そこにこだわりはない。なにか主義主張があって決めているわけではなくて。ヴァイブが合えばという感じ。

イシスは、あなたの新作にも参加していますね。新作を作るとき、彼女からどんなインスピレーションをもらいましたか?

GA:彼女には制作の初期の段階から本当に深く関わってもらった。彼女は本当に面白いアイデアをたくさん持っていて、一緒に完成させた曲がいくつもある。それに、彼女から教わったこともいくつもある。例えば、私がきちんと音程を保っていないときは目で合図してくれたり。ライヴのときにはシンセも担当してくれていて、左手でコードを弾いて、右手でメロディを弾きながら歌も歌う。彼女はドラムマシーンもプレイする。彼女の曲を一緒にやったとき、すごく面白いリズムをドラムマシーンで編み出して。全然違う場所からやってきたようなオフセットのリズムで、それを曲にマッチさせていくのがとても興味深かった。それに、何と言ったらいいか……彼女の音楽は、とても強烈な個性と雰囲気を持っていて。そこにとてもインスパイアされる。

働きづめで、自分の時間を楽しむ余裕がなかった。余裕がないから、自分勝手に生きていたと思う。それは自由とは違う。いまは「気が狂っていた時期はもう終わり」という感じ(笑)。

あなたの音楽の経験で気になったことがあるんですが、幼少期にポリネシアン・ダンスをやっていましたよね。あなたの音楽につながっているんじゃなかと思って。

GA:うーん(笑)、そうね……10年ほどやっていたんだけど、ポリネシアン・ミュージックってとてもパーカッションの要素が強くて。6人くらいドラマーがいて、全員が違うリズムを刻んでいる。ダンサーは、リーダーのような人がいてその人の動きに合わせていく感じなんだけど、あまり頭で考えずにリズムを取りながら自由に踊れる感じ。だから、頭で考えずに自然とリズムを自分の中に取り込むことには役立ったかもしれない。それにメロディがとても綺麗で。綺麗なメロディをリズムに乗せるということは身についたかもしれない。

そもそもポリネシアン・ダンスに興味を持ったのはどういうきっかけで?

GA:母がフィリピンに住んでいたことがあって、そのときに興味を持ったみたい。詳しいことはわからないけど、先生をつけてそれなりに本格的にやっていたんだって。子どもの頃、母が姉にポリネシアン・ダンスを教えていて、それで家族でパームデールに移り住んでからも姉はいろいろなグループと一緒にダンスを続けていて。そこで知り合った女性……私の将来の義姉になる人なんだけど、彼女の家族はサモア人で、「一緒に踊らない?」と誘ってくれたのがきっかけでやり始めた。

面白いですね。それとブラジル音楽との関わりも興味があるんですが、あなたはアントニオ・カルロス・ジョビンの “Caminhos Cruzados” から影響を受けていますね。あなたの作ったビデオで知りました。

GA:カレッジ時代にヴォーカル・グループを指導していた先生に教えてもらった。初めて聴いたとき、「ワーオ、これは一体何!?」って感動して。あんな美しいメロディやハーモニーや歌声はそれまで聴いたことがなかった。色鮮やかで豊潤で……それでいて余計な装飾が何もなくて。見せびらかすような派手な演出は一切なくて、ただ感情の深みが表現されていて。この曲が持つメロディやハーモニーの展開にとにかく惹きつけられた。その頃、10曲かそのくらいブラジル音楽の曲について学んだんだけど、本格的にブラジル音楽を聴くようになったのは数年前にペドロ・マルチンスに出会ってから。

ペドロは今回のアルバムの全曲でギターを弾いているし重要な存在ですよね。彼との出会いと今回のコラボレーションのきっかけを教えてください。

GA:もともと私がこの “Caminhos Cruzados” を自分で歌った動画を投稿したことがきっかけだった。それをペドロが観て「君がポルトガル語で歌えるのは知らなかったよ」ってメッセージを送ってきて。ペドロがブラジル出身のミュージシャンだったことは知っていたけど、実際に会ったことはなかった。それで私がロンドンにいるときに、彼がメッセージを送ってきて。「ちょうどロンドンでアルバムのミキシングをしていて、君のショーを観に行きたいんだけど」って。それで、「一緒にステージでプレイしてみない?」と訊いたら、快諾してくれて。でも実際に顔を合わせたのはステージの上なの。その前に会うタイミングがなかったから、「ペドロ・マルチンス!」って彼の名前を呼んで、それでペドロがステージに上がった。それが出会い。そのあとすぐにペドロが、友人でベースプレイヤーのフェデリコと一緒にLAに来た。それで私たちの家に滞在して、セッションしたり一緒にギグを観に行ったり、音楽的なことを中心にして親交を深めていった。

なるほど。あなたの作品にブラジル音楽はどんな風に入っていますか?

