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interview with OLD DAYS TAILOR

interview with OLD DAYS TAILOR

在りし日を紡ぎ仕立てる音と言葉

──オールドデイズテイラー、インタヴュー

取材・文:柴崎祐二    Jun 27,2018 UP

ジェームス・テイラーやブルース・コバーンなどのフィンガー・ピッキングで歌う人たちの演奏を聴いたときに、「こんな風に弾き語りできたら最高だよなあ」って思ったんです。それでジェームス・テイラーを音楽的に結構研究して。 (笹倉)


OLD DAYS TAILOR
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アルバムの楽曲の話に入っていければと思います。ここ近年、笹倉さんはライヴを見に行くためだけに渡米するほど、ジェームス・テイラーにハマっていると伺っています。先ほど話にあったとおり、このアルバムでも各人のプレイ含め楽曲自体にもそのテイストが色濃く反映されていると思います。彼は単に「好きなミュージシャン」という以上の存在なんでしょうか?

笹倉:そうですね。僕がこれまで飽きないで音楽をやってこられた原動力です。10代の頃からずっとニール・ヤングを聴いてきたんですが、ニール・ヤングのプレイ・スタイルに飽きてきたというか(笑)。もちろん彼の音楽は素晴らしいんですけど、やっぱりひとりでライヴを演るとき、ニール・ヤング的表現だと曲やノリの面でできることがかなり限られてくる。その点、ジェームス・テイラーやブルース・コバーンなどのフィンガー・ピッキングで歌う人たちの演奏を聴いたときに、「こんな風に弾き語りできたら最高だよなあ」って思ったんです。それでジェームス・テイラーを音楽的に結構研究して。いまはYouTubeでどう弾いているかも大体見られるけれど、あんまり僕がインターネット派じゃなかったので、耳コピをして……

ジェームス・テイラーのギターを耳コピするのは難しそうですね。

笹倉:ベースからコードを追いかけていって。そしたら意外と簡単なコードだった(笑)。

そこからいまや外国まで追いかけるくらいにハマっているってことだと思うんですが、気づいたらドンドン魅せられていったということなんでしょうか?

笹倉:とにかく聴いていると幸福感がすごいんですよね。

なるほど。ジェームス・テイラーの魅力って実はとても言葉にしづらいと思っていて……。僕も聴けば瞬時に「最高だなあ」と思うんですけど、それ以上に具体的な言葉を紡げないというか。コード・プログレッションも洗練されているし、ハーモニー感覚も繊細。朴訥としたクルーナー・ヴォイスの魅力……各論的にはいろいろあると思うのですが。

笹倉:彼はまず、歌のピッチがめちゃくちゃ良いんですよ。圧倒的に上手い。複雑な音楽性とかいろいろあると思うんですけど、単純に音楽として素晴らしく完成度が高いんですよね。

そうですね。たとえシンプルな弾き語りだとしても異常なほどにウェルメイド。

笹倉:「下手だけどいいよね」とかそういう次元ではなくて、ただ単純に「良い」っていう。

岡田くんと谷口くんのふたりにとっては、ジェームス・テイラーってどんな存在ですか?

岡田:しばらく聴いていなかったんですけど、今回久々に聴き直しました。個人的にAORにハマってたことあって、特に70年代半ば以降の作品とか素晴らしいなあって改めて思ったり。それと、ジェームス・テイラーって似た人がいないなと思って。あんなに売れているのにフォロワー的な人がいないんですよね。

たしかに。兄弟たち……たとえば弟のリヴィングストンも似ているようでやっぱり違うしね。

岡田:兄のアレックスはぜんぜん違うし。

谷口:妹のケイトも違うし。

岡田:誰も真似しないというか、おそらく真似できない。今回彼の音楽を下敷きに制作してみたら本当に難くて。曲の作りもそうだし、演奏も何も演っていないよう思わせつつああ聴かせるなんて簡単なことではない。あそこまで普通にいい曲なのにオンリーワンな存在って他に浮かばないなあ、って思います。

決してトリッキーということではないのに。

谷口:そうなんです。でもやってみると難しい。

岡田:極端な話、スティーリー・ダンの方が簡単じゃないかと思います(笑)。

谷口:譜面化できない難しさみたいなのもあると思うんですよね。スティーリー・ダンは譜面にすればMIDIでも演奏できると思うんですけど、ジェームス・テイラーの音楽はおそらくMIDIでは再現できない。しかし彼自身は何を聴いてきてああいう音楽を作るようになったのかがよくわからないですよね。

岡田:ニュー・ソウル以前なのにニュー・ソウルっぽい感覚があるよね。

笹倉:そういえば「ジェームス・テイラーが影響を受けたサウンド」っていうプレイリストがAppleMusicにあったな……(iPhoneを取り出す)

