ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Bingo Fury - Bats Feet For A Widow | ビンゴ・フューリー
  2. Columns ♯5:いまブルース・スプリングスティーンを聴く
  3. Jlin - Akoma | ジェイリン
  4. KRM & KMRU ──ザ・バグことケヴィン・リチャード・マーティンとカマルの共作が登場
  5. Mars89 ──自身のレーベル〈Nocturnal Technology〉を始動、最初のリリースはSeekersInternationalとのコラボ作
  6. Tashi Wada ──LAの作曲家、タシ・ワダの新作が〈RVNG Intl.〉よりリリース
  7. 『成功したオタク』 -
  8. interview with Mount Kimbie ロック・バンドになったマウント・キンビーが踏み出す新たな一歩
  9. Ben Frost - Scope Neglect | ベン・フロスト
  10. tofubeats ──ハウスに振り切ったEP「NOBODY」がリリース
  11. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  12. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  13. exclusive JEFF MILLS ✖︎ JUN TOGAWA 「スパイラルというものに僕は関心があるんです。地球が回っているように、太陽系も回っているし、銀河系も回っているし……」  | 対談:ジェフ・ミルズ × 戸川純「THE TRIP -Enter The Black Hole- 」
  14. KARAN! & TToten ──最新のブラジリアン・ダンス・サウンドを世界に届ける音楽家たちによる、初のジャパン・ツアーが開催、全公演をバイレファンキかけ子がサポート
  15. Columns ♯4:いまになって『情報の歴史21』を読みながら
  16. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  17. KARAN! & TToten ──最新のブラジリアン・サウンドを世界に届ける音楽家たちによる、初のジャパン・ツアーが開催、全公演をバイレファンキかけ子がサポート
  18. Jlin - Black Origami
  19. 忌野清志郎 - Memphis
  20. Kim Gordon - The Collective | キム・ゴードン

Home >  VINYL GOES AROUND >  MORE DEEP DIGGING “そこにレコードがあるから” > Groove-Diggers Best of 2023 Second Half of the Year

Groove-Diggers Best of 2023 Second Half of the Year

Groove-Diggers Best of 2023 Second Half of the Year

水谷聡男 × 山崎真央 Mar 18,2024 UP

--山崎: 今回は、Pヴァインのレアグルーヴ・リイシューシリーズ、Groove-Diggersの2023年の下期のベストをMomoyama Radioでまとめましたので、軽く解説ができたらと思います。

--水谷: 去年も色々とリイシューさせて頂きました。


□ Clifford Jordan Quartet - John Coltrane

--山崎: オリジナル盤は最近は高額になってしまい、なかなか入手できなくなりました。

--水谷: ストラタ・イーストからリリースされているもう一つのアルバム、Clifford Jordan名義の『Clifford Jordan In The World』は一般的なジャズ界でも非常に評価されているアルバムです。

--山崎: 50年代以降からブルー・ノートやリバーサイドなどでリーダー・アルバムを残している人なので、ストラタ・イーストの中でもレアグルーヴ的ではなくストレートなジャズというイメージですね。

--水谷: この『John Coltrane』はこの盤にもメンバーとしてクレジットされているビル・リー(映画監督スパイク・リーの父)が作曲で、彼の他のグループ、The Descendants Of Mike And Phoebeの『A Spirit Speaks』でも演奏されています。レコーディングはどちらも1973年で、Clifford Jordan Quartetの方が2ヶ月早いくらいですね。

--山崎: The New York Bass Violin Choirの1978年のアルバムにも収録されていますね。

--水谷: Museからリリースされている、Clifford Jordan Quartetの『Night Of The Mark VII』にも収録されています。

--山崎: Bill Leeは自身のリーダーアルバムはこれまでに無いのですが、その作曲が評価されている彼ならではのスピリチュアル・ジャズ名曲ですね。


□ Weldon Irvine - Mr. Clean

--山崎: Weldon Irvineの記念すべきデビュー・アルバムから。

--水谷: やっぱりWeldonはかっこいいですね。作曲センスが抜群です。

--山崎: この曲はFreddie Hubbard – Straight LifeやRichard Groove Holmes – Comin' On Homeでもカバーされています。どちらもWeldonからしたら大先輩にあたる人物に取り上げられるという、当時はまだ新人であったWeldonの作曲力がシーンでは評価が高かったことが伺えますね。

