「Low」と一致するもの

MEITEI - ele-king

 4月に最新作『瑪瑙(めのう)』のリリースを控える音楽家・冥丁が、アルバムより先行シングル“新花魁”をリリース。6年の月日をかけて研ぎ澄まされた2020年作「花魁Ⅰ」を下地とする楽曲だという。戸谷光一によるミュージック・ヴィデオも公開中。

 「失われつつある日本の雰囲気」をテーマに活動を続け、昨年には新たなシリーズ「失日本百景」をスタート。温泉をモチーフにしたアンビエント作品『泉涌(せんにゅう)』を発表するなど、その独自の世界観の行く末が気になるところ。つぎは、いったいどんな「失日本」を表現するのだろうか。

Artist: 冥丁
Title: 新花魁
Label: KITCHEN. LABE
Format: Single / Digital
Catalog:: KI-050S1
Release Date: 2026.2.6
Buy / Stream : https://www.inpartmaint.com/site/42429/
https://kitchenlabel.lnk.to/52P3moDM


4月17日発売予定の冥丁のニューアルバム『瑪瑙』(めのう)より、先行シングル「新花魁」(しんおいらん)が2月6日にデジタル配信にてリリースされる。三部作『古風』に通底する哀愁と、その先に切り開かれた影。本作「新花魁」は、冥丁がこれまで継続して取り組んできた主題“失日本”が、時を経てひとつの像を結ぶ楽曲である。

古風編初作に収録された「花魁Ⅰ」(2020年作)を原型とし、公演を重ねる中、舞台上で何度も披露され、磨き上げられてきた本楽曲は、五年を経て「新花魁」という名を持つに至った。この楽曲を通じて、歴史上で語られる花魁という存在の先に表現されたのは、「私」と「非私」との、そして冥丁自身が現代で見た日本の自然美の連なりと、麗しくも咲き誇る鮮烈な哀愁である。

朽ちゆく質感の層を漂う遠い声、古楽器の音を使いながらも伝統的手法とは異なる独自のパーカッシブなリズム、そして現れては消えていく旋律の連なり。それらは明確な物語を語ることなく、リスナーの感覚に直感的に触れてくる。

アルバム『瑪瑙』の序章として位置づけられる「新花魁」は、実直で創造的な営みを止めることなく仕上げられた一曲である。ここにあるのは、再構築された歴史ではなく、自明でありながら幽美な印象として漂う日本の姿“失日本”であり、日本的な感性と現代的な表現が織り成す新たな輪郭である。

ミュージックビデオ「新花魁」(映像:戸谷光一)も同日公開される。本作のミュージックビデオやアーティスト写真に映し出された、冬の日本海や、孤高の断崖に舞い散る霰、波飛沫などの情景は、冥丁自身が10年間にわたり広島で過ごした日々の葛藤と、自身の創造する音と孤独に向き合った有様を象徴している。

【冥丁(めいてい) プロフィール】

冥丁は、“自明でありながらも幽微な存在として漂う日本”(誰もが感じる言葉では言い表せない繊細な日本)の印象を「失日本」と名付け、日本を主題とした独自の音楽表現を展開する、広島 尾道出身・京都在住のアーティストである。現代的なサウンドテクニックと日本古来の印象を融合させた、私的でコンセプチュアルな音楽表現を特徴とする。『怪談』『小町』『古風(Part I, II, III)』からなる三部作シリーズを発表し、その独自性は国際的に高く評価されている。TheWireやPitchforkなどの海外主要音楽メディアからも注目を集め、冥丁は近年のエレクトロニック・ミュージックにおける特異な存在として確立された。音楽作品の発表だけにとどまらず、国際的ブランドや文化的プロジェクトのための楽曲制作に加え、国内外における公演活動や音楽フェスティバルへの出演、ヨーロッパやアジアでのツアーを通じて活動の幅を広げてきた。さらに近年は、寺院や文化財、歴史的建造物といった空間での単独公演へと表現の場を拡げ、日本的感性と現代的表現の新時代を見いだし続けている。

heykazma - ele-king

 ミレニアル世代、Z世代が音楽文化を一変させていったのがここ十数年のこと。次はいよいよ、10年代生まれのアルファ世代が華々しいデビューを飾る時代を迎えたようだ。

 ele-kingでもレギュラー・コラム(https://www.ele-king.net/columns/regulars/heykazma/)を連載中の2010年生まれ、アルファ世代の新星DJ・ヘイカズマがデビューEP『15』を〈U/M/A/A〉からリリース。以下、作品詳細と、北村蕗、食品まつり、山辺圭司(LOS APSON?)などによる関係者コメント。期待の新星の今後に注目だ。

Artist: heykazma
Title: 15
Label: U/M/A/A
Format: Digital
Release Date: 2026.2.2
Buy / Stream : https://lnk.to/heykazma_15

Tracklist:
1. 15
2. Pre Pariiiiiiiiiiiiiiin
3. Pariiiiiiiiiiiiiiin
4. Cat Power
5. Acid Noise

Credit:
Maiya Toyama(illiomote) - Bass(Track 1)
Case Wang - Mix&Mastering
ALi(anttkc)- MV Director
Yuki Kawamura - Produce

写真:飯田エリカ
デザイン:Manami Masuda
hair&make:hitomi andoh
Costume cooperation:miku moritake, Chiiika., chichiiiiichichi, ALIGHT
from 「Eternal Girl Meets Mermaid」


「heykazmaと書いて未来と読む」

3歳で音楽やカルチャーに開眼、幼少期より自発的に親同伴のもと震災や風営法摘発以降に増加した未成年入場可のデイイベントやパーティに通い詰め、15歳で音楽系の高校入学と共に仙台から上京。その後は学業の傍ら、都内を中心に東北各地や北海道までジャンルの枠を飛び越えて、カルチャー愛に溢れる現場でのDJを展開!エレクトロニックミュージックの中でもテクノを中心に、ノイズからフットワークまでをミックスアップする自由な感性と、類まれなファッションセンスが、既に各地のリスナーや関係者の間で話題を呼んでいる。

2026年2月に16歳の誕生日を迎えるZ世代の次「アルファ世代の新星DJ」が、満を持して5曲入りデビューEPを配信リリース。エクスペリメンタルからジュークまで豊富な音楽経験値を活かした一筋縄ではいかないオリジナルのダンスミュージック!自身によるポエムコアやラップをフィーチャーした新しい世代の幕開けを宣言するかのような「15」に始まり、DTMを覚えたての中学生の頃に作った楽曲を再構築した「Cat Power」では幼少期より共に育った愛猫への想いをビートに乗せて。アーティストのシシヤマザキのお絵かき教室に参加していた経緯から、アトリエを訪ねる際に立ち寄った益子焼の工房での皿が割れる音の鮮やかさに着眼し、15年間の思い出が弾ける瞬間の音に準えた「Pariiiiiiiiiiiiiiin」、目を瞑って聴けばドープすぎて作者の年齢とか関係なくなるほどに衝撃的なノイズトラック「Acid Noise」など、未来への希望とディストピアの存在が混在する2025年らしい作品に仕上がっている。

タイトルの「15 EP」とは、heykazma自身が育ってきた15年を総括した音楽たちを此処に刻むという意味を込めて付けられた。すべてのトラックは自身で作成し、ミックスはレーベルメイトであるWang OneのCase Wang氏が担当。荒削りながらも確固たる生命力を感じる作品たちは、先ず先入観を取っ払って一聴をおすすめする。

コメント:

EPリリースおめでとう!!
DJ、パーティーオーガナイザー、コラムニストなど、様々な視点からカルチャーを俯瞰している。その中で自由な泳ぎ方を見せている。決して誰かを強制したり、価値観を押しつけているわけではなく、私はあくまでこうあり続けるという一つの個として音楽を表現しているように感じる。その異色でありながら、色彩を選び抜く力というものは、オーガナイザーとしても培った、出会うことを知らない引力を、引き合わせる力を持ち合わせているからこそ生まれてくるものだと思う。 これからまだ見ぬ化学反応を起こしてくれることでしょう。
それを目撃し続けたいです。(北村蕗)
ビートのバリエーションの豊富さ、サウンドもトライバル感ありつつ、フィールドレコーディング的なサウンドも織り交ぜて音響的にもめちゃくちゃヤバいepです (食品まつり a.k.a FOODMAN)
ここにエレクトロニック・ミュージック界の新星、耳を澄ませ! (野田努 / ele-king 編集長)
最初の輝きはいつまでも色あせない――期待の原石がついに転がりはじめた (小林拓音 / ele-king 編集部)
衝撃の15歳!!! 1st EPリリースおめでとうございます!!!
この年齢で、ここまで自分の世界観と音を持っているなんて、可能性しか感じません!!!
これからどんな景色を見せてくれるのか、どんな進化をしていくのか、今から楽しみすぎます!!!
心からのリスペクトと応援を込めて。🔥🎶
(もりたみどり / WAIFU)
ついにこの時が来た!!!hey様の、踊りながら飛び出してくるような立体的な躍動エネルギーを、世界が、浴びたがっている!!!!
(ShiShi Yamazaki)
高円寺のあれこれレコードショップLOS APSON?周辺にて勃興するイベント、DDMメンバーとしても登場してもらっている高一エクスペリメンタル妖怪系クリエイター!?heykazmaが、新しいEPをリリースするというので聴いてみたっ!!! 現代のテンポ感で刻まれる鳴りの良いフレッシュダンサブルサウンドと、ライトなコラージュ感覚で、ポジティブなバイブスを無限に放っています!
(山辺圭司 / LOS APSON?)
heyちゃんの楽曲でベースを弾きました!
オファーをもらった時にえ、ベース!?
となったんですがheykazmaの頼み断るわけがない!みんなを新しい世界に引き込んでしまうようなheyちゃんにいつもパワーをもらっているし、こうした形で大きなスタートに関われて嬉しいです。ありがとう。
未来でしかない!EPリリース本当におめでとう。
(Maiya Toyama / illiomote)
素晴らしいスタートライン!ポップなフットワークビートも、エクスペリメンタルなノイズも、heykazmaの血肉となって通過した痕跡を残し、めちゃくちゃエネルギッシュ!heykazmaが本格的にプロデューサーとして活動を始めたことは、これからのテクノの希望でしかない˚. ✦
(壱タカシ )

Flying Lotus - ele-king

 フライング・ロータスが新たなEP「BIG MAMA」を送り出す。今回はなんと自身が設立した〈Brainfeeder〉からのリリースで、同レーベルからフライング・ロータス名義の作品が発表されるのは初めて。EPとしては(ハウスに挑戦した “Ajhussi” と “Ingo Swann” を含む)2024年の「Spirit Box」以来の作品となるが、ティーザーを聴くかぎりこたびもまた新たな方向性にチャレンジしているようで、目が離せない。

FLYING LOTUS

自らが主宰する〈Brainfeeder〉からフライング・ロータス名義として
正式リリースとなる記念すべき第一弾作品
待望の最新EP『BIG MAMA』を発表!
3月6日リリース!

