「!K7」と一致するもの

Nilüfer Yanya - ele-king

 漂う空気がある。人びとの口から口、スマートフォンに浮かぶ行間に存在するような。インスタグラムやツイッター、自分から積極的に探しにいかなくても知っている誰かが存在していて、その好意が画面のなかから滲んでくる。音楽が語られ、記事のリンクが貼られ(クリックはしない)、何度も写真を見て、そうやってなんとなく知っているみたいな状態ができ上がる。僕にとってニルファー・ヤンヤはそんな存在だった。「Nilüfer Yanya」ってなんて読むのだろう? というところからはじまって、存在を確認し、音楽を聞いて、そうやってUKシーンの人たちが彼女に向ける好意の理由を少しずつ理解していった。
 ウエストロンドン、チェルシー出身のニルファー・ヤンヤ、イスタンブールに生まれたトルコ系の父とバルバドス・アイルランド系の母を持ち、様々な音楽が流れる芸術家の家庭に育ち、6歳の頃にピアノをはじめ11、12歳の頃にギターを習い本格的に音楽をはじめる。2014年、19歳の頃に SoundCloud に曲をアップするようになって、2016年に最初のEPをリリース。彼女の音楽はモダンなソウル・ミュージックのようでも、キング・クルールに影響を受けたインディのギター・バンド、ベッドルームのプロデューサー、ジャズの香りをまとったオルタナ好きのSSWのようにも聞こえた。何より特徴的だったのはその声で、醒めているような雰囲気でいながら芯がありヒンヤリと情熱的で、一言では言い表せない複雑な魅力を持って聞こえてきた。彼女の音楽は簡単にカテゴライズできないようなもので、様々な要素があるからこそいろいろな方向からアクセスができる音楽なのかもしれない。ファット・ホワイト・ファミリーが表紙の『ソー・ヤング・マガジン』で、バンクーバーのニューウェイヴ/ポストパンク・バンド N0V3L のページとシェフィールドからサウス・ロンドンのバンドたちに噛みつく若きワーキング・メンズ・クラブに挟まる形で、ニルファー・ヤンヤは 1st アルバムについての話をする。それらの音楽と同列に聞かれ支持を集めながらもどこか異質で、けれど重なり合うような部分もあってその感覚がとても新鮮だった(ソウル、インディ、ポストパンク、ベッドルーム・ホップ、ひとつの言葉だけで表現しようとするとどれを選んでもしっくりこない)。

 2019年の 1st アルバム『Miss Universe』は「WWAY Health(We Worry About Your Health)」という架空のセルフケア・プログラムを題材にしたコンセプトアルバムで、17曲も入っていて、それぞれの曲のなかに落とし込まれたニルファー・ヤンヤの多彩な側面をアルバムとしてひとつのコンセプトでまとめ上げたような作品だった。それに対して12曲入りのこの 2nd アルバムは全ての曲に同じような空気が流れていて、アルバムの最初と終わりにナレーションを挟むことがなくとも自然と世界が繋がっているように感じられる。前作から引き続いてのウィルマ・アーチャー、〈DEEK Recordings〉の創始者でありウェスターマンのアルバムを手がけたブリオン、ニルファー・ヤンヤのサポート・バンドのメンバーでもあるジャズィ・ボッビ(サックスと鍵盤を担当)、そしてビッグ・シーフのプロデューサーとして有名なアンドリュー・サーロ、多くの人間が関わっていながらもアルバムのなかで流れる空気が統一されていてアルバムを通して聞きやすい(統一された空気のなかで彼女の多彩な側面はアクセントとしてそれぞれの曲のなかに埋め込まれている)。だからなのか続けて何度も聞きたくなってしまう。積極的ではなくて消極的に。そのままそこで鳴っていて欲しいとなんとなく思うような、僕にとってこのアルバムはそんなアルバムだ。

 少しの哀しみ、わずかな虚無、抜け出せない憂鬱、甘くないわけではなくて、苦みが強いわけでもない。全ては複雑に絡み合いコーヒーのなかを回る白いマーブル模様みたいに混じっていく。それは完全に調和が取れているものではなくて、何か別のものがそこにあると認識できるようなもので、決して同じにはならない。ニルファー・ヤンヤの音楽の魅力はやはりその複雑な違和なのかもしれない。ひとつのカップに入ったいくつかの味、混じりきる前のそれ、完全に混じって滑らかになるのではなく、混じりきらずにそのままグルグルとメランコリーに回り続ける。
 もっとエレクトロニクスの要素を強くして、孤独を深め、そうすれば部屋でひとり音楽を作り続けるプロデューサーのような雰囲気の曲になったのかもしれない。でもニルファー・ヤンヤはそうしない。彼女はあくまでギターにこだわってそこに自らの声を乗せる。それはSSWのようなふるまいで、そのギターはグランジを経た90年代のオルタナ・ミュージック、2000年代のUKロック・バンドのような響きがある。唄がすべてのわけではなく、ギターを聞かせるための音楽でもない、声はギターの相棒で、ギターは彼女の声に反応する。それは風変わりのデュエットのようでもあって、そのどちらもが曲の中心に存在する。ニルファー・ヤンヤはそうやって人の感情を表現するのだ。