GA:いかにもわかりやすい形で取り入れているとは思わないし、そうするつもりもない。どこかで影響を受けてはいるんだろうけど、自分の曲を書くときはあまり意識していないと思う。ただ、ブラジル音楽の持つ美しいメロディやハーモニーを思い出して、そんな曲を書いてみたいと思うことはある。

その曲作りのことなんですが、ジャズのヴォイシングやヴォーカル・アンサンブルをカリフォルニア大学で学んでいますよね。このときの経験はどのように生かされていますか?

GA:大学に通う前にもバンドを組んでいたことはあるけど、当時は曲の書き方もよく理解していなかったから、同じようなコードやメロディばかり繰り返し書いていた。だから、大学で違うコードの使い方やメロディの書き方、管弦楽法や他のミュージシャンと一緒に音楽を演る方法やインプロヴィゼーションの方法なんかについて広く学ぶことができたと思う。その上で私がいちばん気を付けていることは、自然な流れで曲を書くこと。ひとつのパートに固執して、そこで立ち止まってしまわないようにすること。教師は、曲の構成についてある一定のルールがあることをとても重要視していて、ここでこのコードは間違っている、このコードの次はこれが正しい、という法則に則っているけれど、私はなるべくフォーマットのようなものは考えずに、自然に、好きなように書くように心掛けている。ポップ・ミュージックがシンプルなコードのみを使ったものでなければならないとは思わないし、ジャズは複雑なコードを多用するべきだとも思わない。ジャンルや曲のタイプに縛られずに自分の書きたいように書いている。いちばん大切なことは、私が何を表現したいかということだと思っているから。だから、もちろん大学で学んだ音楽理論は役には立っているけど、それよりもコードの持つトーンや色味や、音楽の歴史のようなものの方が身についているような気がする。

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なるべくヴィーガンの食生活を貫くようにしていて。あとは1日2回、毎日瞑想する時間を持つようにしている。

前作からあなたの声の質感も変化しているように感じます。あなたは技術的にどうやって声をコントロールしていますか?

GA:それについては意識的にかなり自分でも努力してコントロールしている。今回のアルバムに関して言えば、曲作りとスタジオでのレコーディングの間にかなり時間があったから、何度も何度も歌を練習した。いくつかの曲はライヴで演奏したりもした。それで、実際にスタジオに入ったときには、ほぼワンテイクでレコーディングするようにしたかった。家で録音してみて歌い方を考えたりして、スタジオでは完璧に歌いこなすことで、歌に集中できるようにして。

私は前作の『Dizzy Strange Summer』を聞いて、愛の複雑さや自由への欲求を感じました。これを聞いた後に新作『Forever Forever』を聞くと、気持ちが洗われるような美しさや秩序を感じました。このアルバムを作るまでにどんな気持ちの変化がありましたか?

GA:いくつか大きな出来事があったけれど、いちばん大きかったのはペドロとの出会い。彼と付き合うようになったのは、私にとって本当に大きな変化だった。自分自身と向き合うようになったというのかな。自分の問題に向き合えるようになった。彼との関係を深めていく中で、瞑想を始めたり、本を読むようになったり、ティク・ナット・ハンやラム・ダスのビデオを観たり……自分を見つめ直したり、より健康な生活を意識するようになった。ちょうど彼と出会った頃は自分をもっと解放すべき時期に来ていたんだと思う。それまでの私は働きづめで、自分の時間を楽しむ余裕がなかった。余裕がないから、自分勝手に生きていたと思う。それは自由とは違う。いまは「気が狂っていた時期はもう終わり」という感じ(笑)。

(笑)どんなことを毎日の習慣にしているんですか? いまお話にも出ましたが、健康的な食事生活や、瞑想など何かルーティーンにしているものがあれば教えてください。

GA:可能な限りヴェジタリアンを選択している。充分なプロテインが摂れないときは卵を食べたりするけど、なるべくヴィーガンの食生活を貫くようにしていて。あとは1日2回、毎日瞑想する時間を持つようにしている。本当は瞑想する日もあればしない日もあるというようにしていきたいんだけど、瞑想するのとしないのでは私の心身の状態が全然違うの。

以前に比べて、精神的に落ち着いたり穏やかになったりしたと感じますか?

