「CE」と一致するもの

satohyoh - ele-king

 ちょっとせつなくて、でもやさしくて、あたたかい音楽……。サンクラで展開中の「音メモ」シリーズで話題を集めた秋田の音楽家、サトウヨウが3月11日にセカンド・アルバムをリリースする。2017年に〈PROGRESSIVE FOrM〉から発表されたファースト『inacagraphy+』に続くフルレングスで、ピアノをはじめとするアコースティック楽器とサンプルを組み合わせた、イメージ喚起力の高い情緒的なトラックが並んでいる。なお明日3月4日から OTOTOY にてハイレゾ(24khz/48bit)での先行配信がスタート。もうすぐ春、ですね。

発売日: 2020年3月11日(水曜日)
アーティスト: satohyoh (サトウヨウ)
タイトル: feel like, feel right (フィールライクフィールライト)
発売元: PROGRESSIVE FOrM
販売元: ULTRA-VYBE, INC.
規格番号: PFCD96
価格(CD): 税抜本体価格¥2,200
収録曲数: 15曲
JAN: 4526180513858

◆Tracklisting

01. same old tomorrow's glow
02. 天気雨
03. toro
04. astraea
05. rain is always looking for clouds
06. bange feat. kota okuyama
07. alphabetagammadelta
08. ongoing
09. rufous scene
10. ランプを灯せば
11. little sense monologue
12. break in the parking
13. reprize
14. ただ広い暗闇、欠伸をした信号機
15. the hot-air balloon floating in the chilly sky

M2/4/10/14 vocal by airi hashimoto

◆【feel like, feel right】紹介文

時に優しく、時にせつなく、美しい調べがこだまする。
秋田県在住、風景の音にアコースティックな音を添えサンプリング等の手法を交えて公開する「音メモ」シリーズで SoundCloud を通じて海外でも多くのファンを獲得してきた satohyoh、2017年4月にリリースした初流通作品となる 1st アルバム『inacagraphy+』より約2年、音楽的な成熟度もぐっと増した satohyoh 待望の2ndアルバムが完成!

《好きと感じること、正しいと感じること。角度が変われば「正しさ」は変わる。誰かに教えたり、誰かを支えるとき、「正しさ」に迷う。「好きと感じること」を教える、「好きという気持ち」で支える。自ずと「正しさ」に繋がる。》として名付けられた『feel like, feel right』では、ピアノ、ギターやアコースティック楽器の音を中心に、味わい深いサンプルや豊かな景色の音を混ぜ合わせることで、田舎の景色や情緒溢れる日本の原風景に寄り添ったかのようなオリジナリティー溢れるサウンドが展開されている。

叙情的なピアノが導くM1 “same old tomorrow's glow” M15 “the hot-air balloon floating in the chilly sky”、リラックスさが心地良いM3 “toro” M8 “ongoing”、音楽制作仲間である kota okuyama がギターとコーラスで参加したM6 “bange”、ジャジーなアプローチが気持ち良いM7 “alphabetagammadelta”、鍵盤と弦により奏でられるどこまでも美しいM9 “rufous scene” とハーモニカがノスタルジーを広げるM12 “break in the parking” をはじめ聴き所が詰まったアルバムだが特筆すべきは 1st 同様に参加している橋本愛里のボーカル曲であろう。

2010年にデビュー~HMVのキャンペーン「NEXT ROCK ON」で最優秀ルーキーに選出~ガールズバンド「スパンクル」のボーカルであった、わらべ歌と考古学を学んだボーカリスト橋本愛里が歌うM2/4/10/14の4曲では、彼女の透明感ある声を生かした satohyoh のソングライターとしての才能を感じる事が出来、本作の魅力をより一層高みへと導いている。

◆プロフィール satohyoh

秋田出身、在住、ピアノやアコースティック楽器などを中心に風景に根ざしたサウンドを奏でるアーティスト。
2010年、ロックバンド「サキノハカ」とスプリットシングルを制作。
同年、「ukishizumi」名義で OMAGATOKI 制作のジョン・レノン・トリビュートアルバム『#9 DREAM』に参加。
2011年、インディーズレーベル〈clear〉の東日本大震災チャリティー配信アルバム『one for all, all for one』に参加。
2013年、インディーズレーベル〈T RUST OVER 30 recordigs〉の『Free Compilation Vol.1』に参加。
その後故郷秋田へ戻り、satohyoh 名義にて風景の音にアコースティックな楽器を添えた「音メモ」シリーズを公開、soundcloud を通じて海外でもファンを獲得する。
2015年、エフエム秋田30周年コンピレーションに参加。
2017年1月、初の iTunes 配信限定版「inacagraphy2」を発表、まったくの無名、ノープロモーションながら、iTunes インストゥルメンタル部門で最高位4位となる。
2017年4月、初の全国流通版となるデビュー・アルバム『inacagraphy+』を〈PROGRESSIVE FOrM〉よりリリースする。
2017年、秋田県潟上市で開催されたアート展「オジフェス2017 つきぬける」に楽曲提供。
ウェブマガジン「なんも大学」の映像企画「Discover Akita」(石孫本店、永楽食堂、五城目朝市、鳥海山日立舞、じゅんさい)に楽曲提供。
2018年、秋田県鹿角市、社会福祉法人 愛生会の事業紹介映像、並びに制作ラジオ番組に楽曲提供。
秋田県仙北市で開催されたグループ展「ひらふくひらく」内、高橋希・写真展に楽曲提供。
そして2020年3月、約3年振りとなる 2nd フルアルバム『feel like, feel right』をリリースする。

井手健介と母船 - ele-king

 2015年のファースト・アルバムでサイケデリック・フォークの前線を書き換えた井手健介と母船が、じつに5年ぶりの新作を4月29日にリリースする。サウンド・プロデュースは、ゆらゆら帝国や OGRE YOU ASSHOLE などで知られる石原洋(最近23年ぶりのソロ作を発表したばかり)。『エクスネ・ケディと騒がしい幽霊たちからのコンタクト』というタイトルも謎めいているが、以下にアツく記されているように、とてつもないサウンドに仕上がっている模様。もしかしたら今年最大の問題作の登場かも?

井手健介と母船、石原洋のサウンド・プロデュースによる5年ぶりのセカンド・アルバム、4月29日リリース! デカダンスの香りを纏うグラマラスで摩訶不思議な傑作ロック・アルバム!

なにもかもが妖しい! ついに沈黙を破った井手健介と母船、5年ぶりとなるセカンド・アルバムは、石原洋によってサウンド・プロデュースされた畢生の問題作!
聴く者すべてが度肝を抜かれるだろうその革新的サウンドは、夢魔の狂気か桃源郷か! いや、それはまさしく “2020年の神秘” !!
あのファースト・アルバムはほんの予告にしかすぎなかった!

