ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 夢で逢えたら:デイヴィッド・リンチへの思い  | David Lynch
  2. Kendrick Lamar - GNX | ケンドリック・ラマー
  3. guide to DUB ──河村祐介(監修)『DUB入門』、京都遠征
  4. Columns ♯10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というものは
  5. Brian Eno & Peter Chilvers ──アプリ「Bloom」がスタジオ作品『Bloom: Living World』として生まれ変わる | ブライアン・イーノ、ピーター・チルヴァース
  6. Panda Bear ──パンダ・ベア、5年ぶりのニュー・アルバムが登場
  7. FKA twigs - Eusexua | FKAツゥイッグス
  8. Terry Riley - In C & A Rainbow In Curved Air | テリー・ライリー
  9. eat-girls - Area Silenzio | イート・ガールズ
  10. Waajeed ──デトロイトのワジード、再来日が決定! 名古屋・東京・京都をツアー
  11. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第1回 悪夢のような世界で夢を見つづけること、あるいはデイヴィッド・リンチの思い出
  12. パソコン音楽クラブ - Love Flutter
  13. Teebs ──ティーブスの12年ぶり来日公演はオーディオ・ヴィジュアル・ライヴにフォーカスした内容に
  14. DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ
  15. ele-king presents HIP HOP 2024-25
  16. さあ、本屋をはじめよう 町の書店の新しい可能性
  17. Shun Ikegai ──yahyelのヴォーカリスト、池貝峻がソロ・アルバムをリリース、記念ライヴも
  18. Lambrini Girls - Who Let the Dogs Out | ランブリーニ・ガールズ
  19. R.I.P. Tadashi Yabe 追悼:矢部直
  20. goat ──日野浩志郎率いるエクスペリメンタル・バンド、結成10周年を記念し初の国内ツアー

Home >  News > Matmos - ──マトモスがニュー・アルバムをリリース、今回のテーマはプラスチック製品!

Matmos

Matmos

──マトモスがニュー・アルバムをリリース、今回のテーマはプラスチック製品!

Dec 18,2018 UP

 2018年のトピックのひとつにIDMのクィア化というのがありましたが(ソフィーロティックサーペントウィズフィートイヴ・トゥモア……などなど)、そのルーツのひとつにビョークの存在が大きくあり、そして彼女のエレクトロニカ期を支えたのがIDMシーンの愉快な実験主義者=マトモスでした。作品ごとに風変わりなコンセプトを打ち出してきたマーティン・シュミットとドリュー・ダニエルのふたりは公私ともに長く付き合っているゲイ・カップルであり、様々な意味で現在に続くエレクトロニック・ミュージックの先駆者であることは間違いないでしょう(古今東西の実在のクィアたちの“サウンド・ポートレイト”である『The Rose Has Teeth in The Mouth of A Beast』を聴き返してみましょう)。
 そんなふたりが、彼らの記念日を祝ってニュー・アルバムをリリースすることを発表しました。はたしてそのテーマは、プラスチックです!

 タイトルは『Plastic Anniversary』で、いろいろなプラスチック製品やそのゴミを鳴らした音で作り上げたものだそう。前作『Ultimate Care II』が洗濯機の鳴らす音で作ったアルバムであったことを思い出せばその連続性も窺えますが、それ以上に、本作の背景に現在世界で大問題になっているプラスチック製品のゴミによる環境汚染があることは明らかです。リリース元の〈スリル・ジョッキー〉のプレス・リリースによれば、プラスチックが持つ“環境破壊の力”について考察したものであるそうです。今年のG7サミットで発表された「海洋プラスチック憲章」ではプラスチック製品を減らすことがかなり厳格に提唱されましたが、それにアメリカは署名しませんでした。つまりこれは非常に政治的なテーマを持つ作品であり、トランプ政権への異議申し立てをこのような独創的な手法でやってのけてしまうマトモスはさすがと言うほかありません。
 アルバム制作のトレイラー映像ではプラスチックのゴミをドンドンと叩いて録音するふたりの姿が確認でき、それがマトモスらしいファンキーでファニーなIDMへと変貌していく様にはワクワクしてしまいます。

 え? G7のプラスチック憲章に署名していない国がもうひとつあるじゃないかって? そうでした。それはもちろん、日本です。だからこそ、『Plastic Anniversary』は日本の音楽リスナーも現在の社会を考える上で、あるいはわたしたちに何ができるかを想像する上で必聴のアルバムとなるでしょう。

 トラック・リストには“Thermoplastic Riot Shield”といったタイトルも見えますが、警察がデモと対峙するときに使うプラスチック製のライオット・シールドの奥でふたりがキスをしている最新のアーティスト写真も、知的かつユーモラスに示唆的で最高です。ディアフーフのドラマー、グレッグ・ソーニアもゲスト参加しているとのこと。
 毎日大量に発生するプラスチックのゴミと向き合いながら、リリースを待ちましょう。 (木津毅)

Matmos
Plastic Anniversary
Thrill Jockey
March 15, 2019

Tracklist
01. Breaking Bread
02. The Crying Pill
03. Interior With Billiard Balls & Synthetic Fat
04. Extending The Plastisphere To GJ237b
05. Silicone Gel Implant
06. Plastic Anniversary
07. Thermoplastic Riot Shield
08. Fanfare For Polyethylene Waste Containers
09. The Singing Tube
10. Collapse Of The Fourth Kingdom
11. Plastisphere

TWEET

malkmusjMatmos ──マトモスがニュー・アルバムをリリース、今回のテーマはプラスチック製品! | ele-king https://t.co/y6G2RFFsqX @___ele_king___から@malkmusj 12.30 15:41

NEWS