「P」と一致するもの

 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下、OPN)ことダニエル・ロパティンによる11作目のアルバム『Tranquilizer』が11月21日にリリースされた。その前夜、原宿に期間限定で展開されているBEATINK Listening Spaceでは先行試聴イベントが開催。一足早く、なおかつ高音質で『Tranquilizer』のサウンドを体験するために、OPN愛に溢れるリスナーが集った。
 高音質というのは、BEATINK Listening Spaceに設置された、「正確で曇りのない音」をコンセプトに掲げるドメスティック・スピーカー・ブランド、BWVによる最高音質のスピーカー・システムのみに由来するわけではない。今回は特別にオーディオ専門家視点で高音質の録音メディアの最高位とされるオープン・リール・デッキが導入。このオープン・リール・デッキは、スイスの老舗オーディオ・メーカーであるREVOX社製で、プロの現場でも親しまれてきた名機の最新型である。
 いわゆるヴェイパーウェイヴと呼ばれるジャンルの代表的アーティストとして名前を挙げられることも少なくないOPNの最新作を、このようなハイエンドな環境でリリースの前夜に聴くことに、この日、この場所に集まったリスナーがどのように価値をつけるのかはそれぞれの物差しに依るだろうが、とはいえ、特別な時間/空間だったことは間違いない。というのも、視聴前、視聴中と会場にはえも言われぬ緊張感が充満していたのだ。おそらく、それは見ず知らずの人とまだ聴いたことのない音楽を同じ場所で聴く緊張感というよりも、長いキャリアの中で様々なコンセプトを持って制作に取り組み、世界中のリスナーを知的かつ身体的に楽しませてきたOPNが作品に込めた意図を一聴して理解できるのだろうか、という自問によるところが大きいだろう。そこには要するに、ラーメンではなく情報を有難がって摂取しているというような状況が音楽にも往往にしてある中で、OPNの新作とほとんど情報のない状態で対峙する緊張感とスリルが立ち込めていたのである。

 視聴会は主催するビートインクのスタッフによる(おそらく、あえて作品そのもののコンセプトや背景に一切触れない)簡単な説明が終わるとすぐさまスタートする。ビートと呼べるものがほとんど存在せず、しかしカオスで、同時に美しい音の鎮座する前半。視聴会後のトークに登壇したOtagiriが触れていたように、オーディエンスはビートのない中でどこか節のようなものを見つけてかすかに揺れていたり(その揺れはそれぞれズレていたりもする)、じっと動かずに耳を傾けていたりと思い思いに楽しんでいたが、その掴めなさゆえだろうか、どこからどこまでが同じ曲というのもわからない状態だったのもあるが、場を支配している緊張感はむしろ膨らんでいたようにも感じる。
 オープン・リール・デッキの特性上テープの入れ替えで10分程度の小休憩が挟まれて、『Tranquilizer』の後半が再生される。後半、つまり終わりが見えてきているとはいえ、いつ終わるのかもわからない中でアルバムを聴くという行為は現代において極めて特殊で会場を覆う緊張感が途切れることは決してなかった。ただ、とりわけ終盤の激しいビートが登場し、アルバムが明確にクライマックスへと向かっていく段階では、その緊張の糸にほんの少し緩みが現れていたようで、視聴会を終えたリスナーの多くは安堵と満足感の混じりあったような表情を浮かべていたように思う。

 視聴会が終了すると、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEが主宰する、現代美術の展覧会とライヴを組み合わせたプロジェクト『獸(JYU)』などでアート・ディレクションやグラフィック・デザインを手がける八木幣二郎、社会的・政治的背景を帯びた音声や音響と音楽のあいだを往還する作品を制作する電子音楽家=Prius Missile、ラッパー/トラックメイカー/DJ として活動し『獸』にも出演するOtagiri がゲストとして登壇しトークがスタート。ここで重要だったのが、自己紹介より先にPrius Missileが『Tranquilizer』についてはっきりと「すごく音楽的」と評した瞬間だろう。筆者も含め、コンセプトや周辺情報を差し引いて、というかそういった情報の少ない中で作品に触れてまず抱いたであろう、「音楽として美しい、素晴らしい!」という感想を彼が代弁したことで、会場の緊張感は目に見えて崩れていった。
 その後、「到達していない未来から見た懐かしさ」のようなものを感じるという点でも共鳴しつつ、三者のトークが用意された資料に基づく“答え合わせ”にならず展開していったこともこのイベントを特別なものにしていただろう。それぞれが作り手としての視点とリスナーの視点を行き来しながら、『Tranquilizer』についての意見を交換していく。

 例えばPrius MissileはOPNを追いかけるリスナーの視点で最近の傾向をこう分析する。

「論じるよりも聴いた方が早いんですよね。例えば僕の大好きな『Replica』(2011年)は、その広告の音楽っていうルール、縛りをまず作って、それを音像に立ち上げるというような手法で制作されていて、何がどこからどうサンプリングされているかっていうのに論じ甲斐があるんですけど、特に最近のOPNのリリースに関しては聴くのがまず先。すごく絵画的というか、OPNの描いた情景をシェアしているような状態ですかね。その彼の文体がリリースを重ねる毎にアップデートされていて、それを追ってチェックしているような。この『Tranquilizer』はもっとシンセ・オタクとしてのOPNの、日頃作り溜めたアーカイヴ的なものという印象がすごくある」

 八木幣二郎は最新作のデザインと『Age Of』のデザインを比較してこう語る。

「OPNのジャケの話だと、『Age Of』ではDavid Rudnick(デヴィッド・ラドニック)という今の流行の一つのChrometypeの元祖のような人がやっていて。中世の音楽シーンを意識してあえて装飾的にロゴを作ったりしている人で。その次とかはちょっとサイケっぽくなって。今回のアルバムはElliott Elder(エリオット・エルダー)というロンドンの方がやっているんですけど、最近はブラック・ミュージック、ヒップホップ周辺でよく仕事をしている印象のある人なんです。彼がよくやるのは結構固めに組んだ文字をあえて印刷してスキャンして画像に取り込んでちょっと陰影とか紙のノイズ感とかを入れていくような手法で。そういう手触り感みたいなものを意識的に取り込んでいて、なおかつ高解像度のディスプレイで見られることを前提にしているから細かい文字もあえて使っていたりする。で、今回のアルバムを聴くと、細かい文字感とロゴっぽさってちょっと未来っぽく見えるんですよね。SFチックなデザインをあえてやっているんだろうなって」

 一方でOtagiriは手法が先か、デザインが先かという話題を登壇者に回しつつ、『Tranquilizer』から感じた羨ましさを紐解いていく。

「というのも私がイメージというものをあまり持ちながら創作をしたことがなくて、手法に寄っているんですけど、『Tranquilizer』はイメージと手法が一緒にあるような気がしたんです。イメージ先行は画家の場合だと「こんなこと描きたいのに、それが描けない、つらい」みたいな状況が起こる。手法が先だと、例えば私はヒップホップ的な、ラップ的なことやっているんですが、ヒップホップが一人称であることに昔から嫌悪感があって、誰よりかっこいいとか、金持ちだとか、強いとか、女の子にモテるとか、そういうのもいいんだけど、私はそういう人ではないし、もっと登場人物が勝手に喋ってくれればいいなと思っていた。だから今は6個世界を作って、世界ごとの主人公を作って。Chat GPTさんと協業しながらプロットを作って、その人たちがどんなことを喋るかというようなことをやっているんです。だから完璧に手法が先なんですね。と定義したときに、皆さんの話を聞いていて、イメージと手法が同時にあるようなものを羨ましい、それをやりたいって思ったんだろうなという気がしました」

 最後まで、共通する意見と、それぞれの視点が次々に現れ、示唆に富んだトークが展開されていった。そこには、みんなで集まって音楽を聴くこと、その感想を言い合うことの意義がたしかに存在していたのではないだろうか。トークは「明日別の環境で聴くのも楽しみ」「来年のライヴに行きましょう」といういわばありがちな締めによって終わるが、その頃には会場を満たしていた緊張感はすっかり溶け、代わりにそれぞれがそれぞれの視点でOPNの作品と向き合うことの尊さにも似た何かが漂っていた。それは紛れもなく、この特別な時間と空間の成果だろう。


 VINYLVERSEをご利用いただいているコアなユーザーの皆様にお話を伺う連載企画『ユーザーズ・ヴォイス』。今回で3回目となる本企画では、次は若い世代の声に耳を傾けたいと思い、白羽の矢を立てたのが「Kang」という名義でアカウントを運用されている23歳の中尾莞爾さんです。

 時代の主流とは異なるフォーマットであるレコードをあえて選ぶ。その選択の裏側には、どんな価値観や感覚があるのか。中尾さんの言葉を通して、レコード文化の“今”を少しでも浮き彫りにできたらと思います。


——こんにちは。中尾さん、今日はありがとうございます。 今回お声がけさせていただいたきっかけが、中尾さんが大学院でサブスク時代のレコードを研究されてるとプロフィールに書いてあったので、面白いお話が伺えるんじゃないかなと考えてお声がけさせていただきました。

中尾:はい。大変光栄です。ありがとうございます。
今は大学院修士1年なんですけど、2年間かけて研究していこうかなっていう感じで思っております。

——まず中尾さんがVINYLVERSEを知ったきっかけを教えてください。

中尾:はい、ele-kingで出しているVINYL GOES AROUND監修の『レコード復権の時代に』を読ませていただいて、内容がすごく面白かったのですが、その中のVINYLVERSEの記事を読んで、レコードっていう家の中にあるものをアウトプットするオンライン空間、そういうメディアって今までなかったなと思って、これはかなり面白いと思いまして、それで使わせていただきました。

——ありがとうございます。現在はどのように使われておりますでしょうか?