数多くのミュージシャンがその才能を賞賛してやまない、井手健介率いる不定形バンド、井手健介と母船。ファースト・アルバム『井手健介と母船』(2015年)発表以来、約5年ぶりとなる待望久しいセカンド・アルバムをリリース!
しかし、届けられたそれは、誰もが予想だにしなかった官能的でセンセーショナルなコンセプト・アルバムとして結実していた!

クラシック・ギターをベースに、幽玄極まるサイケデリック・サウンドを展開していたファースト・アルバムから一転。本作『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』は、サウンド・プロデューサーにゆらゆら帝国や OGRE YOU ASSHOLE 等を手がけ、自らも先月、23年ぶりのソロ・アルバム『formula』を発表したばかりの石原洋、レコーディング・エンジニアに中村宗一郎(PEACE MUSIC)を迎え、デカダンスの香りを纏うグラマラスで摩訶不思議なロック・アルバムとして登場した……!

“Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディ・アンド・ザ・ポルターガイスツ)” なる架空の人物をコンセプトに、井手健介と母船がいま、衝撃的変貌を遂げる。
謎のエクスネ・ケディとはいったい何ものなのか?! そして、本作録音参加者さえも一聴してにわかに信じ難かったという「まさか!」の連続!

ゑでゐ鼓雨磨(ゑでぃまぁこん)との共作 “ささやき女将” や、ファースト・アルバム所収の名曲 “ロシアの兵隊さん” の華麗なる再録ヴァージョン。映画『バンコクナイツ』のトリビュート12インチ「おてもやん・イサーン」としてすでにリリースされていた代表曲 “おてもやん” は、ダークサイドに落ちたアナキン・スカイウォーカーが突如ベルリンのクラブに現れたかのような邪悪なオリジナル・ヴァージョンで収録。
妖精たちの海、洞窟、鏡の中、宇宙の果て──全9曲、ここではない場所から届く、ここにはいない者たちからの陽気で哀しいコンタクト=接触。

母船の新たな乗組員として、北山ゆう子(ドラムス)と mmm (コーラス、フルート)が加入。さらに、ゲスト・ヴォーカル、コーラスに mei ehara、キーボードに大山亮(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)もゲスト参加。
新生・井手健介と母船による、超現実的にして想定外、まさに奇妙な大作というべき『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』がついにそのベールを脱ぐ!
2020年最大の問題作にして傑作が誕生!

[商品情報]
アーティスト:井手健介と母船
タイトル:Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)
レーベル:Pヴァイン
商品番号:PCD-26075
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,600+税
発売日:2020年4月29日(水)

収録曲
1. イエデン landline boogie
2. 妖精たち a place for fairies
3. ロシアの兵隊さん russian soldiers
4. ポルターガイスト poltergeist
5. 人間になりたい caveman’s elegy
6. ささやき女将 madam the whisper
7. おてもやん otemoyan
8. 蒸発 swinging lovers (story of joe)
9. ぼくの灯台 lighthouse keeper

参加ミュージシャン:墓場戯太郎、北山ゆう子、清岡秀哉、羽賀和貴、山本紗織、mmm、大山亮、石坂智子、mei ehara
プロデュース:石原洋
録音・ミックス・マスタリング:中村宗一郎(PEACE MUSIC)

井手健介
音楽家。東京・吉祥寺バウスシアターの館員として爆音映画祭等の運営に関わる傍ら、2012年より「井手健介と母船」のライヴ活動を開始。様々なミュージシャンと演奏を共にする。
バウスシアター解体後、アルバムレコーディングを開始。2015年夏、1st AL『井手健介と母船』をPヴァインより発表する。その後、2017年には、12インチ・EP『おてもやん・イサーン』(EMレコード)、1st ALヴァイナル・エディション(Pヴァイン)をリリース。
その他、映像作品の監督、楽曲提供、執筆など多岐に渡り活動を続ける中、2020年4月、石原洋サウンド・プロデュース、中村宗一郎レコーディング・エンジニアのタッグにより制作された、「Exne Kedy And The Poltergeists」という架空の人物をコンセプトとした2nd AL 『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』をリリース予定。
https://idekensuke.com

角銅真実 - ele-king

 遡ることおよそ三年前の2017年4月15日に、水道橋のCDショップ兼イベント・スペース「Ftarri」にて、英国のサウンド・アーティスト/即興演奏家デイヴィッド・トゥープの来日公演が開催された。トゥープ含め全三組のアーティストがライヴを繰り広げた同イベントで、一セットめに出演した角銅真実のソロ・パフォーマンスがいまだに忘れられない。スピーカーから音を出力することのないキーボードを叩きながらハミングを披露し、カタカタという乾いた打鍵の響きとなんらかの楽曲らしき歌のようなものが聴こえてくる。しばらくすると会場にばらまかれた無線ラジオにつながれたイヤホンから微かに伴奏が漏れ聴こえ、その後ピアノで演奏することで楽曲のサウンドの全体像が明らかになる。さらに、ポータブル・カセット・プレーヤーから同じ楽曲の録音が再生され、キーボードを介した音のない行為と録音された音だけのサウンド、さらに眼前でピアノを介して歌われる音楽という、少なくとも三種類の楽曲のありようが観ること/聴くことの経験のうちに相互に記憶のなかで関係し合い、パフォーマンスにおいてわたしたちがなにを音楽として受け取っているのかということについてあらためて考えさせられる機会となった。そしてこのようなある種コンセプチュアルな試みでありながら、概念が先行する硬直性とは無縁の、行為そのものの楽しさと悦びにあふれていたことがなによりも印象に残っている。

 cero のサポートやドラマー石若駿による Songbook Trio をはじめ、網守将平率いる「バクテリアコレクティヴ」のメンバーとして、あるいは台湾のアーティスト王虹凱(ワン・ホンカイ)による共同制作プロセスを作品化した「サザン・クレアオーディエンス」のリアライズや、坪口昌恭ら気鋭のジャズ・ミュージシャンとともにアンソニー・ブラクストンの楽曲を演奏するプロジェクト、さらにはアジアン・ミーティング・フェスティバル2019への参加まで、打楽器奏者/シンガーソングライターの角銅真実の活動は驚くほど多岐にわたっている。むろん彼女自身のソロ・パフォーマンスやインスタレーション作品、あるいはアンサンブル・ユニット「タコマンションオーケストラ」も見落とすことはできないものの、単にジャンル横断的というよりも、どんな領域でも違和感なく共存できてしまう柔軟性が彼女にはあるように感じられる。サウンド・アーティストの大城真によるレーベル〈Basic Function〉から2017年にファースト・アルバム『時間の上に夢が飛んでいる』を、翌2018年には〈Apollo Sounds〉からセカンド・アルバム『Ya Chaika』をリリースしてきた彼女が、このたびメジャー・デビュー作としてサード・アルバム『oar』を発表することとなった。