 性急なブレイクビーツのドラムの上でかき鳴らされるギター、そこに入る低く鋭く染みわたる声、オープニング・トラックの “the dealer” 、スローダウンする中盤の “trouble”、“try”、“company”、彼女の声とギターは何かひとつの感情を違った方法を使って表しているように思えて、その音はメランコリーに哀しく響く。1st アルバムよりも暗く内省的で、だけども他者を寄せ付けないようなものでもない。気持ちをせかせるような “Stabilise” は『Silent Alarm』時代のブロック・パーティーを思い超させ、“Midnight Sun” からは『In Rainbows』期のレディオヘッドのような美しいアルペジオが聞こえてくる。それは彼女が生まれ成長する過程で日常から聞こえてきた音楽なのかもしれない。“L/R” ではトルコのサズという民族楽器が使用されている。それは彼女の父親が家で弾いていた楽器で、彼女のなかにあり血肉となっている音楽がこのアルバムのなかで再解釈されているようにも思える。「高層ビルには何もない/誰もあなたの人生に戻ってこないみたいに」。アルバムのジャケットに記されている “Stabilise” に出てくる言葉のようにニルファー・ヤンヤの音楽には都市生活の孤独があり、そこで鳴っていた音楽の影響が見え隠れする。哀しいだけではない孤独の複雑な味、それは自分のなかにある誰かからの影響を感じ取ることなのかもしれない。ニルファー・ヤンヤの 2nd アルバムはそんな風にして他者の存在を感じさせるのだ。心地が良いわけではなく、落ち着くわけでもない、居心地が悪い都市に漂う感覚、遠くの喧噪を思い浮かべ、そうしてまたなんとなくこのアルバムを繰り返し聞いてしまう。

700 BLISS - ele-king

 2014年に結成されたムーア・マザーとDJハラムによるユニット、700ブリスがついにデビュー・アルバムをリリースする。16曲入りで、ラファウンダスペシャル・インタレストのヴォーカリスト=アリ・ログアウトなどが客演。クラブ・ミュージックやヒップホップの生々しく尖った要素に、パンクのエネルギー、ジャズ、ハウスのカタルシスなどが結合されたノイズ・ラップ作品に仕上がっている模様。『宣言すべきものなどない(Nothing To Declare)』と題されたそれは5月27日に、いま勢いづいている〈Hyperdub〉から発売される。現在、ラファウンダをフィーチャーした “Totally Spies” が先行公開中だ。

artist: 700 BLISS
title: Nothing To Declare
label: Hyperdub
release: 27th May, 2022
format: CD, Vinyl & Digital

tracklist:
01. Nothing To Declare
02. Totally Spies feat Lafawndah
03. Nightflame feat Orion Sun
04. Anthology
05. Discipline
06. Bless Grips
07. Easyjet
08. Candace Parker feat Muqata'a
09. No More Kings
10. Capitol feat Alli Logout
11. Sixteen
12. Spirit Airlines
13. Crown
14. More Victories feat M. Téllez
15. Seven
16. Lead Level 15 feat Ase Manual

https://hyperdub.net/products/700-bliss-nothing-to-declare

 残念なお知らせだ。東京のクラブ・シーンを担ってきた一角、渋谷の Contact が、入居ビル取り壊しのため、9月17日(土)に営業を終了する。
 そのため4月22日と23日に3年ぶりに開催されることになったアニヴァーサリー・パーティが、最後のアニヴァーサリー・パーティとなる。
 4月22日は BLACK SMOKERS、O.N.O、REBEL FAMILIA、Dos Monos、DJ QUIETSTORM、FELINE が集結、翌23日はDJハーヴィーが来日しオールナイト・セットを披露する。豪華なアクトによる音楽を思う存分楽しみたい。

4/22(金)
Contact 6 Year Anniversary Party Part 1

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Open 10PM
¥2000 Under23 | Before 11PM ¥2000 GH G Members | Early Bird Ticket
¥2500 Advance | GH S Members
¥3000 GH Members | w/Flyer | Facebook Discount
¥3500 Door
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Studio:
BLACK SMOKERS -Live 
O.N.O(THA BLUE HERB) -Live
REBEL FAMILIA(GOTH-TRAD × 秋本"HEAVY"武士) -Live
Dos Monos -Live
DJ QUIETSTORM
FELINE

Visual:
rokapenis

Contact:
Atsushi Maeda
Tatsuoki
ZUNDOKO DISCO
Akey
Mari Sakurai

Foyer:
100mado
Frankei $
GQOMZILA -Live
Romy Mats
suimin

Space production:
VJ Camel × LOYALTY FLOWERS (解体新書)

Food:
The Daps

4/23(土)
Contact 6 Year Anniversary Part 2
DJ HARVEY – All Night Long –

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Open: 10PM
¥2500 Under 23 | Before 11PM | Early Bird (早割チケット100枚限定) | GH G Members
¥3000 Advance | GH S Members
¥3500 w/Flyer | GH Members | Facebook Discount
¥4000 Door
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Studio:
DJ HARVEY (Locussolus | LA) – All Night Long –

Contact:
Mild Bunch Soundsystem
Kenji Takimi (Crue-L | Being Borings)
KILLER TUNES BROADCAST (WACKO MARIA)
Vinyl Youth
and more

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DJ HARVEY

ハウス、ディスコ、バレアリックシーンのカルトリーダー、そしてDJとして最も神の領域に近い男と称されるリヴィングレジェンド、DJ Harvey (DJハーヴィー)。
ローリングストーン誌は彼を“DJ界のキース・リチャーズ”と評し、世界に君臨するDJトップ10に選出している。

