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Home >  Columns > ハテナ・フランセ- 第7回 盛り上がりに欠けた大統領選

Columns

ハテナ・フランセ

第7回 盛り上がりに欠けた大統領選

文:山田容子 Jun 06,2017 UP

 ご存知の通り5月7日フランスの大統領選は決戦投票の結果エマニュエル・マクロンが大統領に選ばれた。その選挙戦について振り返りたく。

 まずは今回の大統領選があらゆる段階で番狂わせだったということから。マクロンがオランド政権時に経財相を辞任し自らの党を立ち上げた時は誰も彼が大統領になるなどと想像していなかった。オランド政権が史上最低の支持率を記録し2期目を諦めた時、フランスのこれまでの大統領選の流れだと、左派政権の政治に国民が不満を抱くと次期は右派政権に移る、という右派左派交互の政権の移り変わりが常だった。オランドのあまりの不人気に左派でさえ次は右派が政権を握る以外考えられないという状況になった。450万人というとてもいいスコアの投票の結果、右派予備選ではフランソワ・フィヨンが当選した。事前の予想では中道寄りアラン・ジュペが当選するとされていたが、ここに1つ目の番狂わせが。右派の中でもばっちり右寄り非常に保守的なフィヨンは、中絶に反対するほどのゴリゴリのカソリックで伝統主義者。保守的なブルジョア層に支持されていた。左派社会党の予備選は票が割れ、結果社会党の中でももっとも左寄りのブノワ・アモンが当選した。だが彼のカリスマ性の欠如からか政策からか社会党の党員からも「選挙ではマクロンに投票する」という裏切者も出る始末。社会党支持者はフィヨン対マリン・ルペンという悪夢のような大統領選決選投票を想像し身震いしたようだった。

 ところが大統領選が本格化すると、なんとフランソワ・フィヨンが妻と子供をスタッフとして雇用した給与不正疑惑でどんどん支持率を下げ沈没。左派は脱EU、大統領の権限を弱めるといったフランスの現状を大きく変えるような公約を掲げる極左政党左翼党首ジャン=リュック・メランションがアモンを追い上げた。メランションはエゴ肥大のきらいがあるほどカリスマ性が強く、同時に2箇所で政治集会を催し1箇所ではホログラムで登場するなど、左派にしては派手でアクが強く、そこが従来からの左派インテリには押しつけがましいと嫌われる原因となり左派も今ひとつまとまり切れず。結局左派、右派のこぼれた支持者を持って行ったエマニュエル・マクロンと大方の予想通り極右政党国民戦線のマリン・ルペンが決選投票に残った。
 フランス政界の色物としてガヤ担当であった父のジャン=マリー・ルペンが決選投票に残った2002年のフランス国民の驚愕と焦燥とは打って変わって、マリン・ルペンが決選投票に残ることは、フランスの”良心的”な人の間では不本意ながら織り込み済みだった。本名のマリオンではなくフランスのお国カラーであるマリン・ブルーのマリンに名前を変えるイメージ戦略を持てるマリン・ルペンは、自身や国民戦線をフランス政治に介入する思想を持ち得る政治家であり政党であるとちゃんとマーケティングする能力を持っていた。

 ブルジョワ階級出身で元投資銀行員のマクロンは、子供たちを相手にしたC8という局の番組に出演した時に、フランスの標語である「自由・平等・博愛」を引き合いに出し、右派は国民の自由を尊重し不平等には目を瞑る、左派は人々の平等に重きを置き、それに伴う不自由さは仕方なしとする「僕の主義はその両方を少しずつ足して博愛を目指す」と主張した。うまくまとまってはいるが、本当のところよくわからない主張がマクロンのイメージそのもののようだった。
 ゴシップ誌は一時、国営ラジオ局のCOEを務める40歳の濃厚イケメン、マチュー・ガレがマクロンの本当の恋人であると書き立てた。その前からインテリ層でも保守層でも、マクロンがマザコンでホモセクシャル、もしくはバイセクシャルであることはまことしやかに語られていたらしい。このことは当然、妻のブリジットが25歳年上であることからくる噂話だったが、保守層はオープンにさえしなければ見なかったことにするし、オープンな考えを持つ層は逆に夫が25歳年上だったらそんな噂さえ立たないはず、と怒りの矛先をポリティカリーコレクトネスに向けたので、特にマクロンのマイナスにはならなかったようだ。

 結果66%超えの得票率でエマニュエル・マクロンが大統領に当選した。だが史上最年少や既成政党外候補など、革新的要素があるにも関わらず、今回の選挙戦は真っ最中も結果が出たあとも盛り上がりに欠けた、という印象が拭えない。私の周りは左派的思想の人が多かったが、そうでない層でも多くの人の不満の内容は「最悪の結果を避けるために自分が支持してない人に投票するのはもううんざり」というようなものが多かった気がする。

 フランスでは国民に政治参加意識が全般的に強い。大統領からして自分たちの投票が直接結果になる繋がるシステムだし、政府が新たな法案を通そうとした時にデモが起き(まあ大抵の場合起きる)、その規模が大きければその法案は引っ込められたりする。だから、デモに参加するのもしないのも自分の政治的意思表示であり、皆意味のある行為としてけっこう真剣に捉えている。そんなフランス人からすると自分の意思が反映されない消去法での投票は我慢ならないのだろう。そんな不満たらたらの国民もマクロンの内閣組閣にはほぼ満足のようだ。内閣中50%を女性にし、なおかつオランド政権より重要なポストに女性を配置。左派、右派のバランスも良く経済系は右派、労働系は左派、そしてそれぞれの分野の専門家をポストにつけるなど、メランションが挑発的に「ずる賢い」と評価するほどの組閣ぶり。そして目玉は国務大臣兼環境移行・連帯大臣という重要なポストに環境保護活動家ニコラ・ユロを引っ張ってくることができたことだろう。ミッテラン時代から大臣にと請われては断り続けてきたユロがおそらくタイミングが合ったという理由で大臣職に着いたことは大きな売りになる。フランス議会総選挙を6月に控えて第一関門はクリアといった感のあるこの政権が、文句の多いフランス国民のお眼鏡にかなう政治が本当にできるのか、投票権のない私もじっくりと見ていきたい。

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