「Not Waving」と一致するもの

GOLDIE ALEXANDER - ele-king

Oneohtrix Point Never - ele-king

 喜びたまえ。現代を代表する電子音楽家、大いなる期待を集める最新アルバム『Again』のリリースを今週金曜に控えるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。4度目の来日公演の決定である。しかも、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークとつづくワールド・ツアーのスタートにあたる公演とのことで、つまりOPNの最新パフォーマンスを世界最速で堪能できるってこと。
 ちなみに前回の来日は5年前、『Age Of』(2018)リリース後で、バンドやダンサーを引きつれてのライヴだった。はたして今度はどんなパフォーマンスを披露してくれるのか──まずは9月29日発売の『Again』を聴いて、妄想を膨らませておきたい。
 日程は来年2月28日@六本木 EX THEATRE と2月29日@梅田 CLUB QUATTRO の2公演。時期はまだ少し先だけれど完売必至と思われるので、ご予約はお早めに。

 なお、今週木曜9月28日には新宿の映画館で新作のプレミア試聴会&トーク・イヴェントが開催されます(https://twitter.com/beatink_jp/status/1703980222692106661)。そちらもぜひ。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ニューアルバム『Again』をひっさげ待望の来日ツアー決定!
圧巻の最新ライブセットがここ日本で世界初披露!
アルバムはいよいよ今週発売!

TOKYO 2024/2/28 (WED) EX THEATRE
OSAKA 2024/2/29 (THU) 梅田 CLUB QUATTRO

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が音響アート/ミュージック・コンクレートのひとつの到達点とも言うべき、衝撃のニューアルバム『Again』をいよいよ9月29日に発売!音楽ファンやミュージシャンはもちろん、多種多様のアーティストやクリエイターからも大きな注目が集まる中、待望の来日公演が決定!ここ日本で最新ライブセットが世界初披露されることが明らかとなった。

テンションにテンションを重ねた得も言われぬ解放感とイマジネーションを拡張する圧倒的な世界観、息をのむ美しさ。名作『R plus Seven』を壮大なスケールにアップデートしたような大傑作だ。バラバラに散らばった断片たちが、時間を逆流し緻密且つ巨大な美しいアートピースを完成させるさま、カオスからコスモスへ、聴く者たちをカタルシスへ導く逆流アートの到達点がここに誕生した。

電子音楽、ヴェイパーウェイブ、ノイズ、アンビエント、コラージュ、カットアップ、ミュージック・コンクレート、、、当初はマニアックな実験音楽やサブカルチャーのカリスマだったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)ことダニエル・ロパティンは、自身の作品のみならず、音楽プロデューサーとしてアノーニやザ・ウィークエンドを手がけ、映画『Good Time』(2017)ではカンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞するなど活躍の場をひろげて来た。2021年にはザ・ウィークエンドによるスーパーボウル・ハーフタイムショーの音楽監督を務め、シャネル 2021/22年 メティエダールコレクションショーでも音楽とパフォーマンスを担当。世界チャート1位を獲得したザ・ウィークエンドの『Dawn FM』では、エグゼクティブ・プロデューサーを務め、アルバム収録曲の大半で演奏も行っている。

今週ついにその全貌が明らかとなる最新作『Again』をひっさげたOPNの最新のライブセットが、ここ日本を皮切りに、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークという世界の主要都市をツアーすることが発表された。妥協なき美意識にもとづくその高い芸術性で、今や音楽カルチャーのあらゆる分野で引く手あまたの、現代を代表する音楽家、作曲家、プロデューサーとなったOPNことダニエル・ロパティンが魅せる圧巻のライブ・パフォーマンス!これは絶対に見逃せない!