1980年代半ばのロンドンでDJキャリアをスタート。セカンドサマーオブラヴの狂騒の中、悪名高きDIYパーティー集団「Tonka Sound System」のクルーとしてその名を馳せ、ニューヨークの伝説的クラブ「Paradise Garage」のレジデントDJであったラリー・レヴァンも出演した自身のパーティー「Moist」で、DJとしての評価を不動のものとする。1990年代に「Ministry of Sound」のレジデントDJを務め、2002年にロサンゼルスに移住。LAアンダーグラウンドの聖地として、世界中からハードコアなダンサーたちが集うウェアハウスパーティー「Harvey Sarcastic Disco」を開催して、レフトフィールドなディスコやバレアリック復権への大きな流れを作った。また、当時発表した不朽の名作『Sarcastic Study Masters Volume 2』は、世界最大の中古音楽市場Discogsで、ミックスCDとして史上最高額となる500ドルの値が付けられている。

2010年にアメリカ国外への渡航が可能になると、世界中からオファーが殺到。奇跡の再来日を果たした2010年GWのジャパンツアーでは、全国12都市を回りロックスター顔負けの1万人以上を動員。母国イギリス・ロンドンでの凱旋パーティーは、チケット発売後わずか1分でソールドアウトを記録し、世界最高峰のクラブ「Berghain/Panorama Bar」や世界最大級のフェス「Coachella」などにも出演。2017年には、ニューヨーク「Paradise Garage」のラストパーティーの様子をBoiler Roomが映像作品化した『The Final Night In Paradise - DJ Harvey re-soundtracks lost tapes from legendary Paradise Garage closing party 1987』の選曲を担当。2018年には、トム・クルーズ主演の人気映画シリーズ最新作『Mission: Impossible - Fallout』のナイトクラブのシーンで、DJ(本人役)としてカメオ出演している。また、ワム!の名曲『Club Tropicana』のMVロケ地にして、クイーンのフレディ・マーキュリーが伝説のバースデーパーティーを行ったホテルとしても知られるイビサの「Pikes」で、2015年からレジデントパーティー「Mercury Rising」を開催。2021年に同パーティーのオフィシャルコンピレーション第3弾となる『Mercury Rising Volumen Tres』を2年ぶりにリリースした。

親日家としても知られるDJ Harvey。1989年の初来日以来、全国のクラブやフェスなどに出演し、国内最大級のダンスミュージックポータルサイトClubberiaの年間アワードでは、ARTIST/PARTY/NEWSの主要3部門を受賞。2016年には日本を代表する野外音楽フェス「Fuji Rock Festival」20周年の大トリを飾り、2019年の「Rainbow Disco Club」10周年ではヘッドライナーとして登場してオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。2019年11月に来日30周年アニバーサリーツアーを全国4都市で開催。アパレルブランド「WACKO MARIA」と来日30周年を記念したカプセルコレクションを展開して世界で話題を呼んだ。

Huerco S. - ele-king

 ゲーム・チェンジ的な傑作が、といった印象の作品です。USカンザス出身~ニューヨーク拠点のアーティスト、ブライアン・リーズのプロジェクト、フーエアコ・エス名義の3作目となるフル・アルバム(間にカセット・リリースのアルバム大の作品『Quiet Times』もあり)。リリースはアンソニー・ネイプルズと写真家でもあるジェニー・スラッテリー(Jenny Slattery)によるニューヨークのレーベル〈Incienso〉から。

 2010年代初等、キャリア初期のハウス・トラックで朋友アンソニー・ネイプルズとともに注目を集め、なんといいますか、そのセオ・パリッシュをベーシック・チャンネルがクアドラント名義でミックスしたような、そんなビートダウン・ハウスをガス状のダブ・ヴァージョンにした2013年のファースト『Colonial Patterns』を OPN のレーベル〈ソフトウェア〉からリリース。続く、2016年の本名義のセカンド『For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have)』(アンソニーの〈Proibito〉よりリリース)では、さらにダブ・アンビエント・テクノ色を強め、その表現においてひとつの転機とも言える作品になりました。そして続く2018年のペンダント名義『Make Me Know You Sweet』や、昨年の同名義『To All Sides They Will Stretch Out Their Hands』などでは、さらにアブストラクト、かつダークなアンビエント・テクノをリリースしています。

 ここ数年は上記のようにアンビエント・タッチの作品が多かったのですが、まず本作の大きな変化は本名義でひさびさとなるリズムを主体とした作品(といってもハウスではない)となりました。1曲目 “Plonk I” では、それまでどこか避けていたように思えるクリアなニューエイジ的なサウンド感覚も援用しつつ、リズムの躍動感を主眼にした展開に。まさにイントロとして本作品の新機軸感を醸し出しています。この曲が象徴するように、これまでの作品のトレードマークでもあったエコー/リヴァーブ感、ガス状のダブ感が晴れて、全体的にクリアな質感が増幅された点も、同名義の作品としてはわかりやすい変化と言えるでしょう(ラスト・トラックなどにはダブの残り香はあり)。そして2曲目~4曲目 “Plonk II~IV” と、アルバムが進むうちに否応なしに本作の主眼が「リズム」にあることが明白になっていきます。インタールード的に、過去のダブ・アンビエント路線を彷彿とさせる “Plonk V” を挟んで、キラキラとしたシンセ音と後半はスロウなブロークンビーツがグルーヴをノッソリと刻む、アルバム・ハイライトとも言える “Plonk VI”。ノンビート的な “Plonk VII” にしても、エコーの重奏的な絡み合いにしてもベースラインとともにリズムの幻惑をさせるような感覚。どこか90年代後半のエイフェックス・ツインを彷彿とさせるエレクトロ “Plonk VIII”、そして次いで繰り出されるのは初となるヴォーカル(ラップ)トラック。〈Future Times〉からの Tooth Choir による濃いアシッディーなトラックでのラップが印象深い、気だるい SIR E.U のラップのバックには、まるでスピーカー・ミュージックの強烈なドラム連打を煙に巻いたような、もしくはドリルンベース的とも言えるドラム・サウンドが亡霊のように揺れ動いています。最後の曲こそ、同名義の前作を豊富とさせるダブ・アンビエント(とはいえこれも圧巻のクオリティ)ですが、本作の中心は、やはりリズムのアプローチというのが大方のリスナーの印象ではないでしょうか。