中尾:僕はコレクターって言うほど全然枚数を持ってなくて、ただ本当に買ったものをそのままアップしていて、今アップしているものがほぼ全部なんですけど、 レコードを買ってはVINYLVERSEに乗っけて、例えば友達と話をする時に、「俺こんなレコード持ってるよ」っていう風に画面で説明したりだとか 。あとはなんだろうな。それこそ自分で眺めて、「俺こんなん持ってたわ」みたいな、そういう確認をする時によく使わせていただいております。

——VINYLVERSEに何かしら興味を持たれているのであれば、その魅力ってなんでしょうか。

中尾:肌感覚の話になってしまうのですが、僕って音楽の話をするのがすごく苦手なんです。 例えば「好きな音楽は何?」って聞かれた時に自分の本当に好きなものを言えない。これって割と最近の若者全体に、この風潮があると思っているんですけど、その時にフィジカルを持っているっていうこと自体が自分の中での、 自信というか「その音楽を好きで、理解しているひとつの根拠になるな」という風に感じています。そういう時に、「こういうレコードを持ってるんだ」ってアプリ内のギャラリーを見せれば、その音楽のビジュアルを提示できるっていう点がとても便利です。あとはレコードの単純な物量であったり、「このジャケットのこのデザイン面白いよね」っていうところをすごく簡単に共有できるところ。それはインターネット空間でもそうですが、リアルの空間でも、実際にスマホの画面を見せながらそういったコミュニケーションを外側に開いていけるメディアとして魅力があるというか、自分みたいなタイプの人間にはめちゃくちゃありがたいと思っています。

——ご友人でも使われている方って結構いらっしゃるんですか?

中尾:そうですね。僕自身がVINYLVERSEをめちゃくちゃ広めていまして。「これめっちゃ面白いから使ってくれ」ってレコード持ってる人に言って回っています。それこそコメント機能がまだないので、人のギャラリー覗いては、LINEとかで友達に「これいいじゃん」みたいな。そういう事をやっていますね。

——それはとてもありがたいです。そんな中尾さんにとって初めてレコードを買ったきっかけって何だったのでしょうか?

中尾:レコードを買い始めたのは、大学1年生のときです。ちょうどその頃に横浜へ引っ越して、同時にサブスクも使い始めました。世の中的には、サブスクを使い始めたタイミングは、わりと遅い方だったと思いますが、使っていくうちにあんまり音楽をちゃんと聴けてないという感じがしました。というのも、月額1000円ぐらいで無限に何でも聴けるがゆえ、音楽が自分の中にうまく定着していないような感覚があって、自分のプレイリストを見ても、「なんだったっけこれ?」みたいな曲が増えてきてしまい、「もっとちゃんと聴きたい」と思って、レコードを買ってみたーーというのは1つ理由としてあります。やっぱり物として存在するのと、あと時空間が束縛されるので、しっかり聴かざるを得ない。 なので、音楽をちゃんと聴かせるメディアとしてはレコードって、今の時代にはとても貴重だなと思っています。おそらく、今、若者がレコードを買っている理由の一つにこういう視点も、もしかしたらあるんじゃないかなと思っています。

——ちなみに初めて買ったレコードって何ですか?

中尾:ディアンジェロの『Voodoo』が1番が最初ですね。当時は全然お金もなかったので、確か渋谷のフェイスレコーズで6000円ぐらいで売っていたものを、思い切って買ったのですが、そこでお金がなくなっちゃったので、それ以降1ヶ月間くらい食事はパスタばっかり食べてました。

——中尾さんがVINYLVERSEに上げていただいているレコードの中で、特に思い入れのある1枚ってありますか?もしあればその理由もお伺いできますか。

中尾:インク・スポッツのベスト盤ですね。基本的に僕はレコードはインターネットで買わず、リアルな実店舗に行って出会ったものを買うという探し方をずっとしているんですけど、ある時インク・スポッツが欲しくなって店を巡ったのですが、どこにもないんですよ。本当にどこの店に行っても。でも、どこを探していいかもわかんないし、ボーカル・グループなのかジャズ・ボーカルなのかっていうのもよくわらなくて、全然見つからなくて。で、「今日は必ずインク・スポッツを見つけるぞ」って思い立った日があって、たくさんのレコード屋さんを回ったんです。横浜と渋谷とか。でもなかなか見つからない。朝から出かけたのですが、夜の8時ぐらいまで探していても見つからなくて。そうしたら、本当に最後の最後でインク・スポッツのレコードが出てきて、半分泣きながら「これお願いします」ってレジに持っていった・・という思い出がありますね。

——インク・スポッツって、まだドゥワップがでてくる直前のすごい絶妙な、ある意味、時代のはざまにいるグループなんですね。ジャズではないし、R&Bの先駆け的な音楽なのですが、他に同時代にこういうコーラス・グループ的なスタイルの音楽をやっているって実はかなり珍しいんです。なおかつ、レコードとしても高額なレコードじゃないから、お店も積極的に仕入れたり、目立つところに置いたりしないんですね。 レコード自体は珍しく無いんですけど。

中尾:そうなんですよ。

——でも、なんでインク・スポッツなのでしょうか?どこで出会ったんですか? 23歳の人がインク・スポッツに出会うタイミングって、非常に興味深いです。

中尾:バイオショックっていうゲームがあるんですけど、このゲームが1930年代頃の音楽をBGMに使っていて、それのプレイリストにぶつかった時に多分知ったんだと思います。

——なるほど。すごい。そんなところにこういうのがあるんですね。音楽以外で、例えば映画、アート、ファッションとかで何か好きなものってありますか?

中尾:あんまり「好き」って言えるほど自信はないんですけど 、本を読むのはすごく好きですね。映画もちろん好きです。本当に広く浅くというか。音楽きっかけでいろんなものを知った、みたいなところはあるかなと思います。それこそインク・スポッツも『ショーシャンクの空に』の冒頭で使われていることを知って、それがきっかけで観てみたり。あとは『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が好きなのでそのサントラのレコードを探してるんですけど、これもなかなか見つからないですね。

——ところで中尾さんにとってレコードは昔のメディアだと思うのですが、レコードを新しいものに感じているのか、それともレトロなものに感じているのか。またレコードに新しさを感じるとしたらどういうところに感じるのでしょうか?

中尾:僕の研究と少しかぶってくるんですけれども、レコード自体の「古い」「新しい」というよりも、レコードっていうものに付与されてる意味みたいなもの、レコードがどういうイメージなのかみたいなものが、おそらく昔の時代とは変わってきていると思うんです。特に若者の中で。多分それってサブスクの影響がものすごく強くて。僕が時空間に束縛されているって言ったのは、サブスクが、いつでもどこでも気軽に聴けるーー加えて何でも聴けるっていうような、聴取空間を作り出したわけですよね。その中で、みんながそういったものを使っている環境の対局にあるのがレコードだと思っています。レコードは再生する装置やレコードそのもの自体にも、すごくお金がかかるし、基本的には室内で聴かなければいけない。かつ、レコードが再生している時間っていうのは改変できない。針を飛ばしながら聴くことはできますが、スマホのボタンひとつでスキップとかはできない。レコードってその特性が現代のメディアに比べると、融通が効かないんですよ。そんな中でも、すごく今はレコードっていうものが「若者にとって正当性のあるもの」―――って話し出したら説明が長くなってしまうのですが、つまり趣味っていう、そのものが他人との闘争みたいな、マウントの取り合いって言ったら語弊があるかもしれないのですが、でもそういった側面もあると。 で、例えば極端な話かもしれませんが、1970年代ごろだったら、クラシックを聴いている人はハイソサエティで、ロックを聴いている人は労働者階級、みたいな。ジャンルごとのイメージや、リスナーの音楽性に基づいたヒエラルキー(文化的な上下関係)が、当時は確かに存在していたと思うんです。
 でも、サブスクが普及してからは、みんなそこまでジャンルを意識せずに音楽を聴いている。じゃあ今の時代、何がその文化的なマウントの序列を担保しているのか?と考えると、僕は「メディア」なんじゃないかと思っています。
 レコードを買うという行為には、それなりの経済的余裕も必要だし、作品を理解するための教養も求められる。
 そういった意味で、レコードというメディアは今、文化的ヒエラルキーの中で比較的高い位置にあると思うんです。
 だからこそ、レコードの存在意義や象徴性が、今、大きく変わりつつあるんじゃないかと感じている……というような研究をしてます。

——面白い研究をされてますね。

中尾:ありがとうございます。

——でもそれは、あるかもしれないですね。やっぱり、他人とのコミュニケーションの中で“マウントを取り合う”というのは、人間としてある程度避けられない部分があると思います。それって、きっと全世界共通の感覚なんじゃないかなと。僕らの時代、「お前、そんなもん聴いてんのかよ」っていう、ある種ネガティブな競争意識の中で音楽を聴いていた実感がありました。でも今は、例えばすごくマニアックなソウルを聴いている人が、同じ感覚でアイドルやJポップも聴いていたりする。それがごく自然なこととして受け入れられていて、「そんなの聴いてるの?」とか「そんなの知らないの?」みたいな発言で優位に立てる、というコミュニケーション自体が、あまり成立しなくなっている。
 ただ、その中で例えば「俺はレコードで聴いてるよ」「お前、まだサブスクだけ?」という価値観には、確かにある種の上下関係が感じられます。
 もう1個だけ、ちょっとその発展で話させてもらうと、極論かもしれませんが、昔よりも今の方が「お金持ちが優位」な感じが強くなっている気がするんですよ。ステータスとして。30年前は「お金持ち=かっこいい」っていうイメージもゼロではなかったけど、今ほど強くなかったと思うんです。それよりも、知識があったり、スポーツができたり、文化度が高かったり、もっと言えば人情味があるとか。もちろん外見もあるけど、その人自身のポテンシャルの方が評価される時代だったように思います。
 でも今は、経済的に成功した人=かっこいい、っていう空気をすごく感じるんですよね。
 昔は音楽に詳しくなくちゃ話にならない、みたいな雰囲気もあったし、貧乏でも哲学や学問に深い人がリスペクトされた。でも今は、そういう人ってちょっと“変わり者”みたいな扱いをされがちで、それよりも“お金を持っている人”がもてはやされる。なのでみんなまずは「お金が欲しい、お金で成功したい」と思いがちな気がします。そうなると、音楽や哲学、文学といった“すぐにはお金に結びつかないもの”が後回しにされてしまって、結果的に文化活動全体が軽視されていくように感じるんです。いわば文化の衰退につながってきている。
 そういう価値観が、昔よりもあからさまになってきてる気がするんですよね。
 だからもっと、中尾さんみたいに若い世代に文化的な人が増えていってほしいと思うし、そういう人がかっこいいと思われる社会になってほしい。
 で、ここでもうひとつ聞きたいんですけど、ただ中尾さんを見てると、ステータスの感じ方もまた少し変わってきてるのかなと感じまして。――今の若者って、「文化度が高い人=かっこいい」っていう感覚って、あるんでしょうか?