公演詳細 >>> https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13709

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ONEOHTRIX POINT NEVER
JAPAN TOUR
出演:ONEOHTRIX POINT NEVER(サポートアクト:TBC)

[東京]
公演日:2024年2月28日(水)
会場:EX THEATRE
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売 1階スタンディング¥8,000(税込) 2階指定席¥8,000(税込)
*1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

[大阪]
公演日:2024年2月29日(木)
会場:梅田CLUB QUATTRO
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売¥8,000(税込) オールスタンディング / 1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

企画・制作 BEATINK www.beatink.com
INFO BEATINK www.beatink.com / E-mail: info@beatink.com

【TICKET INFO】
★ビートインク主催者WEB先行:9/29(金)10:00~
[TOKYO] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024tokyo
[OSAKA] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024osaka

[東京]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、BEATINK

[大阪]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [ https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、チケットぴあ、BEATINK

Oneohtrix Point Never - A Barely Lit Path
YouTube >>> https://youtu.be/_kyFqe36BqM
配信リンク >>> https://opn.ffm.to/ablp

9月29日にリリースされる待望の最新作『Again』。Pitchforkが選ぶ「この秋最も期待できる47アルバム」で大きく取り上げられ、CRACK MAGAZINE最新号の表紙を飾るなど、アルバムへの期待は加速的に高まっている。本作についてダニエルは、現在の視点を通して、当時の自分の音楽的アイデンティティを捉えた瞑想であり「観念的自伝」だと説明する。現在公開中の新曲「A Barely Lit Path」は、ロバート・エイムズの指揮と編曲、ノマド・アンサンブルの演奏によるオーケストラをバックに、アルバムのクライマックスを飾る。合わせて公開されたミュージックビデオは、ダニエルがビデオ・アーティストのフリーカ・テットと書いた原案をもとに、フリーカ・テットが監督したもので、擬人化された2人の衝突実験用ダミーの悲惨な物語が描かれている。

OPN待望の最新アルバム『Again』は、9月29日 (金) にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、解説書と歌詞対訳が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(ブルー・ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(ブルー・ヴァイナル/歌詞対訳・解説書付)の3形態となる。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、Tシャツ付きセットの発売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never (ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)
title: Again (アゲイン)
release: 2023.9.29 (FRI)

商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13613

Tracklist:
01. Elseware
02. Again
03. World Outside
04. Krumville
05. Locrian Midwest
06. Plastic Antique
07. Gray Subviolet
08. The Body Trail
09. Nightmare Paint
10. Memories Of Music
11. On An Axis
12. Ubiquity Road
13. A Barely Lit Path
+ Bonus Track

国内盤CD+Tシャツ

限定盤LP+Tシャツ

通常盤LP

限定盤LP

Ezra Collective - ele-king

 少し前のニュースだが、画期的な出来事なのであらためてお伝えしておきたい。ジャズやファンク、アフロビートなどを融合するロンドンの刺激的なバンド、エズラ・コレクティヴが今年のマーキュリー・プライズを受賞している(対抗馬はランクムロイル・カーナーなど)。昨年リリースされた『Where I'm Meant to Be』が高く評価されたかたちで(われわれも2022年のベスト30に選出)、ジャズ・アルバムが同賞を受けるのは史上初めて。
 リーダーでトニー・アレンの指導を受けたドラマーのフェミ・コレオソはスピーチで、今回の受賞が自分たちだけの力によるものではなく、彼らの活動を支えてくれた人びとや、トゥモロウズ・ウォリアーズ(イヴェントやワークショップをつうじてジャズ・アーティストの育成をはかるプログラム、UKジャズの重要な発火点のひとつ)のような存在があったことを忘れずに付記している。どこかの国とは異なり、文化にたいする理解と共感が深く根づいているからこそ、今回の結果がもたらされたのだろう。
 受賞作『Where I'm Meant to Be』のレヴューはこちらから。


9月のジャズ - ele-king

 去る9月6日にジャズ・ベーシストのリチャード・デイヴィスが亡くなった。有名なプレーヤーというわけではなく、どちらかと言えば脇役で光るタイプだった。マイルス・デイヴィス、エルヴィン・ジョーンズなどとの共演で知られるほか、ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』、ブルース・スプリングスティーンの『明日なき暴走』、ポール・サイモンの『ひとりごと』など、ジャズを離れてロック方面のアルバムにも参加している。ただ、1970年代には商業的な成功を収めることはなかったものの、とても良質なリーダー・アルバムを〈ミューズ〉に残している。『ザ・フィロソフィー・オブ・ザ・スピリチュアル』(1972年)、『エピストロフィー&ナウズ・ザ・タイム』(1972年)、『ディーリン』(1974年)がそれで、スピリチュアル・ジャズやジャズ・ファンクの観点から再評価されたアルバムだ。