 小刻みなリズムが絡みつくストレンジなシンセが有機的に融合した感覚は、ある意味で90年代中頃までのまだリズムの冒険に意欲的だったテクノ──「ハウス」、もっと大きく言えばダンス・グルーヴのループ・リズムからの脱却と、それに伴うリズムの打ち込みの細分化は、1990年代前半のデトロイト・リヴァイヴァルやリスニング・テクノの先鋭化にも通じる感覚ではないでしょうか。また肝としては、IDMというほどエレクトロニカ的なグリッチ感覚が薄いというのも重要ではないかと。それこそパリスのところで書いたような〈リフレックス〉が標榜していた “ブレインダンス” 的とも言えそうな感覚でもあります。

 アンビエントものから、こうしたリズム主体の動きということで言えば、なんとなく思いつくのが彼のここ最近の周辺の動きです。ペンダント名義の作品をリリースしている、自身のレーベル〈West Mineral〉から、Ben Bondy、Ulla Straus、uon といったアーティストの作品や自身とのコラボ作品をリリース。言い換えると、ほぼ同様の人脈が交差する(はじめは傘下のレーベルかと思ってました)、Special Guest DJ(という名義のアーティスト)主宰の〈3XL〉(傘下に〈Experiences Ltd. / bblisss / xpq?〉あり)周辺人脈と、ここ数年は関係を深めているように見えます。ブライアン参加のプロジェクト(Ghostride The Drift など)も含めて、これらの動きには、ダブ・アンビエントやエコーの残響音の中に、アブストラクトに亡霊化したジャングル、ダンスホール、IDM、などなどさまざまな要素を含んだまさにレフトフィールドなテクノの最前線的な作品が目白押しといったところでとても刺激的です。NYとベルリン・スクールを結ぶ地下水脈としてここ数年おもしろい動きを見せています。最近では〈West Mineral〉からは、〈3XL〉のオールスターとも言える、virtualdemonlaxative というプロジェクトがブルータルなノイズ~ブレイクコア的な作品をリリースし話題にもなりました。前述の Ghostride The Drift や Critical Amnesia のような〈3XL〉周辺人脈とのコラボは、本作につながりそうなブレインダンス的なリズムの援用がなされており、そのあたりに本作のリズムへのアプローチの出自があるのではという見方もできます。

 生楽器を取り入れながらも、なんというかポスト・ロックやフュージョンの呪縛にハマらない、エレクトロニック・ミュージックとしてのいい塩梅を提示した、アンソニー・ネイプルズの『Chameleon』とともに、リスニング・テクノの、新たな可能性を示したそんな感覚の作品でもあって、これまたその周辺の動きも含めて、まだまだ注目させるに相当しい作品を世に問うてしまったという、そんな作品ではないでしょうか。

Boris - ele-king

 2020年以降ものすごいペースで作品を送り出し、今年に入ってからも〈キリキリヴィラ〉より新作『W』を発表しているスラッジ/ドゥーム・メタルの泰斗、Boris。このたび活動30周年を記念し、新たな企画がスタートすることになった。
 彼らの代表作6枚からそれぞれ2曲ずつ選んだ7インチ・シングルが計6枚、6月から10月にかけて隔月でリリースされる。第一弾は『Heavy Rocks』(02)と『PINK』(06)から。あらためてマスタリングも施されている。
 また、5月15日には高円寺 HIGH にて30周年記念ライヴも開催。2022年初めての国内でのライヴだ。詳しくは下記より。

Boris活動30周年記念企画スタート!

結成から30年を迎える2022年はいくつかの記念企画が用意されている。その先陣を切るのはBorisの代表的なアルバム6タイトルから2曲づつの7インチを隔月で6月、8月、10月で3連続リリース!

Boris30周年シングルシリーズ第1&第2弾は、アルバム『Heavy Rocks』(2002年)、『PINK』(2006年)から。
今回の新規カッティングにあたって、TDマスターまで遡ってリマスタリング。各アルバムの代表曲を2曲づつ、改めて7inchフォーマットでシングルカット。

7インチシリーズ第一弾

6月10日発売 Heavy Rocks
KKV-139VL
収録曲
Side A : Heavy Friends 
Side B : Korosu
1,650円 税込

6月10日発売 PINK
KKV-140VL
収録曲
Side A : PINK 
Side B : スクリーンの女 ーWoman on the Screenー
1,650円 税込


