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Lite

Lite

Illuminate

I Want The Moon

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岩崎一敬   Aug 04,2010 UP

 ポスト・ロック系のインストと聞くだけで、「あぁ、ああいう感じね......」と食傷気味に思う人も多いだろう。だが日本のLITEは、軽やかに......いや、どちらかというと泥まみれにジタバタながらネクストを提示しようとしている。

 LITEが結成されたのが2003年で最初のミニ・アルバムをリリースしたのが2005年。2005年当時といえば、彼らのようなインストゥルメンタル・バンドがやたらたくさんライヴハウスから出てきていた時期だ。ポスト・ロック(トータス系もモグワイ系もマス・ロック系も)も定着した頃にバンドをはじめた人たちの世代。その多くが、海外のあるバンドにそっくりだったり、雰囲気だけをなぞったようなものだったりするなかで、LITEをはじめいくつかのバンドには特別なものがあった。いまでも生き残ったバンドはそれぞれシーンを代表する存在となっている。

 当初は4つ打ちの人力トランス的な音楽をやっていたそうだが、ほどなく変拍子主体のプログレッシヴなハードコア・サウンドに移行。ポスト・ロックやマス・ロックといった動きとリンクしていく。ヨーロッパやアメリカにも積極的にツアーを行い、マイク・ワット(元ミニットメン/現イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ)とゴー・チームのツチダ・カオリによるfunanoriとスプリット盤もリリースしている。2008年発表のセカンド・アルバム『Phantasia』は、そのマス・ロック的なサウンドの極限ともいえるアルバムで、恐ろしく緻密で複雑な楽曲を驚異的なテクニックとエモーショナルなテンションでプレイするさまは、笑ってしまうくらいに壮絶だった。

 2009年に自主レーベル〈I Want The Moon〉を設立し、元ジョウボックスのJ.ロビンスをエンジニアに迎えてレコーディングしたシングル「Turns Red EP」では、シンセサイザーを大胆に取り入れた、これまでの彼らとは違った、新しいサウンドを提示している。音も展開もギュウギュウに詰め込むようなやり方から一転、音数を減らし、変拍子とアンサンブルの妙味をユーモア混じりに聴かせるようになった。そのユニークな構造は、未来を感じさせるに充分だった。
 
 これは5曲入りの新作『Illuminate』だ。トータスのジョン・マッケンタイアを迎えて、シカゴのSOMA STUDIOでレコーディングとミックスを敢行している。シンセサイザーに加え、サンプラーやパーカッションも導入されていて、それらがアレンジのキモになっている。これが、「Turns Red EP」の方向性を発展させたものにはちがいないが、飛躍しすぎてよくわからないものになっていて、いちいち面白い。変拍子ならぬ"突拍子のない"複雑なリズムをひたすらユニゾンで演奏したかと思えば、やたらゴージャスで様式美なシンセのシンフォニックなフレーズをどアタマに配置したりする。

 メンバーの発言については7月31日発売の『indies issue』でのインタヴューを参照していただきたいが、『Illuminate』はLITEの過剰で変態的な部分が赤裸々に楽しめる作品である。キング・クリムゾンやイエスなどのプログレッシヴ・ロックからフュージョン、テクノやマス・ロックがLITEのもとに一本線で繋がったというか。いずれにせよ、今回のEPは、バンドが新しい方向性を追求するなかで生まれたスケッチだろう。これらが咀嚼されていくことでより具体的なイメージとなって、来るアルバムに組み込まれていくことを期待したい。

岩崎一敬