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カニエ・ウエスト、大統領選に出馬表明

カニエ・ウエスト、大統領選に出馬表明

三田格 Sep 06,2015 UP

 ヒラリー・クリントンによる私用メール疑惑が転機となったか、保守系メディアを二分するほどドナルド・トランプが支持率を上げた(ネオ・ナチまでエールを送り始めた)ことに刺激を受けたとしか思えない……そう、MTVアワードのステージでカニエ・ウエストが2020年の大統領選に出馬を表明したのである。マスコミの反応はさすがというのか、もしもカニエ・ウエストが大統領になったらファースト・レディとなるキム・カーダシアンは何をするのかという話題に集中している。一般の人にとってはカーダシアン一家の方が知名度は高いので、なるほど、自然なバカ騒ぎはそっちへ向かうのかと。今年のグラストンベリー・フェスティヴァルでもステージで“ボヘミアン・ラプソディ”を熱唱していたカニエ・ウエストは冷笑されて一蹴という感じだったけれど(アメリカのラジオ局はカニエ・ウエストが歌うのを聴いてフレディ・マーキュリーが笑い転げるという動画まで投稿していた)、むしろ最前列で見ていたキム・カーダシアンに話題は偏っていた。しかも、カーダシアンの名を飛躍的に高めたセックス・テープの一場面をデカいフラッグにして振っていた客をめぐって論争が果てしなく広がっていく始末で、フェスが終わってからカニエ・ウエストが「オレはいま、地球最大のロックスターだ」という発言も、この論争から目をそらすためのブラフにしか感じられなかった。もはやカニエ・ウエストはキム・カーダシアンのコマーシャルみたいなものである。

 カーダシアン・ファミリーのことを知らない人に少し説明すると、まずはロバート・カーダシアンがO・J・シンプソンの裁判で弁護士を務めたことに遡る。アルメニア系の事業家として成功していたロバート・カーダシアンは、スカッシュか何かで知り合いになったO・J・シンプソンのために20年ぶりに法廷にボランティアで参加し、一躍、知名度を上げる。そして、金持ちの生活ぶりが見たいということだったのかなんだったのか、彼らの生活ぶりが当時のアメリカのリアリティ番組では最も高額のギャラだったと言われる『キーピング・アップ・ウイズ・ザ・カーダシアンズ(Keeping Up with the Kardashians)』として放送されることに。キムだけではなく、コートニー・カーダシアン、クロエ・カーダシアン、ロブ・カーダシアンが世間の目に触れることになる。セレブリティではなく、親の遺産を社会活動に使う子孫はアメリカではソーシャライトとして区別されているけれど、それ以前からTVに出演したり、『プレイボーイ』でヌードを披露していたキム・カーダシアンがさらに違う肩書きで知名度を上げたのがセックス・テープの流出であった。パリス・ヒルトンやファラ・エイブラハムと違ってゴシップの波に沈まなかったのはスゴいとしかいいようがないけれど、どこでどうしたか、キム・カーダシアンはその波にのって2014年にカニエ・ウエストと再々婚を果たし、彼女がインスタグラムにアップした結婚式の写真には2億6000万回の「いいね!」がついたとか。

 さらに、ロバート・カーダシアンの前妻、クリス・カーダシアンはオリンピック選手だったブルース・ジェンナーと再婚していたにもかかわらず、今年になってブルース・ジェンナーが性同一性障害であることをカミング・アウトし、クリスと離婚。性転換者として『ヴァニティ・フェア』の表紙を飾り、名前もケイトリン・ジェンナーに改めてスピーチを行ったところ、今年最高の感動的なスピーチだったと大評判に(ルポールまで人気復活)。ジェンナー夫妻にも何人か子どもがいて、そのうちのひとり、カイリー・ジェンナーはいわゆるセレブのような振る舞いで知られ、今年18歳になる誕生日にキム・カーダシアンと同じ髪型にしたことから、身内からバッシングを受けることになったり。この、いわゆる、アメリカではカーダシアン-ジェンナー一族として知られる親族が一堂に会した写真がやはりインスタグラムにアップされているんだけれど、このなかにカニエ・ウエストが混じっていることの奇妙さは何度見ても拭えない。カニエ・ウエストも音楽情報サイトではなく、一般的なメディアを見る限りではまるで“ウインドウリッカー”の頃のエイフェックス・ツインのような扱いであり、そこで大統領選に出馬表明をしても不思議はないというのか、もう、何が起きてもおかしくはないというのか。アメリカって、やっぱりスゴいかも。

三田 格三田 格/Itaru W. Mita
ロサンゼルで生まれ、築地の小学校、銀座の中学、赤坂の高校、上野の大学に入り、新宿の本屋、御茶ノ水の本屋、江戸川橋の出版社、南青山のプロデュース会社でバイトし、原宿で保坂和志らと編集プロダクションを立ち上げるもすぐに倒産。09年は編書に『水木しげる 超1000ページ』、監修書に『アンビエント・ミュージック 1969-2009』、共著に中原昌也『12枚のアルバム』、復刻本に『忌野清志郎画報 生卵』など。

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