『Heavy Rocks』
『Heavy Rocks』2002年リリース。2000年に入り、バンドの表記を大文字BORISと小文字borisでの使い分けが始まった。大文字名義では「ロックの中心に向かっていく作品」、小文字名義では「ロックの中心から拡散していく作品」という位置付けとし、『Heavy Rocks』は大文字BORISとしての最初の作品である。2011年にも同名タイトルのアルバムがある為、通称『オレンジHeavy Rocks』と呼ばれる。
小文字boris名義で先に2000年にリリースされた『flood』は、実は『Heavy Rocks』と同時進行で制作が進められており、当初のプランでは2作同時にリリースするはずであった。
一つの作品にまとめるのではなく、対比する2作品として発表するスタイル、バンドとその音楽の像をより立体的に表すというリリーススタイルは既にこの時期に確立され、2021年の『NO』から今年リリースの『W』に至る一連の流れの原点とも言える。
『Heavy Rocks』には親交のあるカリフォルニアのバンドACID KINGのLori他、当時日本国内で行なっていた自主企画「Fangsanalsatan」でジャンルを越えた共演を重ね、Borisが同志と呼べるプレイヤーにゲスト参加してもらっている。MAD3のEddie、AbnormalsのKomiのキャラクターが加わり「ロックの中心」を強く感じさせつつ、崩壊寸前まで楽曲を侵食するMerzbowやMasonnaの音響が「ロックの外側」へと連れ出そうとする。
大文字BORIS名義ながら、実はアンビバレントな現象が『Heavy Rocks』の中で起こっているのも、現在のBorisの在り様に通じるものがある。
このアルバムは当時日本国内CDのみのリリース、後のアナログ・プレス工場の火災によるスタンパーの消失により実質廃盤状態である。世界中のリスナーからはBorisのカルト・クラッシックスとして再発が熱望され続けているアルバムだ。
今回シングルカットされた「Heavy Friends」と「Korosu」は20年に渡りライブでも頻繁に演奏される代表曲と言える二曲。


『PINK』
『PINK』は2006年にリリースされたアルバム。2002年に『Heavy Rocks』を発表後、大文字名義で『あくまのうた』('03)をリリース、以降小文字名義で『boris at last -feedbacker-』('03)、『目をそらした瞬間 -the things which solomon over looked-』('04)、『マブタノウラ』(’05)と実験的な作品を連続リリース。この時期に独自のレコーディングの手法を確立、蓄積し『PINK』は完全セルフレコーディングによる初の作品、そして3年ぶりの大文字名義のフルアルバムとなった。
『PINK』はアメリカDoom Metalの殿堂Southern Lordからリリース、Pitchfolkなどのメディアから高評価を受け、世界各地からの公演オファーやメディアへの露出も急増し、Borisのブレイクスルーを成し遂げた起爆となったアルバムであり、代表作としてロックの歴史に刻まれた作品と言える。以降、2020年のコロナ禍になるまで毎年定期的に、長期にわたる海外ツアーを継続。コスモポリタン・バンドとしての活動の起点となった。当時、国内盤アナログは2枚組のステンシル型特殊ボックス仕様(ltd.500)でリリースされ、CDバージョンではダイ・カット&特殊加工されたインサートをプラスティックジャケットで挟み込むという前代未聞のアートワークでのリリース。フィジカルの表現にも当時からこだわりの姿勢が爆発している。
今回シングルカットされたのは、アルバムタイトル曲の「PINK」と「スクリーンの女」。
「PINK」はライブでは欠かせないアンセムの一つであり、このイントロが鳴っただけで会場フロアにモッシュピットが出現するほど。「スクリーンの女」もサブスクリプションのランキングでは常に上位をキープする曲。

Boris30周年企画『Heavy Rocks』Set LIVE with TOKIE決定!

Borisの結成30周年にあたる2022年、様々なイヴェントが計画されている。コロナ禍で思い通りのライブ活動が出来ない昨今、今年初の国内ライブが発表された。
彼らのカルト・クラッシックス・アルバム『Heavy Rocks』を、日本を代表するベーシストのTOKIEと共に披露する。
昨年のシングル『Reincarnation Rose』、新作アルバム『W』とコラボレートした両者が再びチームアップし、20年を経た楽曲群を新たに描く。
世界のロック史と日本のロック史が交差するスペシャルライブ。お見逃しなく。

Boris 30th Anniversary Show
Performing "Heavy Rocks Set" with TOKIE

日時 : 2022年5月15日(日)
OPEN 17:00 / START 18:00
会場 : 高円寺 HIGH
https://koenji-high.com/
チケット:
限定100名
前売 6000円(+d 600円 別途)
3月26日(土)21:00 販売開始
https://borisheavyrocks.zaiko.io/item/347247
※前売り券購入には事前にZAIKOアカウントの取得が必要となります。

Thundercat - ele-king

 待ち望んでいた皆さんに朗報です。パンデミックの影響で何度も延期になっていたサンダーキャットの来日公演、ついに振替の日程が決まりました。アーティストの強い意志もあり、今回発表するに至ったとのこと。
 なお依然として会場のキャパシティ制限があるため、各日2部制へと形態が変更されています。詳細は下記をご確認ください。

再振替公演日程決定!
来日公演形態変更[各日2部制へ]のお知らせ

先日政府より発表された水際対策の緩和を受け、大変長らくお待たせしておりましたサンダーキャット振替公演の日程が確定いたしました。ご協力いただいた関係各位、とりわけ前売チケットをご購入いただき、長期間お待ちいただきましたお客様には厚く御礼申し上げます。
指定の検査、ワクチン接種など入国に際し求められる要件をクリアすることで5月に開催する目処が立ち、またアーティストの強い意志もあり、急遽新日程を発表する運びとなりました。

