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interview with tofubeats

interview with tofubeats

走る・走る・走る

──トーフビーツ、インタヴュー

取材:野田努    写真:小原泰広   Sep 28,2018 UP

「政治的になりたくない!」ってあのときも言っていましたけど、ただならざるをえないみたいな情勢というか、普通にこんな悪いニュースとかが入ってくる生活をしていて、それに対してなんも思わないほうがおかしいみたいなそういうことはこのときくらいから思いはじめました。そういうことを音楽とかを作っている人は思っていないんかな? みたいな。

トーフビーツはちょうど時代のターニング・ポイントというところからスタートしているから、ただ音楽を作っているということ以上にいろんな……。

TB:諸問題を(笑)。

君は諸問題を抱えている青年なわけじゃない(笑)?

TB:でも諸問題はみんな抱えているはずなんですけどね(笑)。

たしかに(笑)。でも、トーフビーツは、ひとつは音楽ということに対する諸問題を抱えていると。例えば自分が出てくるひとつの突破口でありツールとして有効だったインターネットというものが、しかし同時にやっぱり音楽の細分化を加速させているわけであって、それはトーフビーツが目指すところのポップ・ミュージックというものの存在を、やはりどこかで阻むものとしても機能してしまっている。それだけでもすごくアンヴィバレンスを抱えながらこの数年間、作っては出し続けているんだよね。今回はもう何枚目になるの?

TB:今回はメジャーで4枚目です。

じゃあ『lost decade』とかは?

TB:『lost decade』と合わせると5枚目ですし、アルバムを出すのは前の諸名義と合わせると、10枚目くらいと言ってもいいですよ。(笑)。

いろんなものが細分化されて、昔のようなポップスというものが生まれづらくなっている今日において、トーフビーツがとくに問題視しているものはなんなんだろうか?

TB:やっぱりそれは、音楽と音楽以外のものが悪い意味で混同されているということがけっこうあると思います。それこそ有名な人とコラボをしたら曲が……。これけっこう難しい話で、例えばぼくはいろんなゲストの方とやらせてもらいましたけど、結局売り上げって、ゲストが誰やから大きく変わるということはなかったんですよね。ただ、テレビに出たら曲が売れるとか、そういうことってなんとなくわかるんですけど、そんなことかな? みたいな。今回もすごい露出がいっぱいあって、そうなるとそういう数が回転していくとか、難しいですけど。つまりは聴いている人が判断していないということじゃないですか。自分が好きかどうかというのを判断していなくて、判断を人に委ねているという傾向で、これは昔からあることではあるんですけど、それが強まっているということがポスト・トゥルースとかだったりするわけじゃないですか。自分で見た情報から判断できないとか、自分で音楽を聴いて自分はこの音楽を好きか嫌いかということを自分で考えないみたいな。そういう判断力とかひいては、想像力みたいなことやと思うんです。そういうことが減っているということが、全体的な諸問題みたいなものの起源である気がするんですよ。

その自分で判断できないってことは、同調圧力的なもの?

TB:同調圧力ともまたちょっと違うんですけど、単純にこれは誰かが言っているから正しいみたいな。

売れているから買うみたいな?

TB:それもそうですし、例えば偉い人が言っているからこれは正しいとか。そういうことの強まり。あとは何かを判断するときに2つ3つ情報を集めて自分のなかで考えるとか。そういうことをできない人が増えているのか、ぼくの目についているのかわからないですけど、そういうイメージはめっちゃ強いし、世のなかの人もそうやって人を扱う。上のほうのひとも若い世代はそんな判断をできないと思っているというか。

なめているんだ。

TB:なめた態度をとっているとはめっちゃ思う。人を馬鹿にしているということプラス、あとは判断ができないっていう。だから判断できないと思っている上の人と、それこそコピーコントロールCDとかもそうじゃないですか。客のことアホやと思っているみたいな(笑)。ひとに尊敬がないというのは想像力の話と一緒やと思うんで、結局は想像力と判断力みたいな。これはぼくのなかだったら、アートとかみたいなものをやることによって人っていうのは学ぶことができると思うんですよね。ぼくは音楽をやっていちばんよかったなと思うことは、絶対に会わないようなひとと会うことが増えたことなので。そういうことを音楽を通じて自分は学んできたので、音楽がそういうツールの代表格みたいになっているのはキツイことではありますね。

トーフビーツには見えている風景が大人たちには見えないってことはあると思う。ところで、現場にいくのはDJがメインなの?

TB:DJを増やしています。ライヴばっかりにならないようにしたいなというのはあります。

どんな感じ?

TB:いまめっちゃおもしろいですよ!

それは興味があるな。

TB:それこそDJをやっていたら「トーフさんの曲かけて!」とか言ってくる人もいますよ。

やっぱ"水星"がアンセムっていうか、いちばん盛り上がるの?

TB:いや、いまは"Lonely Nights”っす。いまめっちゃ自分の曲かかってんねんけどなぁと3日前も思っていました。DJでインストの自分の曲をかけていて、しかもホテルのラウンジでやっていて。「トーフさんの曲かけて!」って女性がずっと言ってくるんですよ。なんか悲しいなぁと思いながら、結局自分の曲がめっちゃ立て続けに10分くらいかかっていて。

どのくらいの割合でやっているの?

TB:DJは週一でやっていますね。年間80本から100本弱くらいぼくの現場はあります。

じゃあ全国。

TB:全国、週一で。ライヴももちろんやるんですけど、ライヴで地方に行っても2回目で行くときはDJとか、昼夜で行くときは夜DJさせてもらったりとか。

お客さんはやっぱり大体20代?