 ヴォイスを楽器の一部であるかのように音響素材の一つとして駆使したファーストから、実験的/即興的な感触を残しつつ歌の比重が増したセカンドを経て、サード・アルバムでは歌が全面的に披露されている。大幅なアレンジが施されているものの、浅川マキの “わたしの金曜日” やフィッシュマンズの “いかれたBaby” のカヴァーも収録されており、彼女のこれまでの作品のなかでもっとも「音楽」に近づいたアルバムだと言っていいだろう。洗練された都会的なコード進行や憂いを帯びながらも力強い歌声、あるいは流麗なストリングス・アレンジなどは、ポップ・ソングと呼んでもよい完成度を誇っているものの、そうしたなかでたとえば1曲め “December 13” の冒頭から聴こえてくるイルカの鳴き声と電子音響が混じり合った大和田俊によるサウンド、あるいは雨だれのように物音が乱れ飛ぶ7曲め “Slice of Time” など、節々に音楽というよりも音そのものに対する興味がうかがえるところが、単なるポップ・シンガーというくくりには収めることのできない彼女の広範なバックグラウンドを示しているようにも思う。

 角銅真実が出演するライヴに行くたびに、客層がガラリと変わることにいつも奇妙な違和感を覚えてきた。ノン・ジャンルを標榜するミュージシャンは無数に存在しており、いまの時代にジャンルを越境/横断することそれ自体に特別な価値があるとも思えない。だがたとえば、リスナーがある音楽をポップス/ジャズ/サウンド・アート/エクスペリメンタル/即興……等々に区分することで自らの耳を閉ざしているのに対して、作り手はそうした分断をよそに交流と制作を繰り返していく。もちろんリスナーはどんな音楽に対しても等しく共感する必要はない。しかし同時に、どんな音楽でもこの世界に存在することは認められなければならない。『oar』のオフィシャル・インタヴューで角銅が「本当の真実ってないし、本当に分かち合えることってない。でも、分かり合えない人たちが一緒にいる状況はおもしろい」と語っていたように、異なる人々が異なるままに共感とは別のあり方で共存すること。それはおそらく、彼女の活動を追い続けることで、実体験として感得できる「おもしろさ」であるとともに、音楽のみならず社会の蛸壺化が進行するなかで、他者とともに同時代を生きる術でもあるのではないだろうか。

Squarepusher 9 Essential Albums - ele-king

 もう25年ものキャリアがあって、メイン名義の〈Squarepusher〉のスタジオ作だけでも15枚というアルバムをリリースしているトム・ジェンキンソン。初来日した頃はまだ22歳とかだったので、よくぞここまでいろんな挑戦をしながら自分をアップデートし続けてきたものだと感心する。段々と自分ならではの表現を確立していったミュージシャンならともかく、彼の場合は特に最初のインパクトがものすごかったわけで、正直こんなに長い間最前線で活躍しつづけるとは、当時は予測できなかった。改めて古いものから彼の作品を並べ、順番に聴いてみると、想像以上にあっちゃこっちゃ行きまくって、それでも芯はぶれない彼のアーティストとしての強靱さ、発想のコアみたいなものが見えてくるようだ。
 ここでは、今年1月にリリースされた最新アルバム『Be Up A Hello』に到るまでの重要作9枚を振り返りつつ、スクエアプッシャーという稀代のアーティストのユニークさをいま一度噛みしめてみたい。


Feed Me Weird Things
Rephlex (1996)

 いまでも、〈Warp〉からの「Port Rhombus EP」がどかんと東京の街に紫の爆弾を落とした日のことはよく覚えている。CISCO とか WAVE の棚は全部それに占拠され、“Problem Child” の殺人的にファンキーな高速ブレークビーツと、うねりまくるフレットレス・ベースの奏でる自由奔放なベース・ラインがあまりに新鮮でずっと繰り返し店でも流されていた。そして、実は〈Rephlex〉からコイツのアルバムが出てるぞっていうことで皆がこのデビュー作に飛びついたのだった。当時はそんなに意識しなかったが、本作は〈Rephlex〉にしては随分とアダルトな雰囲気がある。冒頭の “Squarepusher Theme” にしても方法論としてはその後一気に知れ渡る彼の十八番ではあるものの、ギターのカッティングから始まり、ジャジーでどちらかというと生っぽくレイドバックした響きをもったこの曲は、既にトム・ジェンキンソンの幅広い趣味を示唆している。次に非常にメランコリックで、時折打ち鳴らされるブレークビーツ以外はチルウェイヴかというような “Tundra”、さらにレゲエ/ダブに倍速のブレークビーツを合体させたレイヴ・スタイルをジャズ的なリズム解釈で徹底的にこじらせたような “The Swifty” が続くという冒頭の展開がダントツにおもしろいが、内省的で墓場から響いてくるような “Goodnight Jade” “UFO's Over Leytonstone” といった後半の曲も魅力的。


Hard Normal Daddy
Warp (1997)

 そして〈Warp〉から満を持してリリースされたのが、この2作目。ダークな装いだった前作に比べると随分とメロディックになって、明るく飄々とした印象で、トム・ジェンキンソン自身のキャラクターがよりサウンドに解放されたのかなとも思う。勝手な印象論だけど、こういうジョーク混じりみたいなノリは〈Rephlex〉が得意で、むしろデビュー作のような叙情性と実験性をうまい具合に配合したようなのは〈Warp〉かなというイメージがあって、当時はちょっと意外に感じた。ただ、カマシ・ワシントンがこれだけ持て囃されるような現代ならともかく、90年代後半にファーストの路線をさらに深化させていくのは得策じゃなかったろう。で、これを出した直後くらいに来日も果たし、ステージでひとりベース弾きまくる、作品よりさらにはっちゃけた印象のトムは、より大きな人気を獲得していくのであった。


Big Loada
Warp (1997)

 レイヴにもよく遊びに行っていたし、〈Warp〉に所属することになったきっかけは(初期) LFO だというトムの享楽的側面やシンプルなダンス・ミュージックの悦びが溢れた初期の重要なミニ・アルバム。クリス・カニンガムが監督した近未来ホラー的なMVが有名なリード・トラック “Come On My Selector” が、チョップと変調を施しまくったサイバー・ジャングルちっくでいま聴いても奔放なかっこよさを誇るのはもちろん、ペリー&キングスレイ的なお花畑エレクトリカル・アンサンブル+ドリルン・ベースな “A Journey to Reedham” も素晴らしい。余談だが、トレント・レズナーの〈Nothing〉からリリースされたアメリカ盤では、「Port Rhombus EP」や「Vic Acid」から選ばれた曲も追加収録されているので、かなりお得な入門盤だった。