コルトレーン一族の末裔であり、2000年代後半にその独創的なビートで世界をリードしたビート・ミュージック・シーン最重要アーティスト、今では電子音楽界を代表する鬼才、フライング・ロータスが最新EP『BIG MAMA』を3月6日にリリースすることを発表した。本作は、フライング・ロータスことスティーヴ・エリソンが、自ら設立したロサンゼルス拠点のレーベル〈Brainfeeder〉から発表する初の正式リリース作品となる。〈Brainfeeder〉は約20年前にエリソンが設立し、これまでにサンダーキャット、カマシ・ワシントン、ルイス・コール、ハイエイタス・カイヨーテなど、数多くの名だたるアーティストの作品を世に送り出してきた重要レーベルだ。

『BIG MAMA』は、フライング・ロータスが衝動と勢いに突き動かされた瞬間を捉えた作品だ。無数のサウンド、リズム、エフェクトが高密度に詰め込まれた本作は、彼自身の言葉を借りれば「実験的で、マキシマリストで、超高速なエレクトロニック・エネルギーの爆発」。全7曲はひと続きの構成として展開され、一切のループを用いず、すべての小節が異なるという大胆なアプローチが取られている。

大砲から撃ち出されたみたいな感覚にしたかった。
ただただ爆発的で、予測不能なエネルギー。
完全にバグったコンピューターみたいな、正気を失った機械のような感じだね。
- Flying Lotus

Flying Lotus - BIG MAMA
予約リンク https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

本作は、最新長編映画『Ash』の監督・作曲を務めた後の、ある種の“隔離期間”を経て制作された。ニュージーランドで、ラップトップとコントローラーだけを使い、ほぼ一人で映画音楽を完成させるという原始的な制作環境が、彼を原点回帰へと導いた。

ひとりで丸ごとサウンドトラックを作るという、大げさに拡張された時間感覚の中にいた感じだった。その反動で、直前にやっていたこととはまったく違うことがしたくなった。このプロジェクトを始めて、内側に溜まっていたカオスを吐き出せる場所を見つけたような解放感があった
- Flying Lotus

制作期間は約2か月。従来の“曲単位”の制作ではなく、まず金属的で複雑な音色や、変化し続ける音の質感を探求するソフトウェア・シンセや、中古のドラムマシンを駆使し、音そのもののアイデアを書き留めるスケッチブックを作ることからスタートした。その後、1日に10~15秒分の音楽を丹念に積み重ね、最終的に13分に及ぶ、テンポやジャンルに縛られない意識の奔流のような作品へと結実させている。

自由で、生きている感じにしたかった。サウンドデザインとして考えて、予測不能で圧倒的な密度を持つものを作りたかったんだ。音楽がどんどん“完璧”で無菌的になっていく中で、電子音楽における“人間らしさ”をどう残すか、それを考え続けたい
- Flying Lotus

アートワークは、イラストレーターのクリストファー・イアン・マクファーレンが担当。フライング・ロータスは、幼少期に親しんだカートゥーンへの共通の愛を通じて彼と意気投合したという。

『レンとスティンピー』とか、サタデー・ナイト・ニコロデオン(SNICK)みたいな感じ。
俺と同世代なら分かるはず(笑)。とにかく才能ある人で、ずっと一緒に仕事したかったんだ。
- Flying Lotus

このいたずら心に満ちたカートゥーン的美学は、フライング・ロータス自身が敬愛する『ザ・シンプソンズ』の影響とも共鳴し、『BIG MAMA』を2010年作『Pattern+Grid World EP』の精神的続編とも言える作品へと位置づけている。ブレイクコアとIDMを自在に横断する、フライング・ロータスならではのダンサブルで遊び心あふれる側面が前面に押し出された一作だ。

さらに本作『BIG MAMA』は、フライング・ロータス名義として初めて〈Brainfeeder〉からフルリリースされる記念碑的作品でもある。

自分が作ったレーベルと、もっと近い距離で一緒にやるタイミングだと思った。
グラミーにも何度も行ったし、大きな作品とも肩を並べてきた。
いい環境を築けたと思うし、もう十分その時が来たんじゃないかな
- Flying Lotus

『BIG MAMA』は、3月6日(金)に12inch(ブルー・ヴァイナル)、デジタル配信で発売。12inchは数量限定・日本語帯付き仕様でも展開される。

フライング・ロータス|Flying Lotus
ロサンゼルス出身のスティーヴ・エリソンことフライング・ロータス(別名キャプテン・マーフィー)は、この20年にわたり21世紀音楽の形を決定づけてきた重要人物の一人だ。アリス・コルトレーンやマリリン・マクロードといった音楽的レジェンドを家族に持ち、ビートメイキングからアニメまで幅広い影響を受けながら育った。
2000年代後半には、ジャズ、ヒップホップ、未来的サウンドを融合させた独自の表現でLAの【Low End Theory】を中心に注目を集め、〈Warp Records〉からリリースされたアルバムにはケンドリック・ラマーやデヴィッド・リンチ、サンダーキャット、エリカ・バドゥら錚々たる面々が参加。ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』へのプロデュース参加など、現代音楽史に残る作品を数多く手がけてきた。
音楽のみならず映像表現にも強いこだわりを持ち、立体映像やアヴァンギャルドな照明を用いたライブ演出でも高い評価を獲得。近年は映画・アニメ分野へも活動を拡張し、『V/H/S 99』への参加や、主演アーロン・ポール、エイザ・ゴンザレス出演の映画『Ash』では監督・作曲を兼任。Netflixアニメ『Yasuke』やのNBAのレジェンド、マジック・ジョンソンのドキュメンタリー「マジックと呼ばれる男(原題:They Call Me Magic)の音楽も手がけている。
2024年秋には、ドーン・リチャードとシッド・スリラムを迎えたハウス寄りのEP『Spirit Box』を発表。ジャンルや表現手法に縛られない、予測不能な創作姿勢は今なお進化を続けている。

label : BEAT RECORDS / Brainfeeder
artist : Flying Lotus
title : BIG MAMA
release:2026.3.6
TRACKLISTING:
01. BIG MAMA
02. CAPTAIN KERNEL
03. ANTELOPE ONIGIRI
04. IN THE FOREST - DAY
05. BROBOBASHER
06. HORSE NUKE
07. PINK DREAM
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15637
配信: https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

12inch(ブルー・ヴァイナル/片面スクリーンプリント)

〜私にとっては、サブスクで日々大量に聴いている音楽が街ですれ違う人々だとしたら、レコードは友人や大切な人のような存在です〜

「VINYLVERSEユーザーのリアルな声を聞きたい」そんな思いからスタートしたこの連載も、第4弾を迎えました。
今回お話を伺ったのは、都内でDJとしても活動している kanako__714 さんこと、KANAKO さんです。
SoulやR&Bを軸に、和モノ、ラヴァーズロック、Houseまでジャンルレスに音楽を掘り下げ、DJとしても独自の選曲で現在急成長中。そんなKANAKOさんのVINYLVERSEギャラリーは、あえて邦楽にフォーカスしたセレクトとなっています(2026年1月現在)。
ギャラリーのジャケットを一覧で眺めていると、今、聴くべき音楽を自然体で選んだようなレコードの並びが印象に残ります。主張しすぎるわけではないのに、なぜか気になるその感覚の奥に見えてくるのは、KANAKOさんならではのパーソナルなセンスかもしれません。

今回のインタビューを通して見えてきたのは、「どんな音に惹かれ、どのようにレコードと付き合ってきたのか」という、多くの音楽ファンに共通する問いでした。
DJとしての視点、そして一人のリスナーとしての視点。その両方から語られるレコードの魅力を紐解いていきます。


---まず、VINYLVERSEをどんなふうに使っていますか?

KANAKO(以下K):今は自分が持っているレコードの中から、和モノに絞って投稿しています。ジャケットを一覧で一気に見られるので、DJの選盤を考えるときにもすごく助かっていますね。

---アプリの使い方はすぐに理解できましたか?

K: 特に迷うことなくできました。

---操作で迷った点、不便に感じた点はありますか?

K: 検索してもなかなか出てこないアーティスト、アルバムなどがあり少し苦戦しました。

---使っていて「これは良いな」と感じた機能はありますか?

K: お気に入り登録や、「欲しいもの」をギャラリーに追加できるところです。今持っているものと、これから欲しいものを同じ感覚で管理できるのがいいなと思いました。

---他のコレクターと交流する機能についてはどうでしょう?

K: コメント機能などはあってもいいかなと思います。ただ、正直SNSがあまり得意ではないので、無理に交流しなくてもいいのかなと思いました(笑)。

---今後欲しい機能はありますか?

K: ギャラリーの順番を自由に動かせたり、Instagramのように気に入っているレコードを一番上にピン留めできるような機能があればいいなと思いました。

---VINYLVERSEの一番の魅力は何だと思いますか?また、どんな人にこのサービスをおすすめしたいですか?

K: 自分の持っているレコードとあらためて向き合い、自分はこういう音楽が好きなのだと再発見することができるアプリだと思いました。また、他の人のレコード棚を覗いているような気持ちになれるのも楽しいです。レコードが好きな方ならみんな楽しめるアプリだと思います。

---そもそもレコードを集め始めたきっかけは? 最初に買った1枚も教えてください。

K: 4年ほど前、渋谷のRECORD SHOP & DJ BAR「BLOW UP」に行ったのがきっかけです。Black Musicやレコードに興味を持って、最初はクラブやミュージックバーでレコードを聴く側でしたが、その後自分でも集めるようになりました。DJを始めた時期とレコード収集を始めた時期がほぼ同じで、最初は一気にたくさん買っていたので少し記憶が曖昧なのですが……たぶん、ミニー・リパートンの『LOVE LIVES FOREVER』が最初に買った1枚です。

---主にどんなジャンルを集めていますか?

K: あえて言うならSoulですが、和モノ、R&B、ラヴァーズロック、Houseなど、ジャンルはさまざまです。

---特に思い入れのある1枚を教えてください。

K: ORCHIDSの『LIFE IS SCIENCE』です。去年の夏、池尻のJuly treeというギャラリーで90年代クラブイベントのフライヤーの展示を見に行ったとき、会場でこの曲がかかっていて。ギャラリーの方に教えていただき、すぐに買いました。そこからMAJOR FORCEの音楽にどっぷりハマって、今も少しずつ集めています。

---今、個人的に一番欲しいレコードは?

K: Sly, Slick & Wickedの『Sho’ Nuff』の7インチです。ずっと欲しいと思いながら高くて手が出せなくて……気づいたらさらに高騰していて、早く買えばよかったと後悔しています。

---あなたにとって「レコードの魅力」とは何でしょう?