中尾:文化度が高い人が“かっこいい”とされる感覚、今の時代だからこそ実はあるのかもしれません。たとえば、音楽の聴き方でいうと、今はサブスクリプションを通じて音楽を聴く人がほとんどですよね。サブスクの面白いところは、そこに“経済的な優位性”が出にくいという点なんです。みんな同額の金額しか払っていないので。つまり、お金を持っているかどうかではなく、どれだけ幅広く聴いているか、どれだけ知識があるか、といった“リテラシー”が問われる仕組みになっていると思います。たとえば、あるアーティストの名前がふと出たときに、「あ、それって○○の系譜ですよね」みたいな話ができる人は、音楽好きとしてちゃんとリスペクトされる。そういう価値観は、サブスクやSNSの中にも確かに存在していると思います。
一方で、その対極にあるレコードが“救世主”になれるかどうか、という視点もすごく重要だと思っています。さっきも話したように、レコードには「所有していること自体に価値がある」と捉える文化もありますよね。例えば、高価なレコードの所有を誇示するスタイルや、インテリアとしてレコードを「飾る」ような感覚などです。これは、ele-kingが刊行している『ヴァイナルの時代』でも語られていたことですが、レコードのモノ性にだけ頼りすぎると、かえってその内実である音楽が蔑ろにされてしまう。ここで大事なのはそれがサブスクでもレコードでも、「どんなメディアで聴くか」ではなく、「どう聴くか?」が問われなければならない。「レコードで聴いているから=素晴らしい」といった単純な価値観にも注意が必要で、ここも今の音楽文化の難しいところかなと思います。
 つまり大事なのはメディアが持っている文脈、それこそ「レコードは正当」ーーだとか、「サブスクは幅広く聴いているやつが偉い」とか、そのような価値観をどう個人が「自身の気持ちの中で読み替えていくか」っていうところに意義があると思っています。大事なのはいつの時代も「音楽」そのものなので。ただ、僕個人の意見ですが、レコードで音楽を聴くことで、サブスクでの体験との違いみたいなものが、明確に実感できるだろうし、その比較の中で音楽の輪郭もはっきりしていく。だからこそレコードって今は非常に大きな価値があるし、今後の音楽文化を救う可能性があるのではないかなというふうに感じています。

——どうもありがとうございます。勉強になります。最後にサブスクしか使ってない人にレコードを聴かせようとする場合、その人たちにレコードをお勧めする方法やご意見があれば教えてください。

中尾:ありがとうございます。多分サブスクしか使ってない人の中には最初の僕と同じような感覚、なんか音楽をちゃんと聴けている感じがしないであるとか、 自分のものとして音楽を吸収できている感じがしないっていう人が多分いると思うんですよね。で、それこそレコードっていうのは、参入障壁が高い、お金もかかるし、機材揃えなきゃだし、機材の知識ないしみたいな感じなので、 多分踏みとどまっているというか、なかなかそこに行けてない人っていうのは一定数いると僕は思っています。で、 その人たちに向けてメッセージを送るとするならばとりあえず買ってみよう。 安いスピーカー内臓のプレイヤーでも何でもいいから。とりあえず自分の好きなアーティストをそれで聴いてみて欲しいなってすごく思います。やっぱそのレコード体験っていうのは、そういうモヤモヤがある人にとってはすごく貴重なものになると思うので。是非迷っている人がいれば、 買って聴いてみてください。


Kangさんのギャラリーはこちら
https://vinylversemusic.io/gallery/kang


 音楽を取り巻く環境が日々進化し、スマートフォンやストリーミングサービスなどの利便性、AIの発展が極まる中で、レコードというアナログメディアは、再生に手間がかかり、保管にも場所を要するなど様々な制約があります。にもかかわらず、彼の言葉からは、そうした「不便さ」こそが、レコードに特別な価値を与えているのだという強い意識が伝わってきました。選ぶという行為そのものに意味があり、自らの意思で音楽と向き合う時間が、現代においては逆に新鮮で豊かな体験となっていると感じ取れました。

 VINYLVERSEは、そうした一人ひとりの文化的なこだわりや、主体的な選択を尊重し、それを外に向けて自由に発信できる場でありたいと考えています。そして今後は、人と人とがつながり、価値観を共有し合えるようなコミュニケーションのハブとして、より一層の発展を目指していきたいと思います。

VINYLVERSE アプリ

Geinoh Yamashirogumi - ele-king

 山城祥ニが主宰する音楽集団、芸能山城組の代表作『輪廻交響楽』(1986)がアナログでリイシューされる。レーベルはロンドンの〈Time Capsule〉(ちなみにレーベル・オーナーのケイ・スズキのインタヴューは『ele-king vol.33』に掲載)、発売日は2026年の2月20日。
 当時同作を聴いた大友克洋が『AKIRA』に使わせてほしいと問い合わせたところ、それなら一からつくるということで1988年に『Symphonic Suite AKIRA』が生まれることに──というエピソードをご存じの方もままおられるかもしれないが、こたびのリイシューはかなり気合いが入っている。というのも山城は、人間の可聴域を超える高周波であっても脳や身体に直接影響を与えるという理論「ハイパーソニック・エフェクト」の提唱者なのであるが、今回のリイシューではその理論が実践され、耳では聞こえない音域まで盤に刻まれているという。
 また、その『輪廻交響楽』第一章~第四章までの再現ライヴ《「幻響」其之弐〈転生〉》も開催が決定している。12月14日(日)、会場はなかのZERO大ホール。これは見逃さないほうがよさそうです。

アーティスト:芸能山城組
タイトル:輪廻交響楽
レーベル:タイムカプセル
カタログ番号:TIME024
発売日:2026年2月20日
ジャンル:エレクトロニック・クラシック・フォーク、ワールド、
スタイル:ニューエイジ、アンビエント、トライバル、合唱、声明、ガムラン
フォーマット:世界初の〈ハイパーソニック・エフェクト〉オーディオ強化処理 × ハーフスピード・マスタリング盤。8ページ・インサート/初回プレス限定帯
ライナノート:Anton Spce
マスタリング:Miles Showell (Abbey Road)
キュレーション:関塚林太郎(VDS)、Kay Suzuki

https://timecapsulesounds.taplink.ws/

芸能山城組公演
「幻(げん)響(きょう)」其之弐〈転生(てんしょう)〉開催のお知らせ

2025年12月14日(日)
なかのZERO大ホール

芸能山城組は、来る12月14日(日)、芸能山城組公演「幻響」其之弐〈転生〉を、なかのZERO大ホールで開催いたします。
危機に瀕する地球の未来を精神世界から転換させる試みに挑戦し大反響を巻き起こした昨年の「幻響 其之壱」に続く、待望のシリーズ第二弾となります。
芸能山城組が長年追求してきた意識を失わない恍惚の状態〈ライト・トランス〉性の音表現で、地球生命の循環を謳うライブ空間です。
第一章の『輪廻交響楽』は、東洋の宇宙観の根底をなす〈輪廻転生〉をモチーフに、地球生態系の循環メカニズムを讃えた1986年の作品です。大友克洋監督にアニメ「AKIRA」の音楽を芸能山城組に託すことを決意させた作品でもあります。
今回、作曲者・山城祥二自らが全編を刷新し、絢爛たるガムランの響きや人の声が豊かな生命力を謳いあげます。
第二章では、アニメ映画の金字塔「AKIRA」(大友克洋監督)の世界を彩った『交響組曲AKIRA』を基に、人の声、ジェゴグ、ガムラン、電子楽器が交錯し、見違えるような変貌を遂げたライブパフォーマンス『幻響AKIRA』をお楽しみいただきます。

【公演概要】
■名称:芸能山城組公演「幻響」其之弐〈転生〉
■日時:2025年12月14日(日) 開演16:00 開場15:30
■会場:なかのZERO大ホール(JR・東京メトロ東西線「中野駅」南口から徒歩8分)
■チケット(全席指定):HS席8,000円/S席6,000円/A席4,000円
■チケット取り扱い:イープラスeplus.jp 好評発売中

【演奏曲】
第一章『輪廻交響楽』から〈翠生〉〈散華〉〈瞑憩〉〈転生〉
第二章『交響組曲AKIRA』から〈金田〉〈クラウンとの闘い〉〈鉄雄〉〈ケイと金田の脱出〉〈未来〉他

【お問合わせ先】 
芸能山城組 公演プロジェクト 
〒164-0003 東京都中野区東中野1-22-3 芸能山城組事務所内
Tel 03-3366-4741 Fax 03-3366-4742
メール:kouen@yamashirogumi.jp
公式サイト:https://www.yamashirogumi.jp/