ただし、コロナ禍でのイベント開催に係る規制、キャパシティ制限を踏まえて本公演の開催を実現するため、各日2回公演制(1st Show/2nd Show)への変更しなければならないことをご了承ください。安全面を最大限考慮しながら、皆様にお楽しみいただくための判断となりますので、何卒ご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。

THUNDERCAT 振替公演 新日程
2022/5/16 (MON) TOKYO GARDEN HALL
2022/5/17 (TUE) OSAKA BIGCAT
2022/5/18 (WED) NAGOYA CLUB QUATTRO

東京公演
2022/5/16 (月)THE GARDEN HALL
1st Show - OPEN 17:30 / START 18:15
2nd Show - OPEN 20:30 / START 21:15

大阪公演
2022/5/17 (火) BIGCAT
1st Show - OPEN 17:30 / START 18:15
2nd Show - OPEN 20:30 / START 21:15

名古屋公演
2022/5/18 (水) 名古屋 CLUB QUATTRO
1st Show - OPEN 17:00 / START 18:00
2nd Show - OPEN 20:00 / START 20:45

大変お手数をお掛けしますが、既にチケットをご購入いただいた皆様には、必ず [1st Show] [2nd Show] [どちらでも良い] のいずれかご希望のご申請いただきます。本イベントを主催するビートインクが、お客様の情報を取得・集計し、追って確定したご来場回をメールにてお知らせいたします。なお、こちらの手続きは、新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインに定められたお客様の情報登録も兼ねております。当日のスムーズな入場の為ご協力をお願い申し上げます。詳細は各プレイガイドからのご案内メールをご確認ください。

【希望公演申請受付期間】
2022年3月23日(水)~2022年4月3日(日)

本公演は、政府、自治体および業界団体より示された新型コロナウイルス感染予防のガイドラインに基づいた対策を講じた上で開催いたします。こちらのガイドライン及び注意事項をご確認いただき、ご理解の上、ご来場いただけますようお願いいたします。

新しい公演時間の都合がつかないお客様には、下記期間、要項にてお買い求めになられたプレイガイドより払い戻しいたします。

【払戻し期間】
2022年3月24日(木)~2022年4月11日(月)

【払戻し方法】
※チケットをお買い求めいただいた各プレイガイドにて払い戻しの対応をいたします。
※上記期間外の払い戻しは出来ませんのでご注意ください。
※公演当日に会場での払い戻しの対応は行いませんので予めご了承ください。
※チケットを紛失した場合は一切対応出来ませんので予めご了承ください。
※半券が切り離されたチケットは払い戻しの対象外となります。ご注意ください。

■e+にてご購入のお客様:https://eplus.jp/refund2/
■チケットぴあにてご購入のお客様:https://t.pia.jp/guide/refund.jsp
■ローソンチケットにてご購入のお客様:https://l-tike.com/oc/lt/haraimodoshi/
■ビートインク / Zaikoにてご購入のお客様:https://zaiko.io/contactus
※上記Zaiko問い合わせフォームより、チケット払い戻し希望の旨ご連絡ください。
■SMASH friends 会員のお客さま:https://eplus.jp/refund2/

詳細はこちら
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10824

イベントに関するお問合せはビートインクまで:info@beatink.com
払い戻しについては各プレイガイドまでお問い合わせください。

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THUNDERCAT – JAPAN TOUR
New Schedule for the Postponed Performances
Notice of change in performance format

Following the relaxation of the entry restrictions recently announced by the Government, we are delighted to be able to finally announce the new schedule for The THUNDERCAT Japan tour. THUNDERCAT and his band are very big fans of Japan, and have agreed to undertake all necessary government requirements in order to make the shows happen. We greatly appreciate your understanding and cooperation in bringing THUNDERCAT to Japan and once again apologize for any inconvenience government or industry guidelines may cause.

The shows will go ahead at the announced venues on new dates below, however in light of COVID-19 considerations, we must modify the format to comply with safety regulations including venue capacity limits. In order to accommodate these restrictions and ensure that no-one that has bought a ticket misses out, Thundercat has agreed to perform two complete shows on each day of the tour. We ask for your cooperation with this and trust that all understand it is necessary for the safety of public, staff and the artist.

The new schedule is as follows:

Tokyo performance
2022/5/16 (Monday) THE GARDEN HALL
1st Show: OPEN 17:30 / START 18:15
2nd Show: OPEN 20:30 / START 21:15

Osaka performance
2022/5/17 (Tuesday) BIGCAT
1st Show: OPEN 17:30 / START 18:15
2nd Show: OPEN 20:30 / START 21:15

Nagoya performance
2022/5/18 (Wednesday) Nagoya CLUB QUATTRO
1st Show: OPEN 17:00 / START 18:00
2nd Show: OPEN 20:00 / START 20:45

We apologise for any inconvenience this may cause, but we would like to ask all those who have already purchased a ticket to follow the following preferred show selection procedures. Beatink, the organizer of these events, will collate the requests and notify you by e-mail of the result (either 1st show or 2nd show).

Following this procedure also serves as attendee recognition of the guidelines for measures against COVID-19. We will appreciate your cooperation in ensuring smooth admission on the day.

For further details, please check the guidance email from your respective ticket agency.

[Desired Show Application Validity Period]
23 March 2022 (Wednesday) - 3 April 2022 (Sunday)

All performances will take place under consideration of safety measures based on the guidelines for prevention of COVID-19, as determined by the national and local governments and relevant industry groups. Please be sure to check the “Guidelines for Countermeasures against New Coronavirus Infectious Diseases” and the precautions for purchasing tickets before making a decision regarding attendance.