Music Is Rotted One Note
Warp (1998)

 そして意表を突くように生演奏をベースにした、ほぼフリー・ジャズなアルバムをリリースしたスクエアプッシャー。どうも初期のトレードマーク的スタイルは『Big Loada』でやり尽くしてしまったから、まったく違うことに挑戦したくなったという経緯らしい。それにしても、全楽器を自分で演奏し、しかもあらかじめ曲を作らずドラムから順に即興演奏して録音していくなんて、アイデアを思いついても実際にやろうとするだろうか。まぁそれを実現できる演奏力や曲のイメージが勝手に湧くという自信があったんだろうけど。デビュー作でちらちらと見せていたアダルトでエクスペリメンタルな側面が一気に爆発したこのアルバム、近寄りがたいところもあり、一番好きな作品だというスクエアプッシャー・ファンはほぼいないだろうが、本作があったからこそ、その後の彼の活動もさらに広がりや説得力を持ちえたのだ。ちなみに、ジャケを飾る妙なオブジェはトム手作りのリヴァーヴ・マシンで、ジャケのデザインも自分で発案したそう。


Selection Sixteen
Warp (1999)

 トムには Ceephax Acid Crew として活躍する弟アンディーがいる(本作にもボーナス曲のリミキサーとして参加)。その弟からの影響、もしくは彼らがレイヴァーだった時代から強く持っているアシッドへの憧憬をさまざまなカタチでアウトプットした意欲的な盤。前作からの流れを引きずっているようなジャズ風味の強いトラックや、“Mind Rubbers” のようにドリルン・ベースが復活したような曲もあるが、全体的にはビキビキと鳴るアナログ・シンセのベース音が主役を張っている。これ以前にも酸味を出したトラックはときたま作っていたものの、ジャコ・パストリアスばりの超技巧ベース奏者という売り文句で世に出たアーティストが、わざわざそれをかき消すようなアシッド・ベースだらけの作品を作ってしまうとは……。テクノのBPMでめっちゃファンキーなブレークビーツ・アシッドを響かせる “Dedicated Loop” が、Da Damn Phreak Noize Phunk 名義の Hardfloor を彷彿させるドープさ。


Go Plastic
Warp (2001)

 全編生演奏だった『Music Is Rotted One Note』に “Don’t Go Plastic” という曲があって、日本語でも「プラスチッキー」と言うと安物、(金属に見せかけたような)粗悪品的なものを指すが、この場合は作り物(シンセ音楽)からの離脱を意図していたと思う。それがここに来て宗旨変え、「作り物がいいじゃん!」という宣言だ。時は2001年、エレクトロニカが大きな潮流となっていく少し前。スタジオの機材を一新したスクエアプッシャーは、コンピュータで細かくエディットしてトラックを弄っていくDAW的な手法ではなく、データを緻密にシーケンサーに打ち込むことでこのマッドな高速ブレークビーツを生み出した。ジャズ/フュージョンやエレクトロニック・ミュージックに惹かれたのは、サウンドに存在する暴力性だと語っていたトムが、その本性を露わにしたアルバムだ。全体を貫くダークで偏執的なまでのミュータントDnBは踊ることはもちろん、アタマで考えることや感じることも拒否するような局面があり、激しい電気ショックを浴びる感覚に近いかも。ただ、最初と最後にレゲエ~ダブを解体した比較的とっつきやすい曲をもってくる辺りに、トムの優しさも垣間見える。


Ultravisitor
Warp (2003)

 Joy Division の “Love Will Tear Us Apart” のカヴァーと、フジロックでのライヴ(海賊盤かというくらい音が悪いのが残念)を収録したボーナス・ディスクが話題になった『Do You Know Squarepusher』を経て、03年にリリースされた傑作との呼び声高い心機一転作。極端に言うと、これまでのスクエアプッシャーが試みてきた様々な要素/手法をすべて注ぎ込んだような混沌としたアルバム。どういうわけか、歓声やMCまで入ったライヴ録音の曲も結構多い。アルバム後半を支配する激しくノイジーなエクスペリメンタル・ブレイクコアと対照的なインタールード的な小曲は、ほぼすべてアコースティックな楽器の演奏でまとめられていて、それもトム得意のフリー・ジャズ的なものではなく、むしろクラシックやクラウトロック等を感じさせる(特にラストの2曲が美しい)。さらに本作の間違いないハイライトである、ゆったりとしたテンポと生ドラムの生み出す心地よいグルーヴに被さる、メランコリックな重層的メロディーが印象的な “Iambic 9 Poetry”。これを中心とした冒頭5曲の完璧な構成と展開は、スクエアプッシャーの才がついに二度目の大輪を咲かせたと感じられた。


Ufabulum
Warp (2012)

 手練れのミュージシャンを従えたセルフ・カヴァーをするバンド、Shobaleader One としての活動を挟みつつ、スクエアプッシャーが新たな次元に突入したことを知らせてくれたアルバム。CDではなく YouTube で音楽を聴き、盤を買うよりライヴやフェスに繰り出す、という近年のリスナーの傾向を写したように全曲にトム自身が作成したLEDの明滅による演出が施された映像が存在する。Shobaleader One ではフランスの〈Ed Banger〉から(Mr. Oizo のリミックス入りで!)リリースするなど抜け目のないところを見せ、今作ではその影響もあってか、エレクトロ・ハウスやEDMに通じるような迫力満点の(だが、彼の前衛性やエクスペリメンタルな面を好むファンからしたら大仰な展開や音色はコマーシャルに感じられてがっかりと受け取られるかもしれない)トラック群を仕上げている。混沌度を増すアルバム後半、電子回路が暴走したように予想のつかない展開でリスナーに襲いかかる “Drax 2” や、ヴェイパーウェイヴ的な美学も感じるラストの “Ecstatic Shock” が白眉。


Be Up A Hello
Warp (2020)

