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アシッド・ジャズというキーワードが京都に新しい空気を持ち込んだのはたしかだと思う。僕はそのときの京都の変化を何となく感じていたが、体験はしていない。大阪は新しいバンドが出てきてもいつも同じような気がする。なんか泥臭く、懐かしの大阪の匂いがする。昔は京都のほうがしっくりきたのになあ……。というわけでその秘密を解き明かそうと京都に住もうと思ったりもした。
そんな折、ワンダー・ヘッズを聴いてみた。Nabowaのリズム隊ふたり(川上優、堀川達)がやっているこのバンドにはググっときた。生音コズミック・ディスコというか、ジョルジオ・モロダーとクラフトワークのブレンド具合が見事だと思う。
若い人たちのなかにはジョルジオ・モロダーとクラフトワークは同じものと思っている人もいるかもしれないけど、このふたつは相反するものなのです。ジョルジオ・モロダーはポップの権化、クラフトワークはアートの権化というか。
ジョルジオ・モロダーを引き継いでいるものといえばダフト・パンクをはじめ何百というアーティストがいるんですが、クラフトワークを引き継いでいるものといえばジョイ・ディヴィジョンくらいしかいないんじゃないか。偶像崇拝禁止。アートのために、いちばん儲かるはずのアーティストTシャツを売らなかった人たち。クラフトワークはポップスでしたが、ポップスを作ろうとしたことは一度もない、彼らは作品を作ってきていたのです。
ワンダー・ヘッズにはそんなクラフトワークと同じ心意気を感じる。そんな部分が彼らの音楽を素晴らしいものにしている。ドラム、ベースという職人さんだからでしょうか。それとも京都という土地がそうさせるんでしょうか。
そして、ワンダー・ヘッズは先に書いたようにクラフトワーク/アート的な部分だけじゃなく、ジョルジオ・モロダー的なポップでいなたい部分も持っている。いや、いなたくはないか、ジョルジオ・モロダーのいなたい部分をニュー・オーダーがアートの世界に持っていたのと同じ気品を感じる。このへんも、京都の職人さんの感じがするんだよな。
すべてが終わった現代では、すべてが終わった都市で、職人さんが新しい文化を作っていっている。そして、それが新しい未来を作っていっている、なんてね。でも、大げさかもしれないけど、ワンダー・ヘッズのファースト・アルバムを聴いているとそんなことを考えてしまうのだ。Kenji Takimi、Prins Thomas、ALTZのリミックスも聴かなきゃね。
久保憲司