GA:そうね、前ほど感情的な起伏もないし、周囲の人たちに対してとても忍耐強くなったと感じる。自分の心の中に余裕が生まれたというか。家でひとりでいるときは前から心に余裕があったんだけど、逆にだらしなく過ごしてしまっていたし(笑)。でもいったん外に出ると、自分の社会での立ち位置というか、役割をつねに考えてしまっていた。なるべく聞き役に徹して、相手に緊張感を感じさせないようにしたり。私と話した人はみんな「君と話していると自分らしくいられる気がする」というようなことを言ってくれるんだけど、私自身は気を使いすぎてクタクタになってしまっていた。でもいまは人付き合いを円滑にできるだけのエネルギーを得た感じ。

先ほどお話しに出たティク・ナット・ハンのことをもう少し聞きたいです。

GA:私は何かの問題にぶつかると、すぐにグーグルに訊いちゃうよくないクセがあるの(笑)。でもそんな問題の答えをググってみても「そんなやつ追い出しちまえ」「あなたはそんな目に合うべき人間じゃない」みたいな、怒りに満ちた答えしか見つからなくて。でも、その自分の問題と仏教、ってググると、もっと根本的な解決方法が見つかることに気づいた。そこからティク・ナット・ハンのような名前に行き着いて、彼の本を読んだりビデオを観たりした。彼の言葉には本当に助けられた。

彼の教えであるマインドフルネスについて、あなたはどんな風に考えていますか。

GA:とても美しい考え方で……すべての人に彼の教えを実行してほしいと願っている。例えば、彼はイスラエルやパレスチナの人たちをひとつに結ぶことができると語っている。どんな人間同士でもコミュニケーションは可能であるということ、互いをコントロールすることは可能であるということ。それは戦いで相手を屈服させるという意味ではなくて、互いを尊重し合うということ。自分自身を大切にすることができれば他人を大切にすることもできる。自分の愛する人を大切にすることができるということ。私はほとんどの場面ではかなり忍耐強い人間だとは思うけど、いくつかの地雷があって、それを踏まれると怒りをコントロールできなくなるところがあった。でも、彼の教えを実行していく中で、かなり自分を律することができるようになってきたと思うし、これからも続けていきたいと思っている。

ティク・ナット・ハンのそんな考えは、あなたの今の音楽にも影響していますよね?

GA:そうね、そう思う。歌に対するアプローチに影響を与えていると思うし、音楽づくりのプロセスの中で、自分自身を律して根気強く向き合うことを教えてくれたと思う。自分の頭の中で考えすぎずに、人の意見もよく聞くようになったと思う。それに、自分の音楽をよく聴いて、いま自分がやるべきことや置かれている状況をよく理解することで、すべてのことがうまくいくようになったと思う。

できあがったものに完全に満足することはほとんどない。大体いつも、自分が表現したいことの半分くらいしか表現できない。でも、私はすべてを完璧に表現したい。

では今回のアルバムは、具体的にはどのような順番で作られたのですか?

GA:曲を書くときはいつもできるだけ自分の頭の中にあるアイデアを明確にしてから書くようにしている。ジャム・セッションは緊張するというか、得意ではないからそこから曲を作ることはほとんどない。2019年にスウェーデンのノーボッテン・ビッグ・バンドから、専属の作曲家にならないかというオファーがあって。それでコンサート用の曲をいくつか書いてデモを作った。コンサートが終わったあと、書き下ろした曲の半分を自分のソロ・ルバムに入れたいと思って。だからこのアルバムの曲のいくつかはふたつのヴァージョンが存在することになる。それからアルバム用に曲を書き足していって、スタジオでバンド・メンバーと相談しながら「ここにこれを入れよう」「このソロは誰が弾く?」という調子で作っていった。ああ、中にはそれより前に書いた曲もあるね。いちばん古いものは2017年頃に書いたんじゃなかったかな。とにかく、スタジオでみんなでアイデアを出し合って作ったものだけど、全体的なヴィジョンはすでに私の中にあって、それを明確にしてからレコーディングに入るというプロセスが私のやり方。

参加したミュージシャンからどんなアイディアや個性を引き出しましたか?