K:音質の良さはもちろんですが、それ以上に「音楽が物質としてそこにある」ことに魅力や安心感を感じます。私は根本的にモノが好きな人間で、音楽だけでなく、雑誌や漫画も本当に気に入ったものは物理的に手元に置いておきたい。ライナーノーツやジャケットを眺めて楽しめるのも、レコードならではだと思います。

---レコードで聴く音楽と、他のメディアで聴く音楽の違いについて、どう感じていますか?

K: 音質の違いはもちろんあると思います。特にクラブやミュージックバーでレコードを聴くことは、立体感やひとつひとつの楽器の音をクリアに感じることができる、特別な体験だと思います。ただ、サブスクでたくさんの音楽に出会えることも素敵な体験であることは確かで、サブスクで出会った曲をレコードで購入し、思い入れのある曲になるということも頻繁にあります。私にとっては、サブスクで日々大量に聴いている音楽が街ですれ違う人々だとしたら、レコードは友人や大切な人のような存在です。

---音楽以外で好きなカルチャーはありますか?

K: 90年代のカルチャーが好きです。日本のドラマや映画、古着、雑誌だと『relax』とか。

---VINYLVERSEのギャラリーを「誰かに見せたい」と思うことはありますか?

K: 正直私は自分のことを人に話したりとか、自分のパーソナルなところを人に知られるのがあまり好きではなくて。自分のことを言葉で説明するのがすごく苦手なんです。でも、ギャラリーを一覧で見てもらえたら、「この人、こういう音楽が好きなんだ」って自然に伝わる。それは逆にいいなと思いました。人からDJのスタイルやジャンルについてもよく聞かれるのですが、例えば「和モノ」と言うと、シティポップや歌謡曲を想像されがちで。でも実際は、そのどちらもそこまでレコードを持っているわけではなくて、自分でも「和モノの中のどういう音楽が好きなのか」を言葉で説明するのが難しかったんです。
でも、ギャラリーを見てもらえれば、自分で説明するよりも分かりやすいかもしれないな、と思いました。

---VINYLVERSEギャラリーのセレクトを和モノにフォーカスした理由はどうしてですか?

K: 今、毎月第一金曜日にアマランスラウンジというお店の和モノのイベントでDJをやらせてもらっていて、その流れもあって毎月コンスタントに邦楽レコードを買うようになったんです。そうすると、だんだん自分でも何を持っているのか分からなくなってきて(笑)。
頭の整理という意味でも、一度「自分がどんな和モノを持っているのか」をまとめてみたいと思って、一旦和モノに絞りました。

---邦楽と洋楽の捉え方に違いはありますか?

K: あまりないですね。いわゆる和モノってジャンルというより、その中にSoulっぽかったり、R&Bとかシティポップ、四つ打ちなどがある、という感覚で。私は和モノだから集めているというより、「好きな音」に反応して集めているので邦楽も洋楽も関係なく聴いています。

---家ではどんなふうに音楽を聴いていますか?

K: 家ではレコードも聴くし、ラジオも聴くし、サブスクも使います。常に何かしらの手段で音楽が流れている感じですね。
DJの練習としてかけることもあれば、ただゆっくり聴くこともあります。DJをするようになってからは、「この曲をどう繋ぐか」「次に何をかけるか」を考えながら聴くようになりました。途中でブレイクが入ると使いやすそうだなとか。でも、ただ聴いていて良い音楽と、DJで使いたい曲っていうのはまた違う気もしますね。

---DJでは使わないけど、欲しくて買うレコードもありますか?

K: あります。例えばMitsukiの『Land Is Inhospitable And So Are We』は、私がDJ中にかけることはありませんが、寝る前に聴きたくなるような音楽ですごく好きなので買いました。

---レコードを買う場所についてのこだわりはありますか?

K: ディスクユニオン、BLOW UP、地方のレコードショップのオンラインストアなどで買います。ごくたまにDiscogsも使いますね。メルカリやヤフオクは、基本的にはあまり使いません。もちろんレコードが本当に好きな人が売っている場合もあるとは思うのですが、レコードをよく知らない人や、あまり好きじゃない人が売っていることも多そうで、そういう人からは買いたくないんです。気分が乗らないというか。ただ、単に気持ちの問題だけではなく、盤質の基準も人によってバラバラだし、品質面で不安があるのも理由のひとつです。

---VINYLVERSEも「レコードが好きな人から、レコードが好きな人へ渡る」という感覚を大事にしたく思っています。それがどういうアプリにしたらそうなるのかは今でも試行錯誤中ですが、VINYLVERSEが、そういう人から人へ、レコードを気持ちよくバトンタッチできる場所になったらいいな、と思っています。
ちなみに手に入れたとき一番嬉しかったレコードって何ですか?

K: 一番嬉しかったのはセルジオ・メンデスの『Brasileiro』ですね。とあるDJの方がかけていて知って、それからレコードを探し始めて、1年半くらい探して見つかりました。でも結局買えたのはメルカリなんですが(笑)。一度、ヤフオクで見つけて入札したのですが、4万円以上までいってしまって。途中で無理だなと思って諦めました。その後メルカリに、それよりはだいぶ安く出ていたので買いました。

---DJは主にどのような場所でプレイされているのでしょうか?

K: 主に夜帯の時間で、お酒を飲む場所、BARやクラブが多いです。

---こういうところでDJしたいという場所はありますか?

K: 先日、ラテンミュージックと社交ダンスのイベントがあって行ってきたのですが、DJがラテンミュージックをかけて、間にラテンダンスのパフォーマンスを挟むという感じだったのですが、雰囲気がとてもハッピーで、場所もオープンなスペースだったので通りすがりのお客さんも見ていて。そういうオープンな場所で自分のこと全然知らない人に聴いてもらえる機会があったら、すごく楽しいだろうなと思いました。

---昔から変わらず好きな音楽の傾向って何かありますか?

K: 全体的にアフロっぽいパーカッションが入ってたり、途中で長めのブレイクがある曲はめちゃくちゃ好きです。ファミリー・ツリーの「Family Tree(Norman Cook Disco Edit)」とか、ワンネス・オブ・ジュジュの「African Rhythms」とかですかね。

---とてもヒップホップ的ですね(笑)。ある視点から言えば、ヒップホップって「このブレイクをずっと聴いて踊っていたい」という衝動から生まれたものですからね。DJに向いているのかもしれません。ところで楽器経験はあるのですか?

K: ピアノとトランペットをやっていました。

---それはDJをすることに何か役に立っていますか?

K: 拍とか小節の感覚は役立っていると思いますが、私がやっていた楽器の演奏とDJをすることは全然違いますね。私はジャズをやっていたわけではないので、ピアノは譜面通り、トランペットも先生の指示通り。でもDJの場合、どんな展開にするのか、どこで繋ぐのかはすべて自分次第。そこが一番違うと思います。

---では最後に、これからレコードを買いたい、DJを始めたいというビギナーへアドバイスがあればお願いします。

K: 機材を揃えたり、レコードが増えると場所を取ったりとサブスクに比べて少しハードルが高い部分はあるかもしれませんが、その分音楽との向き合い方は変わるような気がします。まずは好きなアーティストのレコードを手に取ってみていただきたいです。DJに関しては、この曲が流行ってるからとかではなく、自分が本当に好きな曲をみんなに知ってもらう。この曲、本当にいい曲なんだよっていうのが人に伝わるような曲の順番とか、音のバランスやボリュームとかを気にしながら、プレイする。どうすればこの自分の好きな曲が一番いい状態で相手に聞いてもらえるかみたいなことを大事にしたいと思っています。


KANAKOさんのギャラリーはこちら
https://vinylversemusic.io/gallery/kanako___714


VINYLVERSE アプリ

Thundercat - ele-king

 前作『It Is What It Is』からじつに6年ぶり。サンダーキャット5枚目のニュー・アルバム『Distracted』が4月3日に〈Brainfeeder〉よりリリースされる。マック・ミラー、エイサップ・ロッキーなど豪華なゲストが参加している模様。さらに、5月19日から22日にかけ、東名阪をめぐる来日公演も決定している。サンダーキャットの最新型を、その目その耳でたしかめたい。

THUNDERCAT

6年ぶりとなる待望のニュー・アルバム完成!
最新作『DISTRACTED』をひっさげ、
東名阪の来日ツアーが5月に決定!!

マック・ミラー、エイサップ・ロッキー、リル・ヨッティ、
テーム・インパラ、ウィロー、チャネル・トレスら豪華ゲスト参加
新曲「I DID THIS TO MYSELF (FEAT. Lil Yachty)」解禁
ニュー・アルバム『DISTRACTED』は 4月3日リリース
Tシャツ・セットや日本語帯付限定LP、
購入特典 (先着) にアクリル・スタンドも決定!

前作のリリースからちょうど6年。サンダーキャットが、通算5作目となるスタジオ・アルバム『Distracted』を完成させた。4月3日に〈Brainfeeder〉よりリリースされる。

本作には、惜しくも2018年にこの世を去った盟友マック・ミラーとの未発表コラボレーション楽曲をはじめ、エイサップ・ロッキー、リル・ヨッティ、テーム・インパラ、ウィロー、チャネル・トレスといった、時代とジャンルを横断する豪華アーティストが参加している。

アルバム制作の軸となったのは、サンダーキャットにとって新たなクリエイティヴ・パートナーとなる大物プロデューサー、グレッグ・カースティンとの緊密なコラボレーションだ。アデル、ポール・マッカートニー、シーア、ビヨンセ、ベックなど、ポップス史を代表するアーティストたちとの仕事で知られる彼との共同作業によって、本作はこれまで以上に洗練されつつも、サンダーキャットらしい自由さと遊び心を失わない作品へと結実している。

さらに、〈Brainfeeder〉主宰であり親友のフライング・ロータス、昨年ギースの最新作を手がけ話題を呼んだケニー・ビーツことケネス・ブルーム、そして天才ダダリオ兄弟によるザ・レモン・ツイッグスもプロダクションで参加。多彩な才能が集結しながらも、作品全体は明確に“今のサンダーキャット”を映し出している。

アルバム発表と同時に、リル・ヨッティ参加のリード・シングル「I Did This To Myself」が解禁された。本楽曲では、フライング・ロータスが追加プロダクションを担当している。

Thundercat - I Did This To Myself (feat Lil Yachty)
配信: https://thundercat.lnk.to/distracted

「今夜は何してる?」という一言から始まるこのグルーヴィーな楽曲は、あまりにも忙しい“あの子”にはまったく届かない。派手なアクセサリーが好きで、インスタを頻繁に更新する彼女は、サンダーキャットやリル・ヨッティの必死なアプローチにも見向きもしない。ふたりは、状況を変えたいと思いつつも、自分たちがこの状況を招いたことを痛いほど理解している。

