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Columns

ラウル・KとDub Struct #9のツアー日記

ラウル・KとDub Struct #9のツアー日記

文:Canno Masanori Jan 21,2013 UP

 Mr.Raoul K(以下、ラウル)との出会いは2年前、前回の〈eleven〉の「MONK!!!」に出てもらった時でした。
 もともとラウルを呼んだのは「MONK!!!」にふさわしいアングラでクールなトライバル系のDJということで「MONK!!!」を一緒にやっているトミオ君やあんなちゃんが提案してきたのだったと思います。彼の住むドイツでもベルリン以外はそうそう〈eleven〉や〈Liquid Room〉のようなオオバコはないらしく、そのときはえらく日本のパーティ・シーンを気に入った様子でした。また彼のアルバムのセールスの50%は日本におけるものだとも語っていました。

 ラウルとはそれからもちょこちょこカタコトの英語メールで連絡を取り合うようになり、自然とニュー・アルバムのリミックスをやってもらうことになりました。ラウルがリミックスしたデータを受けて、それにDUB STRUCTURE #9(以下、DUB ST#9)で上音を足して送り返してまたラウルがいじって......、というのを6回ほど繰り返していったなかで、「また日本に行きたい!」というラウルのジャパンツアーをコーディネートして、DUB ST#9も一緒に回ることにしました。次のアルバムのリミックスをしてもらう約束をして......。

■12月27 日
 ラウル到着の日。この日はELE-KINGの取材とDOMMUNE出演、さらに誰かがラウルをピックアップしホテルに案内するという複雑なスケジュール。ピップアップを誰かに頼もうにもこんな年末の平日にまともな人間が暇しているわけもなく、バンド内で一番運転に定評のあるAraiを空港に行かせ、残りの3人は取材の集合時間を守る係をやることとなった。日本では遅刻は御法度なのだ。前回ラウルが日本に来たときは風邪を引いていてものすごく元気がなかったためすごくナイーヴな人に見えたのだが、今回は体調が良かったため別人のように陽気でピースなナイスガイだった。驚くことに前回会ったほとんどの人の顔と名前を覚えていた。

11:00
ラウル成田着。ベース新井がお迎えにいく。
14:00 
渋谷でDUB ST#9のELE-KING取材。
Araiが成田からそのまま取材現場で合流する予定だったが、結局ラウルが入国に手間取ったためにAraiは現場入りが遅れ3人で取材の大半を受ける。インタヴューは和気あいあいと楽しい感じで進む。
16:00
取材を無事終え渋谷TEQNIQUEでラウルと2年ぶりに再開する(この後ラウルは東京にいる間は毎日TECHNIQUEに通うこととなる)。
ラウルを西麻布のホテルに一旦チェックインさせ、夜の現場DOMMUNEへ。
この日はラウルとのツアーで回る「MONK!!!」とTREE HOUSEというふたつのパーティのプレパーティということで、ラウル、DUB ST#9、UNIVERSAL INDIANNというメンツでDOMMUNEのライヴ・ストリーミングに出演。実はラウルのレコードバッグが誤ってロンドンに送られてしまったために、手持ち鞄に入っていたレコードとその日、TECHNIQUEで買ったレコードのみでプレイしていた。すごい。会場の熱気もなかなかでラウルもとても上機嫌であった。そしてトリのUNIVERSAL INDIANNこと、あつおさんのプレイもやばかった。やられた。
25:00
恵比寿の24時間営業の中華料理屋へ「MONK!!!」のメンバーとDUB ST#9のメンバーでラウルの歓迎会。ラウルは白米が大のお気に入りということが判明。「ベジタリアンだったり何か苦手な食べ物があるとかないの?」ときくと「No, I open all」だって。これが彼の基本スタンスであるようだ。朝4時頃解散。明日は寿司を食おう!と言って別れる。

■12月28日
17:30
大寝坊。昼に連絡すると言って既に日は暮れている。本気でこういうときは死にたくなる。ラウルが時間にうるさくない人であることを祈りつつ電話すると上機嫌でTECHNIQUEにいるとのこと。
18:00
TECHNIQUEでラウルと合流して一緒にDIG。
19:00
DUB ST#9メンバーと友だちと合流し都内のそんなに高くない寿司屋へ。貧乏なのでちょっとケチってしまったため寿司も微妙でちょっと後悔。ラウルは日本酒を気に入ってくれてぐびぐび熱燗を飲んでいた。結局熱燗を20合いただきました。 
21:30
みんなで我が家へ移動し、この日買ったレコードでラウルがDJをしてくれる。ラウルは英語が上手くしゃべれない自分の言葉を何度も聞き返して必ず言いたいことを理解するまで話を聞こうとする。この姿勢は日本人が見習うべきところだなと思った。そのおかげで英語で話すことが苦でなくなって来た。
24:00
解散。