 そして、5年ぶりにリリースされた、スクエアプッシャーの原点回帰とも言える最新アルバム。『Ufabulum』や続く『Damogen Furies』では自作のソフトウェアやテクノロジーを駆使して、いわゆるヴィジュアル・アートや最新の IoT にまで斬り込んでいくのではないかという意欲的な姿勢を見せていたトム・ジェンキンソンが、旧友の突然の死去をきっかけに、デビュー前に使っていたような古いアナログ機材や、コモドールの古い 8bit コンピュータまで動員してメモリアル的に作り上げた。近しいひとの死がテーマになっているアルバムだから当然かもしれないが、かつてのはっちゃけまくったスクエアプッシャーを想起させる音色や曲の構成は随所に感じられるものの、どこか悲しげで暗いトーンに覆われている。そして、常に以前の自分に一度ダメ出しして新たなことに挑戦してきた彼が、敢えて彼の音楽性や名声を確立するに到った初期の手法に立ち返ったのには、やはり大きな意義を感じる。特にUKでここ数年盛り上がっているレイヴやハードコア(初期ジャングル)を復興させようという試みは、おもしろいけれど懐古を完全に超越した新しいムーヴメントを生み出しているかというとそうでもなくて、では90年代初頭にそういう現場の雰囲気やサウンドに囲まれて、そこで多くを吸収してプロになったトムのようなひとが改めて当時と同じ道具を手にしたとき、何を表現するのかというのはとても示唆的だと思うからだ。

 4月に行われることになったこちらも5年ぶりの単独ライヴは、『Be Up A Hello』の内容を考えると、ここしばらく注力してきたような、大型スクリーンと派手に明滅する映像をメインの要素に据えた未来的なプレゼンテーションとは違ったものになるのだろうか。ロンドンで行われたアルバムの発売記念ギグを映像で確認すると、機材の音が剥き出しでそれこそドラムマシンやシーケンサーが奏でるループがどこまでも続けばそれだけで幸せなんだ、というかつてDJ以外の演者が “ライヴPA” などと呼ばれた時代にあった雰囲気を感じるシンプルなものだった。もうほとんどレコードでDJをすることはないし、その感覚を思い出すのに少し時間がかかったとすら言っていたジェフ・ミルズの本当に久々のアナログと909でのセットを昨年11月に聴きにいった。ただの懐古に陥らないための演出や伝説の確認ではなくフレッシュな体験としてそれを受け止める若い聴衆とアーティストのインタラクトがおもしろく、今回も新たな発見がありそうだと期待している。
 かつて一世を風靡した “Come On My Selector” のMVは、日本を舞台にしてる風の配役や設定だったが、その実 “Superdry 極度乾燥しなさい” 的な細かな違和感がありまくりだった。最新のビデオ “Terminal Slam” ではやはり渋谷を中心にした東京の街を舞台にし、「また日本贔屓の海外のアーティストに東京を超COOLに描かれてしまった!」というのが大半の日本人の最初の反応で、実は監督したのが真鍋大度だったので、なるほど、さすが〈Warp〉とスクエアプッシャー、よくわかってる!と思ったものだ。今回の来日ステージでも、もしかしたら日本ならではのなにかを反映した演出を用意してくれるかもね。

5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

Trinitron - ele-king

 東京にこんな音楽があったなんて! トリニトロンは2010年から2012年にかけて活動していた〈Call And Response〉の4人組バンドである。今回リマスターされた限定CD-Rには、高円寺のベッドルームでつくられたというニューウェイヴ、ポストパンク、シンセポップの数々がめいっぱい詰め込まれている。ブラック・サバスやキャンディーズ、パフュームなどのカヴァーも収録されているが、“Liquidi Liquids” や “One Great Year in Tsukuba” あたりはテクノ耳で聴いてもかっこいいし、“My Boring Feelings” のドキッとさせられるリリックは音楽好きなら必聴かも。レーベルによればブライアン・イーノやDAF、デペッシュ・モードやトーキング・ヘッズ、ステレオラブが好きなひとはぜひ、とのこと。チェック。

artisit: Trinitron
title: make.believe - All of Trinitron
label: Call And Response
catalog #: CAR-51
release date: February 25th, 2020

tracklist:

01. Music to Watch Boys By
02. Heart no Ace ga Detekonai (Candies cover)
03. 10,000 Euros
04. Monday Club
05. Comment is Free
06. Democracy
07. Paranoid (Black Sabbath cover)
08. Liquidi Liquids
09. My Boring Feelings
10. Edge (Perfume cover)
11. The Pure Light of True Love
12. Match no Hono (Mir cover)
13. Namida wo Misenaide (Moulin Rouge/Wink cover)
14. One Great Year in Tsukuba
15. Killer Wave
16. Aus with the Ausgang
17. Polo Shirts Girl
18. Sweet Blue Flowers
19. Kids and Girls

https://callandresponse.jimdofree.com/releases/trinitron-make-believe-all-of-trinitron/

Salac - ele-king

 飯島直樹さんがいなくなったので、〈Avon Terror Corps〉=ATCなるブリストルの集団がいったい何なのかすぐに教えてもらうことができない。サウンドから察するに、彼らは〈Bokeh Versions〉周辺のアーティスト、Jay Glass DubsMars89あたりとも連動しているはず。が、しかしずいぶんパンク色は強く、そう、パンキシュで、とことん急進的なインダストリアル・パンク・ダブとでも言えばいいのか、昨年リイシューされたマーク・スチュワート&エイドリアン・シャーウッドの初期作品ともぜんぜん重なってしまう。つまり、ポストパンクの感触がたっぷり塗り込まれた、容赦なく荒れ狂うデジタル・ビートと金切り声。どこまでも不快なノイズ。イイネ。
 ATCが作品をもってシーンに登場したのは、2019年初頭だと思われる。カセットとアナログ盤をベースにリリースしているようだが、まあ、そこもいまどきのブリストルといったところではある。そしてそのうちの1枚、Salac のデビュー・アルバムには、ATCのやりたいことがぎっしりと詰め込まれていると見た。ブリストル・サウンドの系譜においてそのもっともとんがった残響とリンクしながら、ここにはTGスタイルの(なかばユーモアの込められた)薄気味悪さもあり、ヴェイパーウェイヴを通過したインターネット暗黒郷における絶望的なトラッシュ感覚もある。まあとにかく、彼らは現代的で攻撃的で挑発的だ。ざっとこの10年の流れで言えば、〈Blackest Ever Black〉が率先したインダストリアル系、あるいはブリストルのヤング・エコー系、これらの先鋭的な融合の先にある〝サウンド〟だと。注目してもいいんじゃないだろうか。
 ATCにはほかにもKinlaw, Franco Francoなる名義の、この文脈でトラップまでやっている強者もいるのだけれど、今年に入ってそのサブレーベル〈Global Terror Corps〉=グローバル・テロリスト隊からリリースされたConcentrationなる3人組の「I'm Not What I Was EP」もまたすごいことになっている。その音楽は、本人たちの説明によれば〝アジット・テクノット・ポップ〟であり、〝ハイエナジー・エレクトロ・ライオット〟であり……(いったいどんな音だよ!)。で、Salac同様に、ここにも〈On-U〉がインダストリアルに接近した時代の破壊的かつ狂乱的なダブ・コラージュが展開されているのだが、興味深いことにその音響はムーア・マザーのアルバムともどこかでリンクしている。ぼくにはそう感じる。ちなみに、この一派における〈On-U〉系のダブに近いところでは、Bad Trackingなるグループもいて、Salacらとともに、いままさに〝ネクスト〟がはじまっていることを印象づけている。
 これらブリストルの新潮流を聴いていると、ザ・ポップ・グループでさえも本当に〝ポップ〟に聴こえてくるかもしれない……なんてことはないが、いま、そのぐらい強力な新しい風が吹いている。スラヴォイ・ジジェクによれば、今日の社会では笑顔や楽しむことは資本主義が強制する義務だそうだ。ならばこれは怒りの季節である。Feel it!