GA:ルイス・コールは全体に魔法を使ってくれた。それにピアノのクリス・フィッシュマン、ダニエル・サンシャインはドラムを何曲かと、ミックスとマスターを担当してくれたし、ヘンリー・ハリウェルがエレクトロニックな部分をやってくれた。彼は、私が作ったデモの何曲かのドラムをもっとクールなものにしてくれたりした。それと何曲かではダリル・ジョンズがベースを弾いてくれている。

Knower でのデビュー時からあなたの作曲の才能はとても評価されているし、今回特にあなたのプロデュース能力も発揮された内容だと思います。プロデューサーという立場で、この作品をどのように解釈し作ったか教えてください。

GA:そう言ってもらえて嬉しい。ありがとう。今回は、当初はビッグ・バンドのために作曲したから、いままでのようなプロセスは踏めなかった。いつもはデスクに向かって自分のアイデアをクリアにしていく作業なんだけど、どんな音を実際に入れるかというのはそれほど選り好みしないで曲を作っていった。でも、今回はここでサックスを入れる、ここで自分のヴォーカルをレイヤーで重ねる、というそれぞれのパートを曲作りの段階で細かく決めていく必要があった。もちろんどうしても隙間ができるから、それを少しずつ埋めていく感じの作業だった。ビッグ・バンドとレコーディングするわけだから、全てのパートにおいて私が指示を出せなければ曲を作ることは不可能でしょう? だから作曲と同時にプロデュースもすべておこなうというプロセスだった。演奏する人たちが興味を持ち続けられるように、その上で私がどんな曲にしたいか、そのヴィジョンを明確にするということに集中した。このアルバムはその延長上にあるものだと解釈している。

歌うことだけではなくプロデュースをすることや曲を作ることのやりがいはなんですか? 挫折しそうになったときは、どうやって乗り越えましたか?

GA:私はけっこう選り好みするタイプ。歌を歌うときは、その曲が「良いもの」(笑)でなければイヤなの。私はつねに自分がどんなものを求めているのか、明確なヴィジョンがあるけれど、それをどうやって実現すればいいかはわからない。とてもフラストレーションを感じる。自分が信頼している人と曲作りをするときはスムーズにやりたいことに近づけることができるけど、そうでない場合はまずは意思表示して、私の描いているものを理解してもらう必要があるでしょ? それがなかなか伝わらなくて、相手も「結局何がやりたいの? 自分にどうして欲しいの?」って戸惑うことになってしまう。すごく時間が掛かるし、できあがったものに完全に満足することはほとんどない。大体いつも、自分が表現したいことの半分くらいしか表現できない。でも、私はすべてを完璧に表現したい。だから、私は信頼する人たちと一緒に音楽を作るべきだという風に考えるようになった。もちろん誰かと一緒に作品を作るときは、それぞれのスケジュールを合わせなければいけないから、途中で長いこと待つ時間が必要になることもあるし、スケジューリングは本当に大変な作業。それでも、スタジオでコラボレーションをするのはとても好き。音楽づくりはそもそも共同作業だと思っているし。だから、私はプロデュースをするときも、みんなの意見にとてもオープンであるようにしている。それも、ただイエス・ノーを言うだけの存在ではなくて、いろいろな意見やアイデアを交わしながら一緒に作っていくことに積極的だと思う。でも最終的な判断を下すのは自分。自分の作品をプロデュースするということは、自分に決定権があって、最終的には自分の満足のいく作品にできるということ。とてもやりがいを感じる。

