ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  2. mary in the junkyard - Role Model Hermit | メアリー・イン・ザ・ジャンクヤード
  3. Columns Holy Tongue UKダブを更新するバンド、ホーリー・タンの初来日公演
  4. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  5. Seefeel - Sol.Hz | シーフィール
  6. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  7. doooo ──立方体のレコード!? 岩手出身のDJ/プロデューサー、ドゥーによるぶっ飛んだ新作がリリース
  8. GEZAN - I KNOW HOW NOW
  9. Columns 7月のジャズ Jazz in July 2026
  10. Kukangendai × odd eyes ──ともに京都を拠点に活動するバンド、空間現代とodd eyesによるスプリット7インチが登場
  11. Simon Reynolds ——レイヴ・カルチャーの本質にあるのは政治性ではない、どれだけぶっ飛べるかだ:サイモン・レイノルズ『未来マニア』刊行のお知らせ
  12. heykazmaの融解日記 Vol.9:₊ ˚⊹ 文月₊ ˚⊹ 会お!
  13. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  14. 下津光史 - @青山 月見ル君想フ  | 踊ってばかりの国
  15. Terry Johnson × P-VINE ──湯村輝彦によるロゴをあしらったPヴァインのTシャツが発売
  16. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  17. Hajime Tachibana ——プラスチックス結成50周年、立花ハジメがニュー・アルバム『dad bb』、12インチ・シングル「ZOUNDS!」をリリース
  18. Aho Ssan - The Sun Turned Black | アホ・サン
  19. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  20. 吉岡誠 - 江戸アケミ、四万十川から

Home >  Reviews >  Album Reviews > Khalab- Black Noise 2084

Khalab

DubJazzTechno

Khalab

Black Noise 2084

On The Corner

Bandcamp

野田努   Aug 09,2018 UP
E王

 ひと言で言えば、ぶっ飛ばされますね、これは。トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』から歌メロを削除して、あの音響のみを凝縮し、さらにダブ・ミキシングを加えて、高速で再生してみる。アフロ・ファンクのえもいわれぬエコーとグルーヴ。ポリリズミックな武装。圧倒的なトランス・ミュージック。
 いまでもまだ、アフロ・ミュージックのフレーズ/リズム/音色を取り入れているエレクトロニック・ミュージックには多少はもの珍しさという価値があるのかもしれない……いや、もうないか。ま、なんにせよ、しかしDJカラブのこれ──その名も『ブラック・ノイズ2084』は、記号的にアフロを取り入れているから面白いというわけではない。情報をかき集めて作ったものであることはたしかだろうが、小手先で作った音楽とは思えない濃密さと説得力がある。雑食性の高いサウンドだが、すべての音は有機的に結びついているし、そのすごさは下調べを要することなく伝わる。
 基本的に、『ブラック・ノイズ2084』はダンス・ミュージックのアルバムだ。その冴えたミキシングによる音響の独特さを備えた1枚であり、なんといってもここにあるリズムの迫力、躍動感に満ち満ちたアフロ・エレクトロが展開される。

 まずはアルバムの前半、Tenesha The Wordsmithという女流詩人がリーディングする表題曲“Black Noise”からシャバカ・ハッチングスがサックスを吹きまくる“Dense”という曲までの展開が最高。続く“Chitita”もヤバい。ダブ処理されたチャント、地面を這いつくばるベースライン、ゴーストリーなエコー……超越的なアロフ・フューチャー・テクノ。
 
 DJカラブは、クラップ!クラップ!のマブダチで(ele-king vol.20参照)、モー・カラーズニノス・ドュ・ブラジルとも親しくしているそうだ。もともとはラジオDJだったというが、10年以上前からローマでアフリカをコンセプトにしたパーティをはじめている。イタリアの音楽は将来的によりアフリカと交わっていくだろうという読みが、カラブにはあった。
 そしてアフリカの多彩なリズムのミキシングを試みるようになったというそのパーテで、カラブはエチオピアン・ジャズのリジェンド、ムラトゥ・アスタトゥケを招いているし、マリのベテラン・シンガー、ババ・シソコ(※アート・アンサンブル・オブ・シカゴにも参加している)にも出演してもらっている。そんな縁もあってカラブは2015年、ババ・シソコとのコラボ・アルバムを出しているが、それもまた素晴らしいです。
 2015年といえば、カラブはその年、〈ブラック・エーカー〉からのEP「Tiende! 」(クラップ!クラップ!も参加)によって注目を集めているようだが、しかし本作『ブラック・ノイズ2084』は、とてもそのEPなんかの比ではない。

 アフロ・ミュージックに精通している人が聴いたら、いろんな地方のいろんな音楽が、そして多彩な楽器音が再編集されていることに気づくだろう。シャンガーン、ゴム……、まあいろいろ。ぼくは最初はマーク・エルネトストゥスのンダガ・リズム・フォースを思い出したけれど、先述したように、『ブラック・ノイズ2084』はより雑食的であり、雑種である。そういう意味でも“ブラック・ノイズ”だし、そしてたしかにこの音楽はとことんやかましく、つまりノイジーなのだ。
 アルバムの制作時に、カラブはブリュッセルの王立中央アフリカ博物館を訪ねている。同所には、国王レオポルド2世による非情な植民地政策の痕跡も残されているというが、『ブラック・ノイズ2084』の背後には、植民地主義への批判精神、ヨーロッパ中心主義への怒りが込められている。2084とはリズムにちなんだ数字のようで、リズムは、呪いを振り払うための手段でもあった。
 とはいえこのアルバムは、政治的な音楽にありがちな悪い重さに支配されてはいない。アルバムの後半、コラージュ・アートめいたクラップ!クラップ!との共作“Cannavaro”から気鋭のUKジャズ・ドラマー、モーゼス・ボイドが参加している“Dawn”への流れもまったく拍手もの。

野田努