Ulla - ele-king

 ウラ・ストラウスは、フィラデルフィアを拠点とするアンビエント・アーティティストである。
 ウラは2017年にシカゴのアンビエント/エクスペリメンタル・カセット・レーベル〈Lillerne Tapes〉から『Floor』と、シカゴのCD/DVDを専門とする〈Sequel〉からCD-R作品『Append』をリリースした。『Floor』は煌めくような質感のアンビエント・ドローン、『Append』は高質な音の芯がうねるようなラーガ的なトーンのドローンやリズミックな要素も導入されたインド音楽的なサウンドだった。
 しかしウラの注目度が上昇したのは、なんといっても2019年にフエアコ・エス(Huerco S)主宰の〈West Mineral〉からリリースされたポンティアック・ストリーター(Pontiac Streator)とのコラボレーション作品『11 Items』からだろう。細やかなリズムを持ったサウンド・マテリアルが交錯するトラックが聴き手の意識を飛ばすようなサイケデリックなサウンドスケープを形成していた。サウンドの独自性に加えてレーベルの信用度・知名度も相まってマニアたちから高い評価を獲得する。さらに2019年はレゴウェルトのリリースでも知られるシティル・シリアス・Nic(Still Serious Nic)とハンサム・トーマス(Handsome Thomas)らのレーベル〈BAKK〉からオーシアニック(Oceanic)とのスプリットLP『Plafond 4』、ニューヨーク拠点のアンビエント/ニューエイジ/エクスペリメンタル・レーベル〈Quiet Time〉からアンビエント作品『Big Room』も送り出した。この3作でウラ・ストラウスは新世代のアンビエント・アーティストとして、その名を知らしめることになったといえよう(『Big Room』は、私が執筆した『ele-king vol.25』の特集「ジャンル別2019年ベスト10」における「アンビエント/ドローン」の項目で2019年の重要作に紛れ込ませた)。

 そして2020年早々、はやくも決定的なアルバムが生まれた。新作『Tumbling Towards a Wall』である。本作はフエアコ・エス=ブライアン・リーズ(Brian Leeds)と Exael とのユニット、ゴーストライド・ザ・ドリフト(Ghostride The Drift)での活動や〈West Mineral〉からの作品も知られるウオン(uon)=スペシャル・ゲスト・ディージェー(Special Guest DJ)による新レーベル〈Experiences Ltd〉からリリースされたアルバムだ。ウラ・ストラウスではなく、ウラ名義でのリリースで、マスタリングはダブプレート&マスタリング(Dubplates & Mastering)が手掛けている。
 この『Tumbling Towards a Wall』にはテクノやミニマル・ダブなど、さまざまなエレクトロニック・ミュージックの要素が散りばめられているが、アンビエント的な落ち着いたトーンやムードも崩されることはない。ループを効果的に用いながらも騒がしくないサウンドメイキングは実に見事である。
 アルバムは穏やかなパルスと不規則な電子音が交錯し、水槽の中の魚のようにサウンドが浮遊しているような1曲め “New Poem” から幕を開ける。この曲からリズムの反復がテーマとして提示される。
 2曲め “Leaves And Wish” ではリズム=ループの構造がより明確になる。耳に心地よい乾いたノイズとの相性も抜群だ。霧の中に融解したミニマル・ダブがアンビエント化したようなサウンドスケープによって、ダビーな残響も本作の重要な要素であることも分かってくる。

 リズムとダブとアンビエント・ノイズ、これらの要素は3曲め “Something I Can't Show” でより深化した形で示される。鳥の鳴き声を思わせるサウンドに非連続的な電子音が、どこか天国からのサウンドように鳴り響く。
 4曲め “Soak” ではリズムの反復がさらに明確になる。まるで〈Modern Love〉が2007年にリリースした傑作 DeepChord Presents Echospace 『The Coldest Season』のように降り積もる粉雪のような冷たい質感のミニマル・ダブを展開する。アルバム中、もっともテクノ的なトラックといえる。
 ここまではアナログ盤ではA面で、続く6曲め “Stunned Suddenly” からB面になる。この曲ではリズム的要素が控えめになり、声のようなシンセ・サウンドが透明なアンビエンスを生み出す。7曲め “Smile” と8曲め “Feeling Remembering” では余白の多い静謐な音響空間を生成する。
 本アルバムでもっとも大切な曲が最後に収録された “I Think My Tears Have Become Good” であろう。ピアノ曲と電子音のフラグメンツとでもいうべき楽曲で、その無重力的な美しさは筆舌に尽くしがたい。

 この作品には、ミニマル、ニューエイジ、タブ、エレクトロニカなどの技法を援用しながらも、アンビエント・ミュージックの新しいモードがあった。端的にいえばアンビエント・ミュージックのドローンを基調とする構造からの脱却だ。もしかすると『Tumbling Towards a Wall』には「2020年代のアンビエント・ミュージック」のヒントが息づいているのかもしれない。

FaltyDL - ele-king

 USにおいていちはやくUK発祥のダブステップを導入したプロデューサーのフォルティDLことドリュー・ラストマン、さまざまなサウンドを折衷し、〈Ninja Tune〉や〈Planet Mu〉といった名だたるレーベルから作品をリリース、またみずからも〈Blueberry〉の主宰者として新しい才能(たとえばダシキラとか)を発掘してきた彼が、きたる3月7日、表参道の VENT でプレイを披露する。これは行かねば!