とても興味深いですね。スタジオでの作業を見てみたいです。今後コラボレーションしたいアーティストや、これからの予定を教えてください。

GA:そうね……ライアン・パワーとぜひ何か一緒にやりたい。ステレオラブレティシア・サディエールともぜひコラボレーションしてみたい。とにかく自分の好きな人たちと何か一緒にやれたらいい。ビョークともやってみたいけど……彼女がオファーを引き受けてくれるとは思えないけど(笑)。それと、すでに次のアルバムの構想ができあがっている。アニメを大量に観ていた時期だから、それに影響を受けたロックっぽい内容になるかもしれない(笑)。今回のアルバムとはかなり違ったものになりそうだけど、それでも変なコードを使ったりというところは変わらないと思う(笑)。

Main Source - ele-king

 VINYL GOES AROUNDから新たなアイテムの登場だ。今回は90年代ヒップホップを代表する金字塔、当時のニューヨークの熱気を伝えるメイン・ソースのファースト『Breaking Atoms』(1991年)がボックスセットとなって蘇ることになった。本編の2LPに加え、アルバムの顔とも言える “Looking At the Front Door” やあのナズの世界初登場曲 “Live At The Barbeque” などを切った、4枚の7インチが付属する(すべてピクチャー・ヴァイナル仕様)。ナンバリング入りの限定商品とのことなので急ぎたい。

MAIN SOURCEの伝説のファースト・アルバム『Breaking Atoms』がついにBOXセットになって発売!

90’sヒップホップ最高峰の名盤として今でも語り継がれているMAIN SOURCEのファースト・アルバム『Breaking Atoms』の2LPと4枚の7インチを収めたBOXセットがVINYL GOES AROUNDから発売されます。『Breaking Atoms』は言わずと知れた “Looking At The Front Door” や “Just Hangin’ Out” 等のヒップホップ・クラシックを生んだ名盤中の名盤!
またここに収録の名曲を組み合わせた7インチもそれぞれ4枚カット! これら全てがピクチャー・ヴァイナル仕様。特製のBOXにまとめて販売します。
今回も超限定(ナンバリング入り)での販売となりますのでお早めにお買い求めください。

Includes...
・Breaking Atoms 2LP
・Live At The Barbeque / Large Professor 7"
・Looking At The Front Door / Snake Eyes 7"
・Just A Friendly Game Of Baseball / Vamos A Rapiar 7"
・Fakin' The Funk / He Got So Much Soul (He Don't Need No Music) 7"

VGA-5011
MAIN SOURCE
BREAKING ATOMS - PICTURE DISC BOX

¥18,000
(With Tax ¥19,800)

*Free shipping within Japan for purchases over 10,000 yen.
※1万円以上のお買い上げで日本国内は送料が無料になります。

*Exclusively until April.3 2023.
※期間限定受注生産(~2023年4月3日まで)

*The products will be shipped in late April 2023.
※商品の発送は 2023年4月下旬ごろを予定しています。

*Please note that these products are a limited editions and will end of sales as it runs out.
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

https://vga.p-vine.jp/exclusive/vga-5011/

Kassem Mosse - ele-king

 ガンナー・ヴェンデル、カッセム・モッセ名義4枚目のアルバムは古巣、ロウテック率いる〈Workshop〉から。本名義での〈Workshop〉からのリリースはというと、コレより前がファースト・アルバムにあたるLP2枚組『Workshop 19』が2014年、ということでココからのリリースはじつにひさびさ、9年ぶりの作品となるわけですね。もろもろのコラボやライヴ盤などを除くと名門〈Honest Jon's Records〉からの2016年『Disclosure』、続く、自身のレーベル〈Ominira〉からは『Chilazon Gaiden』を2017年にリリースしています。またマンチェスターのレフトフィールド・テクノなレーベル〈YOUTH〉(〈PAN〉の切り開いた「その後」を個人的には感じてしまうレーベルです)から、別名義の Seltene Erden で2020年にリリースしたり。また上記のようにコラボや DJ Residue 名義で〈The Trilogy Tapes〉からアブストラクトな電子音響作品『Residual Manifesting』のテープ・リリースもありますが、今回は待望の本名義のアルバムと言えるのではないでしょうか?