■12月29日
 ラウルこの日は京都のパーティ・オーガナイザーが案内したいということで昼間は東京タワーにふたりでいっていたのだが、オーガナイザーが東京タワーに上らないかと進めたら「俺はいいや」とのことで、結局東京タワーに関心を示さず、すぐにTECHNIQUEへ移動することになった。

19:00
TECHNIQUEでラウルと合流。DIG。
20:00
ラーメンを食べる。ラーメンは今までで一番のヒットらしくご満悦であった。
21:00
都立大学のスタジオでバンドのリハーサルの予定だったのでラウルも飛び入りで参加。5人でセッションをしたりDJをしたりして楽しむ。ラウルがノリノリでそれがみんなにも波及してかなり調子がよい。
25:00
ラウル帰宅。ここから翌日の「MONK!!!」のリハーサルがスタート。かなり煮詰まり結局朝の9時まで延長してリハーサルを行う。
33:30
帰宅。

■12月30日
 この日は「MONK!!!」。これは僕らの2nd アルバムのリリース・パーティでもあり、またはるばるやって来たラウルのためにも(もちろん〈eleven〉に来てくれるみんなのためにも)自分たちのいまの力で用意出来うる最高のパーティをという精神で半年くらいずっと準備して来たもの。
 ふたつのフロアは常にダイナミズムで満たされていて、B2ではTOMIO~HIKARU~ALTZと縦横無尽なグルーヴでグリグリフロアを踊らせたところで僕らがバトンを渡してもらうというなんとも贅沢な展開。その後はMr Raoul KとCMTがストイックでクールかつDEEPな展開でコアなお客さんがだんだん壊れていく様が最高に愉快。視覚的にもDJブースの前で行われたKLEPTMANIACがブラックライトを用いたライブペイントと、ステージからのyamatくんのクレイジーな自作のレーザーシステムが幻覚的な効果を出していて、結果お客さんは色んな方向を向いて踊っていた。
 上のフロアはとにかくハウスで実験的なメンツで、それぞれが全く異なる音世界を持ちつつもハウス実験精神という数珠でつながっているようだった。
 〈eleven〉のラウンジは低音があまりないので少し心配していたが持って来たウーハーがいい感じに機能していてしっかり踊れるラウンジになっていた。
 お客さんも20代前半から40代まで幅広くいて、よくクラブで見かける人やDJの人もいれば普段はあまりクラブに行かない後輩の学生たちもいるし、外国人の人も結構いるしとにかく人種がごちゃ混ぜでおのおの自由に会話や音楽を楽しんでる感じ。いい感じだ。

 この日も昼間ラウルはTECHNIQUEにひとりで行っていた。

■12月31日
 結局打ち上げ等もありつつ家には帰らずにそのままAraiと年越しパーティ中の〈eleven〉に戻って年越し。猛烈な眠気に襲われフロアの後ろで寝ていると案の定、注意され店を出る。ふたりで麻布ラーメンに入るも意識が混濁してきたため解散し帰宅。そういえばラウルも〈eleven〉にくると言っていたが来なかった(Solfaにkuniyukiさんのライヴを観に行っていたらしい)。

朝4時就寝。

■元旦
 夕方に起床しとりあえず家族に挨拶まわり。おばあちゃんに会いに藤沢まで行く。その後は明日明後日と大阪京都でのパーティに出るため準備をしたのち深夜には出発しなければならない。

■1月2日
 午前4時、DUB ST#9のメンバーと一緒に行く音楽狂の友だち5人、ラウルの総勢10名が車2台で大阪に向け出発する。とくにトラブルもなく順調に進み昼頃には大阪に到着。バンドのリハーサルが16時からなのでそれまでみんなでミナミを散策する。
 大阪は昨年のクラブ一斉摘発によって深夜営業が出来なくなってしまったためにパーティは夕方からスタートするらしい。べつに夜中じゃなくてもええじゃないかという、たくましい大阪の音楽人にリスペクトしたいと思います。そして書かないけどすごい時間までやりました。

 ちなみにこの日のDJは関西のゴッドマザーと呼ばれているYA△MAさん、powwowでもおなじみのDNT、Cross Breadというアシッド・ハウスを生で演奏するようなちょうかっこいいユニットをやってるRie Lambdollさんという個人的には感動もののメンツで、お客さんもこんな状況でも来る熱い人達なので温度高めのあったかい、いいパーティでした。ラウルが「大阪は人が最高だ。だから大阪はパーティも最高なんだ」と終わってから熱弁していたなあ。
 パーティが終わるとホテルが用意されているラウルはホテルへ、それ以外はスーパー銭湯に行き仮眠をとる。3時間ほど寝て正午には京都に出発しなければならない。京都はなんと昼の3時からパーティがはじまるのだ!