NEW MANUKE & Kukangendai - ele-king

 〈HEADZ〉が2020年に新たにスタートさせた京都拠点のレーベル〈Leftbrain〉。去る11月30日、同レーベルから刺激的な2作品がリリースされている。
 1枚は、ブラック・ダイスなどを彷彿させるバンド、NEW MANUKE(ニューマヌケ)による初めてのアルバム。これまで日野浩志郎のレーベルからカセットテープをリリースしてもいる彼ら、フルレングスでの冒険を楽しみたい。
 また同日、空間現代が2023年に発表したアルバム『Tracks』のリミックス盤も同レーベルから発売されている。D.J.Fulltono、カール・ストーン、マッドテオなど強力な面々が参加、こちらも見逃せない1枚だ。ぜひチェックしておきましょう。

アーティスト:NEW MANUKE
アルバム・タイトル:『SOUR VALLEY』

レーベル:Leftbrain / HEADZ
カタログ番号:LEFT4 / HEADZ270
発売日:2025年11月30日
フォーマット:CD/レコード
レコード ¥3,630(税込)
CD ¥2,530(税込)

1 SPECIAL
2 OMAE CAN
3 11 Lappy
4 POWER BIS
5 Street Ocean
6 Fire communication
7 iPAD, LICK FINGER AND SWIPE, GRANDSON GETS ANGRY (live)

NEW MANUKE:
Pedal Kurihara
Masamitsu Araki
Distest

Recorded at Soto Kyoto
Mixed by Pedal Kurihara and Tatsuki Masuko
Vinyl Mastering and Cutting by Atsushi Yamane

NEW MANUKE プロフィール

Pedal Kurihara(sampler、guitar、drum effect)
Masamitsu Araki(sampler、voice、mixer feedback)
Distest(sampler)

2009年結成のトリオ音楽グループ。
サウンドは主にサンプリングとコラージュ、シーケンスされたビートとループされたミキサーフィードバック、それらの上で極少量のポップスと共に破壊と脱構築を繰り返す。
ライブはまったく踊れないビートによる逆トランスの誘発。それらはライブハウスやクラブ、アンダーグラウンドと場所を変えては日夜、爆音で鳴らされる。
2011年、自主カセットテープ「nannomondaimonainiwa」をリリース。
2017年、goat率いるKoshiro
Hino主催レーベルbirdFriendよりKuknackeとのスプリットカセット『Kuknacke/NEWMANUKE』をリリース。
2018年、カセットテープ『 iPad,lick finger and swipe,grandson gets angry
』を自主リリース。original mix、M/D/G remix、KAZUMICHI KOMATSU remixが収録。
2025年、初のアルバム『SOUR VALLEY』をリリース。

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アーティスト:空間現代
アルバム・タイトル:『Tracks Remixes』

レーベル:Leftbrain / HEADZ
カタログ番号:LEFT3 / HEADZ269
発売日:2025年11月30日
フォーマット:レコード
レコード ¥3,520(税込)

1. D.J.Fulltono - Burst Policy (remix)
2. Element - Look at Right Hand (remix)
3. 友人カ仏 from Moe and ghosts - Beacons (remix)
4. Carl Stone - Fever was Good (remix)
5. Madteo - Hatsuentou (remix)

Digital Mastered by Tatsuki Masuko
Vinal Mastering and Cutting by Atsushi Yamane

2023年にリリースした空間現代の傑作アルバム『Tracks』のリミックス盤をリリースします。
ジューク/フットワークのDJ「D.J.Fulltono」、WIREのベストにも選出された日本の新鋭DUBプロデューサー「Element」、
ヒップホップグループMoe and ghostsのトラックメイカー「友人カ仏」、
コンピューターミュージックの巨匠「Carl Stone」、
Honest Jon'sやDDS、Sahkoなどから作品を発表するNYの鬼才「MADTEO」のリミックスをそれぞれ収録しています。
レコードに付属のダウンロードコードからダウンロードいただくと、更に2曲ボーナス・リミックスをお聴きいただけます。

Kazumi Nikaido - ele-king

 10月に新作7インチ「リトル・トラベラー/つけっぱなし」が発売され注目を集めた二階堂和美。やはりアルバムが控えていた。オリジナル・アルバムとしては、代表作『にじみ』以来14年ぶりの新作で、『潮汐(ちょうせき)』と題されたそれは1月21日にCDでリリース。
 これに先がけ12月21日には渋谷でワンマンライヴが開催されることになっているが、同会場ではこの『潮汐』が先行発売されるそうだ。

 と、そんな二階堂和美の最新インタヴューが、今年の紙エレキング年末号には掲載されています。この10年をどんな思いで過ごしてきたのか、赤裸々に語られています。年末号の発売は、レコ店とアマゾンが12月18日、書店は12月25日です。そちらもぜひ。

二階堂和美、実に14年振りとなる待望のオリジナル・アルバム『潮汐』、2026年1月21日にリリース決定!共同プロデューサーに原田郁子(クラムボン)を迎え、ソングライターとして辻村豪文(キセル)、髙城晶平(cero)、皆川 明(minä perhonen)が参加。
潮が幾度となく満ちて引いていき、朝と夕が繰り返すように― 長い時を経た"今"の二階堂和美にしか歌うことのできない、慈しみに満ちた歌がここにある。

オリジナル・アルバムとしては、代表作『にじみ』以来、実に14年ぶりとなる新作『潮汐』。
今作はソングライティングに旧知のクリエイター陣を迎えて制作。二階堂からの要請を受けて共同プロデュースを原田郁子(クラムボン)が担当、ソングライターには辻村豪文(キセル)、髙城晶平(cero)、皆川 明(minä perhonen)と個性的で豪華な面々が揃った。
加えて、自身で作詞作曲した曲を半々で収め、それらを自身のプライベート・スタジオで録音。広島在住の二階堂を最も近くで支え、二階堂にとってなくてはならない存在であるピアノ・黒瀬みどりをはじめ、コントラバス・岩見継吾、ドラム・中村亮、そして三田村管打団?といった各地の仲間たちと丁寧に作り上げた。『にじみ』のバンドメンバーであったガンジーとの結婚、二児の出産、実家である寺の継職、そして死別と、人生の悲喜交々を経た”今”の二階堂和美が色濃く映し出される作品になった。


アルバムは、髙城晶平の紡ぐ物語を歌とピアノだけで描いた「リトル・トラベラー」で幕を開ける。静かに、それでいて突き上げるような歌を経て、ものづくりの魂を感じさせる皆川明の詩を伸びやかに歌った「つけっぱなし」へ。プロデューサーでもある原田郁子による「あれもこれも」は、一筋縄ではいかない展開が日々の慌ただしさを表すよう。辻村豪文による愛おしさと寂しさを織り交ぜた「恋しがっているよ」で前半を終える。
後半の楽曲は全て二階堂自身が作詞・作曲。軽快なスウィングに乗ってスキャットが炸裂する「BILLIE」、ポジティヴなエネルギーに溢れる「つながりあって生きている」、壮大なスケールと普遍性が真に迫る「うまれてきたから」と、いのちについて自らの胸の内をストレートに曝け出したような楽曲が並ぶ。そして、穏やかでささやかな生活の喜びを歌うライブ音源「あうん」でアルバムは幕を閉じる。

ジャケットまわりを手がけるのは、先行7インチから引き続き、装幀家のサイトヲヒデユキ。カバー写真は二階堂が撮ったプライベートフォトを使用。表と裏が一枚の写真であることを忠実に生かしたジャケットや、ブックレットに添えられている二階堂のメッセージと共にCDパッケージの魅力も味わっていただきたい。
長い年月を経た今だからこそ歌える、静かな迫力と、大きな慈愛を兼ね備えた、心揺さぶる名作がここに誕生した。

さらに、本作のCDは、12月21日(日) 東京・渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで開催される『二階堂和美 ワンマンライブ “Tomoshibi no Yoru”』の会場にて先行販売を予定しています。チケットは現在発売中。発売に先駆けて新作をいち早く手にしていただける特別な機会となります。どうぞお見逃しなく!

【リリース詳細】
二階堂和美
アルバム『潮汐』(Chou-Seki)

発売日:2026年1月21日(水)
価格:3,000円(税込)/ 2,727円(税抜)
品番:PCD-18928
レーベル:P-VINE / KAKUBARHYTHM
p-vine.lnk.to/n4M4Jm

【収録曲】
1.リトル・トラベラー
詞・曲 髙城晶平

2.つけっぱなし 
詩 皆川 明 / 曲 二階堂和美

3.あれもこれも
詞・曲 原田郁子

4.恋しがっているよ
詞・曲 辻村豪文

5. BILLIE
詞・曲 二階堂和美

6.つながりあって生きている
詞・曲 二階堂和美

7.うまれてきたから
詞・曲 二階堂和美

8.あうん
詞・曲 二階堂和美

【LIVE INFO】
『二階堂和美 ワンマンライブ “Tomoshibi no Yoru”』
日程:2025年12月21日(日)
会場:東京・渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
開場16:30 / 開演17:30

【チケット】
前売り 大人5,900円(税込・全席指定)
前売り 小・中学生 3,000円(税込・全席指定)
※高校生以上は大人料金
※未就学児もご入場いただけます。膝上鑑賞の場合は、大人1名につき1名無料。お席が必要な場合は小・中学生料金となります。

【プレイガイド】
イープラス
チケットぴあ
ローソンチケット

枚数制限:お一人様4枚まで
発券形態:紙、電子チケット併用
主催/企画制作:カクバリズム
問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077 (平日12:00〜18:00) http://www.red-hot.ne.jp/