Yussef Dayes
Black Classical Music

Brownswood Recordings

 サウス・ロンドンには優れたジャズ・ドラマーが数多いが、そのひとりであるユセフ・デイズのソロ・アルバム『ブラック・クラシカル・ミュージック』がリリースされた。彼のキャリアは2010年代初頭に兄弟のアーマッド、カリームたちと結成したユナイテッド・ヴァイヴレーションズに始まり、テンダーロニアス率いるルビー・ラシュトンへの参加、カマール・ウィリアムズと組んだユセフ・カマールと、サウス・ロンドンのジャズを牽引する動きを見せてきた。2020年にはトム・ミッシュとコラボした『ワット・カインダ・ミュージック』を発表して話題を集める一方、アルファ・ミストビンカー・アンド・モーゼススウィンドルなどいろいろなアーティストの作品への参加や共演をおこなっている。リーダー作としてはチャーリー・ステイシー(キーボード)、ロッコ・パラディーノ(ベース)とのトリオ編成のライヴ・アルバム『ウェルカム・トゥ・ザ・ヒルズ』(2021年)があり、ほかにユセフ・デイズ・エクスペリエンスというグループで同じくライブ音源となる『ライヴ・アット・ジョシュア・ツリー』(2022年)があるが、『ブラック・クラシカル・ミュージック』は初めてのスタジオ録音によるリーダー・アルバムとなる。

 『ウェルカム・トゥ・ザ・ヒルズ』はトニー・ウィリアムズ張りのテクニカルな演奏を見せるジャズ・ロック路線の作品で、『ライヴ・アット・ジョシュア・ツリー』はサックスを加えたフュージョン調の作品だったが、『ブラック・クラシカル・ミュージック』はよりルーツ色の濃い作品となっている。アルバム・タイトルにあるように、彼のルーツであるカリブやアフロ・キューバン色を感じさせる作品が多く、“アフロ・キューバニズム” というそのものズバリのアフロ・キューバン・ジャズも収録する。タイトル曲も急速調のアフロ・ジャズで、往年のマッコイ・タイナーあたりを彷彿とさせる作品だ。“ジェラート” ほか、ドラムだけでなく種々のパーカッションも組み合わせて有機的で躍動感に富むリズムを作っている点も特徴だ。なお、編成はユセフ・デイズ・トリオを発展させ、そこにシャバカ・ハッチングス、トム・ミッシュなどいろいろなミュージシャンが加わる形となる。

 シャバカ・ハッチングスをフィーチャーした “レイジング・アンダー・ザ・サン” はレイドバックしたカリビアン・ジャズ調のナンバーで、トム・ミッシュと共演する “ラスト” は彼らのアルバムの『ワット・カインダ・ミュージック』の延長線上にある作品。“ターコイズ・ギャラクシー” はコズミックな雰囲気を持つエレクトリック・ジャズで、ザ・コメット・イズ・カミングに近い作品。彼の生まれたばかりの赤ん坊の声を乗せたメロウ・フュージョンの “ザ・ライト”、ダンサブルなサンバ・リズムを刻む “チェイシング・ザ・ドラム”、フレットレス・ベースが活躍する南国風のブギー “ジュークボックス”、ジャミラ・バリーのスウィートなヴォーカルをフィーチャーしたメロウ・ソウル “ウーマンズ・タッチ” など様々なタイプの作品が並ぶ。『ブラック・クラシカル・ミュージック』とはユセフ・デイズのルーツを示すと共に、黒人音楽の根底にあるものも指していると思うが、ジャズにしろ、ソウルにしろ、ブギーにしろ、黒人音楽の幅広さや寛容性も感じさせる内容だ。


Matthew Halsall
An Ever Changing View

Gondwana

 2000年代後半よりジャズ・トランペッター/作曲家として、〈ゴンドワナ・レコーズ〉主宰者として、マンチェスターのジャズ・シーンを牽引してきたマシュー・ハルソール。リーダー・アルバムやレーベル所属のミュージシャンが結集したゴンドワナ・オーケストラのアルバムなど作品は数多く、『アン・エヴァー・チェンジング・ヴュー』は2020年の『サルート・トゥ・ザ・サン』から3年ぶりの新作。以前レヴューした『イントゥ・フォーエヴァー』(2015年)のときと参加ミュージシャンは幾分入れ替わっていたりするものの、楽曲の傾向や演奏スタイルはさほど変わってはおらず、基本的にはアリス・コルトレーンのように瞑想的で穏やかなスピリチュアル・ジャズや、ジョン・コルトレーン直系のモード・ジャズをやっている。世の中の流行やトレンドなどとは一切無縁で、自身の音楽を愚直に追及するマシュー・ハルソールを改めて示すアルバムだ。