岡田:(プレイリストを見ながら)サイモンとガーファンクル、ビートルズ、バッファロー・スプリングフィールド、エリック・アンダーソン、レッドベリー、ロネッツ……

う~ん、たしかにそこら辺に影響を受けているっていうのも分かるんだけど……ジェームス・テイラーのあの独特の洗練に直接的につながらない気が……67年にダニー・クーチと一緒に演った音源でその後発掘されたフライング・マシーンの音源とか聴いても既に洗練されているんだよね。ラヴィン・スプーンフルなどのハーモニー、アンダースンポンシア系のプロの作家っぽさ、あとはフレッド・ニールとかのジャジーなフォーキーさ、そういうものが融合している感じが……。

岡田:時代的にもフォーク・ロックとかに影響を受けると普通はサイケになりそうだし、本人もめちゃくちゃジャンキーだったのに曲はまったくもってフレッシュっていうのがよく分からない。見た目もすごく繊細そうでシャープで……モンテ・ヘルマンの『断絶』に出ているジェームス・テイラーの目つき、あればヤバイ(笑)。

なんだかジェームス・テイラーの話ばっかりになっちゃいましたけど(笑)……笹倉さんは日本語の自作詞をそこに載せる。アルバムを聴くと簡単にやっているように聞こえるかもしれないけど、実際はすごく大変なんだろうな、と思いました。

笹倉:メロディーから作るわけですけど、音節的にぜんぜんうまく日本語詞が乗らない。言葉の意味の面でも、日本語ならではの伝わり方がうまくメロディーにハマらなかったりします。

たしかに直接的にロックっぽい……わかりやすく言うと仮に内田裕也的な歌詞を乗せたらすごい珍味なものになってしまいそうですよね(笑)。そう思うとやはりはっぴいえんどというのは先駆的という意味でも偉大だったと思うんですけど。

笹倉:そうですね。

今後はさらに音楽への向き合い方をいちばん純度の高い形に持っていきたいなって。そういうところにもう一回立ち返りたいなって気持ちがあるんです。だから自分の見え方をビジネス的にどうしていこうとか、いまはぜんぜん興味がない。 (笹倉)

今作でもいろいろなトライを経てこうなっていると思うんですけど、非常に上手く日本語が乗っていると思いました。我々がネイティヴだからというのもあると思いますが、日本語って言葉のチョイスによって意図していた以上に意味を発揮してしまい、それに他の要素までが支配されてしまうということがあると思うんですけど、この作品ではそれが周到に避けられているなと感じました。例えば、“過ぎたことのように”のなかでタイトルをリフレインするところとか、割とインパクトのある句が繰り返されているはずなのに、いい意味で音に埋まっている。大人の技巧を感じました。匠の技(笑)。
岡田くんと谷口くん作の曲についてもお話を聞かせてください。まず岡田くん作“午後の窓”。

笹倉:森は生きているの頃の曲なんだっけ?

岡田:元々は森は生きているの最後の方にライヴで演っていた曲ですね。

これを持ち込もうと思ったのはなぜ?

岡田:笹倉さんに「なんか曲ないの?」って言われて。僕のソロ・アルバム用にも録っていたんです。森は生きているのヴァージョンとソロ・アルバムのヴァージョンはお蔵入りしていているし、ちょうど増村くんが歌詞を書いていたし、このバンドで違うテイストのものをやってみたらどうかなって思って引っ張り出してました。

これはジェームス・テイラー的世界とは違って、若干『ロングバケーション』ぽさもあって。岡田くんの趣向が反映されつつ、しっかりバンド感もあって。ヴォーカルも岡田くんが担当して……

笹倉:いや、これ僕の声です(笑)。

え!? 岡田くんの声にそっくりじゃないですか?

谷口:似てますよね。僕も最初歌入り版が上がってきたとき「ヴォーカル、デモのまんまじゃん」って思いました(笑)。

笹倉:僕と優河ちゃんの声をユニゾンで重ねているんです。

なるほど! それでこの声の質感になっているのか……面白いなあ。
そして谷口くん作“アフター・ザ・ガール”。すごく谷口くんっぽいなあって思いました。わ、ジェイホークスみたいだ! って(笑)。

谷口:これも元々は、岡田くんから森は生きているの最後の方に「なんか曲ないの?」ってメールが来て、そのとき出した曲ですね。

岡田:そのときは結局ボツにしたんですよね(笑)。

谷口:歌詞もメロディーもなかったから、いま思えばそれで提出するっていうのもどうかと思うんですけど(笑)、どこかで使いたいなと思っていたので、今回メロディーも作って増村くんに歌詞を書いてもらって。

一瞬のホッとする感じが良いですねえ。バンドとして、ふたりの曲が入ることによって音楽性の幅が出ていて良いなと思いました。あと、大滝詠一のカヴァー、“恋の汽車ポッポ”。これは笹倉さんの選曲?