こうしたデジタル時代特有の気まずさやすれ違いこそが、『Distracted』の核となっているテーマだ。『Drunk』の混沌とした現代社会への視線と、『It Is What It Is』の深い喪失感。そのあいだに位置する本作は、サンダーキャットが「今という時代における自分の居場所」を見出したアルバムでもある。

現代を断罪するのではなく、「気が散ること (ディストラクション)」が、障害にも癒しにもなり得るものとして捉え直す視点が、本作を貫いている。

過剰な刺激と内省のあいだに生まれる緊張感。テクノロジーの“進歩”が想像力を広げるどころか、むしろ狭めてしまったことへの懐疑。『スター・トレック』や子どもの頃に抱いていた宇宙への夢を冗談交じりに語りつつ、レーザーのないドローン、カメラだけが進化するスマートフォン、監視とアクセスに集約されたイノベーションという現実へと視線を転じる。それはガジェットへの失望というより「約束された未来」と「実際に手にした現実」とのギャップへの違和感なのだ。

ときには、別の形で集中するために、あえて気を散らす必要があるんだ
- Thundercat

本作には、サンダーキャットと同じ感覚、創作志向を共有するのアーティストたちが数多く参加している。ウィローは「ThunderWave」で浮遊感あふれるヴォーカルを重ね、チャネル・トレスは「This Thing We Call Love」で軽快なグルーヴを生み出す。つい先日『サタデー・ナイト・ライブ』での共演も話題になったエイサップ・ロッキーは壮大な「Funny Friends」に参加し、テーム・インパラとのコラボレーション「No More Lies」も収録される。

アルバムのアートワークは、ラナ・デル・レイやテーム・インパラを手がけてきた、グラミー・ノミネート歴を持つフォトグラファー、ニール・クラッグが担当している。

ただ楽しんで、笑って、苦しみは形を変えながら続くものだってことを知ってほしい。それでも前に進み続けるんだ。
- Thundercat

混乱してもいい。疲れてもいい。“Distracted(気が散っている)”状態でも、その中から美しいものは生まれる。常に意見や発言を求められるこの時代に、サンダーキャットが差し出すのは、より静かで、しかし本質的なメッセージだ。

サンダーキャット待望の最新アルバム『Distracted』は、4月3日 (金) にCD、LP、デジタル配信で世界同時リリース。LPは、通常盤 (レッド・ヴァイナル)に加え、日本語帯付き限定盤 (クリア/ブラック・マーブル・スモークエフェクト・ヴァイナル)、限定盤 (クリア/ブラック・マーブル・スモークエフェクト・ヴァイナル)、タワーレコード限定盤 (クリア/ホワイト/ブラック・スプラッター・ヴァイナル)、ディスクユニオン限定盤 (クリア/ターコイズ/ブラック・スプラッター・ヴァイナル)も発売。国内盤CDと日本語帯付き限定盤には歌詞対訳と解説書が封入され、Tシャツ付きセットも発売決定。さらに、アルバム購入者は先着でサンダーキャットのオリジナル・アクリル・スタンドがもらえる。

CD+Tシャツセット / Tシャツデザイン(白)

LP+Tシャツセット / Tシャツデザイン(黒)

先着特典:アクリルスタンド

サンダーキャット、待望のニューアルバムを完成させ、来日ツアー決定!

THUNDERCAT
JAPAN TOUR 2026

TOKYO 2026/5/19 (TUE) TOYOSU PIT
TOKYO 2026/5/20 (WED) TOYOSU PIT
OSAKA 2026/5/21(THU) NAMBA HATCH
NAGOYA 2026/5/22 (FRI) COMTEC PORTBASE

OPEN 18:00 / START 19:00
INFO:BEATINK [WWW.BEATINK.COM] / E-mail: info@beatink.com

数々のステージを駆け抜け、ジャンルもメディアも軽やかに越境しながら、音楽そのものと生き様で世界中のファンを魅了し続ける唯一無二の存在、サンダーキャット。

世界有数の超絶技巧を誇るベーシストでありながら、メロウでスウィートな歌声と、底抜けに自由なキャラクターで、常にシーンの中心に立ち続けてきた彼が、待望の最新アルバム『Distracted』(4月3日発売)を携え、2026年5月、ふたたび日本へ帰ってくる。

2020年という世界的混乱の年に象徴的なフレーズとも言える『It Is What It Is』は、第63回グラミー賞で【最優秀プログレッシヴR&Bアルバム賞】を受賞。その後も、エイサップ・ロッキー、テーム・インパラ、ゴリラズ、シルク・ソニック、ケイトラナダ、ジャスティスらとのコラボレーションを重ね、俳優としても『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品『ボバ・フェット』に出演し、子供番組『Yo Gabba Gabbaland』にもゲストとして登場している。日本でもNHK Eテレ「シャキーン!」「天才てれびくん」への出演するなど、アニメやゲームを含むカルチャー全体を横断。その音楽、キャラクター、そして生き様そのものが、世代や国境を越えて支持されている理由だ。

2022年、まだ入国やイベント開催に制限が残る中で誰よりも早く実現させた来日ツアーは、熱狂と感動に満ちた“永遠に語り継がれる夜”として今も多くのファンの記憶に刻まれている。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが「地球上で最高のベースプレイヤー」と称賛を送るサンダーキャット、そのライブは、超絶技巧とメロウネス、ユーモアとカオスが完璧なバランスで共存する、まさに異次元の体験だ。

そして2026年5月。その唯一無二のステージが、再び日本を震わせる。

ジャズ、ヒップホップ、ファンク、R&B、AOR、LAビート、あらゆる要素を溶かし込みながら、今この瞬間の音楽として鳴らされるサンダーキャットのステージ。世界を肌で感じるそのライブ・パフォーマンスを、どうかその目と耳で体感してほしい。

【チケット詳細】
TOKYO:前売:9,000円 (税込 / 別途ドリンク代 / オールスタンディング) ※未就学児童入場不可
OSAKA:前売:9,000円 (税込 / 別途ドリンク代 / 1階タンディング、2階指定席) ※未就学児童入場不可
NAGOYA:前売:9,000円(税込 / 別途ドリンク代 / 全席指定) ※未就学児童入場不可

先行発売:
★BEATINK主催者先行:1/30(FRI)18:00
[ https://beatink.zaiko.io/e/thundercat] (※限定枚数・先着、Eチケットのみ)
★イープラス・プレイガイド最速先行受付:1/31(SAT)10:00~2/4(WED)23:59
[ https://eplus.jp/thundercat/](抽選)

[東京]
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59

[名古屋]
ジェイルハウスHP先行:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59
チケットぴあプレリザーブ:2/5(THU)11:00~2/9(MON)11:00
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59

[大阪]
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59
チケットぴあプレリザーブ:2/5(THU)11:00~2/9(MON)23:59
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59

一般発売:2月14日(土)10:00~

label:BEAT RECORDS / Brainfeeder
artist:Thundercat
title:Distracted
release:2026.04.03
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15625
配信:
tracklist:
01. Candlelight
02. No More Lies (feat. Tame Impala)
03. She Knows Too Much (feat. Mac Miller)
04. I Did This To Myself (feat. Lil Yachty)
05. Funny Friends (feat. A$AP Rocky)
06. What Is Left To Say
07. I Wish I Didn’t Waste Your Time
08. Anakin Learns His Fate
09. Walking on the Moon
10. This Thing We Call Love (feat. Channel Tres)
11. ThunderWave (feat. WILLOW)
12. Pozole
13. A.D.D. Through the Roof
14. Great Americans
15. You Left Without Saying Goodbye

CD+Tシャツセット

LP+Tシャツ

CD

限定盤LP
(クリア/ブラック・マーブル・
スモークエフェクト・ヴァイナル)

輸入盤LP
(レッドヴァイナル)

タワーレコード限定盤LP
(クリア/ホワイト/ブラック・
スプラッター・ヴァイナル)

ディスクユニオン限定盤LP
(クリア/ターコイズ/ブラック・
スプラッター・ヴァイナル)

shotahirama - ele-king

 20年にわたり活動してきたニューヨーク出身の電子音楽家、shotahiramaがなんと音楽活動に幕を下ろすという。ラスト・アルバムとして先週1月31日、『A Love Supreme』がリリース。「至上の愛」とはまた印象深いタイトルだけれども、同作はこれまでのソロ活動から厳選された20曲で構成されている(新曲にしてラスト・シングル “NERVOUS” も所収)。グリッチからヒップホップまで、独特の感性で活動をつづけてきた彼の、有終の美を見届けよう。

2006年にENG (エレクトロノイズ・グループ) を結成、09年にグループ解散以降はノイズ/グリッチミュージックシーンでソロアーティストとして活動を続けてきたニューヨーク出身の音楽家shotahirama。そんな彼が2026年1月31日をもって20年の音楽キャリアに幕を下ろすラストアルバムを同日リリースする。最終作は『A Love Supreme』と題され、10年代のグリッチミュージックシーンに大きな潮流を起こした「post punk」をはじめ、レゲエをフュージョンさせた傑作「Maybe Baby」やラストシングル「NERVOUS」など、ソロ転向後の作品から20曲を選曲したベストアルバムになっている。

YouTubeリンク:
『A Love Supreme』アルバムトレイラー
https://youtu.be/CC7C1YnB5Og

『NERVOUS』ミュージックビデオ
https://youtu.be/_J0BSe5a2Ag?si=z8wfw8gJ_5JzkDod

また、本作にも収録されているアンビエントトラック「Nothing But You and Me」が発売から14年の時を経て、映像作家Masashi Okamotoディレクションによる新たなミュージックビデオを公開しているのでこちらも併せて確認したい。