 そうした中で今回のアルバムで印象的なのは、カリンバのようなアフリカ発祥の楽器をハープやグロッケンシュピール、チェレスタなどの西洋楽器と絡めて使い、アフリカ音楽と西洋音楽を結び付けるような演奏を見せる点だ。表題曲や “カルダー・シェイプス”、“マウンテンズ、ツリーズ・アンド・シーズ” などがそうで、ハルソールもトランペット以外にカリンバやグロッケンシュピール、チェレスタなどをマルチに演奏している。土着的なフルートやザイロフォン、ハープなどを絡めた “ナチュラル・ムーヴメント” もそうで、アフリカ音楽と西洋のジャズ、そしてミニマル・ミュージックやメディテーション・ミュージックなどの要素も融合したアルバムとなっている。


Khalab
Layers

Hyperjazz

 イタリアのDJカラブもアフリカ音楽と縁の深いアーティストで、マリ共和国のシンガー/パーカッション奏者のババ・シソコと共演した『カラブ&ババ』(2015年)や、西アフリカのマリ難民キャンプに避難する音楽家集団と共演した『ムベラ』(2021年)をリリースする。ほかに『ブラック・ノイズ2084』(2018年)というアルバムがあり、こちらもアフリカ音楽の要素はあるが、エレクトロニクスの比重の大きいより実験的なサウンドで、シャバカ・ハッチングス、モーゼス・ボイドらサウス・ロンドンのアーティストと共演している。カラブなりの解釈によるアフロ・フューチャリズムの作品と言えるだろう。

 カラブの新作『レイヤーズ』は『ブラック・ノイズ2084』を継承した作品と言える。『ブラック・ノイズ2084』にも参加したトマッソ・カッペラート、クラップ・クラップなどイタリア勢に、ヤズー・アーメッド、タマラ・オズボーン、テンダーロニアス、エマネイティヴなどのイギリス勢が入り混じった編成で、ラッパー/ポエットのジョシュア・イデンハンやシンガーのアレッシア・オビーノなども参加。アレッシア・オビーノの神聖なヴォイスがフィーチャーされた “ドローン・ラー” は、そのタイトル通りサン・ラーの “スペース・イズ・ザ・プレイス” を想起させる不穏なナンバー。重厚なベース音に支配されたダークな “コンシャス・フレンドシップ” はジャズとベース・ミュージックの中間をいくような作品。トライバルな “トンネル・オブ・ジェラシー” はアフロ、ジューク、グライム、ゴムが融合したような世界。クラップ・クラップが参加した “アシッド・ワクチン” は、サンズ・オブ・ケメットのようなホーン・アンサンブルがアシッド・ハウスをやったらというイメージだろうか。テンダーロニアスのフルートが印象的な “ロマンティック・ロコ” は、インダストリアルなビートとアラブからアフリカにかけてのミステリアスなジャズが融合。トマッソ・カッペラートがブロークンビーツ調のドラムを叩く “フィメール・サイド” は、カリンバ風の音色を取り入れるなどカラブが好むアフリカ的なモチーフに彩られる。同じく “メンタル・コーチ” でもカリンバが用いられ、「アフロ・フューチャー・ビート・シェイク」と形容されるカラブの面目躍如たるナンバー。