PROFILE
ジャンルにとらわれない音楽性と類いまれな歌唱・表現力で国内外から支持されるシンガーソングライター。1999年のデビュー以来、約20作を発表し、代表作は2011年のアルバム『にじみ』。最新作は2025年10月15日発売の7インチシングル『リトル・トラベラー / つけっぱなし』。スタジオジブリ映画『かぐや姫の物語』(2013年)では、主題歌「いのちの記憶」を作詞・作曲・歌唱。NHK「おかあさんといっしょ」への楽曲提供に「ショキショキチョン」(作詞・作曲)、「ぎゅーっ はかせ」(作曲:渋谷毅)がある。
著書に『負うて抱えて』(晶文社) 他。CM歌唱も多数。広島県在住。浄土真宗本願寺派の僧侶でもある。

二階堂和美HP:http://www.nikaidokazumi.net
カクバリズムHP:http://www.kakubarhythm.com

K-LONE - ele-king

 K-ローンの新譜をリピートしている。もっと言うと、夜、ひとりの帰り道なんかでじっくりと、繰り返し聴いている。前作『Swells』を河村祐介さんが「鼻歌まじりで歌いたくもなるメロディアスで涼やかなアルバム」と評したように、デヴュー作『Cape Cira』を含む諸作は何より明るく、カラフルな音が持ち味だった。しかし、本作の公式インフォによれば「これまでで最もパーソナルな作品/父の死後に制作されたこのアルバムは、逃避と内省の場となった」とあるように、きわめて内面的かつ静ひつな領域へと足を踏み入れている。

 ファクタと共同設立した〈Wisdom Teeth〉は、ペヴァラリストの〈Livity Sound〉やバトゥの〈Timedance〉などと並び、いずれも2010年代以降、ベース・ミュージックを通過したUKサウンドの更新に貢献してきた。K-ローンは間違いなくその現行のクラブ/ダンス・カルチャーを担う人物のひとりであるわけだが、今作においてシンコペートするUKガラージのリズムやダブステップのウォブリーなサブ・ベースは主役ではない。……もっとも、前者は自主レーベル〈Sweet 'N' Tasty〉、後者は名門〈Tempa〉からの12インチなどでその趣味を発散させてはいるのだが。
 しかし本作の自己内省に必要なのは、空間を包みこむダブ処理、アンビエント的なパッド、リッチなシンセ・ワーク、あるいは繊細なイーヴン・キックだったりする。こう書くと、根城である〈Wisdom Teeth〉ではなく、DJパイソンフエアコ・Sの作品を揃える、アンソニー・ネイプルズ主宰の〈Incienso〉からの投下であることは、サウンドを掴むための重要な手がかりに思える。

 まず先行シングルの “slk” がいきなり素晴らしい。ダビーな音響空間と催眠的な4/4キックが不規則にうねり合うダブ・ハウスといった具合で、端的に言えばこの空気がアルバムに充満している。“slide by side” のメランコリックにゆれるディープ・ハウス、またヴォイス・チョップの面白い仕掛けで作品に躍動感を加える “sslip” も欠かせない。だが何より、一番の見せ場は冒頭の “someone else” に尽きる。ほの暗く沈みこむヴォーカル・サンプル、もこもこと浮遊するコード、ときおり挟まれる光沢あるシンセ・フレーズは今作最長の6分半に及ぶ。背後で鳴るこれらの音は掴みようのない霧のよう。だが同時に、そぎ落とされた最小限のビートが音の核に位置する。一発でこの音世界への没入を誘う、随一の曲に仕上がっている。

 と、こうして聴き進めるとK-ローンの個人的な気分がそのままアルバムの空気に反映されていることは間違いない。一方で〈Wisdom Teeth〉が提示する、UK(ロフト期のアヤ、パリス)からアジア(名古屋のアベンティス、韓国のサラマンダ)まで、才人への審美眼が冴え渡る良質なレーベル・コンピとのつながりにも言及すべきだろう。
 引き合いに出すのはダウンテンポ志向の『To Illustrate』や高速BPMの『Club Moss』ではなく、2025年の『Pattern Gardening』。K-ローンの愛する00年代ミニマルへの愛を示したこのコンピでは〈Perlon〉の古いカタログを参照したそうで、今作に通底するクリック感ある繊細なリズムと明らかに符合する部分があり、レーベルのいまの方向との同期を感じさせる。また、ベース・ミュージックの感覚を通じて四つ打ちを展開してきた〈AUS Music〉からは、「Catching Wild」シリーズなる12インチを出している。ここにある初期ハーバートめいたハウスの文脈の延長線と捉えることもできそうだ。これらミニマル/マイクロ・ハウスなビートを基礎としつつ、K-ローンことジョー・グラッドウェルのパーソナルな感情を織り込んだサウンドを空気として漂わせることで、今作はひとつのかたちになったのだろう。

 父との別れと、その喪失の感情。この主題をアンビエントやダブをもってして抽象化した今作のサウンドはどこか暗い影を落としている。一聴したときは、歌もあるポップな前作と較べると思い切りのよい作風の転回だと早合点した。「鼻歌まじり」というより、シリアスに対峙すべき作品だと。しかし何度も聴くうち、深い霧の奥にシグネチャーたる明るくきらめく瞬間が随所にあることにも気付く。それは幕引きの “the haze” を聴くといい。つまりは思い切った「転回」ではなく、むしろK-ローン(とレーベル)のいま現在を踏まえた「洗練」や「深化」と呼ぶべき到達点ではないか。そうして研ぎ澄まされたサウンドとビートは、今夜もまたひとりの帰り道に優しく寄り添ってくれるはずだ。

Vol.2:霜月エモエモdays✶ ࣪˖࿐ * - ele-king

 Hello Hello!  hey hey!  heykazmaですッ!!
 融解日記第二回スタートですヨ。11月、後半めっちゃ寒くてびっくりだわ〜...
 heyに負けじと世の中も色々動き回っておりますね。
 失言·不用意·不適切...うっかりでは済まされないことが多々起きておる...。
 もはやこれは他人事ではないぞ! 我々みんな当事者なのだᕦ(ò_óˇ)ᕤと思う今日この頃でございます。
 そんな感じで、ハロウィンリミキシーズのリリパが終わったあとは、北海道〜仙台でDJをしてきました。そのあと東京で数本DJして、今です。あっという間に12月が近づいてきている。色々な締切やミーティングなどに追われていますが、まゔたちとご飯〜♪行ったり、遊びに行ったりもしちゃってますゾ。なにしちゃってんだか〜〜〜(ワロタ。
 ここ最近起きたことでびっっっきりに嬉しかったのは、テクノ界の超大御所Jeff Mills大大大大校長様にお会いできたこと! KATAでおこなわれていた展示のレセプションにお邪魔しました。身長が私と同じくらいで運命って感じで嬉しかったョ♡ DJはナイトイベントだから見れずすごく残念。みんな行ってて羨ましいゾンヽ(`Д´#)ノ

 パーティ行けないの悔しいのでTOGAとコラボのJeff様Tシャツを購入しちゃった。
 ものすっごっ〜〜〜くオキニイリでやんす!!
 これ着てタンテのDJの練習をたくさんしようと思う〜〜〜ッ⁺˚⋆。 °✩₊

 こないだね、自分のDJ Mixのアーカイヴを一人で聴いて反省会やったんだけど、ほんとにさあ問題点おおすぎワロタなの。wwwwwww。4つ打ちsetなのにブレイク多すぎるなーって感じたり、ゲイン調整ちょっと甘かったりなんかキリないほど課題あって〜ン泣泣泣。みんなから「DJめちゃ良かったです‼️」ってよく言われるけど(もちろんめっちゃ嬉しい~~~!ラヴ~~~!だが!!!!)、俺ならもっと頑張れると思うので‼️‼️
 見守ってて欲しいなってすごいよく思う‼️ みんな、俺のこと、応援してくれえ‼️‼️

 そんなわけで、わたしが結構影響を受けているDJの方を今回は3人紹介&最近聴いてよかった音楽2つを紹介できたらなと。全員要チェックだぞっっっ❣️☆


WHY BE on NTS 20.10.25  (DJ mix)
 Why Beパイセンはコロナ禍、緊急事態宣言がでて自宅学習で学校も行けず暇をしていたときにネットサーフィンしまくっていたらみつけたベルリンのアーティストで、影響を受けまくっているDJの一人。WHY BEパイセンの定期的に提供されているNTS RadioのDJ Mixは非常に刺激をもらいまくってるにょ。Bass MusicやAmbientを軸にしてたり、選曲の幅は広め。昨年の3月にWWWβにて来日公演が行われていたけど、ナイトでの開催だから遊びに行けずで...超絶悔しいですわ。𐔌՞꜆˃̣̣̥⋏˂̣̣̥꜀՞𐦯


Prettybwoy / CIRCLE at SALOON 8 April 2025 air-rec
 プリヴォさんもコロナ禍、緊急事態宣言がでたりでなかったりしていたときにDÉDÉ MOUSEさんとPrimulaさんと3人でTwitchでDJ配信している様子とこを見て、一気にファンになたのよ。大好きなアーティスト。リスペクトしまくり。このMixは代官山Saloonでエア撮りされたもの。プリヴォさんの手元だけずーっと見ていたいぐらいテクニックがすごい。非常に感動ですワ...