 2010年前後、〈Workshop〉がもろにそうですがディープ・ミニマルからの、セオ・パリッシュなどのローファイでラフなハウス・サウンドを昇華したある種のジャーマン・ディープ・ハウスの新たな展開、そうした流れの象徴的なアーティストのひとりとしてあげられるのではないでしょうか。そのサウンドは上記『Workshop 19』あたりを聴いていただければと思いますが、セオ・パリッシュの影響を感じさせるビートダウン・ハウスを、さらにドイツ流にミニマルにクリアに展開といった感覚のサウンドで注目を集めました。
 さて時系列的にそのサウンドの流れを追うと、セカンド『Disclosure』はちょっと異質な作品で、ディスコグラフィーを後から見渡すと、どちらかと言えば Seltene Erden 名義や DJ Residue 名義のアブストラクトな電子音の冒険の前哨戦といった感じもします。前作にあたるサード『Chilazon Gaiden』は、そうした電子音の実験がストレンジな音感のハウス・グルーヴへと進んだ感覚で、ファースト『Workshop 19』が醸し出すムードとも、セカンドの電子音響的な実験的な世界観とも違ったシンプルなリズムの探求を目指した結果という感覚もします。どこかグルーヴだけを手がかりにストーリーやムードといった表現を排除したような、「鳴っている」ことの面白さを極めているようなそんな作品です。

 こうしたキャリアのなかでリリースされた本作は『Chilazon Gaiden』で示されたクリアな質感とシンプルなリズムを表現の中心に備えた作品ではありますが、同時に初期にあったデトロイト・ディープ・ハウスの影響を後半に見せてもいるのが特徴ではないかと。アルバム冒頭、シンプルなフレーズとパーカッションが蛇行したグルーヴを淡々と作る “A1”、彼の真骨頂とも言えるディープ・ハウス・トラック “A2”。このあたりはリズムの冒険を中心に据えた楽曲と言えると思いますが、こうした楽曲でこれまでの作品になかった要素としてあげられそうなのは、ダビーとも表現できそうなサブベースの使い方(サブスク音源だったりあまり現代的でない指向性のスピーカーだとそれほど伝わらないので再生環境に注意が必要ですが)。ミキシングなのか機材なのかマスタリングなのか判断しかねますが、本作の下の方でブンブンと低音が鳴っているのが結構印象としては強いアルバムです。
 リカルド・ヴィラロボス的なサイケデリアを発する “C1” やキックを排した “D2” などの楽曲にもやはりベースラインがよりサウンドの要として活躍しています。リズム、フレーズ、そしてスウィングする地鳴りのようなサブベース、この3つの要素が有機的にからんでグルーヴを作り出していく、そんな印象を受けます。“B1” や “B2” はベースラインの印象は薄いですが、初期ハーバートあたりを彷彿とさせるストレンジなファンクネスです。このあたりの要素は『Chilazon Gaiden』の先にある作品であることは間違いないでしょう。そしてアルバム後半はハイライトとも言える “C2” 以降、前作にはなかったストリングスが流麗にムードを作り出していて、このあたりは逆にファーストあたりで見せていたデトロイト・ディープ・ハウスの影響をひさびさに感じさせるサウンドになっています。アルバムのラスト “Provide Those Ends” は “C2” のダブ・ヴァージョン的な趣ももあります。

 テクノ由来の電子音の実験性が醸し出すストレンジな感覚、淡々とどこまでも続く抑制的なディープ・ハウスのグルーヴ、このふたつの有機的な絡み合いがこの名義の魅力と言えるとは思いますが、本作では彼のキャリアをひとつ総括するように、その才覚が遺憾なく発揮されています。サブべースの援用はもちろん昨今の制作ソフトウェアや機材、モニタリング機材、PAを含めた再生・音響技術の変化といったテクニカルなところから、不断となったベース・ミュージックとハウス/テクノの関係性というモダンなシーンへの反応というアップデートを示すものとも言えるでしょう。ともかく、なんというかミニマルなジャーマン・ディープ・ハウスの真骨頂、そんな言葉が浮かぶアルバムです。アゲず、終わらずなグルーヴの感覚、そこから導き出されるヒプノティックないわゆる「ハメ」の感覚は、バシッとDJプレイでハマったときに「アレからのコレ」なのか「コレからのアレ」なのか、まぁともかくこうした楽曲の真価はそうした瞬間に訪れるものですよね。

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