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Home >  News > 『チカーノ・ソウル~アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』 - 著者、ルーベン・モリーナ氏が遂に来日決定!

『チカーノ・ソウル~アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』

『チカーノ・ソウル~アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』

著者、ルーベン・モリーナ氏が遂に来日決定!

Apr 10,2023 UP

RUBEN MOLINA “CHICANO SOUL” DJ & TALK SESSION IN JAPAN

「若者にとってバリオ・ライフは時にハードなのだ。だからタフでいなければならず、そうした強迫観念から感情的であることは抑えられる。ガールフレンドができたとしても、正直に自分の気持ちを打ち明けることさえも困難にさせてしまう。ラヴ・バラ―ドはそんな彼らの声を代弁してくれるのだ」(『ローライダーマガジン日本版』85号。著者によるルーベン氏へのインタヴュー。2008年)

 独特の「甘さ」をひとつの特徴として捉えられるメキシコ系アメリカ人たちが奏でる「チカーノ・ソウル」。いまやロサンゼルスやサンアントニオのメキシコ系コミュニティを越えて、注目のジャンルとして世界中で熱烈なファンを多く生んでいる。ご存知のようにビッグ・クラウンやダプトーンといったNYのインディペンデント系レーベルがとくに力を入れてロサンゼルスのアーティストたちの作品を次々とリリース。昨今のヴィンテージR&Bサウンドのリヴァイバルの動向にも大きく貢献しているのは間違いないだろう。そんなシーンの立役者である『CHICANO SOUL~RECORDINGS & HISTORY OF AN AMERICAN CULTURE』(邦題『チカーノ・ソウル~アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』(サウザンブックス))の著者、ルーベン・モリーナ氏が遂に日本にやってくる。

 出身は、ロサンゼルス・チャイナタウンに近い古いチカーノ・バリオ、フロッグタウン。公民権運動とロー・ライダーの嵐が吹き荒れた70年代に青春時代を送り、ストリート事情に精通する市井の研究家であり、サザン・ソウル・スピナ―ズと名乗るOGらによるDJクルーの一員でもある。今回は大阪と東京の2カ所でDJとトークのイベントを行う。会場ではヴィンテージのチカーノ・ソウルが鳴り響く予定だ。またトークではロー・ライダーやソウル音楽との関係などをフロッグタウンの経験に言及しながら紐解いていくという。そんな貴重な来日イベントを前にルーベン氏のインタヴューを敢行した。(文:宮田信)


 

■書籍『チカーノ・ソウル~アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史』を執筆しようと思った経緯について教えてください。メキシコ系アメリカ人演奏家による英語の録音についての情報はほぼ皆無でしたので大きな挑戦だったと思いますが。

ルーベン:「アフリカ系アメリカ人の歌手のレコードを集め始めたのは1966年か1967年で、13歳か14歳の頃です。主にラジオで流れていた音楽です。当時ロサンゼルスではラジオで流れるチカーノ・バンドはほとんどなく、ダンス・パーティに行くにはまだ幼くて、結局イーストサイドサウンド(イースト・ロサンゼルスで生まれた若いチカーノによるR&Bやロックの演奏)に辿りついたのは1969年の頃でした。それから30年後、ディマスⅢの“You’ve Succeeded”というレコードを聴いていて思わず惚れ惚れしてしまったのです。作家のクレジットにディマス・ガルサという名前があり、そのレコードがテキサス州サンアントニオのものであることを知り、かの地まで飛んでいって彼を探し出さねばと思ったのです。その途中にジョー・ジャマやロイヤル・ジェスターズ、サンライナーズ・バンドの面々と出会い、「いったい60年代にはどのくらいのチカーノたちがソウル・ミュージックを演奏していたのだろう」と思い巡らしていたのです。しっかりと調べ上げて、本にまとめようと決心したのです。確かにこの本の前にはそうしたものについて書かれたものは僅かでした。しかし、チカーノ・コミュニティは過去を大切にする傾向があり、この本を完成させる為に、多くの録音、写真、インタヴューを集めることできたのです。

■あなたが「チカーノ・ソウル」と呼んだ多くの録音はたしかに黒人音楽から大きく影響を受けたハイブリッドな音楽です。しかし、この本のタイトルである「チカーノ・ソウル」にはダブル・ミーニングを感じさせています。単純に音楽のことだけではなく、メキシコ系アメリカ人による独創的な創造性、社会的意識、また誇りの意味も込められているように思います。

ルーベン:たしかにブラック・ミュージックはアメリカの若者たち、特とくにチカーノ・コミュニティに大きな影響を与えました。最初は若いミュージシャンがレコードで聴いたものを真似してカバーを録音していましたが、熟練してくると、ソウルフルな音楽アレンジで自分たちの曲を作るようになったのです。タイトルに二重の意味を持たせたかったのは、その通りです。そう、チカーノ・アーティストは黒人の音楽をコピーしていましたが、そうした音楽が彼らの魂を掴み、創造力を発揮してひとつのジャンルが生れていったのです。それこそがチカーノのやり方なのです。

■チカーノたちの公民権運動は1970年代中盤まで続きました。あなたが育ったフロッグタウンでのリアクションはどんなものでしたか?チカーノという言葉をどのように当時の若者たちは使い始めたのでしょう?

