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フューチャー・ガラージの使者 Satol

Mar 26,2013 UP

フューチャー・ガラージの使者 Satol

取材:野田 努

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ただ、日本から逃げたみたいな後ろめたさもあったので、やり残したことをやってみようっていうか。そういう気持ちでしたね。日本の重力から逃れるのは良いと思うんですけどね。ビザは、僕にとっては、免許証みたいなものです。


Satol
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■とにかく、2006年にブリアルを知って、それでガラージに行くわけですね。

Satol:はい。

■そこから〈madberlin〉と出会って、それでベルリンに移住するまでの話をしてもらえますか?

Satol:まず、知り合い4人でクラブをはじめるんです。〈ルナー・クラブ〉っていうんですけど。テクノ、エレクトロ、ハウスに特化したクラブでした。あとは、自分がやりたいことをやってました。300人ぐらいのキャパで、入るときは400ぐらい来てましたね。そのクラブをやっているときにkill minimalを呼ぶんですよ。2009年ぐらいですか。

■kill minimal?

Satol:マドリッドからベルリンに移住したヤツで、僕は本名でジュアンって呼んでるんですけど。

■〈madberlin〉のmadって、Madridのmadだったんですね。狂ったベルリンじゃなかったんですね(笑)。

Satol:ハハハハ。マドリッドのほうとかけているんですけど、ただ、本人いわく「あのmadでもいいよ」と。

■kill minimalを呼んだのは?

Satol:いっしょにやっていた連中が好きやったんですよ。ビートポートで聴いて、みんな好きだったんです。僕はあんま好きじゃなかったんですけどね。カローラ・ディアルっていう女の子とジュアンが〈madberlin〉をやっていたんですど、ふたりとも日本に来るのが夢だったみたいで、「ありがとうございます」みたいな、で、ふたりともスペイン人的な情熱的な人で、人懐こい人間で、それで、なんだか僕がふたりと仲良くなってしまったんです(笑)。そのときジュアンから、「エイブルトンを教えるから、おまえ、これでがんばってみろ」って言われて、教えてもらうんですよ。エイブルトンは、ベルリンに本社があるドイツのソフトなんですね。〈madberlin〉のアーティストのほとんどが使っていて、「難しいけど、面白い」って言ってましたね。ジュアンはベルリンで、そのソフトの使い方の講師のようなこともやっていました。

■スペインは不況で、仕事がないから、多くの若者がベルリンにやって来たというけど、そのなかのひとりだったんでしょうかね?

Satol:ハハハハ、そんな感じだったと思います。kill minimalはいまは、ヨーラン・ガンボラ(Ioan Gamboa)という名前でやっています。

■今回のアルバム『ハーモナイズ・ザ・ディファリング・インタレスツ(異なる利害関係を調和)』の前に、〈madberlin〉から3枚出しているんですよね?

Satol:はい。〈madberlin〉もかなりゆっくりやっているレーベルですから(笑)。

■ベルリンに移住したのは?

Satol:いまから1年ちょっと前ですね。音楽活動が日本ではやりにくいかなと思ったんですね。いまは、反骨精神でがんばってますけど、でも、クラブで下手したらJ・ポップとか流れるんですよ(笑)。レディ・ガガとか。オールジャンルというか。

■昔のディスコですね。ヒット曲がかかるみたいな。

Satol:そう、ディスコ化しちゃってるんですよ。

■それはきついですね。

Satol:大阪はそうですよ。ガッツリ音楽をやっている人間には活動しにくいところです。

■それでもう、ベルリンに行こうと?

Satol:そうです。後、特にクラブ摘発の件が大きく左右しました。

■〈madberlin〉から作品を出しているという経歴もあって、アーティスト・ビザを収得できたんですか?

Satol:僕の場合は、マグレですね。簡単に取れる時期がありましたけど、いまは難しいです。

■ユルかったですよね。

Satol:そうですね、昔はユル過ぎましたね。

■良いことでしたけどね。では、ベルリンではジュアンたちといっしょに住んでいたんですか?