 先日6年越しにやっとパーティでお会いできた。感動の極み(っ’-‘)╮ =͟͟͞͞ ʟᴏᴠᴇ 💖


BEAMS RECORDS w/ lostbaggage: 31st Oct '25 (DJ mix)
lostbagaggeことあんなちとは、今年1月、私が仙台(地元)に住んでいたときにマヴが企画してるパーティで共演して出会いました。一緒に大崎八幡宮のどんと祭(地元トークすぎてやばい)にいったりしたんだよ〜。それ以来、彼女が働いているBonoboやSPREADに遊びに行くと、ばったり会ったり〜って感じ。彼女のDJはどんな状況でもいつも己の魂感じるような展開で、フロアの真ん中で聴くととても心地が良すぎるんです。わんちゃん、幽体離脱ってことかもね。大パイセン。早くまたDJ聴きたいョ〜。⁠:゚⭑⁠:⁠。


hatchcatch - Nu-Disco & House Mix
 地元のDJで一番仲の良い、最高フレンドhatchcatch。
 私が出演してたパーティに遊びに来てくれて、声かけてくれたのが最初の出会いで、そこから一瞬で意気投合。本当に全てが最高すぎる!! J-POP〜Techno〜House、様々なジャンルでDJできちゃうのも尊敬。毎月開催していて、私も以前出演させてもらった彼女の主催パーティ「A.B.C DISCO」。次回11/29で在仙ラスト回らしいので、現地にいる人は絶対行こうね(あっしは行けないけど!泣)


北村蕗 - Spira1oop (album)
 私と音楽ユニット・machakaru、そしてフォト・コレクティヴ・HEAVENLY KILLERSとしても一緒に動いてる、まゔの北村蕗が11月26日にリリースする1st Album『Spira1oop』。一足先に聴かせてもらった! 北村ちゃまとはもう5〜6年ぐらいの仲で、かけがえのないおもろいマヴであり、ずっと変わらずカッコ良い戦友。ここ最近の進化っぷりはほんとに半端なくて、曲を聴いてると「これ誰にでも作れる音じゃないよな…」って思わされる。いろんな世代のダンスミュージックを通ってきて、しかもクラシックもルーツにある北村だからこそ作れる、フロアユースでありながら繊細なトラックがぎゅっと詰まってて、音の階層がとにかく深い。全人類必聴✦ ﹒₊˚𓂃
 12/6には代官山UNITでワンマンもあるらしいので、これは行くしかない。よっっしゃあ!
https://avyss-magazine.com/2025/11/14/66207/


セーラーかんな子 - PRESENTDAY
 かんな子っちは、今年6月に幡ヶ谷Forestlimitで開催された「Deep Forest」というイベントで共演したことがきっかけで知り合ったの。それまで彼女のことを知らなかったんだけど、オファーをいただいたタイミングで楽曲を聴いた衝撃はいまでも鮮明に覚えてる。
 彼女の音って、生々しさと切実さが同居してて、一度聴いたら本当に忘れられないタイプのものだった。さらに、ガザで起きているGenocideの現状についてわかりやすく発信して、声を上げ続けている姿勢は本当に頭が下がる。尊敬しかない。PRESENTDAYはbandcampでデータを購入すると売り上げが日本国際ボランティアセンター(JVC)パレスチナ緊急支援事業のほか、GoFundMeを通じてガザに住む方達に寄付される!
https://sailorkannako.bandcamp.com/track/presentday


 以上、おすすめheyのloversコーナーでした!
 どのアーティストもリスペクト超ありまくり。絶対チェックして欲しいです♡‧₊˚

 そんなわけで、heyの今後の予定は!

 11/30中目黒HEVNにて、『WAIFU 🦄🪩 TRANS JOY IS RESISTANCE 🍉❤️‍🔥』に出演!トークショー(w/Hikariちゃん&Andromeda♡)とDJ(90minくらい)で出演します☺︎
 がっつりTechnoやる!
  https://www.ele-king.net/news/012018/

 12/7長野県・松本市、club INNERSIDEにて『Happy Halloween Remixes 2025 Curated by heykazma Release Party 松本編』、開催されます!
 企画はりんご音楽祭主催でお馴染みのDJ Sleeperぴょん。食品まつりぽよ、カワムラユキ姐と一緒に松本向かいます。長野県民ちゃんはもちろん、色んな子たちマスカム!
  https://www.instagram.com/p/DRRVYHgkzy4/?img_index=1

 そのほかのDJ GIGのinfoはlitlinkをチェックしてね!
  https://lit.link/heykazma

 それでは次回の連載、どこかのパーティでお会いしましょう˖ . ݁
 以上、heykazmaでした!

interview with Kensho Omori - ele-king

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』
11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

©“Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

 イスラエルとの結びつきが問題視されているボイラールームで、去年、最高のDJを聴かせてくれたアルカはクライマックスで“Rain”をドロップ。ピュリティ・リングはセルフ・タイトルの新作に「坂本龍一の思い出に」という副題をつけた“Glacier”で“戦場のメリークリスマス”をモチーフにした曲をアルバムの締めくくりに置き、イーライ・ケズラーは今年のブリープ・ミックスに“Chasm”をフィーチャーするなど、世界各地で、そして、思わぬ方向から坂本龍一への追悼が途切れなく続いている。坂本龍一が過ごした最後の3年半を追ったNHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」(2024年4月7日放送)はその後、『Ryuichi Sakamoto: Diaries』として新たに映画公開されることに。ディレクターとして携わったNHKスペシャルの制作時から、映画版もつくるつもりで始めたという、大森健生監督に制作当初の話からその過程で気がついたことなどを訊いた。

「受け入れた」と仮定しないと進めない部分もあるのですが、撮っている映像などを見返すと、ある1日を境に言葉も写真もポジティヴに見えるところがありました。2022年4月18日の、「こうなったらどんな運命も受け入れる準備がある」というところです。

最初は「一人の人間の死」と「坂本龍一」であることは分けて考えたいと思います。これまでに誰か個人の死を扱った作品や番組をつくったことはありましたか? 今回が初めてだった場合、人の死を扱う時に初めて感じた感情や気持ちはありましたか。初めてではない場合、他の作品との違いは何でしたか?

大森:人の死ということでは戦争を扱ったことがあります。NHKのディレクターになり1年目から2年目の時に、NHKスペシャル「樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇」という番組を制作した時です。人の死を扱ったのはそれが初めてでした。北海道の北に広がるサハリンはかつて「樺太」と呼ばれ、40万人の日本人が暮らしていたんですけど、昭和20年8月、終戦後にもかかわらず、住民を巻き込んだ地上戦が1週間にわたって続き、5000人とも6000人とも言われる人たちが命を落としたんですね。沖縄以外でも地上戦が起きていたということを伝えるために、その時は生き残った方々と何度も対話を重ねました。

有名無名を問わず、一人の死を追ったことは?

大森:有名という意味では、三島由紀夫、森鴎外、山本五十六などの生涯を追いました。今回の作品ほどディープに、一人の方の晩年を見つめたのは初めてです。

これまでと違ったところはありましたか?

大森:坂本さんはお亡くなりになってすぐのタイミングでしたし、歴史上の人物を扱う時とはどうしても肌感覚が違います。ご遺族も、世間も、そして私もまだ完全にはその死を受け入れていない時期でしたし、さっきまでそこにいたという気配が残っているんです。そこが大きく違いました。

坂本さんの音楽は以前からお好きだったんですか?

大森:YMOのアルバムや、よく知られている曲は聴いていました。

ファン目線というよりは距離をおいて題材に取り組めたということですね。

大森:曲をどんどん聴くところから始めました。日記を読みつつ、映像を見つつ。全般的にピアノ曲がすごく好きなんです。坂本さんは節目節目に、同じ曲を弾いて、アルバムに残されているんですよね。制作を続けている間に聞こえ方はだんだん変わっていきました。例えば“戦場のメリークリスマス”も繰り返し演奏されてきて、いろんなタイミングの坂本さんが記録として残されているからこその変化を感じられますよね。

NHKサイドの企画としてスタートした話だと聞きましたけれど、そもそも「坂本龍一の最期」を番組化しようと思ったのはなぜですか。また、番組用につくられたものが映画になるという話はいつ・どこから始まったのですか。

大森:坂本さんが亡くなって2日後に追悼番組を「クローズアップ現代」で放送すると決まり、僕はディレクターの一人として参加するところから始まりました。「クローズアップ現代」以外にもNHKでは「NHK MUSIC SPECIAL」で(最後のピアノ演奏を収めた)『Opus』の映像を通して軌跡を辿るなど、さまざまな番組で紹介してきました。本作のプロデューサーでもある佐渡岳利さんがほとんどの番組を担当されていたと思います。長尺版にしたいというのは最初から考えていて、それをかたちにできるのは映画というフォーマットかなということもぼんやり考えていたかもしれません。

坂本龍一に関する様々な番組のなかで「LAST DAYS~」を担当されたというのは、ある意味一番ヘヴィーな部分を担ったことになりますよね。

大森:「クローズアップ現代」で追悼番組を担当して、それ以前から坂本さんにアプローチしていた記者の方がいて、その方と一緒に遺族にお会いする機会を持てたんです。その時にお話をさせていただいたところが始まりでした。坂本さんはいったい、どんな晩年を過されたのか。それをテーマとして企画・構想しつつ、ご遺族と徐々に対話を重ねていきました。余談ですが、「世に名を残した人々は、晩年をどのように過ごし、何を考えていたのか」というテーマについて、大学生くらいの時に調べることに熱中したことがあるんです。正岡子規をはじめ、梶井基次郎、宮沢賢治などを調べました。川端康成、芥川龍之介、三島由紀夫……晩年はみんなすごいんです。いまは私が生まれた年に亡くなった、安倍公房が気になっているんですけど。

作家さんがお好きなんですかね?

大森:言われてみたらそうかもしれません。政治家や思想家にも興味はありますが、まったく違う世界にも興味はありますね。

人の晩年に興味を持っていたのは昔から?