YouTubeリンク:
『Nothing But You and Me』ミュージックビデオ
https://youtu.be/WSxGIWsvwLM

A Love Supreme (Bandcamp Original) by shotahirama

Bandcampリンク:
https://shotahirama.bandcamp.com

1. Cut (from "Cut" SIGNAL DADA, 2018)
2. FIRE IN WHICH YOU BURN (from "GET A LOAD OF ME" SHRINE.JP, 2021)
3. IM ON FIRE (from "Stay On The Light" SIGNAL DADA, 2020)
4. KIDS TRUX (from "Conceptual Crap Vol,5" スローダウンRECORDS, 2017)
5. CRAZY (from "ZOOYORK" SIGNAL DADA, 2024)
6. THE WHOLE NINE YARDS (from by "GET A LOAD OF ME" SHRINE.JP, 2021)
7. You Dub Me Crazy (from "Maybe Baby" SIGNAL DADA, 2017)
8. Do The Right Thing (from "KETURON RIGHTS" SIGNAL DADA, 2018)
9. SLACKER (from "Rough House" SIGNAL DADA, 2019)
10. CANDY STORE (from "DON'T STRESS TOMORROW" SHRINE.JP, 2022)
11. BRAINFREEZEE (from "COLDVEIN" SIGNAL DADA, 2024)
12. FIRE AND ICE (from "APARTMENT" SIGNAL DADA, 2021)
13. STOP FRONTING (from "Rough House" SIGNAL DADA, 2019)
14. Start Breaking My Heart (from "Conceptual Crap Vol,1" スローダウンRECORDS, 2016)
15. Copernicus (from "post punk" SIGNAL DADA, 2014)
16. Nothing But You and Me (from "NICE DOLL TO TALK" SIGNAL DADA, 2012)
17. And The Elevator Music In The World Trade Center (from "Modern Lovers" Duenn, 2014 and Shrine.jp, 2016)
18. Neptune (from "Cluster" Shrine.jp, 2014 and 2016)
19. Cassini (from "Clampdown" SIGNAL DADA, 2014)
20. NERVOUS (from "NERVOUS" SIGNAL DADA, 2025)

about shotahirama:
ニューヨーク出身の音楽家・ビートメイカーshotahirama (平間翔太)。中原昌也、evala、野口順哉(空間現代)といった音楽家がコメントを寄せる。音楽批評家・畠中実による記事『デジタルのダダイスト、shotahiramaがパンク以後の電子音楽で継承するオルタナティヴな精神』をはじめ、音楽ライターの三田格やVICEマガジンなどによって複数のメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell、Ikue Mori等のジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム「post punk」や4枚組CDボックス「Surf」がある。

interview with Shinichiro Watanabe - ele-king

 どんな痛みだって消し去ってくれる万能薬。肉体的な苦痛はもちろんのこと、精神的なそれまで含めて。
 いや、そんなものがあったらそりゃあ使っちまうですよ。そりゃ世界じゅうに伝播しますよ。でも、これまであなたたち人類が重宝してきたそれ、じつはそろそろ体内で突然変異するんです。端的にいえば、服用経験者は死にます。一度でも使ったことがあったら──ご愁傷さま。
 2025年4月から6月にかけ放送されたアニメ『LAZARUS ラザロ』は、あわや人類滅亡という危機的な状況を、しかしダークになりすぎたり湿っぽくなりすぎたりしない絶妙なあんばいで、あくまでも明るい未来を探る方向で描いていく。
 そうしたアニメの世界を構築するうえで音楽が果たした役割は小さくなかったはずだ。絶望的なのに前向き──そんな機微をサウンド面で担うことになったのがカマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツの3組だったことは、すでに多くの視聴者の知るところだろう。放送から半年。ついにフィジカルでサウンドトラックがリリースされている。
 作中では場面ごとにばらばらに配置されていた曲たちが、今回のサウンドトラックでは作曲者単位で整理されている。つまりこの3枚は、カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツそれぞれの新作として聴くこともできるわけだ。そもそも監督みずから「自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」とオファーしていたそうだから、むしろそうした聴き方こそが本道かもしれず、アニメ自体を観ていないリスナーにとっても大いに発見のあるだろうリリースといえる(もちろんシーンを思い出しながら聴くのだっておおいにアリ)。
 これまでも音楽に強いこだわりをみせてきた渡辺信一郎監督が、みずから集大成と語る『LAZARUS ラザロ』。『別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』では自身の半生を語っていただいたり、「オールタイム・ベスト100アルバム」を選んでいただいたりしているが、今回はまたそれとは異なる角度から、『LAZARUS ラザロ』のサウンドトラックについて話していただいた。

今回のサウンドトラックの3人はみんな、はみ出している人たちを選んだというか、むしろそのはみ出しの部分に可能性を感じてオファーしたと言えるんじゃないかな。

2025年は『LAZARUS ラザロ』が放送されましたが、1年を振り返ってみてよかったこと、嬉しかったことはありましたか?

渡辺:ひとつはもちろん、『LAZARUS ラザロ』がようやく放送できたこと。あとは『LAZARUS ラザロ』の主題歌、カマシ・ワシントンの “VORTEX” がエミー賞にノミネートされたことですね。アニメは苦労が多いわりに報われることが少ないんで(笑)、スタッフみんなで本当に頑張って制作した甲斐がありました。

これはカマシ・ワシントンも嬉しいのではないでしょうか。パートナーのアミ・タフ・ラも、彼が作った最高の音楽のひとつが『LAZARUS ラザロ』だったと言っていましたよ。

渡辺:いやあ、本当に良かったですね。

制作期間も踏まえると、1年以上経ってようやく、ですよね。

渡辺:カマシに限らず、ボノボフローティング・ポインツも、みんないい曲を書いてくれた。サントラになると、すごくよそ行きになっちゃう人もいるんですよ。だから発注するときにも、「いかにもサントラ風の曲、っていう意識は持たなくていい。自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」と伝えてました。結果、遠慮せずやってくれたのが良かったかな。

今回のサントラの作り方は、通常と違うんでしょうか?

渡辺:いや、サントラの作り方には2種類あって、映画なんかだと先に画ができてて、それを見ながら作曲するフィルムスコアリングというのがひとつ。でも多くのTVシリーズなんかだと画ができるのがギリギリで、そこから作曲してたら間に合わないんです。だから画がないうちから先に曲をいっぱい作っておいて、それをうまく画にハメていくというのが多い。それで、通常はフィルムスコアリングのほうが高級で立派な手法だとされてますが、今回そういう意味ではフィルムスコアリングじゃないんで通常のパターンではあるんです。

そうなんですね。

渡辺:でも自分の意見としては、フィルムスコアリングってちょっと合いすぎるところがあるんじゃないかな。無難になってしまうというか、曲が画に従属してしまうというか。その分、先に作った曲をはめると、思ってもいなかったような効果が生まれるときもあるし、画に従属しない、バランスを崩しかねないような強い曲を、ギリギリ崩れないように使ったりすることもできる。もちろんこういうやり方は、時間がない、間に合わないってとこから生まれたんだけど、じつはそこに可能性があると思うし、自分はこのやり方もけっこう好きなんです。

なるほど。曲のエディットも、監督自身が手がけてるんですよね?

渡辺:そうです。たまに、「曲がいいとこでビシッとはじまってビシッとうまいこと終わるけど、どうやってるんですか?」って聞かれることがあるんですけど。

思います、それは。

渡辺:たまたまうまくいった、なんてことはあんまりなくて(笑)。苦労して、曲をエディットして合わせてるんですよ(笑)。やっぱり、音楽が映像に合わせてビシッとはじまり、終わるものが好きなんですね。

フェード・アウトではなく。

渡辺:そう。音と画のシンクロの快感って、はじまり方と終わり方が肝心だから、そこに細心の注意を払ってます。作曲家にいつも言ってるのは、「フェード・アウトは禁止」と。

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(細野晴臣との対談は)中学生の頃からのヒーローのひとりですから、ホント嬉しかったですね。2025年のもうひとつのハイライトでした。

今回、音楽をカマシ・ワシントンにオファーしたきっかけは?

渡辺:カマシはスピリチュアル・ジャズを継承しながらも、そこからはみ出すような音楽性を持ってると思うんですよ。ブルース・リーの映画(『ドラゴン 怒りの鉄拳』)の曲をカヴァーしたりしてるしね。やっぱりジャズでありつつジャズにとどまらない音楽性の拡がりみたいなものがある。だから、今回のサウンドトラックの3人はみんな、はみ出している人たちを選んだというか、むしろそのはみ出しの部分に可能性を感じてオファーしたと言えるんじゃないかな。

ボノボの場合は?

渡辺:ボノボは、クラブ系のなかでもひときわ音楽的才能がある人ですね。まあグラミー賞に8回もノミネートされてるぐらいなんで、メロディも書けるし、大半の楽器を自分で演奏できるし、オーケストラと共演したりしてて、普通のクラブ・ミュージックから明らかにはみ出してる(笑)。それで、上がってきたのはすごくいい曲ばかりでサウンド・テクスチャーもすごく凝ってたので、全体の基調になるムードは彼が作ってくれたと思ってます。ひとつだけ困ったのは、どれも切ない曲ばかりなんで、楽しいシーンとかオフビートなシーンの曲はどうするんだという(笑)。

どうしたんですか?

渡辺:スケジュール的に後半の作業になったカマシに「楽しいシーンとかオフビートなシーンもあるんで、そんな曲をどんどん作ってくれ」と(笑)。それで何とかバランスがとれた感じですね。

最初のほうの「悪魔に魂を売っちまった男みたいなのをかけてくれ」というシーンでかかるのがボノボの曲ですよね。

渡辺:あの1話冒頭は、当初はロバート・ジョンスン本人の “Me and the Devil Blues” を使うつもりだったんだけど、まあ大人の事情で実現できずで。……ラザロのターゲットの人物が、最初は聖人のようだったのに悪魔に魂を売ってしまった、と言われている人物で、そんな曲をダグがリクエストするシーンです。それでボノボに「ロバート・ジョンスンみたいな曲を作ってね」と依頼したら、だいぶ驚かれました(笑)。

それはそうですよ(笑)。

渡辺:「簡単に言うなよ」みたいな(笑)。最初は「やってみる」という返事だったんですが、途中で「やっぱ無理」とギヴアップ宣言が来て(笑)。でも「自分なりのブルースならできるので、それでいいかな?」ってことだったので、もちろんそれでいいよと。そうして生まれたのが “Dark Will Fall (ft. Jacob Lusk)” ですね。

ボノボはそれがこのアニメにとって重要なトラックだったと、『別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』でも語っていました。

渡辺:もうひとつの挿入歌、9話冒頭の、街中をHQが歩いてくる長い長いワン・ショットのときにかかる曲、これもボノボにお願いしました。ここの当初のイメージはデイヴィッド・ボウイの “Five Years” だったんですよね。“Five Years” は「あと5年で世界が終わる」という曲で。街の描写があって、最初のほうは普通に見えるんだけど、曲が進んでいくと泣き叫んでる人がいたり、徐々に終末感が出てくる曲。今回は曲調は似てないと思うんですけど、コンセプトはあの曲みたいな感じで、「あと1ヶ月で世界が終わるかもしれない」という曲を作ってくれ、とオファーしました。

それが “Beyond the Sky (ft. Nicole Miglis)” ですね。

渡辺:終末をむかえるかもしれない世界は、一見普通に見えるけども、ほんのちょっとバランスを崩せば狂気をはらんでるということ、そしてここを平然と歩いてくるHQという男も、相当タガが外れた存在だというのを、ワンカットで見せるという冒険的なシーンなんだけど、ボノボはそれに合う良い曲を書いてくれました。

フローティング・ポインツはいかがでしたか?

渡辺:彼はすごい音楽マニアで、共感するとこも多くて(笑)。

ジャズとかソウルとかすごく掘っていますよね。

渡辺:いや、そういう感じだけじゃなくて、エクスペリメンタルなものとか音響系、現代音楽みたいなものまでけっこう全方位で、そのへんが共感するとこです(笑)。Chee Shimizuさんがやってる〈ORGANIC MUSIC〉って店で、レコードを見ながら3人でいろいろ話したときも、「武満徹のなかでどれがいいか」とか、エンニオ・モリコーネがやってた前衛音楽の話とか、そんなマニアック極まる話ばかりで(笑)。

彼にオファーした理由は?