■1月3日
 正午にラウルをホテルで拾い京都へ出発する。昨日が激しかったのでみんなお疲れの様子。正月の京都は人でごった返していて交通渋滞も激しいので余計にみんな疲れたみたいだ。

 今日のパーティは「393production」という同世代くらいの人たちがやってるパーティで場所はクラブではなくブリティッシュパブで行われた。ブリティッシュ・パブだと照明も明るいし寛げる場所が多いのもあって音楽メインというよりパーティ・メインという感じ。
 若いお客さんが多めの印象。ドイツのケムニッツという田舎町のパブでやった時の「地元の若者大集合!」って感じと似ていて面白い。
 夜中の3時頃会場を出て東京に向かう。明日は僕らが渋谷〈KOARA〉で毎月やっている「Armadillo」だ。

■1月4日
 昼過ぎに東京に着く。この日からラウルはうちに滞在することになった。うちに滞在する間ラウルにはいろいろなことを教えてもらった。そのなかで一番印象に残っているのは「すべての音楽にオープンでいることが大切だ。ジャンルにとらわれてテクノしか聴かないとかポップじゃなきゃ聴かないとかそんなのFUCKだ。I open allだ」みたいなことを言っていたことだ。他にもいろいろ教えてもらったけどいまは思い出すのが面倒くさい。
 この日の「Armadillo」は大爆発できた。レジデントDJみんな調子良かったし正直DUB ST#9もラウルもこのツアーで最高のプレイをすることができて、それを受け止めて返してくれるお客さんがいた。途中からはDJや僕たちが客を煽るんじゃなくてお客さんがDJやDUB ST#9を煽るという状態。そしてラウルはこっちが煽れば煽るだけいいプレイで返してくれる本当に調子のいいやつだった。東京のヴァイブス響いてくれたみたいだ!

■1月5日
 ラウル最後のGIGであるUNIVERSAL INDIANN主催のTREE HOUSE@宇都宮SOUND A BASE NEST。この日はDUB ST#9は出演せずラウルだけ出演だったが、メンバーと「Armadillo」のo!0も同行。朝パーティが終わったら直接成田にラウルを送らないと飛行機に間に合わないのだ。
ライヴがないため遊ぶ気はまんまん。

 〈NEST〉は宇都宮というクラブというイメージのあまりない土地柄からは想像も出来ないくらいしっかりとしたクラブで、日本の底力を見せられた気がした。
 DJもDEEPな選曲でいい感じ。まだこの土地にはシーンが根付いていないというような話も聞いたが、その分スキモノたちが集まっているようでDEEPな曲をおのおのじっとりと楽しんでいる感じ。
 ラウルもそれを感じ取ったか最初の30分はいままでになくスペーシーな感じでジワジワと展開させていた。それからすこしテンションをあげて宇都宮ピーポーを踊らせていた。そしてラウルからのUNIVERSAL INDIANNことあつおさんという流れ。初日のDOMMUNEもそういえばこれだったなー。UNIVERSAL INDIANNに始まりUNIVERSAL INDIANNに終わったこのツアー、やっぱりあつおさんはすごいDJでした。ごちそうさま。

■1月6日
 パーティが終わると宇都宮から成田へラウルを送り出しに直行。無事に時間に余裕を持って着いて荷物を預けて別れを惜しもうとしたところで問題発生。荷物が5KGオーバーしているために100ドル払わねばならないらしい。そりゃ毎日TECHNIQUEで買い物してたらそうなるわー。

 これに納得出来ないラウル、何をはじめたかというと、レコードバッグを開いてレコードのジャケットを抜いてまさにVinyl、中身だけバッグに詰めはじめました。そして、それでも足りないと分かると持って来た服を全部おまえたちにやるといいだしました。
 最終的にラウルの荷物はレコードの中身と日本で気に入ったセブンイレブンの辛口イカ焼きというお菓子だけという状態で帰って行きました。
「本当に価値のある物にだけ金を払え」と勝手に解釈しました。

 本当にいいやつだったラウル。いろいろ教えてくれてありがとう!


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