Kurt Elling And Charlie Hunter
SuperBlue: The Iridescent Spree

Edition

 グラミー賞も受賞したアメリカのカート・エリングは、現代における男性ジャズ・シンガーの最高峰に数えられるひとりであり、基本的にはジャズの正統的なヴォーカル・スタイルを継承している。ただし、ギタリストのチャーリー・ハンターと組んだ『スーパーブルー』(2021年)では普段とは異なる一面を見せていた。チャーリー・ハンターとは彼のカルテットの『ソングス・フロム・ザ・アナログ・プレイグラウンド』(2001年)でも共演していて、このアルバムにはモス・デフやノラ・ジョーンズなども参加しているなど、ある意味で現在におけるジャズとヒップホップ、ネオ・ソウル、ファンクなどとの結びつきを先駆けた作品でもあった。そんなエリングとハンターの共演作『スーパーブルー』は、ジャズ・ファンク・バンドのブッチャー・ブラウンのDJハリソンがキーボード、コーリー・フォンヴィルがドラム及び共同プロデューサーを務めていて、言わばブッチャー・ブラウンの演奏でカート・エリングが歌ったと言える。エリングはヴォーカリーズというスキャットを駆使した即興的な歌唱スタイルを得意とするが、ジャズ・ファンク調のナンバーでも見事にそれが生かされていた。ただし、一方的にブッチャー・ブラウンの型に押し込めるのではなく、エリング本来のブルージーな持ち味を生かした楽曲作りもおこなっており、DJハリソンやフォンヴィルのプロデュース能力の高さも垣間見せていた。

 その『スーパーブルー』の続編となる『スーパーブルー:ザ・イリディセント・スプリー』がリリースされた。前作と同じくカート・エリング、チャーリー・ハンター、DJハリソン、コーリー・フォンヴィルというラインナップ。オーネット・コールマンのカヴァーの “オンリー・ザ・ロンリー・ウーマン” は、ダブステップを取り入れたようなスペイシーなトラックで、フォンヴィルの小刻みなドラミングに対しエリングのダイナミックで広がりのある歌唱が異色の組み合わせとなっている。ジョニ・ミッチェルのカヴァーの “ブラック・クロウ” はリズミカルなジャズ・ファンク・スタイルで、お得意のスキャットを絡めた即興が光る。“ノット・ヒア/ノット・ナウ” はエディ・ハリスのジャズ・クラシック “フリーダム・ジャズ・ダンス” を彷彿とさせる曲調で、エリングの歌もこの曲に歌詞をつけたエディ・ジェファーソンの歌唱を思い起こさせる。

Shin Sasakubo & Jamael Dean / Daniel Villarreal - ele-king

 原雅明主宰のレーベル〈rings〉から最新作2枚が同時発売される。1枚は、秩父の個性的な音楽家、笹久保伸とLAのジャズ・ピアニスト、ジャメル・ディーンによる共作。もう1枚は、ドラマーのダニエル・ヴィジャレアルによるラテン・グルーヴあふれるインプロヴィゼーション作品で、昨年の『Panama 77』に収めきれなかった演奏が収録される。ジェフ・パーカーも参加しています。好きな音楽の幅を広げてくれるかもしれない2枚、チェックしておきましょう。

SHIN SASAKUBO(笹久保伸) & JAMAEL DEAN 『Convergence』
2023.10.25 CD Release

笹久保伸の38作目となるアルバム『Convergence』は、ロサンゼルス出身の天才ジャズピアニストでありビートメイカーでもあるJamael Dean(ジャメル・ディーン)とのコラボレーション作品。独創的な音楽世界観を持つ2人が出会い、そして融合した、聴く者を魅了する多彩な音楽性を放つ傑作!!

ジャズ・ピアニストのジャメル・ディーンとそのアルター・エゴであるビートメイカー/ラッパーのジラは、LAのジャズとヒップホップをナイジェリアのヨルバの伝統歌へと繋げた。そして、秩父の笹久保伸の音楽と結びついた。端正なビートとアルカイックなドラム、鍵盤、ギター、歌、サンプリング音が織り成す、真に融和的で研ぎ澄まされた世界がここにはある。2人のルーツの出会いが生んだ、この上なくリアルで美しい音楽だ。(原 雅明ringsプロデューサー)

【リリース情報】
アーティスト名:SHIN SASAKUBO & JAMAEL DEAN
アルバム名:Convergence
リリース日:2023年10月25日
フォーマット:CD
レーベル:rings / chichibu label
品番:RINC111
JAN: 4988044093393
価格: ¥3,080(tax in)

販売リンク:
https://rings.lnk.to/qrAn5Rjl
オフィシャル URL :
http://www.ringstokyo.com/shinsasakubo-jamael-dean-convergence/

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Daniel Villarreal『Lados B』
2023.10.25 CD Release

2020年にドラマーのダニエル・ビジャレアル、ギタリストのジェフ・パーカー、ベーシストのアンナ・バタースが、2日間のレコーディングで完成させ高い評価を集めた『Panama 77』に収めきれなかった即興演奏の数々を、『Lados B』としてアルバム・リリース!!異なる音楽的影響を持つ3人が創り出す、美しく鮮やかな音の色彩は圧巻!!