渡辺:フローティング・ポインツもいわゆるクラブ・ミュージックの世界からはみ出すような、ジャンルに収まりきらない才能があるんですよね。ビート打ち込みの人ってイメージがあるかもだけど、音楽学校も出ているからストリングス・アレンジもできるし、生演奏の作品も出してるし、何よりファラオ・サンダースと共演したアルバムがすごく好きで、ぜひオファーしたいなと。今回、ちょっとスケジュール的な問題で新曲は少なかったんだけど、彼も楽しんでやってましたね。

いまはスピリチュアル・ジャズを聴き直していて、思えばこういう盤を全然入れてなかったな~と思ったり。

別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』では、細野晴臣さんとの対談が実現しました。あれから時間が経ってみて、細野さんと話したことはどういう経験になっていますか?

渡辺:いやあ、もちろん自分が中学生の頃からのヒーローのひとりですから、ホント嬉しかったですね。2025年のもうひとつのハイライトでした。いろいろ刺激も受けたし、今後につながっていくといいなと思ってます。

同『別冊』では、人生におけるオール・タイム・ベスト100を選んでいただきましたよね。半年くらい経ってみて、心変わりはありましたか?

渡辺:ああいうのってそのときの気分で選んでるから、後から見ると後悔が多くて(笑)。あれを入れてなかった、これも忘れてたという感じで、毎日後悔してます(笑)。

例えば、いまだとどんなものでしょうか。

渡辺:いまはスピリチュアル・ジャズを聴き直していて、思えばこういう盤を全然入れてなかったな~と思ったり。ちょっと前までは、モード・ジャズ、ポスト・バップと言われるやつを聞き直してて、これがいま聴くと丁度いい塩梅なんです。当時新しいジャズをやろうとした人たちが、フリーにはいかなくてちゃんと作曲されたもので、音の響きとかアブストラクトな構成とかで新しい世界を開こうとした、その感じがいま聴くといいなと思って。いまのエクスペリメンタルとかアンビエントとかを聴き慣れた耳でそういうのを聴き直すと、再発見が多いんですよね。

それはもしかしたら、いまの「アンビエント・ジャズ」的な流れとつながる聴き方かもしれないですよね。

渡辺:そうですね。新しいものだと、コズミック・トーンズ・リサーチ・トリオとか、シャバソン&ケルコビッチとか、アンビエント通過後のジャズって感じで面白いですね。

他に、25年で印象深かった出来事はありますか?

渡辺:世界的に有名な『Ghost of Yotei』というゲームがあるんですが、そのなかの「Watanabe Mode」ってやつの音楽をプロデュースしたことですかね。

それは、どういう仕事なんでしょうか?

渡辺:そのゲームをつくったスタッフが、『サムライチャンプルー』の大ファンらしくて(笑)。それで、彼らの前作のゲームでは、黒澤明監督にリスペクトを表して、「Kurosawa mode」っていうのを作ったらしいんです。モードを切り替えると、白黒画面の粒子の荒い感じで、黒澤映画風になるという。それで今回は、『サムライチャンプルー』にリスペクトを評して、「Watanabe Mode」ってのをやりたいと。モードを切り替えると、音楽がインスト・ヒップホップになるという(笑)。

その音楽をプロデュースしたんですね。

渡辺:そうです。でも、昔の人をそのまま使うんじゃなくて、20年後の『サムライチャンプルー』という感じで、新しい人たちと組んでやりました。Sweet William、mabanua、DJ Mitsu the Beatsマーク・ド・クライヴ・ロウという、全員が初めて一緒にやった人たちだったんですけど、なかなかうまくいったんじゃないかな? と思ってます。

仕事以外では、どんな年でしたか?

渡辺:自分は旅が好きなんですけど、コロナのときにあちこち行けない状況になって、その後も仕事が忙しすぎてなかなか行けなくて(笑)。2025年はやっと一段落したんで、LA、サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ、京都、バルセロナ、NYといろいろ行けたんで、充電にもなって楽しかったですね。

ブラジルにも行かれたんですね?

渡辺:だいたい世界50都市くらいは行ったことがあるんですが、いちばん好きなのがリオ・デ・ジャネイロかも知れないな。3回目ですけど、何度行っても最高です。

リオといえば危険なイメージがあるんですが、どういうところが良いんですか?

渡辺:あの、真の快楽とはですね、危険ととなり合わせなんですよ(笑)。いつ泥棒が来るかわからない、いつひったくられるかわからない。そういう場所では、危険を察知しなきゃいけないから、すごいレーダーの感度が上がるわけです。そうすると人間の感性って研ぎ澄まされるんですね。そういう状態で快楽もやって来るわけです。食べ物はおいしいし、風景も建築物も美しいし、人びとは陽気で優しいし、美女たちは美しいし(笑)、音楽はそこらじゅうに溢れてて、どれも素晴らしいし。

そうなんですね。

渡辺:例えばラパ地区というところにはライヴハウスが集中してて、そういうところに大ヴェテランのアーティストが出てるんだけど、老若男女みんな大合唱するんですね。10代の子まで。DJがまわしてるようなクラブっぽいところにも行ったんですが、そういう場所でもやっぱり大合唱(笑)。みんな昔の、すばらしいブラジル音楽の古典をちゃんと知ってるんです。本当に音楽好きな人たちなんだなって感じました。

なるほど。

渡辺:あの、リオの人たちをカリオカって言うんですけど、基本アバウトというか、いい加減なんです(笑)。時間にもルーズで、現地の大使館の公式の打ち合わせでさえ、時間どおりに行くと誰もいない(笑)。で、1時間くらい経ってようやく人が集まってくるんだけど、誰も文句を言う人もいないし、まあいいんじゃないの、ちょっとくらい遅れても、という適当さで(笑)。それで、カリオカたちがジョークを言ってて「日本人って、打ち合わせに5分遅れただけで “どうなりました?” ってメールしたりするんでしょ」「ワッハッハ、マジかよ!」っていう感じなんです。だいたいの日本人は最初違和感を感じるんだけど、現地に1週間くらいいるとそれに馴染んでくるのね。彼らはいつもおおらかで楽しそうで、貧乏でも人生を楽しんでる。それにだんだん慣れてくるとね、「日本であんなにあくせく働いてたのは正しかったのか?」「なんかストレスためながら暗い顔して働いて、それで人生楽しいのか?」っていう価値観の変革に迫られるんです。

カルチャー・ショックですね(笑)。

渡辺:いい加減であることを日本人は悪だと思うわけだけど、本当にそうなのか? と考えてしまう。そういう経験がしたくて旅に行くわけだしね。

いま渡辺監督は、新しいお仕事をされているんですよね。

渡辺:多くは言えないんですが、短めの作品をふたつぐらいやりながら、次の大きい仕事の企画をいくつも作ってますね。まだまだ作りたいモノがあるんで……。あと『LAZARUS ラザロ』の第二期もぜひ作りたいと思ってるんで、グッズを買うとかサントラを買うとか(笑)、そういう形で支援してもらえたら嬉しいです!

CoH & Wladimir Schall - ele-king

 コー(CoH)とウラジミール・シャール(Wladimir Schall)による本作『COVERS』は、静謐なピアノの響きと、硬質で冷ややかな電子音/ノイズが交錯し、美しくも深淵なサウンドスケープを展開するアルバムである。
 旋律は断片化され、ピアノの残響は電子処理によって引き延ばされる。もしくは削ぎ落とされる。その結果、本作は「ピアノ作品集」でも「電子音楽作品」でもなく、両者が拮抗しながら共存する不安定かつ精緻な音響空間を生成している。まずは、このアルバムがそうした音の在り方を徹底的に追求した作品であることを明確にしておきたい。リリースはスイスの実験音楽レーベル〈Hallow Ground〉から。

 まず、『COVERS』は一般的に想像される「カヴァー・アルバム」とは大きく異なる作品である点も指摘しておきたい。本作でおこなわれているのは、原曲をそのまま演奏し直したり、わかりやすく現代的にアレンジしたりすることではない。そうではなく、楽曲の内部に含まれている構造や時間の流れ、そして聴き手の記憶に残る感触を丁寧に取り出し、それらを一度解体したうえで、まったく別のかたちに再構築する試みが行われているのである。『COVERS』というタイトルは、その意味で意図的に挑発的だ。本作は「カヴァーとは何か」を問い直すところからはじまっているからだ。

 アルバムについて語る前にまず最初に、コーことイワン・パヴロフ(Ivan Pavlov)の経歴を簡単に振り返っておきたい。彼は1990年代後半から国際的に活動してきた電子音楽家である。ロシア出身で、旧ソ連崩壊後の混乱期を背景にキャリアをスタートさせ、活動初期からノイズ、インダストリアル、ドローンといった領域に関心を向けてきた。
 2000年代以降は、〈Raster-Noton〉、〈Editions Mego〉といった実験音楽/電子音楽の重要レーベルからも作品を発表した。現在はストックホルムを拠点に、電子音楽の境界を横断する制作を続けている。
 コーは多彩なレーベルから楽曲をリリースしているが、重要なのは〈Raster-Noton〉と〈Editions Mego〉からのリリース作品であろう。〈Raster-Noton〉の作品では、『Mask Of Birth』(2000・のちに〈Mego〉からも再リリース)も重要だが、特に2007年にリリースされた『Strings』(2007)が決定的なアルバムであった。ストリングスの音を電子的に解体し、クリック・ノイズやデジタル・グリッドを基盤とした厳格なミニマリズムを実践しているのだ。音は空間に配置される抽象的な「構造体」として扱われていたように思える。彼の作品のなかでもシリアスな作風といえよう。その現代音楽的な音響は、『COVERS』に通じている。
 その一方、〈Editions Mego〉からの作品群はよりヴァラエティに富んでいる。グリッチ以降のインダストリアル・サウンドの傑作『0397POST-POP』(2005・これは〈Mego〉時のリリース)、ギター・ノイズの粗さや歪みを強調したメタ・メタリックな『IIRON』(2011)、リズミックなビートやヴォーカル(ヴォイス)入りのポップな『Retro-2038』(2013)、『TO BEAT』(2014)など、よりヴァラエティに富んでいる。そして2016年リリースの『MUSIC VOL.』では不安定なノイズと静謐な音響空間が交錯するサウンドを構築する。続く2017年の『COHGS』では多彩なゲストを召喚し、不安定なノイズからリズミックなトラック、ヴォーカル導入まで、〈Editions Mego〉期の集大成ともいうべきアルバムに仕上がっていた。このひとつのスタイルや音響に留まらない姿勢こそ、コーの音楽が単なるミニマリズムにとどまらない理由でもある。
 また、コーのサウンドを理解するうえで、コイルのピーター・クリストファーソンとの関係も決定的である。クリストファーソンと共に活動した Soisong は、コーのキャリアにおける重要な転機となった。音楽を完成された作品ではなく、環境や儀式、経験と結びついた出来事として捉えるピーター・クリストファーソンの思想は、コーに強い影響を与えた。音の不完全さや偶発性、聴取状況によって意味が変化するという考え方は、Soisong 以降のコー作品において重要な軸となった。音楽を「機能する装置」として捉える視点をより明確なものにしていったのである。
 本作の共作者ウラジミール・シャールは、パリを拠点とする作曲家で、クラシック音楽および実験音楽の文脈を背景に持つ。音そのものの質感や沈黙、反復によって生まれる感覚のズレに強い関心を持ち、2020年にはエリック・サティの “Vexations” を無限にループさせるカセット作品を発表している。既存の楽曲を「完成された作品」として固定するのではなく、聴かれ続ける過程で意味が変容していくものとして捉える姿勢が、シャールの制作のコアにある。
 このふたりは「音」そのものに対する思想的な共通点を持ちながらも、明確に共同名義で制作された作品は本作が初めてであった。本作『COVERS』は、コーとシャールが本格的にタッグを組み、それぞれの考え方や手法を一つの作品世界の中で結びつけた最初の成果と言える。その意味で本作は、単なる企画的な共作ではなく、両者の関心が自然に交差した結果として生まれた作品でもある。
 本作をリリースした〈Hallow Ground〉というレーベルの存在も、『COVERS』を理解するうえで重要だ。〈Hallow Ground〉は、現代音楽、実験音楽、サウンドアートを横断しながら、ジャンルよりも聴取のあり方そのものを問い続けてきたレーベルである。静けさ、持続、反復、微細な変化に耳を澄ませる態度を要請する点で、〈Hallow Ground〉のカタログは一貫して能動的な聴取を前提としている。ピアノと電子音、記憶とノイズの関係を再構築する『COVERS』は、その美学と強く共鳴する作品だ。