Yves Tumor - ele-king

 前作『Safe In The Hands Of Love』で大きく方向転換し、次の時代を切り拓く新世代アーティストとしての地位をたしかなものにしたイヴ・トゥモアが、通算4枚目となるスタジオ・アルバム『Heaven To A Tortured Mind』を4月3日にリリースする。最近ではキム・ゴードンの新作を手がけていたジャスティン・ライセンが、前作に引き続き共同プロデュースを担当。現在、昨秋の “Applaud” 以来となる新曲 “Gospel For A New Century” がMVとともに公開されている。はたして「新世紀のゴスペル」とはいったいなんなのか? イヴ・トゥモアのつぎなる野望とは? 楽しみに待っていよう。

[3月6日追記]
 待望の新作のリリースがアナウンスされたばかりではあるが、このタイミングでイヴ・トゥモアの主演するショート・フィルム『SILENT MADNESS』がユーチューブにて公開されている。ブランド MOWALOLA の主導によるもので、監督は写真家のジョーダン・ヘミングウェイが担当。とても印象的なヴィデオに仕上がっているのでチェックしておこう。

[3月10日追記]
 先日公開された “Gospel For A New Century” が話題沸騰中、じっさいすばらしい1曲でイヴのパッションがひしひしと伝わってくるけれど、それにつづいて昨日、アルバムより “Kerosene!” が公開されている。聴こう。

YVES TUMOR
2020年代オルタナ・シーンの主役、イヴ・トゥモアが最新アルバム『Heaven To A Tortured Mind』より新曲 “Kerosene!” をリリース!

“Gospel for a New Century” は直球のロック・アンセムに聴こえるかもしれないが、謎めいたタイトルと先鋭的なプロダクションは、より壮大なモノの先駆けになっているのかもしれない ──Pitchfork, Best New Track

先日、最新作『Heaven To A Tortured Mind』のアナウンスをすると同時に “Gospel For A New Century” のミュージック・ビデオを公開し、Pitchfork、Stereogum、NPR、New York Times、HypeBeast、Dazed、FACT といったメディアから、今年最もエキサイティングなリリースとして取り上げられるなど、各方面からの期待が高まるイヴ・トゥモアが新曲 “Kerosene!” をリリース!

Yves Tumor - Kerosene! (Official Audio)
https://youtu.be/N0c7lVHMyaY

“Kerosene!” で表現されている型に収まることのない創造性は、まさに新たなポップ・アンセムの誕生を感じさせる。ファジーなギターリフ、ビヨンセとのコラボでも話題となったダイアナ・ゴードンの美しい歌声、そしてイヴ・トゥモアの唯一無二な歌声は、90年代のオルタナティヴ・ミュージックが持っていた力強さを思い起こさせると同時に、2020年代でしか存在し得ない多様性を含んでいる。

また、現在イヴ・トゥモアはUKでのムラマサのサポートを終え、YVES TUMOR & ITS BAND としてのヘッドライン・ツアーを開始しており、今までのマイク一本で行ってきたスタイルから更にスケールアップしたパフォーマンスを世界中で披露する予定となっている。

待望の新作『Heaven To A Tortured Mind』 (4月3日発売) のリリースを発表し、メイクアップ・アーティストでビョークやリアーナらとも仕事をしているクリエイター、イサマヤ・フレンチ (Isamaya Ffrench) が手がけた新曲 “Gospel For A New Century” のミュージックビデオも話題沸騰中のイヴ・トゥモアが、主演を務めるショートフィルム『SILENT MADNESS』が公開された。本ショートフィルムは、ナイジェリア出身の気鋭デザイナー、モワローラ・オグンレシによる人気急上昇中のブランド MOWALOLA が公開したもの。監督は写真家のジョーダン・ヘミングウェイが務めている。トップクリエーターたちが集結した映像世界は必見。

SILENT MADNESS
https://youtu.be/zCXbEzVScIE

YVES TUMOR

奇才イヴ・トゥモアが最新アルバム
『HEAVEN TO A TORTURED MIND』を4月3日にリリース!
新曲 “GOSPEL FOR A NEW CENTURY” をミュージックビデオと共に解禁!

世界的評価を獲得した前作『Safe In The Hands Of Love』で、退屈なメインストリームに一撃を与え、独特の世界観で存在感を放っている奇才イヴ・トゥモアが、新章の幕開けを告げる新作『Heaven To A Tortured Mind』を、4月3日(金)に世界同時でリリース決定! 新曲 “Gospel For A New Century” をミュージックビデオとともに解禁した。特殊メイクやレーザーが生み出す強烈なヴィジュアルが印象的なビデオは、ロンドンを拠点に活躍するトップメイクアップアーティストで、ビョークやリアーナらとも仕事をしているクリエイター、イサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)が手がけている。

Yves Tumor - Gospel For A New Century (Official Video)
https://youtu.be/G-9QCsH3OQM

その評価を決定づける鋭利な実験性はそのままに、サイケロックとモダンポップの絶妙なバランスをさらに追い求めた本作では、共同プロデューサーにスカイ・フェレイラやアリエル・ピンク、チャーリーXCXらを手がけるジャスティン・ライセンを迎えている。2018年の最高点となる9.1点で Pitchfork【BEST NEW MUSIC】を獲得したのを筆頭に、New York Times、Rolling Stone、FADER、NPR などの主要メディアがこぞって絶賛するなど、その年を代表するアルバムとして最高級の評価を得た前作『Safe In The Hands Of Love』。その音楽性について The Wire は「ここには、Frank Ocean と James Blake が探ってきたものの手がかりが確かに存在するが、何よりも Yves Tumor は黒人の Radiohead という装いが、自分に合うかどうかってことを試して遊んでいるのかもしれない」と解説している。昨年は、Coachella、Primavera などの大型フェスにも出演を果たし、多くのファンを獲得しているイヴ・トゥモア。抽象に意味を与え、不協和音すら調和させ、現実の定義を壊す。哲学めいた制作アプローチを経ても、聴くだけで思わず惹きつけられるずば抜けた表現力と音楽性の高さは、「新世紀のゴスペル」と題された新曲がまさに証明している。

奇才イヴ・トゥモアの最新作『Heaven To A Tortured Mind』は、4月3日(金)に世界同時でリリース。国内盤CDには、ボーナストラック “Folie Simultanée” が追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。アナログ盤は、シルバー盤仕様と通常のブラック盤仕様の2種類が発売される。

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Yves Tumor / イヴ・トゥモア
title: Heaven To A Tortured Mind / ヘヴン・トゥ・ア・トーチャード・マインド
release date: 2020.4.3 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-635 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入

TRACKLISTING
01. Gospel For A New Century
02. Medicine Burn
03. Identity Trade
04. Kerosene!
05. Hasdallen Lights
06. Romanticist
07. Dream Palette
08. Super Stars
09. Folie Imposée
10. Strawberry Privilege
11. Asteroid Blues
12. A Greater Love
13. Folie Simultanée (Bonus Track for Japan)

商品情報
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10860

The Cinematic Orchestra - ele-king

 昨年美しいカムバック作を送り出したザ・シネマティック・オーケストラが、同作のリミックス盤をデジタルで3月に、ヴァイナルで4月にリリースすることになった。リミキサーに選ばれているのは彼らのお気に入りのアーティストたちだそうなのだけど、アクトレスケリー・モランドリアン・コンセプトフェネスラス・Gメアリー・ラティモアにペペ・ブラドックにアンソニー・ネイプルズにと、そうそうたる面子である。これはチェックしておかないとね。

THE CINEMATIC ORCHESTRA

『To Believe Remixes』の 12inch 2作品が4月24日(金)にリリース決定!
本日、TCO 自身によるリミックス “Zero One/This Fantasy (feat. Grey Reverend) [The Cinematic Orchestra Remix]” が公開!