大森:昔から、「なぜ人は○○するのか」という人類普遍のテーマに興味を持ちやすいタイプなんですよね。例えば「人は最期をどう迎えるか」というような感じで。急にある対象の「なぜ?」に興味が向くんです。これまでも、なぜ手紙を?とか、なぜ往復書簡を?とか。今回は、なぜ日記を? ですよね。ハマるとテーマ読みしてしまうところがあるんですよね。

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』の要所要所で田中泯さんが読み上げていく坂本さんの日記も、大森さんはすべてお読みになったんですよね?

大森:読みました。最初はびっくりしましたよね。「僕は古本とガードレールが好きだ」とか書いてあって(笑)。ただテキストだけを読者に届けるのとは違って、メディアを通して日記を紹介するとなると、全文を出すことは難しい。だからこそ全部読んだ上で、大事なエッセンスをより精査・吟味した上で、出さないといけないなと思いましたね。それはご遺族とも話したことでした。

制作しながら、他の誰でもなく、扱っているのが「坂本龍一」だと感じることがあったとしたら、それはどの部分でしたか。

大森:坂本さんの私物をたくさんお預かりしたので、それはもう非常にリアリティがありました。そういう意味では、何から何まで坂本龍一だし、坂本龍一を扱っているという実感につながりました。撮影はリアルのみでやりきりたいと粘る一方で、さまざまな事情があり、打診をしたすべての場所で撮影許可が下りたわけではありませんでした。なので例えば、病院内のシーンでは、預かった私物を配置して坂本さんがいた病室を再現したりして。坂本さんのそばにあったものがどのように置かれていたか、出来る限り忠実に再現していきました。そして言葉だけではなく音楽もあるという点ですよね。坂本さんの場合は。音楽を聴いてその人を知っていくという作業は他の方とは違います。坂本龍一という固有名詞とまではいかないかもしれませんが、”音楽家”を扱っているという気持ちがありました。

曲としてインプレッションがもっとも強かったものは何ですか?

大森:坂本さんの若い頃の演奏が好きです。若くて元気な頃の演奏と、映画にも出てきた最期の演奏『Opus』の両方があるからこそ、坂本さんが“生きてきた”ということがよくわかる。僕はいま32歳なのですが、とにかくアグレッシヴで過剰とも思えるほどエネルギーが注ぎ込まれた音のほうが、自分のなかに入ってくる感じがあります。爆発が起きているみたいで。そして50代くらいになってから、その頃の楽曲をピアノアレンジしていることにもすごく感動しました。“千のナイフ”で、あそこまで過剰とも思えるほどエネルギッシュに音が詰め込まれていたサウンドを、ハンドクラップに置き換えることで表現したり、大人にならないとできない余裕を強く感じました。YMOのアルバムや『/05』も好きですし、30代・50代・70代と変化していく音楽が好きだなと思えるきっかけになったのは、やっぱり最後の演奏を記録したアルバム『Opus』ですね。

テレビ版はあれでひとつの完成形ですが、映画版はもう一度、ゼロから再構築する必要がありました。なので音を中心に編集をし直しまして。内容面でいうと、譫妄のシーンであったり、入院してから苦しんでいる話は少なくしたり。

坂本龍一が「死に抗う」と「死を受け入れる」を交互に繰り返したと感じますか、それともどこかで「抗う」から「受け入れる」に切り替わったと思う瞬間はありましたか。

大森:「受け入れた」と仮定しないと進めない部分もあるのですが、撮っている映像などを見返すと、ある1日を境に言葉も写真もポジティヴに見えるところがありました。2022年4月18日の、「こうなったらどんな運命も受け入れる準備がある」というところです。もっとも体調がすぐれない時期については、映像や写真というものが他の時期に比べて少ないんですよね。日記に記述はあるけれど、写真や映像が非常に少ない。病気や精神的に苦しい時は、日常生活で記録を残すどころではないですよね。それに対して、4月18日を境に、記録が爆発的に増えてきて、メンタルの変化がもたらした変化としても見て取れたように思えます。

そうか、表現しようとする気力や欲求がない時期もそれなりにあったんですね。そこは言われてみないとわからなかったな。『Ryuichi Sakamoto: Diaries』はテレビで放送した「Last Days 坂本龍一 最期の日々」に要素を増やしただけですか? ラストシーンは違っていましたけれど、ほかに削ったところもありますか?

大森:テレビ版はあれでひとつの完成形ですが、映画版はもう一度、ゼロから再構築する必要がありました。なので音を中心に編集をし直しまして。内容面でいうと、譫妄のシーンであったり、入院してから苦しんでいる話は少なくしたり。それをフィーチャーしてしまうと、視点が身体に行きすぎてしまうかなと、あとは松尾西行の句を読むところなども文学表現も、少し引き算しています。その分、月をモチーフにする目的もあって「8月8日 僕の身体はぼろぼろだ」という部分にニコライ・ネフスキーの『月と不死』を入れるなど、編集は随分変えました。

坂本龍一の気力をもっとも感じた部分はどこでしたか?

大森:ずっとですね。熱が39.6度ある、とか書いてたりするんです。そんなに高熱だったら、自分だったら日記なんて書けないんじゃないかなと思ったり。驚きました。

坂本さんの映像は家族が撮影したものですが、もしも大森さんがあの場にいて、自分で撮影していたとしたら坂本さん本人に直接、訊いてみたかったことはありますか?

大森:たくさんありますけどね……ちょっと言えないです(笑)。

「言えない」って(笑)。言えるようになったらいつでも連絡ください(笑)。それはあまりにも気になります。

 2024年に放送された「Last Days 坂本龍一 最期の日々」はTV番組としては演出がとても抑制されていて、必要以上に感情を刺激するものではなかった。NHKだけではないけれど、番組の演出があまりに大袈裟で、とくに音楽が番組の感じ方を特定の方向に誘導するものが多く、もう少しフラットに番組を進めてくれないものかなと思うことが多い。内容に興味があっても途中で見るに耐えられなくなってしまうことも少なくない。当時、ディレクターを担当していた大森監督による演出はその点、坂本龍一が最後に過ごした3年半を素材のまま見ているような気持ちにさせてくれ、どのように感じるかは観るものに委ねられる自由があった。映画版となった『Ryuichi Sakamoto: Diaries』でもその演出方法はそのまま活かされている。全体の中で大きな意味を持つものではないけれど、僕は多くの人が「キョージュ」と呼んできた坂本龍一を東北ユースオーケストラを構成する若いメンバーだけが「カントク」と呼ぶシーンがとても好きだった。「キョージュ」と呼ばれ続けた男が亡くなる少し前は「カントク」と呼ばれていた。どういう欲望なのか自分でもよくわからないけれど、僕も坂本さんのことを「キョージュ」ではなく「カントク」と呼んでみたくなった。
 日本を代表する曲だと言われながら、〝戦場のメリークリスマス〟に賞を与えたのは世界でもこれまでにイギリス・アカデミー賞だけである。坂本龍一は紫綬褒章も授けられていないし、日本で与えられた賞といえばレコード大賞編曲賞や都民栄誉賞ぐらい。ブラジルやフランスが国民栄誉賞を坂本龍一に授けているのとは雲泥の差がある。それだけにNHKがこうして坂本龍一の番組をいくつもつくり続けていることは坂本龍一を正当に評価してこなかった日本において大きな意味を持ってくるのではないかと僕は思う。

11月のジャズ - ele-king

Omasta
Jazz Report from the Hood

Astigmatic

 昨今のジャズ・シーンではあまり取り上げられることのないポーランドだが、かつて共産時代の1960~70年代には多くのミュージシャンやバンドが活動し、隣国のドイツと並んでヨーロッパの中でもジャズが盛んな国のひとつだった。基本的にジャズの伝統が流れている国と言っていいが、最近は若いミュージシャンもいろいろ出てきている。たとえばテンダーロニアスジャウビと共演し、サン・ラーやポーランド・ジャズ界の伝説的なピアニスト/作曲家であるクシシュトフ・コメダのトリビュート作品をリリースするEABS(イーブス)、UKの〈ゴンドワナ〉から作品をリリースするハニア・ラニといった新しい感性を持つアーティストなどが目につくところだ。イーブスはUKの〈アスティグマティック〉から作品をリリースしているが、このたび同レーベルから登場したオマスタもポーランドの期待のバンドと言える。

 クラクフという町出身の彼らは、その地方の方言で「風味付けのために料理に加える脂」という意味のグループ名を持つクインテットで、ポーランドからイギリス、ベルギーなどヨーロッパ各地でライヴ活動を行っている。そうしたライヴでは地元クラクフ出身のジャズ・サックスのベテランであるレスシェク・ジャンドヴォから、テンダーロニアス、スラム・ヴィレッジなどジャズに限らないいろいろなアーティストとステージを共にしてきた。ジャズにとどまらないミクスチャーな感覚はJ・ディラマッドリブなどに影響を受けたところから導かれており、彼らの作り出すビートをジャズの生演奏へと落とし込むと同時に、ロイ・エアーズ、ロニー・リストン・スミス、ドナルド・バードなど1970年代のジャズ・ファンクのエッセンスも注入している。ファースト・アルバムとなる『Jazz Report from the Hood』は、そんなオマスタの魅力がぎっしりと詰め込まれている。“Cornerstone”はネオ・バップを軸とした楽曲だが、ブロークン・ビーツを咀嚼したようなリズムが現代的で、2000年代半ばのクラブ・ジャズに近い雰囲気もある。“Kazimierz”も基本的には1960~70年代のジャズの骨格を持ちながらも、ソリッドで研ぎ澄まされたビートを持つことによってダンサブルなサウンドとなっている。疾走感に満ちたジャズ・ファンクの“Burner”やジャズ・ボッサ調の“Ankle Breaker”も同様で、全体的にクラブ・サウンドを意識した演奏や楽曲づくりが行われている。“Mandem”や“Who They Was”などダウンビートの作品はヒップホップを意識していて、ドープなジャズ・ファンクの“Dead End”のビートはクエストラヴやクリス・デイヴなどのドラミングを彷彿とさせる。