For customers who cannot accommodate the new performance times, refunds will be made by your issuing agency under the following guidelines.

Refund period:
24 March 2020 (Thursday) - 11 April, 2022 (Mon)

Refund method:
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Abdul Qadim Haqq - ele-king

 これは嬉しい知らせだ。一度2008年にリリースされたものの、入手可能期間が限られていたため貴重なアイテムとなっていたデトロイト・テクノのコンピレーション『The Technanomicron』が14年のときを経て蘇る。
 コンパイラーは、多くのデトロイト・テクノ作品のアートワークで名を馳せ、近年はドレクシアのグラフィック・ノヴェルTR-808をモチーフにした児童書などを手がけているデトロイトのヴィジュアル・アーティスト、アブドゥル・カディム・ハック
 同コンピはハックの発案により生まれた作品で、デリック・メイ(リディム・イズ・リディム)、ジェイムズ・ペニントン(サバーバン・ナイト)、カール・クレイグ(インナーゾーン・オーケストラ/サイケ)、ジェフ・ミルズ、アンダーグラウンド・レジスタンスら、そうそうたる面子の楽曲を収録している。
 さらに、彼ら伝説的なテクノの創始者たちを、宇宙に音の帝国を築いた間銀河的かつ多次元な存在たる「テクノロード(Technolords)」として描いたアフロフューチャリズムの物語、ハックの手による32ページのアートブックも付属している。
 英語版500部、日本語版500部の限定販売。なくなり次第終了とのことなので、ご購入はお早めに。

公式ウェブサイト:
https://technanomicron.com/

The Weather Station - ele-king

 まず、アルバム・タイトルが美しい。「なぜわたしは星を見上げるのか?」。そんな呟きからはじまる音量の小さなピアノ・バラッド “Stars” で、歌い手の彼女、タマラ・リンデマンは幼い頃に母親と見上げた暗い夜空を思い出す。そして今夜、何かに打ちひしがれている「わたし」は、どうして宇宙の美に圧倒されねばならないのか自分に問いかけるのだ。曲中ではそれが2020年になる直前の夜の出来事だったことが明かされるが、この曲を聴いてその豊かな静けさに魅了されるわたしたちは、パンデミックが訪れる以前の世界がどのような姿をしていたか思い出せないままに、暗い空に光る星を探すことになるだろう。

 昨年リリースされたアルバム『Ignorance』をエレキングで紹介しそびれたことを残念に思っていたので、本作を機会にザ・ウェザー・ステーションの存在を取り上げたい。ザ・ウェザー・ステーションはカナダはトロント出身のタマラ・リンデマンを中心とするフォーク・バンドで、実質彼女のソロ・プロジェクトを拡大してきたものだと言っていいだろう。ジョニ・ミッチェルの子どもたちのひとりとしてリンデマンは2000年代終わりごろから抑制の効いたオーセンティックなフォーク・ソングを発表してきたが、2017年のセルフ・タイトル作『The Weather Station』の頃から如実に音楽性を拡張することになる。その実が結ばれたのが室内管弦楽とジャズの要素を大きく導入した『Ignorance』だ。
 僕はまずリード・シングルの “Robber”(https://youtu.be/OJ9SYLVaIUI)に圧倒された。ツイン・ドラムとストリングスがダイナミックに呼応すると、それが躍動し、リンデマンはハスキーで落ち着いた歌声を聴かせる──「わたしは泥棒をけっして信じない」。これはカナダの植民の歴史を背景にした言葉で、同時に現代の強欲な資本主義も射程に入れている。ここに怒りと苛立ちはあるのだが、それらはあくまで優美に、穏やかに、最終的には気分が高揚するジャジーなフォーク・ロックとして表現される。PJハーヴェイの『Let England Shake』ほどコンセプチュアルではないにせよ、自国の歴史に対する疑問をあらわにしながら、そのエモーショナルなエネルギーを抑えられなかったフォーク・ソング集という点では共通している。環境破壊に混乱する歌、グローバルな格差のなかで生きることを仄めかす歌、殺伐とした都市で生活することの疲れを鳥への憧れに託す歌……リンデマンは、現代の社会で起きていることに心を痛めている自分を晒しながら、しかし、アップリフティングなバンド・アンサンブルを一身に背負ってメロウなメロディを温かくパワフルなものへと、ものの見事に昇華する。

『How Is It That I Should Look At The Stars』は『Ignorance』と同時期に作曲された楽曲が収められたアルバムで、終始デリケートできれいなピアノ・バラッドが並べられている。この2作は相互補完的な位置づけにあるという。躍動感に満ちた『Ignorance』を思うと『How Is It That~』はずいぶんスロウで控えめな作品だが、リンデマンの囁きながらも音程をしっかりと取る歌声の魅力と聴き手を陶酔させる叙情的な演奏は変わらない。掠れる声の余韻まで聞かせる “Marsh” にはじまり、木管楽器がそこに淡い色を添えると、“Endless Time” ではよくコントロールされたピアノの演奏がそれ自体で時間の感覚を忘れさせる。本作ではジャズと室内楽が持つ静謐なムードばかりが丁寧に扱われ、メゾピアノのバラッドがあまり主張せずに現れては消えていく。気に留めていなければ聴き逃してしまいそうな小さな歌たち、しかしよく耳を澄ませば身体の深いところまで降りていく歌たちだ。
 ここではリンデマンはオンラインで繋がったコミュニケーションをオフにして、時間の流れについて考えたり、カササギを見つめながら人生の不可解さにたじろいだり、そして子どもの頃に星を見上げた記憶を反芻したりしている。男声とのデュエットとなる “To Talk About” で彼女は、そんな自分は「怠惰だ」という。「わたしは怠惰だ、わたしは愛について話したいだけだから」と。僕がこの歌に思わず息を呑んでしまうのは、自分にも身に覚えのあることだからだ。すべてのタスクを無視し、世界で起きている恐ろしいことも忘れ、愛についてだけ考えたいときがあることを。この歌たちは、そんな怠惰さを肯定も否定もせずに、ただゆっくりと浸るものとして立ち上げてみせる。