--水谷: Weldonが自主制作で出した最初の2枚、昔(90年代)はこのアルバムとTime Capsuleを比べるとレア・グルーヴの文脈で最初に再評価されたTime Capsuleの方が派手でポップな印象でした。どちらかというとこの1stアルバムは地味に感じた。ただ今は世の中のムードはどちらかというとこっちの1stな気がします。
アンビエント再評価の流れからフリージャズも聴かれるようになっていますし、今は他ジャンルがクロス・オーヴァーされた楽曲よりも硬派でよりストレートなジャズ色が強い方が時代にフィットしているかもしれません。

--山崎: 70年代当時はサウンドが新し過ぎて評価されず、90年代にアシッド・ジャズ・ムーヴメントやレアグルーヴにより発掘、評価された曲が、その後のネオ・ソウルなどの影響で2000年代以降に一般的になり、2020年代以降はむしろ70年代の王道ラインの方が評価されている再逆転現象が起きている。今のソウルやジャズの中古市場ではみんな定番系を漁っていますからね。レコード屋もマーヴィン・ゲイとかダニー・ハサウェイが壁に面だしになっています。


□ Phil Ranelin / Sounds From The Village

--水谷: Tribeってスピリチュアル・ジャズの中でもStrata Eastやブラックジャズのなどと比べて最初は好きになれない感じはありました。Strata Eastの方がグルーヴあったりポップだったりして聞きやすかったので。
好きだったのはマーカス・ベルグレイヴくらいですかね。Wendell HarrisonやPhil Ranelinはフリーな印象が強かったです。でものちに改めて聴くとジャズ・ファンクとしてかっこいい。Farewell To The Welfareとかもあとでいいなと思いました。

--山崎: 僕もTribeを理解できるようになったのはアシッド・ジャズやレア・グルーヴの流れではなくて、ハウスやテクノを聴くようになってですね。
90年台中盤頃にSpiritual Lifeとかカールクレイグの作品に漆黒のグルーヴを感じるようになってから最初にwendellの『An Evening With The Devil』を買って「Where Am I」を聴いたときに「これってテクノだ」と思って。


□ Wendell Harrison /Ginseng Love

--水谷: 僕はこの辺を「聴きづらい音楽ではないんだ」って思うようになったのは、どちらかというとこのWenhaとかRebirth Recordsなど80年代の方が先でした。爽やかな楽曲が多くて聴きやすかった。Tribeの本道はこっちじゃないんだろうなとは感じつつ。でも今はまわりまわってこっちに注目が注がれているのも面白いなと思います。

--山崎: 僕は逆に80年代のものはあまり買わなかったかもしれないですね。Wendell Harrisonの「Reawakening」くらいしか持ってなかった。でも70年代のものも滅多に市場に出なかったので買えなかったですが。


□ Rick Mason And Rare Feelings / Dream Of Love

--山崎: オリジナルはかなりレア盤です。

--水谷: 僕が買った当時はYouTubeにもなかったですね。でもこれは相当な奇盤です。

--山崎: そうですね。歌い方がだいぶ変ですね。
こういう奇盤って当時は誰が買ってたんだろうとか、どうやってお金を捻出してレコーディングしてリリースまで漕ぎ着けたのか不思議だなといつも思います。でもやっぱり今、人気のある盤は曲がいいんですよね。だから70'sブラックは面白い。

--水谷: レアグルーヴで評価された人ってこういうカチっとしていない人が多いですよね。
いわゆるヘタウマ系なのですが味わい深い。こういう人を評価していきたいです。

--山崎: これオリジナル盤は今いくらくらいするんですか?

--水谷: 僕は自分が買った時しか見たことないです。

--山崎: 今、Discogsで売ってるのは50万円超えですね。中間点も15万円くらいします。

--水谷: 「欲しい人」は748人もいる。こんな奇盤なのにすごいですね。


□ Three Of Us / Dream Come True Part 1

--水谷: Hilton Feltonによるグループ、Three Of Usのアルバム『Dream Come True』からの一曲です。

--山崎: Hilton FeltonをピックアップするのはLuv N' Haightが早かったですね。1993年にコンピレーション『What It Is!』に「Be Bop Boogie」が収録されています。

--水谷: 昔の話ですけど、その頃は月に一度仕事で大阪と京都に行っていたのですが、もちろん行く度にレコード屋さんを回るじゃないですか。それで大阪のとあるレコード屋さんにこのアルバムがレジ裏の壁に飾ってあってジャケを見ると写真も無しでDREAM COME TRUEという文字だけあって「ドリカムのなんかなのかなぁーと(そんなのが売ってるレコ屋じゃないのですが・・・)」。しかもしばらく売れていなかったんですね。毎月、そのレコード屋に行っては壁のこのレコードを眺めていたんですが、ある日、店員さんに勇気を出してあのレコードはなんですかって聞いたんです。そしたら聴かせてくれて、とても良かったので買いました。これが僕の最初のHilton Feltonとの出会いですね。そこからです、Hilton Felton関連は全部買おうってなったのは。

--山崎: その時はいくらだったんですか?

