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interview with CUT CHEMIST

interview with CUT CHEMIST

ヒップホップはインダストリルへ

──カット・ケミスト、インタヴュー

野田 努    翻訳:バルーチャ・ハシム   Sep 10,2013 UP

ヴァナルとテープは、20世紀においてもっとも好まれたフォーマットだった。ヴァイナルは音楽を保存する上でもっとも優れたフォーマットだけど、昔と違って音楽をシェアするもっとも簡単な方法ではなくなった。


Cut Chemist Presents Funk Off - Vox populi! And Pacific 231
RUSH! PRODUCTION/AWDR/LR2

Amazon iTunes

■ヴォックス・ポプリ!とパシフィック231以外にもレアなレコードをたくさん見つけていると思いますが、この先、何らかの形で発表する計画はありますか?

C:このジャンルの音楽はコレクションしはじめて何年も経ってるので、ヴォックス・ポプリ!とパシフィック231に似たグループはたくさん見つけてきたけど、彼らほどのレヴェルのグループはなかなか見つからない。そういう意味で、とてもユニークなコンピレーションに仕上がって嬉しい。

■日本のこの時代の音楽で探しているものはありますか?

C:こういうタイプの音楽は世界中で探してるよ。

■『ファンク・オフ』のブックレットでは、当時のジンのヴィジュアルも大々的にフィーチャーしていますが、すごく良いと思います。こうしたジンなんかも蒐集しているのでしょうか?

C:どの時代の音楽をコレクションしているときもそうなんだけど、カセットやLPに付録でついてくるアイテムが大好きなんだ。1988年に、8x10インチの写真入りのマスターズ・オブ・セレモニーのLPを入手してから、付録アイテム付きのレコードにハマってるんだ。

■『ファンク・オフ』のフロント・カヴァーにどのヴィジュアルを使うのかに、他にもいくつも候補があったことで、迷いはありせんでしたか?

C:たしかに選択肢はたくさんあったけど、このアートワークにコンピレーションのすべての音楽的要素が凝縮されてると思った。ダークでありながらもユーモア・センスが注入されていて、ちょっとバカカバカしくて、女性性と男性性の両方の要素も入っていた。基本的に、この音楽性がそのまま視覚的に表現されてると思ったんだ。�

■ヴォックス・ポプリ!はピエール・シェフェールのミュージック・コクレートからの影響もあるし、あなた自身ライナーで指摘しているように、ヒップホップはピエール・アンリから多大な影響を受けていますが、あなた個人、現代音楽(アヴァンギャルド)に対する興味はどの程度あるのでしょうか?

C:コンセプチュアルな意味で興味がある。僕はそういうアヴァンギャルド系のコレクターだったことはないけど、アヴァンギャルド系に影響されたふたつのジャンルにいまなら親しみがあるから、コレクションする可能性は高くなった。僕のコレクションのもっとも古いレコードは、50年代半ばから後半のものなんだ。それよりも古いレコードをまだ集めたことはない。

■ヴォックス・ポプリがテープでこすって(スクラッチのようなことをやって)ますが、ああしたプリミティヴなアナログ機材を使っての工夫は、現代のラップトップ音楽への批評としても見せることができるんじゃないでしょうか? 

C:このコンピレーションを通して現代の音楽を批評してるわけじゃない。ヒップホップとミュージック・コンクレートが実は近い存在であり、同じアプローチで音を操作しているということを伝えようとしてるんだ。その類似性が僕の興味をそそった。実はこれまでの僕のすべての作品においてリール・トゥ・リール・テープを使ったことがある。最新のアルバムでは、ドラムをレコーディングするために24トラックのリール・テープを使用したばかりだよ。"Funk off megamix"でもその模様はチェックできるよ。

■レコード・コレクターとしてのあなたの哲学を教えていただけますか?

C:まずは第一に音楽を大切にすること。僕にとってメディアムは二の次なんだ。レコードコレクターのなかには、音楽そのもよりも物体としてのレコードを大切にしている人がいるけど、僕はそういう考え方ではないよ。

■コレクションに興味をなくして、売ってしまったことはありますか?

C:絶対にないね!

■レコードとは20世紀の産物であり、ノスタルジーだと思いますか?

C:それはあるね。どの世代にももっとも好まれたメディアムがあると思うんだ。ヴァナルとテープは、20世紀においてもっとも好まれたフォーマットだった。ヴァイナルは音楽を保存する上でもっとも優れたフォーマットだけど、昔と違って音楽をシェアするもっとも簡単な方法ではなくなった。

■最近アメリカのインディ・シーンではアナログ盤とカセットテープでのリリースが増えていますが、良い傾向だと思いますか?

C:ノベルティとアーカイバルの意味では良い傾向だと思う。テープは時間の経過と共に磁気を失ってしまうけど、ヴァイナルは大切に保管すればもっと寿命が長いんだ。ヴァイナルの需要が高ければ、音楽は商品としてもっと売れるので、それは良い傾向だよ。これからは、ファンが音楽に投資する気持ちがないといけないんだ。ヴァイナルはそれを実現させるための最善の方法だと思うんだ。

■今回の『ファンク・オフ』は、イタリアのコレクターを通じて知ったそうですが、このようなコレクターのネットワークとはいかなるものなのでしょうか?

C:こういうタイプの音楽のコレクターのネットワークはたしかにあるよ。そのイタリアのコレクターはニューウェイヴ系のコレクターではなかったけど、ユニークな作品だったからこのレコードを持っていた。彼はあらゆるジャンルのレコードを集めて売ってたんだ。彼はとくにプライヴェート・プレスのユニークなレコードを何でも集めてる。

■いま、コレクションは何枚ぐらいありますか? そして、どのように整理しているのでしょう? 日本にもコレクターは多くいますが、あなたがレコードの管理にもっとも気を遣うのはどんなところでしょう?

C:レコードの枚数は知らないけど、レーベルごとに整理している。レーベルで整理できないレコードは、世界のどの地域でリリースされたかというカテゴリーで整理するんだ。アーカイヴとして集めるレコードとは別に、頻繁に聴いたりプレイするレコードの保管には気を使ってるよ。

■最後に、今後のあなたの予定を教えてください。

C:このコンピレーションのリミックスをリリースしたいのと、このカタログを今後どのように利用できるかをさらに探っていきたいね。


 ヴォックス・ポプリ! のアクセル・キルーの母親は、1958年から1962年にかけてピエール・シェフェールの元で働いていた。父親は映画業界で活動1952年に出版された『映画のシュルレアリスム』の著者でもある。ヴォックス・ポプリ! は、「民衆の声」という意味。

質問:野田努(2013年9月10日)

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