ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  2. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  3. IO ──ファースト・アルバム『Soul Long』10周年新装版が登場
  4. Reggae Bloodlines ——ルーツ時代のジャマイカ/レゲエを捉えた歴史的な写真展、入場無料で開催
  5. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  6. DJ Python and Physical Therapy ──〈C.E〉からDJパイソンとフィジカル・セラピーによるB2B音源が登場
  7. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  8. Bandcamp ──バンドキャンプがAI音楽を禁止、人間のアーティストを優先
  9. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  10. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  11. aus - Eau | アウス
  12. IO - Soul Long
  13. interview with bar italia バー・イタリア、最新作の背景と来日公演への意気込みを語る
  14. 野田 努
  15. Daniel Lopatin ──映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のサウンドトラック、日本盤がリリース
  16. 見汐麻衣 - Turn Around | Mai Mishio
  17. interview with Ami Taf Ra 非西洋へと広がるスピリチュアル・ジャズ | アミ・タフ・ラ、インタヴュー
  18. Ken Ishii ──74分きっかりのライヴDJ公演シリーズが始動、第一回出演はケン・イシイ
  19. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓)
  20. Geese - Getting Killed | ギース

Home >  Reviews >  Album Reviews > Lapalux- Nostalchic

Lapalux

AmbientDowntempoSoul

Lapalux

Nostalchic

Brainfeeder/ビート

Amazon iTunes

北中正和 Apr 08,2013 UP

 音や声の構成の多様性に耳を奪われる。
 国分純平のライナーノーツによれば、ラパラックス(スチュワート・ハワード)はカセット・テープとともに育ってきた。「いつだってカセットの音が好き」な人らしい。このアルバムもカセット・テープの早回し音のイントロではじまり、早回しではないがテープのアウトロで終わる。
 カセット・テープといえば、近年はダンス・ミュージックやヒップホップのミックス・テープの文脈で語られることが多い。しかしこのアルバムの音楽は「まずビートありき」ではない。
 制作テクノロジーをヒップホップ、ハウス、その他のダンス・ミュージックと共有しており、音楽的にそういう要素も使われていないわけではないが、ビート以上に音や(歌)声が思いがけないタイミングや色彩で入ってくるのがおもしろい。
 全体の見取図が先にあるのか、手作業を積み上げてこういう音楽になってくるのか、いずれにせよ凝った編曲は、クラブ/ダンス・カルチャー以前の音楽とのつながりを強く感じさせる。
 アルバム・タイトルはノスタルジー+シックの意味。意識して音楽と向き合いはじめたのが世紀の変わり目のころという今年25歳のアーティストのノスタルジーが、いくつもの時代にまたがっているところが、重層的な情報の中で生きざるをえない今の音楽らしさだろう。
 女性の歌声や男性のファルセットがフィーチャーされているが、いずれもさまざまな形に加工されている。カセット・ダビングをくりかえして劣化したような、深夜のラジオから遠い国の電波に乗って聞こえてくるような声や音が、人間関係が間接化されていくことへのおそれと同時に安堵をも感じさせる。
 せつないアルバムだ。

北中正和