グルーヴ感溢れる『Panama 77』をリリースしたパナマ出身のドラマー、ダニエル・ビジャレアルのBサイドと言えるインプロヴィゼーションにフォーカスしたのが本作。ジェフ・パーカーのギターとアンナ・バタースのベースという、LAジャズの最前線にいて、ポップスのフィールドでも引く手あまたの二人を迎え、自由度の高い、素晴らしいトリオでの演奏を聴ける。ラテンのグルーヴとジャズのインプロヴィゼーションの、幸福な出会いから生まれたアルバムだ。(原 雅明 ringsプロデューサー)

【リリース情報】
アーティスト名:Daniel Villarreal(ダニエル・ビジャレアル)
アルバム名:Lados B(ラドス・B)
リリース日:2023年10月25日
フォーマット:CD
レーベル:rings / International Anthem
品番:RINC112
JAN: 4988044093409
価格: ¥2,970(tax in)

販売リンク:
https://ringstokyo.lnk.to/xrleJTUP
オフィシャル URL :
http://www.ringstokyo.com/daniel-villarreal-lados-b/

山本邦山 - ele-king

植松孝夫 - ele-king

Karin Krog - ele-king

Ike White - ele-king

国葬の日 - ele-king

 ちょっと前にグラフィック・デザイナーの石黒景太と話をしていたら「まるで安倍晋三なんかいなかったみたいだ」という話になった。TVを観ているととくにそう思うし、安倍晋三という人は初めからいなかったように世の中は動いていると。いわゆる「忘れっぽい」ではなく、安倍晋三がいたことは知っているのに誰も触れないで避けていく。それこそ少し前の流行語でいえば、安倍晋三がいなかった世界線を暗黙のうちにつくりあげようと示し合わせている無意識の国家事業みたいだと。裁判が始まったらそうではなくなることはわかっているけれど、それまでの雰囲気はそれこそ「忘れてしまう」だろうから、このことはちょっと書いておきたい。もちろん、銃撃から1年後にTVの報道番組は事件を振り返ってはいた。ついこの間まで一国の首相で、しかも在任期間が最長だったともてはやされていた人物なんだから当たり前だと言いたいけれど、それにしては素っ気なく、事件が起きた直後に「安倍元首相がやったことは今後の検証を待ちましょう」と語っていた口が何ひとつ検証めいたことは口にせず、次のニュースに移っていく。最近になってFBIがが多くの資料を公開したことで新たな事実が明るみに出たケネディ暗殺事件の方が長めの特番として組まれていたほどである。

 安倍晋三のことを多くの人が口にしない理由のひとつは安倍信者の存在だろう。からまれたら大変。攻撃されたら面倒っちー。実際、事件から1年というタイミングで刊行された岩波書店の「世界8月号 安倍政治の決算」と安倍晋三の国葬をテーマに撮られたドキュメンタリー映画『国葬の日』はそれがどんな内容なのかも判明する前にSNSは凍結され、情報サイトが落ちたりして、安倍信者から攻撃を受けたのではないかという噂の方が先に広まった。内容がどんなものかわかる前につぶすというのは考えることも許さないというのに等しい。「触れない」や「避ける」から一歩でも踏み込むと封殺される。及び腰になるのも仕方がないのかもしれないと思わせる。安倍晋三がいなかったかのように振る舞う原因はそれだけではないだろうし、何かもっと恐ろしい心理が働いているのではないかと思うけれど、はっきりとはわからないので、むしろ僕はその報を受けて『国葬の日』を観てみようと思った。安倍晋三については大きく3つの点で評価できなかったので、たとえ全国民が賛成でも僕は国葬には反対しようと思っていたし、「国葬」について何か考えさせてくれるかなと思ったので。