 『COVERS』は全7曲から構成されており、そこには明確な戦略がある。ピアノによる既存曲を出発点としながら、電子処理とデジタル操作によって、聴き慣れた旋律や和声の内部から「異物」を浮かび上がらせること。これらの楽曲は「音楽の機械装置を、欠陥も含めて誠実に露出させる」ための一連の装置として構想されている。楽器や楽曲の不完全さを補正するのではなく、その脆さをそのまま提示する態度が、アルバム全体を貫いている。
 1曲目 “MERRY XMAS MR ERIK” は、坂本龍一の “Merry Christmas Mr. Lawrence” とエリック・サティを重ね合わせることで、本作の核心を明示する楽曲だ。あの有名な旋律は、完全な形で現れることなく、響きと電子子ノイズの間を漂う。そうすることで坂本とサティが同じ「響き」を持っていることをあぶり出す。
 6曲目 “GNOSSIENNE À RYUICHI” でも、坂本龍一とエリック・サティというふたりの「静かな急進性」が結びつけられる。フランス近代音楽が切り開いた機能和声から解放された音色と余韻の美学は、直接的な引用ではなく、音の扱い方として継承され、電子的操作によって再び解体されていく。ちなみ坂本龍一は、コーの『To Beat Or Not To Beat』に坂本がリミックスの提供などをしている。
 1978年のソ連アニメ短編『Контакт』や『Ну, погоди!』シリーズに着想を得たという2曲目 “KOHTAK”、少ない音階の旋律を音色を変換しつつ展開する3曲目 “OKOLO KOLOKOLA” などは、音楽的記憶が歪み、変化を遂げていく過程をトレースしているかのようだ。アルバム中でももっとも静謐な印象を残す楽曲だ。
 4曲目 “SOII BLANC” では、コー自身の過去曲 “Soii Noir” (2011年リリースのアルバム『IIRON』に収録)をモートン・フェルドマン的な静謐なミニマム感覚を媒介に再構築し、自作すらも「他者の作品」として扱う姿勢を明確にする。そして5曲目 “SNOWFLAKES” は、存在しない原曲をカヴァーするという逆説的な試みであり、ノスタルジアという感覚の不確かさを露わにした。そして、アルバム最後に置かれた7曲目 “STAROST NE RADOST” では、喜びと悲しみ、親しみと疎外の境界が曖昧に揺らぎ続ける。

 『COVERS』はコーの単独作とも明確に異なる位置にあるアルバムだ。何しろ本作は「すでに存在する音楽の記憶」そのものが素材として扱われているからだ。構造を構築する存在から、記憶と聴取のズレを媒介する存在へ。この視点の転換こそが、『COVERS』をコーのディスコグラフィの中でも特異な作品へと位置づけている要因といえよう。
 要するに過去の名曲を懐かしむための作品ではない。音楽の記憶がどのように現在に作用し、変わり続けていくのかを静かに示すアルバムなのだ。耳を澄ませることで、知っているはずの音楽がまったく異なる表情を見せる。その体験こそが、本作最大の魅力といえよう。

KEIHIN - ele-king

 2000年代から、長らく東京周辺のアンダーグラウンドで活動を続けてきたDJ、KEIHINがこのたびファースト・アルバムをリリースした。ライフステージの変化とともにDJとしての活動を2度ほど休止しながらも、育児や家事、仕事という日常生活の合間をぬって制作、このパラノイックとも言えるドープな本作を完成させたそうだ。その制作意志にまずは感服するばかりだ。

 そのDJとしての本格的なキャリアは2000年代初頭、peechboy、CMT、MutronらとのDIYパーティ・ポッセ、DOEL SOUND FORCEに遡るが、2000年代後半には、東高円寺〈GRASSROOTS〉、関西の〈FLOWER OF LIFE〉、千葉の〈FUTURE TERROR〉といったクラブ、パーティ周辺人脈──いわゆる〈RAW LIFE〉前後に勃興したアンダーグラウンドなDJシーンで活躍していくことになる。しかし、サウンドとして本作につながる起点としてはやはりパーティ〈ALMADELLA〉だろう。現在では上海のエッジーなレーベル〈SVBKVLT〉からのリリースでも知られる、現在は京都を拠点とするRILLAとともに主宰していたパーティ。2008~2013年の開催で早くもミニマル・テクノとダブステップ(それだけではないが)のミックスがおこなわれていた。そうしたスタイルは、2010年代初頭のポスト・ダブステップの流れ以降、現在ではもはや珍しいことではなくなったが、パーティ・スタート当初は、そのわずか1~2年前に、やっとダブステップのレコードが国内でも買うことができるようになり、ましてやインターネットでの情報も限られ、ファイルでのDJがまだ敬遠されていた時代と言えばその先鋭性が少しはわかるかもしれない(ちなみにDVSの登場もそうだが、さらにDJプレイのファイル化の転機となったCDJ-2000 は2009年11月/CDJ-2000nexusは2012年9月のリリース)。そこで招聘したアーティストたち──スキューバシャックルトンアップルブリムペヴァリストといったラインナップを見ても、その方向性がわかるだろう。本作のサウンドの素地がそうした活動にあることはなんとなくはわかるのではないだろうか。またミックスCDレーベルでもあり、主宰のふたりの他に、現在大阪のレコード店〈Naminohana〉を運営するINBEのミックスも出している。

 2016年にDJ活動を一端休止。本格的なアーティスト活動の開始は、2018年末で自身のレーベル〈Prowler〉を立ち上げてリリースしたシングル「Esoteric Communication」となる。決して早くはないデビューといえるが、しかしその響きは、音楽表現への不退転の信念というか執念を感じずにはいられないそんな作品で(そもそも自主でレコード・プレスまでしている)。本作へと続く、ダンスフロアに根ざしたポスト・ダブステップとテクノの汽水域から立ち現れたインダストリアルなブロークン・テクノを展開していた。そして再度の2020年のDJ活動休止後、やはり日々の生活の合間をぬって完成させたのが本アルバムだという(DJ活動は近日再開予定とのこと)。

 「生と死、そして転生(進化あるいは継承)」というテーマの元に『Chaos and Order』と名付けられた本作は、あえてここでは引用しないが(CDを手に取った方がいい)、おそらく自身の長らくのオブセッションに強く由来するであろう、レイヴとサイケデリック・カルチャーをひとつの起点にした、いわば生成変化の、フリーキーな着想のSFストーリーとシンクロしたものだという。CDには各曲にそのストーリーに連なったイメージがブックレットとして編み込まれ、ひとつの作品を作り上げている(それは帯裏にも及ぶ)。いわば視覚的なイメージも含めて、ひとつのアート・ピースとして構成されている。

 地鳴りのようなベース音とノイズによってその出発を知らせる “Wormhole” から一転してヘヴィーなブロークン・テクノ “Gate” によって、アルバムは本当のはじまりをつげる。強迫観念を煽り立てるようなボイス・サンプルとグリッジなピープ音の “Room” から一転、パーカッシヴなダブ・テクノ “Ayahuasca” でアルバムは、徐々にそのグルーヴで聴く者の妄想を加速させる。グッと重心を落としたブレイクビーツ・テクノ “Overload”。淀んだ井戸の水の底から星空を眺めているかのようなダブ・アンビエント “Cogitation” をはさんでアルバムは後半にかけてさらに加速していく。モノトーンのブロークン・ビート~ハーフステップ的な “Resist”、またホワイト・ノイズとともに覚醒を促すハード・テクノ “Singularity” から、ビリビリと痙攣するハードなミニマル・テクノ “Transition”。この後半の流れを聴いているだけでも、いつしか白目をむいて、意識は身体の存在を振り切り拡散していくようだ。そして最後に訪れるのは仄暗い福音をもたらすアンビエント・テクノ “Sign” で終幕する。

 もちろん本作の楽曲は現状のベース~ブロークン・テクノなどのダンスフロアの要素に根ざしたものではある。しかし、単なるダンストラックの集積ではなく、アルバムというフォーマットがもたらすストーリー・テリングを強烈に意識したであろうことは伝わってくる構成だ。ダークかつインダストリアルなメタリック感、ダブのヘヴィーネスと浮遊感といった音のテクスチャーで、アルバムを通じて強烈な妄想を具現化するかのような広大なるコスモロジーを描き出している。また前日譚としてのアンビエントDJミックスも用意されていて、このビート感や構成とともに、まさにDJという体験を下敷きに、そこから電子音楽を作るということに強烈なるパッションを見出していることをビンビンに感じる作品でもある(最近ではロンドン在住のTORUの『Rescue at SW4』にも同じ執念を感じた)。