その名の通り、映画的で壮大なサウンドスケープを繰り広げるザ・シネマティック・オーケストラ(以下 TCO)が、実に12年振りとなったスタジオ・アルバム『To Believe』(2019)のリミックス版となる『To Believe Remixes』の 12inch 2作品を4月24日(金)にリリース決定! デジタル配信では3月6日(金)に先行リリースとなる。本日、TCO自身によるリミックス “Zero One/This Fantasy (feat. Grey Reverend) [The Cinematic Orchestra Remix] ”が公開!

Zero One/This Fantasy (feat. Grey Reverend) [The Cinematic Orchestra Remix]
https://www.youtube.com/watch?v=LT-eJVqECWk

『To Believe Remixes』では TCO のお気に入りのプロデューサーやアーティストがリミックスやリワークを行っており、エレクトロニックミュージックの鬼才アクトレス、注目のマルチプレイヤー、ケリー・モラン、凄腕キーボーディストのドリアン・コンセプト、チェリスト兼ボーカリストのルシンダ・チュア、アヴァンギャルドのレジェンドであるフェネス、人気コンテンポラリー・ピアニストのジェームス・ヘザー、そして故ラス・Gらが参加している。また、既にデジタルリリースをしているLAのハープ奏者メアリー・ラティモア、伝説的なハウスプロデューサーであるペペ・ブラドック、そしてアンソニー・ネイプルズらがリワーク、リミックスをした楽曲も収録されている。

今週末にはセックス・ピストルズ、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、レディオヘッドらもライブを行ってきたロンドンの由緒正しきベニュー、ブリクストン・アカデミーでのライブを控えるなど精力的な活動を行う TCO の『To Believe Remixes』は2枚の12インチヴァイナルとデジタルで4月24日にリリース!

The Cinematic Orchestra『To Believe』
自ずと風景が浮かび上がる奥行きのあるそのサウンドは、本作でますます磨きがかかっている。ストリングスは、フライング・ロータスやカマシ・ワシントンなどの作品を手掛けてきたLAシーンのキーパーソン、ミゲル・アトウッド・ファーガソンが手掛け、ドリアン・コンセプト、デニス・ハムなど、フライング・ロータス主宰レーベル〈Brainfeeder〉関係のアーティストが参加しているのも見逃せない。またヴォーカリストには、先行シングル “A Caged Bird/Imitations of Life” のフィーチャリング、ルーツ・マヌーヴァを筆頭に、グレイ・レヴァレンドやハイディ・ヴォーゲルといった TCO 作品に欠かせないシンガーたちに加え、ジェイムズ・ブレイクの新作への参加も話題となったシンガー、モーゼス・サムニーとジャイルス・ピーターソンが絶賛するロンドンの女性シンガー、タウィアも参加。透徹した美意識に貫かれた本作は、デビュー・アルバム『Motion』から数えて、20周年を迎えた彼らの集大成ともいえる傑作である。

『To Believe』は心を打つ素晴らしい作品だ。美しく構築され、強い芯がある……傑作だ ──The Observer

本当に素晴らしいカムバック作だ……最近の物憂げなムードをリフレッシングで豊かなダウンテンポミュージックで表現している ──The Independent

華麗でシンフォニックなソウルミュージック……12年の時を経て戻ってきた力強いステイトメントだ ──GQ

label: NINJA TUNE
artist: THE CINEMATIC ORCHESTRA
title: To Believe Remixes
digital: 2020/03/06 FRI ON SALE
12inch: 2020/04/24 FRI ON SALE

TRACKLISTING

ZEN12536 (輸入盤12inch)
A1. Wait for Now (feat. Tawiah) [Mary Lattimore Rework]
A2. The Workers of Art (Kelly Moran Remix)
B1. A Caged Bird/Imitations of Life (feat. Roots Manuva) [Fennesz Remix]
B2. To Believe (feat. Moses Sumney) [Lucinda Chua Rework]

ZEN12539 (輸入盤12inch)
A1. To Believe (feat. Moses Sumney) [Anthony Naples Remix]
A2. A Promise (feat. Heidi Vogel) [Actress' the sky of your heart will rain mix 2]
B1. Wait for Now (feat. Tawiah) (Pépé Bradock's Dubious Mix)
B2. Zero One/This Fantasy (feat. Grey Reverend) [The Cinematic Orchestra Remix]

DIGITAL ALBUM
1. Wait for Now (feat. Tawiah) [Mary Lattimore Rework]
2. The Workers of Art (Kelly Moran Remix)
3. Lessons (Dorian Concept Remix)
4. A Caged Bird/Imitations of Life (feat. Roots Manuva) [Fennesz Remix]
5. Wait For Now (feat. Tawiah) [BlankFor.ms Remix]
6. To Believe (feat. Moses Sumney) [Lucinda Chua Rework]
7. A Caged Bird/Imitations of Life (feat. Roots Manuva) [James Heather Rework]
8. Wait for Now (feat. Tawiah) [Pépé Bradock's Just A Word To Say Mix]

1. Wait for Now (feat. Tawiah) [Pépé Bradock's Wobbly Mix]
2. Lessons (Ras G Remix)
3. The Workers of Art (Photay Remix)
4. A Promise (feat. Heidi Vogel) [PC’s Cirali mix]
5. Zero One/This Fantasy (feat. Grey Reverend) [The Cinematic Orchestra Remix]
6. A Caged Bird/Imitations of Life (feat. Roots Manuva) [Moiré Remix]
7. To Believe (feat. Moses Sumney) [Anthony Naples Remix]
8. A Promise (feat. Heidi Vogel) [Actress' the sky of your heart will rain mix 2]

label: NINJA TUNE / BEAT RECORDS
artist: THE CINEMATIC ORCHESTRA
title: To Believe
release date: NOW ON SALE

国内盤CD BRC-591 ¥2,400+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入

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