 社会の不平等に異議を唱えることも、社会から少し離れて内省的な詩を綴ることも、長くフォーク音楽が果たしてきたことで、リンデマンはまさに現代のフォーク・シンガーとしてその両方をエレガントに実践する。“To Talk About” でリンデマンは最後に「この世界にあるのは愛だけではない」と囁くのだが、だからこそわたしたちは、ときには小さな音に耳を傾け、ニュースを消して夜空に浮かぶ星の輝きを探さねばならない。

RAINBOW DISCO CLUB 2022 - ele-king

 音楽好きによる音楽好きのための楽園のような野外フェス、レインボー・ディスコ・クラブ(以下RDC)。パンデミックに見舞われた2020年は配信で、2021年はスピンオフ企画「RDC “Back To The Real”」として川崎のちどり公園にて開催、コロナ禍においてもすべての音楽好きとともに素敵な空間を作ってきたRDCだが、2022年はついに東伊豆へカムバックを果たす。

 Chari Chariによるアンビエント・ライヴ、DJ Nobu×Sandrien、瀧見憲司、Kuniyuki×寺田創一×sauce81によるライヴ・セッションといった日本を代表する面々はもちろん、最新作『Chameleon』が話題になったアンソニー・ネイプルズ、紙エレ年末号でハウスのベストに挙げたモーター・シティ・ドラム・アンサンブル(Danilo Plessow)、そしてなんとデトロイトの重鎮ムーディマンといった海外勢も出演する。

 今年からは、グループや23歳以下のための各種割り引きチケットも充実。この機会に、東伊豆の大自然に生まれる3日間の音楽コミュニティへぜひ足を運ぼう。

開催概要

名称:
RAINBOW DISCO CLUB 2022

日時:
2022年4月29日(金・祝)9:00開場/12:00開演~5月1日(日)19:00終演

会場:
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ(静岡県)

出演:
DJ / LIVE (A to Z):
Antal
Anthony Naples
Chari Chari (Ambient Live Set)
CYK
Danilo Plessow (MCDE)
DJ Nobu × Sandrien
GE-OLOGY
Kenji Takimi
Kikiorix
Kuniyuki × Soichi Terada × sauce81 (Live Session)
Licaxxx
machìna (Live)
Monkey Timers
Moodymann
Ron Morelli
Satoshi & Makoto (Live)
Shhhhh
Sisi
Sobriety
Torei
Tornado Wallace
Wata Igarashi (Live)
Yoshinori Hayashi

VISUAL:
REALROCKDESIGN
KOZEE
VJ MANAMI
kenchan

LASER & LIGHTING:
YAMACHANG

料金:
通し券:20,000円
通し券(23歳以下):13,000円
キャンプ券:4,000円
駐車券:4,000円
グループ通し券(4枚1組):72,000円
※チケット購入ページの注意事項をよくお読みください。

オフィシャルサイト:
https://www.rainbowdiscoclub.com

フランク・ザッパ - ele-king

王様は裸だ。これまでも、これからも

ロック、ジャズ、現代音楽、ドゥーワップなど様々な音楽を取り入れた幅広い雑食性と60枚以上におよぶ膨大な作品数。
舌鋒鋭く社会に切り込むメッセージとブラックジョークや下ネタの入り混じった歌詞世界。

今なお、ロック史上最大の異端ミュージシャンとして存在感を失わないフランク・ザッパの決定的評伝がついに刊行!

4月22日より、ドキュメンタリー映画の公開も決定、いまザッパから目が離せない!

著者
バリー・マイルズ
英国出身のジャーナリスト。60~70年代ロックやカウンターカルチャーについての著書で知られる。著書にポール・マッカートニーの公式評伝をはじめ、ジャック・ケルアックやウィリアム・バロウズといったビート詩人についての伝記など。

訳者
須川宗純(すがわ・そうじゅん)
1962年生まれ、編集者・自由研究家。
香港歌謡史、インド映画音楽史、アメリカンコミックス史、村上春樹研究、散歩などを対象とする。
編集を担当した本・雑誌特集に以下のようなものがある。
『ユリイカ』1994年5月号「特集=フランク・ザッパ」(青土社)、フランク・ザッパ、ピーター・オチオグロッソ『フランク・ザッパ自伝』、菊地成孔+大谷能生『憂鬱と官能を教えた学校』、マイク・バーンズ『キャプテン・ビーフハート』(以上河出書房新社)、大友良英『MUSICS』(岩波書店)、『STUDIO VOICE』2001年12月号「特集=オノ・ヨーコ」、2007年8月号「特集=政治を考える!」(以上INFAS)、大里俊晴『マイナー音楽のために』、『間章著作集』全3巻(以上月曜社)、『初期アメリカ新聞コミック傑作選1903-1944』(創元社)

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