 多忙な日常生活をぬって作られた、その日常に表裏一体で頭に渦巻く「狂」の一文字、それを表現として肯定する、その強烈な執念を感じさせ、妄想をも具現化=脳内のイマジネーションのグルーヴを覚醒させる、まさにブレイン・ダンス(IDMという意味ではない)のテクノ・アルバムと言えるだろう。

 また作品性そのものとは関係はないが、ライフステージの変化でダンスフロアから離れながらも、またこうした強度の作品を作りあげるという部分で、つきることない音楽という表現への深い愛情に支えられた、年齢に左右されないある種のオルタナティヴなアーティストのキャリア、それを含めた人生のあり方を肯定する。そんなメッセージもそこには感じてしまう、そんな作品でもある。

1月のジャズ - ele-king

 スイスのギタリストのルイ・マトゥテ。1993年にジュネーヴで生まれたが、祖父は中米のホンジュラス出身というラテン・ルーツのミュージシャンである。10代にフラメンコ・ギターを学び、クラパレード大学進学後はジャズの道に進んで同大の音楽賞を受賞し、リオネール・ルエケやウォルフガング・ムースピールといったギタリストにも学んでいる。自身のルーツもあってスパニッシュ、ラテン、ブラジル音楽などにも通じており、自身のグループを率いて数枚のアルバムをリリースしているが、2022年の『Our Folklore』に見られようにジャズとブラジル音楽を繋ぐような作品が多い。また、リオネール・ルエケの影響からだろうが、アメリカのネオ・ソウル的なフィーリングを持つ新世代ジャズにも通じている。2024年にはハープ奏者のブランディ・ヤンガーをゲストに迎えた『Small Variations of the Previous Day』を発表。ブラジルのボサノヴァやサンバ、レユニオン島のマロヤ、カーボベルデのモルナなど、中南米や大西洋、インド洋の国々に伝わる伝統音楽を幅広く取り入れた作品となっていた。

Louis Matute
Dolce Vita

Naïve

 そんなルイ・マトゥテの新作『Dolce Vita』は、ゲストにブラジルを代表するシンガー・ソングライターでのジョイス・モレーノを迎え、ブラジルの新世代シンガー・ソングライターのドラ・モレンバウム、前作に続いてフランス新世代のシンガー・ソングライターのギャビ・アルトマンも参加。ギャビもブラジルに音楽留学するなどブラジル音楽の造詣が深いミュージシャンだ。演奏はエミール・ロンドニアンなどの作品にも参加するレオン・ファル(サックス)、ネイサン・ヴァンデンブルケ(ドラムス)、ヴァージル・ロスレット(ベース)、アンドリュー・オーディガー(ピアノ、キーボード)、ザカリー・クシク(トランペット)など、これまでのルイのバンド・メンバーが固められている。フェデリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活』を由来とする『Dolce Vita』は、その甘美な世界とは裏腹に、軍事独裁政権だったホンジュラスから亡命してスイスに渡ったマトゥテ家族の苦難の歴史と、アメリカやヨーロッパに支配され、搾取されてきた歴史を持つホンジュラスをはじめとした中南米諸国を表現したものとなっている。アルバム制作にあたってルイはスペイン、キューバ、コスタリカ、ホンジュラス、ブラジルと旅を続け、ブラジルではジョイスとドラ・モレンバウムと共演してアルバムを完成させた。

 アルバムはジャズ、ラテン音楽、ブラジル音楽などのほか、ロックやサイケ、ファンクなどの要素も融合したミクスチャーなものとなっている。その代表が表題曲の “Dolce Vita” で、アフロビートとラテン・ロックが融合したような1970年代風の楽曲。“Santa Marta” や “Le jour où je n'aurai d'autre désir que de partir” も、ラテン・ファンクとサイケがミックスしたクルアンビンを彷彿とさせる作品。ドラ・モレンバウムが歌う “Não me convém” は、どっしりとしたブラジリアン・ファンクのグルーヴとフェアリーなドラの歌声が好対照で、エイドリアン・ヤングとレティシア・サディエール(ステレオラブ)の共演を想起させる。“Tegucigalpa 72” はホンジュラスの首都テグシガルパで1972年に起った軍事クーデターを題材とした作品で、ホンジュラスの伝統的な舞踏音楽であるプンタにロックを混ぜたアグレッシヴなナンバーとなっている。


DJ Harrison
ELECTROSOUL

Stones Throw

 ジャズ・ファンク・バンドのブッチャー・ブラウンでの活動と並行し、ソロ活動やほかのグループ、プロジェクトなども精力的に行うDJハリソンことデヴォン・ハリソン。マルチ・プレイヤーでありプロデューサー/トラックメイカーの顔を持つ彼だが、ブッチャー・ブラウンとしては2025年にアルバム『Letters From The Atlantic』をリリースし、ソロ活動では2024年の『Tales From The Old Dominion』以来となるニュー・アルバムの『ELECTROSOUL』をリリースした。彼らしいジャズ、ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&Bなどがミックスした作品で、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、キーファー、ナイジェル・ホール、ヤスミン・レイシー、ヤヤ・ベイ、アンジェリカ・ガルシア、ピンク・シーフなど多彩なゲストと共演している。

 アルバム・タイトルにソウルが付いているだけあり、今回のアルバムはソウル寄りの内容と言えるだろう。ヤスミン・レイシーが歌う “It’s All Love” はエリカ・バドゥを想起させるネオ・ソウルで、ナイジェル・ホールが歌う “Can’t Go Back” はダニー・ハサウェイのようなソウルの伝統を今に引き継ぐ楽曲だ。グレベスが歌う “End of Time” はメロウなソウル・フィーリングにハリソンのピアノが絶妙にマッチし、“Y’all Good?” ではピンク・シーフのラップと幻想的なエレピが交錯する。一方 “OG Players” は、スライ~プリンス~ディアンジェロという系譜に繋がるような荒々しいロック・フィーリングを持つファンク・ナンバー。“Curtis Joint” も1960~1970年代のザラついた質感をわざと残し、DJならではのループ感覚で進行していく。そして、アルバム・タイトルの『ELECTROSOUL』を最も感じさせるのがキーファーと共演した “Beginning Again”。1970年代後半から1980年代にハービー・ハンコックなどがやっていたジャズとソウルの融合を現代に引き継ぐような作品で、複雑なビートによるジャズ・ファンク調の曲調とコズミックなキーボードの調和がハリソンとキーファー両者のコラボならではと言える。


Jimi Tenor Band
Selenites, Selenites!

Bureau B

 2000年代後半以降のジミ・テナーは、ジャズ、即興音楽、ソウル、ファンク、サイケ、プログレ、クラウト・ロック、エクスペリメンタル・ミュージックなど多方面に触手を伸ばす一方、活動初期のようなテクノやハウスなどエレクトリック・ミュージックを作ることもある。そうしたなか、アフロ・バンドのカブ・カブやトニー・アレンとの共演などに見られるようにアフリカ音楽への傾倒がずっと続いているようだ。彼の新たなグループとなるジミ・テナー・バンドはパンデミックの頃にフィンランドのヘルシンキで結成され、パンデミック明けにフェスやクラブでのライヴで研鑽を積んできた。バンド・メンバーは明らかではないが、作曲者にはUMOジャズ・オーケストラのトロンボーン奏者のヘイッキ・トゥフカネン、サン・ドッグ名義でも活動するドラマーのエティ・ニエミネン、カブ・カブのドラマーのエコウ・アラビ・サヴェージ、ジャズ、ポップス、ヒップホップなどを縦断するギタリスト/マルチ・ミュージシャンのローリー・カイロらがクレジットされるので、おそらく彼らがメンバーと目される。ローリー・カリオの2025年のアルバム『Turtles, Cats and Other Creatures』にはジミ・テナー、エコウ・アラビ・サヴェージ、ヘイッキ・トゥフカネンも参加していたので、ジミ・テナー・バンドもそれらアルバムと地続きで進行するプロジェクトなのだろう。

 アルバム『Selenites, Selenites!』はジャズ、ファンク、ソウルなどの折衷的な作品だが、随所にアフロの要素が散りばめられているところが特徴だ。“Universal Harmony” はカーティス・メイフィールドのようなソウルを軸とするが、アフロビートを咀嚼したドラミングやジミの土着的なフルート、ダイナミックなホーン・アンサンブルが加わることにより、非常にスケールの大きな作品となっている。“Some Kind of Good Thing” はビッグ・バンドの仕事もいろいろやってきたジミならではのジャズ・ファンクで、エキセントリックなアナログ・シンセと骨太のリズムに支えられる。“Shine All Night”にはガーナ北部のフラフラ族のゴスペル・クイーンとして注目を集めるフローレンス・アドーニが参加。彼女の昨年のデビュー・アルバム『A.O.E.I.U. (An Ordinary Exercise In Unity)』にはジミとエコウ・アラビ・サヴェージも参加していたので、そこから今回の共演へと繋がっている。アフロ・ファンクを軸とした楽曲ながら、パンキッシュで極めて実験色の濃い作品になっているのがジミらしい。“Furry Dice” はエコウ・アラビ・サヴェージの作曲で、ガーナのハイライフとアフロビートがミックスしたようなナンバー。


Criolo, Amaro Freitas, Dino D'Santiago
Criolo, Amaro e Dino

Criolo Produções

 ブラジルの新世代ピアニストとして注目されるアマーロ・フレイタスのことは、2024年のアルバム『Y'Y』で紹介したが、今回の新作はラッパーのクリオロ、カーボベルデ系のポルトガル人シンガーのディノ・デ・サンティアゴとの共作となる。『Y'Y』はシャバカ・ハッチングス、ブランディ・ヤンガー、ジェフ・パーカーらが参加し、アマゾンの自然やそこに住む先住民をモチーフとした土着色の強いアフロ・サンバ、アフロ・ジャズという作品だったが、この『Criolo, Amaro e Dino』はまったく趣が異なる。1980年代末から活動し、ラテン・グラミー賞にノミネートされるなど世界的なブラジル人ラッパーとして認知されるクリオロ、ヨーロッパ各地で活躍し、カーボベルデ・ミュージック・アワードやMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードなどを受賞するディノ・デ・サンティアゴが前面に出たコンテンポラリーな作品であるが、アマーロのピアノももちろん存在感を放っている。

 ヒップホップやR&Bに接近したジャズという点では、ロバート・グラスパー・エクスペリメント(RGE)のブラジル/カーボベルデ(またはポルトガル語)版という見方もできる。特に “E Se Livros Fossem Líquidos_ (Poeta Fora da Lei Pt II)” でのメロウなメロディを奏でるピアノとズレたビートを刻むドラミングのやりとりなどはRGEのそれを彷彿とさせるが、ブラジル人ならではの独特のフレーズがやはりアマーロといったところ。“Ela é Foda” はネオ・ソウルとジャズが結びついたような作品だが、メロディ・ラインがブルニエール&カルチエールやアルトゥール・ヴェロカイなどブラジルの先人たちをどこか彷彿とさせるところがある。

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