--水谷: あんまり覚えてないですが、べらぼうに高い金額ではなかったと思います。1万円はしたと思いますが3万円のレコードはなかなか買わない時代でしたので。

--山崎: それはすごいですね。このレコード見たことないですし、Discogsには販売履歴ないですね。そんなにバカみたいに高いレコードではないと思いますが珍しいかもしれないですね。

--水谷: Hilton Feltonがやっていることも知らない人が多かったと思います。


□ Hilton Felton / Never Can Say Goodbye

--水谷: ジャクソン5の曲のカバーですが、なんかこの人の鍵盤の手癖がいいんですよね。

--山崎: こっちの盤は近年、本当に中古市場が上がっていますね。「Be Bop Boogie」が収録されている『A Man For All Reasons』と共に人気盤です。

--水谷: Hilton Feltonはゴスペル出身なのですが、たくさん作品があるんですけどこの3枚が圧倒的にいいですね。
ただE.L. Jamesというボーカリストの『The Face Of Love』っていうアルバムはHilton Feltonが全曲アレンジしていてこのアルバムもすごく良いです。


□ Main Source / Time

--山崎: Diggersではないですが、昨年の目玉です。メインソースはなんだかんだやっぱり人気がありましたね。

--水谷: これ90年代のお蔵入りで出なかったトップ・クラスですから。
ブートやなんだでほぼ出てましたけど、でもちゃんと正規で発売されるとみなさんちゃんと買ってくれますね。

--山崎: このネタはMUROさんの「真ッ黒ニナル迄」でも使われているRoy Ayersの「Gotta Find A Lover」ですね。


□ A.P.G Crew / Daily Routine

--水谷: ディガーズでもヒップホップをやりたいと思っていて、なんかないかなって探した時にこれが出てきたんですけど。オークランドのギャングですね・・・契約するの苦労しました・・・。

--山崎: ネタはRoy Porter Sound Machineの「Panama」ですね。

--水谷: こういうヒップホップのいいとこでもあるんだけれど、かなり雑なんですよ。
A.P.G CREWのアルバムって収録曲中の3曲でRoy Porter Sound Machineの『Inner Feelings』収録曲をサンプリングで使っている。Roy Porterと同じ西海岸なので地元のレコ屋でLP見つけてサンプリングしがいのある曲がたくさんあるので摘んだのかと想像しますが、的確にチョイスしてサンプリングしてますね。

--山崎: 「Panama」に「Jessica」、「Party Time」と使いすぎですね。

--水谷: でもちゃんと91年当時にこの3曲をセレクトしてそのまんま使ってるけどポイントを的確に使っていることに評価。Vistone盤の再発が90年にリリースされているので、こっちらかもしれませんが。DJ Spinnaの「Rock」よりも全然早いですから。


□ Funkgus / Memphis Soul Stew

--山崎: シンガポールのサイケ・バンドですね。この曲はキング・カーティスのカバーです。

--水谷: こういうファンキーなサイケデリックは日本のサイケに通じるところがありますね。
70年代のアメリカの黒人でサイケな人ってあまり多くないイメージですが、アフリカやアジア・モノを掘っているとサイケ色強いバンドが多いです。Numeroが2007年にアイランド・ファンク系のコンピレーション、『Cult Cargo: Grand Bahama Goombay』を出しているんですけどサイケ感が出ている曲が多かったです。

--山崎: アメリカからサイケ・ムーブメントが日本やアジア、アフリカ、カリブ諸国に流れつくと同時にジェームス・ブラウンを筆頭としたファンクの波も押し寄せたから、それを融合したようなサイケファンクが多いのではと話を聞いていて思いました。

--水谷: 一理あるかもしれないですね。でもサイケ入ってるとあんまり今のトレンドに乗らないんですよ。だからアフロ・レアグルーヴも一部熱狂はありましたがあまり広がらず、ここんところのDIGマーケットでは少し落ち着きましたね。

--山崎: レアグルーヴの人はロック嫌いだし、ロックのひとは暑苦しいファンクを嫌いそう。狭間ですね。
でもサイケなファンク、これから人気出るかもしれないですよ。聴き方次第では今っぽい気もします。


□ Ernie Story / Disco City

--山崎: この人はインプレッションズとかにも参加している白人ミュージシャンです。
やっぱりロックっぽいですね。こういう盤、どこで見つけてくるんですか?