 『国葬の日』はしかし、大いなる空振りだった。安倍晋三の「国葬」についてのドキュメンタリーではなく、タイトル通り国葬の「日」にカメラを向けた作品だった。「国葬」が決定するまでのプロセスを追うでもなく、関係者は1人も写っていない。TVで中継された式次第の断片もなく、三浦瑠璃が着ていたというアレキサンダー・マックイーンの喪服すら見ることができなかった。日本国民はその日、何をしていたかというドキュメンタリーなのである。導入こそ会場の入り口が撮影されていたものの、次の場面では今日が何の日かも知らなかったというテキ屋の人たちに話を聞いたり、日本中あちこちに飛んで同じように道行く人にマイクを向けていく。被災地ではガレキを片付けるのに忙しく、それどころではないという様子が映し出され、辺野古では基地建設に反対する人たちが警察に追い立てられていく。結婚式に出ていた花嫁の父だったかは強烈な安倍信者で「国葬」支持を訴え、どちらかといえば賛成という声も多く拾われている。内容を見ないでサーバーをダウンさせた安倍信者は……まいっか。安倍信者のほとんどが、そして、安倍を支持する理由として外国に向けて見栄えが良かったからとインスタ映えみたいな理由でしか安倍を推していないのは脱力感を倍増させた。80年代に中曽根が支持された理由と同じかよと。賛であれ否であれ、どの立場の人も「国葬」についての意見がとにかくバカらしい。銃撃事件のあった現場に花を供えていた女性は安倍の死を深く悲しんでいるのかと思いきや「あんまりよくわかってないんですけどね」と笑い出す始末(この人が一番衝撃だった)。「国葬」については何ひとつわからないけれど、何十年か後に安倍晋三が神格化され、偶像として異様な力を持ち始めるようなことが起きた場合、このドキュメンタリーを流すと「あれっ」という空気になって妙な気運は打ち砕かれるかもしれないなとは思う。

 自分の意見がない。日本人の特徴はこれに尽きると思った。「国葬」についてもう少し何か意見があるだろう。どうしたってそう思って観てしまう。低レベルだけど、仕方がない。意見がない人たちの行動原理はなんなのか。それは相も変わらず村社会の一員として動いているということだと思うしかなかった。安倍のお膝元だった下関でのインタビューがとくに興味深かった。安倍支持か反安倍か。はっきりしてる人はまだいい。自分がどの意見に属していれば有利か。あるいは安全か。村からはみ出さないようにしているというニュアンスばかりが言葉の端々からこぼれ落ちる。これは自民党や野党が思想集団でもなんでもない集まりだということと同じで、自分はどこにいれば有利なのか、あるいは安全なのか、いつでも動けるようにしておくためには思想を持たないほうがいいということにつながっている。「国葬」をめぐって国民は「分断」なんかされていない。多くの人は有利な方に付こうとしているだけ。いつでも動けるようにしておく。思想を固定しまうと動けなくなる。とにかく曖昧にしておく。極端なことをいえば、この作品が伝えていることは別に「国葬の是非」ではなく、まったく異なる質問でも結果は同じだったと思う。繰り返すけれど、この作品を見ても「国葬」については何ひとつわからない。「村社会」だけがくっきりと映し出されている。横断性のない社会。個人が認められない社会。肩書きでしか動かない社会。どれだけ新自由主義が既得権益に切り込んだつもりでも、競争の土壌となる基盤は何も変わっていない。古過ぎてクラクラする。

 上映の後に大島新監督に対する質疑応答の時間があった。会場から出た2番目か3番目の質問に「国葬当日に反対の声を挙げに行ったけれど、あまり面白くなかった」というのがあった。正直な声だと思った。日本人は見知らぬ同士が同じ場所にいた場合、その場を共有して楽しむ力に欠けている。クラブやデモに行っても最後のところで突き抜けた感じにならないのはそのせいで、村ごと移動して、村ごと騒がないと羽目を外せない。感情を解放できない。エモくならない。個人でその場にいて、個人でその場の人とつながる能力が低い。村社会の映画だなーと思って観ていたら、追い討ちをかけるように村社会の感想が続くとは。最近、日本各地の駅に設置されたストリート・ピアノが相次いで撤去されているのも同じことで、うるさいとか、ちゃんと弾かないとか、様々な理由がこれには付けられているけれど、その場に居合わせた人たちがその場を共有して楽しむことができないことが最大の原因だと僕は思っている。芸大のピアノが売られ、ストリート・ピアノが撤去され、それらはみなタケモトピアノに集結しているのだろうか。

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