ルーベン:チカーノという言葉は、ドン・トスティが1948年に録音した “CHICANO BOOGIE”というタイトルの曲があるように、私たちの歴史のなかでは何十年も前から使われています。1960年代の公民権運動の時代に広まり、80年代までに広く使われるようになりました。私の住んでいたバリオでは、私の世代はチカーノとして育ち「イースト・ロサンゼルス・ライオット」として知られる反戦行進に参加した者もいました。メキシコにより深くルーツをもつ人のなかにはよりアメリカ的だと考えこの言葉を好まない人もたくさんいましたが、私たちの多くは自分たちをチカーノだと考えてきたのです。「チカーノ・ソウル」というタイトルに、当時のフラッシュバックを招くかもしれないという不安もありましたが、快く受け入れられ、自分の青春時代やチカーノ・コミュニティの苦悩について考えるきっかけにもなったのです。

■ロー・ライダーであることもラサ(チカーノ)のアイデンティティを表現する政治的なアクションだと思います。あなたはチカーノという意識をどのように培ってきたのですか?

ルーベン:私はアメリカで生まれ、家族も何世代もアメリカに住んでいますが、幼い頃、自分が何者であるかを知ろうとしたとき、「白人の国、アメリカ」が自分は何者なのかと教えてくれました。要するにダークスキンの子供で、メキシコ人で、トラブルで、必要とされていないといった感じ方です。ところがチカニスモは私にプライドを芽生えさせ、本当の自分を教えてくれました。その意味で、私は白人の国、アメリカに感謝しているともいえるでしょう。

■驚いたことに、執筆から出版を全てひとりでこなし、それを自費でなさっています。一番苦労したのはどんなことでしょう?

ルーベン:企画を始めた時点で、自分ひとりの力でやらなければとわかっていました。出版社は、大きな売上をもたらすことができる定評あるライターか大学の先生しか使いたがりません。私は独学で文章の書き方や出版ソフトの使い方を学びました。編集者や印刷業者に支払うお金も自分で用意したのです。営業するのが一番大変でした。しかし、本が売れ始めたら、新しい世代のチカーノの子供たちに誇りを与えていると実感できたのです。彼らは自分たちのコミュニティの過去を見つけ、いまでは彼らのなかからコミュニティの歴史のなかに埋もれてきた他のテーマを記録調査している人も出て来ています。

■いま、新しい世代のチカーノ・ソウルがブームになっています。また多くのコレクターが古いチカーノたちのレコードを探しています。この本がそのきっかけに大きく貢献していると思います。そんなことを予想していましたか?

ルーベン:当初、レコード・コレクターからは「そんな本を出せばレコードの価格が上がる」と怒られました。私もそれについて考えましたが、歴史の方がはるかに重要だと思ったのです。この本がきっかけで、新しい世代のレコード・コレクターも増えました。若いコレクターがチカーノ・グループやメキシコのレコードを探しているのをよく見かけるようになりました。それは私たちの文化や誇りにとって良いことです。そんなことが起こるとは思ってもみませんでしたが。

■この本は大学のチカーノ・スタディーズに大きな衝撃を与えたと思います。どのように受け止められましたか?

ルーベン:大学では誰も研究していないからと油断していた教授たちよりも、学生たちの方が先にこの本を支持してくれました。あれから何年も経ったいま、学生たちのなかには、自分たちで研究し本を書こうとしている人も出て来ています。

■5月のツアーではどんなレコードを用意するつもりですか?最近はチカーノ・ソウルの他にジャマイカのソウル・カバーのレコードも蒐集していらっしゃるようですが。

ルーベン:まだどんなレコードを引っ張り出すかは分からないです。もちろんジャマイカ、ソウル、チカーノは持っていく予定です。

■今回の初来日では何人かの仲間も一緒に来るようですが。彼らについて教えてください。

ルーベン:テキサス州サンアントニオの超有名なレコード・コレクター、ヘクター・ガレーゴスも一緒にDJをやる予定です。また、カリフォルニア州サンノゼ出身のドキュメンタリー監督/プロデューサー、ヘスス・クルスも来ます。ヘススは、サザン・ソウル・スピナーズを題材にしたドキュメンタリーを制作中で、この旅に同行して撮影する予定です。またダイジェスト版をどこよりも早く今回のツアーでお見せ出来たらと思っています。

■最後に日本でチカーノに興味のある人へメッセージをお願いします。

ルーベン:『チカーノ・ソウル』の日本での出版から3年、皆さまにサポートして戴き感謝しています。日本の音楽愛好家がチカーノやその文化から生まれてくる音楽に興味をもってくれなければ、何も起きませんでした。日本へ行くことに少し緊張していますが、同時にとても興奮しています。音楽や本のファンの方々とお会いできることを楽しみにしています。 皆さんもぜひ足を運んで、今回のプロジェクトを応援してください。

☆5月19日(金)大阪・東梅田 do with café

Open:18:30/Talk Start:20:00
予約¥3,900 / 当日¥4,500(+1ドリンク別途)

☆5月21日(日)東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
Open:18:00/Talk Start:20:00
予約¥3,900 / 当日¥4,500(+1ドリンク別途)

<ご予約・お問い合わせ>

晴れたら空に豆まいて 03-5456-8880(15-22時)
MUSIC CAMP, Inc. 042-498-7531(月・水・金11-20時)

e-mail: chicanosoul2023@m-camp.net 
※メールでご予約される場合は件名を「チカーノ・ソウル イベント予約」としていただき、
お名前・ご連絡先電話番号・ご希望会場(大阪/東京)をお書き添えください。
オフィシャル・サイト⇒ http://www.m-camp.net/ChicanoSoul2023.html

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