ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. The Stalin - Fish Inn - 40th Anniversary Edition - | ザ・スターリン
  2. High Llamas - Hey Panda | ハイラマズ
  3. Tribute to Augustus Pablo ──JULY TREEにて、オーガスタス・パブロ関連の写真やゆかりの品々などを展示、およびグッズ販売
  4. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  5. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  6. Cornelius - Ethereal Essence
  7. John Carroll Kirby ──ジョン・キャロル・カービー、バンド・セットでの単独来日公演が決定
  8. KRM & KMRU - Disconnect | ケヴィン・リチャード・マーティン、ジョセフ・カマル
  9. THE STALIN ──ザ・スターリンのもっとも過激なときを捉えた作品が完全復刻
  10. R.I.P. 遠藤ミチロウ
  11. Kinnara : Desi La ——ele-kingでお馴染みのデジ・ラ、1日だけのポップアップ
  12. LIQUIDROOM 30周年 ──新宿時代の歴史を紐解くアーカイヴ展が開催
  13. Columns ♯7:雨降りだから(プリンスと)Pファンクでも勉強しよう
  14. Martha Skye Murphy - Um | マーサー・スカイ・マーフィ
  15. Kronos Quartet & Friends Meet Sun Ra - Outer Spaceways Incorporated | クロノス・カルテット、サン・ラー
  16. Columns スティーヴ・アルビニが密かに私の世界を変えた理由
  17. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも
  18. FUMIYA TANAKA & TAKKYU ISHINO ——リキッド20周年で、田中フミヤと石野卓球による「HISTORY OF TECHNO」決定
  19. 『情熱が人の心を動かす』
  20. interview with John Cale 新作、図書館、ヴェルヴェッツ、そしてポップとアヴァンギャルドの現在 | ジョン・ケイル、インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Lite- Illuminate

Lite

Lite

Illuminate

I Want The Moon

Amazon iTunes

岩崎一敬   Aug 04,2010 UP

 ポスト・ロック系のインストと聞くだけで、「あぁ、ああいう感じね......」と食傷気味に思う人も多いだろう。だが日本のLITEは、軽やかに......いや、どちらかというと泥まみれにジタバタながらネクストを提示しようとしている。

 LITEが結成されたのが2003年で最初のミニ・アルバムをリリースしたのが2005年。2005年当時といえば、彼らのようなインストゥルメンタル・バンドがやたらたくさんライヴハウスから出てきていた時期だ。ポスト・ロック(トータス系もモグワイ系もマス・ロック系も)も定着した頃にバンドをはじめた人たちの世代。その多くが、海外のあるバンドにそっくりだったり、雰囲気だけをなぞったようなものだったりするなかで、LITEをはじめいくつかのバンドには特別なものがあった。いまでも生き残ったバンドはそれぞれシーンを代表する存在となっている。

 当初は4つ打ちの人力トランス的な音楽をやっていたそうだが、ほどなく変拍子主体のプログレッシヴなハードコア・サウンドに移行。ポスト・ロックやマス・ロックといった動きとリンクしていく。ヨーロッパやアメリカにも積極的にツアーを行い、マイク・ワット(元ミニットメン/現イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ)とゴー・チームのツチダ・カオリによるfunanoriとスプリット盤もリリースしている。2008年発表のセカンド・アルバム『Phantasia』は、そのマス・ロック的なサウンドの極限ともいえるアルバムで、恐ろしく緻密で複雑な楽曲を驚異的なテクニックとエモーショナルなテンションでプレイするさまは、笑ってしまうくらいに壮絶だった。

 2009年に自主レーベル〈I Want The Moon〉を設立し、元ジョウボックスのJ.ロビンスをエンジニアに迎えてレコーディングしたシングル「Turns Red EP」では、シンセサイザーを大胆に取り入れた、これまでの彼らとは違った、新しいサウンドを提示している。音も展開もギュウギュウに詰め込むようなやり方から一転、音数を減らし、変拍子とアンサンブルの妙味をユーモア混じりに聴かせるようになった。そのユニークな構造は、未来を感じさせるに充分だった。
 
 これは5曲入りの新作『Illuminate』だ。トータスのジョン・マッケンタイアを迎えて、シカゴのSOMA STUDIOでレコーディングとミックスを敢行している。シンセサイザーに加え、サンプラーやパーカッションも導入されていて、それらがアレンジのキモになっている。これが、「Turns Red EP」の方向性を発展させたものにはちがいないが、飛躍しすぎてよくわからないものになっていて、いちいち面白い。変拍子ならぬ"突拍子のない"複雑なリズムをひたすらユニゾンで演奏したかと思えば、やたらゴージャスで様式美なシンセのシンフォニックなフレーズをどアタマに配置したりする。

 メンバーの発言については7月31日発売の『indies issue』でのインタヴューを参照していただきたいが、『Illuminate』はLITEの過剰で変態的な部分が赤裸々に楽しめる作品である。キング・クリムゾンやイエスなどのプログレッシヴ・ロックからフュージョン、テクノやマス・ロックがLITEのもとに一本線で繋がったというか。いずれにせよ、今回のEPは、バンドが新しい方向性を追求するなかで生まれたスケッチだろう。これらが咀嚼されていくことでより具体的なイメージとなって、来るアルバムに組み込まれていくことを期待したい。

岩崎一敬