--水谷: この辺のPRIVATE盤もdiscogsをはじめ、今や情報が氾濫してるのでとても高くなりましたが、個人間でネット売買が始まった2000年代後半〜2010年代前半は比較的にモノもあったし買いやすかったと思います。ただ、こういった無名盤は一部のコレクターで止まっており、レアグルーヴの定番としての人気と評価は今だに90年代から2000年代前半のライナップで止まっている気がしますので、我々ももっといろいろなものを紹介していきたいですね。


□ The Mighty Ryeders / Let There Be Peace

--水谷: 僕は昔からこの曲が「Evil Vibrations」の次に好きでした。

--山崎: この曲は当時7インチも出ていますね。

--水谷: CDアルバムのライナーにも書きましたが、アルバムとシングルではバージョンが違うんです。
今年はこのシングル・バージョンも7インチで再発します、

--山崎: 裏面はMUROさんによる「Evil Vibrations」のエディットですね。

--水谷: でもこのアルバム、本当に全体的にいい。「Evil Vibrations」が突出しているので目立っていますが、どの曲も洗練されているけどファンキーでソウルでもあるレアグルーヴ王道な盤ですね。

--山崎: リーダーのRodney Mathewsさんはアルバムはこの作品のみですが、才能があったんでしょうね。


□ The Turner Brothers / Sweetest Thing in the World

--山崎: この曲もとてもいいですよね。楽曲自体がしっかりしている。
マイナー系でここまでクオリティ高いのも珍しいかもしれません。ソウル・ファンからは昔から評価が高い盤ですね。

--水谷: それにしてもこの盤も1999年に再発させているLuv N' Haight (Ubiquity)は早熟でしたね。先ほどのHilton Feltonしかり、91年にRoy Porter Sound Machineを12インチでリリースしたり、Weldon Irvineも1992年にはStrata East盤と『Weldon & The Kats』を再発している。

--山崎: Weldon Irvineの1st、2ndの2枚を最初に再発したのはPヴァインですね。1996年です。

--水谷: あの頃はまだまだ未発掘なものがたくさんあってよかったですね。

--山崎: ただ、先程もおっしゃってたように、無名盤はまだまだあるので新たなライナップを我々も提示していきたいですよね。


□ Joyce Cooling / It's You

--水谷: これはみんな好きですね。こういうのが今また売れるならもっと色々ありそうですが。

--山崎: 須永辰緒さんが2000年にカバーして有名になった曲であの頃は流行りましたね。
こういうブラジリアン・クロスオーヴァーが全盛期でした。

--水谷: この頃はPヴァインでもブラジリアン・クロスオーバーものはたくさん出してました。

--山崎: でも今、この辺のオリジナルの中古盤安いですよ。Joyce Coolingのオリジナル盤はそこそこしますが、昔は高かったのに今、こんなに安いんだっていうのをよく見かけます。またそのうち高くなるんですかね。


□ Cantaro Ihara / I love you

--山崎: イハラくんのいいとこって自分のエゴを出しすぎないからこれはオリジナルに忠実ですね。
とても良い仕事だなと思います。バランスがいいんでしょうね。

--水谷: うまく日本語にしてくれたと思います。こういうのは流行り廃りがないので、これからクラシックになっていくんじゃないでしょうか。


□ Southside Movement & Jackie Ross -- You Are The One That I Need

--山崎: この曲は素晴らしいですね。

--水谷: 1991年にPヴァインからSouthside Movementの『Funk Freak』というアルバムをCDでリリースしておりまして、1995年にはLPもリリースするんですが、これは未発表曲集という形でリリースされているんですね。そこに「You Are The One That I Need」が収録されているんですけれど、でもこれらの曲が含まれている盤がもっと昔にあるんですよ。おそらく80年代初頭ですかね。ジャケットもないプロモ盤で超レア盤なので滅多に出ないんですけど。

--山崎: なので今回はその盤にさらに曲を足してリリースに至ったんですね。

--水谷: 前述の『Funk Freak』って中古市場でも昔から高くならないんですね。「You Are The One That I Need」を手に入れるのってオリジナルはまず難しいので、『Funk Freak』しかなかったと思うんですけど。でもこれ誰も知らない曲だなって思っていたらMUROさんが2010年にMIX CDに入れていました。この時はさすがだなと思ってシビレましたね。

--山崎: 先ほどからの繰り返しになりますが、こういう曲こそ広がって定番のライナップに入ってほしいですね。

-

--水谷: エンドロールはレアグルーヴ好きならピンとくる方も多いと思いますが今の時点ではシークレット・トラックとしておきましょう。

--山崎: 2024年もP-VINE GROOVE DIGGERSとVINYL GOES AROUNDチームではたくさんの面白い企画を考えておりますので引き続きよろしくお願い致します。