TB:そうですね、でも上の方もけっこういますね。

でもやっぱり20代という印象があるよね。

TB:多いと思います、大学生とか社会人入っているくらいの。東京だったらそうすかね。地方行くともうちょっと年齢層が上がる。

お客さんの層というかそういうのが変わったという印象はある?

TB:年々普通のクラブとかに行かない人は増えていますよね。クラブに行ったことがない人がぼくらのイベントで初めてクラブに来るみたいなことはあると思います。

すごく良いことだね。

TB:ただ、そこでクラブの遊び方がわからない人がいる。だからぼくの曲がかかっていないときにどうするのかみたいな問題が発生している(笑)。

まあ、それはポップ・フィールドでやっている以上は仕方がないというか。DJはコンサートじゃないし、DJとしてはいろんな音楽を楽しんでもらいたいだろうし。

TB:そういうときにぼくが自分の曲をバンバンやるというのではなくて、DJというものをある程度は見せていかないと、ぼくの曲以外の時間楽しめなくなっちゃうというか。あとは、自分が行っていたクラブがそんなクラブじゃないから、もうちょっとちゃんとパス回しで朝まで楽しめるみたいな、そういうものが残れば良いんですけど。そこをいまぼくらもバランスをみながらやっている感じですね。自分の曲はとりあえずDJでかけるけど、DJ用にヴォーカルを抜いたやつにしたりとか、ちゃんとそのときの新譜は絶対かけるようにしたりとか、クラブ・ミュージックのバランスを見ながらトライしている感じですね。

でもトーフビーツがクラブ・ミュージックの入り口になっているということはすごく良いことだと思う。クラブの主役はやっぱ20代〜30代だと思うから。

TB:そうっすね。それはけっこう意識してやるようにしていますね。

それでも頑張ってはいるし、人気が出てきたし、トヨム君もデビューアルバムが出るし。

TB:頑張っていますね彼も。あとはいまはちょっと下が元気。それこそパソコン音楽クラブとか。

世代は違うけど、食品まつりもすごいよね。

TB:上ですけど、食まつさんはすごいっすよ。それと2、3個下くらいの子がいますごく頑張っているイメージがあるので、ぼくらとはちょっと違った伸び方をしそうなんで楽しみですね。

そういう明るい兆しもあるなか、今回のアルバムは初めてのゲストなしのソロになって、しかも音楽的にはポップスとして洗練されていると思ったんだよね。

TB:初めてのソロ(笑)。『FANTASY CLUB』のときと違ってポップスにちゃんと戻って来たとは思います。

そういう意味ではすごくアプローチしやすいアルバムになっていて、背景には『ニュータウンの社会学』というコンセプトがあるにせよ、ポップとしてはすごく上手くまとめられていると思ったんだよね。ぱっと聴いたときにも思ったし、何回聴いていてもそう思う。とくに"NEWTOWN"っていう曲が最高だった。

TB:『FANTASY CLUB』のときの反省として、コンセプチュアルで難しいことを言い過ぎたがゆえにみたいなことはめっちゃあったんで。シンプルなモチーフで。

そこまで難しいことを言っているとも思わないけどね(笑)。難しいことを言っているのはOPNみたいな人でしょ?

TB:『FANTASY CLUB』のときにぼくはお客さんを馬鹿扱いしないということを最大限しようと思って、インタヴューとかでも誠意を尽くしてやったんですけど、やっぱり難しいというリアクションは世のなかから返ってきた。「これ難しいのか?」ということは思ったんですけど。

その「難しい」っていうのはあるよね。「洋楽って難しいっすよね」とか言われたり(笑)。

TB:そういう思考を停止しているのがいちばん腹立つみたいな。それは考えることを辞めているやん。考えてからわからんかったらええけど、聴く前に難しいとか言うなよとは思うんすけど、そういうことがあったので入り口としてはけっこう大胆な感じにしたくて、こういうでっかい文字とか。そういうものはありつつも作る制作半径はこのときのちっちゃい感じでやろうみたいなことがコンセプトです。これを作るときの制作上の課題でしたね。

ポップ・ソングが入ってる感があるもんね。

TB:タイアップがちゃんとあったもので(笑)。

そうはいっても、"RUN"もトーフビーツらしいなという感じで、これを1曲目にもってくるというのがトーフビーツの情熱を感じるよ。

TB:そうですよぉ。ぼくはけっこう情に厚い人間なんで。基本的には(笑)。

たしかに前作から継承されている部分はあるんだけど、"ふめつのこころ"とか、バラード調の"DEAD WAX"みたいな曲もあって。映画の主題歌"RIVER"もすごく良い曲で、メランコリーとポップさとのバランスがとれている。

TB:嬉しいです。

だから、『FANTASY CLUB』のときのアンバランスさを自分で対象化して、さらにポップスということを意識したのかなと。

TB:今回のアルバムは緩急がはっきりしているので、ポップスはポップス、クラブ・ミュージックはクラブ・ミュージックみたいな住み分けがわりとしっかりしています。わりとシャキッとした展開には。

そうだね。シャキッとしている。"YOU MAKE ME ACID"みたいなハウシーなトラックも印象的だよね。

TB:そうっすね、中盤の流れが4つ打ち4つ打ちできて、8曲目("NEWTOWN")でいきなり抜けるみたいな感じなんで。

取材:野田努(2018年9月28日)

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