Home > News > RIP > RIP Greg Tate - ──黒人音楽/ヒップホップ批評の第一人者、グレッグ・テイト急逝する
アメリカの文化批評、ことブラック・ミュージックにおける批評家(もしくは思想家)として名高いグレッグ・テイトが急逝したことを、『ピッチフォーク』をはじめ各メディアが報じている。
グレッグ・テイトは「ヒップホップ・ジャーナリズムのゴッドファーザー」と呼ばれていた人で、その知性と思想性および硬派な態度から、リロイ・ジョーンズ/アミリ・バラカ(『ブルースの魂』『ブラック・ミュージック』の著者として知られる詩人かつ批評家)の後継者とも喩えられていた。じっさいテイトを尊敬する人は多い。イギリスの批評家サイモン・レイノルズやコジュウォ・エシュン、アメリカの作家ジェイソン・レイノルズや詩人のムーア・マザー、それからテクノ・アーティストのジェフ・ミルズもテイトを尊敬している。
黒人音楽(文化)について書く人は数多くいるが、たとえばマイルス・デイヴィス、ギル・スコット・ヘロン、ウータン・クラン、アジーリア・バンクス、カラ・ウォーカー、ドレクシア、そしてアフロフューチャリズム、これらを同列に深みをもって語れる人がほかにいるのだろうか。アメリカの黒人音楽ジャーナリズムにおけるこの素晴らしい知性を日本に紹介しようと、ele-king booksからは来年、テイトの代表作である『Flyboy 2』の翻訳を押野素子氏/山本昭宏氏の共訳で刊行することが決まっていた。生前テイトと交流のあった押野氏によれば「最近で一番嬉しい出来事」と話していたそうで、なんともやりきれない思いだ。
昨年刊行した別冊エレキング『ブラック・カルチャーに捧ぐ』では、巻頭インタヴューがグレッグ・テイトだった。いま黒人音楽を特集するとしたら、その巻頭には彼の言葉がどうしても必要だった。そしてテイトは、Zoomを介して、本に囲まれた彼の書斎からブラック・ライヴズ・マターについて(そしてヒップホップとデトロイト・テクノについて)語ってくれた。
今年64歳だったというが、まだまだ書きたいことがたくさんあったろうし、BLM以降の時代において彼の言葉はさらにもっと必要だった。偉大な先達の安らかな眠りをお祈りします。(野田努)