笹倉:そうです。これも実はジェームス・テイラー・スタイルなんです。ジェームス・テイラーがチャック・ベリーの“プロミスド・ランド”をカヴァーしているものがあって。そのアレンジを参考にしています。自分でこういうテイストの新曲を作るのもアリかなって思ったんですけど、バンドのあり方として、かつての音楽を紡ぎ直すというスタンスも大事にしたかったから、日本の名曲を違ったスタイルで継承するっていうのも良いなと思ったんです。ジェームス・テイラーもそうですけど、シンガー・ソングライターでも昔の曲を継承するっていうスタンスは割と欧米では一般的だし、自分もそういうのをやりたいなあと思った。

いまおっしゃった何かを継承していくという意識はOLD DAYS TAILORというバンド名にも通じますよね。ブックレットの最初のページに笹倉さんによるメッセージが入っていますよね。「在りし日を紡ぎ仕立てることで生まれた、音や言葉が……」という。ただ過去を向くのではなく、何かを継承していこうとすることの貴さ、そういう気概を感じます。一方で“過ぎたことのように”では「なにもない海を見ていると なぜだか ありもしない記憶に 胸がきしむのです」「波間に見えた舟の 知るはずのない痛みを 覚えている」という、体験してないことを体験していたことのように思う視点というのもある。過去といま、というものの繋がりへの繊細な視座を感じます。このアルバムの制作中、時間が過ぎていくことや、自分が移ろっていくことと、そういうものに対して感覚がとても鋭敏になっていたということなのでしょうか?

笹倉:そうですね。でも制作中だけというより、昔からずっと変わらない感覚かもしれないな。

谷口:たしかにguzuriの周りのあの環境で過ごしていれば、そうなるのかも。

やっぱり笹倉さんから見て「世の中もうちょっと落ち着けよ」って思いますか?

笹倉:いや、そんなことはぜんぜん思わないですね。

都会から離れた環境にあえて自分をおいて時間の流れから身を閉ざすという人もいる思うんですが、そういう感覚ではないと。

笹倉:そうです。

そうか、元々の生活がそこから始まっているわけですものね。だからこそ、アルバムに描かれている光景は、ゆったりしているところもあるんだけど、一方で現代に生きている人が皆感じている時間感覚があるのかもしれないですね。その不思議なバランス感は笹倉さんの音楽の大きな魅力のひとつだなあと感じます。

笹倉:都会も田舎も、どちらも僕は好きですね。

岡田くんと谷口くんのふたりはどうですか? 都会から逃げ出したい願望というか……。

岡田:僕も以前まで福生に住んでいていまは国立だから、そんなバタバタしている感じじゃないですね。

谷口:僕も都心在住ってわけじゃないので。

ああ、そう考えると、OLD DAYS TAILORのメンバーは武蔵野中心にみんなサバーバンな人たちでもあるんだね。そういうみんなの感覚がじんわり出ている気がします。
さて、いよいよリリースになりますが、今後の展望は?

笹倉:この先のことを考えるとなんだか疲れてきてしまって……(笑)

いろんな人にどうやって聴かれるかを想像すると、ってことですか?

笹倉:いまはあんまりそういうことを考えないで音楽に接したいんですよ。ミュージシャン主導でガシガシ宣伝のこととかも考えなきゃやっていけない時代だとは思うんですけど。音楽制作を続けていくなかでもサイクルがあって。いろいろ意識を高く持ってDIYでやっていかなくては、って思うときもあったりするんですけど、いまはもう高校生くらいの気分。

どういうことですか?(笑)

笹倉:これまでずっと自分なりに言葉と音楽の関わりをひたすら考えながらやってきて、今回のアルバムはそのひとつの結果ということになると思うんですけど、今後はさらに音楽への向き合い方をいちばん純度の高い形に持っていきたいなって。そういうところにもう一回立ち返りたいなって気持ちがあるんです。だから自分の見え方をビジネス的にどうしていこうとか、いまはぜんぜん興味がない。でも立ち返るためのいろんなことを考えるとまたそれはそれで面倒くさくて疲れてしまうんだけど……(笑)

このアルバムもそういう気持ちに立ち返りたいというのを念頭に作ったんでしょうか?

笹倉:そうですね。

だからなのか、純粋な音を奏でる歓びに溢れていると思いましたよ。

笹倉:ありがとうござます。だからこそ、こういうことは考えたくないんだけど……やっぱりもちろんたくさんの人に聴いてもらいたいし、売れてほしいな、っていうのはありますね。あれやこれや僕が考える必要がなくなるように(笑)。

7/11にはレコ発公演も予定されていますね。ライヴはどんな感じになりそうですか?

谷口:レコーディングでも、重ねなしのリアルなバンド・サウンドそのままにライヴで再現できるように作られた作品なので、ぜひアンサンブルの気持ち良さをを聴いてほしいですね。

笹倉:なかなかライヴを頻繁にできるバンドではないので、7/11、ぜひ来てほしいです。

楽しみにしています。今日はありがとうござました。

取材・文:柴崎祐二(2018年6月27日)

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Profile

柴崎祐二/Yuji Shibasaki柴崎祐二/Yuji Shibasaki
1983年、埼玉県生まれ。2006年よりレコード業界にてプロモーションや制作に携わり、これまでに、シャムキャッツ、森は生きている、トクマルシューゴ、OGRE YOU ASSHOLE、寺尾紗穂など多くのアーティストのA&Rディレクターを務める。現在は音楽を中心にフリーライターとしても活動中。

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