Anton De Bruin
Sounds of the Eclipse

Sundown Recordings

 4月にオランダのグループのY.O.P.Eを紹介したが、そのキーボード奏者であるアントン・デ・ブルーインのソロ・アルバム『Sounds of the Eclipse』がリリースされた。彼はY.O.P.Eの前にもジャズとヒップホップをミックスしたグループのドラゴンフルーツでもアルバムを出しており、そのほかにアフロビート・バンドのアンタレス・フレアを結成し、ジャズ・トランペット奏者のピーター・ソムアのアルバムに参加するなど、いろいろなキャリアを積むミュージシャン/プロデューサーである。自身のソロ・アルバムとしては2024年に『Imaginarium』を発表していて、これにはY.O.P.Eのリーダーであるヨープ・デ・フラーフ、ドラゴンフルーツのメンバーのティジメン・モレマとシェルド・ヒスーン、ピーター・ソムアなども参加していて、彼が拠点とするロッテルダム周辺の音楽仲間が集まった作品と言える。内容的にはジャズ、ファンク、アフロ、ダブ、ヒップホップなどをミックスした上でエレクトロニクスを加え、UKのジョー・アーモン・ジョーンズあたりに近い印象を受けた。

 それから1年半ぶりとなるニュー・アルバムが『Sounds of the Eclipse』である。今回の演奏もヨープ・デ・フラーフ(ベース)、ピーター・ソムア(トランペット)、ジェシー・シルダーリンク(テナー・サックス)、ミラン・ブーン(ギター)、ティジメン・モレマ(ドラムス)と核になるメンバーは一緒。ほかにルーマニア出身のフルート奏者のファニ・ザハールやストリングス・セクション、シンガーのニア・ラリノヴァ、K.O.G、アジザ・ジェイ、ジャーメイン・パークアウトなどが参加し、ヴァラエティに富むレコーディング・メンバーとなっている。“Running on Slippers”はファニ・ザハールのフルートをフィーチャーし、高速のビートで駆け抜けるコズミック・ジャズとなっている。テクノやブロークン・ビーツなどのクラブ・サウンドの要素やアフロもミックスし、ザ・コメット・イズ・カミングあたりにも通じる作品と言えよう。ニア・ラリノヴァがメランコリックなムードで歌う“Keep Your Distance”は、リチャード・スペイヴンのような人力ダブステップ風ドラミングが印象的なジャズとクラブ・サウンドの折衷的作品。“Same Story”はアフロビートで、“Long Way Around”はレゲエ/ダブの要素が強く、K.O.Gとアジザ・ジェイが歌う“B3sin”はアフロ~カリビアン・ソウルとUKジャズのミクスチャー感覚から影響を受けていて、全体としてジョー・アーモン・ジョーンズからエズラ・コレクティヴ、スティーム・ダウンといったサウス・ロンドンのサウンドに近い印象だ。


Harper Trio
Dialogue of Thoughts

Little Yellow Man

 ハーパー・トリオはギリシャ出身でロンドンを拠点に活動するハープ奏者のマリー・クリスティーナ・ハーパーを中心に、ニール・コウリーのトリオでジャズ、マット・スコフィールドのトリオでブルース・ロックを演奏するエヴァン・ジェンキンス(ドラムス)、コルトレーンを聴いてジャズの道に進んだジョセフィン・デイヴィス(テナー&ソプラノ・サックス)というほかにはあまり類を見ない異色のトリオである。そもそもハープという楽器がジャズの世界ではマイナーだが、近年はニューヨークのブランディ・ヤンガーはじめ、マシュー・ハルソール率いるゴンドワナ・オーケストラのレイチェル・グラッドウィンやアリス・ロバーツ、マシューやチップ・ウィッカムと共演するアマンダ・ウィッティングなど女性ハープ奏者が活躍する場面も増えてきた。彼女たちはドロシー・アシュビー、アリス・コルトレーンというジャズ・ハープ奏者の草分けの影響を受けているが、マリー・クリスティーナ・ハーパーはそれとはやや異なるタイプの演奏家である。ハープは民族音楽にも多く用いられ、古くはクラシックの分野で発展してきたが、マリー・クリスティーナ・ハーパーはハープにエレクトリックなエフェクターをつけた実験性の強いアーティストである。また、ほかのハープ奏者に比べて即興演奏の度合いが高く、フリー・ジャズとロックや民族音楽を融合するようなところも見られる。2023年に『Passing By』というファースト・アルバムをリリースするが、そこではギリシャやエジプト、スペインという地中海周辺の国々をモチーフとする楽曲が収められていた。

 それから2年ぶりの新作となるのが『Dialogue of Thoughts』である。力強いビートにいるジャズ・ロックの“Walk”で、マリー・クリスティーナ・ハーパーのハープは基本的にはベースのような役割を果たしつつ、エフェクトをかけて次第にエレクトロニックな様相を呈していく。エヴァン・ジェンキンスのテナー・サックスはシャバカ・ハッチングスのような演奏で、彼が参加するザ・コメット・イズ・カミングに近いタイプの作品だ。“Sometime in Cairo”はエジプト音楽を取り入れ、ダークでミステリアスな世界を作り出していく。タイトル曲の“Dialogue of Thoughts”はアヴァンギャルド色の強い混沌とした演奏で、“Inner Thoughts”はメンバーのダイアローグ(会話)を楽器の一部のように用いた実験的な作品。“Madness While Trying to Meditate”はハープをまるでエレキ・ギターのように使用しており、非常にアグレッシヴな演奏を展開する。一方で“Quiet Mind”や“In Between Dreams”ではミニマルやアンビエントの影響を受けた抒情的な演奏も行う。ハープという楽器の可能性をさまざまな方向で追及した作品である。


The Cosmic Tones Research Trio
The Cosmic Tones Research Trio

Mississippi

 恐らくサン・ラー・アーケストラのアルバム『Cosmic Tones For Mental Therapy』(1967年)から名前をつけたのではないかと想像されるコズミック・トーンズ・リサーチ・トリオ。サン・ラーのような宇宙観、アフロ・フューチャリズムと同様に、精神的な癒しも彼らの音楽の重要な要素なのだろう。アメリカのポートランドを拠点にローマン・ノーフリート(サックス、フルート、クラリネット、パーカッション、ヴォーカル)、ハーラン・シルバーマン(チェロ、ベース、フルート、ハープ、スティール・ギター、パーカッション、シンセ、エレクトロニクス)、ケネディ・ヴェレット(ピアノ、キーボード、フルート、パーカッション、ヴォーカル)から成るグループで、最初はローマンとハーランがやっているビー・プレゼント・アート・グループというコミュニティ・プロジェクトにケネディが参加し、いろいろとセッションを繰り返す中でコズミック・トーンズ・リサーチ・トリオとなっていった。ジョン&アリス・コルトレーン、サン・ラー、ファラオ・サンダース、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、アンソニー・ブラクストン、ジョージ・ルイス、デューク・エリントン、現役で今も活躍するドワイト・トリブルなどのジャズから、ミニマル/実験音楽のジュリアス・イーストマン、現代音楽のベンジャミン・パターソン、R&Bやブルースのジェイムズ・ブッカーからスティーヴィー・ワンダーに至る幅広いアーティストたちに影響を受け、ブライアン・イーノを通じてアンビエントの分野にも興味を持つという彼ら(ファラオ・サンダースについては実際に会って学ぶ機会があり、アリス・コルトレーンの教えを受けた弟子たちとも交流があるそうだ)。3人が一堂に会したのは〈ミシシッピ・レコーズ〉が主催したレコード・ショップでのコンサートだったが、そのときにドローン・サウンドを取り入れた演奏をしていて、そうした中から瞑想的なヒーリング・ミュージックを志向し、ファースト・アルバムの『All Is Sound』(2024年)が作られた。

 3人ともがマルチ・ミュージシャンで、それぞれパーカッションなどを使って多重のアンサンブルを重ねる姿は、1970年代のファラオ・サンダースやアート・アンサンブル・オブ・シカゴなどにも共通する。特にフルートは3人全員が演奏し、そこから広げて尺八など世界各国の吹奏楽器にも興味を伸ばしている。『All Is Sound』はスピリチュアル・ジャズとアンビエントを繋ぐような作品だが、どちらかと言えば比重はアンビエントの方に寄っていた。それから1年ぶりのグループ名をそのままタイトルとしたニュー・アルバムも、全体的にはノンビートのアンビエント色の強い作品が多い。そして、民族音楽の要素も交えながらオーガニックな色彩も感じさせる。ケネディがアルメニアやアゼルバイジャンなど中央アジアで用いられる木管楽器のドゥドゥクを演奏していて、その優しく円やかな音色がオーガニックなトーンにも一役買っている。そうした中、神秘的なチェロとピアノのハーモニーに原初的なパーカッションがゆったりとしたグルーヴを導き出す“Sonkofa”が、もっともスピリチュアル・ジャズの色合いが強い作品と言えそうだ。

STARFESTIVAL CLOSING 2025 - ele-king

 関西発のオルタナティヴ・フェスとしてローカル・シーンと世界を接続しつづける〈STARFESTIVAL〉が、年末恒例のクロージング・パーティを今年も開催。12月30日(火)にクリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)にて。

 今年のゲストにはUKを代表するクラブ〈Fabric〉のレジデントDJとして知られるクレイグ・リチャーズ、〈Hospital Records〉のオーナーでありUKにおけるドラムン・ベース・シーンを牽引するロンドン・エレクトリシティを迎え、ローカル・アクトにはDJ KRUSH、DJ MASDA、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U(行松陽介)をはじめとする実力者をラインナップ。UKダンス・ミュージック愛好家にとっては見逃せない機会でしょう。

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