Satol:弁護士といっしょに(笑)。カイ・シュレンダーという。ハハハハ。彼のおかげです。

■本当に良い友だちを持たれましたね。

Satol:ただ、いまは大阪でがっつりやっていますけどね。要するに、ビザが取れてしまったので、もういつでもベルリンに戻れるからっていうか、「もう一回大阪でがんばってみよう」って思うようになったんですね。ベルリンでがんばるんじゃなくて、大阪でがんばってみようって。

■素晴らしい(笑)。

Satol:ホント、なんか、ギャグです(笑)。ただ、日本から逃げたみたいな後ろめたさもあったので、やり残したことをやってみようっていうか。そういう気持ちでしたね。日本の重力から逃れるのは良いと思うんですけどね。ビザは、僕にとっては、免許証みたいなものです。

■今回リリースされることなった『ハーモナイズ・ザ・ディファリング・インタレスツ』ですが、何で、P-VINEから出すことになったんですか?

Satol:アンダーグラウンドなところを探すのが好きで、まあ、P-VINEをアンダーグラウンドって言ったら失礼かもしれないけど、とにかく送ってみて、そして栃折さん(担当者)に連絡しました。

■Satolさんのスタイルは、「フューチャー・ガラージ」と呼ばれていますが、その定義について教えてください。

Satol:ガラージとダブステップの雑種ですよね。ブリアルの流れの、2ステップな感じで......。

■ハウスのピッチで、アトモスフェリックで、それで、金属音のような効果音、ちょっとインダストリアルな感じもあって、アンディ・ストットなんかとも感覚的に似ているなと思ったんですよね。

Satol:ありがとうございます。アンディ・ストットは前から好きだったみたいです、名前は覚えないんですけど、曲は聴いてました。

■Satolさんの音楽もひと言で言えば、非情にダークですよね。

Satol:ハハハハ、そうですね。

■暗いなかにも艶があるというか。

Satol:日本では味わえないことをベルリンでは味わえるので、その経験も活かしつつ......。

■ベルリンではクラブに行きました?

Satol:かなり行きました。たくさん行きましたけど、とくにベルグハインとトレゾアはすごいと思います。

■どんなインスピレーションを受けましたか?

Satol:スタイルとしてはテクノやミニマルなんですけど、しかし音楽性は幅広いという、変な広がり方があって、それは影響されました。

■しかし、冷たい音楽ですよね。

Satol:ゴス・トラッドさんは「ダーク・ガラージ」と呼んでくれました。

■何を思って作っているんですか?

Satol:いや、もう思いつくままにやっています。ひたすら、テーマから逸れていくというか......僕は音楽をやる意味は、聴いてくれた人が前向きになってくれるかどうかなんです。

■前向き?

Satol:外れたこと言ってるかもしれませんが、勇気というか。

■このダークな音楽で? こんなアンダーグラウンドな音楽で?

Satol:ハハハハ、だから、逆にこんな音楽でもいいんだよっていうことをわかってくれたら。

■こういうアンダーワールドな音楽のどこに価値があると思いますか?

Satol:アンチ・エスタブリシュメントなところ、アナーキーなところ、反骨的なところ......やっぱあとは、自分が正直になれますよね。自分にも社会にも正直になれる。生きていれば、いつもニコニコしていられるわけじゃないですよね。だから「冷たい、暗い」というのは僕のなかで褒め言葉です。冬だけど、でも、寒くないっていう感じでしょうか?

■ああ、そういうことですか。

Satol:寒いけどやっていける、というか。

■ブリアル以外に、Satolさんに方向性を与えた人っていますか?

Satol:ロシアのガラージですかね。名前は出てこないんですけど、ロシアのフューチャー・ガラージはよく聴いていました。

■フォルティDLは?

Satol:やっぱ好きですね。

■しかし、ブルー・ハーブ、DJクラッシュ、そしてゴス・トラッドというとひとつの世界が見えてくるようですが、Satolさんはそこにパリコレもあるんですよね(笑)。

Satol:いや、もう好きです。ウォーキングのときにかかる音楽が大好きです(笑)。

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取材:野田 努